特許第6179115号(P6179115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179115
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】土留壁を構成する部材の打設方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   E02D13/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-20630(P2013-20630)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-152453(P2014-152453A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 峻二
(72)【発明者】
【氏名】坂平 佳久
(72)【発明者】
【氏名】照井 太一
(72)【発明者】
【氏名】米谷 彰司
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4862908(JP,B2)
【文献】 特開平08−068053(JP,A)
【文献】 特開平01−041815(JP,A)
【文献】 特開平04−353122(JP,A)
【文献】 特開平01−041814(JP,A)
【文献】 特開2008−019610(JP,A)
【文献】 特開2006−274635(JP,A)
【文献】 特開2011−191167(JP,A)
【文献】 特開2008−121219(JP,A)
【文献】 特開2003−328357(JP,A)
【文献】 特許第4683138(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0177450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/04
E02D 5/06
E02D 5/20
E02D 7/20
E02D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に直線的に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、
複数本の光線又は線状の光線を、発光器から前記複数の部材の並び方向へ、当該方向に見て前記複数本の光線を結ぶ直線又は前記線状の光線が下方に向って掘削領域側に所定角度だけ傾斜するように照射させ、複数の前記部材の各々を、前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して打設する作業を、受光側から発光側へ順次進行させることを特徴とする土留壁を構成する部材の打設方法。
【請求項2】
請求項1に記載の土留壁を構成する部材の打設方法において、
前記発光器を、打設しようとする鋼矢板の鉛直面に対する傾斜角度と同一の角度だけ鉛直軸に対して傾斜する斜材を備えた丁張に、設置することを特徴とする土留壁を構成する部材の打設方法。
【請求項3】
下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、
前記部材は、鋼矢板又は鋼管矢板であり、前記土留壁は、複数の前記鋼矢板又は鋼管矢板がジョイントを介して連結されて構築され、
支持層に達しない長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板を、前記ジョイントに照射させた前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して支持層よりも上位の層まで打設する工程と、
支持層まで達する長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板を、打設済の前記支持層に達しない長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板と前記ジョイントを介して連結されるように、前記ジョイントに照射させた前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して支持層まで打設する工程と、を備えることを特徴とする土留壁を構成する部材の打設方法。
【請求項4】
下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、
複数本の光線又は線状の光線を、発光器から前記複数の部材の並び方向へ、当該方向に見て前記複数本の光線を結ぶ直線又は前記線状の光線が下方に向って掘削領域側に所定角度だけ傾斜するように照射させるとともに、前記複数本の光線の最上位の光線又は前記線状の光線の上端の高さを、前記部材の上端の高さの設計値に設定し、
前記部材を、前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して打設することを特徴とする土留壁を構成する部材の打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する部材の打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直な土留壁を構成する複数の鋼矢板や鋼管矢板等の部材を、打ち込み予定線に沿って直線的に並ぶように打設するために、打ち込み予定線に沿って1本のレーザー光線を照射し、該1本のレーザー光線を基準にして、部材の姿勢を調整しながら打設する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、土留壁としては、鉛直な土留壁の他に、下方に向って掘削領域側に傾斜するように構築された土留壁(以下、斜め土留壁という場合がある)が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。これらの土留壁は、上方に向って掘削領域の反対側に傾斜していることにより、背面側における主働滑り面との間の地盤の体積が減少して受ける土圧が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−41814号公報
【特許文献2】特許第4862908号公報
【特許文献3】特許第4683138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斜め土留壁の施工では、斜め土留壁を構成する複数の部材を、打ち込み予定線に沿って直線的に並ぶと共に、所定の傾斜角度で下方に延びるように精度よく打設する必要がある。そのためには、打設中の部材の位置、及び、鉛直面に対する傾斜角度を含む姿勢の誤差を確認できるようにする必要があるところ、特許文献1に記載の打設方法では、打設中の部材の鉛直面に対する傾斜角度の誤差までは確認できない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、斜め土留壁を構成する複数の部材を、横方向に直線的に並ぶと共に、所定の傾斜角度で下方に延びるように精度よく打設することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の土留壁を構成する部材の打設方法は、下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に直線的に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、複数本の光線又は線状の光線を、発光器から前記複数の部材の並び方向へ、当該方向に見て前記複数本の光線を結ぶ直線又は前記線状の光線が下方に向って掘削領域側に所定角度だけ傾斜するように照射させ、複数の前記部材の各々を、前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して打設する作業を、受光側から発光側へ順次進行させるものである。
【0008】
前記土留壁を構成する部材の打設方法において、前記発光器を、打設しようとする鋼矢板の鉛直面に対する傾斜角度と同一の角度だけ鉛直軸に対して傾斜する斜材を備えた丁張に、設置してもよい。
【0009】
本発明の土留壁を構成する部材の打設方法は、下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、前記部材は、鋼矢板又は鋼管矢板であり、前記土留壁は、複数の前記鋼矢板又は鋼管矢板がジョイントを介して連結されて構築され、支持層に達しない長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板を、前記ジョイントに照射させた前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して支持層よりも上位の層まで打設する工程と、支持層まで達する長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板を、打設済の前記支持層に達しない長さの前記鋼矢板又は鋼管矢板と前記ジョイントを介して連結されるように、前記ジョイントに照射させた前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して支持層まで打設する工程と、を備えてもよい。
【0010】
本発明の土留壁を構成する部材の打設方法は、下方に向って掘削領域側に傾斜する土留壁を構成する複数の部材を、横方向に並ぶと共に下方に向って掘削領域側に傾斜するように打設する方法であって、複数本の光線又は線状の光線を、発光器から前記複数の部材の並び方向へ、当該方向に見て前記複数本の光線を結ぶ直線又は前記線状の光線が下方に向って掘削領域側に所定角度だけ傾斜するように照射させるとともに、前記複数本の光線の最上位の光線又は前記線状の光線の上端の高さを、前記部材の上端の高さの設計値に設定し、前記部材を、前記複数本の光線又は線状の光線を基準に姿勢を調整して打設してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、斜め土留壁を構成する複数の部材を、横方向に直線的に並ぶと共に、所定の傾斜角度で下方に延びるように精度よく打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法を用いて構築する斜め土留壁を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図4】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図5】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図6】一実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図7】他の実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
図8】他の実施形態に係る鋼矢板の打設方法の手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る鋼矢板12の打設方法を用いて構築する斜め土留壁10を示す斜視図である。この図に示すように、斜め土留壁10は、下方に向って掘削領域1側に傾斜するように構築された鋼矢板壁であり、複数の鋼矢板12が掘削領域1の外縁に沿って直線的に並んで連結されると共に、鉛直面Vに対して所定の傾斜角度(例えば、10°)で傾斜して下方に延びた構成となっている。ここで、複数の鋼矢板12は、互いに隣り合ってジョイント12Jで連結される物同士が、平面視において複数の連結点が直線的に並ぶように打設されている。
【0014】
図2図6は、一実施形態に係る鋼矢板12の打設方法の手順を示す斜視図である。まず、図2に示すように、複数の鋼矢板12を設計通りに打設するための基準線を、一対のレーザー光線L1、L2により設定する。この工程では、一対の発光器20、21と、一対の丁張30、40とを施工ヤードに設置する。
【0015】
丁張30は、逆T字状となるように接合された柱材32及び梁材34と、これらに両端を接合された斜材36とで構成されている。斜材36と柱材32とのなす角は、打設される鋼矢板12の鉛直面に対する傾斜角度と同一の角度に設定されている。この丁張30には、一対の発光器20、21が設置されている。一方、丁張40も、丁張30と同様、逆T字状となるように接合された柱材42及び梁材44と、これらに両端を接合された斜材46とで構成されており、斜材46と柱材42とのなす角は、打設される鋼矢板12の鉛直面に対する傾斜角度と同一の角度に設定されている。
【0016】
丁張30と丁張40とは、複数の鋼矢板12の打設領域を挟むように設置される。また、丁張30の斜材36と丁張40の斜材46とは、複数の鋼矢板12が並ぶ方向に見て互いに重なり合うように設置される。さらに、丁張30、40が、柱材32、42が鉛直になるように設置されることにより、斜材36、46が、打設される鋼矢板12の鉛直面に対する傾斜角度と同一の角度だけ、鉛直軸に対して傾斜するように配置される。
【0017】
丁張30、40を設置する際には、まず、梁材34、44を、複数の鋼矢板12の打ち込み予定線に対して直交する線上に水平に配置されるように、測量しながら設置する。つぎに、柱材32、42を、梁材34又は梁材44の上に鉛直に、かつ、打ち込み予定線の方向に見て重なり合うように、測量しながら設置する。そして、柱材32、42の下端を、梁材34又は梁材44に点溶接等により固定する。
【0018】
つぎに、下げ振りが吊り下げられた水平器を、柱材32、42の上端に水平に設置する。この際、柱材32、42の上端を起点にして、水平器を、下げ振りの錘が斜材36、46の下端の設計上の位置に吊り下げられるように設置する。そして、梁材34、44上の下げ振りの錘が示す位置に印を付し、当該位置に斜材36又は斜材46の下端を、点溶接等により固定し、柱材32又は柱材42の上端に斜材36又は斜材46の上端を、点溶接等により固定する。また、同様の方法により、斜材36上の発光器20、21の発光点の位置に印を付し、斜材46上の照射点22、23に印を付す。
【0019】
一対の発光器20、21は、丁張30の斜材36の後側から丁張40の斜材46の照射点22、23に向けてレーザー光線L1、L2が照射されるように設置される。ここで、一対の発光器20、21の位置及び向きは、これらの発光点を結ぶ直線が斜材36の軸線と平行になると共に、斜材46でのレーザー光線L1、L2の照射点22、23を結ぶ直線が斜材46の軸線と平行になり、さらに、一対の発光点とレーザー光線L1、L2の照射点22、23とが複数の鋼矢板12が並ぶ方向に見て互いに重なり合うように調整される。また、上側の発光器20の位置は、発光点及びレーザー光線L1の照射点22の高さが、打設する鋼矢板12の上端の高さの設計値と一致するように調整される。
【0020】
以下、鋼矢板12の打設手順について説明する。図3に示すように、複数の鋼矢板12を、サイレントパイラー等の杭打ち機2により打設する。この杭打ち機2には、打設中の鋼矢板12の2次元平面(水平面)内での位置や回転を調整する機構と、打設中の鋼矢板12の鉛直面に対する傾斜角度とを調整する機構とが設けられており(共に図示省略)、これらの機構により鋼矢板12の2次元平面内での位置や回転と、鉛直面に対する傾斜角度とを調整しながら鋼矢板12を打設する。
【0021】
複数の鋼矢板12の打設作業は、丁張40が設置されている側すなわちレーザー光線L1、L2の受光側から、丁張30が設置されている側すなわちレーザー光線L1、L2の発光側へと進行される。つまり、複数の鋼矢板12の打設作業は、打設中の鋼矢板12のジョイント12Jにレーザー光線L1、L2が照射されるように進行される。
【0022】
図4に拡大して示すように、レーザー光線L1、L2の双方が、打設中の鋼矢板12のジョイント12Jの所定範囲を照射していれば、打設中の鋼矢板12の2次元平面内での位置や回転と、鉛直面に対する傾斜角度とは適正であり、これらの調整をすることなく、鋼矢板12の打設を進める。それに対して、図5に示すように、レーザー光線L1、L2が、打設中の鋼矢板12のジョイント12Jの所定範囲から外れていれば、打設中の鋼矢板12の2次元平面内での位置や回転と、鉛直面に対する傾斜角度とは適正ではないため、これらの調整をしてから鋼矢板12の打設を進める。
【0023】
そして、図6に示すように、上側のレーザー光線L1が打設中の鋼矢板12の上端を照射した時点で、鋼矢板12の打設を終了する。ここで、上側のレーザー光線L1の高さは、鋼矢板12の上端の高さの設計値と一致するように設定されているため、上側のレーザー光線L1が打設中の鋼矢板12の上端を照射した時点で、鋼矢板12の上端の高さが設計値になる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼矢板12の打設方法では、一対のレーザー光線L1、L2を、発光器20、21から複数の鋼矢板12の並び方向へ、当該方向に見て一対の光線L1、L2を結ぶ直線が下方に向って掘削領域1側に所定角度だけ傾斜するように照射させ、鋼矢板12を、一対のレーザー光線L1、L2を基準に姿勢を調整して打設する。これによって、斜め土留壁10を構成する複数の鋼矢板12を、横方向に直線的に並ぶと共に、所定の傾斜角度で下方に延びるように精度よく打設することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る鋼矢板12の打設方法では、鋼矢板12を、ジョイント12Jで照射した一対のレーザー光線L1、L2を基準に姿勢を調整して打設する。これによって、斜め土留壁10を構成する複数の鋼矢板12を、これらのジョイント12Jが横方向に直線的に並ぶように打設することができ、斜め土留壁10の横方向への直線性をより高くすることができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る鋼矢板12の打設方法では、上側のレーザー光線L1の高さを、鋼矢板12の上端の高さに設定している。これによって、上側のレーザー光線L1が打設中の鋼矢板12の上端を照射した時点で、鋼矢板12の打設を終了すれば、鋼矢板12の上端の高さが設計値になるため、鋼矢板12の打設深さの管理が容易である。
【0027】
図7は、他の実施形態に係る鋼矢板12の打設方法の手順を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態に係る打設方法では、上述の実施形態における一対の発光器20、21に替えて、線状に連なったレーザー光線L0を照射する発光器120を、施工ヤードに設置し、複数の鋼矢板12を打設するための基準を、レーザー光線L0により設定する。
【0028】
発光器120としては、点状のレーザー発光素子が線状に並んだレーザーアレイや、点状のレーザー発光素子から発光されたレーザー光線をポリゴンミラー等で偏向する光走査式の装置等が挙げられる。
【0029】
発光器120は、丁張30の斜材36の後側から丁張40の斜材46に向けてレーザー光線L0が射出されるように設置される。ここで、発光器120の位置及び向きは、レーザー光線L0が斜材36の軸線と平行になると共に、斜材46に照射されたレーザー光線L0が斜材46の軸線と平行になり、さらに、レーザー光線L0が発光位置と照射位置とで、複数の鋼矢板12の並び方向に見て互いに重なり合うように調整される。また、発光器120の位置は、レーザー光線L0の上端の高さが、打設する鋼矢板12の上端の高さの設計値と一致するように調整される。
【0030】
複数の鋼矢板12の打設作業は、打設中の鋼矢板12のジョイント12Jにレーザー光線L0が照射されるように進行される。また、各鋼矢板12は、ジョイント12Jにレーザー光線L0の全体が照射されるように姿勢を調整されながら打設される。そして、レーザー光線L0の上端が打設中の鋼矢板12のジョイント12の上端を照射した時点で、鋼矢板12の打設を終了する。
【0031】
図8は、他の実施形態に係る鋼矢板12の打設方法の手順を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態に係る打設方法では、予め、支持層3まで達しない長さの仮設の鋼矢板13を、複数本、打ち込み予定線に沿って打設しておき、支持層3まで達する長さの本設の鋼矢板12を、仮設の鋼矢板13とジョイントを介して連結されるように打設する。ここで、複数本の仮設の鋼矢板13は、本設の鋼矢板12を打設する際に反力材として利用する。そのため、仮設の鋼矢板13は、本設の鋼矢板12を打設するための反力がとれる程度の周面摩擦力が得られる分の本数だけ打設する。
【0032】
ここで、土留壁の主働土圧に対する抵抗力を確保するために、本設の鋼矢板12を支持層3まで打設するが、支持層3は硬質であるため、始めから本設の鋼矢板12を支持層3まで打設する場合には、始めの数本については精度よく打設するのは難しい。それに対して、本実施形態では、まず、仮設の鋼矢板13を支持層3よりも浅い位置まで打設して、これらに反力をとって、本設の鋼矢板12を支持層3まで打設することによって、本設の鋼矢板12を最初から最後まで精度よく打設することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、土留壁10を鋼矢板壁としたが、鋼管矢板壁やソイルセメント柱列壁等の他の土留壁にしてもよい。ここで、土留壁を鋼管矢板壁にする場合には、鋼管矢板を、レーザー光線L1、L2(L0)が鋼管矢板のジョイントの所定範囲を照射するように、姿勢を調整しながら打設すればよい。また、土留壁をソイルセメント柱列壁にする場合には、H形鋼を、レーザー光線L1、L2(L0)が一方のフランジの端部を照射するように、姿勢を調整しながら打設すればよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、複数の鋼矢板12を設計通りに打設するための基準線を、2本のレーザー光線L1、L2により設定したが、直線状に並んだ3本以上のレーザー光線により設定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 掘削領域、2 杭打ち機、3 支持層、10 土留壁、12 鋼矢板、12J ジョイント、13鋼矢板、20 発光器、21 発光器、30 丁張、32 柱材、34 梁材、36 斜材、40 丁張、42 柱材、44 梁材、46 斜材、120 発光器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8