特許第6179146号(P6179146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179146
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】防音パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20170807BHJP
   E04C 2/36 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E04B1/86 T
   E04C2/36 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-55453(P2013-55453)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181461(P2014-181461A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】大原 康弘
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−026815(JP,A)
【文献】 実開昭59−132816(JP,U)
【文献】 特開2000−303603(JP,A)
【文献】 特開2000−170279(JP,A)
【文献】 特開平10−169015(JP,A)
【文献】 特開2010−088217(JP,A)
【文献】 米国特許第04292356(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/86
E04C 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の相互に平行な表面板の間に、これら表面板の対向方向に沿う複数の板材を組み合わせてなるコア材が配置され、該コア材は、両表面板に挟まれた空間を前記板材により囲まれた多数の小空間に区画しており、
外周部に、両表面板の間を閉塞する芯枠材が外周方向に沿って設けられるとともに、前記芯枠材の外面に長尺のパッキンが外周方向に沿って設けられ、
前記表面板は矩形状に形成され、前記パッキンは、前記表面板の対向する角部に配置される二辺ずつで厚さ方向にずらして設けられており、
当該防音パネルを隣接させたときに隣接する防音パネルの前記パッキンの間に空気層を形成可能であることを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記表面板の一方に、その外表面を覆う層状パッキンが設けられていることを特徴とする請求項に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記表面板と前記コア材とは異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記一組の表面板は異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音パネルに関し、特に、一組の表面板の間に挟むようにコア材を配置してなる防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅やオフィスビルなどの建造物では、外部への音漏れを防止するために防音パネルが用いられている。この防音パネルは、一組の表面板の間に挟むようにコア材を配置した構造とされ、軽量でかつ高い強度を有する。
【0003】
この種の防音パネルとして、例えば、特許文献1における床下地パネルが知られている。この床下地パネルは、複数の防振支持脚により支持される床構造体に用いられ、防振支持脚の支持ボード上の領域が中実に形成され、その他の領域には床面に平行方向に複数の空洞が形成されている。これによると、床下地パネルの衝撃点から伝搬してきた振動エネルギーが空洞形成領域と中実領域との境界で反射し、空洞形成領域を繰り返し通過して減衰し、スラブに伝わる振動エネルギーや音響エネルギーを低減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−239061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特定の物体に外部から振動が加わったときに、この振動がその物体の固有振動数に近づくにつれて、共鳴現象によって振幅が急激に増大することが知られている。防音パネルにより音を遮蔽するためには、この共鳴を防ぐことが重要である。
しかしながら、特許文献1の床下地パネルは、床面に平行方向に複数の空洞が一定間隔で形成されているため、この長尺状の空洞が管のような役割を果たして、その長さに応じた周波数の音が伝わると共鳴しやすくなり、その結果、音が増幅して遮音性能の低下が起こりやすい。長尺な空洞であるため、特に、波長が長い低周波数の音に対して共鳴しやすい。
また、内部に配置されている芯材が、山部と谷部とが交互に配置された波形になっているため、パネルの表面板上面では場所により耐荷重が異なり、特に、谷部により構成される溝部分では、表面板の裏面が空洞になるため耐荷重が弱くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を図りながら共鳴を防いで遮音性能を向上し、また耐荷重性能を面内均一化して強度を向上した防音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防音パネルは、一組の相互に平行な表面板の間に、これら表面板の対向方向に沿う複数の板材を組み合わせてなるコア材が配置され、該コア材は、両表面板に挟まれた空間を前記板材により囲まれた多数の小空間に区画しており、外周部に、両表面板の間を閉塞する芯枠材が外周方向に沿って設けられるとともに、前記芯枠材の外面に長尺のパッキンが外周方向に沿って設けられ、前記表面板は矩形状に形成され、前記パッキンは、前記表面板の対向する角部に配置される二辺ずつで厚さ方向にずらして設けられており、当該防音パネルを隣接させたときに隣接する防音パネルの前記パッキンの間に空気層を形成可能であることを特徴とする。
【0008】
両表面板の間でコア材により区画される小空間が板材に囲まれた閉空間となっているので、パネルに音が伝わったときの共鳴現象が小空間により抑制され、パネルの外周部から抜け出ることが防止される。この閉空間の空気層により防音性が向上し、特に、低域の周波数での共鳴が防がれて、音の増幅が抑制され遮音性能が向上する。
また、両表面板の間に配置されるコア材は、両表面板の間の複数箇所に分散して配置されるとともに、その板材が両表面板の対向方向に沿って配置されているので、表面板の厚さ方向に加わる荷重に対する強度が大きく、表面板の各部を一様に支持して、面方向の耐荷重性能が均一化している。このため、このパネルを床材として使用する場合には、設置場所を選ばずに重量物を支持することができる。
コア材の形状としては、格子形状、ハニカム形状、幾何学模様の形状等を採用することができ、小空間を面方向に均等に分布させたものが好ましい。
【0009】
許文献1記載の構造であると、防音パネル同士を並べた場合、これらパネル間に隙間が生じる可能性があり、この隙間から共鳴した音が漏れて遮音性の低下が起こりやすい。
本発明の構造であれば、外周部に芯枠材が設けられることで、外周部に配置される小空間も閉空間となって音漏れを確実に防止することができるとともに、防音パネル同士を並べたときにも、小空間がパネル同士の隙間に連通することがないので、より遮音性能を向上させることができる。
【0010】
また、複数の防音パネルを縦横に並べて配置したときに、隣接する防音パネルとの隙間がパッキンにより塞がれ、外部への音漏れが防止されて遮音性能が向上する。
【0011】
また、パネルを並べるときに、隣接するパネルの対向部に配置されるパッキンが厚さ方向にずれた位置関係となるように配置することにより、パッキン同士が接触することによる剥がれの発生が回避される。特に、パネルを上方向からはめ込む際にパッキン同士が重なることがないため、パッキンの剥がれが防止されると同時に、接触時の摩擦が小さくなってパネルがはまりやすくなり、作業性が向上する。
しかも、隣接するパネルのパッキンの間に空気層を形成することができ、この空気層が吸音作用を生じてさらに遮音性能が高められる。
【0012】
本発明の防音パネルにおいて、前記表面板の一方に、その外表面を覆うように層状パッキンが設けられているとよい。
防音パネルの取り付け面側に層状パッキンが設けられていることで、外部接触面との隙間がこのパッキンによって塞がれ、防音パネルと外部接触面とを密着させてガタツキのない高精度な取り付けが可能になる。
【0013】
さらに、本発明の防音パネルにおいて、前記表面板と前記コア材とは異なる材料で形成されていることが望ましく、さらに、前記一組の表面板同士も異なる材料で形成されているとよい。
これにより、表面板とコア材や、一組の表面板同士の固有振動数がそれぞれ変わるため、音により振動が発生したときに共振しにくくなり、広域の周波数範囲において遮音性が高められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防音パネルによれば、軽量化を図りながら、両表面板に挟まれた空間をコア材により多数の小空間に区画し、各小空間を音に対して共振しにくい閉空間とすることで、共鳴を防いで遮音性能を向上することができる。また、両表面板の対向方向に沿う板材を組み合わせてなるコア材により両表面板の間を均等に補強することができ、均一な耐荷重性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の防音パネルを示す(a)が平面図、(b)が側面図である。
図2図1の防音パネルの角部を拡大して示す平面図である。
図3図1の防音パネルを一部破断して示す斜視図である。
図4図1の防音パネルの表面板を除去した後のコア材と芯枠材とを示す(a)が平面図、(b)が側面図である。
図5】防音パネルの敷設状況を(a)(b)の順に示す断面図である。
図6】敷設途中の平面図である。
図7】第2実施形態の防音パネルを示す一部破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の防音パネルの実施形態を図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の防音パネル1は、例えば部屋の中に防音室を区画して構築する場合の床材等に用いられるものであり、図1に示すように、一組の表面板2,2と、これら表面板2,2の間に、コア材3と芯枠材4とが挟まれた状態に設けられ、外周部にパッキン5a,5bが設けられている。
【0017】
表面板2は、例えば、パーティクルボードや合板などの木材、あるいはプラスチック等の樹脂などにより適宜の大きさの矩形、例えば正方形に形成される。これら表面板2,2は、相互に平行に配置され、表面板2,2の間の空間内にコア材3が設けられる。
【0018】
コア材3は、例えば、ダンボール、木材、射出成形されたプラスチックなどの材料により形成され、図1及び図4等に示す例では、複数の板材6を一定間隔の格子状に組み合わせた構造とされ、これら板材6の面方向が両表面板2,2の対向方向に沿って配置されることにより、各板材6が両表面板2,2に対して垂直方向に配置されている。そして、このコア材2により、両表面板2,2に挟まれた空間が多数の一定間隔の小空間7に区画されている。これら小空間7は、防音パネル1の外周部に配置されるものを除き、コア材3の板材6によって周囲が囲まれた閉空間を構成している。このコア材3の小空間7は、波長の大きい音が形成されにくいように、より小さいことが望ましく、また、小空間7を小さくすることにより、板材6の配設ピッチも小さくなり、この防音パネル1を床材として用いた場合の耐荷重性能の向上に有利である。
【0019】
芯枠材4は、表面板2と同様に木材などからなり、一組の表面板2,2の外周部にその外周方向に沿って設けられ、この芯枠材4により両表面板2,2の間が四辺にわたって塞がれた状態とされる。この芯枠材4を設けることにより、前述した外周部の小空間7もコア材3の板材6と芯枠材4とに囲まれ閉空間とすることができる。
【0020】
パッキン5a,5bは、発泡ポリウレタンなどの多孔質材料により表面板2の辺の長さに合わせて長尺状に形成され、芯枠材4の外面に、パネルの外周方向に沿って設けられている。このパッキン5a,5bは、例えば、両面テープにより芯枠材4に貼り付けられ、複数の防音パネル1を並べたときに隣接する防音パネル1との隙間を塞ぐことができるようになっている。
【0021】
また、図3に示すように、パッキン5a,5bは、防音パネル1の四辺のうち、直交する二辺に沿って同じ高さ位置に設けられるが、対向する角部に配置される二辺ずつで厚さ方向にずらして設けられており、一方の角部に配置される二辺のパッキン5aは、表面板2の一方(防音パネル1の上面)に近接し、他方の角部に配置される二辺のパッキン5bは、表面板2の他方(防音パネル1の下面)に近接している。
さらに、表面板2,2の一方の表面に、発泡ポリウレタンなどの多孔質材料を層状に形成してなる層状パッキン8が積層状態に設けられている。
【0022】
このように構成される防音パネル1を組み立てる場合、まず、図4に示すように、芯枠材4を四角形状の枠組に仮組みし、この芯枠材4の枠組内に収まる大きさに形成したコア材3を固定する。そして、一組の表面板2,2をコア材3の両面側に貼り合わせる。さらに、図3に示すように、芯枠材4の外面の所定位置にパッキン5a,5bを貼り付けるとともに、表面板2,2の一方の面に層状パッキン8を貼り付ける。
【0023】
この防音パネル1を床材として用いる場合は、図5及び図6に示すように、例えば床フレーム11の上に複数の防音パネル1を縦横に並べて配置する。
この床フレーム11は、適宜の金属により枠状に形成されたフレーム材12と、このフレーム材12の裏面に貼り付けられた防振ゴム13とから構成され、この床フレーム11により階下への遮音性能がより強化される。
防音パネル1は、片面に層状パッキン8が設けられており、この層状パッキン8を床フレーム11の上に重ねるようにして敷設することにより、床フレーム11や防音パネル1の寸法精度の誤差が層状パッキン8により吸収され、これらに生じる隙間が塞がれることで防音パネル1と床フレーム11との間の空気伝播音をより確実に防止することができる。
【0024】
この床フレーム11上に複数の防音パネル1を敷設する場合、防音パネル1の外周のパッキン5a,5bが厚さ方向にずれて配設されているので、図5(a)(b)に示すように、先に敷設した防音パネル1のパッキン5a,5bのうち下面側に配置されているパッキン5bに、隣接する防音パネル1の上面側に配置されているパッキン5aが重なるように配置するとよい。
このように敷設することで、両防音パネル1のパッキン5a,5b同士が接触することがなく、これらパッキン5a,5bがこすれ合うことによる剥がれを防止することができ、防音パネル1を隙間なく整然と並べて敷設することができる。
【0025】
そして、この防音パネル1の敷設状態においては、各防音パネル1は、一組の表面板2,2の間の空間がコア材3及び芯枠材4により多数の小空間7に区画されていることにより、床に伝わる音が防音パネル1内で共鳴することが抑制される。この場合、コア材3内の小空間7だけでなく、コア材3の外周部に配置されている小空間7も、外部に開放されることなく芯枠材4により閉塞されているので、すべての小空間7が閉空間となり、共鳴現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0026】
また、各防音パネル1の間は、隣接する防音パネル1の外周部に配置したパッキン5a,5bにより、隙間を形成することなく密接した状態とされるので、防音パネル1間からの音漏れも防止することができる。しかも、隣接する両防音パネル1でパッキン5a,5bが厚さ方向にずれて配置されているので、これらパッキン5a,5bの間に空気層9が形成される。この空気層9を伝播する音により空気が振動し、周囲の防音パネル側面との摩擦により音響エネルギーが低減されるため、吸音作用が生じて遮音効果が高められる。
【0027】
このように遮音効果を有する防音パネル1において、その構成部材である両表面板2,2、コア材3、芯枠材4は、それぞれ異なる材料で形成されていると、各部材の固有振動数が異なることとなり、広域の周波数範囲で遮音性能を発揮することができる。両表面板2,2の相互も異なる材料で形成するとなおよい。例えば、木材とプラスチック、あるいは段ボール、木材の中でもパーティクルボードと合板など、その組み合わせを適宜に選択することにより、広い音域で遮音性能を向上させることができる。
なお、図5及び図6に鎖線で示すように、床フレーム11の内側で防音パネル1の下方に吸音材14を配置するようにしてもよい。また、この防音パネル1の上面には必要に応じて仕上げ床材が敷設される。
【0028】
図7は、防音パネルの第2実施形態を示している。この防音パネル15は、両表面板2,2、コア材16、芯枠材4、パッキン5a,5bを有している点は第1実施形態と同様であるが、そのコア材16がハニカム形状に形成されている。このコア材16には、段ボールを板材17とする、いわゆるペーパーハニカムが用いられ、組み立て前の運搬、保管時等には折り畳んだ状態とされ、これをハニカム状に広げた状態で芯枠材4の内側に組み込み、両表面板2,2により覆われた状態とされる。
この防音パネル15においても、ハニカム形状のコア材16が両表面板2,2の間に多数の小空間18を形成して、遮音性能を向上させることができるとともに、板材17が両表面板2,2の対向方向に沿って配置され、優れた機械的強度を有する。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明の防音パネルは、床以外にも、壁、ドア、天井、パーティションなどにも使用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…防音パネル、2,2…表面板、3…コア材、4…芯枠材、5a,5b…パッキン、6…板材、7…小空間、8…層状パッキン、11…床フレーム、12…フレーム材、13…防振ゴム、14…吸音材、15…防音パネル、16…コア材、17…板材、18…小空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7