(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部及び前記緊締部に隣接し、前記本体部よりも締め付け力が大きく、前記緊締部よりも弛緩性のある所望面積の補助緊締部を、前記緊締部の間に前記仮想基準ラインに沿って有することを特徴とする請求項1または2に記載の股付き衣類。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る股付き衣類について説明する。本発明の実施形態で説明する股付き衣類は、例えば、ガードル等の股部(クロッチ部)付きの衣類である。ここでは、女性用のガードルを用いて説明するが、ガードルの他、ショーツ(特に、補整機能付きショーツ)、パンティストッキング、タイツ、レギンス、水着、レオタード、ボディースーツ、スポーツ用タイツ、男性用ボトム衣類、ストレッチ性を有するズボン(パンツ)のように臀部を覆うように形成され、臀部のずれ上がりを防止する必要がある股付き衣類であれば適用することができる。
【0011】
図1に実施形態に係る股付き衣類であるガードル1Aの背面斜視図を示す。なお、
図1はガードル1Aを人が着用した際の形状を表している。また、
図2に、本発明の実施形態に係るガードル1Aの背面図と人体の部位の位置関係を示す。具体的には、
図2では、大転子300、股下301及び臀溝302の位置を示している。なお、ここでは、「股下高」を特定する位置を股下301として説明する。また、「股下高」とは、立位姿勢において、床面からクロッチ部の最下点までの距離をいう。
【0012】
図1に示すように、ガードル1Aは、腹部から臀部の周囲を覆う筒状の本体部10を備え、着用者の臀部及び腹部にフィットする性質を有している。ガードル1Aには、
図2に示すように、着用者の臀溝302より上部分であって、着用者の左右の大転子300から股下301までの臀部に皮膚に沿う最短距離を通過する仮想のラインである基準ラインLを上下方向に跨ぐように、本体部10よりも締め付け力の高い所望面積のヒップ緊締部20が設けられている。このヒップ緊締部20は、例えば、基準ラインLより上側の上側緊締部21と、基準ラインLより下側の下側緊締部22とを有している。また、ガードル1Aは、着用者の股部分に設けられるクロッチ部である股部11と、着用者のウエスト部分に設けられるウエストサポート部12と、本体部10とヒップ緊締部20の間に設けられる補助緊締部13とを有している。
【0013】
ここでは、ガードル1Aの股部11、ウエストサポート部12、補助緊締部13及びヒップ緊締部20以外の部分を本体部10という。本体部10は、伸縮性を有する素材によって着用者にフィットするように形成されている。例えば、本体部10は、ツーウェイラッセル、ツーウェイトリコット、パワーネット、サテンネット、トリコネット、ベア天竺、ストレッチレースを用いた編地によって形成される。
【0014】
股部11は、例えば、本体部10と同一の素材で形成されている。その他、本体部10又はヒップ緊締部20の一部であってもよい。
【0015】
ウエストサポート部12は、着用者のウエスト部分に設けられている。例えば、ウエストサポート部12は、本体部10と同一の素材で形成される。また、ウエストサポート部12は、編地編成、当て布、樹脂プリント(樹脂加工)、抜蝕加工(ケミカルプリント)等を利用して、本体部10よりも強い締め付け力になるように形成されている。ガードル1Aは、ウエストサポート部12の締め付け力により、着用者の腹部の贅肉の膨出を抑制してウエスト部分をサポートし、美しいシルエットを作ることができる。
【0016】
ウエストサポート部12は、例えば、着用者の前面(前身頃)から両方の側部を通って背面(後身頃)まで帯状に形成されている。このウエストサポート部12の前面から背面までの幅は一定に限られない。なお、ウエストサポート部12は、着用者のウエスト部分をサポートすることができればその形状は限定されない。また、ウエストサポート部12は、前面から背面の全てを同一の締め付け力に形成する必要はなく、複数の異なる締め付け力によって段階的にウエスト部分をサポートしてもよい。
【0017】
補助緊締部13は、ガードル1Aの後身頃において本体部10及びヒップ緊締部20と隣接して設けられている。例えば、補助緊締部13は、本体部10と同一の素材で形成される。また、補助緊締部13は、編組織の変更(いわゆる編み組織の変更)、当て布、樹脂プリント(樹脂加工)、抜蝕加工(ケミカルプリント)等を利用して、本体部10よりも強い締め付け力を有し(いわゆるパワー切り替え)、ヒップ緊締部20よりも弛緩性を有するように所望面積で形成されている。
図1に示す例では、補助緊締部13は、基準ラインLに沿ってヒップ緊締部20の間に設けられている。
【0018】
なお、本例では、ガードル1Aに補助緊締部13が設けられている例を挙げているが、ガードルの仕様によっては、補助緊締部13を設けない構成としてもよい。
【0019】
図1及び
図2では、説明を簡単にするため、締め付け力の違いを、異なるハッチングを用いて示している。
図1及び
図2を用いて説明するガードル1Aの一例では、本体部10の締め付け力が最も弱く、ウエストサポート部12及び補助緊締部13は本体部10よりも締め付け力が強く、ヒップ緊締部20は、ガードル1Aにおいて最も締め付け力が高いものとする。なお、
図1及び
図2を用いて説明する締め付け力の違いは一例であって、これに限定されない。
【0020】
また、
図2では、ヒップ緊締部20、基準ラインL、及びその周辺の構成の位置関係を分かり易く説明するために、ヒップ緊締部20の形状を一部簡略化して示している。
【0021】
ヒップ緊締部20は、上述したように、着用者の左右の大転子300から股下301までの臀部の皮膚に沿う最短距離を通過する基準ラインLを上下方向に跨ぐように設けられている。この基準ラインLは臀溝302よりも上側に位置するため、ヒップ緊締部20は臀溝302より上側に設けられている。なお、
図2において、ヒップ緊締部20は、臀溝302の一部に上方から架かっているが、
図2に示すように、ヒップ緊締部20の一部が臀溝302上に位置していてもよいし、ヒップ緊締部20が全く臀溝302上に位置していなくてもよい。
【0022】
また、例えば、着用者の大転子300を通る水平線とヒップ緊締部20が設けられる基準ラインLとで形成される角度αは、複数の被験者の大転子300と股下301の位置関係を測定して求めることが好ましく、具体的には、12〜32度の範囲とすることが好ましく、より好ましくは17〜28度の範囲とすることが好適である。これにより、基準ラインLを覆う位置にヒップ緊締部20を設けることができる。
【0023】
なお、上述した角度αの一例を求める際の測定の対象とする被験者には、着用するガードルのサイズが異なる者をそれぞれ複数名ずつ選んでいるため、この角度は、各サイズに対応可能である。
【0024】
ヒップ緊締部20は、強い締め付け力によりヒップを引き上げる補整機能を有している。着用者の臀部の膨出部の上方をボリュームアップすることで、ヒップを美しく造形することができる。例えば、ヒップ緊締部20は、本体部10と同一の素材で形成される。また、ヒップ緊締部20は、編地編成、当て布、樹脂プリント(樹脂加工)、抜蝕加工(ケミカルプリント)等を利用して、本体部10及びウエストサポート部12よりも強い締め付け力(低い伸縮性)になるように形成されている。なお、ヒップ緊締部20は、全範囲に渡る全てを同一の締め付け力に形成する必要はなく、複数の異なる締め付け力によって段階的にヒップを補整するようにしてもよい。
【0025】
なお、上記実施形態では、本体部10にヒップ緊締部20及び補助緊締部13が一体的に形成されている例を挙げているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ヒップ緊締部20及び補助緊締部13を本体部とは別の部材に形成し、本体部10に取り付けるようにしてもよい。この場合には、上記の別の部材の上辺部分を除く縁部分を本体部10に縫着や接着等によって取り付けることが考えられる。これにより、上辺部分に縫着等の接合部が形成されないため外観上好適である。
【0026】
また、ヒップ緊締部20は、基準ラインLを跨ぐように配置されることで、臀溝302付近で生じるずれを防止する機能を有している。
【0027】
人間は、歩行運動、立位姿勢と座位姿勢との間における運動等、日常生活において様々な運動を行っている。これら運動の際、臀溝302部分は、皮膚の変化率(伸展率)が大きい部分である。
図3を用いて、運動による臀溝302の変化について説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、静止立位状態である人の右側の大転子300から股下301まで臀溝302を通って結ぶ線を表している。具体的には、
図3(a)は、人の臀部の背面斜視図であり、
図3(b)は、人の臀部の背面図である。
【0028】
図3(b)において、静止時を基準として右側の脚上げ時(片脚上げ時)の皮膚の上下方向の変化率(伸展率)を示している。
図3(b)に示すように、静止時を1.0としたとき、臀溝302部分の脚上げ時の変化率は1.5倍以上となっていることが分かる。また、臀溝302を含む位置より下側の位置では、臀溝302よりは低く、臀溝302を含む位置より上側では上側に離れるに従い1.2〜1.0倍と次第に低くなる。
【0029】
また、
図3(c)及び
図3(d)は、人間の臀部の斜視図である。
図3(c)は、静止立位状態である人の臀溝302の位置を示している。また、
図3(d)は、脚上げ時(片脚上げ時)における脚上げ前の臀溝位置302Aからの変化を表している。
図3(d)を
図3(c)と比較すると、脚上げ時には、脚上げ前の臀溝位置302Aと人体の皮膚との間に大きく空間Sができており、脚上げにより、臀溝302の皮膚が伸び、形状、寸法も変化していることが分かる。
【0030】
したがって、臀溝302部分に緊締部を設けた場合、歩行や着席等の下半身の運動に応じた臀溝302の変化に合わせて緊締部も移動し、衣類のずり上がりが発生しやすい。一方、着用者の大転子300から股下301までを結ぶ基準ラインLは、臀溝302と比較して、皮膚の変化率が小さい部分である。
【0031】
図4を用いて、運動による大転子300から股下301までの臀部の皮膚に沿う最短距離の基準ラインLの変化について説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、静止立位状態である人の右側の大転子300から股下301までの皮膚に沿う最短距離の基準ラインLを示す図である。具体的には、
図4(a)は、人の臀部の背面斜視図であり、
図4(b)は、人の臀部の背面図である。
図4(b)において、
図3(b)と同様に、静止時を基準として右側の脚上げ時の皮膚の変化率を示している。
図4(b)に示すように、静止時を1.0としたとき、基準ラインL部分の脚上げ時の変化率は1.2倍前後であり、臀溝302部分と比較して変化率が小さいことが分かる。
【0032】
また、
図4(c)は静止立位時の基準ラインLの位置を示す斜視図であり、
図4(d)は右側の脚上げ時における脚上げ前の基準ライン位置LAからの変化を示している。
図4(d)を
図4(c)と比較すると、脚上げ時には、脚上げ前の基準ライン位置LAと人体の皮膚との空間Sは小さく、脚上げによる基準ラインL部分の皮膚の伸展が小さいことが分かる。これは、
図4(d)を
図3(d)と比較したときにも分かり、基準ラインL部の脚上げによる皮膚の変化は、臀溝302と比較すると小さいことが分かる。
【0033】
したがって、臀溝302と比較して、皮膚の変化率の小さい基準ラインL部分に緊締部を設けた方が、歩行や着席等の下半身運動の際にも緊締部の移動も生じにくく、ガードル1Aの臀部部分におけるずり上がりも生じにくい。換言すると、ガードル1Aでは、臀部の皮膚の伸び率が最大の位置よりも低い伸び率の位置を含む位置にヒップ緊締部20を設けることで、ヒップ緊締部20やヒップ緊締部20の上下部分のずり上がりを防止することができる。
【0034】
ヒップ緊締部20は、臀溝302の位置よりも上方の基準ラインLを跨ぐように配置することで、単なる帯状であっても着用時のずれを防止することができる。しかしながら、例えば、ヒップ緊締部20は、その稜線が
図1に示すようにジグザグ形状に形成されていることが好ましい。(なお、前記のジグザグ形状とは、断続的に突出する形状とも表現することができる。)具体的には、上側緊締部21は、基準ラインLを基準として上方向に先細りとなる形状であって、基準ラインL上に底辺部分が連続した形態で配置してある。上側緊締部21の稜線を見るとジグザグ形状に形成されている。また、下側緊締部22は、基準ラインLを基準として下方向に先細りとなる形状であって、基準ラインL上(下側)に底辺部分が連続した形態で配置してある。下側緊締部22の稜線を見るとジグザグ形状に形成されている。
【0035】
具体的には、上側緊締部21は、基準ラインLと平行なラインL1に沿って上側緊締部21を横切る線の長さが基準ラインLから離れる程短くなる形状である。なお、本例では、上側緊締部21を横切る線の長さが基準ラインLから離れる程短くなる形状である例を挙げているが、本発明はこれに限られない。例えば、上側緊締部21は仮想的に上下方向(すなわち、基準ラインLと交差する方向)の全長を2等分したときに上側部分が下側部分よりも面積が小さくなるような三角形状や紡錘形状、波状等であれば良い。
【0036】
また、下側緊締部22は、基準ラインLと平行なラインL2に沿って下側緊締部22を横切る線の長さが、基準ラインLから離れる程短くなる形状である。なお、本例では、下側緊締部22を横切る線の長さが基準ラインLから離れる程短くなる形状である例を挙げているが、本発明はこれに限られない。例えば、下側緊締部22は仮想的に上下方向(すなわち、基準ラインLと交差する方向)の全長を2等分したときに下側部分が上側部分よりも面積が小さくなるような三角形状や紡錘形状、波状等であれば良い。または、上側緊締部21と下側緊締部22とは、基準ラインLと平行なラインL1,L2によって切断した際の単位面積が基準ラインLから離れるほど小さくなる形状である。
【0037】
図1及び
図2に示す例において、上側緊締部21は、股下301の左右付近で基準ラインL側が底辺となる略三角形状が配置されるとともに、左右の大転子300付近で基準ラインL側が底辺となる略台形状が配置されている。また、下側緊締部22は、股下301の左右付近で基準ラインL側が底辺となる略三角形状(逆三角形状)が配置されるとともに、左右の大転子300付近で基準ラインL側が底辺となる略台形状(下辺の方が上辺よりも短くなる台形状)が配置されている。したがって、
図1及び
図2に示す例では、上下の緊締部21,22の全体を見ると、股下301の左右両側付近では上下側が細くなる略ひし形状に形成してあり、基準ラインL上に沿って略ひし形を配置した状態である。換言すると、ヒップ緊締部20は、独立した複数の領域の集合で形成されている。
【0038】
図1及び
図2に示す例では、三角形状を成す上側緊締部21の下辺側部分と、下側の方が幅が狭くなるように形成された台形状を成す下側緊締部22の上辺側部分とが一体に形成され、上下で略ひし形状を形成している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上側緊締部を構成する多角形の底辺側部分と下側緊締部を構成する多角形の上辺側部分とが、その一部が重複するように形成されていてもよい。また、例えば、基準ラインL近傍での締め付け力が最も大きくなるのであれば、上側緊締部と、下側緊締部がそれぞれ分離するように形成してもよい。この場合にも、本実施形態に係るガードル1Aと同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、ヒップ緊締部20は略ひし形状に形成されているが、例えば、樹脂プリントや編組織の変更または抜蝕加工等を用いて前記の略ひし形の内側部分をドット状や格子状、若しくはスリット状に形成するようにしてもよい。この場合にも本実施形態に係るガードル1Aと同様の効果を得ることができる。
【0040】
上側緊締部21及び下側緊締部22の稜線がジグザグ形状に形成されているため、ガードル1Aは、着用者の臀部のボリュームをスムーズに移動させることができ、ヒップアップの際にヒップを美しく造形することができる。例えば、上側緊締部21及び下側緊締部22の稜線が、単なる直線や曲線等であってジグザグ形状でない場合、着用者のヒップ部分において本体部10とヒップ緊締部20との境界で段差が形成される。一方、上側緊締部21及び下側緊締部22の稜線をジグザグ形状にすることで、ヒップ部分に段差が形成されることを防ぐことができる。また、上側緊締部21及び下側緊締部22の稜線がジグザグ形状に形成されるため、着用者の運動による臀部の皮膚の伸縮に対する追従性に優れるので、美しいシルエットだけでなく、快適な着用感を得ることができる。
【0041】
図1に示すように補助緊締部13を有する場合、上側緊締部21や下側緊締部22よりも弛緩性のある補助緊締部13によっても上側緊締部21及び下側緊締部22とともに、ヒップを持ち上げつつ美しく造形することができる。一方、補助緊締部13が存在せず、補助緊締部13が本体部10と一体である場合であっても同様である。
【0042】
また、上側緊締部21及び下側緊締部22の稜線がジグザグ形状に形成されているため、ガードル1Aは、ヒップの造形とともに、ずり上がりを防止することができる。具体的には、ヒップ緊締部20の位置の基準となる大転子300と股下301を結ぶ基準ラインLは、臀溝302等の運動時による皮膚の変化率の最も高い部分より上方に設けられている。そのため、臀溝302と比較すると、運動による皮膚の伸展に応じた影響を受けにくいものの、この基準ラインL部分も運動により若干(1.2〜1.0倍程度)伸展するため、ずり上がりが生じる可能性がある。したがって、上側緊締部21と下側緊締部22の稜線をジグザグ形状に形成することで、運動の際の臀部の動きに応じてガードル1Aも伸縮し、ずり上がりを防止し、快適な着用感を得ることができる。また、ずり上がり防止により、ガードル1Aの補整機能もより長い時間保持される。
【0043】
図1に示すように補助緊締部13を有する場合、上側緊締部21や下側緊締部22よりも弛緩性のある補助緊締部13によっても上側緊締部21及び下側緊締部22とともに、ずり上がりを防止することができる。一方、補助緊締部13が存在せず、補助緊締部13が本体部10と一体である場合であっても同様である。
【0044】
ここで、ヒップ緊締部20において、上側緊締部21は特にヒップの造形機能を高く発揮する。また、下側緊締部22は、特にずり上がり防止の機能を高く発揮する。
【0045】
なお、上述の説明では、ガードル1Aの丈は言及していないが、ショート丈からロング丈まで幅広い丈のガードルでずり上がり防止の機能を発揮することができる。従来、特にショート丈のガードルではずり上がりが生じ易いという課題があったため、ショート丈のガードルにおいては、特に高い効果を発揮することができる。また、ここでは、補整機能を有するガードル1Aを例として説明したが、補整機能(ヒップアップ機能)を有しない股付き衣類であっても、ずれ上がり防止のためにヒップ緊締部20を設けることができる。
【0046】
[実施例]
図5乃至
図7を用いて、実施形態に係るガードル1Aを着用した例の評価を説明する。ここでは、ガードル1Aとして、股下301からの丈が5cm程度のガードル(ショート丈のガードル)を使用している。
【0047】
図5(a)は、Tバックショーツを着用したヌードと同等の状態である。また、
図5(b)は、従来の股付き衣類であるショート丈(股下からの丈が5cm程度)のガードルを着用した運動前の状態である。さらに、
図5(c)は、実施形態に係るガードル1Aを着用した運動前の状態である。また、
図5(d)は、
図5(b)で着用しているショート丈のガードルを着用して運動(主に下半身の運動)を行った後に撮影された状態を示している。さらに、
図5(e)は、
図5(c)で着用しているガードル1Aを着用して、
図5(d)と同一の条件で運動した後の状態の一例である。なお、
図5(a)〜
図5(e)の着用者は全て同一であって、臀部の撮影結果を忠実に示したものである。
【0048】
ここで、運動前の従来のショート丈のガードルの着用時の状態(
図5(b))とガードル1Aの着用時の状態(
図5(c))とを比較した場合、ガードルの着用状態に目立った差異はない。これに対し、従来のショート丈のガードルを着用時(
図5(d))には、運動によりガードルのすそ部分がずり上がり、ガードルのすそ部分から臀部の贅肉に食い込むとともに、贅肉がガードルのすそ部分からはみ出て、着崩れが生じていることが分かる。一方、ガードル1Aを着用時(
図5(e))には、運動によるずり上がりは生じていないことが分かる。
【0049】
図6(a)〜
図6(c)はそれぞれ、
図5(a)、
図5(d)、
図5(e)に対応して撮影された等高線を表す図である。臀部がヌードと同等の状態(
図6(a))と
図6(b)の従来のショート丈のガードルを着用した状態を比較すると、
図6(b)の従来のショート丈のガードルを着用した場合の方が運動後のヒップトップの位置が低くなり、ヒップのシルエットが崩れていることがわかる。また、
図6(a)〜
図6(c)を比較すると、ガードル1Aを着用時にヒップトップの位置が最も高くなり、運動によるずれが生じにくく、運動後でも美しいヒップを造形できることが分かる。
【0050】
図7(a)〜
図7(c)は、被験者の臀部を表す側面図であり、臀部の撮影結果を忠実に示したものである。具体的には、
図7(a)は、Tバックショーツを着用した臀部がヌードと同等の状態である。また、
図7(b)は、従来の股付き衣類であるロング丈のガードルを着用した状態である。ここで、ロング丈のガードルとは、股下からの丈が15〜20cm程度のガードルを意味する。さらに、
図7(c)は、実施形態に係るガードル1Aを着用した状態である。この
図7(b)及び
図7(c)は、同一の被験者がそれぞれの股付き衣類を着用後、
図5の場合と同一条件の運動を行った後に撮影された状態を示している。
【0051】
図7(b)に示すように、従来のロング丈のガードルを着用した状態では、運動によってガードルがずり上がり、ガードルの臀溝部分が被験者の臀部の贅肉に食い込んで着崩れが生じていることが分かる。また、
図7(c)に示すように、ガードル1Aを着用した状態では、運動によるずり上がり等は生じていないことが分かる。
【0052】
図7(d)〜
図7(f)はそれぞれ、
図7(a)〜
図7(c)に対応して撮影された等高線を表す図である。
図7(d)のヌードと同等の状態と
図7(e)の従来のロング丈のガードルを着用した状態を比較すると、ヒップトップの位置が略同一であり、従来のガードルでは、運動後にはガードルによるヒップアップの効果が得られていないことが分かる。また、
図7(d)〜
図7(f)を比較すると、ガードル1Aを着用時のヒップトップの位置が最も高くなり、ガードル1Aでは運動によるずれが生じにくく、運動後でも美しいヒップを造形できることが分かる。
【0053】
また、同時に14名の被験者に、実施形態に係るガードル1Aの他、4種類の従来のガードルを着用した際の比較に関するアンケートを行った。
【0054】
第1の比較対象である従来のショート丈(ガードルX1、
図5(b)で着用)との比較によると、「裾ずれを感じないガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は12名、ガードルX1を選択した被験者は1名、ガードル1AとガードルX1が同等と選択した被験者は1名であった。また、「ヒップのホールド感があるガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は12名、ガードルX1を選択した被験者は1名、ガードル1AとガードルX1が同等と選択した被験者は1名であった。さらに、「ヒップアップ感があるガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードルX1を選択した被験者は1名であった。また、「着装感がよく快適なガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は12名、ガードルX1を選択した被験者は1名、ガードル1AとガードルX1が同等と選択した被験者は1名であった。
【0055】
次に、第2の比較対象である従来のショート丈のガードル(ガードルX2)との比較によると、「裾ずれを感じないガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は11名、ガードルX2を選択した被験者は2名、ガードル1AとガードルX2が同等と選択した被験者は1名であった。また、「ヒップのホールド感があるガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードルX2を選択した被験者は1名であった。さらに、「ヒップアップ感があるガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は12名、ガードルX2を選択した被験者は2名であった。また、「着装感がよく快適なガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードルX2を選択した被験者は1名であった。
【0056】
続いて、第3の比較対象である従来のショート丈のガードル(ガードルX3)との比較によると、「裾ずれを感じないガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードルX3を選択した被験者は1名であった。また、「ヒップのホールド感があるガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は14名であった。さらに、「ヒップアップ感があるガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードル1AとガードルX3が同等と選択した被験者は1名であった。また、「着装感がよく快適なガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は13名、ガードルX3を選択した被験者は1名であった。
【0057】
また、第4の比較対象である従来のロング丈のガードル(ガードルX4、
図7(b)で着用)との比較によると、「臀溝のすっきり感があるガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は9名、ガードルX4を選択した被験者は1名、ガードル1AとガードルX4が同等と選択した被験者は4名であった。また、「ヒップのホールド感があるガードル」として、ガードル1Aを選択した被験者は5名、ガードルX4を選択した被験者は2名、ガードル1AとガードルX4が同等と選択した被験者は7名であった。さらに、「ヒップアップ感があるガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は8名、ガードル1AとガードルX1が同等と選択した被験者は6名であった。また、「着装感がよく快適なガードル」としてガードル1Aを選択した被験者は9名、ガードルX4を選択した被験者は3名、ガードル1AとガードルX1が同等と選択した被験者は2名であった。
【0058】
さらに、ガードル1Aに関し、「これほどズレないガードルははじめて」、「ショート丈のガードルなのにお尻を持ち上げてくれるのを実感できる」、「ヒップアップするのはロング丈のガードルだけだと思っていた」、「これほどロングのように臀溝がすっきりするショート丈のガードルはめったにない」等のコメントが被験者から寄せられた。
【0059】
[第1変形例]
図8を用いて、実施形態の第1変形例に係るガードル1Bの例について説明する。ガードル1Bを、
図1を用いて上述したガードル1Aと比較すると、ガードル1Bでは、ヒップ緊締部20が左右の大転子300から股下301の範囲に形成されることは勿論のこと、このガードル1Bのヒップ緊締部20の稜線が山並形状に形成されている。具体的には、ガードル1Bの上側緊締部21及び下側緊締部22を構成する各領域の形状は、上下方向に先細りになる曲線によって囲繞された形状である。換言すれば、上側緊締部21の稜線の曲線は、例えば、sinカーブに類似した波形状である。また、下側緊締部22の稜線の曲線は、上側緊締部21の曲線と略対称的な曲線であって、頂部(底部)は直線によって切断した形態である。
【0060】
したがって、第1変形例に係るガードル1Bの上側緊締部21も、仮想的に上下方向の全長を2等分したときに上側部分が下側部分よりも面積が小さくなるように形成されている。また、ガードル1Bの下側緊締部22も仮想的に上下方向の全長を2等分したときに下側部分が上側部分よりも面積が小さくなるように形成されている。
【0061】
このように、第1変形例に係るガードル1Bでも、ヒップ緊締部20の稜線がジグザグ形状に形成されているため、ヒップを美しく造形するとともに、ずり上がりを防止することができる。
【0062】
なお、
図8では補助緊締部13は表されていないが、第1変形例に係るガードル1Bでも、本体部10及びヒップ緊締部20と隣接して補助緊締部13を有していてもよい。
【0063】
[第2変形例]
図9を用いて、実施形態の第2変形例に係るガードル1Cの例について説明する。ガードル1Cを、
図1を用いて上述したガードル1Aと比較すると、ガードル1Cでは、ヒップ緊締部20が左右の大転子300から股下301の範囲に形成されることは勿論のこと、このガードル1Cのヒップ緊締部20では、上側緊締部21及び下側緊締部22において、基準ラインL上に配置されて隣り合う多角形との頂点Pは僅かに離れている。したがって、ガードル1Cの上側緊締部21及び下側緊締部22は、複数の独立するとともに、基準ラインLに沿って隣接した上側緊締部21の領域と下側緊締部22の領域との間における緩みによる悪影響のない程度に離れて配置される領域で形成されている。
【0064】
なお、ここでは、
図9に示すように、基準ラインLに沿って離れて配置される複数の領域で形成される稜線も全体的に見ればジグザグ形状である。また、
図9では、各領域は離れて配置されているが、隣り合う領域の点pを結ぶように形成されていてもよい。
【0065】
したがって、第2変形例に係るガードル1Cの上側緊締部21も、仮想的に上下方向の全長を2等分したときに上側部分が下側部分よりも面積が小さくなるように形成されている。また、ガードル1Cの下側緊締部22も仮想的に上下方向の全長を2等分したときに下側部分が上側部分よりも面積が小さくなるように形成されている。
【0066】
このように、第2変形例に係るガードル1Cでも、ヒップ緊締部20の稜線がジグザグ形状に形成されているため、ヒップを美しく造形するとともに、ずり上がりを防止することができる。
【0067】
なお、
図9では補助緊締部13は表されていないが、第2変形例に係るガードル1Cでも、本体部10及びヒップ緊締部20と隣接して補助緊締部13を有していてもよい。
【0068】
[第3変形例]
図10を用いて、実施形態の第3変形例に係るガードル1Dの例について説明する。ガードル1Dを、
図1を用いて上述したガードル1Aと比較すると、ガードル1Dでは、ヒップ緊締部20が左右の大転子300から股下の範囲に形成されることは勿論のこと、ガードル1Dの上端の脇部分から大転子300を通って股下までの範囲に至って形成されている。したがって、ガードル1Dのウエストサポート部12は、ウエスト部分で環状に形成されているのではなく、前面(前身頃)と背面(後身頃)とで分断されている。
【0069】
また、
図10に示す例では、ヒップ緊締部20はその稜線が上下方向にジグザグ形状に形成されているが、
図10に示すような複数の多角形で形成される形状に限定されず、先端部分が曲線で形成される形状であってもよい。
【0070】
第3変形例に係るガードル1Dの場合にも、ヒップ緊締部20の上側緊締部21により主にヒップの造形を実現し、下側緊締部22により主に運動時におけるずり上がりの防止を実現することができる。また、
図10に示すガードル1Dは、
図1に示すガードル1Aと比較してヒップ緊締部20の位置が着用者の腰付近にも存在するため、より広い範囲から着用者のヒップをサポートすることができる。したがって、
図1を用いて上述したガードルと比較して、サポートがしやすく、より美しくヒップを造形することができる。
【0071】
以上、実施形態及び変形例を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。