特許第6179159号(P6179159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179159
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】外観検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20170807BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01N21/88 Z
   G01B11/30 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-66957(P2013-66957)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190853(P2014-190853A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】當眞 博太
(72)【発明者】
【氏名】金田 基希
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525985(JP,A)
【文献】 特開2011−220755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に光を当てる照明装置と、前記対象を撮影するカメラと、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて前記対象の外観の良否を判定する判定部と、を備える外観検査システムであって、
前記照明装置は、光源と、前記光源からの光を透過させる方向及び量を調節する調節部と、を備え、
前記判定部は、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて、前記対象のうち反射光の強度が所定値よりも強い特定部分へ向かう光の量のみを少しずつ減少させるように前記調節部を制御することにより前記特定部分からの反射光の強度が前記所定値を大きく下回る可能性を低くしつつ、前記特定部分からの反射光の強度が前記所定値よりも弱くなるように前記調節部を制御した所定状態で前記カメラにより撮影させた前記対象の良品の画像をモデル画像として作成し、前記調節部を前記所定状態に制御して前記カメラにより撮影させた前記対象の画像と前記モデル画像とを比較して、前記対象の外観の良否を判定することを特徴とする外観検査システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記光源により発光を開始させてから停止させるまでに、前記特定部分からの反射光の強度が前記所定値よりも弱くなるように、前記調節部を制御する請求項1に記載の外観検査システム。
【請求項3】
前記判定部は、データを記憶する不揮発性の記憶部を有し、前記所定状態及び前記モデル画像を前記記憶部に記憶させる請求項1又は2に記載の外観検査システム。
【請求項4】
前記調節部は、液晶パネルにより構成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラにより対象を撮影した画像に基づいて、対象の外観検査を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシステムとして、検査対象となるワークをCCDカメラで撮影し、検査対象部分の輝度データを標準データと比較して外観の良否を判定するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−23274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明装置によりワークに光を当ててカメラで撮影する場合に、ワークからの反射光が強くなり過ぎることがある。その場合、特に反射光の強い部分では、外観を正確に検査することができなくなる。このため、作業者は、ワークからの反射光が適切となる撮影位置を探しながら、ワークの撮影を何度も繰り返し行っている。したがって、撮影位置の調整等に手間がかかり、検査の効率が低下することとなる。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、検査の効率を向上させることのできる外観検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
第1の手段は、対象に光を当てる照明装置と、前記対象を撮影するカメラと、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて前記対象の外観の良否を判定する判定部と、を備える外観検査システムであって、前記照明装置は、光源と、前記光源からの光を透過させる方向及び量を調節する調節部と、を備え、前記判定部は、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて、前記対象のうち反射光の強度が所定値よりも強い特定部分へ向かう光の量を減少させるように、前記調節部を制御することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、照明装置により対象に光が当てられ、カメラにより対象が撮影される。そして、判定部によって、カメラにより撮影された対象の画像に基づいて、対象の外観の良否が判定される。
【0009】
ここで、照明装置は、光源と、光源からの光を透過させる方向及び量を調節する調節部と、を備えている。そして、判定部によって、カメラにより撮影された対象の画像に基づいて、対象のうち反射光の強度が所定値よりも強い特定部分へ向かう光の量を減少させるように、調節部が制御される。このため、特定部分からの反射光が弱くなり、特定部分の検査精度を向上させることができる。その結果、作業者が撮影位置の調整等を行う必要がなくなり、検査の効率を向上させることができる。
【0010】
第2の手段では、前記判定部は、前記カメラにより前記対象を撮影させ、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて、前記特定部分へ向かう光の量を所定量だけ減少させるように前記調節部を制御することを、繰り返し実行する。
【0011】
上記構成によれば、カメラにより対象を撮影し、撮影された画像に基づき特定部へ向かう光の量を所定量だけ減少させることが繰り返される。したがって、特定部分へ向かう光の量を徐々に減少させることができ、特定部へ向かう光の量を適切に調節し易くなる。
【0012】
第3の手段では、前記判定部は、前記光源により発光を開始させてから停止させるまでに、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるように、前記調節部を制御する。
【0013】
上記構成によれば、光源により発光が開始されてから停止されるまでに、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるように、調節部が制御される。このため、作業者の意図とは異なる複数回の発光を避けることができ、作業者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0014】
第4の手段では、前記判定部は、前記カメラにより前記対象を撮影させ、前記カメラにより撮影される前記対象の画像に基づいて、前記特定部分へ向かう光の量を所定量だけ減少させるように前記調節部を制御することを、前記光源により発光を開始させてから停止させるまでに繰り返し実行して、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるようにする。
【0015】
上記構成によれば、第2の手段及び第3の手段の双方の構成を備えるため、光源により発光が開始されてから停止されるまでに、カメラにより対象を撮影し、撮影された画像に基づき特定部へ向かう光の量を所定量だけ減少させることが繰り返される。そして、光源により発光が開始されてから停止されるまでに、特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くされる。したがって、作業者が違和感を覚えることを抑制しつつ、特定部へ向かう光の量を適切に調節し易くなる。
【0016】
第5の手段では、前記判定部は、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるように前記調節部を制御した所定状態で前記カメラにより撮影させた前記対象の良品の画像をモデル画像とし、前記調節部を前記所定状態に制御して前記カメラにより撮影させた前記対象の画像と前記モデル画像とを比較して、前記対象の外観の良否を判定する。
【0017】
同一形状の複数の対象を外観検査する場合には、複数の対象で反射光の強度が所定値よりも強い特定部分が略一致することとなる。
【0018】
この点、上記構成によれば、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるように調節部を制御した所定状態において、カメラにより撮影された対象の良品の画像がモデル画像とされる。そして、調節部を前記所定状態に制御してカメラにより撮影させた対象の画像とモデル画像とが比較されて、対象の外観の良否が判定される。このため、同一形状の複数の対象において調節部を共通の所定状態とし、所定状態でカメラにより撮影された対象の良品の画像を共通のモデル画像とすることができる。したがって、調節部の制御を毎回行う必要がなくなり、検査の効率を更に向上させることができる。
【0019】
第6の手段では、前記判定部は、データを記憶する不揮発性の記憶部を有し、前記所定状態及び前記モデル画像を前記記憶部に記憶させる。
【0020】
上記構成によれば、前記特定部分からの反射光の強度が判定値よりも弱くなるように調節部を制御した所定状態、及びその所定状態で対象の良品を撮影したモデル画像が、不揮発性の記憶部に記憶される。したがって、以前に検査した対象と同一形状の対象を検査する場合に、記憶部から所定状態及びモデル画像を読み出して利用することができる。
【0021】
第7の手段では、前記調節部は、液晶パネルにより構成されている。
【0022】
上記構成によれば、調節部は液晶パネルにより構成されているため、容易且つ正確に光の透過方向及び透過量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】外観検査システムの概要を示す模式図。
図2】液晶マスクパターン及びモデル画像作成の処理手順を示すフローチャート。
図3】液晶マスクパターン、グレースケール画像、及び階調を示す図。
図4】ワークの良否判定の処理手順を示すフローチャート。
図5】階調を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、ワークの外観検査システムを具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の外観検査システムは、例えば機械組立工場の組立ラインに設置される。
【0025】
図1は、外観検査システム10の概要を示す模式図である。この外観検査システム10は、ストロボ20、カメラ30、及び制御装置40を備えている。
【0026】
ストロボ20(照明装置)は、カメラ30に取り付けられており、本体21、ランプ22、液晶パネル23、レンズ部24、カバー25等を備えている。本体21は、中空の直方体状に形成されている。本体21の内部には、ランプ22、液晶パネル23、及びレンズ部24が収容されている。本体21の正面には、ランプ22の光を透過させる透明のカバー25が取り付けられている。
【0027】
ランプ22(光源)は、周知の発光素子により構成されており、ワークW(対象)に当てる光を発する。ランプ22の点灯及び消灯は、制御装置40によって制御される。液晶パネル23(調節部)は、板状に形成されており、偏光板や配向膜、液晶層等を備えている。液晶パネル23は、液晶層の状態を制御することにより、ランプ22からの光を透過させる方向(透過位置)、及び透過する光の量(透過率)を調節する。液晶パネル23による光の調節状態は、制御装置40によって制御される。レンズ部24は、液晶パネル23を透過した光を拡散させて、カバー25の方向へ照射させる。レンズ部24の焦点は、ワークWの所定位置に光が照射されるように自動調節される。
【0028】
カメラ30は、カラー撮影可能なCCDカメラ等であり、ワークWを撮影して画像を取得する。カメラ30は、図示しないロボットのアームのハンド部(先端部)に取り付けられている。ロボットのアームは、その各関節の駆動により、位置及び方向が変更される。そして、アームの位置及び方向が変更されることにより、カメラ30の位置及び方向が変更される。これにより、ベルトコンベア等により検査位置に搬送されるワークWを、カメラ30により任意の視点から撮影することができる。カメラ30の撮影動作は、制御装置40によって制御される。
【0029】
制御装置40(判定部)は、CPU、ROM、RAM、記憶部40a、駆動回路、位置検出回路等を備えている。ROMは、ロボットのシステムプログラムや動作プログラム等を記憶している。RAMは、これらのプログラムを実行する際にパラメータの値等を一時的に記憶する。記憶部40aは、データを記憶する不揮発性のメモリである。位置検出回路は、アームの各関節に設けられたエンコーダの検出信号に基づいて、各関節に設けられたモータの回転角度を検出する。CPUは、予め設定された動作プログラムを実行することにより、位置検出回路から入力される位置情報に基づいて、アームの各関節の回転角度を目標回転角度にフィードバック制御する。
【0030】
本実施形態では、制御装置40は、ワークWの外観検査において、アームの目標の位置及び方向として、検査位置に搬送されるワークWをカメラ30により撮像する際のアームの位置及び方向(撮影位置)を設定する。アームが撮影位置まで駆動されることにより、カメラ30の視野内にワークWが検査に適した状態で捉えられる。その状態において、カメラ30によりワークWを撮影することにより、ワークWの画像が取得される。さらに、制御装置40は、ストロボ20及びカメラ30の動作を制御して、以下に示すようなマスクパターン及びモデル画像の作成を行う。
【0031】
図2は、液晶マスクパターン及びモデル画像作成の処理手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、外観検査開始前のロボットのティーチング(初期設定)時に、制御装置40によって実行される。この一連の処理では、作業者が予め良品と判定したワークWを使用する。
【0032】
まず、液晶パネル23により形成されている液晶マスクパターンを消去させる(S11)。詳しくは、液晶パネル23によりマスクパターンを作成するのに先立って、ランプ22からの光が液晶パネル23により制限されないように、液晶パネル23の状態を制御する。
【0033】
続いて、ストロボ20のランプ22を点灯させて、カメラ30によりワークWをカラー撮影させる(S12)。そして、撮影されたワークWのカラー画像をカメラ30から入力して、そのカラー画像をグレースケール画像に変換する(S13)。詳しくは、単純平均法や、中間値法、Gチャンネル法等の周知の方法により、カラー画像をグレースケール画像に変換する。ここで、ストロボ20のランプ22を、続くS13〜S21の処理が終了するまで継続して点灯させる。
【0034】
続いて、グレースケール画像の画素を指定する画素番号iを初期値0に設定する(S14)。詳しくは、画像の画素は0〜n番まであり、最初の画素の番号が0番である。そして、現在の画素番号iがnよりも小さいか否か判定する(S15)。
【0035】
上記判定において、現在の画素番号iがnよりも小さいと判定した場合(S15:YES)、画素番号iの階調T(i)が閾値R1よりも大きいか否か判定する(S16)。詳しくは、階調Tは、0(黒)〜255(白)までの値をとる。閾値R1(所定値、判定値)は、255から検査時の許容誤差Mを引いた値に設定されている。
【0036】
上記判定において、画素番号iの階調T(i)が閾値R1よりも大きいと判定した場合(S16:YES)、現在の画素番号iをRAMの所定領域に記憶させる(S17)。そして、画素番号iに1を加算して、それを新たな画素番号iとする(S18)。その後、再度S15の処理から実行する。一方、上記判定において、画素番号iの階調T(i)が閾値R1よりも大きくないと判定した場合(S16:NO)、S18の処理を実行する。
【0037】
また、S15の判定において、現在の画素番号iがnよりも小さくないと判定した場合(S15:NO)、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがあるか否か判定する(S19)。すなわち、階調T(i)が閾値R1よりも大きくなった画素番号iが存在しているか否か判定する。
【0038】
上記判定において、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがあると判定した場合(S19:YES)、液晶パネル23において画素番号iに対応する箇所の光の透過量を所定量だけ減少させる(S20)。詳しくは、画素番号iとして撮影される部分(特定部分)へ向かう光の量を10%減少させるように、液晶パネル23の状態を変更する。そして、その液晶パネル23の状態を液晶マスクパターンとして、RAMの所定領域に記憶させる(S21)。なお、S20の処理では、液晶パネル23において画素番号iに対応する箇所の状態のみを変更し、その他の箇所についてはRAMに記憶されている状態を維持する。その後、変更された液晶パネル23を液晶マスクパターンとして、再度S12の処理から実行する。
【0039】
一方、上記判定において、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがないと判定した場合(S19:NO)、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iを全て消去する(S22)。また、ストロボ20のランプ22を消灯させる。続いて、RAMの所定領域に記憶されている液晶マスクパターンを、不揮発性の記憶部40aに記憶させる(S23)。詳しくは、S20の処理により繰り返し変更された後、S21の処理によりRAMに記憶された最終的な液晶マスクパターンを、不揮発性の記憶部40aに記憶させる。
【0040】
続いて、S12の処理が最後に実行された際のグレースケール画像を、不揮発性の記憶部40aに記憶させる(S24)。すなわち、最終的な液晶マスクパターンを用いてワークWを撮影して変換したグレースケール画像を、モデル画像として不揮発性の記憶部40aに記憶させる。そして、この一連の処理を終了する(END)。
【0041】
次に、上述したマスクパターン及びモデル画像作成の具体的態様について説明する。図3は、液晶マスクパターン、グレースケール画像、及び階調を示す図である。ここでは、作業者が予め良品と判定したワークWが使用されている。
【0042】
同図に示すように、1回目の撮影では、液晶パネル23により形成されている液晶マスクパターンが消去された状態、すなわち液晶パネル23により透過光を制限しない状態で、ワークWが撮影されている。撮影されたカラー画像から変換されたグレースケール画像では、中央付近からの反射光が強くなっている。このため、直線C1上の画素の階調は、領域A1内で最大値である255階調となっている。したがって、ワークWの領域A1内に傷等あったとしても、正確に検査することができない。
【0043】
そこで、2回目の撮影では、階調T(i)が閾値R1よりも大きいと判定された画素番号iに対応する箇所の光の透過量を10%減少させるように、液晶パネル23の状態が変更されている。このため、この液晶マスクパターンを用いたグレースケール画像では、1回目の撮影によるグレースケール画像よりも、中央付近からの反射光が弱くなっている。そして、直線C2上の画素の階調は、領域A2内で255階調よりも若干小さくなっている。このようにして、階調T(i)が閾値R1よりも大きいと判定される画素番号iがなくなるまで、画素番号iに対応する箇所の光の透過量が、液晶パネル23により毎回10%ずつ(段階的に)減少されている。
【0044】
このとき、画素番号iに対応する箇所の光の透過量を一度に大きく減少させると、閾値R1の周辺で階調のグラフが階段状になり易い。その場合、階調は閾値R1を大きく下回る可能性があり、閾値R1よりも階調を小さくできるものの、ワークWの外観の評価を正しくできなくなる可能性がある。これに対して、光透過量を段階的に(少しずつ)減少させることにより、階調が閾値R1を大きく下回る可能性を低くすることができ、階調の調整後におけるワークWの外観の評価を概ね正しく行うことができる。
【0045】
そして、n回目の撮影では、液晶マスクパターンは、中央付近で最も光の透過量を減少させ(透過率を最も低下させ)、周辺に広がるにつれて透過量を減少させる度合いを小さくしている(透過率を増加させている)。この液晶マスクパターンを用いたグレースケール画像では、中央付近において反射光が略均等に弱くなっている。そして、直線Cn上の画素の階調は、領域An内でも閾値R1よりも若干小さくなっている。その結果、グレースケール画像において、階調T(i)が閾値R1よりも大きいと判定された画素番号iは存在しなくなっている。
【0046】
したがって、この時の液晶パネル23の状態(所定状態)を、最終的な液晶マスクパターンとして不揮発性の記憶部40aに記憶させている。また、この時のグレースケール画像を、モデル画像として不揮発性の記憶部40aに記憶させている。
【0047】
図4は、ワークWの良否判定の処理手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、外観検査中においてロボットの連続動作時に、制御装置40によって実行される。この一連の処理では、マスクパターン及びモデル画像作成で使用したワークWと同一形状のワークWの外観を検査する。なお、図2と同一の処理については、同一のステップ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0048】
まず、不揮発性の記憶部40aに記憶されている液晶マスクパターン及びモデル画像を読み込む(S31,S32)。そして、読み込んだ液晶マスクパターンとなるように、液晶パネル23の状態を制御する(S33)。
【0049】
続いて、ストロボ20のランプ22を点灯させて、カメラ30によりワークWをカラー撮影させる(S12)。そして、撮影されたワークWのカラー画像をカメラ30から入力して、そのカラー画像をグレースケール画像に変換する(S13)。
【0050】
続いて、グレースケール画像の画素を指定する画素番号iを初期値0に設定する(S14)。そして、現在の画素番号iがnよりも小さいか否か判定する(S15)。
【0051】
上記判定において、現在の画素番号iがnよりも小さいと判定した場合(S15:YES)、上記グレースケール画像における画素番号iの階調T(i)とモデル画像における画素番号iの階調Tm(i)との偏差が、閾値R2よりも大きいか否か判定する(S36)。閾値R2は、検査時の許容誤差Mに設定されている。
【0052】
上記判定において、階調T(i)と階調Tm(i)との偏差が、閾値R2よりも大きいと判定した場合(S36:YES)、現在の画素番号iをRAMの所定領域に記憶させる(S17)。そして、画素番号iに1を加算して、それを新たな画素番号iとする(S18)。その後、再度S15の処理から実行する。一方、上記判定において、階調T(i)と階調Tm(i)との偏差が、閾値R2よりも大きくないと判定した場合(S36:NO)、S18の処理を実行する。
【0053】
また、S15の判定において、現在の画素番号iがnよりも小さくないと判定した場合(S15:NO)、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがあるか否か判定する(S19)。すなわち、階調T(i)と階調Tm(i)との偏差が閾値R2よりも大きくなった画素番号iが存在しているか否か判定する。
【0054】
上記判定において、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがあると判定した場合(S19:YES)、現在検査しているワークWが不良品であると判定する(S37)。一方、上記判定において、RAMの所定領域に記憶されている画素番号iがないと判定した場合(S19:NO)、現在検査しているワークWが良品であると判定する(S38)。そして、この一連の処理を終了する(END)。なお、同一形状の複数のワークWについて続けて外観検査を行う場合には、再度S12の処理から実行する。
【0055】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0056】
・ストロボ20は、ランプ22と、ランプ22からの光を透過させる方向及び量を調節する液晶パネル23と、を備えている。そして、制御装置40によって、カメラ30により撮影されたワークWの画像に基づいて、ワークWのうち反射光の強度が閾値R1よりも強い特定部分へ向かう光の量を減少させるように、液晶パネル23が制御される。このため、特定部分からの反射光が弱くなり、特定部分の検査精度を向上させることができる。その結果、作業者が撮影位置の調整等を行う必要がなくなり、検査の効率を向上させることができる。
【0057】
・カメラ30によりワークWを撮影し、撮影された画像に基づき上記特定部へ向かう光の量を10%だけ減少させることが繰り返される。したがって、特定部分へ向かう光の量を徐々に減少させることができ、特定部へ向かう光の量を適切に調節し易くなる。
【0058】
・ランプ22により発光が開始されてから停止されるまでに、上記特定部分からの反射光の強度が閾値R1よりも弱くなるように、液晶パネル23が制御される。このため、作業者の意図とは異なる複数回の発光を避けることができ、作業者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0059】
・上記特定部分からの反射光の強度が閾値R1よりも弱くなるように液晶パネル23を制御した所定状態(液晶マスクパターン)において、カメラ30により撮影されたワークWの良品の画像がモデル画像とされる。そして、液晶パネル23を所定状態に制御してカメラ30により撮影させたワークWの画像とモデル画像とが比較されて、ワークWの外観の良否が判定される。このため、同一形状の複数のワークWにおいて液晶パネル23を共通の所定状態とし、所定状態でカメラ30により撮影されたワークWの良品の画像を共通のモデル画像とすることができる。したがって、液晶パネル23の制御を毎回行う必要がなくなり、検査の効率を更に向上させることができる。
【0060】
・上記特定部分からの反射光の強度が閾値R1よりも弱くなるように液晶パネル23を制御した所定状態(液晶マスクパターン)、及びその所定状態でワークWの良品を撮影したモデル画像が、不揮発性の記憶部40aに記憶される。したがって、以前に検査したワークWと同一形状のワークWを検査する場合に、記憶部40aから液晶マスクパターン及びモデル画像を読み出して利用することができる。
【0061】
・ランプ22からの光を透過させる方向及び量を調節する調節部として、液晶パネル23が採用されている。このため、マスクパターンを容易且つ正確に形成することができる。
【0062】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0063】
・上記実施形態では、液晶パネル23の所定状態(液晶マスクパターン)及びモデル画像を不揮発性の記憶部40aに記憶させたが、液晶マスクパターン及びモデル画像の作成に引き続いてワークWの外観検査を行う場合には、液晶マスクパターン及びモデル画像をRAM(揮発性メモリ)に記憶させてもよい。
【0064】
・形状の異なるワークWについて外観検査を行う場合には、その都度図2のS11〜S24の処理を実行すればよい。
【0065】
・上記実施形態では、ランプ22により発光が開始されてから停止されるまでに、上記特定部分からの反射光の強度が閾値R1よりも弱くなるように液晶パネル23を制御したが、液晶パネル23の制御を完了するまでにランプ22を複数回発光させてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、カメラ30によりワークWを撮影し、撮影された画像に基づき上記特定部へ向かう光の量を10%だけ減少させることを繰り返したが、光の量を一度に10%以上減少させることもできる。その結果、一度の調節により、上記特定部分からの反射光の強度が閾値R1よりも弱くなってもよい。
【0067】
また、図5に示すように、3回の撮影で液晶マスクパターンによる光の透過量の調節を終了することもできる。まず、1回目の撮影では、上記実施形態と同様に、液晶パネル23により形成されている液晶マスクパターンが消去された状態、すなわち液晶パネル23により透過光を制限しない状態で、ワークWが撮影されている。なお、出力される画素の階調は、最大値の255階調よりも大きくはならないが、同図に破線で示すように実際の階調は中央付近ほど大きくなっていると予想される。
【0068】
そこで、2回目の撮影では、全体の光の透過量を例えば70%(所定量)減少させるように、液晶パネル23の状態が変更されている。このため、画素の階調は、全体に小さくなっており、最大値でも255階調よりも小さくなっている。ここで、二点鎖線で示すように、2回目の撮影で得られた階調に基づいて、全体の光の透過量を70%減少させる前の実際の階調を推定する。
【0069】
そして、3回目の撮影では、液晶マスクパターンは、上記のように推定された階調に基づいて、各画素の階調が閾値R1よりも小さくなるように、各箇所の光の透過量を調節している。その結果、上記実施形態と同様に、中央付近で最も光の透過量を減少させ(透過率を最も低下させ)、周辺に広がるにつれて透過量を減少させる度合いを小さくしている(透過率を増加させている)。こうした工程によれば、基本的に3回の撮影で液晶マスクパターンの調整を終了することができ、工程数を減少させつつ適切に液晶マスクパターンを調節することができる。
【0070】
・カメラ30として、白黒画像を撮影するカメラを採用することもできる。その場合は、グレースケール画像への変換が不要であり、白黒画像における画素番号iの輝度とモデル画像における画素番号iの輝度とを比較して良否判定すればよい。
【0071】
・液晶パネル23により透過量を調節することのできる光を発する光源であれば、ストロボ20のランプ22として任意の光源を採用することができる。
【0072】
・上記実施形態では、ランプ22からの光を透過させる方向及び量を調節する調節部として、液晶パネル23を採用したが、温度により光学特性が変化するサーモクロミックパネル等、他の方式の調節部を採用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
10…外観検査システム、20…ストロボ(照明装置)、22…ランプ(光源)、23…液晶パネル(調節部)、30…カメラ、40…制御装置(判定部)、40a…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5