(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179167
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
H02M3/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-85807(P2013-85807)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-209814(P2014-209814A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】平尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】真島 隆司
(72)【発明者】
【氏名】今久保 知史
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−005265(JP,A)
【文献】
特開平09−069768(JP,A)
【文献】
特開2007−201690(JP,A)
【文献】
特開2009−100602(JP,A)
【文献】
特開平09−308244(JP,A)
【文献】
特開平09−215340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
H02M1/00−3/44、
7/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の出力を電力変換回路で電力変換して外部に出力する電源装置であって、
前記電池と前記電力変換回路との間に設けられたインダクタに、
当該インダクタの端子間電圧を制限する電圧制限回路が並列接続され、
前記電圧制限回路は抵抗器であり、
前記抵抗器の一端と前記電池の出力端とを択一的に選択して前記インダクタの一端に接続する第1の選択スイッチが設けられることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記抵抗器には開閉スイッチが直列接続されることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記抵抗器の他端と前記電力変換回路の入力端とを択一的に選択して前記インダクタの他端に接続する第2の選択スイッチが設けられることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項4】
電池の出力を電力変換回路で電力変換して外部に出力する電源装置であって、
前記電池と前記電力変換回路との間に設けられたインダクタに、
当該インダクタの端子間電圧を制限する電圧制限回路が並列接続され、
前記電圧制限回路は、アノード同士が接続された一対のダイオードであり、
前記一対のダイオードの一端と前記電池の出力端とを択一的に選択して前記インダクタの一端に接続する第1の選択スイッチが設けられることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
前記一対のダイオードは定電圧ダイオードであることを特徴とする請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
電池の出力を電力変換回路で電力変換して外部に出力する電源装置であって、
前記電池と前記電力変換回路との間に設けられたインダクタに、
当該インダクタの端子間電圧を制限する電圧制限回路が並列接続され、
前記電圧制限回路は、開閉スイッチであり、
前記開閉スイッチの一端と前記電池の出力端とを択一的に選択して前記インダクタの一端に接続する第1の選択スイッチが設けられることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の出力を電力変換回路で電力変換して外部に出力する電源装置においては、電池と電力変換回路との間にインダクタ(例えばチョークコイル)を挿入することにより、電池電圧の変動に対して電力変換回路(例えばコンバータ)の入力電圧(直流電圧)を安定化させることが行われている。例えば下記特許文献1には、電池から出力される直流電圧をインバータで交流電圧に変換して出力する電源装置において、電池とインバータとの間にインダクタを挿入すること(
図1参照)、また電池から出力される直流電圧をDC-DCコンバータで変圧して出力する電源装置において電池とDC-DCコンバータとの間にインダクタを挿入すること(
図3参照)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−037859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばメンテナンスの必要から電池を電源装置から切り離す必要が生じた場合、インダクタの一端が電池に接続された状態から解放状態になる際にインダクタに蓄積されたエネルギ(電磁気的なエネルギ)の関係でインダクタの両端に高電圧が発生する。そして、この高電圧によってインダクタが破壊する場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、インダクタの切り離し時における損傷を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、電池の出力を電力変換回路で電力変換して外部に出力する電源装置であって、前記電池と前記電力変換回路との間に設けられたインダクタに、当該インダクタの端子間電圧を制限する電圧制限回路が並列接続される、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記電圧制限回路は抵抗器である、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記抵抗器の一端と前記電池の出力端とを択一的に選択して前記インダクタの一端に接続する第1の選択スイッチが設けられる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第2または第3の解決手段において、前記抵抗器には開閉スイッチが直列接続される、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記抵抗器の他端と前記電力変換回路の入力端とを択一的に選択して前記インダクタの他端に接続する第2の選択スイッチが設けられる、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、第6の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記電圧制限回路は、アノード同士が接続された一対のダイオードである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、第7の解決手段として、上記第6の解決手段において、前記一対のダイオードは定電圧ダイオードである、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、第8の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記電圧制限回路は開閉スイッチである、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池と電力変換回路との間に設けられたインダクタに、当該インダクタの端子間電圧を制限する電圧制限回路が並列接続されるので、インダクタの切り離し時における損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る直流電源装置の第1の回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る直流電源装置の第2の回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る直流電源装置の第3の回路図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る直流電源装置の第4の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態は、直流電力を外部の負荷に供給する直流電源装置に関するものであり、
図1に示すように、畜電池E、開閉スイッチS1〜S3、チョークコイルL(インダクタ)、抵抗器R、コンデンサC及びDC−DCコンバータHによって構成されている。
【0017】
畜電池Eは、図示するように複数のセル電池が直接接続されたものであり、正極端子と負極端子とを備えている。このような畜電池Eは、直流電力を出力する電池、例えばリチウムイオン電池である。開閉スイッチS1は、一端が畜電池Eの正極端子に接続され、また他端がチョークコイルLの一端及び抵抗器の一端に接続されている。チョークコイルLは、一端が上記開閉スイッチS1の他端に接続され、また他端が開閉スイッチS2の一端及び開閉スイッチS3の一端並びにDC−DCコンバータHの一方の入力端に接続されている。
【0018】
抵抗器Rは、一端が上記開閉スイッチS1の他端に接続され、また他端が上記開閉スイッチS2の他端に接続されている。開閉スイッチS2は、抵抗器Rに直列接続されており、一端が上記チョークコイルLの他端に接続され、また他端が上記抵抗器Rの他端に接続されている。コンデンサCは、一端が上記開閉スイッチS3の他端に接続され、また他端が上記畜電池Eの負極端子及び上記DC−DCコンバータHの他方の入力端に接続されている。開閉スイッチS3は、一端が上記開閉スイッチS2の一端及びチョークコイルLの他端並びにDC−DCコンバータHの一方の入力端に接続されている。なお、上記抵抗器R及び開閉スイッチS2は、本実施形態における電圧制限回路を構成している。
【0019】
DC−DCコンバータHは、一方の入力端が、上記開閉スイッチS2の一端及びチョークコイルLの他端並びに開閉スイッチS3の一端に接続され、また他方の入力端が上記コンデンサCの他端及び上記畜電池Eの負極端子に接続されている。また、このDC−DCコンバータHは、一方の出力端と他方の出力端との間に負荷が接続されている。このようなDC−DCコンバータHは、一対の入力端に入力された所定電圧の直流電力を異なる電圧の直流電力に電力変換して一対の出力端から出力する電力変換回路である。
【0020】
次に、このように構成された直流電源装置の動作について詳しく説明する。
【0021】
本直流電源装置の通常動作状態では、開閉スイッチS1,S3が閉状態かつ開閉スイッチS2が開状態に設定される。すなわち、通常動作状態では、チョークコイルL及びコンデンサCだけが所望の回路素子機能を発揮するように畜電池EとDC−DCコンバータHとの間に介装され、抵抗器Rは所望の回路素子機能を発揮する状態にはない。
【0022】
また、通常動作状態では、チョークコイルL及びコンデンサCは、LCフィルタ(ローパスフィルタ)を構成しており、畜電池Eから入力される高周波成分を除去し、低周波成分のみをDC−DCコンバータHに出力する機能を奏する。このようなチョークコイルL及びコンデンサCによるフィルタ機能により、畜電池EからDC−DCコンバータHに入力される直流電力の電圧変動が抑制されるので、この結果として、DC−DCコンバータHから負荷に供給される直流電力の電圧変動も抑制される。
【0023】
このような直流電源装置では、メンテナンス等のために畜電池Eを切り離す必要がある関係で2つの開閉スイッチS1,S3が設けられている。すなわち、畜電池Eを切り離す場合には、2つの開閉スイッチS1,S3を閉状態から開状態に切り替えるが、チョークコイルLの一端は、開閉スイッチS1を閉状態から開状態となることにより、内部インピーダンスが比較的小さい畜電池Eに接続された状態から解放状態に移行する。そして、このように接続状態が変化する際に、チョークコイルLに蓄積されたエネルギ(電磁気的なエネルギ)に起因してチョークコイルLの一端と他端との間の電圧(端子間電圧)が極端に上昇してチョークコイルLを破壊あるいは劣化させる場合がある。
【0024】
しかしながら、本直流電源装置では、2つの開閉スイッチS1,S3を閉状態から開状態に切り替えると同時に、もう1つの開閉スイッチS2を開状態から閉状態に切り替える。すなわち、チョークコイルLの一端を畜電池Eに接続された状態から解放状態に移行させると同時にチョークコイルLに抵抗器Rを並列接続させ、この抵抗器RにチョークコイルLに蓄積されたエネルギ(電磁気的なエネルギ)を消費させることによって、チョークコイルLの端子間電圧の上昇を抑制する。このような本直流電源装置では、チョークコイルLの劣化や破壊を効果的に防止することができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0026】
(1)上記実施形態では、開閉スイッチS1,S2を備える構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。
図1(b)に示すように、開閉スイッチS1,S2に代えて選択スイッチS4を備える構成を採用してもよい。すなわち、この選択スイッチS4は、抵抗器Rの一端と畜電池Eの正極端子とを択一的に選択してチョークコイルLの一端に接続するスイッチ(第1の選択スイッチ)である。このような選択スイッチS4を設けることにより、チョークコイルLの一端と畜電池Eの正極端子との接続を切り離すと同時に、チョークコイルLの両端に抵抗器Rを並列接続することができる。
【0027】
(2)上記実施形態では、開閉スイッチS1を備える構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。
図2(a)に示すように、開閉スイッチS1に代えて選択スイッチS4を備える構成を採用してもよい。このような選択スイッチS4を設けることにより、チョークコイルLの一端と畜電池Eの正極端子との接続を切り離すと同時に、チョークコイルLの両端に抵抗器Rを並列接続することができる。
【0028】
(3)上記実施形態では、開閉スイッチS1,S2を備える構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。
図2(b)に示すように、開閉スイッチS1に代えて選択スイッチS4を備え、また開閉スイッチS2に代えて選択スイッチS5を備える構成を採用してもよい。上記選択スイッチS5は、抵抗器Rの他端とDC−DCコンバータHの一方の入力端とを択一的に選択してチョークコイルLの他端に接続するスイッチ(第2の選択スイッチ)である。
【0029】
この選択スイッチS5は、通常動作状態では、DC−DCコンバータHの一方の入力端を選択するが、チョークコイルLの一端と畜電池Eの正極端子との接続を切り離す場合には、開閉スイッチS2と同時に動作すると共にDC−DCコンバータHの一方の入力端に代えて抵抗器Rの他端を選択する。このような選択スイッチS4,S5を設けることにより、チョークコイルLの一端と畜電池Eの正極端子との接続を切り離すと同時に、チョークコイルLの両端に抵抗器Rを並列接続することができる。
【0030】
(4)上記実施形態では、開閉スイッチS2を備える構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。
図3(a)に示すように、開閉スイッチS2を削除してもよい。この場合には、抵抗器Rが常にチョークコイルLに並列接続された状態となるが、チョークコイルLの端子間電圧の上昇を抑制することができる。
【0031】
(5)上記実施形態では、抵抗器RをチョークコイルLに並列接続させる構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。
図3(b)に示すように、抵抗器Rに代えてアノード同士が接続された一対の定電圧ダイオードD1,D2を用いてもよい。このような一対の定電圧ダイオードD1,D2によれば、チョークコイルLの端子間電圧を定電圧ダイオードD1のクランプ電圧V1と定電圧ダイオードD2のクランプ電圧V2との和電圧(V1+V2)以下に強制的に制限されるので、チョークコイルLの劣化や破壊を効果的に防止することができる。なお、定電圧ダイオードD1,D2に代えて一般的なダイオードを用いてもよい。
【0032】
(6)さらに、
図4に示すように、抵抗器Rを削除して開閉スイッチS2のみをチョークコイルLに並列接続させてもよい。すなわち、この場合には、チョークコイルLの一端と畜電池Eの正極端子との接続を切り離すと同時にチョークコイルLの両端を短絡させる。
【0033】
(7)最後に、上記実施形態では、DC−DCコンバータHを電力変換回路として採用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。DC−DCコンバータHに代えてインバータを採用してもよい。すなわち、本願発明は直流電力を負荷に供給する直流電源装置に限定されるものではなく、交流電力を負荷に供給する交流電源装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
E 畜電池
S1〜S3 開閉スイッチ
L チョークコイル(インダクタ)
R 抵抗器
C コンデンサ
H DC−DCコンバータ(電力変換回路)
S4,S5 選択スイッチ