特許第6179186号(P6179186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179186
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】空気式防舷材
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   E02B3/26 K
   E02B3/26 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-104184(P2013-104184)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-224400(P2014-224400A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】榊原 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】和泉 南
(72)【発明者】
【氏名】山田 周
(72)【発明者】
【氏名】家本 晃宏
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−001928(JP,A)
【文献】 特開平04−038314(JP,A)
【文献】 特開2009−235782(JP,A)
【文献】 特開平11−152728(JP,A)
【文献】 実開昭60−070627(JP,U)
【文献】 米国特許第04176858(US,A)
【文献】 米国特許第03854706(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板と取付板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材において、一方の取付板の背面側に、内部空間を有する剛体のケーシングが突設され、前記可撓性中空体の内部空間と前記ケーシングの内部空間とを連通させるオリフィス部と、前記可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して前記可撓性中空体の内部空間とケーシングの内部空間とを連通させる安全弁とを備えたことを特徴とする空気式防舷材。
【請求項2】
前記可撓性中空体の最大圧縮率を80%〜90%に設定した請求項1に記載の空気式防舷材。
【請求項3】
前記安全弁が複数設けられた請求項1または2に記載の空気式防舷材。
【請求項4】
前記複数設けられた安全弁のうち、少なくとも1つの安全弁が異なる所定圧力で開弁する設定にした請求項3に記載の空気式防舷材。
【請求項5】
前記複数設けられた安全弁のすべてが同じ所定圧力で開弁する設定にした請求項3に記載の空気式防舷材。
【請求項6】
前記安全弁が、開弁する所定圧力を変えることができる圧力可変構造である請求項1〜5のいずれかに記載の空気式防舷材。
【請求項7】
前記可撓性中空体の両端のフランジ部それぞれを対向する前記取付板に固定する固定部材を、そのフランジ部に埋没した状態にする請求項1〜6のいずれかに記載の空気式防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材に関し、さらに詳しくは、可撓性中空体の損傷を抑制しつつ、可撓性中空体を大型化することなくエネルギー吸収性能を大幅に向上させることができる空気式防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材の1つのタイプとして、取付板と取付板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材がある。可撓性中空体は補強層が埋設されたゴムにより形成され、それぞれの取付板に気密的に接続される。一方の取付板の背面側は岸壁等に取り付けられて、他方の取付板の正面側には受衝板を介して船舶が当接する。船舶が受衝板に当接して可撓性中空体が圧縮されることにより、船舶から受けるエネルギーが吸収される。船舶が強く受衝板に衝突する等、船舶から受けるエネルギーが過大であると、可撓性中空体が過剰に圧縮されて損傷することがある。
【0003】
そこで、可撓性中空体の内部にハニカム構造のエネルギー吸収体を設けた空気式防舷材が提案されている(特許文献1参照)。この提案の空気式防舷材によれば、可撓性中空体が過剰に圧縮される前に、正面側の取付板がエネルギー吸収体に当接して船舶から受けるエネルギーを吸収するため、可撓性中空体が過剰圧縮されて損傷する不具合を低減させることができる。しかしながら、エネルギー吸収体は、エネルギーを吸収することによって変形、損傷するので、その損傷具合が大きければエネルギー吸収体として機能しなくなり空気式防舷材を交換しなければならない。
【0004】
また、津波等が発生した際に船舶から受ける急激な接岸エネルギーの増大に対応するには、エネルギー吸収性能を大幅に向上させる必要がある。そこで、防舷材のエネルギー吸収性能を向上させようとして可撓性中空体の容積を単純に大きくすると、可撓性中空体が大型化するという問題が生じる。それ故、可撓性中空体の損傷を抑制しつつ、可撓性中空体を大型化することなくエネルギー吸収性能を大幅に向上させることができる空気式防舷材が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−152728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、可撓性中空体の損傷を抑制しつつ、可撓性中空体を大型化することなくエネルギー吸収性能を大幅に向上させることができる空気式防舷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材は、取付板と取付板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材において、一方の取付板の背面側に、内部空間を有する剛体のケーシングが突設され、前記可撓性中空体の内部空間と前記ケーシングの内部空間とを連通させるオリフィス部と、前記可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して前記可撓性中空体の内部空間とケーシングの内部空間とを連通させる安全弁とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば安全弁は可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して、この安全弁を通じて可撓性中空体の内部空間とケーシングの内部空間とを連通させるので、可撓性中空体の内圧がある程度大きくなると、ケーシングの内部空間に空気が流入して可撓性中空体の内圧の上昇を抑制できる。即ち、安全弁が開弁することで、防舷材が強く押圧された際の圧縮容積がケーシングの内部空間の容積分だけ大きくなり、エネルギー吸収性能を大幅に増大させることができる。これにより、可撓性中空体を大型化することなく船舶から受ける急激な接岸エネルギーの増大に対応することが可能になる。これに伴なって、可撓性中空体が過剰に圧縮されて損傷することも抑制できる。
【0009】
そして、ケーシングの内部空間に流入した空気は、開口面積が小さいオリフィス部を通じて可撓性中空体の内部空間に徐々に還流する。これにより、可撓性中空体が圧縮される前の状態に復元するので繰り返し長期間使用することが可能になる。その際に、可撓性中空体が圧縮される前の状態に復元する速度が遅いので、この復元する際に生じる反力が小さくなる。そのため、この復元の際に受衝板を介して正面側の取付板に当接している船舶の揺動を低減させることができる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の空気式防舷材の実施形態を例示する断面図である。
図2図1の可撓性中空体が圧縮初期の状態の空気式防舷材を例示する断面図である。
図3図1の安全弁が開弁した状態の空気式防舷材を例示する断面図である。
図4図3のケーシング周辺の拡大図である。
図5】ケーシングの内部に流入した空気が可撓性中空体の内部に還流する状態を例示する断面図である。
図6図1の可撓性中空体の圧縮量と反力との関係を例示するグラフ図である。
図7】空気式防舷材の別の実施形態を例示する断面図である。
図8】空気式防舷材のさらに別の実施形態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気式防舷材を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示するように本発明の空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、取付板2aと取付板2bと可撓性中空体4とを備えている。一方の取付板2aは岸壁11などに取付けられ、他方の取付板2bには正面側に受衝板3が取り付けられる。そして、受衝板3には船舶の側舷などが当接する。
【0013】
可撓性中空体4は、取付板2aと取付板2bとの間に介在してそれぞれの取付板2a、2bに気密的に接合されている。取付板2aと取付板2bとの間隔H、即ち、可撓性中空体4の高さ寸法は、防舷材1に要求されるエネルギー吸収性能等に基づいて設定される。
【0014】
可撓性中空体4は、両端にフランジ部4aを備えた円筒状であり、補強層6を埋設したゴム5により構成されている。それぞれのフランジ部4aには周方向に間隔をあけて取付穴4bが形成されている。取付穴4bにはボルト等の固定部材Bが、その頂部を取付穴4bから突出させずに埋没された状態になっている。この固定部材Bによって、それぞれのフランジ部4aが取付板2a、2bそれぞれに固定されている。この実施形態では、フランジ部4aのコーナ部に、コーナ支持部4cが環状に延設されている。
【0015】
一方の取付板2aの背面側にはケーシング7が突設されている。この実施形態では、岸壁11に形成されたスペースにケーシング7が設置されている。ケーシング7は、鋼や鉄等の剛性材で形成された剛体である。
【0016】
取付板2aには、オリフィス部10と安全弁8とが設けられている。オリフィス部10は可撓性中空体4の内部空間4Aとケーシング7の内部空間7Aとを連通させる。取付板2aに形成した小穴(例えば、開口面積が0.5mm2〜80mm2程度、または開口直径1mm〜10mm程度)をオリフィス部10にすることができる。小穴に限らず小穴と同じ効果を奏するものをオリフィス部10として用いることができる。オリフィス部10の数は特に限定されないが、何らかの原因で詰まることも考えられるので、複数設けることが好ましい。
【0017】
取付板2aに設けられた安全弁8は、可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1に達した時に開弁する。そして、開弁した安全弁8を通じて、内部空間4Aとケーシング7の内部空間7Aとを連通させる。
【0018】
この実施形態の安全弁8は、取付板2aに形成された貫通穴9aと、弁体9bと、バネ等の付勢部材9cと、シール部材9dとで構成されている。弁体9bが付勢部材9cによって取付板2aの背面に向かって付勢される。そして、弁体9bに取り付けられたシール部材9dが貫通穴9aの外周を囲むように取付板2aの背面に圧接されることにより、安全弁8は閉弁して貫通穴9aを塞ぐ構造になっている。安全弁8は、この実施形態に例示する構造に限らず、可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1に達した時に開弁する構造であればよい。
【0019】
図1に例示する可撓性中空体4が圧縮されていない防舷材1の他方の取付板2bに受衝板3を介して船舶が当接すると、図2に例示するように取付板2bが押圧されて、可撓性中空体4が圧縮された状態になる。可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1に達していないので安全弁8は開弁していない。
【0020】
図3図4に例示するように取付板2bがさらに押圧されることにより、可撓性中空体4がさらに圧縮されて、可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1に達すると、この所定圧力P1により押圧された弁体9bが付勢部材9cの付勢力に対抗して取付板2aの背面から離れる方向に移動する。これにより、シール部材9dが取付板2aの背面から離れて安全弁8が開弁する。安全弁8が開弁する所定圧力P1は、例えば、防舷材1の保証耐圧力の20%〜90%程度に設定する。
【0021】
この開弁した安全弁8を通じて、可撓性中空体4の内部空間4Aとケーシング7の内部空間7Aとが連通する。このように、可撓性中空体4の内圧Pがある程度大きくなると、ケーシング7の内部空間7Aに空気Aが流入して可撓性中空体4の内圧Pの上昇が抑制される。
【0022】
安全弁8が開弁することで、防舷材1が押圧された際の圧縮容積がケーシング7の内部空間7Aの内部空間7Aの容積分だけ大きくなり、エネルギー吸収性能が大幅に増大する。これにより、可撓性中空体4を大型化することなく船舶から受ける急激な接岸エネルギーの増大に対応することが可能になる。これに伴なって、可撓性中空体4が過剰に圧縮されて損傷することも抑制できる。
【0023】
その後、受衝板3から船舶が離れて取付板2bが押圧されなくなり、可撓性中空体4の内圧Pが所定内圧P1未満になると、図5に例示するように安全弁8は閉弁する。そして、ケーシング7の内部空間7Aに流入した空気Aは、オリフィス部10を通じて可撓性中空体4の内部空間4Aに徐々に還流する。この空気Aの還流によって、可撓性中空体4は圧縮される前の状態に復元する。このようにして本発明では、可撓性中空体4を損傷させることなく繰り返し長期間使用することが可能になる。
【0024】
さらに、ケーシング7の内部空間7Aから、小孔のオリフィス部10を通じて空気Aを還流させるので、可撓性中空体4が圧縮される前の状態に復元する速度が遅くなる。そのため、この復元する際に生じる反力Rが小さくなり、この復元の際に受衝板3に当接している船舶の揺動を低減させることができる。
【0025】
オリフィス部10の総開口面積を適切に決めて、例えば、複数あるオリフィス部10の総開口面積を、可撓性中空体4の内径範囲内の取付板2aの面積の1%〜30%、好ましくは2%〜15%に設定する。これにより、船舶が低速で接岸した場合には可撓性中空体4がゆっくりと圧縮されるので、内部空間4Aの圧力上昇に対してオリフィス部10の直径および総開口面積が十分に大きく、内部空間4Aとケーシング7の内部空間7Aの圧力は等しくなるため当初の防舷材1の持つソフトな反力Rで船舶の接岸エネルギーを吸収することができる。
【0026】
一方、船舶が台風などの強風により異常接岸した場合には、可撓性中空体4は動的に圧縮されるので、内部空間4Aの圧力上昇に対してオリフィス部10の直径および総開口面積が十分に小さく、安全弁8が開弁するまでは反力Rを大きくすることができる。それ故、船舶の接岸速度に応じて空気式防舷材の特性を活かしたソフトな反力と異常接岸に対応した大きな反力の両方を得ることができる。
【0027】
図6には、可撓性中空体4が圧縮されて復元するまでの1サイクルにおける圧縮量Xと反力Rとの関係を模式的に示している。図6では実線が本発明を示し、一点鎖線はケーシング7を設置していない従来の防舷材を示している。
【0028】
圧縮量Xが0以上X1未満の圧縮初期の状態では、従来の防舷材と同様の反力Rが得ることができる。可撓性中空体4がさらに圧縮されて圧縮量XがX1になり、可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1に達すると(この時の反力RはR1)、安全弁8が開弁してケーシング7の内部空間7Aに空気Aが流入する。圧縮量XがX2になるまでは、可撓性中空体4は概ね一定の内圧P1になって内圧上昇が抑制され、反力Rは概ね一定の反力R1になる。
【0029】
可撓性中空体4がさらに圧縮されて圧縮量XがX2になり、流入する空気Aによって内部空間7Aの圧力が可撓性中空体4の内圧と同等にまで上昇すると反力Rが上昇する。反力R2になるまで可撓性中空体4が圧縮された後に、圧縮が解除されると可撓性中空体4は圧縮前の状態に復元する。この復元する速度は上述したように遅いので反力Rは小さくなる。そのため、従来の防舷材に比して、船舶の揺動を低減させるには有利になる。
【0030】
ケーシング7の内部空間7Aの容積は任意の大きさにすることができるが、例えば、可撓性中空体4の内部空間4Aの容積の20%〜100%程度にする。20%未満では、防舷材1のエネルギー吸収性能の向上効果が小さくなり、100%超では、ケーシング7を設置するために必要なスペースが過大になる。
【0031】
本発明では、ケーシング7の内部空間7Aの容積の分だけ、圧縮容積を大きくできる。そのため、従来、可撓性中空体4の最大圧縮率は60%〜70%程度であるが、本発明では80%〜90%程度にすることができる。この最大圧縮率とは防舷材1が圧縮されていない中立状態での取付板2aと取付板2bとの間隔H(取付板2a、2bの厚さを含めない寸法)、可撓性中空体4が最大に圧縮された状態での取付板2aと取付板2bとの間隔h(取付板2a、2bの厚さを含めない寸法)を用いて、((H−h)/H)×100(%)で算出される。或いは、中立状態での取付板2aと取付板2bとの間隔(取付板2a、2bの厚さを含めた寸法)をH1とし、可撓性中空体4が最大に圧縮された状態での取付板2aと取付板2bとの間隔(取付板2a、2bの厚さを含めた寸法)をh1として、最大圧縮率を規定することもできる。この場合、((H1−h1)/H1)×100(%)で算出される最大圧縮率は80%〜85%程度になる。
【0032】
この実施形態では、固定部材Bが取付穴4bに埋没した状態になっているので、図3に例示するように可撓性中空体4が大きく圧縮されても、外側に膨張する可撓性中空体4の外周面が固定部材Bに当接することが防止される。それ故、可撓性中空体4の外周面が固定部材Bに擦れて損傷する不具合を回避できる。コーナ支持部4bを設けることにより、外側に膨張する可撓性中空体4の外周面をより確実に固定部材Bに当接し難くすることができる。
【0033】
安全弁8は、何らかの原因で故障することも考えられるので、図7に例示するように複数設けることが好ましい。複数の安全弁8のすべてが同じ所定圧力P1で開弁する設定にすることもできる。或いは、複数の安全弁8のうち、少なくとも1つの安全弁8が異なる所定圧力P1で開弁する設定にすることもできる。
【0034】
開弁する所定圧力P1をすべての安全弁8に対して同じ設定にした場合、図6に例示したように可撓性中空体4の内圧Pが所定圧力P1(反力R1)に達すると、一定反力R1のままで可撓性中空体4の圧縮量Xは、X1からX2まで比較的早く変化し、圧縮速度が速くなる。
【0035】
一方、開弁するタイミングが異なる安全弁8を混在させた場合、図6に例示した反力Rが一定になる水平直線部分が複数に分割されることになる。これにより、前者の場合に比して、可撓性中空体4の圧縮速度を遅くすることが可能になる。
【0036】
複数の安全弁8を設けた場合、図8に例示するようにケーシング7を分割して複数にすることもできる。複数に分割したケーシング7の内部空間7Aのそれぞれの容積はすべて同じ設定にすることもでき、異なる設定にすることもできる。
【0037】
防舷材1に要求されるエネルギー吸収性能に応じて、例えば、開弁する所定圧力P1が低い安全弁8を取付けたケーシング7の内部空間7Aの容積を、開弁する所定圧力P1が高い安全弁8を取付けたケーシング7の内部空間7Aの容積よりも小さくする。或いは、その反対で、開弁する所定圧力P1が低い安全弁8を取付けたケーシング7の内部空間7Aの容積を、開弁する所定圧力P1が高い安全弁8を取付けたケーシング7の内部空間7Aの容積よりも大きくする。このようにして、それぞれのケーシング7の内部空間7Aの圧力を、他のケーシング7の内部空間7Aの圧力とは、独立に制御することもできる。
【0038】
安全弁8は、開弁する所定圧力P1を変えることができる圧力可変構造にすることもできる。この実施形態では、付勢部材9cを付勢力が異なるものに交換することにより、容易に安全弁8が開弁する圧力を変えることができる。このような圧力可変構造にすれば、安全弁8を変えるだけで、エネルギー吸収性能を異ならせた様々な防舷材1を容易に製造することが可能になる。したがって、様々な大きさの船舶に適応する防舷材1を早期に製造コストを抑えて製造するには有利になる。
【符号の説明】
【0039】
1 空気式防舷材
2a、2b 取付板
3 受衝板
4 可撓性中空体
4a フランジ部
4b 取付穴
4c コーナ支持部
4A 内部空間
5 ゴム
6 補強層
7 ケーシング
7A 内部空間
8 安全弁
9a 貫通穴
9b 弁体
9c 付勢部材
9d シール部材
10 オリフィス部
11 岸壁
B 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8