(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ビタミンA0.0005〜0.12W/V%、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とする非イオン性界面活性剤を、非イオン性界面活性剤全量として0.007〜0.5W/V%であって、(A):(B)で表される質量比で1:0.4〜14、及び(C)低級アルコール、糖アルコール、糖、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムから選ばれる1種以上を含有し、上記(A)及び(B)成分を含む油相を、80〜90℃の水相に添加して撹拌して得られ、上記(A)及び(B)成分を構成成分として含有するナノエマルション粒子を含む粘膜用組成物。
(A)ビタミンA0.0005〜0.12W/V%、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とする非イオン性界面活性剤を、非イオン性界面活性剤全量として0.007〜0.5W/V%であって、(A):(B)で表される質量比で1:0.4〜14、及び(C)低級アルコール、糖アルコール、糖、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムから選ばれる1種以上を含有し、上記(A)及び(B)成分を含む油相を、80〜90℃の水相に添加して撹拌して得られ、上記(A)及び(B)成分を構成成分として含有するナノエマルション粒子を含み、(A)成分フリー非イオン性界面活性剤の割合が、(B)成分総量の44質量%未満であることを特徴とする粘膜用組成物。
(C)低級アルコールが、エタノール、プロピレングリコール又はグリセリンであり、糖アルコールがマンニトールであって、糖がブドウ糖である請求項1又は2記載の粘膜用組成物。
さらに、(D)酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる抗酸化剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の粘膜用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(A)ビタミンA0.0005〜0.12W/V%と、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とする非イオン性界面活性剤を、非イオン性界面活性剤全量として0.007〜0.5W/V%であって、(A):(B)で表される質量比で1:0.4〜14、(C)低級アルコール、糖アルコール、糖、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムから選ばれる1種以上を含有し、上記(A)及び(B)成分を含む油相を、75〜90℃の水相に添加して撹拌して得られ、上記(A)及び(B)成分を構成成分として含有するナノエマルション粒子を含む粘膜用組成物である。
【0012】
(A)ビタミンA
ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100万〜180万国際単位(以下、I.U.と略記する)のものが市販されており、具体的には、DSMニュートリションジャパン(株)製レチノールパルミチン酸エステル(174万I.U.)等が挙げられる。
【0013】
(A)成分の配合量は、組成物全量に対し、(A)成分の総量として0.0005〜0.12W/V%(g/100mL)であり、0.001〜0.1W/V%が好ましい。また、配合成分の有効性と用途に応じて適宜選択することができる。ビタミンAは、角膜・結膜損傷治療効果、ドライアイ改善、疲れ目・かすみ目の改善効果を有しているが、この範囲で目的とする効果を得ることができ、多すぎると、エマルションにならずに分離するおそれがある。
【0014】
例えば、レチノールパルミチン酸エステルを用いた粘膜用組成物や、眼科用組成物とする場合、組成物全量に対して、0.0005〜0.12W/V%(g/100mL)が好ましく、眼科用組成物が洗眼剤の場合、0.0005〜0.02W/V%(g/100mL)がより好ましく、0.001〜0.01W/V%がさらに好ましい。眼科用組成物が点眼剤の場合、0.005〜0.12W/V%(g/100mL)がより好ましく、0.01〜0.1W/V%がさらに好ましい。ビタミンAは、角膜・結膜損傷治療効果、ドライアイ改善、疲れ目・かすみ目の改善効果を有しているが、この範囲で目的とする効果を得ることができ、多すぎると、エマルションにならずに分離するおそれがある。
【0015】
(B)非イオン性界面活性剤
本発明で用いる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分として、その他の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とするものであるが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを併用することが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油)が挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)が好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられ、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
【0017】
上記以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーとしては、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールが好ましい。2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0018】
(B)成分の配合量は、非イオン性界面活性剤全量として、組成物中0.007〜0.5W/V%であって、0.01〜0.4W/V%が好ましい。この範囲とすることで、外観透明で、ビタミンAの安定性に優れ、角膜へのビタミンAの吸着をより向上させることができる。眼刺激の点からは、0.3W/V%以下が好ましく、0.2W/V%以下がより好ましい。
【0019】
また、(A):(B)で表される質量比で1:0.4〜14であり、1:1.0〜10が好ましく、1:1.5〜7.0がより好ましい。(A)ビタミンAあたりの(B)非イオン性界面活性剤の量が少なすぎると、油性成分を十分に乳化できず、外観透明性が低下したり、安定なエマルションにならずに分離する。一方、(A)ビタミンAあたりの(B)非イオン性界面活性剤の量が多すぎると、エマルションの粒子径が小さく、外観がより均一、透明で、製剤の外観安定性に優れた粘膜用組成物を得ることができるが、例えば、角膜等への(A)ビタミンAの吸着を向上させる効果が不十分となり、結果として、目的とするビタミンAの作用向上効果が不十分となる。本発明においては、14以下で、ビタミンAの角膜等の粘膜への吸着性が向上し、(A)成分の効果が少ない量で発揮され、目的とするビタミンAの作用である角膜・結膜損傷治癒効果、ドライアイ改善、疲れ目・かすみ目の改善の効果が得られる。
【0020】
さらに、ビタミンAの安定性や吸着性、組成物の外観の点から、下記の量及び比率が好ましい。
I−(1):HCO−VA低濃度
(A)ビタミンA0.003W/V%以上0.015W/V%未満
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる非イオン性界面活性剤を、(A):(B)で表される質量比で1:3.0〜10、1:3.0〜10.0がより好ましい。
I−(2)−1:HCO−VA中濃度
(A)ビタミンA0.015〜0.05W/V%、
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる非イオン性界面活性剤を、(A):(B)で表される質量比で1:1.6〜7.0であり、1.6〜4以下がより好ましく、1.6〜4.0未満がさらに好ましい。
I−(3):HCO−VA高濃度
(A)ビタミンA0.05W/V%を超え0.12W/V%以下
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及び/又はモノオレイン酸POE(20)ソルビタンを、(A):(B)で表される質量比で1:1.6〜5.0
【0021】
(C)成分
(C)成分としては、低級アルコール、糖アルコール、糖、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。低級アルコールとしては、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。糖アルコールとしては、マンニトール等が挙げられる。糖としては、ブドウ糖等が挙げられる。中でも、クロルフェニラミンマレイン酸塩、エタノール、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリセリンが好ましい。本発明においては、(C)成分を配合することで、意外にも(A)ビタミンAの安定性を高めることができる。
【0022】
(C)成分の配合量は、合計量として、組成物中0.01〜10W/V%が好ましく、0.02〜8W/V%がより好ましい。この範囲とすることで、ビタミンAの安定性をより高める効果が得られる。
【0023】
(D)抗酸化剤
本発明の組成物には、さらに、抗酸化剤を配合することができる。抗酸化剤としては、酢酸トコフェロール(酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール(ビタミンE))、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
抗酸化剤の配合量は、合計量として、組成物中0.001〜0.5W/V%であって、0.005〜0.1W/V%が好ましい。この範囲とすることで、ビタミンAの保存安定性が向上する。
【0025】
また、ヒマシ油、ゴマ油等のグリセリド、流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ラノリン等を配合することもできる。
【0026】
本発明においては、(A)ビタミンAと、(D)酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる抗酸化剤とを併用することが好ましく、特に、(D)抗酸化剤を2種以上併用するとよい。これにより、(A)ビタミンAの保存安定性(残存率)がより向上する。この併用の場合、(D)成分が酢酸トコフェロールの場合の配合量は、組成物全量に対して0.01〜0.5W/V%が好ましく、0.02〜0.1W/V%がより好ましく、0.03〜0.05W/V%がさらに好ましい。(D)成分がジブチルヒドロキシトルエンの場合の配合量は、組成物全量に対して0.001〜0.1W/V%が好ましく、0.002〜0.05W/V%がより好ましく、0.003〜0.005W/V%がさらに好ましい。この範囲とすることで、(A)ビタミンAの保存安定性や、外観透明性がより向上する。
【0027】
本発明の組成物には、前記成分の他、粘膜用組成物に配合する各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。それらの成分としては、下記に示す各種薬物、各種添加剤等が挙げられ、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの成分としては、(C)成分以外の多価アルコール、緩衝剤、粘稠剤、(C)成分以外の糖類、pH調整剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、保湿剤、薬物等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量を配合することができる。
【0028】
多価アルコールとしては、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールの含有量は、粘膜用組成物中0.01〜5W/V%が好ましく、より好ましくは0.05〜3W/V%である。
【0029】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、トロメタモール、各種アミノ酸類(イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)等が挙げられる。中でも、低刺激、かつ組成物の防腐効果の点から、トロメタモールが好ましい。さらに、ホウ酸、ホウ砂を併用すると、特に高い防腐効果が得られる。緩衝剤の含有量は、粘膜用組成物全量に対して0.001〜10W/V%が好ましく、より好ましくは0.01〜5W/V%である。
【0030】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン等が挙げられる。粘稠剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.001〜5W/V%、より好ましくは0.01〜3W/V%である。
【0031】
糖類としては、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール等が挙げられる。なお、これらはD体、L体又はDL体のいずれでもよい。糖類の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.005〜5W/V%、より好ましくは0.01〜3W/V%である。
【0032】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤を使用することが好ましい。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。中でも、塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。本発明の粘膜用組成物のpH(20℃)は、4.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.0〜8.0であり、さらに好ましくは6.0〜8.0である。なお、本発明において、pHの測定は20℃でpH浸透圧計(HOSM−1,東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。pH調整剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.00001〜10W/V%であり、好ましくは0.0001〜5W/V%、より好ましくは0.001〜3W/V%である。
【0033】
防腐剤は本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできるが、本発明の粘膜用組成物は、刺激の点から防腐剤を含有しない防腐剤フリーとすることもできる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等)、グルコン酸クロルヘキシジン、チロメサール、フェニルエチルアルコール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化ポリドロニウム、塩酸ポリヘキサニド等が挙げられる。防腐剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.00001〜5W/V%であり、好ましくは0.0001〜3W/V%、さらに好ましくは0.001〜2W/V%である。防腐剤無配合にした場合の防腐力は、エデト酸ナトリウム、ホウ酸及びトロメタモールから1種以上、好適には2種以上組み合わせ配合するとよい。また、ユニットドーズ容器、フィルター付容器にした場合にも、防腐剤無配合とすることができる。
【0034】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン等が挙げられる。等張化剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.001〜5W/V%、好ましくは0.01〜3W/V%、より好ましくは0.1〜2W/V%である。
【0035】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。安定化剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、例えば0.001〜5W/V%であり、好ましくは0.01〜3W/V%、より好ましくは0.1〜2W/V%である。
【0036】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、リナロール、シネオール等が挙げられる。清涼化剤の粘膜用組成物全量に対する含有量は、化合物の総量として、0.0001〜2W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.005〜0.5W/V%がさらに好ましく、0.007〜0.3W/V%が特に好ましい。
【0037】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去剤(例えば、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン等)、消炎・収斂剤(例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等)、抗ヒスタミン剤(例えば、塩酸イプロヘプチン、塩酸イソチペンジル、水溶性ビタミン(活性型ビタミンB
2、ビタミンB
6、ビタミンB
12等)、アミノ酸(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤、殺菌剤(例えば、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、抗アレルギー剤(クロモグリク酸、フマル酸ケトチフェン、トラニラスト等)、局所麻酔剤(例えば、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、散瞳剤(塩酸シクロペントラート、トロピカミド等)、白内障治療剤(ピレノキシン、グルタチオン等)を適宜配合することができる。
【0038】
これらの成分の含有量は、製剤の種類、薬物の種類等に応じて適宜選択され、各種成分の含有量は当該技術分野で既知である。例えば、眼科用組成物とする場合、眼科用組成物全量に対して0.0001〜30W/V%、好ましくは0.001〜10W/V%の範囲から適宜選択できる。より具体的には、各成分の眼科用組成物全量に対する含有量は、以下の通りである。
【0039】
充血除去剤であれば、例えば、0.0001〜0.5W/V%、好ましくは0.0005〜0.3W/V%、より好ましくは0.001〜0.1W/V%である。
消炎・収斂剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.0001〜5W/V%である。
抗ヒスタミン剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜5W/V%である。
水溶性ビタミンであれば、0.0001〜1W/V%、好ましくは、0.0001〜0.5W/V%である。
アミノ酸であれば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜3W/V%である。
サルファ剤、殺菌剤であれば、例えば、0.00001〜10W/V%、好ましくは、0.0001〜10W/V%である。
抗アレルギー剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜5W/V%である。
局所麻酔剤、散瞳剤、白内障治療剤であれば、例えば、0.001〜1W/V%、好ましくは0.005〜1W/V%である。
【0040】
水相の溶媒としては水を用いる。水としては、精製水、滅菌水等を用いることができ、水相に合わせて適宜選定されるが、組成物全量に対する含有量は全量を100とできればよく(残部)、90〜99.999W/Vが好ましく、95〜99.995W/V%がより好ましい。
【0041】
本発明の粘膜用組成物は、上記(A)及び(B)成分を含む油相を、75〜90℃の水相に添加して撹拌して得られる上記(A)及び(B)成分を構成成分として含有するナノエマルション粒子を含む粘膜用組成物である。製造方法としては、(A)ビタミンA0.0005〜0.12W/V%
(組成物中)、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とする非イオン性界面活性剤を、非イオン性界面活性剤全量として0.007〜0.5W/V%
(組成物中)であって、(A):(B)で表される質量比で1:0.4〜14を含む油相を、75〜90℃の水相に添加して撹拌する工程を含む。「油相」には、(A)「ビタミンA」、(B)成分のような非イオン性界面活性剤等の「油相配合成分」、(D)抗酸化剤が配合され、「水相」には、水、及び水に溶解する水溶性成分(水溶性薬物、無機塩、水溶性高分子、防腐剤等)等の「水相配合成分」が配合される。(C)成分は油相及び水相を撹拌後に添加してもよい。
【0042】
粘膜用組成物に対する油相配合成分濃度は、3.0W/V%以下が好ましく、1.0W/V%以下がより好ましい。この範囲とすることで、外観均一性がより向上する。
【0043】
油相温度は50〜90℃が好ましく、65〜90℃がより好ましく、70〜85℃がさらに好ましい。この温度範囲とすることで、均一な油相の混合状態が得られ、より外観均一な粘膜用組成物を得ることができる。
【0044】
本発明において重要なのは水相温度であり、75〜90℃であり、好ましくは80〜90℃であり、より好ましくは82〜90℃であり、さらに好ましくは83〜90℃である。上記温度が低すぎると、本発明の(B)非イオン性界面活性剤量ではナノエマルションを得ることができず、外観均一な粘膜用組成物を得ることができない。一方、温度が高すぎると、(A)ビタミンAが分解するおそれがある。
【0045】
油相を添加・撹拌する際の水相量は特に制限されないが、通常エマルションを含有する組成物を製造する方法の通り、組成物全体の50W/V%以上にすることが好ましく、75W/V%以上がより好ましい。
【0046】
油相はすみやかに水相へ添加する。油相添加後における、撹拌開始から撹拌終了までの水槽の平均温度は75〜90℃が好ましく、80〜90℃がより好ましく、82〜90℃がさらに好ましく、特に好ましくは83〜90℃である。なお、水相の平均温度に対する許容ふれ幅は±4℃とする。本発明においては、撹拌開始から撹拌終了までの油相添加後の水相温度を75〜90℃の間にすることが好ましく、80〜90℃がより好ましく、82〜90℃がさらに好ましく、83〜90℃が特に好ましい。なお、撹拌終了後は冷却を行うが、撹拌終了後の冷却温度は上記温度には含めない。
【0047】
撹拌時間は油相の滴下終了時から5〜60分が好ましく、5〜30分がより好ましい。この時間とすることで、投入した油相を水相中でより均一に分散できる。
【0048】
水相に油相を添加する際の撹拌方法は、点眼剤等の組成物を製造する際に用いる一般的な撹拌方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。
【0049】
上記の方法で得られた粘膜用組成物は、上記(A)、(B)成分を構成成分として含有する「ナノエマルション粒子」を含むものであり、外観均一の粘膜用組成物を得ることができると共に、意外にもビタミンAの安定性が向上し、粘膜へのビタミンAの吸着を向上させることを知見した。本発明者らは更に研究を進めた結果、以下の知見が得られた。
【0050】
本発明の用語の意義を以下のように定義する。
・「ナノエマルション粒子」とは、エマルション粒子内に(A)ビタミンAを含有するナノエマルション粒子であり、上記(A)及び(B)成分を必須構成成分として含有する。ナノエマルション粒子の粒子径は、1nm以上500nm未満であり、10〜500nmが好ましく、10〜300nmがより好ましい。例えば、特に好ましい範囲は40nmを超え140nm以下である。粒子径が40nmを超えると、ナノエマルション粒子からのビタミンAの放出性、例えば、点眼時等における角膜へのビタミンAの吸着性がより向上する。この点からは、下限は45nm以上、50nm以上、55nm以上が特に好ましい。一方、ナノエマルション粒子の粒子径を140nm以下とすることで、粘膜用組成物の外観が透明のものを得ることができる。この点からは、115nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましい。なお、本発明において粒子径とは散乱光強度から算出した粒度分布の平均径(メディアン径nm)を指す。粒子径は光散乱等の原理を応用した各種測定装置により、恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと行う。
【0051】
・「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」とは、ビタミンAを含まない非イオン性界面活性剤をいい、「フリーミセル」及び「遊離界面活性剤分子」を含む。
・「フリーミセル」とは、(A)ビタミンAを含まない、界面活性剤会合体をいう。
・「遊離界面活性剤分子」とは、ミセル(会合体)を形成していない界面活性剤をいう。
【0052】
本発明の粘膜用組成物が、(A)ビタミンAの安定性を維持すると共に、粘膜用組成物の外観を透明にし、粘膜への(A)ビタミンAの吸着を高め、その効果がより発揮される理由は、不明である。本発明の粘膜用組成物は、ビタミンAを含まない「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」(「フリーミセル」及び「遊離界面活性剤分子」)の割合が少なかった。このことから、本発明の粘膜用組成物が、粘膜へのビタミンAの吸着が高まった理由の一つには、「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」が粘膜表面に付着し、「ナノエマルション粒子」の粘膜表面への付着を阻害するため、これらが減ったことで、角膜へのビタミンAへの吸着が向上したことが推測される。
【0053】
「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」の割合、つまり、「フリーミセル」及び「遊離界面活性剤分子」を構成する(B)成分の、(B)成分全量に対する割合は、44質量%未満が好ましく、43質量%以下がより好ましい。なお、下限は0質量%、つまり含まれないことが好ましいが、1質量%でもよく、0.01質量%でもよい。また、(B)成分全量に対する「ナノエマルション粒子」を構成する(B)成分の割合は、56質量%を超え100質量%が好ましく、57質量%以上がより好ましく、上限は限定されないが、99質量%としてもよい。
【0054】
粘膜用組成物中の、「ナノエマルション粒子」、「フリーミセル」及び「遊離界面活性剤分子」等の構成は、Eluent gel permeation chromatography(以下、EGPC)を用いて測定することができる。
つまり、試料を、それぞれRI(非イオン性界面活性剤と脂溶性成分((A)ビタミンA,(D)抗酸化剤等)を検出)、UV(油性成分のみ検出)で検出し、その溶出時間とピーク面積により、「ナノエマルション粒子(RI+UV検出)」、「フリーミセル(RI検出)」及び「遊離界面活性剤分子(RI検出)」に分離し、その割合を算出することができる。試料中にこれらが全部含まれているとすれば、RIでは、(1)「ナノエマルション粒子」、(2)「フリーミセル」、(3)「遊離界面活性剤分子」の順でピークが現れ、UVでは、(1)のピークが現れる。詳細な条件は実施例で説明する。
【0055】
粘膜へのビタミンAの吸着率は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%を超えることがさらに好ましい。例えば、ビタミンAを配合した本発明の眼科用組成物の場合、3倍希釈時のビタミンA吸着率は、45%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。上限は100%に近ければ近いほどよい。なお、ビタミンA吸着率の測定方法は後述する実施例に記載の方法である。
【0056】
本発明の粘膜用組成物は、そのまま液剤としてもよく、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には、眼科用組成物、点鼻剤、点鼻スプレー剤、口腔・咽喉疾患用剤等の口腔スプレー剤、咽喉スプレー剤等が挙げられる。
【0057】
眼科用組成物としては、具体的には、点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、洗眼剤(一般用洗眼剤、コンタクトレンズを外した後に使用する洗眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等が挙げられ、点眼剤が好ましい。中でも、コンタクトレンズ使用者はドライアイになりやすいため、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズを外した後に使用する洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等のコンタクトレンズ用として好適である。コンタクトレンズとしては特に制限されず、ハードコンタクトレンズ(酸素非透過性ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ)、ソフトコンタクトレンズ(使い捨てコンタクトレンズ、シリコンハイドロゲルレンズ等)等が挙げられる。
【0058】
本発明の粘膜用組成物の粘度は1〜100mPa・sが好ましく、1〜50mPa・sがより好ましく、1〜30mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度測定は20℃でE型粘度計(VISCONIC ELD−R,東京計器(株))を用いて行う。
【0059】
本発明の粘膜用組成物を充填する容器の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートとしては、容器として成形可能なものであればよく、グレード等は、特に問わない。容器は、紫外線遮断可能な容器が好ましい。
【0060】
本発明の粘膜用組成物を容器に充填するときは、滅菌フィルター等を用い無菌的に充填することが好ましい。充填する容器は、充填した粘膜用組成物がなくなるまでキャップを開け閉めして何度でも使えるタイプでもよく、一度開けたら使い切るタイプ(ユニットドーズタイプ)でもよい。また、何度でも使えるタイプの場合、内容物の排出口に微細孔フィルターがあり、細菌や異物が容器内に入らないようなものでもよい。これら容器も充填するときは無菌であることが好ましい。
【0061】
本発明の粘膜用組成物を充填した容器は、包装体で密封され、容器と包装体の間(インナースペース)に不活性ガスが充填されていることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスが挙げられる。また、脱酸素剤を包装体に入れて密封してもよく、酸素吸収機能をもつフィルムを使用した包装体に入れてもよい。
【0062】
本発明の粘膜用組成物は、特定の形態に限定されず、目的に応じて液剤、スプレー剤として使用することができる。これらの製剤は常法により調製して得られ、その際、上述の成分に加えてその製剤に応じた慣用の添加剤を使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
[実施例1〜16、比較例1,2]
表中に記載の水相温度、油相温度で、下記製法で表中に記載の組成(W/V%(g/100mL))の粘膜用組成物(眼科用組成物)を得た。得られた組成物について下記評価を行った。結果を表中に併記する。
油相(レチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA、174万I.U.)、酢酸d−α−トコフェロール(ビタミンE)、(D)ジブチルヒドロキシトルエン、(B)成分を、設定温度で加温し均一に混合し、設定温度で加温した水相(精製水)400mLにマグネティックスターラーを用いて撹拌しながら添加し、マグネティックスターラーを用いて滴下終了から10分間撹拌して得た。撹拌開始から撹拌終了までの油相添加後の水相温度は、油相添加前の水相温度と同じである。撹拌終了後、室温で冷却し、(C)成分を加えて攪拌溶解、もしくは混和し、さらに他の水相配合成分を必要に応じて加え、全量が500mLとなるよう精製水を添加した。なお、表中では(A):(B)で表される質量比の(A)1に対する(B)の部分を、(B)/(A)として示す。
【0065】
[粒子径]
光散乱等の原理を応用した各種測定装置、動的光散乱式粒度分布計(LB−500、(株)堀場製作所)を用いて測定した。測定には恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと行った。なお、実施例の粒子径は、1nm以上500nm未満であり、ナノエマルション粒子を含む組成物であった。
【0066】
[外観(透過率(%))]
製造直後の眼科用組成物について、日立分光光度計U−3310を用いて、波長600nmにおける透過率(%)を室温で測定した。
【0067】
[外観(透明性)]
油性成分が分離したものを「×」、上記外観透過率(%)が80%未満を「△」、80%以上90%未満を「○」、90%以上を「◎」として判断した。
【0068】
[ビタミンAの安定性]
<ビタミンA残存率>
ビタミンA(レチノールパルミチン酸エステル)含量を、製造直後及び密封したアンプルにて70℃で1週間保存後(過酷試験)に測定した。測定は、高速液体クロマトグラフィー法を用いて行った。得られたレチノールパルミチン酸エステル含量から、下記式に基づき、レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)を算出した。
【数1】
【0069】
[3倍希釈時のビタミンA吸着率(%)(点眼時の涙液による希釈を想定)]
角膜表面とC8の疎水性度が近いことから、角膜に対するビタミンA吸着モデルとしてC8シリカゲルへのビタミンA吸着率を測定した。
(i)C8シリカゲルを水洗し、表面の汚れを除去し乾燥した。
(ii)サンプル5mL中に精製水10mLを入れ混合し、そこから10mL分取した溶液にC8シリカゲル0.2gを分散させ10分間撹拌した。
(iii)シリカゲルとサンプルをろ別し、ろ液中のビタミンA量と吸着させる前のサンプルのビタミンA量を高速液体クロマトグラフィー法により測定した。
(iv)得られたビタミンA量を比較し、ビタミンAの吸着率を算出した。
*C8シリカゲル:Phenomenex社製 SEPRATMバルク充てん剤 C8 (粒子径50μm、細孔径65Å)
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から、(B)非イオン性界面活性剤が低濃度のときに(C)成分添加効果が高まることがわかる。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
下記参考例1について下記方法で、ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤の割合を測定した。
[ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤の割合(質量%)]
「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」の割合を、Eluent gel permeation chromatography(以下、EGPC)を用いて測定した。
(i)各種濃度(0.0027質量%、0.08質量%、0.16質量%、0.3質量%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%)の非イオン性界面活性剤水溶液(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO))をEGPCにより測定し、活性剤濃度とRIピーク面積値の検量線を作成した。
(ii)EGPC測定条件
カラム:Superose 6 10/300 GL(10×300mm)
注入:100μL
溶出液:HCO水溶液(500ppm)
流量:0.5mL/min
温度:35℃
検出:RI、UV(280nm)
(iii)試料をEGPCにより解析し、非イオン性界面活性剤と、油性成分(ビタミンA)を、それぞれRI(非イオン性界面活性剤と油性成分を検出)、UV(油性成分のみ検出)で同時に検出した。RIでは(1)「ビタミンA含有ナノエマルション粒子」(2)「フリーミセル」、(3)「遊離界面活性剤分子」の順でピークが現れ、UVでは、RIと同じ溶出時間に(1)のピークが現れる。(1)以外のピーク(RI)を、「ビタミンAフリー非イオン性界面活性剤」として、(i)で求めた検量線よりRIピーク面積値から活性剤濃度を算出した。
【0075】
[参考例1]
油相(レチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA、174万I.U.)0.026W/V%、酢酸d−α−トコフェロール0.05W/V%、ジブチルヒドロキシトルエン0.005W/V%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60)0.1W/V%)を、85℃で加温し均一に混合し、85℃の水相(精製水)400mLにマグネティックスターラーを用いて撹拌しながら添加し、マグネティックスターラーを用いて滴下終了から10分間撹拌して得た。撹拌開始から撹拌終了までの油相添加後の水相温度は、油相添加前の水相温度と同じである。撹拌終了後、室温で冷却し、他の水相配合成分を必要に応じて加え、全量が500mLとなるよう精製水を添加した。得られた参考例1のEGPCの測定結果を示すチャートを
図1に示す。なお、参考例1の粘膜用組成物は、ピークトップの溶出時間が12分未満に出現するピーク(UV)が得られ、ピークトップが12分以上に出現するピーク(比較的粒子径が小さいもの(UV))は見られなかった。詳細には、
図1から、RIでは9分と36分に、UVでは9分にのみピークが認められた。即ち、参考例1は、溶出時間9分にRIとUVのピークがあることから(1)「ビタミンA含有ナノエマルション粒子」の存在が、溶出時間36分にRIのみのピークであることから(3)「遊離界面活性剤分子」の存在が確認された。
【0076】
上記結果から、参考例1及び実施例の粘膜用組成物(眼科用組成物)には、上記(A)及び(B)成分を構成成分として含有するナノエマルション粒子が確認された。実施例についてもEGPCを行ったところ、RI及びUVにおいて同じ溶出時間に(1)のピークが現れ、「ビタミンA含有ナノエマルション粒子」が確認された。そして、参考例1及び実施例のビタミンAフリー非イオン性界面活性剤の割合が、(B)成分総量の43質量%以下であった。
【0077】
[処方例1〜20]
本発明の処方例を下記に示す。なお、処方例の組成物は、実施例と同様に、ナノエマルション粒子が形成され、外観均一で、ビタミンAの安定性の高いものであった。
【表4】
【0078】
【表5】