(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179236
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】戸袋フレーム構造
(51)【国際特許分類】
B62D 31/02 20060101AFI20170807BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B62D31/02 B
B60R16/02 620C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-150800(P2013-150800)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-20622(P2015-20622A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小野口 芳男
(72)【発明者】
【氏名】黒木 孝郎
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−020877(JP,A)
【文献】
札幌学院大学鉄道研究会,函館バス 函館200か・428(中ドア両開き戸の元京急車),2012年12月 3日,6枚目の写真、8枚目の写真,URL,http://blogs.yahoo.co.jp/hakodatehonsen_oasa/10276550.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 31/02
B60R 16/02
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスの側壁に形成された乗降口にスライド自在に設けられた乗降用扉と、前記側壁の車外側に形成される外側骨格と前記側壁の内装面を形成するインナーパネルとの間に形成され前記乗降用扉が開いたとき前記乗降用扉を収容する戸袋と、前記戸袋内に設けられ前記インナーパネルを支持すべく水平方向に延びる渡し材とを備え、前記インナーパネルに降車押ボタンを取り付けるための戸袋フレーム構造であって、
前記渡し材に形成され、降車押ボタン用のハーネスを収容すべく水平方向に延びると共に開口が車室側を向く収容溝を備え、
前記渡し材は、前記乗降口に臨む側壁の車室側に配置された内側入口柱と、前記戸袋奥の隔壁柱との間に掛け渡されると共に、前記収容溝が前記降車押ボタンの設置高さとなるように配置されたことを特徴とする戸袋フレーム構造。
【請求項2】
前記インナーパネルは、前記収容溝を塞ぐように前記渡し材に取り付けられる請求項1に記載の戸袋フレーム構造。
【請求項3】
前記渡し材は、前記収容溝を形成するように鋼板を屈曲して形成された請求項1または2に記載の戸袋フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスの戸袋フレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗り合いバス等のバスには、スライド式の乗降用扉が乗降口に設けられたものがある。かかるバスの場合、乗降口に臨む側壁には、開いた乗降用扉を収容するための戸袋が形成される。また、戸袋の車室側にも降車押ボタンが取り付けられ、戸袋に臨む席等に座った乗客が容易に降車押ボタンを押せるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−336878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示すように、戸袋30と車室とは、戸袋30を構成するインナーパネル6で仕切られ、降車押ボタン16はインナーパネル6の表面(車室側の面)に設けられる。また、降車押ボタン16用のハーネス17は、車室の美感のため、インナーパネル6の裏面に配線されるが、インナーパネル6の裏側は戸袋30となっているため、降車押ボタン16用のハーネス17と乗降用扉3とが近く、乗降用扉3とハーネス17とが干渉しないように、ハーネス17をインナーパネル6に沿わせると共に強固に固定する等、配線作業には特に配慮が必要であった。このため、戸袋30に降車押ボタン16用のハーネス17を配線する作業は、困難かつ工数が掛かるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、戸袋に降車押ボタン用のハーネスを容易に配線できる戸袋フレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の戸袋フレーム構造は、バスの側壁に形成された乗降口にスライド自在に設けられた乗降用扉と、前記側壁の車外側に形成される外側骨格と前記側壁の内装面を形成するインナーパネルとの間に形成され前記乗降用扉が開いたとき前記乗降用扉を収容する戸袋と、前記戸袋内に設けられ前記インナーパネルを支持すべく水平方向に延びる渡し材とを備え、前記インナーパネルに降車押ボタンを取り付けるための戸袋フレーム構造において、前記渡し材に形成され、降車押ボタン用のハーネスを収容すべく水平方向に延びると共に開口を車室側に向ける収容溝を備えたものである。
【0007】
前記渡し材は、前記収容溝が降車押ボタンの設置高さとなるように配置されてもよい。
【0008】
前記渡し材には、車室を内装するインナーパネルが前記収容溝を塞ぐように設けられてもよい。
【0009】
前記渡し材は、前記収容溝を形成するように鋼板を屈曲して形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の戸袋フレーム構造によれば、戸袋に降車押ボタン用のハーネスを容易に配線できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る戸袋フレーム構造を示し、(a)は戸袋の背面断面図であり、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【
図2】(a)は車室側から視た扉及び戸袋の側面図であり、(b)は(a)の平面断面説明図である。
【
図3】従来の戸袋フレーム構造を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
図2(a)、(b)に示すように、側壁1には乗降口2が形成され、乗降口2には、乗降用扉3が車両走行方向の前後にスライド自在に設けられる。なお、紙面右側が車両走行方向前方である。また、バスの乗降口2に臨む側壁1には乗降用扉3が開いたとき乗降用扉3を収容する戸袋4が形成される。戸袋4は、側壁1の車外側に形成される外側骨格5と側壁1の内装面を形成するインナーパネル6との間に形成される。
【0014】
外側骨格5は、例えば、乗降口2に臨む位置に配置された外側入口柱7と、戸袋4の閉扉方向の終端位置に配置された奥柱8と、外側入口柱7と奥柱8とに掛け渡された梁9とを備える。外側入口柱7、奥柱8はそれぞれ断面矩形の筒状に形成されている。なお、外側骨格5には、バス車体の外殻を構成する外板10(
図1参照)が取り付けられる。
【0015】
インナーパネル6は、戸袋4内に設けられた骨格材たる渡し材11によって支持される。渡し材11は、乗降口2に臨む側壁1の車室側に配置された内側入口柱12と奥柱8との間
に隔壁柱13等を介して掛け渡されており、車両走行方向の前後に延びる。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、渡し材11には、インナーパネル6を取り付けるためのパネル取付部14と、戸袋4の車室側の窓を支持するための窓枠部15と、降車押ボタン16用のハーネス17を収容するための収容溝18と、が形成されている。
【0017】
パネル取付部14は、バスの床面19に対して略垂直な板状に形成されており、インナーパネル6の裏面に面接触されるようになっている。
【0018】
窓枠部15は、渡し材11の上端部に形成されている。窓枠部15は、パネル取付部14の上端から略直角に屈曲されて車外側に延びる座部20と、座部20から略直角に上方に屈曲される鍔部21とを備える。
【0019】
収容溝18は、パネル取付部14の上下方向の中央に形成されている。収容溝18は、水平方向に延びると共に開口22を車室側に向けて形成されている。具体的には、渡し材11は、パネル取付部14、窓枠部15及び収容溝18を形成するように鋼板をプレス成形等により屈曲して形成される。また、渡し材11は、収容溝18がインナーパネル6に取り付けられる降車押ボタン16の設置高さとなるように内側入口柱12と奥柱8との間に掛け渡されている。一般に、降車押ボタン16の取り付け高さは隣接する椅子(図示せず)の高さ等に応じて決定される。また、戸袋4の周囲にはフェンダー等はなく、戸袋4に隣接する椅子の高さは一定である。このため、渡し材11は、床からの収容溝18の高さが降車押ボタン16の所定の取り付け高さとなるように配置される。
【0021】
戸袋4に降車押ボタン16用のハーネス17を配線する場合、予め側壁1の図示しない柱内に配線されたハーネス17を分岐させる等して戸袋4の奥側から車室側に延ばす。このとき、インナーパネル6は渡し材11から取り外された状態にしておく。また、インナーパネル6には、収容溝18内のハーネス17を通すための孔(図示せず)を予め形成しておく。なお、ハーネス17を通すための孔の孔開け作業は、ハーネス17の配線作業と並行して行ってもよい。
【0022】
この後、収容溝18内に降車押ボタン16用のハーネス17を配線する。このとき、収容溝18内にハーネス17を粘着テープ等によって仮止めしてもよい。車室側から配線作業ができるため、容易かつ迅速に配線できる。また、ハーネス17は収容溝18によって保護されるため、収容溝18内で弛んでいてもよく、乗降用扉3とハーネス17とが干渉することを配慮する必要はない。
【0023】
この後、渡し材11にインナーパネル6を取り付ける作業と、ハーネス17の接続作業と、インナーパネル6に降車押ボタン16を取り付ける作業とを任意の順番で行う。
【0024】
渡し材11にインナーパネル6を取り付ける作業は、インナーパネル6の孔に収容溝18内に配線されたハーネス17を通し、収容溝18を塞ぐように渡し材11にインナーパネル6を取り付けることで行う。これにより、ハーネス17の周囲が収容溝18とインナーパネル6とで覆われて保護される。
【0025】
ハーネス17の接続作業は、孔から延びるハーネス17と降車押ボタン16から延びるハーネス17とを接続することにより行う。なお、ハーネス17の接続作業は、渡し材11にインナーパネル6を取り付ける作業よりも前に行ってもよい。
【0026】
インナーパネル6に降車押ボタン16を取り付ける作業は、インナーパネル6の表面に降車押ボタン16を、ハーネス17用の孔が塞がれるように取り付けることで行う。なお、インナーパネル6に降車押ボタン16を取り付ける作業は、渡し材11にインナーパネル6を取り付ける作業の前に行ってもよい。この場合、予め降車押ボタン16から延びるハーネス17を孔に通し、収容溝18内のハーネス17と接続しておくとよい。また同様に、インナーパネル6に降車押ボタン16を取り付ける作業は、ハーネス17の接続作業の前に行ってもよい。ただし、降車押ボタン16の取り付けが上下2点でのスクリュー固定の場合は、渡し材11が降車押ボタン16の取付相手となり、補強裏板として機能するため、渡し材11にインナーパネル6を取り付けた後で降車押ボタン16の取付作業を行う。
【0027】
乗降用扉3が開閉するとき、乗降用扉3の車室側の面とハーネス17との間には常に渡し材11が介在されるため、乗降用扉3がハーネス17に当たる心配はない。また、渡し材11は、鋼材からなりハーネス17のように動く可能性があるものではないため、従来構造における乗降用扉3とハーネス17との間隔D2のように安全を見込んで大きなクリアランスを設定する必要がなく、戸袋4の車幅方向の寸法を小さくでき、車室を広くすることができる。
【0028】
このように、渡し材11に形成され、降車押ボタン16用のハーネス17を収容すべく水平方向に延びると共に開口22が車室側を向く収容溝18を備えたため、渡し材11にハーネス17を配線するためのスペースを形成できると共に渡し材11でハーネス17を保護でき、乗降用扉3とハーネス17とのクリアランスを容易に保証できる。また、乗降用扉3と収容溝18とのクリアランスD2は、従来の乗降用扉3とハーネス17とのクリアランスD1(
図3参照)のように安全のための余裕を設ける必要はない。そして、車室側からのハーネス施工が可能となり、戸袋4に降車押ボタン16用のハーネス17を容易に配線できる。また、従来のように乗降用扉3のスライド方向に延びるハーネス17を多数の点で確実かつ精度よく留める必要がなく、工数を削減できる。
【0029】
また、渡し材11は、収容溝18が降車押ボタン16の設置高さとなるように配置されるものとしたため、降車押ボタン16の設置位置のインナーパネル6にハーネス17用の孔を開けることで収容溝18内のハーネス17と降車押ボタン16から延びるハーネス17とを最短距離で接続でき、工数を削減できる。
【0030】
インナーパネル6は、収容溝18を塞ぐように渡し材11に取り付けられるものとしたため、降車押ボタン16の設置位置のインナーパネル6にハーネス17用の孔を開けることでその孔を降車押ボタン16で塞ぐことができ、降車押ボタン16周りの外観を美しく仕上げることができる。
【0031】
渡し材11は、収容溝18を形成するように鋼板を屈曲して形成されるものとしたため、部品点数が増えて部品管理のコストが上昇するのを防ぐことができ、収容溝18を安価に形成できる。
【符号の説明】
【0032】
1 側壁
2 乗降口
3 乗降用扉
4 戸袋
5 外側骨格
6 インナーパネル
11 渡し材
16 降車押ボタン
17 ハーネス
18 収容溝
22 開口