特許第6179264号(P6179264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179264
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】管楽器用ベル、管楽器及び縁輪
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/00 20060101AFI20170807BHJP
   G10D 7/06 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G10D9/00 110
   G10D7/06
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-167066(P2013-167066)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34950(P2015-34950A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】足立 啓
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭51−048266(JP,Y1)
【文献】 米国特許第02328574(US,A)
【文献】 特開2003−337583(JP,A)
【文献】 特開2003−084756(JP,A)
【文献】 実開昭48−096931(JP,U)
【文献】 実公昭48−042165(JP,Y1)
【文献】 特公昭45−014835(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて管楽器本体に接続されるベル本体と、該ベル本体の外周面に設けられる金属製の縁輪と、を備え、
前記ベル本体の外周面に、該外周面の周方向に延びて前記縁輪を収容する収容溝部が形成され、
前記縁輪が、その周方向の一部を切り欠いた平面視C字状に形成されると共に、弾性変形可能であり、
前記縁輪が少なくとも前記収容溝部に収容された状態で、前記縁輪の周方向の一端及び他端を互いに近づける方向に付勢することを特徴とする管楽器用ベル。
【請求項2】
前記縁輪は、その周方向に対向する一端及び他端を連結すると共に、これら一端と他端との間隔を調整する調整ねじ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の管楽器用ベル。
【請求項3】
前記縁輪の周方向の一端及び他端が、丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載の管楽器用ベル。
【請求項4】
前記ベル本体に、前記収容溝部の周方向の一部を前記ベル本体の軸方向の一方の端部から外方に露出させる切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の管楽器用ベル。
【請求項5】
筒状に形成されて複数のキーを外周面に配した管楽器本体と、
該管楽器本体の一端に設けられる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の管楽器用ベルと、を備えることを特徴とする管楽器。
【請求項6】
筒状に形成されて管楽器本体に接続されるベル本体の外周面に形成された収容溝部に収容される金属製の縁輪であって、
周方向の一部を切り欠いた平面視C字状に形成されると共に、弾性変形可能であり、
さらに、内径寸法が、前記ベル本体から取り外された状態で、前記収容溝部の底部における前記ベル本体の外径寸法よりも小さいことを特徴とする縁輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管楽器用ベル、管楽器及び縁輪に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クラリネット、オーボエ、ファゴット等の各種管楽器は、管楽器本体の先端に、放音用のベル(管楽器用ベル)を備えている(例えば、特許文献1参照)。また、従来の管楽器用ベルには、ベル本体の外周に、リング状に形成された金属製の縁輪を固定したものがある。従来、縁輪をベル本体に固定する際には、例えば、縁輪の内周面に突起を形成した上で、縁輪の突起をベル本体の外周面に嵌めて締め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−249645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の管楽器用ベルでは、縁輪をベル本体から取り外すことが難しい、という問題がある。また、ベル本体が木製である場合、ベル本体が乾燥して収縮すると、ベル本体に対する縁輪の取付状態が緩くなってしまう虞もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、縁輪をベル本体に対して容易に着脱できる管楽器用ベル、これを備える管楽器、及び、管楽器用ベルに用いる縁輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の管楽器用ベルは、筒状に形成されて管楽器本体に接続されるベル本体と、該ベル本体の外周面に設けられる金属製の縁輪と、を備え、前記ベル本体の外周面に、該外周面の周方向に延びて前記縁輪を収容する収容溝部が形成され、前記縁輪が、その周方向の一部を切り欠いた平面視C字状に形成されると共に、弾性変形可能であり、前記縁輪が少なくとも前記収容溝部に収容された状態で、前記縁輪の周方向の一端及び他端を互いに近づける方向に付勢することを特徴とする。
また、本発明の管楽器は、筒状に形成されて複数のキーを外周面に配した管楽器本体と、該管楽器本体の一端に設けられる前記管楽器用ベルと、を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の縁輪は、筒状に形成されて管楽器本体に接続されるベル本体の外周面に形成された収容溝部に収容される金属製の縁輪であって、周方向の一部を切り欠いた平面視C字状に形成されると共に、弾性変形可能であり、さらに、内径寸法が、前記ベル本体から取り外された状態で、前記収容溝部の底部における前記ベル本体の外径寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明の管楽器用ベル、管楽器及び縁輪によれば、縁輪が平面視C字状に形成されているため、その周方向の一端及び他端が互いに離れるように縁輪を変形(塑性変形あるいは弾性変形)させることで、縁輪をベル本体に対して容易に着脱することができる。
【0008】
また、本発明の管楽器用ベル、管楽器及び縁輪によれば、縁輪が、自身の弾性力によってベル本体を締め付けることで、縁輪を確実にベル本体の外周面に固定することができる。なお、縁輪をベル本体に対して着脱する際には、縁輪の付勢力に抗って縁輪の周方向の一端及び他端が互いに離れるように縁輪を弾性変形させればよい。
【0009】
また、前記管楽器用ベルにおいて、前記収容溝部は、前記縁輪の径方向内縁側の部分のみを収容してもよい。
上記構成では、縁輪をベル本体に対して着脱する際に、縁輪の周方向の一端や他端を径方向へ移動させる長さを小さく抑えることができるため、さらに容易に着脱することが可能となる。
また、前記管楽器用ベルにおいては、前記縁輪の周方向の一端及び他端が、丸みを帯びていてもよい。
【0010】
また、前記管楽器用ベルにおいては前記ベル本体に、前記収容溝部の周方向の一部を前記ベル本体の軸方向の一方の端部から外方に露出させる切欠部が形成されてもよい。
上記構成によれば、縁輪をベル本体に対して着脱する際に、縁輪の一端(あるいは他端を)切欠部に通して収容溝部の内外に移動させることができるため、縁輪を容易にベル本体に対して着脱することが可能となる。
【0011】
また、前記管楽器用ベルにおいては、前記縁輪は、その周方向に対向する一端及び他端を連結すると共に、これら一端と他端との間隔を調整する調整ねじ部を備えてもよい。
上記構成によれば、調整ねじ部により、縁輪の周方向の一端と他端との間隔を調整することで、縁輪の内径寸法が変化するため、縁輪をベル本体に対してさらに容易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、縁輪をベル本体に対して容易に着脱することができる。また、縁輪をベル本体に対して容易に着脱できることで、例えベル本体が木製であり、ベル本体が乾燥して収縮しても、ベル本体に別の縁輪を容易に取り付けることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る管楽器の正面図である。
図2図1の管楽器を構成する管楽器用ベルの正面図である。
図3図2の管楽器用ベルを構成するベル本体の半体断面図である。
図4図2の管楽器用ベルを構成する縁輪の平面図である。
図5図2の管楽器用ベルの要部拡大断面図である。
図6図1に示す管楽器において、縁輪の有無による管楽器の音響特性の違いを示すグラフである。
図7】本発明の第二実施形態に係る管楽器用ベルの正面図である。
図8図7の管楽器用ベルを構成するベル本体の正面図である。
図9図8のベル本体を示す要部拡大図である。
図10】本発明の第三実施形態に係る管楽器用ベルに備える縁輪の要部拡大断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る管楽器用ベルの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下、図1〜6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る管楽器1は、木管楽器の一種のクラリネットである。管楽器1は、複数のキー11を外周面に配した本体管部(管楽器本体)2と、本体管部2の一端に設けられたベル部(管楽器用ベル)3と、を備える。本体管部2は、従来周知のマウスピース2A、バレル2B、上管2C及び下管2Dからなり、これらマウスピース2A、バレル2B、上管2C及び下管2Dは、本体管部2の軸線方向に順番に並べて接続されている。
【0015】
ベル部3は、図2,3に示すように、筒状に形成されたベル本体20と、ベル本体20の外周面に設けられる縁輪30と、を備える。
ベル本体20は、例えば木製あるいは樹脂製である。ベル本体20の軸線L1方向の一方の端部は、ベル本体20を本体管部2(下管)の一端に接続するための接続端部21となっている。ベル本体20の他方の端部は、管楽器1の音を外部に伝播させるための開口端部22となっている。本実施形態のベル本体20は、本体管部2に対して着脱可能となっている。このベル本体20は、その内径及び外径が曲線的に増加するテーパ管に形成されている。ベル本体20の内径及び外径は、開口端部22において最大となる。また、本実施形態のベル本体20の外周面は、例えば、開口端部22においてベル本体20の外径寸法が一定となるように、ベル本体20の軸線L1に沿って平坦に形成されている。
【0016】
ベル本体20の外周面には、その周方向に延びて後述する縁輪30を収容する収容溝部23が形成されている。収容溝部23は、図3,5に示すように、軸線L1を含む切断面において断面円弧状に形成されている。本実施形態では、収容溝部23の内面が、半円よりも小さい円弧(劣弧)に形成されている。すなわち、本実施形態の収容溝部23の内面は、軸線L1方向に沿う収容溝部23の幅方向の一方の端縁から、ベル本体20の径方向内側に向かうにしたがって収容溝部23の幅方向の他方の端縁に向かうように傾斜する傾斜面23Aを有している。この傾斜面23Aは、収容溝部23の内面のうち、開口端部22側に位置する収容溝部23の幅方向の一方の端縁のみに形成されてもよいが、図示例のように、収容溝部23の幅方向の両方の端縁に形成されてもよい。
【0017】
縁輪30は、金属製(例えば、チタン、鉄、同、金、銀、亜鉛、錫、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、クロムのいずれか一つ又は二つ以上の合金)であり、図2,4,5に示すように、その周方向の一部を切り欠いた平面視C字状に形成されている。
縁輪30は、外力を加えた際に変形するように形成されている。本実施形態の縁輪30は、弾性変形可能に形成され、縁輪30に対する外力を解除した際に、元の形状に復帰するようになっている。
周方向に対向する縁輪30の一端30A及び他端30Bは、丸みを帯びている、すなわち、半球状に形成されている。これら縁輪30の一端30Aと他端30Bとの間隔は、小さい方が好ましい。
【0018】
縁輪30の径方向内縁側の表面は、丸みを帯びている。本実施形態では、縁輪30の径方向外縁側の表面も丸みを帯びている。すなわち、縁輪30の周方向の断面は、図5に示すように、円形状に形成されている。
円形状に形成された縁輪30の周方向の断面の半径寸法は、収容溝部23の深さ寸法よりも大きく設定されている。言い換えれば、収容溝部23の深さ寸法は、縁輪30の径方向に沿う厚み寸法の半分以下となっている。このため、縁輪30をベル本体20に取り付けた状態では、縁輪30の径方向内縁側の部分のみが収容溝部23に収容され、縁輪30の径方向外縁側の部分は、収容溝部23から突出する。
【0019】
縁輪30の内径寸法は、縁輪30をベル本体20から取り外した状態で、収容溝部23の底部におけるベル本体20の外径寸法よりも小さく設定されている。このため、縁輪30をベル本体20に取り付けた状態では、縁輪30が、その周方向の一端30A及び他端30Bを互いに近づける方向に付勢し、縁輪30が自身の弾性力によってベル本体20を締め付けることになる。
【0020】
次に、以上のように構成される管楽器1において、縁輪30をベル本体20に対して着脱する場合には、縁輪30の一端30A及び他端30Bが互いに離れるように縁輪30を変形させればよい。
具体的に説明すれば、縁輪30をベル本体20に取り付ける際には、はじめに、縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)をベル本体20の収容溝部23に収容すればよい。次いで、縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)に連なる部分を少しずつ軸線L1方向に沿ってベル本体20の接続端部21側に移動させて、少しずつ収容溝部23に収容すればよい。最後に、縁輪30の他端30B(あるいは一端30A)を収容することで、縁輪30をベル本体20に取り付けることができる。
この状態では、縁輪30が、その周方向の一端30A及び他端30Bを互いに近づける方向に付勢し、縁輪30が自身の弾性力によってベル本体20を締め付けている。
【0021】
一方、縁輪30をベル本体20から取り外す際には、はじめに、縁輪30の付勢力に抗うように、縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)を、軸線L1方向に沿ってベル本体20の開口端部22側(図2において矢印Aで示す方向)に移動させて、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を収容溝部23から出せばよい。次いで、縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)に連なる部分を少しずつ軸線L1方向に沿ってベル本体20の開口端部22側に移動させて、少しずつ収容溝部23から出せばよい。最後に、縁輪30の他端30B(あるいは一端30A)を収容溝部23から出すことで、縁輪30をベル本体20から取り外すことができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係る管楽器1、これに備えるベル部3及び縁輪30によれば、縁輪30が平面視C字状に形成されているため、縁輪30の周方向の一端30A及び他端30Bが互いに離れるように縁輪30を変形(弾性変形)させることで、縁輪30をベル本体20に対して容易に着脱することができる。
また、縁輪30をベル本体20に対して容易に着脱できることで、例えベル本体20が木製であり、このベル本体20が乾燥して収縮しても、ベル本体20に別の縁輪30を容易に取り付けることも可能となる。
【0023】
さらに、縁輪30をベル本体20に対して容易に着脱できることで、同一のベル本体20を用いた管楽器1により二種類の音色を発することも可能となり、演奏する楽曲等に応じて音色を簡単に選択することができる。以下、図6のグラフを用いて説明する。
図6のグラフは、管楽器1の周波数特性の測定結果である。図中の「縁輪なし」は、縁輪30をベル本体20から取り外した場合の測定結果を示しており、図中の「縁輪あり」は、縁輪30をベル本体20に取り付けた場合の測定結果を示している。
【0024】
図6のグラフによれば、縁輪30をベル本体20から取り外した場合には、音の低周波成分(例えば第5次倍音以下の低次倍音)が、縁輪30をベル本体20に取り付けた場合と比較して強い。また、聴感では、柔らかい音が得られ、低次倍音が支配的である上記結果と一致する。
一方、縁輪30をベル本体20に取り付けた場合には、音の高周波成分(例えば第6次倍音以上の高次倍音)が、縁輪30をベル本体20から取り外した場合と比較して強い。また、聴感では、明るい音が得られ、高次倍音が支配的である上記結果と一致する。
すなわち、縁輪30をベル本体20に取り付けた場合と、縁輪30をベル本体20から取り外した場合とでは、音色が異なることが分かる。
【0025】
このような結果となる理由としては、縁輪30をベル本体20から取り外した場合には、ベル本体20のうち開口端部22の管壁に音圧エネルギーが吸収され、特に音の高周波数成分のダンピングが起きやすいことが考えられる。これに対し、縁輪30をベル本体20に取り付けた状態では、開口端部22の管壁の剛性が上がるため、音の高周波数成分を多く含んだ気柱振動が減衰せずに維持されることが考えられる。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、縁輪30をベル本体20に取り付けた状態で、縁輪30が自身の弾性力によってベル本体20を締め付けるため、縁輪30をベル本体20の外周面に確実に固定することができる。
また、本実施形態によれば、縁輪30をベル本体20に取り付けた状態で、縁輪30の径方向内縁側の部分のみが収容溝部23に収容されるため、縁輪30をベル本体20に対して着脱する際に、縁輪30の周方向の一端30Aや他端30Bを径方向へ移動させる長さを小さく抑えることができる。したがって、縁輪30をベル本体20に対してさらに容易に着脱することが可能となる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、収容溝部23の内面が傾斜面23Aを有しているため、縁輪30をベル本体20に対して着脱する際に、縁輪30の周方向の一端30Aや他端30Bを傾斜面23Aに沿って移動させればよいため、さらに縁輪30を収容溝部23に対して着脱することが可能となる。
また、本実施形態によれば、縁輪30の径方向内縁側の表面や、縁輪30の一端30A及び他端30Bが、丸みを帯びているため、縁輪30をベル本体20に対して着脱する際に、ベル本体20の外周面が縁輪30によって傷つけられることを防止できる。
【0028】
〔第二実施形態〕
次に、図7〜9を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態のベル部3と比較して、ベル本体20の構成のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0029】
図7〜9に示すように、この実施形態のベル部13のベル本体40には、収容溝部23の周方向の一部をベル本体40の開口端部(一方の端部)22から外方に露出させる切欠部44が形成されている。切欠部44は、ベル本体40の外周面から径方向内側に窪むように形成されている。切欠部44の深さ寸法は、収容溝部23の深さ寸法と同等に設定されている。切欠部44の内面は、図9のように開口端部22側から見て、例えば矩形状に形成されてもよいが、例えば図9に示すように円弧状に形成されていることがより好ましい。
【0030】
本実施形態のベル部13によれば、第一実施形態のベル部3と比較して、縁輪30をベル本体40に対してさらに容易に着脱することができる。
例えば、縁輪30をベル本体40に取り付ける場合には、はじめに縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)を収容溝部23に収容する際に、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を他端30B(あるいは一端30A)に対して径方向外側に動かすことなく、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を切欠部44に通すことで収容溝部23に入れればよいため、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を収容溝部23に容易に収容することが可能となる。なお、このように縁輪30をベル本体40に取り付けた状態では、図9に示すように、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)が切欠部44を通して外部に露出する。
また、例えば縁輪30をベル本体40から取り外す場合には、はじめに縁輪30の周方向の一端30A(あるいは他端30B)を縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)収容溝部23から出す際に、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を他端30B(あるいは一端30A)に対して径方向外側に動かすことなく、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を図7に示す矢印A方向に移動させて切欠部44に通すことで、縁輪30の一端30A(あるいは他端30B)を収容溝部23から容易に出すことが可能となる。
【0031】
〔第三実施形態〕
次に、図10を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態のベル部3と比較して、縁輪の構成のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。
図10に示すように、この実施形態の縁輪50は、その周方向の一端50A及び他端50Bを連結すると共に、これら一端50Aと他端50Bとの間隔を調整する調整ねじ部52を備える。調整ねじ部52は、板状の操作部53と、操作部53から互いに逆向きに突出する一対の雄ねじ部54A,54Bと、を備える。
【0032】
一対の雄ねじ部54A,54Bは、同一軸線上に配されている。一対の雄ねじ部54A,54Bの一方は右ねじであり、他方は左ねじとなっている。縁輪50の周方向の一端50A及び他端50Bには、各雄ねじ部54A,54Bに対応するねじ孔55A,55Bが形成されている。一対の雄ねじ部54A,54Bは各ねじ孔55A,55Bに螺着されている。
操作部53は、例えば作業者の手指やスパナ等の簡易な工具により、一対の雄ねじ部54A,54Bをその軸線周りに回転させる部分である。操作部53は、縁輪50の一端50Aと他端50Bとの間に配されている。操作部53は、例えば図10のように正多角柱形に形成されてもよいし、例えば任意の柱形状に形成されると共に、操作部53の外周面にローレット加工が施されてもよい。
以上のように構成される縁輪50は、第一、第二実施形態と同様に弾性変形可能に形成されてもよいが、例えば塑性変形可能に形成されてもよい。
【0033】
上記した本実施形態の縁輪50では、調整ねじ部52を一方の回転方向に回転させた際に、縁輪50の一端50Aと他端50Bとの間隔が広がるように縁輪50が変形する。この場合、縁輪50の内径寸法が大きくなる。また、調整ねじ部52をその軸線周りの他方に回転させた際には、縁輪50の一端50Aと他端50Bとの間隔が狭まるように縁輪50が変形する。この場合、縁輪50の内径寸法が小さくなる。
【0034】
本実施形態によれば、調整ねじ部52により縁輪50の周方向の一端50Aと他端50Bとの間隔を調整することで、縁輪50の内径寸法が変化するため、第一実施形態のベル部3と比較して、縁輪50をベル本体40に対してさらに容易に着脱することが可能となる。
例えば、縁輪50をベル本体40に取り付ける際には、予め操作部53を操作して縁輪50の内径寸法をベル本体40の外径寸法よりも大きくすればよい。そして、縁輪50を収容溝部23の径方向外側に配した状態で、操作部53を操作して縁輪50の内径寸法を小さくするだけで、縁輪50を収容溝部23に収容すると共に、縁輪50をベル本体40に締め付けて固定することができる。
【0035】
以上、上記実施形態により本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、縁輪30,50の周方向の断面が円形状に形成されているが、これに限ることはなく、少なくとも縁輪30,50の径方向内縁側の表面が丸みを帯びていればよい。縁輪30,50の周方向の断面は、例えば図11に示すように、縁輪50の径方向内縁側の表面が円弧状に形成されたティアドロップ形状に形成されてもよい。また、例えば縁輪30,50の周方向の断面が多角形状に形成されると共に、縁輪30,50の径方向内縁側に位置する角部が丸みを帯びていてもよい。これらの構成であっても、上記実施形態の場合と同様に、縁輪30,50をベル本体20,40に対して着脱する際に、ベル本体20,40の外周面を傷つけることを防止できる。
【0036】
また、上記実施形態では、本発明をベル本体20の外周面に設けられる縁輪30,50に適用して説明したが、本発明は、例えば、金属製のリング状に形成されて、マウスピース2A、バレル2B、上管2C、下管2D、ベル部3の各接続部分の外周面に設けられる胴輪60(図1参照)にも適用することが可能である。
さらに、上記実施形態では、本発明をクラリネットに適用して説明したが、本発明は他の管楽器にも適用可能である。他の管楽器としては、例えばクラリネット、オーボエ、ファゴット、リコーダー等の木管楽器が挙げられる。
【符号の説明】
【0037】
1…管楽器、2…本体管部(管楽器本体)、3…ベル部(管楽器用ベル)、20,40…ベル本体、21…接続端部(一方の端部)、22…開口端部(他方の端部)、23…収容溝部、23A…傾斜面、30,50…縁輪、30A,50A…一端、30B,50B…他端、44…切欠部、52…調整ねじ部、53…操作部、54A,54B…雄ねじ部、55A,55B…ねじ孔
図1
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