特許第6179270号(P6179270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179270
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/662 20150101AFI20170807BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20170807BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E05F15/662
   B60J5/04 C
   B60J5/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-172232(P2013-172232)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40423(P2015-40423A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 禎之
(72)【発明者】
【氏名】森 健太
(72)【発明者】
【氏名】梅村 栄介
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3324968(JP,B2)
【文献】 特許第3143381(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/155405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーに形成されたドア開口を開閉する車両ドアを開閉作動させるように適合された駆動部材を備え、
前記駆動部材は、
扁平モータと、
前記扁平モータの回転軸と平行な軸線を有する出力軸と、
前記回転軸及び前記出力軸にそれぞれ一体回転可能なように連結され、互いに噛合することで前記回転軸の回転を減速して前記出力軸に伝達する第1ギヤ及び第2ギヤと、
前記出力軸に一体回転するように固着され、前記車両ドアに連係された出力部材と
前記回転軸と前記第1ギヤとの間の動力を伝達する接続状態と、前記回転軸と前記第1ギヤとの間の動力を切断する非接続状態とを切り替えるクラッチとを備えた、車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用ドア開閉装置において、
前記クラッチは電磁クラッチである、車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア開閉装置において、
前記扁平モータ及び前記出力部材は、前記回転軸及び前記出力軸の軸線方向の位置において、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤに対して互いに同一側にそれぞれ配置された、車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドア開閉装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載された車両用ドア開閉装置は、駆動部材の駆動力又は手動による操作力によって該駆動部材に連係された車両ドアとしてのスライドドアを車両の前後方向に移動させてドア開口を開閉する。そして、駆動部材は、モータと、該モータの回転軸に一体回転するように固着されたウォームと、該ウォームと噛合するウォームホイールと、該ウォームホイールを軸支する回転シャフトと、該回転シャフトに一体回転するように固着された出力部材とを備えて構成される。なお、ウォームホイール及び回転シャフト間の動力伝達は、電磁クラッチにより断接可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−74255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の車両用ドア開閉装置は、減速機を構成するウォーム及びウォームホイール間の入力側から出力側への伝達効率(以下、「正効率」という。)に比べて出力側から入力側への伝達効率(以下、「逆効率」という。)が低い。そのため、電磁クラッチ等のクラッチを設けなければ実質的にスライドドアの手動操作を行うことが困難である。また、電磁クラッチ等のクラッチを設ける場合であっても、ウォーム及びウォームホイールを減速機として用いると上述した逆効率の問題から、スライドドアの手動操作させるためにはクラッチの配置場所が実質的に減速機と出力部材との間に限定されてしまう。
【0005】
本発明の目的は、クラッチを備えていなくても車両ドアの手動操作を行うことができ、又はクラッチを備えている場合はクラッチの配置自由度を向上させることができる車両用ドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ドア開閉装置は、車両ボデーに形成されたドア開口を開閉する車両ドアを開閉作動させるように適合された駆動部材を備え、前記駆動部材は、扁平モータと、前記扁平モータの回転軸と平行な軸線を有する出力軸と、前記回転軸及び前記出力軸にそれぞれ一体回転可能なように連結され、互いに噛合することで前記回転軸の回転を減速して前記出力軸に伝達する第1ギヤ及び第2ギヤと、前記出力軸に一体回転するように固着され、前記車両ドアに連係された出力部材とを備える。
【0007】
この構成によれば、前記回転軸及び前記出力軸間の回転伝達に係る前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、いわゆる平行軸の歯車(減速機構)を構成することで、ウォーム及びウォームホイールのような逆効率の低下が起きない。従って、クラッチを備えていなくても前記車両ドアの手動操作を行うことができる。また、クラッチを備えている場合は、例えばクラッチを前記出力部材及び前記第2ギヤ間だけでなく、前記回転軸及び前記第1ギヤ間にも配置することができる。すなわち、クラッチの配置自由度を向上させることができる。さらに、減速機構をウォーム及びウォームホイールから前記平行軸の歯車に変更すると、これに伴って前記回転軸の方向が略90度変更されることになる。そのため、モータとして前記扁平モータを用いることにより前記平行軸の歯車を用いた場合であっても車両用ドア開閉装置の出力軸方向への大型化を防ぐことができる。
【0008】
なお、「扁平モータ」とは、モータの外形において、軸線方向の長さよりも最長となる直径の方が大きく設定されたモータのことをいう。
上記車両用ドア開閉装置は、前記回転軸と前記第1ギヤとの間の動力を伝達する接続状態と、前記回転軸と前記第1ギヤとの間の動力を切断する非接続状態とを切り替えるクラッチを備える
【0009】
この構成によれば、手動で前記車両ドアを開閉する際に、前記クラッチにより前記回転軸及び前記第1ギヤ間の動力伝達を切断しておくことで、前記回転軸が回転することがなく、これに要する操作力を低減することができる。また、前記クラッチが前記回転軸及び前記第1ギヤ間の動力伝達を接続する状態では、前記クラッチは減速前の低トルクの回転を伝達することになり、その分、前記クラッチを小型及び軽量化することができる。
【0010】
上記車両用ドア開閉装置について、前記クラッチは電磁クラッチであることが好ましい。
この構成によれば、前記電磁クラッチが前記回転軸及び前記第1ギヤ間の動力伝達を接続する状態では、前記電磁クラッチは減速前の低トルクの回転を伝達することになり、その分、前記電磁クラッチを省電力化することができる。
【0011】
上記車両用ドア開閉装置について、前記扁平モータ及び前記出力部材は、前記回転軸及び前記出力軸の軸線方向の位置において、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤに対して互いに同一側にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、例えば前記扁平モータ及び前記出力部材を、前記回転軸及び前記出力軸の軸線方向の位置において、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤに対して互いに逆側にそれぞれ配置する場合に比べて、前記駆動部材全体を前記回転軸及び前記出力軸の軸線方向によりコンパクト化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、クラッチを備えていなくても車両ドアの手動操作を行うことができ、又はクラッチを備えている場合はクラッチの配置自由度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図。
図2】同実施形態を示す平面図。
図3】同実施形態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、車両用ドア開閉装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両の前後方向を「前後方向」という。
図3に示すように、車両ボデー10には、その側部に形成されたドア開口10aの上縁及び下縁に沿ってアッパレール11及びロアレール12が設置されるとともに、ドア開口10aの後方のクォータパネル10bにおいて前後方向に延在するセンターレール13が設置されている。そして、これらアッパレール11、ロアレール12及びセンターレール13には、ガイドローラユニット14を介して車両ドアとしてのスライドドア20が前後方向に移動可能に支持されている。スライドドア20は、前後方向への移動に伴ってドア開口10aを開閉する。なお、クォータパネル10bには、センターレール13の下縁に沿ってその略全長に亘りケーブルガイド15が設置されている。
【0016】
スライドドア20の内部下部には、駆動部材21が固定されている。この駆動部材21は、永久磁石モータからなる扁平モータ22及び該扁平モータ22により回転駆動される出力部材としてのドラム23を有しており、該ドラム23には第1ケーブル24及び第2ケーブル25が巻回されている。すなわち、これら第1及び第2ケーブル24,25の各々は、一方の端末がドラム23に連結された状態で該ドラム23に巻回されている。第1及び第2ケーブル24,25は、駆動部材21により選択的に巻き取り及び巻き出しされる。
【0017】
また、第1及び第2ケーブル24,25の各々は、中間プーリ26及びセンターレール13を移動するガイドローラユニット14に連結された案内プーリ27を経てスライドドア20側から車両ボデー10側へと渡され、ケーブルガイド15に沿って前後方向に配索されている。そして、第1ケーブル24は、ケーブルガイド15に案内されて車両の前方に配索され、他方の端末に連結されたテンショナー28を介して、ケーブルガイド15の前端側で車両ボデー10側に連結されている。また、第2ケーブル25は、ケーブルガイド15に案内されて車両の後方に配索され、他方の端末に連結されたテンショナー29を介して、ケーブルガイド15の後端側で車両ボデー10側に連結されている。
【0018】
このような構成にあって、例えば駆動部材21により第1ケーブル24を巻き出しつつ第2ケーブル25を巻き取ると、スライドドア20はドア開口10aを開放すべく車両の後方に移動する。一方、駆動部材21により第1ケーブル24を巻き取りつつ第2ケーブル25を巻き出すと、スライドドア20はドア開口10aを閉鎖すべく車両の前方に移動する。
【0019】
次に、駆動部材21の構造について説明する。
図2に示すように、駆動部材21は、各種構成部品を収容又は支持する箱状のケース30を備える。そして、ケース30の略平面状に広がる外壁面30aに前記扁平モータ22及び前記ドラム23が設置されている。
【0020】
すなわち、図1に示すように、ケース30の図示上側の前記外壁面30aには、扁平モータ22の外形をなす有蓋有底略円筒状のモータケース22aが設置されている。このモータケース22aは、直径Dが軸線O1の方向の長さLよりも大きく設定されている。そして、扁平モータ22の略円柱状の回転軸22bは、軸線O1に沿って外壁面30aを厚さ方向に貫通するとともに、ケース30内に進入した回転軸22bの先端部は、外壁面30aに略平行な反対側の外壁面30bに嵌着された軸受BE1により軸支されている。
【0021】
回転軸22bには、軸受BE1に隣接するケース30内で、例えば平歯車からなる第1ギヤ31が回転可能に支持されている。この第1ギヤ31には、軸線O1と略平行に扁平モータ22に向かって複数の係合突起31aが突設されている。また、回転軸22bの周りには、扁平モータ22及び第1ギヤ31間に挟まれるケース30内で電磁クラッチ40が設けられている。この電磁クラッチ40は、電磁コイル体41、ロータ42及びアーマチュア43を備えて構成される。
【0022】
電磁コイル体41は、軸線O1に一致する中心線を有する略円環状に形成されており、外壁面30aを厚さ方向に貫通する状態でモータケース22aに固着されている。なお、回転軸22bは、電磁コイル体41の中央部に遊挿されている。
【0023】
ロータ42は、磁性材料にて軸線O1に一致する中心線を有する略円環状に形成されており、電磁コイル体41及びアーマチュア43間に挟まれた状態で回転軸22bに一体回転するように固着されている。このロータ42のアーマチュア43に当接する対向面には、摩擦板(図示略)が埋設されている。なお、ロータ42は、軸線O1の方向の位置が電磁コイル体41と一部重なり合うよう該電磁コイル体41に対して回転可能に遊嵌されている。
【0024】
アーマチュア43は、磁性材料にて軸線O1に一致する中心線を有する略円環状に形成されており、ロータ42及び第1ギヤ31間に挟まれた状態で回転軸22bが遊挿されている。また、アーマチュア43には、複数の係合突起31aにそれぞれ対応して軸線O1と略平行に貫通する複数の係合孔43aが形成されている。アーマチュア43は、これら係合孔43aの各々に係合突起31aが嵌合することで、第1ギヤ31と一体回転するように連結されている。なお、アーマチュア43の外径は、ロータ42の外径と同等に設定されている。そして、アーマチュア43のロータ42に当接する対向面にも、摩擦板(図示略)が埋設されている。
【0025】
外壁面30aには、軸線O1に平行な軸線O2に沿って厚さ方向に略円柱状の出力軸32が貫通する。出力軸32は、当該貫通部位が外壁面30aに嵌着された軸受BE2により軸支されるとともに、ケース30内に進入した先端部が外壁面30bに嵌着された軸受BE3により軸支されている。そして、出力軸32には、軸受BE2,BE3間に挟まれるケース30内で、例えば平歯車からなる第2ギヤ33が一体回転するように固定されている。この第2ギヤ33は、第1ギヤ31と互いに噛合しており、互いに逆方向となる回転を伝える。このとき、第2ギヤ33は、第1ギヤ31の歯数及び第2ギヤ33の歯数に基づく速度伝達比に従って第1ギヤ31の回転速度よりも小さい回転速度で回転する。
【0026】
外壁面30aからケース30の外側に突出する出力軸32の先端部には、前記ドラム23が一体回転するように固定されている。つまり、扁平モータ22及びドラム23は、回転軸22b及び出力軸32の軸線O1,O2の方向の位置において、互いに同一側となるケース30の外側に、即ち第1ギヤ31及び第2ギヤ33に対して互いに同一側にそれぞれ配置されている。
【0027】
ケース30内には、第1ギヤ31に対して第2ギヤ33の反対側に電子制御装置(以下、「ECU」という)50が収容されている。このECU50は、外部機器(外部電源等)と電気的に接続されるとともに、扁平モータ22及び電磁クラッチ40と電気的に接続されている。そして、ECU50は、扁平モータ22の通電・非通電を制御することでその駆動を制御する。あるいは、ECU50は、電磁コイル体41の通電・非通電を制御することで電磁クラッチ40の駆動を制御する。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えばECU50により電磁コイル体41が通電状態とされると、該電磁コイル体41が形成する磁界によりアーマチュア43がロータ42に吸着されて両者が摩擦係合する(接続状態)。この電磁クラッチ40の接続状態において、ECU50により扁平モータ22が駆動されると、回転軸22bと一体でロータ42が回転する。そして、ロータ42の回転は、アーマチュア43との摩擦係合により該アーマチュア43に伝わる。これにより、アーマチュア43と一体で第1ギヤ31が回転する。
【0029】
第1ギヤ31の回転は、第2ギヤ33との噛合により該第2ギヤ33に減速されて伝わる。これにより、第2ギヤ33と一体で出力軸32及びドラム23が回転する。この場合、回転軸22b及び出力軸32間の回転伝達に係る第1ギヤ31及び第2ギヤ33は、いわゆる平行軸の歯車(減速機構)を構成することで、それらの間の正効率が極めて高くなる。従って、第1ギヤ31及び第2ギヤ33間の正効率が高い分、出力の小さい扁平モータ22が採用されている。なお、ドラム23の回転に伴ってスライドドア20が開閉作動することは既述のとおりである。
【0030】
一方、ECU50により電磁コイル体41が非通電状態とされ、電磁クラッチ40の非接合状態になると、ECU50により扁平モータ22が駆動され、回転軸22bと一体でロータ42が回転しても、アーマチュア43との摩擦係合が解除されていることによりその回転がアーマチュア43に伝わることはない。つまり、アーマチュア43と共に第1ギヤ31、第2ギヤ33、出力軸32及びドラム23は停止したままとなる。
【0031】
あるいは、例えば外力によってドラム23が回転すると、該ドラム23と一体で出力軸32及び第2ギヤ33が回転する。そして、第2ギヤ33の回転は、第1ギヤ31との噛合により該第1ギヤ31に伝わる。これにより、第1ギヤ31と一体でアーマチュア43が回転する。しかしながら、アーマチュア43の回転は、ロータ42との摩擦係合が解除されていることにより該ロータ42に伝わることはない。従って、手動によるスライドドア20の開閉操作によってドラム23を回転させる際には、該ドラム23等が回転しても扁平モータ22の回転軸22bが回転することはなく、当該操作に要する操作力が低減されている。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、回転軸22b及び出力軸32間の回転伝達に係る第1ギヤ31及び第2ギヤ33は、いわゆる平行軸の歯車(減速機構)を構成することで、ウォーム及びウォームホイールのような逆効率の低下が起きない。従って、クラッチを備えていなくてもスライドドア20の手動操作を行うことができる。また、クラッチを備えている場合は、例えばクラッチをドラム23及び第2ギヤ33間だけでなく、回転軸22b及び第1ギヤ31間にも配置することができる。すなわち、クラッチの配置自由度を向上させることができる。さらに、減速機構をウォーム及びウォームホイールから平行軸の歯車に変更すると、これに伴って回転軸22bの方向も略90度変更されることになる。そのため、モータとして扁平モータ22を用いることにより平行軸の歯車を用いた場合であっても車両用ドア開閉装置の出力軸方向への大型化を防ぐことができる。
【0033】
(2)本実施形態では、手動でスライドドア20を開閉する際に、電磁クラッチ40により回転軸22b及び第1ギヤ31間の動力伝達を切断しておくことで、回転軸22bが回転することがなく、コギング力の影響も解消されることで、これに要する操作力を低減することができる。また、電磁クラッチ40が回転軸22b及び第1ギヤ31間の動力伝達を接続する状態では、電磁クラッチ40は減速前の低トルクの回転を伝達することになり、その分、電磁クラッチ40を必要保持トルクのより小さい小型、軽量及び低コストなものにできる。
【0034】
(3)本実施形態では、電磁クラッチ40が回転軸22b及び第1ギヤ31間の動力伝達を接続する状態では、電磁クラッチ40は減速前の低トルクの回転を伝達することになり、その分、電磁クラッチ40を省電力化することができる。また、電磁クラッチ40自体をより低コスト化することができる。
【0035】
(4)本実施形態では、扁平モータ22及びドラム23を、回転軸22b及び出力軸32の軸線O1,O2の方向の位置において、第1ギヤ31及び第2ギヤ33に対して互いに同一側にそれぞれ配置した。これにより、例えば扁平モータ22及びドラム23を、回転軸22b及び出力軸32の軸線O1,O2の方向の位置において、第1ギヤ31及び第2ギヤ33に対して互いに逆側にそれぞれ配置する場合に比べて、駆動部材21全体を軸線O1,O2の方向によりコンパクト化することができる。つまり、回転軸22bの軸線O1の方向における扁平モータ22の配置位置に相当する出力軸32の軸線O2の方向の位置に形成されるスペースを有効利用して、ドラム23を配置することができる。
【0036】
(5)本実施形態では、回転軸22b及び出力軸32間の回転伝達にウォームギヤを使用しないことで、それらの間の逆効率を高くでき、より小さい操作力でスライドドア20を開閉操作することができる。
【0037】
(6)本実施形態では、扁平モータ22を採用したことで、平行軸の歯車で回転伝達を行っても駆動部材21を薄くでき、スライドドア20内での搭載性を向上させることができる。また、スライドドア20内に駆動部材21を搭載するためにスライドドア20の厚みを増す必要性を軽減できるため、その分、車室内空間を広く確保することができる。
【0038】
(7)本実施形態では、手動でスライドドア20を高速で開閉する際に、電磁クラッチ40により回転軸22b及び第1ギヤ31間の動力伝達を切断しておくことで、回転軸22bが回転することがなく、扁平モータ22の逆起電力等の発電も解消されることで、ECU50への影響をなくすことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、第1及び第2ギヤ31,33は、はすば歯車であってもよい。
【0040】
・前記実施形態において、第1及び第2ギヤ31,33間にそれらの間の動力伝達を中継する第3ギヤを設けてもよい。また、当該第3ギヤは、単数であっても複数であってもよい。
【0041】
・前記実施形態において、扁平モータ22のモータケース22aは、楕円形、卵形又は小判形のように短径及び長径を有する扁平円の筒状であってもよい。この場合、モータケース22aは、長径が軸線方向の長さよりも大きく設定されていればよい。
【0042】
・前記実施形態において、ロータ42及びアーマチュア43のいずれか一方にのみ摩擦板を埋設するようにしてもよい。また、ロータ42及びアーマチュア43を摩擦係合させるために必ずしも摩擦板は必要ではない。
【0043】
・前記実施形態において、扁平モータ22及びドラム23は、回転軸22b及び出力軸32の軸線O1,O2の方向の位置において、第1ギヤ31及び第2ギヤ33に対して互いに逆側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0044】
・前記実施形態において、例えば、電磁クラッチ40のロータ42とアーマチュア43との関係は反対であってもよく、電磁クラッチ40を構成する部材の配置関係はどのようなものであってもよい。
【0045】
・前記実施形態において、第2ギヤ33及びドラム23間にクラッチを設けてそれらの間の動力伝達を断接するようにしてもよい。
・前記実施形態において、電磁クラッチ40に代えて、機械式のクラッチを採用してもよい。
【0046】
・前記実施形態において、電磁クラッチ40を省略してもよい。この場合、手動でスライドドア20を開閉する際に扁平モータ22の回転軸22bが回転することになるが、第1ギヤ31及び第2ギヤ33間の逆効率が高いことで回転軸22bが回転しやすくなり、これに要する操作力を低減することができる。
【0047】
・前記実施形態において、車両ボデー10に搭載される駆動部材21であってもよい。
・本発明は、例えばスイングドアやバックドアなどに適用してもよい。それらの場合、出力部材としてベルトのプーリ、アームなどを適宜採用すればよい。また、いずれの出力部材であっても、扁平モータ及び出力部材を、回転軸及び出力軸の軸線方向の位置において、第1ギヤ31及び第2ギヤ33に対して互いに同一側にそれぞれ配置することがより好ましい。
【符号の説明】
【0048】
10…車両ボデー、10a…ドア開口、20…スライドドア(車両ドア)、21…駆動部材、22…扁平モータ、22b…回転軸、23…ドラム(出力部材)、31…第1ギヤ、32…出力軸、33…第2ギヤ、40…電磁クラッチ(クラッチ)。
図1
図2
図3