(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179304
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】印刷インキ包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/24 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
B65D81/24 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-192647(P2013-192647)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-58946(P2015-58946A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 司
【審査官】
二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−002721(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00083826(EP,A1)
【文献】
特開2000−255008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/24
B65D 81/26
B65D 65/40
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷インキを軟容器に充填してなる印刷インキ包装体であって、軟容器が、基材、酸素バリヤ層、および、シーラント層を含み、かつ、基材と酸素バリヤ層との間、および/または、酸素バリヤ層とシーラント層との間に、高密度ポリエチレン層を有する積層体からなり、さらに、酸素バリヤ層と、シーラント層との間に酸素吸収層を有することを特徴とする印刷インキ包装体。
【請求項2】
酸素吸収層が、酸素と接することにより酸化する化合物を含む請求項1記載の印刷インキ包装体。
【請求項3】
酸素と接することにより酸化する化合物が、ビタミンC、グリセリン、水酸化カルシウム、鉄または亜硫酸塩である請求項1または2記載の印刷インキ包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷イン
キを軟容器に充填した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキは、金属や樹脂などの硬質材料で形成された缶(以下、硬容器とも称する)を容器として収容され、市場に提供されている(特許文献1参照)。
印刷インキの容器が硬質材からなる缶とされていることについては、メリットも多い反面、いくつかの改善も要望されている。
例えば、生産から廃棄までのCO
2排出量の更なる削減が可能になること、エンドユーザーにおける廃棄コストの低減が推進できること、などである。また、缶が円筒形の場合には、梱包状態で隣接する缶同士間の隙間が広くなることから梱包効率の向上も要望項目となっている。
これらの要望に対しては、容器を、硬容器ではなく、ラミネートフィルムを熱シールにより袋状とした軟容器とし、その中に印刷インキを充填した充填包装体を商品として提供することが考えられる。
【0003】
しかし、印刷インキを軟容器に充填しようとすると、以下に示すいくつかの課題が生じ、出願人はこれらの課題を解消した以下の充填包装体の出願を行った(特許文献2)。
一般的に、印刷インキは品質維持のために酸素遮断を必要とするものが多く、そのため、容器内に空間が生じる場合には最終的に窒素置換を行う必要がある。
また、印刷インキにおいて、硬容器を用いた商品に対し軟容器を用いた商品を相応のコストで市場提供するためには、できるだけ工程を省き、かつ多量に効率よく生産できることが望ましい。例えば、硬容器の場合の生産能力に匹敵する生産速度で製造できることが軟容器に対して求められる。
これらの要望事項に関し、通常軟容器では、フィルムを筒状化し、その内部に充填物を充填しつつ両端部をシールし、そのシールした部分での切断を行うことで、充填物を軟容器に充填してなる充填包装体を連続的に製造することが可能である。従って、印刷インキを充填物とした場合には、軟容器内に空間が生じないことにより窒素置換の工程を省くことができ、低コスト化及び高速生産化が期待される。
【0004】
しかしながら、印刷インキは、シール面に微量でも付着した状態で熱シールをすると、商品として必要なシール強度を得難く、特に印刷インキが油性の場合には強度が顕著に低下する。そのため、包装体としての品質管理が難しく、軟容器としての商品化が阻まれていた。
特許文献2で開示された軟容器入り印刷インキは、利便性が向上された面で、印刷インキを扱うユーザー評価は好評であるが、缶入りインキに比べると、新たな課題が認識された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3171969号公報
【特許文献2】特開2012−229057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2で開示された軟容器入り印刷インキは、缶入りインキに比べると、開封前の保存期間が短い、インキ取り出し際の開封しづらい、使用途中の軟容器に残ったインキの保管性が向上すべきであるなど、次の新たな課題が認識され、特に、開封前の保存期間が短いことは、最優先で解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題のうち、開封前の保存安定性を解決するために、軟容器を構成する積層体部分と、前記積層体をシールする部分との双方を工夫することにより、本発明を想到した。
すなわち、本発明の印刷インキ包装体は、次の構成を有する。
1)充填物である印刷インキ
2)軟容器を構成する積層体をシールしてなる包装体
よりなる印刷インキ包装体であって、
3)軟容器が、基材、酸素バリヤ層、および、シーラント層を含み、かつ、
基材と酸素バリヤ層との間、および/または、酸素バリヤ層とシーラント層との間に、高密度ポリエチレン層を有する積層体からな
り、
【0008】
さらに、酸素バリヤ層と、シーラント層との間に酸素吸収層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の印刷インキ用軟容器で保存された印刷インキより、格段の保存期間が確保された印刷インキを提供できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】インキの取り出し口が円形の穴であり、穴をカバーフィルムで覆う形態の包装体。(a)はカバーフィルムを覆われた状態。(b)は、カバーフィルムを剥がした状態。
【
図2】インキの取り出し口が十字形の切込みであり、穴をカバーフィルムで覆う形態の包装体。(a)はカバーフィルムを覆われた状態。(b)は、カバーフィルムを剥がした状態。
【
図3】スパウトを装着した形態の包装体。(a)はキャップした状態。(A)は、装着前の、接着剤で貼り付けるタイプのスパウト。(B)は、装着前の穿孔可能な刃を有するスパウト。(b)は、キャップをはずした状態。
【
図4】キャップ付きチューブ型の形態の包装体。(a)はキャップした状態。(b)は、キャップをはずした状態。
【
図5】キャップ付きパウチ容器型の形態の包装体。(a)はキャップした状態。(b)は、キャップをはずした状態。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により
図1〜
図5を用いて説明する。
【0012】
包装体1は、軟容器6の中に充填物7を充填したものである。軟容器6は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを基材としたガスバリヤ性を有する不透明の多層フィルムから形成されている。
従来の一般的な多層フィルムの具体的構成は、ポリエチレンテレフタレート(PET)/アルミ箔/二軸延伸ナイロン(ONY)/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDEP)の多層(四層)構成である。この構成において、アルミ箔は酸素バリヤ層、PET層〜ONY層が基層、LLDEP層がシーラント層として機能する。
【0013】
本発明の多層積層体は、基材と、酸素バリヤ層と、シーラント層とを必須とする。
本発明で用いられる基材としては、PET、NY(ナイロン)などが挙げられる。
また、シーラント層は、熱シールする場合は、LLDEPが好ましい。シール強度を向上させるために、さらに、接着剤、粘着剤など併用してもよい。
【0014】
酸素バリヤ層は、アルミ箔(AL)が好適に用いられるが、アルミ、珪素などの蒸着層であってもよい。蒸着で酸素バリヤ層を設ける場合は、蒸着層である酸素バリヤ層と隣接する少なくともいずれの側の層上に蒸着されていてもよい。また酸素バリヤ層は、単層ではなく、複数層、例えば、芯材の両面が蒸着されたものであってもよい。
【0015】
多層積層体の熱シール強度と酸素バリヤ性を改善するために、本発明の多層積層体は、基材と酸素バリヤ層との間、および/または、酸素バリヤ層とシーラント層との間に、高密度PE(HDPE)層を必須とすることが好ましい。HDPEは、さらに、延伸処理がされていると、切り裂き性が向上する。
【0016】
また、酸素バリヤ層と隣接層との間に、酸素吸収層を設け
る。特に、酸素バリヤ層のLLDPE層側に設定することが効果的である。
酸素吸収層は、酸素と接することにより酸化する化合物を含むものであり、前記酸素と接することにより酸化する化合物としては、ビタミンC、グリセリン、水酸化カルシウムなどの有機物、あるいは、鉄、亜硫酸塩などの無機物、あるいは、無機有機複合体が挙げられる。多くの場合、酸素吸収を促進させるために、ハロゲン化金属、遷移金属触媒などの酸素吸収促進剤を用いることが、好ましい。これらの酸素と接することにより酸化する化合物は、ポリアミドやポリオレフィンなどの樹脂に練り込み、フィルム化し、積層されることによって、酸素吸収層となる。
【0017】
具体的に、HDPEを含む多層積層体構成としては、
NY/HDPE/AL/LLDPEなどが挙げられる。
【0018】
本発明のインキ包装体の開封をしやすくする工夫として、さきに、HDPEが切り裂き性が向上することを記載したが、別の、本発明の好ましい形態としては、インキ充填後の包装体の熱圧着されていない部分に、インキ取り出し口を搭載することが挙げられる。インキ取り出し口は、包装体の任意の場所、例えば、包装体を構成する積層体の熱圧着されていない部分に、インキ取り出し口を搭載される。
インキ取り出し口としては、例えば、あらかじめ、積層体の一部にインキが通過可能な穴(
図1)、又は切り込み(
図2)が1つまたは複数あり、これらの穴、又は切り込みをすべて覆うように包装体の外側にカバーフィルム2を装着したものが挙げられる。カバーフィルム2は、簡易接着剤2dなどで、包装体に接着される。あるいは、カバーフィルムの包装体側にシーラント層が積層されており、シーラント層が、包装体にシールされていてもよい。カバーフィルム2は、さらに、酸素バリア層を有していることが好ましい。カバーフィルム2を備えた部分の最終的な積層構造は、例えば、穴空きフィルム層(包装体)/簡易接着剤/酸素バリア層/シーラント層/高密度ポリエチレン層である。
カバーフィルム2の装着は、インキ充填前が好ましい。
カバーフィルム2は、穴、又は切り込みが露出するまで、包装体から剥離され、穴、又は切り込みからインキが供給可能となる。容器内にインキが残った際は、穴空きフィルム層上のインキをふき取り、再剥離可能な栗簡易接着剤2dにより繰り返し密閉することができ、軟容器内に残ったインキの保管が可能となる(
図1、
図2)。
インキ取り出し口の別の形態として、スパウトが挙げられる。スパウトは、インキ充填後、好ましくは、インキ供給の直前に装着できる仕様のものが好ましい。そのためには、スパウトが装着時に包装体の積層体を穿孔でき、穿孔後は包装体と一体となれることが好ましい(
図3)。又積層体への穿孔方法としては、包装体の積層体にスパウト下段に搭載された刃を回転させ穿孔しながら密着する方法(
図3)やカッタナイフなどにより穴または切込みを入れ、簡易接着剤でスパウトを固定する方法などがある。より好ましくは、スパウト蓋3bを取り付けることで、前記穴空きフィルムと同様、残ったインキの保管が可能となる。
更に、インキ取り出し口の別の形態として、そもそも、容器全体の形状を、キャップ付きチューブ型容器(歯磨き粉用タイプ)(
図4)やキャップ付きパウチ型容器(ゼリー飲料用タイプ)(
図5)などでも前記と同様な効果が得られる。
【0019】
上記多層積層体は、例えば、軟容器を構成する積層体のシーラント層同士を熱圧着し、筒状とし、さらに、特許文献2に記載した方法で、印刷インキを充填し、熱シールして印刷インキ包装体とすることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 軟包装容器本体
1a、1b 熱圧着部
2a カバーフィルム、2b カバーフィルム剥離用つまみ
2c インキ取り出し口(穴)、2d 簡易接着剤塗布面
2e インキ取り出し口(切り込み)
3a スパウト本体、3b キャップI、3c 積層体穿孔用刃
3e 雌ネジ部I
A スパウト本体(積層体穿孔用刃無し)、B スパウト本体(積層体穿孔用刃有り)
4 キャップ付きチューブ型容器、4a キャップII、4b シール部、4c 雌ネジ部II
5 キャップ付きパウチ容器、5a キャップIII、5b 雌ネジ部III