特許第6179309号(P6179309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179309
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ガラス材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   C03B19/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-195049(P2013-195049)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59074(P2015-59074A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史雄
(72)【発明者】
【氏名】榎本 朋子
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−178592(JP,A)
【文献】 特開2009−286670(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137276(WO,A1)
【文献】 特開2006−248801(JP,A)
【文献】 特開2014−141389(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/071143(WO,A1)
【文献】 米国特許第06482758(US,B1)
【文献】 特開2007−302539(JP,A)
【文献】 特開2009−149518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00−7/22
C03B 19/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料塊を作製し、浮遊させた前記ガラス原料塊を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、前記溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得るガラス材の製造方法であって、
前記ガラス原料塊を作製する工程が、
原料バッチを溶融用容器を用いて溶融する溶融工程と、
前記原料バッチの溶融物を冷却する冷却工程と、
を備え
前記ガラス原料塊が原料のままの粉体を含まないように前記溶融工程を行う、ガラス材の製造方法。
【請求項2】
前記溶融用容器として坩堝を用いる、請求項1に記載のガラス材の製造方法。
【請求項3】
前記原料バッチの溶融物を冷却して、結晶の塊を作製し、その結晶の塊を前記ガラス原料塊として用いる、請求項1又は2に記載のガラス材の製造方法。
【請求項4】
前記結晶の塊を、所望の大きさとなるよう粉砕または切断した後に前記ガラス原料塊として用いる、請求項に記載のガラス材の製造方法。
【請求項5】
前記結晶の塊を粉砕した後にプレスすることによりペレットを作製し、前記ペレットを前記ガラス原料塊として用いる、請求項に記載のガラス材の製造方法。
【請求項6】
前記原料バッチの溶融物を冷却することによりガラスを作製し、
前記ガラスを粉砕した後にプレスすることによりペレットを作製し、前記ペレットを前記ガラス原料塊として用いる、請求項1又は2に記載のガラス材の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス原料塊にレーザー光を照射することにより前記ガラス原料塊を加熱融解させる、請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス材の製造方法として、無容器浮遊法に関する研究がなされている。例えば、特許文献1には、ガス浮遊炉で浮遊させたAl、La、ZrO等の金属酸化物を含む原料塊にレーザービームを照射して加熱溶融した後に、冷却することにより、ガラス化させる方法が記載されている。このように、無容器浮遊法では、容器の壁面との接触に起因する結晶化の進行を抑制できるため、従来の容器を用いた製造方法ではガラス化させることができなかった材料であってもガラス化し得る場合がある。従って、無容器浮遊法は、新規な組成を有するガラス材を製造し得る方法として注目に値すべき方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/071143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ガラス原料塊の作製方法として以下の方法が記載されている。金属酸化物等のガラス原料を所望の比率で調合して得られた原料バッチにエタノールを加えてさらに混合してから、焼成を行う。焼成後のガラス原料を乳鉢ですりつぶし、エタノールを加えて粘度を調製してからプレスすることにより、円板状のガラス原料塊を得る。
【0005】
特許文献1に記載の方法で製造されたガラス原料塊を用いた場合、ガラス原料塊が好適に溶融されず、ガラス材の製造が困難となる場合がある。
【0006】
本発明の主な目的は、無容器浮遊法により好適にガラス材を製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス材の製造方法は、ガラス原料塊を作製し、浮遊させたガラス原料塊を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得るガラス材の製造方法である。本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料塊を作製する工程は、溶融工程と、冷却工程とを備える。溶融工程では原料バッチを溶融する。冷却工程では、原料バッチの溶融物を冷却する。
【0008】
本発明に係るガラス材の製造方法では、原料バッチの溶融物を冷却して、結晶の塊を作製し、その結晶の塊をガラス原料塊として用いてもよい。この際、結晶の塊を、所望の大きさとなるよう粉砕または切断した後にガラス原料塊として用いることが好ましい。
【0009】
本発明に係るガラス材の製造方法では、結晶の塊を粉砕した後にプレスすることによりペレットを作製し、ペレットをガラス原料塊として用いてもよい。
【0010】
本発明に係るガラス材の製造方法では、原料バッチの溶融物を冷却することによりガラスを作製し、ガラスを粉砕した後にプレスすることによりペレットを作製し、ペレットをガラス原料塊として用いてもよい。
【0011】
本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料塊にレーザー光を照射することによりガラス原料塊を加熱融解させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無容器浮遊法により好適にガラス材を製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。
図2】第1の実施形態における成形面の一部分の略図的平面図である。
図3】第2の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0016】
(第1の実施形態)
本実施形態では、通常のガラス材をはじめ、例えば、網目形成酸化物を含まないような、容器を用いた溶融法によってはガラス化しない組成を有するガラス材であっても好適に製造し得る方法について説明する。本実施形態の方法によれば、具体的には、例えば、チタン酸バリウム系ガラス材、ランタン−ニオブ複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−アルミニウム複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−タンタル複合酸化物系ガラス材、ランタン−タングステン複合酸化物系ガラス材等を好適に製造し得る。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係るガラス材の製造装置1の模式的断面図である。図1に示されるように、ガラス材の製造装置1は、成形型10を有する。成形型10は、成形面10aを有する。成形面10aは、曲面である。具体的には、成形面10aは、球面状である。
【0018】
成形型10は、成形面10aに開口しているガス噴出孔10bを有する。図2に示されるように、本実施形態では、ガス噴出孔10bが複数設けられている。具体的には、複数のガス噴出孔10bは、成形面10aの中心から放射状に配列されている。
【0019】
なお、成形型10は、連続気泡を有する多孔質体により構成されていてもよい。この場合、ガス噴出孔10bは、連続気泡により構成される。
【0020】
ガス噴出孔10bは、ガスボンベなどのガス供給機構11に接続されている。このガス供給機構11からガス噴出孔10bを経由して、成形面10aにガスが供給される。
【0021】
ガスの種類は、特に限定されない。ガスは、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
【0022】
製造装置1を用いて、ガラス材を製造するに際しては、まず、ガラス原料塊12を成形面10a上に配置する。ガラス原料塊12の形状は、特に限定されない。ガラス原料塊12は、例えば、レンズ状、球状、円柱状、多角柱状、直方体状、楕球状等であってもよい。
【0023】
次に、ガス噴出孔10bからガスを噴出させることにより、ガラス原料塊12を成形面10a上で浮遊させる。すなわち、ガラス原料塊12が成形面10aに接触していない状態で、ガラス原料塊12を保持する。その状態で、レーザー光照射装置13からレーザー光をガラス原料塊12に照射する。これによりガラス原料塊12を加熱溶融してガラス化させ、溶融ガラスを得る。その後、溶融ガラスを冷却することにより、ガラス材を得ることができる。ガラス原料塊12を加熱溶融する工程と、溶融ガラス、さらにはガラス材の温度が少なくとも軟化点以下となるまで冷却する工程とにおいては、少なくともガスの噴出を継続し、ガラス原料塊12、溶融ガラスまたはガラス材と成形面10aとが接触することを抑制することが好ましい。
【0024】
なお、本実施形態では、レーザー光を照射することによりガラス原料塊12を加熱融解させる例について説明する。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、雰囲気加熱等によりガラス原料塊を加熱融解させてもよい。
【0025】
ところで、ガラス原料塊は、一般的には、原料バッチをプレス成形したタブレットの焼結体により構成されている。しかしながら、本発明者は、鋭意研究の結果、原料バッチをプレス成形したタブレットの焼結体によりガラス原料塊を構成した場合は、ガラス原料塊の融解が部分的に進行するなどして、ガラス原料塊が好適に融解しない場合があることを見出した。特に、レーザー光の照射によりガラス原料塊を局所的に加熱して融解させようとする場合は、ガラス原料塊が局所的に融解しやすく、またアブレーションも生じやすいため、ガラス原料塊が好適に融解しない場合が多い。本発明者らは、その一因が、原料のままの粉体があると融解に要するエネルギーが高いこと、また、気孔率が高く、熱伝導率が低いため、ガラス原料塊が部分的に加熱され、一部が融解する温度にまで加熱されにくくなることにあることを見出した。
【0026】
そこで、本実施形態では、原料バッチを一旦溶融する(溶融工程)。その後、溶融工程で得られた溶融物を冷却してガラス原料塊12を作製している(冷却工程)。このようにすることにより、ガラス原料塊12の融解に要するエネルギーを小さくすることができる。また、ガラス原料塊12の密度を高めることにより、熱伝導率を高め得る。従って、ガラス原料塊12が部分的に融解することを抑制でき、ガラス原料塊12の全体を好適に加熱融解させることができる。従って、ガラス材を好適に製造し得る。なお、原料バッチの溶融は、例えば、坩堝等の容器を用いて行うことができる。
【0027】
例えば、原料バッチの溶融物を冷却して、結晶の塊を作製し、その結晶の塊をガラス原料塊12として用いてもよい。この場合、ガラス原料塊12の密度が高く、熱伝導率が高いため、ガラス原料塊12の全体をより好適に加熱溶融させることができる。この際、結晶の塊を、所望の大きさとなるよう粉砕または切断した後にガラス原料塊12として用いることが好ましい。
【0028】
なお、結晶の塊を粉砕した後にプレスすることにより作製したペレットをガラス原料塊12として用いてもよい。この場合であっても、ガラス原料塊12の融解に要するエネルギーが低いため、ガラス原料塊12の全体を好適に融解させることができる。
【0029】
例えば、原料バッチの溶融物を冷却することによりガラスを作製し、ガラスを粉砕した後にプレスすることにより作製したペレットをガラス原料塊12として用いてもよい。この場合であっても、ガラス原料塊12の融解に要するエネルギーが低いため、ガラス原料塊12の全体を好適に融解させることができる。
【0030】
なお、ガラスの作製は、例えば、溶融ガラスを一対の金属ローラー間を通過させたり、水中に投入したりすることにより急冷する急冷法等により行うことができる。
【0031】
本発明において、原料バッチとは、例えば、金属酸化物粉末等のガラスの原料となる粉末を、所望のガラス組成が得られるように調合した後に混合することにより得られた粉末のことをいう。
【0032】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0033】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るガラス材の製造装置2の模式的断面図である。
【0034】
第1の実施形態では、複数のガス噴出孔10bが成形面10aに開口している例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図3に示されるガラス材の製造装置2のように、成形面10aの中央に開口しているひとつのガス噴出孔10bが設けられていてもよい。この場合であっても、第1の実施形態と同様に、ガラス材を好適に製造し得る。
【符号の説明】
【0035】
1,2:ガラス材の製造装置
10:成形型
10a:成形面
10b:ガス噴出孔
11:ガス供給機構
12:ガラス原料塊
13:レーザー光照射装置
図1
図2
図3