(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179332
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】トロイダル型無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 15/38 20060101AFI20170807BHJP
F16C 3/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F16H15/38
F16C3/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-212961(P2013-212961)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-75202(P2015-75202A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】大石 保徳
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−184263(JP,A)
【文献】
特開2002−195371(JP,A)
【文献】
特開平06−174030(JP,A)
【文献】
特開2002−206610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/00−15/56
F16J 15/16−15/32、15/324−15/3296、15/46−15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転自在に設けられた入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これら入力側ディスクおよび出力側ディスクの中心部を貫通してこれら入力側ディスクおよび出力側ディスクを支持する軸と、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクまたは前記出力側ディスクの背面側に油圧室を有し、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する油圧式押圧装置とを備えるトロイダル型無段変速機において、
背面側に前記油圧室が配置された出力側ディスクまたは入力側ディスクの前記軸が貫通する孔の内周面と、前記軸の外周面との間にシールリングが設けられ、前記軸の外周面に前記シールリングを固定するシールリング溝が全周に渡って設けられ、
前記軸の外周面でかつ前記シールリング溝の近傍に、追加溝が全周に渡って設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記追加溝が前記シールリング溝を挟んで少なくとも一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記追加溝の溝の底Rが前記シールリング溝の溝底Rより大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記シールリング溝より前記追加溝の方が発生応力が大きい場合に、前記追加溝に熱処理後仕上げ加工が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項5】
ギヤードニュートラルモードを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項6】
前記出力側ディスクと、この出力側ディスクから動力を受ける出力歯車とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、
図3および
図4に示すように構成されている。
図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(
図4参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(
図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
【0006】
図4は、
図3のA−A線に沿う断面図である。
図4に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、
図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(
図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(
図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(
図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(
図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(
図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、
図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
【0015】
その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0016】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0017】
ところで、上述の押圧装置12として、例えば、油圧式の押圧装置が用いられる場合がある。油圧式の押圧装置は、例えば、入力軸1の駆動軸側の端部に、フロント側(図中左側)の入力側ディスク2の背面(内側面2aの反対側の面)側に油圧室を形成するシリンダが一体的に設けられている。
【0018】
このような油圧式の押圧装置を備えるトロイダル型無段変速機において、入力軸1に対してフロント側の入力側ディスク2を入力軸1の軸方向に沿って移動自在で、かつ、入力軸1と一体に回転させる機構として、上述のように入力側ディスク2を入力軸1にボールスプライン6を介して支持させている。
【0019】
それに対して、入力軸1と一体に回転する上述の油圧室を形成するシリンダの内周面にスプライン溝を設けるとともにスプライン溝にボールを配置してボールスプラインとするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、入力側ディスク2の外周面と、油圧式の押圧装置12のシリンダの内周面との間にボールスプラインを設けたものが提案されている。
この場合に、入力側ディスク2のボールスプラインを径の小さい内周面側に設けるより、径の大きな外周面側に設ける方が構造的に有利であり、ボール数の削減等を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−3084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、上述のように油圧式の押圧装置12を備えるとともに、押圧装置12のシリンダの内周面と入力側ディスク2の外周面との間にボールスプライン構造を有するものにおいて、入力側ディスク2の入力軸1が挿通する孔の内周面と、入力軸1の外周面との間に押圧装置12の油圧室側の油圧保持用にシールリングを配置することが考えられる。
【0022】
このシールリングを固定するためのシールリング溝は、例えば、入力軸の外周面に、この入力軸の周方向に沿うとともにこの入力軸の外周面の全周に渡って形成される。
図5に示すように、シールリング44が嵌められる入力軸1のシールリング溝45の断面形状は、一般的なシールリング用溝の形状として、概略矩形状とされる可能性が高く、また、シールリング溝45の底面46とその前後の壁面(側面)47,48との間の隅部分が断面円弧状に形成されることになる。すなわち、シールリング溝45の底面46と側面47,48との間の隅部に小さなR(小さな丸み)が付けられる。
【0023】
しかしながら、上述したような油圧式の押圧装置12を備え、エンジンからの回転動力を押圧装置12のシリンダと入力側ディスク2の外周面との間にボールスプライン構造を設けて入力軸1に伝達する構造では、入力軸1に押圧装置12によって引張荷重が負荷されたり、例えば、トロイダル型無段変速機が、このトロイダル型無段変速機に遊星歯車機構を組み合わせ、入力軸を一方向に回転させたまま出力軸を停止させるギヤードニュートラルモードを備えている場合に、ギヤードニュートラル付近で大きな軸力が入力軸1に負荷されるため、入力軸1のシールリング溝45に大きな応力が発生し易い。
【0024】
また、上述の一対の出力側ディスク3と出力歯車4とが一体となったトロイダル型無段変速機が提案されているが、この場合に、背面どうしを接合させた形状の一対の出力側ディスク3の外周部分に出力歯車4の歯が形成された状態となっている。また、一体になった一対の出力側ディスク3および出力歯車4は、ラジアルニードル軸受を介して入力軸1に支持されている。この場合に、出力歯車4にかかるギヤ反力(ラジアル力)は、ラジアルニードル軸受を介して入力軸1が受けることになる。このラジアル力により入力軸1が撓み、上述のシールリング溝45に大きな応力が発生する。
【0025】
したがって、上述のように入力側ディスク2の内周と、入力軸1の外周との間にシールリング44を配置するために、入力軸1にシールリング44を嵌めるシールリング溝45を設けると、入力軸1の耐久性を低下させるおそれがある。
【0026】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、入力側または出力側のディスクの背面側に油圧室を有する押圧装置を有し、かつ、ディスクの孔の内周面と、これを支持する軸の外周面との間にシールリングを設け、前記軸にシールリングを固定するシールリング溝がある場合に、このシールリング溝で発生する応力を緩和することができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転自在に設けられた入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これら入力側ディスクおよび出力側ディスクの中心部を貫通してこれら入力側ディスクおよび出力側ディスクを支持する軸と、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクまたは前記出力側ディスクの背面側に油圧室を有し、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する油圧式押圧装置とを備えるトロイダル型無段変速機において、
背面側に前記油圧室が配置された出力側ディスクまたは入力側ディスクの前記軸が貫通する孔の内周面と、前記軸の外周面との間にシールリングが設けられ、前記軸の外周面に前記シールリングを固定するシールリング溝が全周に渡って設けられ、
前記軸の外周面でかつ前記シールリング溝の近傍に追加溝が全周に渡って設けられていることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、軸の外周面でかつ前記シールリング溝の近傍に追加溝が全周に渡って設けられているので、この追加溝によってシールリング溝の近傍の剛性が低くなる。したがって、軸に大きな軸力や曲げ荷重が作用した際に、シールリング溝で発生する応力を緩和することができる。
また、軸に追加溝を設けることにより軸自体の軽量化を図ることもできる。
【0029】
本発明の前記構成において、前記追加溝が前記シールリング溝を挟んで少なくとも一対設けられているのが好ましい。
このような構成によれば、少なくとも一対の追加溝がシールリング溝を挟んで設けられているので、シールリング溝で発生する応力をバランスよく効果的に緩和することができる。また、軸自体の軽量化も効果的に行えるとともに、軸のバランス性もよい。
【0030】
また、本発明の前記構成において、前記追加溝の溝の底Rが前記シールリング溝の溝底Rより大きいことが好ましい。ここで、溝の底Rとは、追加溝の底面に設けられる丸みのことであり、例えば、溝の両側面が底面に向かうほど接近するような傾斜面で構成される場合に当該傾斜面どうしを滑らかに接続する断面円弧状の曲面のことを意味する。
また、溝の底Rが前記シールリング溝の溝底Rより大きいとは、溝の底Rの曲率半径が溝底Rの曲率半径より大きいことを意味する。
軸に追加溝を設けると、当該追加溝にも高応力が発生するが、前記構成によれば、追加溝の溝の底Rがシールリング溝の溝底Rより大きいので、追加溝の溝底に発生する応力がシールリング溝の溝底に発生する応力より低い応力となるため、追加溝に起因する軸の耐久性低下は小さく、問題となることはない。
【0031】
また、本発明の前記構成において、前記シールリング溝より前記追加溝の方が発生応力が大きい場合に、前記追加溝に熱処理後仕上げ加工が施されていてもよい。
このような構成によれば、追加溝に熱処理後仕上げ加工が施されているので、仕上げ加工を施していないシールリング溝の許容応力よりも追加溝の許容応力を高めることができ、軸としての耐久性が向上する。
【0032】
また、本発明の前記構成において、ギヤードニュートラルモードを備えたものとしてもよい。
このような構成によれば、ギヤードニュートラル付近で大きな軸力が軸に負荷されるため、軸のシールリング溝により大きな応力が発生するおそれがあるが、追加溝によって、シールリング溝で発生する応力を緩和することができる。したがって、ギヤードニュートラルモードを備えているトロイダル型無段変速機に本発明を好適に適用できる。
また、ギヤードニュートラルモードがないレイアウトに比べ、ギヤードニュートラルモードを備えたものは、ギヤードニュートラルモード時に動力循環により入力軸や出力軸等の軸(シャフト)にエンジン以上のトルクが入る。そのため、同一エンジンの場合、ギヤードニュートラルモードを備えたレイアウトの方が、より大きな引張荷重がシャフトにかかることになる。そのため、従来ではシャフト径を上げる必要があったが、本発明ではシャフト径を上げずにシールリング溝に発生する応力を制御することが可能となる。
【0033】
また、本発明の前記構成において、前記出力側ディスクと、この出力側ディスクから動力を受ける出力歯車とが一体に形成されていてもよい。
【0034】
出力側ディスクと出力歯車が一体に形成されたものは、出力歯車にかかるギヤ反力(ラジアル力)を、ラジアルニードル軸受等を介して軸が受けることになり、このラジアル力により軸が撓み、シールリング溝に大きな応力が発生して軸の耐久性が低下するおそれがあるが、本発明では、上述したように、軸に追加溝が設けられているので、このようなことがない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、軸の外周面でかつ前記シールリング溝の近傍に追加溝が全周に渡って設けられているので、この追加溝によってシールリング溝の近傍の剛性が低くなる。したがって、軸に大きな軸力や曲げ荷重が作用した際に、シールリング溝で発生する応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、断面図である。
【
図3】従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
【
図5】トロイダル型無段変速機のシールリングを固定する溝を備える入力軸を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、この実施形態のトロイダル型無段変速機の特徴は、入力軸に形成されたシールリング溝の近傍に追加溝を設けたことにあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と略同様であるため、以下においては、この実施の形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、
図3および
図4と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0038】
図1に示すように、この実施形態のトロイダル型無段変速機は、
図3および
図4に示すトロイダル型無段変速機に対して主に以下の点が異なる。
このロイダル型無段変速機においては、上述の従来の一対の出力側ディスク3,3と出力歯車4とが一体に形成され、一体型出力側ディスク34とされている。
【0039】
一体型出力側ディスク34は、その両面がそれぞれ一対の入力側ディスク2,2のいずれかに対向する上述の内側面3a,3aとされている。また、一体型出力側ディスク34の外周面に出力歯車4としての歯41が設けられている。
【0040】
また、一対のヨーク23A,23Bを支持する上下の球面ポスト64,68は、上下で繋がれた一体型ポスト69になっている。なお、一体型ポスト69の上下端部にそれぞれ球面ポスト64,68が配置され、一体型ポスト69の中央部には、入力軸(軸)1が貫通している。また、一対の一体型ポスト69は、一体型出力側ディスク34を挟むように前後に配置され、一体型出力側ディスク34と、一体型ポスト69との間には、スラスト球軸受60が配置されている。これにより、一体型出力側ディスク34の入力軸1の軸方向位置が一対の一体型ポスト69により規制されている。また、一体型出力側ディスク34がスラスト球軸受60,60と、入力軸1と一体型出力側ディスク34との間に配置されたラジアルニードル軸受により回転可能に支持されている。
【0041】
また、押圧装置12Aから遠い側の入力側ディスク2の背面側には、入力軸1に固定されたコッタ36が当接している。押圧装置12Aから入力軸1に、押圧装置12A側に引っ張る力が作用した場合に、この力がコッタ36を介して、入力軸1から入力側ディスク2(押圧装置12Aから遠い側)に伝達され、この入力側ディスク2がパワーローラ11を間に介して一体型出力側ディスク34に押し付けられる状態になる。すなわち、押圧装置12Aは、一対の入力側ディスク2,2をその間にある一体型出力側ディスク34に向けて押圧している。
【0042】
また、この実施形態において、
図1に示すように、押圧装置12Aは、ローディングカム式ではなく油圧式になっており、入力軸1と回転するとともに、入力側ディスク2の背面との間に油圧室70を形成するシリンダ71と、このシリンダ71の内部に設けられ油圧によって入力軸1の軸方向に進退する第1および第2ピストン75,76を備えている。
【0043】
次に、この実施形態の油圧式押圧装置12Aについて、説明する。
上述のシリンダ71は、有底円筒状に設けられ、底部の中央部に入力軸1が貫通されるとともに、入力軸1に一体的に回転可能に結合している。また、シリンダ71の円筒部分の底部と反対側の開口部には、入力側ディスク2が挿入された状態となっており、入力側ディスク2がシリンダ71の開口を塞いでいる。このシリンダ71の内周面と、入力側ディスク2の外周面とは、一体的に回転可能に係合している。また、押圧装置12A側の入力側ディスク2の孔の内周面と、入力軸1の外周面との間には、ポールスプライン構造が設けられておらず、入力側ディスク2の円柱状の孔に、円柱状の入力軸1が貫通した状態となっている。
【0044】
第2ピストン76は、シリンダ71の底部分に略当接するとともに入力軸1が貫通する孔を中央部に備える円板部分と、シリンダ71の底部分から離れる方向に上述の円板部分から延出する小径の円筒部分とを備える。第2ピストン76の円板部分および円筒部分の中心を入力軸1が貫通している。
【0045】
また、第2ピストン76の円筒部分には入力軸1が貫通されており、当該円筒部分の先端部は、入力側ディスク2の背面側に設けられ、入力軸1の外径より拡径された孔に挿入された状態となっている。また、この第2ピストン76の円筒部分の先端部は、前記拡径された孔の段差部分に当接可能になっている。
【0046】
また、第2ピストン76の円板部分の外周と、円筒状のシリンダ71の内周面との間には、シールリング85が設けられ、第2ピストン76の外周面側の溝に固定されている。また、上述の入力側ディスク2の孔に挿入された第2ピストン76の円筒部分の外周面と、入力側ディスク2の孔の内周面との間には、シールリング86が設けられ、このシールリング86は第2ピストンの円筒部分の溝に固定されている。
【0047】
第1ピストン75は、概略円盤状の部材で、中央部を入力軸1が挿入された第2ピストン76の円筒部分が貫通している。したがって、第1ピストン75の内周面は、第2ピストン76の円筒部分の外周面に対向している。また、第1ピストン75の外周面は、円筒状のシリンダ71の内周面に対向している。
【0048】
また、第1ピストン75の外周面と、シリンダ71の内周面との間にシールリング87が設けられ、このシールリング87は、第1ピストン75の外周面に設けられた溝に固定されている。
また、第1ピストン75の内周面と、第2ピストン76の円筒部分の外周面との間にシールリング89が設けられ、このシールリング89は、第1ピストン75の内周面に形成された溝に固定されている。
【0049】
また、押圧装置12A側の入力側ディスク2の背面の外周部分は円環状に突出しており、この突出部分に第1ピストン76の前面の外周部分が当接し、これにより第1ピストン76の前面と入力側ディスク2の背面との間に間隔があけられている。また、押圧装置12A側の入力側ディスク2の外周面と、シリンダ71の内周面との間にはシールリング88が設けられ、このシールリング88は、入力側ディスク2の外周面の溝に固定されている。
【0050】
また、第1ピストン75の内周部分(中央の孔の周囲の部分)は、入力側ディスク2の背面側に突出しているが、第1ピストン75の前面の外周部分と入力側ディスク2の背面の外周の突出部分とを当接させた状態で、第1ピストン75の内周の突出部分と、入力側ディスク2の背面の内周部分との間に間隔があけられている。
【0051】
このような構造において、第1のピストン75と円筒状の入力側ディスク2の背面との間には、第1油圧室70aが設けられている。
第1油圧室70a内には、第1のピストン75と入力側ディスク2の背面との間に上述の皿ばね8と同様の機能を有する皿ばね8aが設けられている。
また、第1のピストン75は、シリンダ71の内周面に固定されたストッパ72により、入力軸の軸方向に沿って入力側ディスク2から離れる側(シリンダ71の底部分に近づく側)への移動が規制されている。
【0052】
また、第2のピストン76とシリンダ71の底部分との間には、第2油圧室70bが設けられている。
なお、第1のピストン75と第2のピストン76との間には、大気に開放された空気室が設けられている。
【0053】
また、第1の油圧室70aには、入力軸1の中央部に軸方向に沿って設けられた油路81から入力軸1の径方向に沿って分岐する油路81aと、この油路81aに連通するように第2ピストン76の円筒部分に設けられた油路76aと、この油路76aに連通する第1ピストン75の内周の突出部分と入力側ディスク2の背面の内周部分との間の間隙とを介して油が供給されるようになっている。
【0054】
第2油圧室70bには、上述の油路81から径方向に沿って分岐する油路81bを介して油が供給されるようになっている。
【0055】
第1油圧室70aおよび第2油圧室70bに供給された油の一部が入力軸1の外周面と、入力側ディスク2の入力軸1が貫通する孔の内周面との間に浸入するようになっている。そこで、
図2に示すように、入力側ディスク2の孔の内周面と、入力軸1の外周面との間にシールリング44が設けられている。このシールリング44により、押圧装置12Aの油圧室70の油圧が保持されている。なお、シールリング44は、入力側ディスク2の小径端部側に配置されている。
【0056】
このシールリング44は、
図2に示すように、入力軸1に形成されたシールリング溝45に嵌め込まれて入力軸1に固定されている。この入力軸1のシールリング溝45は、入力軸1の外周面の全周に渡り、入力軸1の周方向に沿って形成されている。
このシールリング溝45の断面形状は概略矩形状となっており、当該シールリング溝45の底面46とその前後の壁面(側面)47,48との間の隅部46aが断面円弧状に形成されている。すなわち、シールリング溝45の底面46の隅部46aに小さな溝底R(小さな丸み)が付けられている。
【0057】
また、入力軸1の外周面でかつ前記シールリング溝45の近傍には、一対の追加溝90,90がシールリング溝45を入力軸1の軸方向に挟んで設けられている。追加溝90は、入力軸1の全周に渡って設けられており、断面形状略V字形となっている。この断面V字形の追加溝90の底面90bは断面円弧状に形成され、溝の底Rが付けられている。この溝の底Rによって追加溝90の両傾斜面90a,90aが滑らかに接続されている。
前記溝の底Rは、前記シールリング溝45の溝底Rより十分に大きなものとなっている。つまり、追加溝90の溝の底Rの曲率半径がシーリング溝45の溝底Rの曲率半径より大きくなっている。
【0058】
追加溝90がシールリング溝45に近いほど、シールリング溝45の応力緩和が期待できる一方、近すぎるとシールリング溝45と追加溝90との間の壁が薄くなりすぎて、シールリング44を保持する保持力が低下するおそれがあるので、これらを勘案して、追加溝90とシールリング溝45との間の距離を決定する必要がある。
また、追加溝90はシールリング溝45より深さが若干浅くなっているが、追加溝90の深さが深いほど(応力が高いほど)、シールリング溝45の応力緩和が期待できる一方、追加溝90が深くなるにしたがって、入力軸1の強度が低下する。したがって、追加溝90の深さは、入力軸1に必要とされる強度や、シールリング溝45に期待される応力緩和の程度を勘案して決定する必要がある。
さらに、シールリング溝45より追加溝90の方が発生応力が大きい場合、追加溝90の方が許容応力が高くなってもよい。例えば、シールリング溝45は熱処理後仕上げ加工未実施とし、追加溝90は熱処理後仕上げ加工実施としてもよい。
【0059】
また、シールリング溝45と追加溝90,90との間に位置する入力軸1の外周面と、当該入力軸1が挿通された入力側ディスク2の内周面との間には若干の隙間Sが設けられており、この隙間Sにおいて、前記シールリング44の外周面が入力側ディスク2の内周面に液密に当接している。
【0060】
このようなトロイダル型無段変速機においては、入力軸1に押圧装置12によって引張荷重が負荷されたり、ギヤードニュートラルモードを備えている場合に、ギヤードニュートラル付近で大きな軸力が入力軸1に負荷されるため、入力軸1のシールリング溝45に大きな応力が発生するおそれがあるが、入力軸1の外周面でかつシールリング溝45の近傍に一対の追加溝90,90が全周に渡って、かつシールリング溝45を挟むようにして設けられているので、この追加溝90,90によってシールリング溝45の近傍の剛性が低くなる。したがって、入力軸1に大きな軸力や曲げ荷重が作用した際に、シールリング溝45で発生する応力を緩和することができる。
また、入力軸1に追加溝90,90を設けることにより入力軸1自体の軽量化を図ることもできる。
【0061】
また、出力歯車4としての機能を有する一体型出力側ディスク34が、入力軸1にラジアルニードル軸受を介して支持されていることから、一体型出力側ディスク34にかかるギヤ反力(ラジアル力)がラジアルニードル軸受を介して、入力軸1に作用し、入力軸1に曲げ応力が生じる。この際に入力軸1のシールリング溝45に大きな応力が発生することになるが、上述したように、追加溝90,90の存在によってシールリング溝45で発生する応力を緩和することができる。
【0062】
さらに、追加溝90,90がシールリング溝45を挟んで設けられているので、シールリング溝45で発生する応力をバランスよく効果的に緩和することができる。また、入力軸1自体の軽量化も効果的に行えるとともに、入力軸1のバランス性もよい。
加えて、追加溝90の溝の底Rがシールリング溝45の溝底Rより大きいので、追加溝90の溝底に発生する応力がシールリング溝45の溝底に発生する応力より低い応力となるため、追加溝90に起因する入力軸の耐久性低下は小さく、問題となることはない。
また、シールリング溝45より追加溝90の方が発生応力が大きい場合に、追加溝90に熱処理後仕上げ加工を施しているので、仕上げ加工を施していないシールリング溝45の許容応力よりも追加溝90の許容応力を高めることができ、入力軸1としての耐久性が向上する。
また、本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、ギヤードニュートラルモードを備えたものに適用するのが好ましい。この場合、ギヤードニュートラル付近で大きな軸力が軸に負荷されるため、軸のシールリング溝により大きな応力が発生するおそれがあるが、追加溝によって、シールリング溝で発生する応力を緩和することができる。
【0063】
なお、上述の実施形態では、ダブルキャビティ式のハーフトロイダル型無段変速機において、入力側ディスク2、2および出力側ディスク3、3(一体型出力側ディスク34)を入力軸1で支持し、かつ、一対の入力側ディスク2,2の間に一対の出力側ディスク3,3(一体型出力側ディスク34)を配置し、一方の入力側ディスク2の背面に押圧装置12Aを配置したが、入力側ディスク2、2および出力側ディスク3、3(一体型出力側ディスク34)を出力軸で支持し、かつ、一対の出力側ディスク3,3の間に一対の入力側ディスク2,2を配置し、一方の出力側ディスク3の背面に押圧装置12Aを配置した構造としてもよい。言い換えれば、出力側ディスク3、3(一体型出力側ディスク34)を入力側ディスク、入力側ディスク2、2を出力側ディスクとして構成し、これらを出力軸で支持してもよい。
【0064】
また、トロイダル型無段変速機では、基本的に本実施の形態のようにダブルキャビティ式の場合には、シャフト(入力軸または出力軸)に大きな引張荷重がかかるレイアウトになっているが、シングルキャビティ式の場合には、シャフトに引張荷重がかかるレイアウトと、かからないレイアウトの両方がある。したがって、シャフトに引張荷重がかかるレイアウトのシングルキャビティ式の場合に、本発明を好適に適用できる。
また、シングルキャビティ式とした場合も、入力側ディスク2の背面に押圧装置12Aを設けてもよいし、出力側ディスク3の背面に押圧装置12Aを設けてもよい。
また、入力軸1に入力側ディスク2と出力側ディスク3を支持させてもよいし、出力軸に入力側ディスク2と出力側ディスク3を支持させてもよい。また、出力側ディスク3の背面に押圧装置12Aが設けられる場合に、例えば、出力側ディスク3の内周面と、出力軸の外周面との間にシールリング44が設けられる。上述のように出力軸に入力側および出力側ディスク2,3が支持される場合に、出力軸に上述のシールリング溝45および追加溝90が設けられることになる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、シングルキャビティ式やダブルキャビティ式などの様々なハーフトロイダル型無段変速機のほか、フルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 入力軸(軸)
2 入力側ディスク
11 パワーローラ
12A 押圧装置
34 一体型出力側ディスク(出力側ディスク、出力歯車)
70 油圧室
44 シールリング
45 シールリング溝
90 追加溝