特許第6179341号(P6179341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179341
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】熱音響昇温機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   F25B9/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-220062(P2013-220062)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81734(P2015-81734A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将
(72)【発明者】
【氏名】山本 康
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4958910(JP,B2)
【文献】 特開2005−274099(JP,A)
【文献】 特開2011−231941(JP,A)
【文献】 特開2011−127870(JP,A)
【文献】 特開2013−050087(JP,A)
【文献】 特開2013−234822(JP,A)
【文献】 特開2012−154251(JP,A)
【文献】 特開2007−147192(JP,A)
【文献】 特開2007−292326(JP,A)
【文献】 特開2011−2119(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0265493(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/185370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループを形成する管路の一方に原動機を設け、その管路の他方に昇温機を設けた熱音響昇温機において、前記原動機側の管路と前記昇温機側の管路を近接させると共にその昇温機の低温側熱交換器を原動機側の管路に一体又は接触させて設けたことを特徴とする熱音響昇温機。
【請求項2】
ループを形成する管路が、二つのループ管路を枝管路で接続したダブルループからなり、その一方のループ管路に前記原動機が、他方のループ管路に昇温機が設けられ、前記枝管路の途中が折り返されて形成されると共に前記昇温機側のループ管路が原動機側の枝管路と近接され、かつ前記昇温機の低温側熱交換器が前記原動機側の枝管路に一体又は接触させて設けられる請求項1記載の熱音響昇温機。
【請求項3】
一方に原動機と他方に昇温機が設けられたシングルループの管路の途中をループ状に折り返して前記原動機側の管路と前記昇温機側の管路を近接させ、昇温機の低温側熱交換器が、原動機側の管路に一体又は接触させて設けられる請求項1記載の熱音響昇温機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響昇温機に係り、特に、管路内で発生するストリーミングを有効に利用できる熱音響昇温機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱音響機関は、図3に示すシングルループ型や図4に示すダブルループ型など種々のものが提案されている(特許文献1〜3)。
【0003】
図3に示すシングルループ型の熱音響機関30は、ループ管路31に原動機32と昇温機33を設けて構成される。原動機32は、高温側熱交換器34と低温側熱交換器35とをスタック36で連結して構成され、昇温機33は、同様に高温側熱交換器37と低温側熱交換器38をスタック39で連結して構成される。
【0004】
図4に示すダブルループ型の熱音響機関40は、二つのループ管路41、42を共鳴管としての枝管路43で連結し、一方のループ管路41に原動機32を、他方のループ管路42に昇温機33を設けて構成される。原動機32と昇温機33は、図3で説明したように高温側熱交換器34、37と低温側熱交換器35、38とを各々スタック36、39で連結して構成される。
【0005】
この図3図4の熱音響機関30、40では、原動機32に廃熱を供給して、高温側熱交換器34と低温側熱交換器35での温度を所望の温度差に保持することで、スタック36を通して、低温側熱交換器35から高温側熱交換器34に音波が発生し、この音波が、ループ管路31、又はループ管路41、42及び枝管路43を通して他方の昇温機33に伝播され、昇温機33の低温側熱交換器38を所望の温度に保持することで、高温側熱交換器37を熱源とすることができる。
【0006】
また、昇温機を冷凍機として用いる場合には、高温側熱交換器を所望の温度に保持することで、低温側熱交換器を冷熱源として用いることができ、さらに管路にリニア発電機を接続することで、電気エネルギを得ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−274099号公報
【特許文献2】特開2011−231941号公報
【特許文献3】特開2011−127870号公報
【特許文献4】特開2013−050087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、熱音響機関では、管路内で流体の全体的な流れによるストリーミングと呼ばれる質量流が発生する。
【0009】
従来の熱音響機関では原動機の効率向上のため、ストリーミングが極力発生しないようにしている。ストリーミングは、装置内部の出力が出すぎた場合に発生するため、その発生を抑えるには出力を抑えるように設計するか、出力に対応するように設計することで、ある程度は抑えることができる。しかし、これらは装置が大きくなる問題がある。
【0010】
また、ストリーミングを抑制すためにゴム膜などの部材を管路に設置(特許文献4)して、ストリーミングを遮断しているが、ゴム膜は可動部材であり耐久性に問題があると共に音波の伝播も阻害する問題がある。
【0011】
このストリーミングは、熱音響冷凍機や発電を行う場合には、原動機側の熱が冷凍機側に輸送され、効率低下を引き起こすためできる限り発生させないようにするが、昇温機として用いる場合には、原動機側の熱を昇温機に輸送したほうがより昇温することができ、昇温の場合には意図的に発生させたほうが望ましい。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ストリーミングを有効に利用できる熱音響昇温機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、ループを形成する管路の一方に原動機を設け、その管路の他方に昇温機を設けた熱音響昇温機において、前記原動機側の管路と前記昇温機側の管路を近接させると共にその昇温機の低温側熱交換器を原動機側の管路に一体又は接触させて設けたことを特徴とする熱音響昇温機である。
【0014】
ループを形成する管路が、二つのループ管路を枝管路で接続したダブルループからなり、その一方のループ管路に前記原動機が、他方のループ管路に昇温機が設けられ、前記枝管路の途中が折り返されて形成されると共に前記昇温機側のループ管路が原動機側の枝管路と近接され、かつ前記昇温機の低温側熱交換器が前記原動機側の枝管路に一体又は接触させて設けられるようにしてもよい。
【0015】
一方に原動機と他方に昇温機が設けられたシングルループの管路の途中をループ状に折り返して前記原動機側の管路と前記昇温機側の管路を近接させ、昇温機の低温側熱交換器が、原動機側の管路に一体又は接触させて設けられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、不要とされていたストリーミングによる熱を利用できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態を示し、(a)は全体図、(b)は図1(a)に丸で囲んだD部の詳細図である。
図2】本発明の他の実施の形態を示す図である。
図3】従来のシングルループ型の熱音響昇温機を示す図である。
図4】従来のダブルループ型の熱音響昇温機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1はループ状の管路をダブルループ型にした本発明の熱音響昇温機10を示したものである。ループ状の管路は、二つのループ管路11、12を共鳴管としての枝管路13で連結して形成される。熱音響昇温機10は、一方ループ管路11に原動機22が、他方のループ管路12に昇温機23が設けられて構成される。
【0020】
原動機22は、高温側熱交換器24と低温側熱交換器25とをスタック26で連結して構成される。昇温機23は、同様に高温側熱交換器27と低温側熱交換器28をスタック29で連結して構成される。
【0021】
枝管路13は、その途中で折り返されて原動機22側の枝管路13aと昇温機23側の枝管路13bとが近接される。原動機22側の枝管路13aは昇温機23側の枝管路13bより長くなるように枝管路13の折り返し部13cが形成され、昇温機23が設けられたループ管路12が原動機22側の枝管路13aに近接するように形成される。
【0022】
本実施の形態においては、昇温機23の低温側熱交換器28が原動機22側の枝管路13aに一体又は接触させて設けて構成される。
【0023】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0024】
先ず、一方のループ管路11に設けた原動機22の高温側熱交換器24に、エンジン等からの排ガスを作動流体として流し、低温側熱交換器25には高温側熱交換器24に対して温度差が100℃程度の温度差となるようにすることで、低温側熱交換器25からスタック26、高温側熱交換器24を通して音波が発生し、この音波が枝管路13を通して他方のループ管路12に伝播される。
【0025】
昇温機23では、低温側熱交換器28の温度を所望の温度とすることで、高温側熱交換器27では、低温側熱交換器28の温度よりも100℃以上高い温度が得られる。この高温側熱交換器27に流した作動流体で、他の機器、例えば、エンジン排ガス系に接続したSCR装置(選択還元触媒装置)やDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の加熱源として利用することができる。
【0026】
この際、原動機22ではストリーミングが発生するが、昇温機23の低温側熱交換器28は、原動機22側の枝管路13aに一体又は接触して設けられるため、そのストリーミングによる熱を低温側熱交換器28で受けることができ、その下流側の枝管路13aに流れるストリーミングを抑えることができると共に、ストリーミングで生じた熱を高温側熱交換器27に回収することができる。
【0027】
このように本実施の形態では、ストリーミングで発生する熱を利用できるため、原動機22の容量を小さくすることが可能となる。
【0028】
次に、図2により本発明の他の実施の形態を説明する。
【0029】
図2は、ループ状の管路をシングルループ型にした本発明の熱音響昇温機20を示したものである。
【0030】
この熱音響昇温機20のループ管路は、シングルループの管路21の途中をループ状に折り返して形成され、その各管路21a、21bに原動機22と昇温機23が設けられて熱音響昇温機20が構成される。
【0031】
本実施の形態においては、原動機22が設けられた管路21aと昇温機23が設けられた管路21bを形成する際に、原動機22側の管路21aと昇温機23側の管路21bを近接させ、昇温機23の低温側熱交換器28を、原動機22側の管路21aに一体又は接触させて設けるようにしたものである。
【0032】
この実施の形態においても、原動機22の高温側熱交換器24に、エンジン等からの排ガスを作動流体として流し、低温側熱交換器25には高温側熱交換器24に対して温度差が100℃程度の温度差となるようにすることで、低温側熱交換器25からスタック26、高温側熱交換器24を通して音波が発生し、この音波が原動機22側の管路21aを通して昇温機23側の管路21bに伝播し、昇温機23の高温側熱交換器27が熱源として利用することができる。
【0033】
この際、原動機22ではストリーミングが発生するが、昇温機23の低温側熱交換器28は、原動機22側の管路21aに一体又は接触して設けられるため、そのストリーミングによる熱を低温側熱交換器28を受けることができ、その下流側の管路21aに流れるストリーミングを抑えることができると共に、ストリーミングで生じた熱を高温側熱交換器27に回収することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 熱音響昇温機
11 12 ループ管路
13 枝管路
22 原動機
23 昇温機
図1
図2
図3
図4