特許第6179359号(P6179359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179359
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】油圧ピストンポンプ・モータ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20170807BHJP
   F03C 1/253 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F04B1/22
   F03C1/253
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-232086(P2013-232086)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-94222(P2015-94222A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐規
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 力
(72)【発明者】
【氏名】宇野 峰志
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭40−027764(JP,B1)
【文献】 特開2005−220789(JP,A)
【文献】 特開2007−270630(JP,A)
【文献】 特開昭64−66474(JP,A)
【文献】 特公昭34−10584(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに対して往復動する複数のピストンと、
前記ピストンによって拡縮される前記シリンダブロック内のシリンダボアと、
前記シリンダブロックと摺接するように配置され、前記シリンダブロック内の前記シリンダボアに対する作動油の給排を切り換えるバルブプレートとを備える油圧ピストンポンプ・モータであって、
前記シリンダブロックと前記バルブプレートとが互いに摺接する摺接面は、少なくともいずれか一方に、
作動油が流れる開口に隣接する第1シールランド面と、
前記開口に対して前記第1シールランド面よりも外側に位置し、前記第1シールランド面の形成領域よりも外径側の領域および内径側の領域の両領域に設けられた第2シールランド面とを有し、
前記摺接面における前記シリンダブロックと前記バルブプレートとの離間距離は、前記第1シールランド面における離間距離が前記第2シールランド面における離間距離よりも長く、
前記摺接面は、少なくともいずれか一方に、前記第1シールランド面と前記両領域の第2シールランド面との間にそれぞれ位置する窪み部をさらに有し、
前記窪み部における離間距離が前記第1シールランド面における前記離間距離よりも長い、油圧ピストンポンプ・モータ。
【請求項2】
前記摺接面が、高い圧力の前記作動油が通過する高圧領域と、前記高圧領域の圧力よりも低い圧力の前記作動油が通過する低圧領域とを有し、
前記摺接面は、少なくとも前記高圧領域に、前記第1シールランド面および前記第2シールランド面を有する、請求項1に記載の油圧ピストンポンプ・モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ピストンポンプ・モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧源または油圧アクチュエータとして用いられ、作動油の給排によって回転作動する油圧ピストンポンプ・モータが知られている。
【0003】
このような油圧ピストンポンプ・モータにおいては、シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面に油膜を維持できないと、摩耗や焼き付き等が生じる。そのため、摺接面には、シリンダブロック内に給排される作動油の流れを封止するためのシールランド面や、シリンダブロックとバルブプレート間の面圧を適正に保つためのパッド面が形成される。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には、上記摺接面に、シールランド面およびパッド面とともに油溜め部を設けることで、パッド面における油膜の維持を図り、パッド面の潤滑性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−116813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の油圧ピストンポンプ・モータにおいては、油溜め部の作動油は逃がし溝を経由しているため、その圧力はほぼ大気圧であるタンク圧に近い圧力まで落ちている。そして、油膜厚さが変わったときであっても、摺接面の半径方向における油膜の圧力分布は変わらず、シリンダブロックを支える油膜の耐荷重(以下、軸受荷重と称す。)も変わらない。
【0007】
そのため、従来の油圧ピストンポンプ・モータでは、油圧ピストンポンプ・モータに大きな負荷がかかって、ポンプ吐出圧が高くなった場合には、負荷荷重が油膜の軸受荷重を上回り、油膜が維持できなくなる事態が生じうる。このとき、ピストンボア内圧力によって、シリンダブロックは強くバルブプレートに押しつけられた状態で摺動し、摩耗や焼き付き等が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面における潤滑性の向上が図られた油圧ピストンポンプ・モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る油圧ピストンポンプ・モータは、回転するシリンダブロックと、シリンダブロックに対して往復動する複数のピストンと、ピストンによって拡縮されるシリンダブロック内のシリンダボアと、シリンダブロックと摺接するように配置され、シリンダブロック内のシリンダボアに対する作動油の給排を切り換えるバルブプレートとを備える油圧ピストンポンプ・モータであって、シリンダブロックとバルブプレートとが互いに摺接する摺接面は、少なくともいずれか一方に、作動油が流れる開口に隣接する第1シールランド面と、開口に対して第1シールランド面よりも外側に位置する第2シールランド面とを有し、摺接面におけるシリンダブロックとバルブプレートとの離間距離は、第1シールランド面における離間距離が第2シールランド面における離間距離よりも長い。
【0010】
上記油圧ピストンポンプ・モータにおいては、負荷荷重が変動したときには、油膜の軸受荷重と負荷荷重とが釣り合うように、シリンダブロックとバルブプレートの隙間が調節される。すなわち、大きな負荷荷重がかかって、シリンダブロックとバルブプレートの隙間が小さくなったときには、油膜の軸受荷重が大きくなるため、このようなときであっても、シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面において高い潤滑性を実現することができる。
【0011】
また、摺接面は、少なくともいずれか一方に、第1シールランド面と第2シールランド面との間に位置する窪み部をさらに有し、窪み部における離間距離が第1シールランド面における離間距離よりも長い態様であってもよい。
【0012】
さらに、摺接面が、高い圧力の作動油が通過する高圧領域と、高圧領域の圧力よりも低い圧力の作動油が通過する低圧領域とを有し、摺接面は、少なくとも高圧領域に、第1シールランド面および第2シールランド面を有する態様であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面における潤滑性の向上が図られた油圧ピストンポンプ・モータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る可変容量型ピストンポンプを示した概略断面図である。
図2図2は、図1の可変容量型ピストンポンプの要部拡大断面図であり、シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面を示している。
図3図3は、バルブプレート側の摺接面を示した図である。
図4図4は、図2の破線囲み部分をさらに拡大した断面図である。
図5図5は、バルブプレート側の摺接面を示した図である。
図6図6は、図2の破線囲み部分をさらに拡大した断面図である。
図7図7は、図3の摺接面における油膜厚さと荷重との関係を示したグラフである。
図8図8は、異なる態様のバルブプレート側の摺接面を示した図である。
図9図9は、異なる態様のシリンダブロック側の摺接面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
(油圧ピストンポンプ・モータ)
【0016】
まず、本実施形態に係る油圧ピストンポンプ・モータとして、可変容量型ピストンポンプ(以下、単にポンプと称す。)1について、図1を参照しつつ説明する。
【0017】
ポンプ1は、ポンプハウジング10と、ポンプハウジング10から突出する回転軸20とを備えている。
【0018】
ポンプハウジング10は、その内部にクランク室12を有する。ポンプハウジング10は、フロントハウジング10a、センタハウジング10b、リヤハウジング10cを接合することによって形成されている。
【0019】
回転軸20は、クランク室12内において支持されている。回転軸20は、そのポンプハウジング10からの突出端部が、図示しない動力取出装置に連結されており、エンジンにより直接回転されるようになっている。
【0020】
ポンプハウジング10のクランク室12には、回転軸20に一体回転可能にスプライン嵌合されたシリンダブロック14が収容されている。シリンダブロック14のシリンダボア14aは、シリンダブロック14において回転軸20の周囲に複数(本実施形態では9つ)が形成され、各シリンダボア14a内にはそれぞれピストン16が収容されている。
【0021】
また、ポンプハウジング10のクランク室12には、ポンプハウジング10に支軸30aを介して支持され、かつ、回転軸20の軸線方向に揺動可能な斜板30が収容されている。斜板30により、シリンダブロック14に収容された各ピストン16は、その一端部(図1の左端部)が球面継手で連結されたシューを介して押接され、また、シリンダブロック14はリヤハウジング10cの内端壁面に止着されたバルブプレート40に押接される。
【0022】
そして、シリンダブロック14が回転軸20と一体的に回転されることにより、各ピストン16が斜板30の傾角により規定されたストロークを往復動されるとともに、シリンダボア14aがバルブプレート40に透設された円弧状をなす吸入ポート40aおよび吐出ポート40bと交互に連通される。これにより作動油が吸入ポート40aからシリンダボア14a内に吸入され、シリンダボア14a内の作動油はポンプ作用により吐出ポート40bから吐出される。なお、吸入通路10dおよび吐出通路10eはリヤハウジング10cに形成され、それぞれ吸入ポート40aおよび吐出ポート40bと連通されている。
【0023】
ポンプ1は、さらにコントロールピストン50を備えている。コントロールピストン50は、ポンプハウジング10のセンタハウジング10bの側部に設けられており、クランク室12に連通するハウジング52を有する。
【0024】
コントロールピストン50のハウジング52は、回転軸20に対して傾いた方向に延在し、かつ、斜板30の縁部に向かって延びる略円筒状の形状を有している。
【0025】
ハウジング52の開口のうち、斜板30から遠い方の開口は、ネジ54によって塞がれている。それにより、ハウジング52内にはピストン収容室56が画成され、このピストン収容室56にピストン部58が収容されている。なお、ピストン収容室56のうち、ピストン部58とネジ54との間の空間は、作動油が流入する制御室56aとして機能する。
【0026】
ピストン部58は、円柱状の外形を有しており、その径は、ピストン収容室56の内壁面との間に隙間がないように、かつ、ピストン収容室56においてピストン部58が摺動できるように設計される。
【0027】
コントロールピストン50によれば、制御室56aへの作動油を制御することで、ピストン部58を斜板30の向きに往復動させることができる。そして、ピストン部58が斜板30の縁部30bに設けられた球32を押圧すると、斜板30の傾角が変更され、その結果、ポンプ1の吐出容量が変更される。
(シリンダブロックとバルブプレートとの摺接面)
【0028】
続いて、上述したシリンダブロック14とバルブプレート40との摺接面について、図2〜4を参照しつつ説明する。
【0029】
図2〜4に示すとおり、上述したバルブプレート40のシリンダブロック14側の面は、対向するシリンダブロック14の面15と摺接する摺接面41となっている。シリンダブロック14の面15も、バルブプレート40の面41と摺接する摺接面である。
【0030】
そして、バルブプレート40の摺接面41の吐出領域(すなわち、作動油を比較的高い圧力でシリンダブロック14から排出する高圧領域。図3の右側領域)および吸込領域(すなわち、作動油を比較的低い圧力(吐出領域の圧力よりも低い圧力)でシリンダブロック14に供給する低圧領域。図3の左側領域)の両方に、第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bが設けられている。
【0031】
ここで、第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bのそれぞれの形成領域は、図3に示すとおりである。
【0032】
すなわち、バルブプレート40の摺接面41には、バルブプレート40の中心Oを曲率中心とする円弧状の吸入ポート40aおよび吐出ポート40bの開口が露出しており、第1シールランド面42は、吐出領域の吐出ポート40bに隣接するようにその回りを囲み、かつ、バルブプレート40の中心O回りに半周する半円環状領域に設けられている。
【0033】
一方、第2シールランド面43A、43Bは、吐出領域において、吐出ポート40bの開口に対して、第1シールランド面42よりも外側に位置しており、第1シールランド面42の半円環状領域よりも外側の半円環状領域に設けられた第2シールランド面43Aと、第1シールランド面42の半円環状領域よりも内側の半円環状領域に設けられた第2シールランド面43Bとで構成されている。なお、バルブプレート40の摺接面41の吸込領域において、吸入ポート40a以外の領域が全て第2シールランド面43となっている。
【0034】
また、第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bの、シリンダブロック14の摺接面15との離間距離は図4に示すとおりである。
【0035】
すなわち、第1シールランド面42は、シリンダブロック14の摺接面15に対して高さhだけ離間している。第2シールランド面43A、43Bはいずれも、シリンダブロック14の摺接面15に対して高さhだけ離間している。図4に示すように、第1シールランド面42における離間距離hは、第2シールランド面43A、43Bにおける離間距離hよりも長く設計されている(すなわち、h>h)。それにより、第1シールランド面42と第2シールランド面43A、43Bとの境界は、図4に示すような段部となる。
【0036】
発明者らは、鋭意研究の末、バルブプレート40の摺接面41に上述したような第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bを設けることで、ポンプ1に以下のような特性が発現されることを新たに見出した。
【0037】
すなわち、ポンプ1においては、吐出圧から決まるピストンボア内圧力Pが高くなって、シリンダブロック14とバルブプレート40との間隙が狭くなるに従い、第2シールランド面43A、43Bにおける油膜の軸受荷重が大きくなるような特性が発現する。
【0038】
上記特性は、上述した第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bを、バルブプレート40の摺接面41の側ではなく、シリンダブロック14の摺接面15の側に設けた場合にも発現する。
【0039】
また、図4に示したように、吐出ポート40bの両側に、第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bを左右対称に設ける必要はなく、どちらか一方側にのみ第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bを設けてもよい。
【0040】
さらに、図5、6に示すように、第1シールランド面42と第2シールランド面43A、43Bとの間に、窪み部として環状溝44A、44Bを設けてもよい。
【0041】
図5に示すように、環状溝44A、44Bはいずれも、バルブプレート40の中心O回りに設けられており、上述した第1シールランド面42と第2シールランド面43Aとの間に環状溝44Aが設けられ、第1シールランド面42と第2シールランド面43Bとの間に環状溝44Bが設けられている。
【0042】
図6に示すように、環状溝44A、44Bはいずれも、シリンダブロック14の摺接面15に対して高さhだけ離間している。環状溝44A、44Bにおける離間距離hは、第1シールランド面42における離間距離hよりも長く設計されている(すなわち、h>h>h)。それにより、環状溝44A、44Bと、第1シールランド面42および第2シールランド面43A、43Bとの境界は、図6に示すような段部となる。
【0043】
環状溝44A、44Bの内部の圧力P1A、P1Bの値は、ピストンボア内圧力Pとバルブプレート40外側のタンク圧P2A、P2Bとの間の値であり、環状溝44A、44Bが設けられた領域は中間圧力領域ともいえる。
【0044】
発明者らは、上述したポンプ1の特性を検証するために、図5に示したようにバルブプレート40の各特徴点の半径方向長さ(r〜r)を設定し、計算をおこなった。rはバルブプレート40の内縁までの長さ、rは中心Oから環状溝44Bの内縁までの長さ、rは中心Oから環状溝44Bの外縁までの長さ、rは中心Oから吐出ポート40bの内縁までの長さ、rは中心Oから吐出ポート40bの外縁までの長さ、rは中心Oから環状溝44Aの内縁までの長さ、rは中心Oから環状溝44Aの外縁までの長さ、rはバルブプレート40の外縁までの長さである。
【0045】
このとき、第2シールランド面43A、43Bにおける油膜の軸受荷重Fは、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0046】
この式より、軸受荷重Fは隙間h=0のときに最大となり、h=∞のときに最小となることがわかる。すなわち、第2シールランド面43A、43Bにおける離間距離(すなわち、油膜厚さ)hが小さくなるほど、油膜の軸受荷重が大きくなる。
【0047】
上記式の軸受荷重Fを、概略的にグラフ化すると、図7に示すようなグラフになる。すなわち、第2シールランド面43A、43Bにおける油膜厚さhが小さくなる(グラフの左側に移動する)に従って、油膜の軸受荷重Fが増大している。そのため、ある荷重Fがポンプ1に負荷されたときには、油膜厚さhは、軸受荷重Fが負荷荷重Fと釣り合う点Pの厚さに自動的に調節される。
【0048】
なお、上記特性を有しない従来技術にかかるポンプの軸受荷重Fは、以下の式で表される。以下の式においては、rは中心からシールランド面の内縁までの長さ、rは中心からポートの内縁までの長さ、rは中心からポートの外縁までの長さ、rは中心からシールランド面の外縁までの長さである。
【数2】
【0049】
この式には、軸受荷重Fには、シリンダブロック14とバルブプレート40との離間距離が含まれない。つまり、軸受荷重Fは、吐出圧から決まるピストンボア内圧力Pにより決定される一定の値となる。すなわち、シリンダブロック14とバルブプレート40との間隙が狭くなっても、軸受荷重Fが大きくなることはなく、負荷荷重Fと軸受荷重Fの差は、シリンダブロック14とバルブプレート40との金属接触により支えていることになり、摩耗や焼き付き等が生じる。
【0050】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0051】
たとえば、上述した第1シールランド面42、第2シールランド面43A、43B、環状溝44A、44Bは、バルブプレート40の摺接面41およびシリンダブロック14の摺接面15のいずれか、または両方に、設けることができる。
【0052】
また、図8に示すように、環状溝44A、44Bを吐出領域の側にのみ設けてもよい。この場合、吸込領域の側に環状溝を設ける必要がないので、その分だけ吸入ポート40aの形成領域を拡大することができる。
【0053】
さらに、図9に示すように、上述した環状溝44A、44Bに相当する環状溝17A、17Bのみを、シリンダブロック14側の摺接面15に設けてもよい。この場合、吸込み圧損を低減することができるので、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0054】
また、窪み部は、環状の溝に限らず、第1シールランド面と第2シールランド面との間に配置された穴や、所定長さの溝であってもよい。
【0055】
なお、油圧ピストンポンプ・モータが、上述した可変容量型ピストンポンプ1のようなポンプである場合には、吐出領域における作動油の圧力が吸込領域における作動油の圧力よりも高く、少なくとも、摺接面において高圧側である吐出領域の側に、第1シールランド面および第2シールランド面(さらには窪み部)を設けることが好ましい。一方、油圧ピストンポンプ・モータが、モータである場合には、吸込領域における作動油の圧力が吐出領域における作動油の圧力よりも高く、少なくとも、摺接面において高圧側である吸込領域の側に、第1シールランド面および第2シールランド面(さらには窪み部)を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1…油圧ピストンポンプ・モータ(可変容量型ピストンポンプ)、14…シリンダブロック、14a…シリンダボア、15…摺接面、40…バルブプレート、15、41…摺接面、42…第1シールランド面、43、43A、43B…第2シールランド面、17A、17B、44A、44B…環状溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9