(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179381
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】スタビライザーの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
B60G21/055
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-253810(P2013-253810)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112887(P2015-112887A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】折田 強
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−210713(JP,A)
【文献】
実開昭58−115410(JP,U)
【文献】
特開平09−226343(JP,A)
【文献】
特開2013−060196(JP,A)
【文献】
特開平05−077632(JP,A)
【文献】
特開2008−137526(JP,A)
【文献】
特開2010−202031(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/178896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 21/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタビライザーの複数箇所がブッシュおよびブラケットを介して車体側に取り付けられ、
前記ブッシュは、前記ブラケットが掛装される被掛装部と、前記被掛装部に貫通形成されたスタビライザー挿通孔と、前記スタビライザー挿通孔の軸方向における前記被掛装部の両側に膨出形成された鍔部とを有し、
前記ブラケットは、前記被掛装部に掛装される掛装部と、前記掛装部の端部に設けられ前記車体側に取り付けられる取り付け部とを有する、
スタビライザーの取り付け構造であって、
前記被掛装部の表面は、前記スタビライザー挿通孔の周方向に並べられた複数のブッシュ側平面部と、それら複数のブッシュ側平面部を接続する複数のブッシュ側角部と、隣り合う前記ブッシュ側平面部とそれらブッシュ側平面部とを接続する前記ブッシュ側角部とにわたり形成された係合凹部とを備え、
前記掛装部は、前記ブッシュ側平面部に当接可能な複数のブラケット側平面部と、それらブラケット側平面部を接続し前記ブッシュ側角部に係合可能な複数のブラケット側角部と、隣り合う前記ブラケット側平面部とそれらブラケット側平面部とを接続するブラケット側角部とにわたり形成され前記係合凹部に係合可能な係合凸部とを備える、
ことを特徴とするスタビライザーの取り付け構造。
【請求項2】
前記被掛装部の表面は、前記スタビライザー挿通孔の周方向に並べられた複数のブッシュ側平面部のうち両端のブッシュ側平面部を接続する平坦な圧接用面を有し、
前記取り付け部は、前記複数のブッシュ側平面部に対応して並べられ前記掛装部を構成する前記複数のブラケット側平面部のうちの両端のブラケット側平面部の端部にそれぞれ設けられ、
前記両端の取り付け部が車体側に取着された状態で前記被掛装部は前記掛装部と前記車体側とで挟み込まれ前記被掛装部の前記圧接用面は車体側に圧接される、
ことを特徴とする請求項1記載のスタビライザーの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタビライザーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に生じるロールを抑制するためにスタビザイザーを装着することが行われている。
スタビライザーは、中間部が車幅方向に延び、両端部が車両前後方向に延びるように曲げられた断面が円形なバー部材を用いる。
そして、このバー部材の中間部を車体側に回動可能に支持させ、両端部をサスペンション装置の部品など、車輪と共に上下に変位する部材に支持させた構造が用いられる。
スタビライザーは、車両の走行中、ロールが生じると、スタビライザーが中間部を支点に捩り変形して、ロールに対抗する力を発生させることで、車両のロールを抑制する。
【0003】
スタビライザーの車体への取り付けは、スタビライザーの複数箇所をブッシュおよびブラケットを介して車体側に取り付けることでなされている。
すなわち、スタビライザーをブッシュに設けられたスタビライザー挿通孔に挿通し、ブッシュをブラケットと車体側の部材とで挟み込んで取着している。
ところで、サスペンション装置の挙動によっては、スタビライザーに対して軸方向に沿った力が加わる場合がある。
この場合、ブッシュにも軸方向の荷重が作用するため、ブッシュがブラケットに対して横ずれを生じることを防止する必要がある。
そこで、ブッシュの外周面に軸方向に沿って半径方向の位置が増減する湾曲した凹凸形状を形成すると共に、ブラケットを前記の凹凸形状に対応した凹凸形状とすることが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74121号公報
【特許文献2】特開2009−234414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、ブラケットのうち、ブッシュの外周面に当接する箇所は湾曲した凹凸形状を呈し、車体側の平坦な取り付け面に取り付けられる箇所は平坦な形状を呈している。
したがって、ブラケットが湾曲した凹凸形状と平坦な形状を組み合わせた複雑な形状となっているため、板金を用いてブラケットを製造する場合、湾曲した凹凸形状と平坦な形状とを1回の曲げ加工のみで形成することは困難であり、絞り加工と曲げ加工とを別々に行なう必要がある。
そのため、加工が複雑となりコストが嵩む不利がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ブッシュの横ずれを確実に防止しつつ、コストの低減を図る上で有利なスタビライザーの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、スタビライザーの複数箇所がブッシュおよびブラケットを介して車体側に取り付けられ、前記ブッシュは、前記ブラケットが掛装される被掛装部と、前記被掛装部に貫通形成されたスタビライザー挿通孔と、前記スタビライザー挿通孔の軸方向における前記被掛装部の両側に膨出形成された鍔部とを有し、前記ブラケットは、前記被掛装部に掛装される掛装部と、前記掛装部の端部に設けられ前記車体側に取り付けられる取り付け部とを有する、スタビライザーの取り付け構造であって、前記被掛装部の表面は、前記スタビライザー挿通孔の周方向に並べられた複数のブッシュ側平面部と、それら複数のブッシュ側平面部を接続する複数のブッシュ側角部と、隣り合う前記ブッシュ側平面部とそれらブッシュ側平面部とを接続する前記ブッシュ側角部とにわたり形成された係合凹部とを備え、前記掛装部は、前記ブッシュ側平面部に当接可能な複数のブラケット側平面部と、それらブラケット側平面部を接続し前記ブッシュ側角部に係合可能な複数のブラケット側角部と、隣り合う前記ブラケット側平面部とそれらブラケット側平面部とを接続するブラケット側角部とにわたり形成され前記係合凹部に係合可能な係合凸部とを備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記被掛装部の表面が、前記スタビライザー挿通孔の周方向に並べられた複数のブッシュ側平面部のうち両端のブッシュ側平面部を接続する平坦な圧接用面を有し、前記取り付け部が、前記複数のブッシュ側平面部に対応して並べられ前記掛装部を構成する前記複数のブラケット側平面部のうちの両端のブラケット側平面部の端部にそれぞれ設けられ、前記両端の取り付け部が車体側に取着された状態で前記被掛装部は前記掛装部と前記車体側とで挟み込まれ前記被掛装部の前記圧接用面は車体側に圧接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、ブッシュ側角部に設けられた係合凹部と、ブラケット側角部に設けられた係合凸部とが係合すると共に、両端の鍔部と被掛装部の幅方向の両側とが係合するため、ブラケットとブッシュとがスタビライザー挿通孔の延在方向に移動不能に結合される。
したがって、スタビライザーに対して軸方向に沿った力が加わりブッシュに軸方向の荷重が作用した場合に、ブッシュがブラケットに対して横ずれを生じることを防止する上で有利となる。
さらに、ブラケットは、複数のブラケット側平面部と複数のブラケット側角部と複数の係合凸部とを備える掛装部と、取り付け部とを有している。
そのため、ブラケットは、湾曲した凹凸形状とは異なり単純な形状であるため、金属製の帯板を用いて1回の曲げ加工で形成することができる。したがって、加工が簡素化され、コストを低減する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、両端の取り付け部が車体側に取着された状態で被掛装部の圧接用面は車体側に圧接され、被掛装部は掛装部と車体側とで挟み込まれるため、ブッシュに軸方向の荷重が作用した場合、ブッシュがブラケットに対して横ずれを生じることを防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るスタビライザーの取付構造が適用された車両の部分を示す斜視図である。
【
図4】(A)はブッシュの平面図、(B)は(A)のB矢視図、(C)は(B)のC矢視図、(D)は(B)のDD線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、スタビライザーについて説明する。
図1に示すように、車両の前輪2(あるいは後輪)のサスペンション装置(不図示)にスタビライザー10が組み付けられている。
スタビライザー10は、断面が円形のバー部材1002で構成され、中間部1002Aが車体の下部を車幅方向に延び、両端部1002Bが車両前後方向へ延びるように曲げられている。バー部材として、例えば、中実あるいは中空の鋼材など従来公知の材料が使用可能である。
バー部材1002の中間部1002Aの複数箇所は、本発明に係るスタビライザーの取付構造12によりそれぞれ車体部材、例えば車体フレームを構成するクロスメンバ(不図示)に回動可能に支持される。
バー部材1002の両端部1002Bは、本発明に係るスタビライザーの取付構造12によりサスペンション装置の部品に連結されており、車両の走行中、車体にロールが生じると、スタビライザー10が中間部1002Aを支点に捩り変形して、ロールに対抗する力が発生される。
【0010】
次に、スタビライザーの取付構造12について説明する。
図1、
図2に示すように、スタビライザーの取付構造12は、ブッシュ14と、ブラケット16とを備え、スタビライザー10の複数箇所をブッシュ14およびブラケット16を介して車体部材、またはサスペンション装置部品に取り付けるものである。
【0011】
ブッシュ14は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。
図2に示すように、ブッシュ14は、被掛装部18と、スタビライザー挿通孔20と、鍔部22とを備えている。
【0012】
被掛装部18は、ブラケット16が掛装される箇所である。
図3、
図4(A)〜(D)に示すように、被掛装部18の表面は、複数のブッシュ側平面部1802と、複数のブッシュ側角部1804と、複数の係合凹部1806と、単一の圧接用面1808を備える。
複数のブッシュ側平面部1802は、スタビライザー挿通孔20の周方向に並べられている。
複数のブッシュ側角部1804は、隣り合うブッシュ側平面部1802が交わる箇所に設けられ、隣り合うブッシュ側平面部1802を接続している。
複数の係合凹部1806は、隣り合うブッシュ側平面部1802とそれらブッシュ側平面部1802とを接続するブッシュ側角部1804とにわたり形成されている。
【0013】
鍔部22は、スタビライザー挿通孔20の軸方向における被掛装部18の両側に膨出形成されている。
鍔部22は、被掛装部18に対応した多角形形状を呈し、被掛装部18の圧接用面1808と同一面上に位置する圧接用面2202を有している。
鍔部22は、被掛装部18に掛装されるブラケット16の掛装部24の幅方向の両側に係合し、ブラケット16とブッシュ14とがスタビライザー挿通孔20の延在方向に移動不能に結合される。
【0014】
スタビライザー挿通孔20は、両側の鍔部22から被掛装部18にわたって貫通形成され、また、スタビライザー10への組み付けの簡易化を図るため、両側の鍔部22から被掛装部18にわたって切れ目28が形成されている。
【0015】
図2、
図3に示すように、ブラケット16は、金属製の帯板により形成されている。
ブラケット16は、掛装部24と、取り付け部26とを有する。
掛装部24は、複数のブラケット側平面部2402と、複数のブラケット側角部2404と、複数の係合凸部2406とを備える。
複数のブラケット側平面部2402は、複数のブッシュ側平面部1802に対応して並べられ複数のブッシュ側平面部1802に当接可能に設けられている。
複数のブラケット側角部2404は、隣り合うブラケット側平面部2402が交わる箇所に設けられ、隣り合うブラケット側平面部2402を接続しブッシュ側角部1804に係合可能に設けられている。
複数の係合凸部2406は、隣り合うブラケット側平面部2402とそれらブラケット側平面部2402とを接続するブラケット側角部2404とにわたり形成され係合凹部1806に係合可能である。複数の係合凸部2406が複数の係合凹部1806に係合することで、ブラケット16とブッシュ14とがスタビライザー挿通孔20の延在方向に移動不能に結合される。
取り付け部26は、両端のブラケット側平面部2402の端部にそれぞれ設けられ、取り付け部26は平坦な板状を呈し、ボルト挿通孔2602が形成されている。
【0016】
複数のブラケット側平面部2402と、複数のブラケット側角部2404と、複数の係合凸部2406と、両端の取り付け部26とを備えるブラケット16は、金属製の帯板を曲げ加工することで構成されている。
図3に示すように、両端の取り付け部26がボルト挿通孔2602を挿通したボルト30を介して車体側4に取着された状態で被掛装部18は掛装部24と車体側4とで挟み込まれ被掛装部18の圧接用面1808は車体側4に圧接される。
【0017】
本実施の形態によれば、ブッシュ側角部1804に設けられた係合凹部1806と、ブラケット側角部2404に設けられた係合凸部2406とが係合すると共に、両端の鍔部22と被掛装部18の幅方向の両側とが係合するため、ブラケット16とブッシュ14とがスタビライザー挿通孔20の延在方向に移動不能に結合される。
したがって、スタビライザー10に対して軸方向に沿った力が加わりブッシュ14に軸方向の荷重が作用した場合に、ブッシュ14がブラケット16に対して横ずれを生じることを防止する上で有利となる。
さらに、ブラケット16は、複数のブラケット側平面部2402と複数のブラケット側角部2404と複数の係合凸部2406とを備える掛装部24と、取り付け部26とを有している。
そのため、ブラケット16は、湾曲した凹凸形状とは異なり単純な形状であるため、金属製の帯板を用いて1回の曲げ加工で形成することができる。したがって、加工が簡素化され、コストを低減する上で有利となる。
【符号の説明】
【0018】
4 車体側
10 スタビライザー
12 スタビライザーの取付構造
14 ブッシュ
16 ブラケット
1602 掛装部
1604 取り付け部
18 被掛装部
1802 ブッシュ側平面部
1804 ブッシュ側角部
1806 係合凹部
1808 圧接用面
20 スタビライザー挿通孔
22 鍔部
24 掛装部
2402 ブラケット側平面部
2404 ブラケット側角部
2406 係合凸部
26 取り付け部