(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
左側車輪および車体のうち一方に接続された左側ピストンと、当該左側ピストンを移動可能に収容して前記左側車輪および車体のうち他方に接続された左側シリンダと、を有し、前記左側ピストンと前記左側シリンダとの間に、前記左側車輪の接地点と車体とが上下方向に近付くのに応じて縮むとともに前記左側車輪の接地点と車体とが上下方向に遠ざかるのに応じて伸びる左側第一室と、前記左側車輪の接地点と車体とが上下方向に近付くのに応じて伸びるとともに前記左側車輪の接地点と車体とが上下方向に遠ざかるのに応じて縮む左側第二室と、が形成された左側シリンダユニットと、
右側車輪および車体のうち一方に接続された右側ピストンと、当該右側ピストンを移動可能に収容して前記右側車輪および車体のうち他方に接続された右側シリンダと、を有し、前記右側ピストンと前記右側シリンダとの間に、前記左側第二室と連通され前記右側車輪の接地点と車体とが上下方向に近付くのに応じて縮むとともに前記右側車輪の接地点と車体とが上下方向に遠ざかるのに応じて伸びる右側第一室と、前記左側第一室と連通され前記右側車輪の接地点と車体とが上下方向に近付くのに応じて伸びるとともに前記右側車輪の接地点と車体とが上下方向に遠ざかるのに応じて縮む右側第二室と、が形成された右側シリンダユニットと、
前記左側第一室と連通された左側アキュムレータと、
前記右側第一室と連通された右側アキュムレータと、
左右方向の一方側が前記左側車輪に接続されるとともに他方側が前記右側車輪に接続され、前記一方側へ移動することにより前記左側車輪および右側車輪を上方からの視線で時計回り方向および反時計回り方向のうち一方へ転舵するとともに前記他方側へ移動することにより前記左側車輪および右側車輪を時計回り方向および反時計回り方向のうち他方へ転舵する転舵ピストンと、当該転舵ピストンを移動可能に収容して車体に接続された転舵シリンダと、を有し、前記転舵ピストンと前記転舵シリンダとの間に、前記左側第一室および右側第一室のうち一方と連通され前記転舵ピストンが前記一方側へ移動するのに応じて縮むとともに前記転舵ピストンが前記他方側へ移動するのに応じて伸びる第三室と、前記左側第一室および右側第一室のうち他方と連通され前記転舵ピストンが前記一方側へ移動するのに応じて伸びるとともに前記転舵ピストンが前記他方側へ移動するのに応じて縮む第四室と、が形成された転舵シリンダユニットと、
を備えた、サスペンション装置。
前記左側第一室および前記右側第一室のうち一方と前記第三室とを連通しかつ前記左側第一室および前記右側第一室のうち他方と前記第四室とを連通した状態と、前記左側第一室および前記右側第一室のうち一方と前記第三室とを遮断しかつ前記左側第一室および前記右側第一室のうち他方と前記第四室とを遮断した状態と、を切替可能な第一切替弁をさらに備えた、請求項1に記載のサスペンション装置。
前記左側第一室および前記右側第一室のうち一方と前記第三室とを連通しかつ前記左側第一室および前記右側第一室のうち他方と前記第四室とを連通した状態と、前記左側第一室および前記右側第一室のうち一方と前記第四室とを連通しかつ前記左側第一室および前記右側第一室のうち他方と前記第三室とを連通した状態と、を切替可能な第二切替弁をさらに備えた、請求項1または2に記載のサスペンション装置。
前記第三室および前記第四室のうち少なくとも一方に設けられ、前記左側車輪および右側車輪が転舵されない方向に前記転舵ピストンを付勢する弾性部材をさらに備えた、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のサスペンション装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の例示的な複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。また、以下の各図では、便宜上、方向が規定されている。X方向は、車両1の前方(進行方向)、Y方向は、車両1の前方を向いた場合の左方(正面視では右方、背面視では左方)、Z方向は、車両1の上方である。
【0011】
また、以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態では、
図1に示されるように、車両1は、車体2と車輪3との間に介在されたサスペンション装置4を備えている。具体的には、
図3に示されるように、本実施形態では、サスペンション装置4が、左側後輪3A(左側車輪)ならびに右側後輪3B(右側車輪)と車体2との間に位置されている。各車輪3は、支持機構5(支持部)によって車体2に対して相対移動可能(上下動可能)に連結されている。支持機構5は、車体2と車輪3とに連結された複数のアーム部材6(リンク部材)を含む。アーム部材6は、車輪3に連結された連結部材(車輪3を支持した支持部材)の一例である。
【0013】
サスペンション装置4は、
図1に示されるように、左側シリンダユニット11Aと、右側シリンダユニット11Bと、左側アキュムレータ12Aと、右側アキュムレータ12Bと、通路構造部14と、左側懸架ばね15Aと、右側懸架ばね15Bと、転舵シリンダユニット21と、を備える。なお、
図1および
図2は、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bを、車両1の正面(前面)側から視た模式図である。
【0014】
左側シリンダユニット11Aは、左側後輪3Aと車体2との間に介在され、左側シリンダ16Aと、左側ピストン17Aと、左側ピストンロッド18Aと、を有する。左側シリンダ16Aは、車両1の上下方向(Z方向)に略沿って延びた状態に設けられ、一端部(上端部)と他端部(下端部)とが塞がれた円筒状に構成されている。この左側シリンダ16Aの内部には、作動油(作動流体、流体、液体、媒体)が充満した油室Rが設けられている。左側ピストン17Aは、左側シリンダ16Aの内部に位置され、油室Rを左側第一室RL1と左側第二室RL2とに仕切っている。本実施形態では、左側第一室RL1は、左側ピストン17Aの上側の油室Rであり、左側第二室RL2は、左側ピストン17Aの下側の油室Rである。左側ピストンロッド18Aは、一端部(上端部)が左側ピストン17Aに接続(連結)されるとともに、他端部(下端部)が左側シリンダ16Aの他端部(下端部)を貫通し、左側シリンダ16Aから突出している。そして、本実施形態では、左側シリンダ16Aの一端部(上端部)が、車体2の連結部2a(接続部)に連結され、左側ピストンロッド18Aの他端部(下端部)が、左側後輪3Aと連結されたアーム部材6に連結されている。左側シリンダユニット11Aは、左側ピストン17Aが左側ピストンロッド18Aとともに左側シリンダ16Aに対して相対移動(上下方向に往復動)することで、伸縮する。具体的には、本実施形態では、左側後輪3Aの接地点P1と車体2とが上下方向(Z方向)に近付いた(近接した)場合、左側ピストン17Aは左側シリンダ16A内で上方へ移動する。これにより、左側第一室RL1が縮んで当該左側第一室RL1の容積が減少し、左側第二室RL2が延びて当該左側第二室RL2の容積が増大する。逆に、左側後輪3Aの接地点P1と車体2とが上下方向(Z方向)に遠ざかった(離間した)場合、左側ピストン17Aは左側シリンダ16A内で下方へ移動する。これにより、左側第一室RL1が延びて当該左側第一室RL1の容積が増大し、左側第二室RL2が縮んで当該左側第二室RL2の容積が減少する。
【0015】
右側シリンダユニット11Bは、右側後輪3Bと車体2との間に介在され、右側シリンダ16Bと、右側ピストン17Bと、右側ピストンロッド18Bと、を有する。右側シリンダ16Bは、車両1の上下方向(Z方向)に略沿って延びた状態に設けられ、一端部(上端部)と他端部(下端部)とが塞がれた円筒状に構成されている。この右側シリンダ16Bの内部にも、作動油(作動流体、流体、液体、媒体)が充満した油室Rが設けられている。右側ピストン17Bは、右側シリンダ16Bの内部に位置され、油室Rを右側第一室RR1と右側第二室RR2とに仕切っている。本実施形態では、右側第一室RR1は、右側ピストン17Bの上側の油室Rであり、右側第二室RR2は、右側ピストン17Bの下側の油室Rである。右側ピストンロッド18Bは、一端部(上端部)が右側ピストン17Bに接続(連結)されるとともに、他端部(下端部)が右側シリンダ16Bの他端部(下端部)を貫通し、右側シリンダ16Bから突出している。そして、本実施形態では、右側シリンダ16Bの一端部(上端部)が、車体2の連結部2a(接続部)に連結され、右側ピストンロッド18Bの他端部(下端部)が、右側後輪3Bと連結されたアーム部材6に連結されている。右側シリンダユニット11Bは、右側ピストン17Bが右側ピストンロッド18Bとともに右側シリンダ16Bに対して相対移動(上下方向に往復動)することで、伸縮する。具体的には、本実施形態では、右側後輪3Bの接地点P2と車体2とが上下方向(Z方向)に近付いた(近接した)場合、右側ピストン17Bは右側シリンダ16B内で上方へ移動する。これにより、右側第一室RR1が縮んで当該右側第一室RR1の容積が減少し、右側第二室RR2が延びて当該右側第二室RR2の容積が増大する。逆に、右側後輪3Bの接地点P2と車体2とが上下方向(Z方向)に遠ざかった(離間した)場合、右側ピストン17Bは右側シリンダ16B内で下方へ移動する。これにより、右側第一室RR1が延びて当該右側第一室RR1の容積が増大し、右側第二室RR2が縮んで当該右側第二室RR2の容積が減少する。
【0016】
通路構造部14には、左側第一室RL1と右側第二室RR2とを連通した第一通路14aと、左側第二室RL2と右側第一室RR1とを連通した第二通路14bとが設けられている。通路構造部14は、第一通路14aや第二通路14b等を形成する構造物であり、例えば、複数の配管41〜44等である。通路構造部14は、ブロックや、ホース、チューブ等として構成することができる。通路は、通路構造部14に設けられた穴として形成される。本実施形態では、第一通路14aが設けられた配管41と、第二通路14bが設けられた配管42とが、正面視(背面視)で略X字をなすように配管されている。これらの配管41,42は、左側シリンダ16Aおよび右側シリンダ16Bのそれぞれに固定されている。第一通路14aおよび第二通路14bには、作動油が入れられ、第一通路14aおよび第二通路14bでは、作動油が流れる。
【0017】
左側アキュムレータ12Aは、第一通路14aを介して左側第一室RL1と連通している。右側アキュムレータ12Bは、第二通路14bを介して右側第一室RR1と連通している。左側アキュムレータ12Aは、左側第一室RL1および右側第二室RR2(第一通路14a)から流出した作動油を受け入れたり、左側第一室RL1および右側第二室RR2(第一通路14a)へ作動油を供給したりする。一方、右側アキュムレータ12Bは、右側第一室RR1および左側第二室RL2(第二通路14b)から流出した作動油を受け入れたり、右側第一室RR1および左側第二室RL2(第二通路14b)へ作動油を供給したりする。左側アキュムレータ12Aや右側アキュムレータ12Bの内部には、気体が充填された気室R5と、作動油の流入出が可能な油室R6とが体積変化可能に区画形成されている。そして、これら左側アキュムレータ12Aおよび右側アキュムレータ12Bは、油室R6の体積(作動油の体積)の変化に応じて気室R5の体積(気体の体積)が変化することで、ばね(気体ばね)として作用する。具体的には、油室R6に作動油が流入すると、気室R5内の気体が圧縮され、圧縮された気体の反発力(ばね力、付勢力)が作動油に作用し、車両1のロール剛性(スタビライザ機能)を付与することが可能となる。左側アキュムレータ12Aおよび右側アキュムレータ12Bは、車体2に固定されている。
【0018】
左側懸架ばね15Aは、左側後輪3Aと連結されたアーム部材6と車体2との間に設けられている。右側懸架ばね15Bは、右側後輪3Bと連結されたアーム部材6と車体2との間に設けられている。左側懸架ばね15Aおよび右側懸架ばね15Bは、車体2とアーム部材6との間に介在することで、伸縮部が弾性的に車体1の重量を支え、衝撃を吸収することができる。左側懸架ばね15Aおよび右側懸架ばね15Bは、例えば、コイルばねである。
【0019】
上述した構成により、サスペンション装置4は、車体2と車輪3との相対的な動きによる各部の圧力変化によって、各シリンダ内における対応するピストンの移動を抑制する等により、車体2の姿勢を制御することができる。
【0020】
車両1の旋回時には、外輪となる車輪3に設けられたシリンダユニットが縮み、内輪となる車輪3に設けられたシリンダユニットが伸びる。一例として、
図3に示されるように、車両1がA方向(本実施形態では、一例として左方向、車両上方からの平面視で反時計回り方向)に旋回した場合、左側シリンダユニット11Aが延び、右側シリンダユニット11Bが縮む。この場合、
図2に示されるように、左側シリンダユニット11Aでは、左側第一室RL1の容積が増大し、左側第二室RL2の容積が減少し、右側シリンダユニット11Bでは、右側第一室RR1の容積が減少し、右側第二室RR2の容積が増大する。すなわち、第二通路14bで連通された左側第二室RL2と右側第一室RR1との両方で容積が減少する。よって、左側第二室RL2と右側第一室RR1とから流出した作動油が第二通路14bへ流入し、当該作動油の一部が右側アキュムレータ12Bへ流れる。一方、第一通路14aで連通された左側第一室RL1と右側第二室RR2との両方で容積が増大するため、第一通路14aを介して左側アキュムレータ12Aから左側第一室RL1と右側第二室RR2とに作動油が供給される。逆方向に旋回する場合は、各構成要素が逆方向に動作し、作動油の流れが形成される。本実施形態によれば、車両1の旋回時には、サスペンション装置4は、左側アキュムレータ12Aまたは右側アキュムレータ12Bの気体ばね作用等によって、車両1のロール運動(車体2のロール姿勢)を制御することができる。
【0021】
また、左側シリンダユニット11Aおよび右側シリンダユニット11Bがいずれも同相で縮む場合、左側第一室RL1および右側第一室RR1の容積が減少し、左側第二室RL2および右側第二室RR2の容積が増大する。この場合、左側第一室RL1から第一通路14aを経て右側第二室RR2に至る作動油の流れが形成される。一方、右側第一室RR1から第二通路14bを経て左側第二室RL2に至る作動油の流れが形成される。このとき、左側第二室RL2および右側第二室RR2において増大する容積は、左側第一室RL1および右側第一室RR1において減少する容積に対して、ピストンロッド(左側ピストンロッド18Aおよび右側ピストンロッド18B)が左側第二室RL2および右側第二室RR2へ入った体積分だけ小さいため、その分、左側第一室RL1および右側第一室RR1から流出した作動油が左側第二室RL2および右側第二室RR2へ流入できずに余剰となる。この余剰分の作動油は、左側第一室RL1からは、第一通路14aを介して左側アキュムレータ12Aへ流れ、右側第一室RR1からは、第二通路14bを介して右側アキュムレータ12Bへ流れる。
【0022】
次に、左側シリンダユニット11Aおよび右側シリンダユニット11Bの変位が同相で伸びる場合、左側第一室RL1および右側第一室RR1の容積が増大し、左側第二室RL2および右側第二室RR2の容積が減少する。この場合、左側第二室RL2から流出した作動油は、第二通路14bを通って右側第一室RR1に流入する。一方、右側第二室RR2から流出した作動油は、第一通路14aを通って左側第一室RL1に流入する。このとき、左側第二室RL2および右側第二室RR2において減少する容積は、左側第一室RL1および右側第一室RR1において増大する容積に対して、ピストンロッド(左側ピストンロッド18Aおよび右側ピストンロッド18B)が左側第二室RL2および右側第二室RR2から出た体積分だけ小さいため、その分、左側第二室RL2および右側第二室RR2からの流入する作動油だけでは左側第一室RL1および右側第一室RR1へ流入する作動油が不足する。この不足分の作動油は、左側第一室RL1には、第一通路14aを介して左側アキュムレータ12Aから供給され、右側第一室RR1には、第二通路14bを介して右側アキュムレータ12Bから供給される。
【0023】
本実施形態では、左側シリンダユニット11Aおよび右側シリンダユニット11Bが同相で伸縮する場合、サスペンション装置4は、左側アキュムレータ12Aおよび右側アキュムレータ12Bによる気体ばねはほとんど作用しない。このように、本実施形態では、左側シリンダユニット11Aと右側シリンダユニット11Bとが、逆相で伸縮する場合には気体ばね作用によって車両1のロール運動を制御することができ、同相で伸縮する場合には気体ばねはほとんど作用しない。このような構成によって、スタビライザのような機能を担っている。
【0024】
また、本実施形態では、転舵シリンダユニット21は、左側後輪3Aと右側後輪3Bとの間に介在され、転舵シリンダ26と、転舵ピストン27と、転舵ピストンロッド28と、を有する。転舵シリンダ26は、車幅方向(左右方向、Y方向)に沿って位置され、一端部(左側後輪3A側の端部)と他端部(右側後輪3B側の端部)とが塞がれた円筒状に構成されている。転舵シリンダ26の内部には、作動油(作動流体、流体、液体、媒体)が充満した油室Rが設けられている。転舵ピストン27は、転舵シリンダ26の内部に位置され、油室Rを第三室R3と第四室R4とに仕切っている。本実施形態では、第三室R3は、転舵ピストン27の左側の油室Rであり、第四室R4は、転舵ピストン27の右側の油室Rである。転舵ピストンロッド28は、第一のロッド部28Aと、第二のロッド部28Bと、を有する。第一のロッド部28Aは、他端部(右側後輪3B側の端部)が転舵ピストン27に接続(連結)されるとともに、一端部(左側後輪3A側の端部)が転舵シリンダ26の一端部(左側後輪3A側の端部)を貫通し、転舵シリンダ26から突出している。第二のロッド部28Bは、一端部(左側後輪3A側の端部)が転舵ピストン27に接続(連結)されるとともに、他端部(右側後輪3B側の端部)が転舵シリンダ26の他端部(右側後輪3B側の端部)を貫通し、転舵シリンダ26から突出している。第一のロッド部28Aは、左側後輪3Aに揺動可能に連結されたアーム部材25A(リンク部材)と接続され、第二のロッド部28Bは、右側後輪3Bに揺動可能に連結されたアーム部材25B(リンク部材)と接続されている。一方、転舵シリンダ26は、車体2に固定されている。
【0025】
また、本実施形態では、第三室R3は、第一通路14aおよび第三通路14cを介して左側第一室RL1と連通し、第四室R4は、第二通路14bおよび第四通路14dを介して右側第一室RR1と連通している。第三通路14cおよび第四通路14dは、配管43,44によって構成されうる。本実施形態では、第三通路14cが設けられた配管43が、配管41と転舵シリンダ26とを接続し、第四通路14dが設けられた配管44が、配管42と転舵シリンダ26とを接続している。配管43および配管44は、通路構造部14の一例である。第三通路14cおよび第四通路14dには、作動油が入れられ、第三通路14cおよび第四通路14dでは、作動油が流れる。
【0026】
そして、転舵シリンダユニット21では、車体2の姿勢変化等によって第一通路14aと第二通路14bとの間で差圧が生じた場合に、当該差圧に応じて第三室R3および第四室R4のうち一方に作動油が供給され、転舵ピストン27が転舵ピストンロッド28とともに転舵シリンダ26内で移動する。具体的には、本実施形態では、第一通路14aの油圧よりも第二通路14bの油圧が低い場合、第一通路14aから第三通路14cを経て第三室R3に至る作動油の流れが形成され、第三室R3が延びて当該第三室R3の容積が増大し、第四室R4が縮んで当該第四室R4の容積が減少する。この場合、転舵ピストン27は、転舵シリンダ26の他端部(右側後輪3B側の端部)に近づく方向に移動する。一方、第一通路14aの油圧よりも第二通路14bの油圧が高い場合、第二通路14bから第四通路14dを経て第四室R4に至る作動油の流れが形成され、
図2に示されるように、第三室R3が縮んで当該第三室R3の容積が減少し、第四室R4が延びて当該第四室R4の容積が増大する。この場合、転舵ピストン27は、転舵シリンダ26の一端部(左側後輪3A側の端部)に近づく方向(B方向)に移動する。
【0027】
また、本実施形態では、転舵ピストン27は、右側後輪3Bに近づく方向に移動した場合、アーム部材25Bが右側後輪3Bの前部を押しかつアーム部材25Aが左側後輪3Aの前部を引く方向に転舵ピストンロッド28の力が作用するよう、構成されている。また、転舵ピストン27は、左側後輪3Aに近づく方向(B方向)に移動した場合(
図3参照)、アーム部材25Aが左側後輪3Aの前部を押しかつアーム部材25Bが右側後輪3Bの前部を引く方向に転舵ピストンロッド28の力が作用するよう、構成されている。よって、転舵ピストン27が右側後輪3Bに近づく方向に移動した場合、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bは、車両前方への視線では右方向、車両1上方からの視線では時計回り方向に、転舵する。一方、転舵ピストン27が左側後輪3Aに近づく方向(B方向)に相対移動した場合(
図3参照)、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bは、車両前方への視線では左方向、車両1上方からの視線では反時計回り方向に、転舵する。このように、本実施形態では、車幅方向(左右方向)に移動可能な転舵ピストン27を備えるため、サスペンション装置4内で差圧が生じた場合に、当該差圧を利用して、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bを転舵させる、あるいは他に転舵(操舵)システムを有する場合には、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bの転舵を補助することができる。
【0028】
なお、サスペンション装置4では、上述したように、左側シリンダユニット11Aと右側シリンダユニット11Bとが同相で変位(伸縮)する場合と、左側シリンダユニット11Aと右側シリンダユニット11Bとが逆相で変位(伸縮)する場合とがある。左側シリンダユニット11Aと右側シリンダユニット11Bとが逆相で変位した場合には、上述したように転舵ピストン27が転舵シリンダ26内で移動して、当該転舵ピストン27による左側後輪3Aならびに右側後輪3Bの転舵が実行される。また、本実施形態では、
図3に示されるように、左側後輪3Aならびに右側後輪3Bは、左側前輪3Cならびに右側前輪3Dと同じ方向(同相)に転舵(操舵)されるよう、構成されている。よって、本実施形態によれば、比較的高速での走行中に操舵がなされた場合に、車両1の挙動がより安定化しやすい。一方、左側シリンダユニット11Aおよび右側シリンダユニット11Bが同相で変位した場合、第一通路14aと第二通路14bとの間で差圧は生じないため、転舵ピストン27は転舵シリンダ26内で移動せず、当該転舵ピストン27による左側後輪3Aならびに右側後輪3Bの転舵は実行されない。
【0029】
以上のように、本実施形態では、第一通路14aと第二通路14bとの間で差圧が生じた場合に、転舵ピストン27が転舵シリンダ26に対して車幅方向(左右方向)に相対移動する転舵シリンダユニット21を備えている。よって、本実施形態によれば、一例としては、車両1の旋回時等に、サスペンション装置4内の差圧を利用して、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bを転舵することができる。
【0030】
また、本実施形態では、一例として、通路構造部14によって、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bが、左側前輪3Cおよび右側前輪3Dに対して同相で(同方向に)転舵するよう構成されている。よって、本実施形態によれば、一例としては、車両1のより高速での旋回時に車両1の挙動がより安定化しやすい。すなわち、車両1の横滑り等が抑制されやすい。
【0031】
なお、本実施形態では、アーム部材25A,25Bを車軸Ax(または転舵中心)に対して前後方向(X方向)の前方側に外れた位置で、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bと連結したが、アーム部材25A,25Bを車軸Axに対して前後方向(X方向)の後方側に外れた位置で、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bと連結してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、左側シリンダ16Aおよび右側シリンダ16Bを車体2に接続し、左側ピストンロッド18Aおよび右側ピストンロッド18Bを車輪3に接続したが、左側シリンダ16Aおよび右側シリンダ16Bを車輪3に接続し、左側ピストンロッド18Aおよび右側ピストンロッド18Bを車体2に接続してもよい。
【0033】
<第2実施形態>
図4,5に示される実施形態にかかるサスペンション装置4Aは、上記実施形態のサスペンション装置4と同様の構成を備えている。よって、本実施形態によっても、上記実施形態と同様の構成に基づく同様の結果(効果)が得られる。
【0034】
ただし、本実施形態では、
図4に示されるように、第三室R3および第四室R4には、それぞれ弾性部材40が設けられている。弾性部材40は、例えば、コイルばねである。一対の弾性部材40は、いずれも、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bの舵角が小さくなる方向に転舵ピストン27を付勢している。すなわち、弾性部材40は、転舵ピストン27を中立位置(転舵シリンダ26の車幅方向の中間位置)で保持している。よって、本実施形態によれば、一例としては、車両1が旋回状態から直進状態に復帰した際に、より素早く転舵ピストン27を中立位置に復帰させることができる。よって、一例としては、車両1の直進時等の転舵が不要な場合に、転舵ピストン27が動作するのが抑制されやすい。
【0035】
また、本実施形態では、通路切替ユニット30(第一切替弁)が設けられている。通路切替ユニット30には、第三通路14cおよび第四通路14dが連通している。また、本実施形態では、通路構造部14は、第三室R3と通路切替ユニット30とを連通する第五通路14eが設けられた配管45と、第四室R4と通路切替ユニット30とを連通する第六通路14fが設けられた配管46と、を備える。通路切替ユニット30は、
図5に示されるように、第一弁部31Aと、第二弁部31Bと、を備える。本実施形態では、第一弁部31Aは、第三通路14cと第五通路14eとの間に介在し、第二弁部31Bは、第四通路14dと第六通路14fとの間に介在している。第一弁部31Aおよび第二弁部31Bは、それぞれ、弁体35と、弁体35を閉位置に付勢する弾性部材33と、弁体35を弾性部材33の付勢力に抗して開位置に移動させる駆動部32と、を備える。弾性部材33は、例えば、コイルばねであり、駆動部32は、例えば、ソレノイドである。通路切替ユニット30は、例えば、車両1の直進時に、第一弁部31Aおよび第二弁部31Bの弁体35を閉じ、車両1の旋回時に、駆動部32を動作させて第一弁部31Aおよび第二弁部31Bの弁体35を開くよう構成することができる。このように、通路切替ユニット30は、左側第一室RL1と第三室R3とを遮断しかつ右側第一室RR1と第四室R4とを遮断した状態と、左側第一室RL1と第三室R3とを連通しかつ右側第一室RR1と第四室R4とを連通した状態と、を切替えることができる。よって、一例としては、車両1の直進時等の転舵が不要な場合に、転舵ピストン27が動作するのがより一層抑制されやすい。
【0036】
なお、本実施形態では、第三室R3に設けられた弾性部材40と、第四室R4に設けられた弾性部材40とで、転舵ピストン27が中立位置で保持されていたが、第三室R3および第四室R4のうち一方に設けられた弾性部材40によって、転舵ピストン27が中立位置で保持される構成であってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、第一弁部31Aが第三通路14cと第五通路14eとを接続し、第二弁部31Bが第四通路14dと第六通路14fとを接続したが、第一弁部31Aが第三通路14cと第六通路14fとを接続し、第二弁部31Bが第四通路14dと第五通路14eとを接続してもよい。
【0038】
<第3実施形態>
図6に示される実施形態にかかるサスペンション装置は、上記第2実施形態のサスペンション装置4Aと同様の構成を備えている。よって、本実施形態によっても、上記第2実施形態と同様の構成に基づく同様の結果(効果)が得られる。
【0039】
ただし、本実施形態では、
図6に示されるように、通路切替ユニット30(第一切替弁、
図4,5参照)に換えて、通路切替ユニット30A(第二切替弁)が設けられている。通路切替ユニット30Aでは、第五通路14eおよび第六通路14fがそれぞれ二股状に分岐され、そのうち一方が第一弁部31Aと接続され、他方が第二弁部31Bと接続されている。第一弁部31Aおよび第二弁部31Bは、それぞれ、弁体36と、弁体36を閉位置に付勢する一対の弾性部材33と、弁体36を弾性部材33の付勢力に抗して第一開位置(第一接続位置)または第二開位置(第二接続位置)に移動させる一対の駆動部32と、を備える。第一弁部31Aは、第一開位置では、第三通路14cと第五通路14eとを連通し、第二開位置では、第三通路14cと第六通路14fとを連通し、閉位置では、第三通路14cと第五通路14eおよび第六通路14fとを遮断する。一方、第二弁部31Bは、第一開位置では、第四通路14dと第六通路14fとを連通し、第二開位置では、第四通路14dと第五通路14eとを連通し、閉位置では、第四通路14dと第五通路14eおよび第六通路14fとを遮断する。通路切替ユニット30Aは、例えば、車両1の高速走行での旋回時等に、第一弁部31Aおよび第二弁部31Bの弁体36を第一開位置に移動させ、車両1の低速走行での旋回時等に、第一弁部31Aおよび第二弁部31Bの弁体36を第二開位置に移動させるよう構成することができる。このように、通路切替ユニット30Aは、左側第一室RL1と第三室R3とを連通しかつ右側第一室RR1と第四室R4とを連通した状態と、左側第一室RL1と第四室R4とを連通しかつ右側第一室RR1と第三室R3とを連通した状態と、を切替えることができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、車両1の操縦性が向上されやすい。すなわち、車両1の高速走行での旋回時には、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bを、左側前輪3Cおよび右側前輪3Dと同相(同方向)に(
図3参照)転舵させる(操舵する)ことができる。よって、一例としては、車両1の挙動がより安定化されやすい。また、車両1の低速走行での旋回時には、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bを、左側前輪3Cおよび右側前輪3Dと逆相(逆方向、
図7参照、本実施形態では、一例として前輪が時計回り方向、後輪が反時計回り方向)に転舵させる(操舵する)ことができる。よって、一例としては、車両1の最小回転半径が小さくなりやすく、小回りがききやすい。また、通路切替ユニット30Aでは、第三通路14cと第五通路14eおよび第六通路14fとを遮断しかつ第四通路14dと第五通路14eおよび第六通路14fとを遮断した状態に切換えることもできる。よって、本実施形態によれば、一例としては、車両1の直進時に、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bが転舵されるのが抑制されやすい。このように、通路切替ユニット30A(第二切替弁)は、通路切替ユニット30(第一切替弁)としても機能する。
【0040】
なお、本実施形態では、駆動部32を弁体36が三つの位置をとり得るソレノイドで構成したが、駆動部32をリニアソレノイドで構成してもよい。この場合、リニアソレノイドによって、弁体36の開度を制御することで、左側後輪3Aおよび右側後輪3Bの転舵速度や転舵角等を制御することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、各構成要素のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。