(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る圧縮機について図面を参照して説明する。
本実施形態の圧縮機は、車両に搭載される可変容量型斜板式圧縮機(以下「圧縮機」と表記する)である。
【0017】
図1に示す圧縮機のハウジング11は、シリンダブロック12と、シリンダブロック12の一端(前端)に接合されるフロントハウジング13と、シリンダブロック12の他端(後端)に接合されるリヤハウジング14とを有している。
シリンダブロック12、フロントハウジング13及びリヤハウジング14は、複数の通しボルト(図示せず)により相互に接続されている。
シリンダブロック12とリヤハウジング14の間には弁板15が介在されている。
【0018】
圧縮機のハウジング11の内部には、圧縮機構(図示せず)が収容されている。
圧縮機構は、回転軸16と、回転軸16とともに回転し、ハウジング11内に形成されるクランク室に収容される斜板(図示せず)と、シリンダブロック12のシリンダボアに収容されるピストン(図示)とを備えている。
圧縮機構は、斜板の傾斜角度に応じてピストンがシリンダボア内にて往復動することにより、シリンダボア内の圧縮室の容積を変化させて冷媒を圧縮する公知の圧縮機構である。
【0019】
本実施形態のフロントハウジング13の外周面17における上部および下部には、フロントハウジング13と一体形成された脚部18が形成されている。
脚部18は、車両の搭載空間における設置面に締結ボルト(図示せず)を介して圧縮機を横置きにて設置するためのものである。
脚部18には回転軸16の径方向へ向けて形成されたボルト挿通孔19が形成されており、ボルト挿通孔19に締結ボルトを挿通し、設置面に形成されたボルト孔へ締結ボルトを螺入することにより、脚部18が設置面に固定される。
【0020】
また、リヤハウジング14の外周面20の上部には、リヤハウジング14と一体形成された脚部21が形成されている。
脚部21には回転軸16の径方向へ向けて形成されたボルト挿通孔22が形成されており、ボルト挿通孔22に締結ボルトを挿通し、設置面に形成されたボルト孔へ締結ボルトを螺入することにより、脚部21が設置面に固定される。
従って、本実施形態の圧縮機は、2つの脚部18と1つの脚部21が設置面に固定されることにより、回転軸16の軸心方向が水平方向となるように車両に横置きにて取り付けられる。
【0021】
リヤハウジング14の外周面20の下部には、容量制御弁23が挿入される挿入口24が形成されている。
本実施形態では、容量制御弁23がリヤハウジング14の挿入口24から回転軸16の径方向において上部へ向けて挿入されている。
容量制御弁23は、クランク室の圧力を変更する機能を備えた公知の容量制御弁である。
クランク室の圧力が変更されることにより、クランク室とシリンダボアとのピストンを介した圧力差が変更され、この圧力差の変更により斜板の傾斜角度が変更され、圧縮機の吐出容量は調節される。
【0022】
リヤハウジング14の内部には、図示されないが、吸入室を含む吸入圧領域が形成されているほか、吐出室を含む吐出圧領域が形成されている。
吸入圧領域は、図示されない外部冷媒回路から吸入圧の冷媒が吸入される圧力空間であり、吐出圧領域はシリンダボアに形成される圧縮室から吐出圧の冷媒が吐出される圧力空間である。
吸入圧領域および吐出圧領域は冷媒流路に相当する。
外部冷媒回路は、図示されないが、吸入圧領域と連通される吸入側配管と、吐出圧領域と連通される吐出圧配管を備えている。
【0023】
本実施形態では、外部冷媒回路の吸入側配管および吐出側配管と連結される接続ブロック部25が脚部21とほぼ対向してリヤハウジング14に配置されている。
接続ブロック部25はリヤハウジング14と一体形成されており、外周面20において回転軸16の径方向および軸方向へ突出する形状を呈している。
接続ブロック部25の上部には、やや傾斜する平坦面26が形成されており、平坦面26の上部側には吸入圧領域と連通する吸入口27が開口している。
平坦面26において吸入口27よりも僅かに低位置には、吐出圧領域と連通する吐出口28が開口している。
【0024】
図2に示すように、接続ブロック部25の背面側における吸入口27側には、内部に吸入口27に連通する吸入圧領域を形成して、背面側から回転軸16の軸方向へ向けて隆起する吸入口側隆起部29が形成されている。
吸入口側隆起部29は、リヤハウジング14の内部に吸入圧領域を形成する隆起部に相当する。
接続ブロック部25の背面側における吐出口28側には、内部に吐出口28に連通する吐出圧領域を形成して、背面側から回転軸16の軸方向へ向けて隆起する吐出口側隆起部30が形成されている。
吐出口側隆起部30は、リヤハウジング14の内部に吐出圧領域を形成する隆起部に相当する。
吐出口側隆起部30の表面には、さらに軸方向へ向けて突出する軸状の突起部31が形成されている。
突起部31は、後述する安全弁40と他部材との干渉をし難くして安全弁40を保護するためのものである。
接続ブロック部25の平坦面26側には、吸入口側隆起部29と吐出口側隆起部30と繋ぐようにリブ32が形成されている。
リブ32は接続ブロック部25の強度を向上するための部位である。
本実施形態では、接続ブロック部25の背面側において、吸入口側隆起部29、吐出口側隆起部30と繋ぐリブ32により三方が囲まれた囲繞部33が形成されている。
囲繞部33の表面はリヤハウジング14の背面側の端面34とほぼ同一となる面である。
リヤハウジング14の背面側の端面34はハウジング表面に相当する。
【0025】
リヤハウジング14の端面34には、接続ブロック部25の吸入口側隆起部29から回転軸16の径方向へ向けて延在する第1隆起部35が形成されている。
第1隆起部35は端面34から回転軸16の軸方向へ向けて隆起する部位であり、吸入口側隆起部29とともにリヤハウジング14における吸入圧領域の位置に対応する位置に形成されている。
リヤハウジング14の端面34を基準としたとき、第1隆起部35は軸方向において吸入口側隆起部29よりも低い隆起部である。
リヤハウジング14には、容量制御弁23の位置に対応して端面34から回転軸16の軸方向へ隆起する第2隆起部36が形成されている。
第2隆起部36は、端面34において第1隆起部35と異なる回転軸16の径方向へ延在して形成され、第1隆起部35と接続されている。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、リヤハウジング14の端面34に吐出圧領域と連通するボルト孔37が形成されている。
ボルト孔37には安全弁40が取り付けられている。
安全弁40は、吐出圧領域の圧力の異常上昇時において所定圧力に達したときに吐出圧領域の冷媒ガスを外部へ噴出する。
安全弁40は、リヤハウジング14における接続ブロック部25寄りであって、吸入口側隆起部29と吐出口側隆起部30との間に位置する(
図2を参照)。
また、安全弁40と吸入口側隆起部29との距離は、安全弁40と吐出口側隆起部30との距離よりも大きく設定されている。
【0027】
図3に示すように、安全弁40は、リヤハウジング14に取り付けられる弁本体41と、弁本体41を覆うカバー部としての内側キャップ体42と、内側キャップ体42を覆い、弁本体41に着脱可能に取り付けられる外側キャップ体43と、を有している。
弁本体41は、リヤハウジング14のボルト孔37に螺入可能なネジ部としてのボルト軸部44と、ボルト軸部44の端部に一体形成された六角柱の頭部45を備えている。
ボルト軸部44をボルト孔37に螺入することにより、弁本体41がリヤハウジング14に取り付けられる。
頭部45の先端側における端面46の中心には、弁本体41の軸方向へ向けて開口する噴出口47が形成されている。
噴出口47は、弁本体41の内部に形成された弁通路(図示)を介してリヤハウジング14内の吐出圧領域と連通しており、この弁通路には吐出圧領域が所定圧力に達したときに開弁される弁機構(図示せず)が設けられている。
【0028】
頭部45は六角柱状であるため、頭部45の外周面は6つの平坦面48により形成されている。
頭部45には、互いに隣り合う平坦面48の境界である稜線部49の一部が面取りされ、面取部50が形成されている。
面取部50は、頭部45のボルト軸部44側に形成されており、面取部50と稜線部49との間には径方向に形成される段差面を有する段差部51が形成されている。
図4に示すように、頭部45のボルト軸部44側には、平坦面48が形成されていない座部52が形成されており、座部52は端面34と当接する。
【0029】
内側キャップ体42は、金属板を絞り加工することにより形成されている。
図4に示すように、内側キャップ体42は、噴出口47から噴き出す冷媒ガスを噴き出し方向と直角方向へ偏向するとともに、冷媒ガスの偏向方向を特定の方向に規定するためのものである。
内側キャップ体42は、頭部45の外周面に嵌合可能なカバー周面部としての壁部55と壁部55の一方の端部を覆うカバー端面部としての蓋部56とを備えている。
壁部55は、頭部45の外周面を形成する6つの平坦面48のうち、4つの平坦面48と対向する4つの面を有する。
また、頭部45における残りの互いに隣り合う2つの平坦面48を壁部55が覆わないように、切り欠き57が形成されている。
蓋部56は、頭部45の端面46と間隙を空けて対向する。
このため、噴出口47から冷媒ガスが噴出すると、冷媒ガスの流れは噴出方向と異なる方向である直角方向へ偏向される。
冷媒ガスの偏向方向は壁部55および切り欠き57により規定される。
【0030】
外側キャップ体43は、所定の形状に打ち抜かれた金属板を折り曲げにより形成される。
外側キャップ体43は、内側キャップ体42が確実に弁本体41の頭部45を覆うようにするとともに、頭部45から外れることを防止するためのものである。
外側キャップ体43には、内側キャップ体42の壁部55と重なる4つの面を有する壁部58と壁部58の一方の端部を覆う蓋部59を備えている。
壁部58は、内側キャップ体42の切り欠き57と対応する切り欠き60が形成されている。
【0031】
壁部58の他方の端部となる角部には、一対の係止アーム部61が形成されている。
係止アーム部61の先端側には、弁本体41の面取部50と当接可能であって、かつ、弁本体41の段差部51と係合可能な係止部としての係止爪部67が設けられている。
本実施形態の係止爪部67は、係止アーム部61において屈曲されている箇所よりも先端部の部位である。
係止爪部67の先端部は外側へ湾曲されており、係止爪部67の間に頭部が入り込み易い構造となっている。
また、壁部58には一対の係止アーム部61に設けた係止爪部67の他に、弁本体41の段差部51と係合可能な係止部としての係止爪部68が設けられている。
外側キャップ体43が弁本体41へ装着された状態では、一対の係止爪部67および係止爪部68は、頭部45において円周方向に等間隔で設けられた6つの面取部50と当接するとともに、面取部50に対応する6つの段差部51のうち1つおきに離れた3つの段差部51と係合可能な状態にある。
外側キャップ体43が弁本体41へ装着された状態では、噴出口47から冷媒ガスが噴出した時に、外側キャップ体43は係止爪部67、68が段差部51に係合する位置まで弁本体41の軸心方向に移動する。
係止爪部67、68が段差部51に係合することにより、外側キャップ体43の軸心方向の移動規制が行われ、内側キャップ体42および外側キャップ体43の頭部45からの脱落が防止されている。
つまり、噴出口47から噴き出す冷媒ガスが内側キャップ体42に勢い良く当たっても、係止爪部67、68と段差部51との係止により、内側キャップ体42および外側キャップ体43は噴き出し方向へ脱落することはない。
また、係止爪部67、68が段差部51に係止されるため、内側キャップ体42および外側キャップ体43は冷媒ガスの偏向方向と反対方向へ脱落することもない。
【0032】
図5に示すように、本実施形態では、内側キャップ体42および外側キャップ体43は、切り欠き57、60を一致させるように予め組み合わせて一体化させ、一体化させた内側キャップ体42および外側キャップ体43(以下「複合キャップ体62」と表記)を頭部45に装着する。
キャップとしての複合キャップ体62を頭部45に取り付けるとき、頭部45の側方に複合キャップ体62を位置させ、頭部45と切り欠き57、60とを対向する。
複合キャップ体62を頭部45へ向けて弁本体41の径方向へ移動させることにより、複合キャップ体62は頭部45との嵌合により取り付けられる。
従って、複合キャップ体62の切り欠き57、60は、弁本体41の径方向へ移動時において前方となる。
噴出口47から噴き出す冷媒ガスの流れは、噴出方向(弁本体41の軸方向)と直角方向(弁本体41の径方向)へ偏向されるが、偏向される冷媒ガスは切り欠き57、60の方向へ向かう。
このため、安全弁40から噴き出す冷媒ガスの径方向への噴出方向と、複合キャップ体62の取付方向は一致する。
【0033】
本実施形態の圧縮機では、
図2に示すように、安全弁40から噴き出す冷媒ガスの径方向への噴出方向が許容される噴出許容範囲Rが設定されている。
噴出許容範囲Rは、安全弁40を中心として角度が90度未満の範囲に設定されている。
図2では、リヤハウジング14の径方向における中心付近を通る設定線Aと、リヤハウジング14の上部と接続ブロック部25との間付近を通る設定線Bとにより噴出許容範囲Rを示す。
なお、安全弁40の弁本体41はボルト孔37への螺入による締結のため、頭部45の外周面を形成する平坦面48および稜線部49の周方向の位置が規定されていない。
しかし、安全弁40から噴出する冷媒ガスの径方向への噴出方向が許容される噴出許容範囲R内となるように、複合キャップ体62の切り欠き57、60を対応させて位置させればよい。
【0034】
図6に示すように、弁本体41の頭部45が六角柱状であるため、複合キャップ体62の取付方向は6方向に規定されるが、本実施形態では、複合キャップ体62の取付方向を制約する工夫が図られている。
具体的には、リヤハウジング14の端面34に干渉部としての突起部63が安全弁40に近接して備えられている。
突起部63は、複合キャップ体62が弁本体41に対して予め設定した取付方向以外の方向から取り付けされるときに、複合キャップ体62と干渉する。
つまり、突起部63は、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けにおいて、冷媒ガスの噴出が所定の噴出方向となるように、所定の噴出方向とならない複合キャップ体62の弁本体41へ相対移動を、複合キャップ体62との干渉により阻害する。
本実施形態では、突起部63は、安全弁40の近傍において端面34から軸方向へ突出して形成されており、端面34側からみてボルト孔37と同心となる円弧状である。
突起部63の大部分は、噴出許容範囲Rに含まれる位置に形成されている。
突起部63の端面34側の基部から先端部64までの高さは、頭部45の中間付近までの高さとなっている(
図4を参照)。
従って、突起部63は、複合キャップ体62により偏向される冷媒ガスの流れを妨げることはない。
なお、突起部63の高さは、頭部45と端面34との間に位置する座部52の軸方向の長さより大きく設定されるとともに、端面34から頭部45の端面46まで高さよりも小さく設定されていればよい。
【0035】
図2、
図6に示すように、突起部63の一方の端部65は、吸入口側隆起部29と離れて位置し、突起部63の一方の端部65と吸入口側隆起部29との間の距離は、複合キャップ体62の最大径よりも大きく設定されている。
突起部63の他方の端部66は、吐出口側隆起部30と接近して位置し、突起部63の他方の端部66と吐出口側隆起部30との間の距離は、複合キャップ体62の最小径より小さく設定されている。
弁本体41は突起部63と囲繞部33との間に位置することになる。
図2、
図5および
図6に示すように、複合キャップ体62が弁本体41の側方に位置可能な範囲は、囲繞部33と囲繞部33から突起部63の一方の端部65と吸入口側隆起部29との間に至る範囲である。
つまり、端面34において囲繞部33と囲繞部33から突起部63の一方の端部65と吸入口側隆起部29との間に至る領域は、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けが可能な領域E(以下、「取付可能領域E」と表記する)である。
図6に示すように、本実施形態では、取付可能領域Eにおける複合キャップ体62の取り付けについては移動方向D1、D2に対応する2方向の取付方向が許容されている。
一方、端面34において取付可能領域E以外の領域では、移動方向D3〜D6に対応する残りの4方向の取付方向が考えられる。
取付可能領域E以外の領域において移動方向D3〜D6に対応する4方向の取付方向のそれぞれから複合キャップ体62を弁本体41に取り付けようとしても、突起部63、吐出口側隆起部30が干渉部として邪魔をするため、複合キャップ体62の取り付けは不可能である。
【0036】
次に、本実施形態の圧縮機の弁本体41への複合キャップ体62の取り付けの手順について説明する。
まず、内側キャップ体42および外側キャップ体43を一体化させて複合キャップ体62を用意する。
次に、
図7(a)に示すように、取付可能領域Eにおいて複合キャップ体62を弁本体41の側方に位置させる。
本実施形態では、移動方向D1に対応する取付方向に対応するように、頭部45と複合キャップ体62の切り欠き57、60とを対向させる。
複合キャップ体62を頭部45へ向けて弁本体41の径方向へ移動させることにより、一対の係止アーム部61の係止爪部67は、平坦面48と当接しつつ、一対の係止爪部67の間が拡大する方向に弾性変形し、径方向への移動とともに面取部50へ達し、一対の係止爪部67の間の距離が縮小される方向に弾性変形し、段差部51と当接する。
また、壁部58の係止爪部68も対応する面取部50と当接しつつ段差部51と当接する。
従って、複合キャップ体62は頭部45と取り付けられ、壁部55が頭部45の外周面に係合されると共に、蓋部56は噴出口47と対向する位置に配置される。
この状態においては、外側キャップ体43は径方向への移動が規制された状態にある。
複合キャップ体62の弁本体41への取り付けは、係止部としての係止爪部67、68、カバー周面部としての壁部55及びカバー端面部としての蓋部56とにより、弁本体41の頭部45に対し、六角柱の頭部45の側方からの相対移動によってなされることに特定されている。
図7(b)に示すように、弁本体41に複合キャップ体62が取り付けられることにより安全弁40が完成する。
図7(b)において示す矢印Cは、安全弁40の冷媒ガスの噴出方向であり、安全弁40の冷媒ガスの噴出方向は移動方向D1に対応する取付方向と同じ方向である。
【0037】
本実施形態の圧縮機によれば以下の効果を奏する。
(1)リヤハウジング14に突起部63が形成されているから、複合キャップ体62を弁本体41に対して移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向以外の移動方向D3〜D6に対応する取付方向から取り付けようとしても、複合キャップ体62は吐出口側隆起部30や突起部63と互いに干渉する。このため、複合キャップ体62の予め設定した取付方向以外の取付方向から取り付けを不可能とする。つまり、突起部63は、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けにおいて、冷媒ガスの噴出が所定の噴出方向となるように、所定の噴出方向とならない複合キャップ体62の弁本体41へ相対移動を、複合キャップ体62との干渉により阻害し、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を予め設定した取付方向に制約することができる。
【0038】
(2)弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向に制約することができる。このため、作業者は予め設定した取付方向以外の移動方向D3〜D6に対応する取付方向から複合キャップ体62を弁本体41に取り付けてしまうことがなく、複合キャップ体62の取り付け作業が容易化する。
【0039】
(3)複合キャップ体62が弁本体41に対して移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向から取り付けられているか否かを確認する作業を不要とすることも可能である。仮にこの確認の作業を行う場合であっても、複合キャップ体62の取付方向が予め設定した取付方向であるか否かの判別は容易となる。
【0040】
(4)弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向に制約することができるため、安全弁40からの冷媒ガスの径方向への噴出方向が許容される噴出許容範囲R内とすることができる。
【0041】
(5)吐出口側隆起部30は、吐出口28をリヤハウジング14に形成するための必要な構成であるが干渉部としての機能を兼用させることができる。吐出口側隆起部30を干渉部として機能させることにより、突起部63以外の専用の干渉部を別途設けることなく、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向に制約することができる。
【0042】
(6)突起部63は、安全弁40と他部材との干渉をし難くして安全弁40を保護する機能を備えている。このため、突起部63は吐出口側隆起部30に形成された突起部31とともに安全弁40を他部材との衝突等から保護することができる。また、突起部63はリヤハウジング14の強度を確保するリブとしての機能を果たすことができる。
【0043】
(7)複合キャップ体62の安全弁40に対する取付方向が移動方向D1、D2に対応する2方向であるため、複合キャップ体62の取付方向が1方向に特定される取付作業の場合と比較すると、取付方向を選択することができ複合キャップ体62の取付作業が容易となる。
【0044】
(8)ボルト孔37と突起部63との距離と、ボルト孔37と吐出口側隆起部30との距離は、弁本体41の頭部45に工具を装着できる程度の距離に設定されている。このため、弁本体41のリヤハウジング14に対する装着および取り外しは工具を用いて行うことができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る圧縮機について説明する。
第2の実施形態に係る圧縮機は、主に干渉部としての突起部の構成が第1の実施形態と異なる。
第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
【0046】
図8に示すように、本実施形態のリヤハウジング14の端面34には、干渉部としての略円柱状の突起部71が形成されている。
突起部71は、リヤハウジング14の端面34において吸入口側隆起部29と吐出口側隆起部30との中間付近に位置する。
突起部71の端面34側の基部から先端までの高さは、図示はされないが頭部45の中間付近までの高さとなっている。
突起部71と吸入口側隆起部29との距離と、突起部71と吐出口側隆起部30との距離と、吸入口側隆起部29と吐出口側隆起部30との距離とは互いにほぼ等しく設定されている。
本実施形態では、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けが可能な取付可能領域としては、取付可能領域Eのほか、弁本体41を挟んで取付可能領域Eの反対側となる取付可能領域Fが存在する。
取付可能領域Fは、
図8に示す弁本体41の状態では、少なくとも移動方向D4に対応する取付方向からの複合キャップ体62の弁本体41への取り付けを許容する。
一方、突起部71は、移動方向D3に対応する取付方向からの複合キャップ体62の弁本体41への取り付けを妨げるように干渉する。
つまり、移動方向D3の場合、冷媒ガスの噴出が所定の噴出方向とならない複合キャップ体62の弁本体41へ相対移動は、突起部71との干渉により阻害される。
【0047】
本実施形態では、移動方向D1、D2、D4に対応する予め設定した取付方向以外の移動方向D3、D5、D6に対応する取付方向からの複合キャップ体62の取り付けを不可能としている。
つまり、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向は、移動方向D1、D2、D4に対応する予め設定した取付方向に制約される。
ただし、移動方向D4に対応する取付方向から複合キャップ体62の弁本体41へ取り付けると、安全弁40からの冷媒ガスの噴出方向が噴出許容範囲Rに含まれない。
このため、本実施形態では、移動方向D1、D2、D4に対応する予め設定した取付方向のうち、移動方向D1、D2に対応する取付方向を除く移動方向D4に対応する取付方向から弁本体41へ複合キャップ体62を取り付けないようにする。
【0048】
なお、頭部45の周方向の位置が、
図8に示す場合では、複合キャップ体62が移動方向D5に対応する取付方向からの弁本体41へは取り付け不可能であるが、頭部45の周方向の位置によっては、取付可能領域Fにおいて2方向から複合キャップ体62の取り付けが可能となる。
取付可能領域Fにおいて2方向からの複合キャップ体62の取り付ける場合も安全弁40からの冷媒ガスの噴出方向が噴出許容範囲Rに含まれないため、取付可能領域Fにおいて2方向からの複合キャップ体62の取り付けを行わないようにする。
【0049】
本実施形態によれば、略円柱状の突起部71を設けたことにより、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を移動方向D1、D2、D4に対応する予め設定した取付方向に制約することができる。
作業者は、移動方向D4に対応する取付方向から弁本体41へ複合キャップ体62を取り付けないように注意しつつ、移動方向D1、D2に対応する取付方向から弁本体41へ複合キャップ体62をすれば、安全弁40からの冷媒ガスの噴出方向が噴出許容範囲Rから外れることはない。
このため、本実施形態は、複合キャップ体62の取付方向が制約されていない場合と比較すると、複合キャップ体62の取り付け作業が容易化する。
突起部71が略円柱状であることから、第1の実施形態と比較するとボルト孔37の周囲のスペースが広くなり、工具を用いた弁本体41の装着作業や取り外し作業が行い易くなる。
さらに、突起部71が第1の実施形態と比較すると小さいため、圧縮機の重量増加を抑制することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る圧縮機について説明する。
第3の実施形態に係る圧縮機は、干渉部としての突起部をリヤハウジングに設けたほか、カバー体に突起物に対して干渉し易くするように被干渉部としての当接片を設けた点で第1の実施形態と異なる。
第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
【0051】
図9(a)に示すように、本実施形態のリヤハウジング14の端面34には、干渉部としての略円柱状の突起部72が形成されている。
突起部72は、ボルト孔37を挟んで囲繞部33の反対側に位置するように形成されている。
突起部72は形成される位置が異なるほかは第2の実施形態の突起部71と同じ構成である。
本実施形態では、
図9(b)に示すように、外側キャップ体43に被干渉部としての突片部73を設けている。
本実施形態の突片部73は、外側キャップ体43の一方の係止アーム部61から折り曲げにより形成された矩形の板である。
従って、複合キャップ体62を取り付ける状態では、突片部73は端面34と対向して端面34に沿う。
【0052】
図9(a)に示すように、突片部73は、取付可能領域Eにおける移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向から複合キャップ体62を弁本体41に取り付けることが可能な寸法に設定されている。
また、突片部73は、移動方向D3に対応する取付方向からの取り付けでは突起部72との当接により取り付けを妨げる寸法に設定されている。
移動方向D4に対応する取付方向からの取り付けでは、複合キャップ体62が突起部72との当接により取り付け不可能であり、移動方向D5に対応する取付方向からの取り付けでは、突片部73と吐出口側隆起部30との当接により取り付け不可能である。
つまり、冷媒ガスの噴出が所定の噴出方向とならない複合キャップ体62の弁本体41へ相対移動は、突片部73と突起部72との干渉により阻害される。
【0053】
本実施形態では、突起部72と突片部73との組み合わせにより、移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向以外の移動方向D3〜D6に対応する取付方向から複合キャップ体62の取り付けを妨げて不可能とすることができる。
突起部72がスペースの制約を受け、例えば、第2の実施形態における突起部71の位置に形成できない場合でも、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向に制約することができる。
そして、複合キャップ体62が弁本体41に対して移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向から取り付けられているか否かを確認する作業を不要とすることが可能である。
また、この確認の作業を行う場合であっても、複合キャップ体62の取付方向が移動方向D1、D2に対応する予め設定した取付方向であるか否かの判別は突片部73の位置から容易に判別することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る圧縮機について説明する。
第4の実施形態に係る圧縮機は、カバー体に突起部に対して干渉し易くするように被干渉部としての複数の当接片を設けた点で第1の実施形態と異なる。
第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
【0055】
第1の実施形態では、複合キャップ体62を弁本体41の頭部45の側方から取り付けることを前提としていたが、複合キャップ体62を弁本体41の軸方向に沿うように移動させて弁本体41の頭部45の端面46側から取り付けることも可能である。
本実施形態では、複合キャップ体62を頭部45の端面46側から弁本体41の軸方向に沿って取り付けるため、弁本体41の軸心を中心とした回転方向への60度毎の複合キャップ体62の取付方向が存在する。
複合キャップ体62を頭部45の端面46側から弁本体41の軸方向に沿って移動させて弁本体41に取り付ける場合、突起部63だけでは複合キャップ体62の6方向の取付方向からの取り付けが可能である。
つまり、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を制約することができない。
そこで、本実施形態では、複合キャップ体62が突起部63に対して干渉し易くするように、外側キャップ体43に複数の被干渉部を設け、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を予め設定した取付方向に制約している。
【0056】
図10(a)、
図10(b)に示すように、本実施形態の複合キャップ体62における外側キャップ体43には、被干渉部としての一対の突片部81が設けられている。
一方の突片部81は、外側キャップ体43の壁部58において平坦面58Aから延在し、平坦面58Aに対して直角方向に折り曲げられることにより形成されている。
また、他方の突片部81は壁部58において平坦面58Aと隣り合う平坦面58Bから延在し、平坦面58Bに対して直角方向に折り曲げられることにより形成されている。
一対の突片部81の長さは、互いに同じ長さであり、一対の突片部81が互いに周方向において成す角度は60度である。
【0057】
図10(a)において実線により示すように、一対の突片部81を囲繞部33に位置させるとともに、頭部45の端面46と複合キャップ体62を対向させると、複合キャップ体62を頭部45の端面46側から弁本体41に取り付けることができる。
このときの複合キャップ体62の取付方向は、弁本体41に取り付け可能な取付方向であり、また、安全弁40からの冷媒ガスの噴出方向が噴出許容範囲R内に含まれる。
そして、複合キャップ体62を弁本体41に取り付けた状態では、突片部81は囲繞部33の端面34に沿う。
図10(a)において、実線により示す複合キャップ体62を時計回りに60度回転させた複合キャップ体62の取付方向を二点鎖線により示す。
二点鎖線により示す複合キャップ体62の取付方向では、一方の突片部81は、囲繞部33に位置し、他方の突片部81は突起部63における一方の端部65の近傍に位置する。
従って、二点鎖線により示す複合キャップ体62の取付方向は、弁本体41に取り付け可能な取付方向であり、また、冷媒ガスの噴き出し方向が噴出許容範囲R内に含まれる。
【0058】
図10(a)において、実線および二点鎖線により示す複合キャップ体62の取付方向以外の取付方向(図示せず)では、一対の突片部81の少なくとも一方が、突起部63および吐出口側隆起部30の少なくとも一方と干渉する。
一対の突片部81の少なくとも一方と、突起部63および吐出口側隆起部30の少なくとも一方との干渉により、複合キャップ体62は弁本体41に対して取り付けできない。
つまり、実線および二点鎖線により示す複合キャップ体62の取付方向以外の取付方向は、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けが不可能な取付方向である。
従って、冷媒ガスの噴出が所定の噴出方向とならない複合キャップ体62の弁本体41への相対移動は、一対の突片部81の少なくとも一方と、突起部63および吐出口側隆起部30の少なくとも一方との干渉により阻害される。
本実施形態では、複合キャップ体62の弁本体41への取り付けは、係止部としての係止爪部67、68、カバー周面部としての壁部55及びカバー端面部としての蓋部56とにより、弁本体41の頭部45に対し、六角柱の頭部45の前面からの相対移動によってなされることに特定される。
【0059】
本実施形態によれば、複合キャップ体62を頭部45の端面46側から取り付ける場合であっても、弁本体41に対する複合キャップ体62の取付方向を予め設定した取付方向に制約することができる。
なお、本実施形態の突片部81は、複合キャップ体62だけでなく、弁本体41の頭部45の端面46側から、弁本体41の軸心を中心として周方向に60度毎回転させた取付方向にて取り付け可能なキャップ体にも適用可能である(例えば、特開平7−4356号公報に記載のキャップ)。
【0060】
なお、上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0061】
○ 上記の実施形態では、安全弁がリヤハウジングに設けられる例を挙げたが、安全弁を設ける位置はリヤハウジングに限定されない。安全弁を設ける位置はハウジングにおいて吐出圧領域と連通可能な位置であれば自由に設定できる。
○ 上記の実施形態では、キャップ体とカバー体とを組み合わせて一体化した複合キャップ体をキャップとしたが、キャップは、単一のキャップ体により形成されてもよい。また、キャップは、弁本体の軸方向の移動のみにより取り付け可能な構造であってもよく、この場合、第4の実施形態と同様に、ハウジングに突起部を設けるとともに、キャップに突片部を設けるようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、干渉部は、複合キャップ体との干渉のための専用の突起部を設けるようにしたが、干渉部は専用の突起部に限定されない。干渉部は、吐出口側隆起部のように、特定の機能付加のための隆起部のみであってもよい。特定の機能付加のための隆起部としては、ハウジング内に収容又は形成されるハウジング内要素に対応して隆起して形成された隆起部である。例えば、第1の実施形態における吸入領域形成により形成される第1隆起部、容量制御弁の位置に対応して隆起する第2隆起部が相当する。また、干渉部はハウジングの強度を確保するリブであってもよく、例えば、接続ブロック部のリブが相当する。また、特定の機能付加のための隆起部の隆起をさらに大きくすることにより、干渉部としての機能を果たすようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、キャップとの干渉のための専用の突起部を一つ設けるようにしたが、複数の専用の突起部を設けるようにしてもよい。この場合、複数の専用の突起部のみにより、キャップの予め設定した取付方向以外の方向から取り付けされるときに、キャップとハウジングとを干渉させてもよい。あるいは、複数の専用の突起部と特定の機能付加により形成された隆起部や強度向上のためのリブとともに、キャップとハウジングとを干渉させるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、突起部のハウジングの端面から突起部の先端までの高さは、弁本体の軸方向における頭部の中間付近としたが、この限りではない。突起部の高さはハウジングの端面から頭部の端面までの高さより小さく設定されていればよい。また、上記の実施形態のように、弁本体の頭部に六角柱ではない円柱状の座部が形成されている場合は、突起部の高さはハウジングの端面から頭部の端面までの高さより小さく設定されるとともに、突起部の高さは座部の高さよりも大きく設定されていればよい。
○ 上記の実施形態では、安全弁から噴出される冷媒ガスの噴出許容範囲はキャップの2方向の取付方向と対応するように60度以上90度未満の扇状の範囲に設定されたが、この限りではない。噴出許容範囲はキャップの1方向の取付方向と対応するように設定されてもよい
○ 上記の実施形態では、接続ブロック部におよびリヤハウジングにわたって取付可能領域が設定されたがこの限りではない。取付可能領域は、安全弁の設置場所に応じて接続ブロック部にのみ設定されてもよいし、あるいはリヤハウジングにのみ設定されてもよい。
○ 上記の実施形態では、圧縮機として可変容量型斜板式圧縮機としたが、圧縮機の形式問わない。圧縮機は、例えば、スクロール式圧縮機やベーン式圧縮機であってもよい。