(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0028】
本発明に係るX線撮影装置は、カテーテル挿入操作用となっているCアームタイプである。以降、本発明に係るX線撮影装置の詳細について説明する。なお、FPDはフラットパネルディテクタの略であり、X線は、本発明の放射線に相当する。
【0029】
<X線撮影装置の構成>
実施例1に係るX線撮影装置1は、
図1に示すように被検体Mを載置する天板2と、天板2の下側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の上側に設けられた被検体Mを透過してきたX線を検出するFPD4と、X線管3の管電流、管電圧を制御するX線管制御部6と、X線管3,FPD4を支持するCアーム7と、Cアーム7を支持する支柱8と、Cアーム7を回転させるCアーム回転機構21と、これを制御するCアーム回転制御部22とを備えている。X線管3は被検体MにX線を照射する構成である。なお、
図1における符号Aは被検体Mの体軸方向を表し、符号Sは被検体Mの体側方向を表している。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。また、Cアーム7は、本発明のアームに相当する。Cアーム回転機構21は、本発明のアーム駆動手段に相当し、Cアーム回転制御部22は、本発明のアーム駆動制御手段に相当する。
【0030】
Cアーム7は、Cアーム回転機構21により回転することもできる。すなわち、Cアーム7は、
図2に示すように、Cアーム7は、半円形状となっているCアーム7のカーブが沿う仮想円VAが属する平面(
図2においては紙面に相当する面)上を仮想円VAに沿って回転することができる。すなわち、Cアーム7は、X線管3が鉛直下側、FPD4が鉛直上側にあるとき、Cアーム7が属する平面上にあるとともに、Cアーム7と支柱8との結合部を通過する軸と垂直な水平方向に伸びる軸(Cアーム7のカーブの中心点を通過する体軸方向Aに伸びた軸)を中心軸として回転することができる。Cアーム回転機構21は、Cアーム7を駆動させることによりX線管3およびFPD4を回転させる。このときの中心軸と仮想円VAとが交わる点を回転中心点cと呼ぶことにする。Cアーム回転制御部22は、Cアーム回転機構21を制御する構成である。なお、この仮想円VAは、Cアーム7を二分する位置にある平面上に位置しているものとする。
【0031】
天板駆動機構23は、
図3に示すように、天板2を体軸方向Aに移動させる機構である。この天板駆動機構23は、
図1に示す天板駆動制御部24の制御に従い天板2を駆動させる。天板駆動制御部24は、天板2の移動方向と移動量を示す天板移動信号を天板駆動機構23に入力することで、天板駆動機構23を制御している。術者が天板2を移動させたい場合、操作卓31を通じてその旨を伝えれば、天板駆動制御部24は、術者の入力通りの移動方向(正方向または逆方向)と移動距離で天板2を駆動させるように天板駆動機構23を制御する。天板駆動機構23は、本発明の天板駆動手段に相当し、天板駆動制御部24は、本発明の天板駆動制御手段に相当する。
【0032】
天板2が付属している寝台には天板2の移動量を検出するポテンショメータ25が備えられている。天板駆動機構23が天板2の移動を行うと、ポテンショメータ25が天板2の移動を検出する。天板2の移動が止むと、ポテンショメータ25はこの一連の天板2の移動に伴う天板2の移動距離と移動方向を示した移動量を出力する。すなわち、ポテンショメータ25は、天板2を体軸方向Aに正方向に移動させると、移動距離を表す移動量をデータとして出力する。この状態から天板2を体軸方向Aに逆方向に移動させると、移動距離を表すマイナスの移動量をデータとして出力する。ポテンショメータ25は、本発明のセンサに相当しエンコーダによっても実現できる。
【0033】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。X線管制御部6の制御によりX線がX線管3から発せられると、X線は、被検体Mを透過してFPD4の検出面に入射する。FPD4は入射したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11(
図1参照)に送出され、そこで被検体Mやファントムphが写り込んだX線画像P1が生成される。このX線画像P1は、FPD4の有するX線を検出する検出面と同一形状の矩形となっており、検出面上で検出したX線の強度をマッピングしたものとなっている。
【0034】
立体像生成部12は、Cアーム7を一回転させながら連写された一連のX線画像P1を再構成して、被検体Mの内部構造をボクセルデータとして表した立体像D1を生成する。この立体像D1は、血管に造影剤を流し込まれた被検体Mに対してX線管3およびFPD4を回転させながら連写された一連のX線画像を基に生成されたものであり、被検体Mの血管像が立体的に写り込んだ三次元ボリュームデータである。立体像生成部12は、本発明の立体像生成手段に相当する。
【0035】
立体像編集部13は、ポテンショメータ25の出力、ベクトルデータ、および補正係数kに従って立体像生成部12が生成した立体像D1に写り込む被検体像をデータ上で移動させるような編集を加えて編集立体像D2を生成する。この編集立体像D2と編集前の立体像D1を重ね合わせたとすると、各立体像に写り込む被検体Mの血管像の位置がズレることになり、各血管像は完全には重ならない。立体像編集部13は、本発明の編集手段に相当する。
【0036】
投影像生成部14は、立体像生成部12が生成した立体像D1または立体像編集部13が生成した編集立体像D2をある平面で投影して投影像Pr1または投影像Pr2を生成する。
図4は、投影像生成部14が投影像Pr1を生成する様子を表している。投影像生成部14は、立体像D1に対し投影方向を定め、立体像D1をこの投影方向に直交する平面に投影して二次元画像である投影像Pr1を生成する。被検体Mの投影像Pr1には、被検体Mにおける血管の分布が写り込んでいる。具体的には、投影像生成部14は、立体像D1をCアーム7の傾斜角度によって定まる動画V0の撮影方向から二次元平面に投影させた投影像Pr1を生成する。投影像生成部14は、本発明の投影像生成手段に相当する。投影像生成部14は、本発明の投影像生成手段に相当する。
【0037】
投影像生成部14が投影方向をどのように決定するのかについて説明する。投影像生成部14は、X線撮影を動画で行っている最中に投影像Pr1を生成する構成となっている。この動画撮影は、上述の立体像D1の生成に関する撮影とは別の撮影となっており、X線がある方向から発せられ、被検体Mを通過してFPD4に入射することでなされるものである。このときのX線が発せられる方向は、Cアーム7を回転させることで適宜変更が可能である。投影像生成部14は、Cアーム7の回転角度に基づきX線の照射方向を認識して、この照射方向を投影像生成時の投影方向として投影像Pr1を生成する。
【0038】
X線の照射方向は、Cアーム回転制御部22より出力されるCアーム7の回転角度によって一義的に決定される。したがって、投影像生成部14は、投影像Pr1を生成するときにCアーム回転制御部22より回転角度に関するデータを取得して、これに基づき投影方向を決定して編集立体像D2の投影を実行する。また、X線の照射方向は、Cアームに付属のポテンショメータによって認識されるようにしてもよい。この場合は、投影像生成部14は、ポテンショメータの出力に基づき投影方向を決定して動作することになる。このポテンショメータは、上述の天板2に係るポテンショメータ25とは異なるものであることには注意が必要である。
【0039】
動画生成部16は、動画生成用のX線撮影を行っている最中に次々と生成されるX線画像Psを経時的につなぎ合わせて動画V0を生成する。この動画V0は、被検体Mを連写して得られた一連のX線画像Psを撮影順につなぎ合わせて生成され、被検体Mをある方向から投影したときの二次元像が写り込んでいるものの、血管を鮮明には写し込んではいない。動画生成部16は、本発明の動画生成手段に相当する。
【0040】
画像合成部17には、動画生成部16から送られてきた動画V0と投影像生成部14から送られてきた投影像Pr1とを重ね合わせて重畳動画V1を生成する。この重畳動画V1は、動画V0に投影像Pr1が重畳表示されたものとなっており、動画V0上の血管像が強調されたような動画となっている。
【0041】
主制御部34(
図1参照)は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部34は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することによりX線管制御部6および各部11,12,13,14,16,17,18,19,22,24,26を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28(
図1参照)は、撮影に用いられるパラメータ等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。表示部32は、重畳動画V1などを表示する目的で設けられている。表示部32は、動画V0に投影像Pr2を重畳させて表示する構成であり、本発明の表示手段に相当する。表示部32は、本発明の表示手段に相当する。
【0042】
<動画撮影中における天板の移動>
術者は重畳動画V1の撮影中に動画撮影視野を微調整したい場合がある。この様な微調整は、例えば、重畳動画V1の端に写り込むカテーテルの先端を中央に寄せたい場合などに必要となる。術者は、撮影視野を変更しようとして操作卓31を通じて天板2の移動の指示を入力すると、天板2が術者の指示通りに移動される。すると、X線管3およびFPD4に対して被検体Mが移動することになるので、重畳動画V1に写り込む被検体Mのライブ像も移動するわけである。
【0043】
それでは、天板2が移動されると重畳動画V1上の投影像Pr1は、どのようになるのであろうか。従来構成によれば、投影像Pr1は、動画撮影が始まると更新されることがないので、重畳動画V1上を移動することがない。したがって、従来構成によれば、天板2を動画撮影中に移動させる操作が行われると、重畳動画V1における被検体Mのライブ像は、移動するのに、投影像Pr1は置き去りにされ、互いの像がずれてきてしまう。この様な像のズレは、被検体Mのライブ像における被検体Mの血管の位置を知る上で妨げとなる。
【0044】
そこで、本発明によれば、天板2を移動させると、投影像Pr1が更新されるように構成されている。この様な構成とすることにより、天板2を移動させても重畳動画V1上の投影像は、被検体Mのライブ像に追従するように移動するようになり、術者はライブ像における血管の位置を知ることができる。
【0045】
投影像Pr1を天板2の移動に合わせて更新する構成を実現するには、天板2の移動方向および移動距離を反映するように立体像の投影をやり直して投影像Pr1を生成する仕組みが必要となる。天板2の移動距離は、天板2を構成する寝台に備え付けのセンサであるポテンショメータ25が知っている。そして、天板2の移動方向は、天板2を有する寝台を検査室に取り付ける際に決まる定まったの方向である。したがって、ポテンショメータ25が検出した天板2の移動距離と規定の天板2の移動方向に従って投影像Pr1を再生成するようにすれば、天板2の移動にも対応した重畳動画V1を表示できるようになるはずである。
【0046】
このような天板2の移動によって生じる投影像Pr1と動画V0との位置合わせは、投影像Pr1を生成する前の立体像D1の段階で行われる。この位置合わせを具体的に行う構成は、立体像編集部13であり、この立体像編集部13は、ポテンショメータ25が出力する移動量(正確には後述する補正済みの移動量)に従って被検体Mの立体像または投影像をデータ上で移動させる編集を加えることにより、天板2に伴って移動する動画上の像にデータ上の像を追従させる。この立体像編集部13は、天板2に備え付けられているポテンショメータ25から天板2の移動距離に関するデータが送出されるようになっている。立体像編集部13は、立体像D1に係る撮影が終了した時点から天板2の移動に関するデータの送出の有無を監視している。ポテンショメータ25から移動距離に関するデータが送出されると、立体像編集部13は、基本的にはこの移動距離通りに立体像D1をデータ上で所定の方向に移動させて編集立体像D2を生成する。この編集立体像D2は、投影像生成部14に送出され、投影像Pr2に変換される。こうして、天板2の移動に伴った重畳動画V1上の被検体Mの移動に追従して投影像Pr2も移動することになるはずである。
【0047】
この天板2は、実は理想通りには移動しない。すなわち、実際の天板2の移動と、ポテンショメータ25が検出した天板2の移動とには僅かながら差異が見られるのである。このような差異は、2つの要因によって起こるのでこれについて説明する。
【0048】
<移動距離に係る要因>
ポテンショメータ25は、センサであり、検出に誤差が発生する。ポテンショメータ25が10cmの天板2の移動を検出しても、実際は、9.95cmの移動だったりするのである。立体像編集部13が行う立体像D1の移動処理は、ポテンショメータ25の出力を基に行われる。したがって、先程の例では、立体像編集部13は、立体像D1を0.05cm分だけ余計に移動させてしまう。正確に血管の位置を示した重畳動画V1を表示するには、この検出誤差も考慮に入れなければならない。
【0049】
<移動方向に係る要因>
立体像D1は、体軸方向Aをx軸、体側方向Bをy軸、鉛直方向をz軸としたデータ空間上にある像である。例えば、天板2を移動させることにより、被検体Mが体軸方向Aにある幅だけ移動したとする。立体像D1をこの被検体Mの移動に追従させようとする場合は、データ空間上で立体像D1を体軸方向Aに対応するx軸方向に移動させればいいだけのはずである。
【0050】
しかし、天板2を備えた寝台を検査室に設置するときの誤差や、天板駆動機構23が天板2を理想通りの方向に移動しないなどの事情から、実際の天板2の移動方向は理想の方向から僅かにずれている。このような事情があるのにもかかわらず、立体像D1に係るx軸は、理想通りの天板2の移動方向を示しているわけである。つまり、被検体Mが体軸方向Aに移動したとすると、立体像D1をこの被検体Mの移動に追従させるには、立体像D1をデータ空間上でx軸よりとは僅かに異なる方向に移動させなければならない。正確に血管の位置を示した重畳動画V1を表示するには天板2の移動方向を正確に知る必要がある。
【0051】
このような、移動距離に係る要因、および移動方向に係る要因により理想通りに天板2が移動しないことに伴って生じる像のズレは、ファントムを撮影することによって消去される。このファントムの撮影により、移動方向に係る要因による像のズレ、および移動距離に係る要因による像のズレのいずれもが抑制されるのである。すなわち、立体像編集部13は、ファントムphの立体像の撮影結果を用いて動作するのである。
【0052】
図5は、像のズレを防ぐのに用いられるファントムを示している。ファントムphは、一辺が5cm程度の立方体の形状をしており、図示しない複数の鉄球を有している。天板2に伴って生じる像のズレを防ぐには、
図6のようにこのファントムphの立体像を撮影する。天板2に載置されたファントムphに対してCアーム7を回転させながらX線画像の連写を行い、連写されたX線画像を立体像に組み立てることにより、ファントム立体像Dphが撮影される。ファントム立体像Dphの中心をファントム立体像中心Dphcと呼ぶことにする。
【0053】
この様なファントム立体像Dphの撮影は、2回行われる。この2回の撮影はファントムphを天板2における立体像撮影における視野範囲の中に置いて行われる。ただし1回目の撮影は
図7に示すように、ファントムphを視野範囲の1端側に配置して行われ、2回目の撮影は、ファントムphを視野範囲の他端側に配置して行われる。このときのファントムphの移動は、天板駆動機構23を通じた天板2の移動により行われる。したがって、2回の撮影で得られたファントム立体像Dph1,Dph2の位置関係を分析すれば、天板2がどの程度どの方向に移動したかが分かる。この様な説明からも分かるように、ファントムphの大きさは、全域を視野範囲に位置した状態で視野範囲内を移動できる程度となっている。また、1回の撮影の間にポテンショメータ25は、10cmの天板2の移動を検出していたものとする。
【0054】
図8は、得られたファントム立体像Dph1,Dph2を1つのデータ空間上に重ね合わせて描いている。ファントム立体像Dph1,Dph2は、9.95cmに相当するボクセルだけずれている。天板2を10cm移動させたはずなのにこの様になるのは、実際の天板2が天板駆動制御部24の想定する理想どおりの距離だけ移動しなかったからである。ファントム立体像Dph1,Dph2の移動距離は、距離補正係数算出部18が互いの立体像中心Dphc1,Dphc2のデータ上の位置を比較することにより行われる。
【0055】
また、ファントム立体像Dph1,Dph2は、データ上の体軸方向Aを示すx軸に沿ってシフトしていない。実際の天板2が理想通りの方向で移動しなかったからである。天板2は体軸方向Aに沿って移動するはずなのにこの様になるのは、実際の天板2が理想どおりの方向に移動しなかったからである。ファントム立体像Dph1,Dph2の移動方向は、ベクトル算出部19が互いの立体像中心Dphc1,Dphc2のデータ上の位置を比較することにより行われる。ファントム立体像Dph1,Dph2の移動方向をFとする。この方向Fを示すベクトルデータは、ベクトルデータ算出部19が算出する天板2の移動方向を示すデータである。
【0056】
さらに距離補正係数算出部18は、天板2の移動距離に係る係数を取得する。距離補正係数算出部18には、ポテンショメータ25より天板2の移動量に関するデータが送られてきている。上述の例では、ポテンショメータ25は、天板2の移動距離が10cmである旨を距離補正係数算出部18に通知するわけである。距離補正係数算出部18は、これとは別にファントム立体像Dph1,Dph2の画像解析から実際の天板2が9.95cm移動したことを知っている。そこで、距離補正係数算出部18は、ポテンショメータ25が出力した移動距離と画像解析で得られた移動距離とに基づいて、ポテンショメータ25が出力した移動距離を実際の移動距離に変換する係数を算出する。この係数は、ポテンショメータ25が出力した移動距離に乗じると、実際の移動距離が算出できるというものであり、上述の例では、9.95/10つまり、0.995となる。この係数を補正係数kと呼ぶことにする。この補正係数kは、天板2の位置を変えてファントムphを複数回撮影することにより得られた撮影結果により取得されたものである。
【0057】
距離補正係数算出部18が算出した係数は、距離補正部26に出力される。距離補正部26は、今後ポテンショメータ25から天板2の移動量に関するデータの出力があると、そのデータを補正して立体像編集部13に送出する。すなわち、被検体Mの動画撮影中にポテンショメータ25が「aだけ天板2が移動した」という距離データを出力したとすると、距離補正部26は、「akだけ天板2が移動した」という補正済み距離データを立体像編集部13に送出する。このakという値は、ファントムphの撮影結果によって得られるポテンショメータ25が検出した移動距離を実際の天板2の移動距離に変換する係数に基づいて移動量の誤差を距離補正部26が補正したものである。距離補正部26は、本発明の補正手段に相当する。
【0058】
また、立体像編集部13には、ベクトルデータ算出部19より実際の天板2の移動方向を示すベクトルデータが送られてきている。そこで立体像編集部13は、被検体Mが写り込んだ立体像をベクトルデータ算出部19が出力した通り「F方向」にakだけデータ上で移動させて編集立体像D2を生成することになる。このように、立体像編集部13は、ファントムphの撮影結果によって得られる実際の天板2の移動方向を示すベクトルデータに基づいて像を移動する。
【0059】
<X線撮影装置の動作>
続いて、
図9を参照しながら実施例1におけるX線撮影装置1の動作について説明する。本発明に係るX線撮影装置1を用いたライブ像撮影は次のようにして行われる。なお、以降に説明する動作は、被検体Mの血管内部にカテーテルを挿入するような外科手術が想定されたものとなっており、ファントム撮影に係る前準備の段階と、被検体撮影に係る本撮影の段階に分かれる。前準備は、実空間とデータ空間の位置合わせを行うのに必要である。したがって、前準備を一度行ってしまえば天板2の移動様式に変化がない限り前準備で得られた結果を流用して本撮影を何度も行うことができる。前準備は、必ずしも被検体撮影の度に行う必要はない。
【0060】
前準備に当たる補正係数・ベクトル算出ステップS1では、上述の補正係数およびベクトルデータが算出される。すなわち、天板2に載置されたファントムphの立体像の撮影がされた後、天板2を移動させ、もう一度ファントムphの立体像の撮影がなされる。これに伴い、距離補正係数算出部18は、補正係数kを、ベクトルデータ算出部19は、F方向を示すベクトルデータを算出する。
【0061】
そして、いよいよ被検体Mに対する本撮影が開始される。本撮影を行うには、まず天板2に被検体Mが載置される(被検体載置ステップS2)。載置された被検体Mは、まず血管造影剤が注射される。そして、Cアーム7を回転しながら(
図2参照),X線画像P1の連写がなされる(被検体回転撮影ステップS3)。得られたX線画像P1は、血管の3次元分布を示す立体像D1に組み立てられる。そして、投影像生成部14は、Cアーム回転制御部22が有しているCアーム7の回転角度を示すデータに基づき、動画撮影に係るX線の照射方向を認識して、この方向で立体像D1を投影して投影像Pr1を生成する。
図10は、この投影像Pr1が生成される様子を示している。
【0062】
投影像Pr1の生成を終えると、被検体Mにカテーテルを差し込んで外科手術が開始されることになる。なお、外科手術中のCアーム7の回転角度は、投影像生成部14が動作の際に参考にした回転角度と同じである。術者が操作卓31を通じてライブ像撮影の開始を指示すると、線量が抑えられたX線ビームが1秒間に15回〜30回照射され、動画V0の撮影が開始される(動画撮影開始ステップS4)。
図11は、このときの様子を示している。
【0063】
投影像Pr1は、画像合成部17に送出され、動画V0に重畳されて表示部32に表示される。こうして動画V0に投影像Pr1が重畳した重畳動画V1の表示が開始される(重畳動画表示開始ステップS5)。
図12はこのとき表示される重畳動画V1を示している。動画撮影は、被検体回転撮影ステップS3における立体像撮影範囲の位置を視野として行われる。この立体像撮影範囲は、
図11においては斜線で示されている。従って、重畳動画V1における動画V0と投影像Pr1とはずれることなく重なり合っている。
【0064】
ここで、術者がカテーテル手術をやりやすいように操作卓31を通じ天板2の移動をX線撮影装置1に指示したとする。天板2は、術者の指示に従いCアーム7に対し体軸方向Aに移動する(天板移動ステップS6)。とはいっても、機械的精度の問題から実際の天板2の移動の軌跡はベクトルデータの示す方向に向いており、体軸方向Aとは僅かにずれてはいる。
図13は、天板2が移動していく様子を示している。
図13の上側は、天板2が移動される前の状態を示し、下側は、天板2が移動された後の状態を示している。斜線で示す立体像撮影範囲と被検体Mとの相対位置は、天板2の移動に伴って変化してしまう。
図14左側は、天板2の移動終了後から得られる動画V0を表している。
図11右側に示す天板2の移動前の動画V0と比較すれば分かるように、天板2の移動に伴い、動画撮影の視野範囲がスクロールするように移動している。この様な動画V0に先程の投影像Pr1を重ね合わせると、
図14右側のように像同士にズレが生じる。
【0065】
距離補正部26がポテンショメータ25を通じて天板2の移動を認識すると、距離補正部26は、距離補正係数算出部18が算出した補正係数kに基づいてポテンショメータ25の出力に補正処理を行い実際の天板2の移動量を示すデータを立体像編集部13に送出する。立体像編集部13は、
図15に示すように立体像D1をベクトルデータが示す実際の天板2の移動方向に補正後の移動量だけデータ空間上で移動することで編集立体像D2を生成する(立体像編集ステップS7)。編集立体像D2は、投影像生成部14に送出され、投影像Pr2に変換される。この投影像Pr2は、画像合成部17によって動画V0に重畳され、重畳動画V1に変換される。
図16は、こうして生成された重畳動画V1を示している。投影像Pr2は、被検体Mの移動を追いかけて移動した編集立体像D2を投影したものであるので、動画V0と投影像Pr2はずれることなく重ね合わせられる。この動画V0が表示部32に表示されて動作は終了となる。
【0066】
以上のように、天板2が移動してもライブ像を正確に血管像に重ね合わせることができる放射線撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明によれば、ポテンショメータ25の出力に基づき天板2がどのように移動したかを把握して、被検体Mの立体像または投影像をデータ上で移動させる編集を加える立体像編集部13を備えている。これにより、天板2の移動に伴って自ずと移動する動画に追従して投影像を移動させることができるようになる。ただし、このポテンショメータ25のみに頼って天板2の移動を把握するようにすると、動画と投影像の重ね合わせの際にズレが生じる。そこで、本発明は、天板2の位置を変えてファントムを複数回撮影することにより天板2の移動を実測するようにしている。このような実測されたデータを加味すれば、ポテンショメータ25に誤差や天板2の移動方向に狂いがあってもズレなく動画と投影像の重ね合わせることができるようになる。
【0067】
本発明は上述の構成に限られず下記のように変形実施するとが可能である。
【0068】
(1)上述の実施例1では、立体像D1に対して編集を行う構成としていたが、本発明はこの構成に限られない。投影像生成部14が生成した二次元像である投影像Pr1をデータ空間上で移動させる編集を行う構成としてもよい。この場合、3次元的なベクトルとなっている方向Fを示すベクトルデータは、投影像生成部14によって投影されて平面上の2次元ベクトルデータに変換される。このときの投影の方向は、立体像D1を投影して投影像Pr1を生成するとき投影方向と同じである。
【0069】
また、補正係数kも2次元ベクトルデータに対応するように変換される。すなわち、3次元的なベクトルを平面上に投影して2次元的なベクトルとするときに、基のベクトル長が投影されてどのぐらいの長さになるかを算出し、投影後のベクトル長を基のベクトル長で除したときの比率を求める。そして、この比率を補正係数kに乗じることで、新たな補正係数kを求めるのである。
【0070】
この様なベクトルデータと補正係数kの最適化は、投影像生成部14より投影方向に関するデータを受信した距離補正係数算出部18,ベクトルデータ算出部19が行う。投影像Pr1をデータ空間上で移動させる編集は、距離補正係数算出部18,ベクトルデータ算出部19より補正係数kおよびベクトルデータを受信した図示されていない投影像編集手段(投影像編集部)が行うことになる。この投影像編集手段は、天板2の移動に伴う動画V0上の像のスクロール移動に追従するように投影像Pr1をデータ空間上で移動させて編集投影像Pr3を生成し、この編集投影像Pr3が動画V0に重畳されて重畳動画V1が生成されることになる。
【0071】
(2)上述の実施例1では、ポテンショメータ25の出力に対して補正を行うような構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。距離補正部26は、天板駆動制御部24から天板2の理想的な移動距離を示すデータを取得してこれに対して補正を行うようにしてもよい。この場合の補正係数kは、天板駆動制御部24が出力した移動距離を実際の移動距離に変換する係数となる。
【0072】
(3)上述の実施例1では、ファントムの撮影を2回するようにしていたが、撮影回数を3回以上としてもよい。すなわち、上述の構成では、天板2を被検体Mの体軸方向Aに移動させてファントムphを2回撮影していたが、天板2を被検体Mの体側方向Sに移動させてファントムphをもう2回撮影するようにしてもよい。また、天板2を上下に移動させてファントムphを2回撮影するようにしてもよい。この構成によれば、天板2における体軸方向A以外の移動ズレを補正することができる。
この様な構成においては、各移動方向に対して補正が独立に実施可能となっているので,天板が移動方向に対してチルトしている場合などのように,天板の各移動方向が体軸方向A、体側方向Sおよび上下方向のように互いに直交していなくても適用が可能である。