特許第6179408号(P6179408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179408
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】継目無管の偏肉測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20170807BHJP
   B21B 17/02 20060101ALI20170807BHJP
   B21B 17/14 20060101ALI20170807BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01B17/02 B
   B21B17/02 Z
   B21B17/14 Z
   B21C51/00 K
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-11505(P2014-11505)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-138001(P2015-138001A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114410
【弁理士】
【氏名又は名称】大中 実
(72)【発明者】
【氏名】江口 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳央
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/080623(WO,A1)
【文献】 特開昭61−219810(JP,A)
【文献】 特開2001−194136(JP,A)
【文献】 米国特許第04027527(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00−17/08
B21B 17/00−25/06
B21B 37/00−37/78
B21B 38/00−38/12
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する第1ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、1本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方)を成す第1方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の前記継目無管の肉厚を測定し、2本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方)を成す第3方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第4方向の肉厚測定値に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管に対する前記2つの超音波肉厚計の肉厚測定方向を決定し、該決定された方向の肉厚を測定できるように配置された前記2つの超音波肉厚計で3本目以降の測定対象である継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する第2ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する第3ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する第4ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する第5ステップと、
を含むことを特徴とする継目無管の偏肉測定方法。
【請求項2】
対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する第1ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に第1超音波肉厚計、第2超音波肉厚計及び第3超音波肉厚計を配置し、前記第1超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定し、前記第2超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第3超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向及び前記第2超音波肉厚計の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第3超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する第2ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する第3ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する第4ステップと、
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する第5ステップと、
を含むことを特徴とする継目無管の偏肉測定方法。
【請求項3】
前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することを特徴とする請求項1に記載の継目無管の偏肉測定方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計のうち何れか一つの超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計による肉厚測定値をそれぞれ補正し、
前記第3〜第5ステップにおいて、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することを特徴とする請求項2に記載の継目無管の偏肉測定方法。
【請求項5】
前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることを特徴とする請求項1又は3に記載の継目無管の偏肉測定方法。
【請求項6】
前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させ、
前記第3〜第5ステップにおいて、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることを特徴とする請求項2又は4に記載の継目無管の偏肉測定方法。
【請求項7】
前記第2〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計は、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計であることを特徴とする請求項1、3、5の何れかに記載の継目無管の偏肉測定方法。
【請求項8】
前記第2ステップにおいて配置する前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計、並びに、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計は、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計であることを特徴とする請求項2、4、6の何れかに記載の継目無管の偏肉測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目無管の偏肉測定方法に関する。特に、本発明は、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを圧延ラインで測定可能な偏肉測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンネスマン−マンドレルミル方式による継目無管の製造においては、まず素材の丸ビレットを回転炉床式加熱炉で加熱した後、穿孔機でプラグと圧延ロールによりビレットを穿孔圧延して中空素管を製造する。次に、前記中空素管の内面にマンドレルバーを串状に挿入し、複数の圧延スタンドを備えるマンドレルミルで外面を圧延ロールで拘束して延伸圧延することにより、所定の肉厚まで減肉する。その後、マンドレルバーを抽出した後、前記減肉された素管を複数の圧延スタンドを備えるストレッチレデューサ等の定径圧延機で所定外径に成形圧延して製品を得る。
【0003】
なお、マンドレルミルとしては、各圧延スタンドに対向する2つの圧延ロールが配設され、隣接する圧延スタンド間で圧延ロールの圧下方向を90°ずらして交互に配置した2ロール式圧延機が広く用いられている。また、ストレッチレデューサとしては、各圧延スタンドに圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設され、隣接する圧延スタンド間で圧延ロールの圧下方向を60°ずらして交互に配置した3ロール式圧延機が広く用いられている。
【0004】
上記のようにして製造される継目無管の寸法精度に対する要求は、近年、ますます厳格化しており、これに伴い、管周方向の肉厚変動(偏肉)を効率的且つ効果的に抑制することが望まれている。
【0005】
このため、従来より、継目無管の圧延ラインに設置されたマンドレルミルやストレッチレデューサミルなどの圧延機出側にγ線肉厚計を配置して、圧延ラインで管の偏肉を測定し、この測定結果に基づいて圧延機の圧延条件を設定・修正する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、マンドレルミルやストレッチレデューサミルで生じる継目無管の偏肉としては、2次偏肉(管の周方向について約90°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)、3次偏肉(管の周方向について約60°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)、4次偏肉(管の周方向について約45°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)、及び、6次偏肉(管の周方向について約30°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)が知られている。
圧延機の圧延条件を設定・修正する上では、偏肉の量(厚肉部と薄肉部との肉厚差)のみならず、偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールの圧下方向との関係)を測定することも重要である。
【0006】
γ線肉厚計を用いた偏肉測定は、中径サイズ(例えば、外径180mm〜420mm)の継目無管に対しては有用である。すなわち、中径サイズの継目無管は、外径が大きく測定領域が広くなるため、ビーム径が数十mmと大きなγ線肉厚計を用いたとしても、圧延機の圧延条件を設定・修正するのに必要な精度で偏肉を測定可能である。
【0007】
しかしながら、γ線肉厚計を用いて小径サイズ(例えば、外径30mm〜180mm)の継目無管の偏肉を測定することには問題がある。小径サイズの継目無管は、外径が小さく測定領域が狭いため、ビーム径が大きなγ線肉厚計を用いたのでは、管周方向の肉厚測定分解能が低く、小さな偏肉を検出できない。ビーム径の範囲内での平均肉厚を測定することになるからである。小径サイズの継目無管についても、圧延機出側にγ線肉厚計を配置して肉厚を測定しているケースがあるものの、偏肉の測定ではなく、専ら管断面の平均肉厚を測定する目的である。また、小径サイズの継目無管では、肉厚計の設置スペースに制約が生じるため、継目無管の周方向に多数の肉厚計を配置することが困難である。
【0008】
このため、小径サイズの継目無管については、圧延ライン外の材料温度が十分に冷却された精整ラインにおいて、水浸超音波法により偏肉を測定するのが一般的である。従い、偏肉の測定結果を圧延ラインに設置された圧延機の圧延条件の設定・修正に反映するのに時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−71616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能な偏肉測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、レーザ超音波肉厚計や電磁超音波肉厚計など、接触媒質(水など)を必要としない非接触型の超音波肉厚計を用いれば、ビーム径が数mmと小さいため、管周方向の肉厚測定分解能が高く、小径サイズの継目無管であっても、材料温度が高温な圧延ラインで小さな偏肉を検出できる可能性があることを見出した。また、測定すべき偏肉の次数(2次、3次、4次及び6次の何れか)が予めわかっていれば、当該次数の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測できるため、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置するだけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能であることを見出した。
【0012】
本発明は、上記の本発明者らの知見に基づき完成したものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第1の方法は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする。
(1)第1ステップ
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する。なお、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布は、圧延ライン外において、例えば、水浸超音波法を用いて測定したり、あるいは、接触式の3次元形状測定機を用いて管の外周形状及び内周形状を測定し、評価すればよい。
(2)第2ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、1本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方)を成す第1方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の前記継目無管の肉厚を測定し、2本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方)を成す第3方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第4方向の肉厚測定値に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管に対する前記2つの超音波肉厚計の肉厚測定方向を決定し、該決定された方向の肉厚を測定できるように配置された前記2つの超音波肉厚計で3本目以降の測定対象である継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する。
(3)第3ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する。
(4)第4ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する。
(5)第5ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する。
【0013】
本発明の第1の方法によれば、第1ステップにおいて、圧延ライン外(例えば、精整ライン)で、測定対象と同種(同寸法、同材質)の継目無管を用いて、圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉が予め決定される。具体的には、前記同種の継目無管の周方向肉厚分布を水浸超音波法や接触式の3次元形状測定機を用いて測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて(例えば、周方向肉厚分布にフーリエ解析を施すことで)2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価する(例えば、抽出した各偏肉の大小を比較し、最も大きいものを特定する)。そして、この評価結果に基づき、各偏肉のうち圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を決定する(例えば、2次偏肉が最も大きければ、2次偏肉を圧延ラインで測定すべき偏肉として決定する)。
【0014】
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉(管の周方向について約90°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、2次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第2ステップにおいて、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。ただし、図3に示すように、2次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが45°を成す状態(図3(a)、(b)に示す状態。以下、この状態を第1状態という)だけでなく、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが一致する(0°を成す)状態(図3(c)、(d)に示す状態。以下、この状態を第2状態という)も生じ得る。従い、本発明の第1の方法では、図3(a)、(b)に示すように、まず1本目の測定対象である継目無管Pについて、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方。図3(a)、(b)ではθ1=45°)を成す第1方向の継目無管Pの肉厚T1を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の継目無管の肉厚T2を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか一方の状態(図3(a)、(b)では第1状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T1、T2を測定する。次に、2本目の測定対象である継目無管Pについて、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方。図3(c)、(d)ではθ2=0°)を成す第3方向の継目無管Pの肉厚T3を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管Pの肉厚T4を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか他方の状態(図3(c)、(d)では第2状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T3、T4を測定する。そして、第1〜第4方向の肉厚測定値T1〜T4に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管Pに対する2つの超音波肉厚計1、2の肉厚測定方向を決定する。換言すれば、第1〜第4方向の肉厚測定値に基づき、1、2本目の継目無管に生じている2次偏肉の向きが第1及び第2状態のうち何れの状態であるかを判断し、3本目以降の継目無管に生じる2次偏肉の向きも同じ状態であるという前提の下、3本目以降の継目無管の肉厚測定方向として、図3(a)、(b)に示す肉厚測定方向を採用するべきか、或いは、図3(c)、(d)に示す肉厚測定方向を採用するべきかを決定する。そして、決定された方向の肉厚を測定できるように配置された2つの超音波肉厚計で3本目以降の測定対象である継目無管Pの肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、継目無管の2次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図3(a)、(b)の何れの向きであるか、或いは、図3(c)、(d)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0015】
また、前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉(管の周方向について約60°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、3次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第3ステップにおいて、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。図4に示すように、3次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(図4(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(図4(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T5を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して60°を成す方向の継目無管Pの肉厚T6を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T5、T6に基づき、継目無管Pの3次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図4(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0016】
また、前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉(管の周方向について約45°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、4次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第4ステップにおいて、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。図5に示すように、4次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、厚肉部がこの薄肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(図5(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、薄肉部がこの厚肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(図5(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T7を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記一方の超音波肉厚計1の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T8を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T7、T8に基づき、継目無管Pの4次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図5(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0017】
さらに、前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉(管の周方向について約30°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、6次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第5ステップにおいて、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。図6に示すように、6次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(図6(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(図6(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T9を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して30°を成す方向の継目無管Pの肉厚T10を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T9、T10に基づき、継目無管Pの6次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図6(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0018】
以上のように、本発明の第1の方法によれば、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管であっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置するだけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本発明の第1の方法によれば、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0019】
上述した本発明の第1の方法によれば、偏肉が2次、3次、4次及び6次の何れであっても、2つの超音波肉厚計を配置するだけで、所望する偏肉とその向きを圧延ラインで測定可能であるという利点を有する。しかしながら、第1ステップによって決定された偏肉が2次である場合には、3本目以降の測定対象である継目無管の2次偏肉とその向きを精度良く測定可能なのであって、1本目と2本目については精度良く測定できるといえない。2次偏肉についても1本目から精度良く測定するには、2次偏肉を測定する場合のみ、3つの超音波肉厚計を配置すればよい。
【0020】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第2の方法は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする。
(1)第1ステップ
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する。
なお、前述した本発明の第1の方法と同様に、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布は、圧延ライン外において、例えば、水浸超音波法を用いて測定したり、あるいは、接触式の3次元形状測定機を用いて管の外周形状及び内周形状を測定し、評価すればよい。
(2)第2ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に第1超音波肉厚計、第2超音波肉厚計及び第3超音波肉厚計を配置し、前記第1超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定し、前記第2超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第3超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向及び前記第2超音波肉厚計の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第3超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する
(3)第3ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する。
(4)第4ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する。
(5)第5ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する。
【0021】
本発明の第2の方法における第1ステップ、第3〜第5ステップは、前述した本発明の第1の方法における各ステップと同一であるため、その説明は省略する。本発明の第2の方法は、第2ステップだけが前述した本発明の第1の方法と異なる。
本発明の第2の方法における第2ステップでは、第1圧延機の出側に3つの超音波肉厚計(第1超音波肉厚計、第2超音波肉厚計及び第3超音波肉厚計)を配置する。そして、図8に示すように、第1超音波肉厚計3で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T11を測定し、第2超音波肉厚計4で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の継目無管Pの肉厚T12を測定し、第3超音波肉厚計5で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向及び第2超音波肉厚計4の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T13を測定する。このため、第1超音波肉厚計3及び第2超音波肉厚計4で、前述した第1状態(図8(a)、(b)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能であり、第3超音波肉厚計5で前述した第2状態(図8(c)、(d)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能である。従い、第1超音波肉厚計3〜第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T11〜T13に基づき、継目無管Pの2次偏肉とその向きを算出することが可能である。例えば、
第1超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第2超音波肉厚計による肉厚測定値となるか、或いは、第2超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第1超音波肉厚計による肉厚測定値となれば、継目無管に生じている偏肉は、図8(a)、(b)に示す第1状態であり、第1超音波肉厚計による肉厚測定値と第2超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図8(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。また、例えば、第1超音波肉厚計による肉厚測定値≒第2超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値となるか、或いは、第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第1超音波肉厚計による肉厚測定値≒第2超音波肉厚計による肉厚測定値となれば、継目無管に生じている偏肉は、図8(c)、(d)に示す第2状態であり、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値の2倍を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図8(c)、(d)の何れの向きであるかを算出可能である。なお、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値の2倍を偏肉量として算出するのは、図8(c)、(d)に示す第2状態では、第3超音波肉厚計で厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定できるものの、第1超音波肉厚計又は第2超音波肉厚計では厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定できず、その中間の部分の肉厚を測定することになるためである。すなわち、偏肉量は、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差で評価すべきところ、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値は、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差の半分の値に相当すると考えられる。このため、前記差の絶対値を2倍することで、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差に合致する偏肉量を算出可能である。
【0022】
以上のように、本発明の第2の方法によっても、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管であっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置する(ただし、2次偏肉を測定する場合のみ3つの超音波肉厚計を配置する)だけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本発明の第2の方法によっても、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0023】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0024】
穿孔機でプラグと圧延ロールによりビレットを穿孔圧延して中空素管を製造する際、プラグの芯ずれ、ビレットの振れ回りや偏熱等に起因して、1次偏肉(管の周方向について約180°ピッチで厚肉部と薄肉部とが発生する偏肉)が発生する場合がある。この1次偏肉は、厚肉部又は薄肉部が継目無管の長手方向に沿ってスパイラル状に位置する傾向があり、2次、3次、4次、6次の各偏肉に重畳されることになる。このため、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、1次偏肉の影響を低減することが望ましい。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出することが可能である。具体的には、例えば、一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布の周波数と各周波数における強度(変動量)とをフーリエ解析などの信号解析により分析し、周波数から当該継目無管の長手方向各位置での1次偏肉の向き(スパイラル状に位置する厚肉部又は薄肉部の周方向位置)を算出し、強度(変動量)から当該継目無管の長手方向各位置での1次偏肉(偏肉量)を算出することが可能である。そして、上記の好ましい方法によれば、算出した1次偏肉に基づき、2つの超音波肉厚計による肉厚測定値が補正される。具体的には、2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を継目無管の長手方向各位置と紐付けて記憶し、同じく継目無管の長手方向各位置と紐付けて算出された1次偏肉の位相を反転させたもの(算出された1次偏肉の位相を180°ずらしたもの)を、継目無管の長手方向位置を揃えて上記の2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に重畳することで、1次偏肉の影響を低減する補正を行うことが可能である。
以上のように、上記の好ましい方法によれば、1次偏肉の影響が低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めることが可能である。
【0025】
前述した本発明の第2の方法においても、1次偏肉の影響を低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計のうち何れか一つの超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計による肉厚測定値をそれぞれ補正し、前記第3〜第5ステップにおいて、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0026】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【0027】
継目無管の厚肉部又は薄肉部の位置は、例えば3次偏肉の場合、理論的には、いずれか一方が第2圧延機の圧延ロールの圧下方向に位置し、いずれか他方がこの圧下方向に対して60°を成す方向に位置するものとなる。しかしながら、実際には圧延中の振動などの影響で理論通りにならず、厚肉部又は薄肉部の位置が継目無管の周方向にずれる可能性がある。2次、4次、6次の偏肉についても同様である。厚肉部又は薄肉部の位置がずれているにも関わらず、肉厚測定方向を一定の方向に固定すると、偏肉とその向きを精度良く算出できない可能性がある。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させる(継目無管の周方向に回動させる)ため、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても、ずれに対するロバスト性が確保され、偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避可能である。
【0028】
前述した本発明の第2の方法においても、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避するには、前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させ、前記第3〜第5ステップにおいて、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【0029】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計としては、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計を例示できる。
【0030】
同様に、前述した本発明の第2の方法における前記第2ステップにおいて配置する前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計、並びに、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計としては、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計を例示できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の概略フローを示すフロー図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第1ステップにおいて、偏肉を評価した結果の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第2ステップにおいて、2次偏肉を測定するための超音波肉厚計の配置方法を説明する説明図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第3ステップにおいて、3次偏肉を測定するための超音波肉厚計の配置方法を説明する説明図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第4ステップにおいて、4次偏肉を測定するための超音波肉厚計の配置方法を説明する説明図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第5ステップにおいて、6次偏肉を測定するための超音波肉厚計の配置方法を説明する説明図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第5ステップにおいて、6次偏肉を測定した結果の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第2ステップにおいて、2次偏肉を測定するための超音波肉厚計の配置方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の概略フローを示すフロー図である。
本実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機(マンドレルミル)と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機(ストレッチレデューサミル)とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、図1に示すように、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする。
【0034】
(1)第1ステップ
圧延ライン外(精整ライン)において、測定対象と同種(同寸法、同材質)の継目無管の周方向肉厚分布を測定する。測定には、水浸超音波法や、接触式の3次元形状測定機が用いられる。次に、測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価する(例えば、抽出した各偏肉の大小を比較し、最も大きいものを特定する)。そして、この評価結果に基づき、各偏肉のうち圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を決定する。例えば、2次偏肉が最も大きければ、2次偏肉を圧延ラインで測定すべき偏肉として決定する。
なお、各偏肉は、例えば、周方向肉厚分布にフーリエ解析を施すことで抽出される。具体的には、以下の式(1)によってk次偏肉の偏肉量が抽出される。
【数1】
ここで、式(1)において、kは偏肉の次数を、G(k)はk次偏肉の偏肉量を、R(k)はk次偏肉の実部成分を、I(k)はk次偏肉の虚部成分を意味する。R(k)、I(k)は、それぞれ式(2)、式(3)で表される。式(2)、式(3)において、Nは継目無管の1周当たりの肉厚測定点数を、WT(i)はi番目の肉厚測定値を意味する。
【0035】
図2は、本発明の第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第1ステップにおいて、偏肉を評価した結果の一例を示す図である。
図2(a)は、外径50〜140mmの炭素鋼からなる継目無管の3次偏肉を抽出した結果の一例を、図2(b)は、図2(a)に示す結果において、外径140mmで3次偏肉が大きくなった継目無管の周方向肉厚分布の一例を示す。図2(c)は、外径50〜140mmの炭素鋼からなる継目無管の2次偏肉を抽出した結果の一例を示す。
なお、図2(a)に示すグラフの縦軸である3次偏肉悪化指標は、各プロット点での3次偏肉率を全プロット点の中で最も小さな3次偏肉率で除した値である。また、図2(c)に示すグラフの縦軸である2次偏肉悪化指標は、各プロット点での2次偏肉率を全プロット点の中で最も小さな2次偏肉率で除した値である。3次偏肉率及び2次偏肉率は、以下の式(4)で表されるk次偏肉率GP(k)によって表される。
【数2】
図2(a)に示す結果により、例えば、外径120〜140mm程度の炭素鋼からなる継目無管については、圧延ラインで測定すべき偏肉は3次偏肉であると決定される。また、図2(c)に示す結果により、例えば、外径50〜70mm程度の炭素鋼からなる継目無管については、圧延ラインで測定すべき偏肉は2次偏肉であると決定される。
【0036】
(2)第2ステップ
第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、2次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールR1、R2が配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、図3に示すように、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計1、2を配置する。ただし、図3に示すように、2次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが45°を成す状態(図3(a)、(b)に示す第1状態)だけでなく、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが一致する(0°を成す)状態(図3(c)、(d)に示す第2状態)も生じ得る。従い、まず、1本目の測定対象である継目無管Pについて、図3(a)、(b)に示すように、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計1で第1圧延機が備える何れかの圧延スタンド(例えば、継目無管の搬送方向最下流側に位置する最終圧延スタンド)に配設された一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方。本実施形態では、θ1=45°)を成す第1方向の継目無管Pの肉厚T1を測定すると共に、2つの超音波肉厚計1、2のうち他方の超音波肉厚計2で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の継目無管の肉厚T2を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか一方の状態(図3(a)、(b)では第1状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T1、T2を測定する。
【0037】
次に、2本目の測定対象である継目無管Pについて、図3(c)、(d)に示すように、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方。本実施形態では、θ2=0°)を成す第3方向の継目無管Pの肉厚T3を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管Pの肉厚T4を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか他方の状態(図3(c)、(d)では第2状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T3、T4を測定する。なお、2つの超音波肉厚計1、2の肉厚測定方向は、圧延スタンドのセンタ(一対の圧延ロールR1、R2の孔型中心)を基準にして各超音波肉厚計1、2を継目無管Pの周方向に回動させるための公知の機構(図示せず)によって調整すればよい。
【0038】
そして、第1〜第4方向の肉厚測定値T1〜T4に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管Pに対する2つの超音波肉厚計1、2の肉厚測定方向を決定する。換言すれば、第1〜第4方向の肉厚測定値T1〜T4に基づき、1、2本目の継目無管Pに生じている2次偏肉の向きが第1及び第2状態のうち何れの状態であるかを判断し、3本目以降の継目無管Pに生じる2次偏肉の向きも同じ状態であるという前提の下、3本目以降の継目無管Pの肉厚測定方向として、図3(a)、(b)に示す肉厚測定方向を採用するべきか、或いは、図3(c)、(d)に示す肉厚測定方向を採用するべきかを決定する。具体的には、継目無管Pの2次偏肉と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係が図3(a)、(b)に示す第1状態である場合、T1<T3≒T4<T2(図3(a)の場合)、或いは、T2<T3≒T4<T1(図3(b)の場合)となる。一方、継目無管Pの2次偏肉と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係が図3(c)、(d)に示す第2状態である場合、T4<T1≒T2<T3(図3(c)の場合)、或いは、T3<T1≒T2<T4(図3(d)の場合)となる。従い、第1方向の肉厚測定値T1と第2方向の肉厚測定値T2との差(T1−T2)の絶対値と、第3方向の肉厚測定値T3と第4方向の肉厚測定値T4との差(T3−T4)の絶対値とを比較し、前者の方が大きければ、図3(a)、(b)に示す第1状態であり、後者の方が大きければ、図3(c)、(d)に示す第2状態であると判断できる。そして、第1状態であると判断されれば、3本目以降の継目無管Pの肉厚測定方向として、図3(a)、(b)に示す肉厚測定方向を採用し、第2状態であると判断されれば、3本目以降の継目無管Pの肉厚測定方向として、図3(c)、(d)に示す肉厚測定方向を採用すればよい。
【0039】
そして、決定された方向の肉厚を測定できるように配置された2つの超音波肉厚計1、2で3本目以降の測定対象である継目無管Pの肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値に基づき、継目無管Pの2次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが図3(a)、(b)の何れの向きであるか、或いは、図3(c)、(d)の何れの向きであるかを算出可能である。具体的には、例えば、3本目以降の継目無管Pの肉厚測定方向として、図3(a)、(b)に示す肉厚測定方向が決定された場合には、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値T1と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値T2との差(T1−T2)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T1<T2の場合には偏肉の向きが図3(a)に示す向きで、T2<T1の場合には偏肉の向きが図3(b)に示す向きであると算出することが可能である。また、3本目以降の継目無管Pの肉厚測定方向として、図3(c)、(d)に示す肉厚測定方向が決定された場合には、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値T3と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値T4との差(T3−T4)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T3>T4の場合には偏肉の向きが図3(c)に示す向きで、T3<T4の場合には偏肉の向きが図3(d)に示す向きであると算出することが可能である。
【0040】
(3)第3ステップ
第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、3次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールR3、R4、R5が配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、図4に示すように、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計1、2を配置する。図4に示すように、3次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(図4(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(図4(b)に示す状態)かの何れかである。従い、図4に示すように、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計1で第2圧延機が備える何れかの圧延スタンド(例えば、継目無管の搬送方向最下流側に位置する最終圧延スタンド)に配設された一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T5を測定すると共に、2つの超音波肉厚計1、2のうち他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して60°を成す方向の継目無管Pの肉厚T6を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T5、T6に基づき、継目無管Pの3次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値T5と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値T6との差(T5−T6)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T5<T6の場合には偏肉の向きが図4(a)に示す向きで、T5>T6の場合には偏肉の向きが図4(b)に示す向きであると算出することが可能である。
【0041】
(4)第4ステップ
第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、4次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールR1、R2が配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、図5に示すように、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計1、2を配置する。図5に示すように、4次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、厚肉部がこの薄肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(図5(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、薄肉部がこの厚肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(図5(b)に示す状態)かの何れかである。従い、図5に示すように、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計1で第1圧延機が備える何れかの圧延スタンド(例えば、継目無管の搬送方向最下流側に位置する最終圧延スタンド)に配設された一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T7を測定すると共に、2つの超音波肉厚計1、2のうち他方の超音波肉厚計2で前記一方の超音波肉厚計1の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T8を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T7、T8に基づき、継目無管Pの4次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値T7と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値T8との差(T7−T8)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T7<T8の場合には偏肉の向きが図5(a)に示す向きで、T7>T8の場合には偏肉の向きが図5(b)に示す向きであると算出することが可能である。
【0042】
(5)第5ステップ
第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、6次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールR3、R4、R5が配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、図6に示すように、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計1、2を配置する。図6に示すように、6次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(図6(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(図6(b)に示す状態)かの何れかである。従い、図6に示すように、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計1で第2圧延機が備える何れかの圧延スタンド(例えば、継目無管の搬送方向最下流側に位置する最終圧延スタンド)に配設された一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T9を測定すると共に、2つの超音波肉厚計1、2のうち他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して30°を成す方向の継目無管Pの肉厚T10を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T9、T10に基づき、継目無管Pの6次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計1による肉厚測定値T9と他方の超音波肉厚計2による肉厚測定値T10との差(T9−T10)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T9<T10の場合には偏肉の向きが図6(a)に示す向きで、T9>T10の場合には偏肉の向きが図6(b)に示す向きであると算出することが可能である。
【0043】
なお、図6に示すように、2つの超音波肉厚計1、2を6次偏肉測定用に配置する場合、各超音波肉厚計1、2の肉厚測定方向の角度差が30°しかなく近接するため、2つの超音波肉厚計1、2が互いに機械的に干渉する可能性がある。この干渉を避けるには、図6(c)に示すように、2つの超音波肉厚計1、2の測定位置を継目無管Pの長手方向にずらせば良い。6次偏肉を測定する場合に限らず他の次数の偏肉を測定する場合についても、超音波肉厚計の機械的な干渉を避ける必要性に応じて、各超音波肉厚計の測定位置を継目無管Pの長手方向にずらせば良い。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る偏肉測定方法によれば、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計(レーザ超音波肉厚計や電磁超音波肉厚計など)を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管Pであっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計1、2を配置するだけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本実施形態に係る偏肉測定方法によれば、小径サイズの継目無管Pであっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0045】
なお、本実施形態に係る偏肉測定方法における第2〜第5ステップにおいて、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管Pの長手方向肉厚分布に基づき、継目無管Pの1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0046】
穿孔機でプラグと圧延ロールによりビレットを穿孔圧延して中空素管を製造する際、プラグの芯ずれ、ビレットの振れ回りや偏熱等に起因して、1次偏肉(管の周方向について約180°ピッチで厚肉部と薄肉部とが発生する偏肉)が発生する場合がある。この1次偏肉は、厚肉部又は薄肉部が継目無管Pの長手方向に沿ってスパイラル状に位置する傾向があり、2次、3次、4次、6次の各偏肉に重畳されることになる。このため、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、1次偏肉の影響を低減することが望ましい。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計(例えば、超音波肉厚計1)で測定した継目無管Pの長手方向肉厚分布に基づき、継目無管Pの1次偏肉を算出することが可能である。具体的には、例えば、一方の超音波肉厚計1で測定した継目無管Pの長手方向肉厚分布の周波数と各周波数における強度(変動量)とをフーリエ解析などの信号解析により分析し、周波数から当該継目無管Pの長手方向各位置での1次偏肉の向き(スパイラル状に位置する厚肉部又は薄肉部の周方向位置)を算出し、強度(変動量)から当該継目無管Pの長手方向各位置での1次偏肉(偏肉量)を算出することが可能である。そして、上記の好ましい方法によれば、算出した1次偏肉に基づき、2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値が補正される。具体的には、2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値を継目無管Pの長手方向各位置と紐付けて記憶し、同じく継目無管Pの長手方向各位置と紐付けて算出された1次偏肉の位相を反転させたもの(算出された1次偏肉の位相を180°ずらしたもの)を、継目無管Pの長手方向位置を揃えて上記の2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値に重畳することで、1次偏肉の影響を低減する補正を行うことが可能である。
以上のように、上記の好ましい方法によれば、1次偏肉の影響が低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めることが可能である。
【0047】
また、本実施形態に係る偏肉測定方法における第2〜第5ステップにおいて、2つの超音波肉厚計1、2を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管Pの肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【0048】
継目無管Pの厚肉部又は薄肉部の位置は、例えば3次偏肉の場合、理論的には、いずれか一方が第2圧延機の圧延ロールの圧下方向に位置し、いずれか他方がこの圧下方向に対して60°を成す方向に位置するものとなる。このため、本実施形態に係る偏肉測定方法の第3ステップでは、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T5を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して60°を成す方向の継目無管Pの肉厚T6を測定している。しかしながら、実際には圧延中の振動などの影響で理論通りにならず、厚肉部又は薄肉部の位置が継目無管Pの周方向にずれる可能性がある。2次、4次、6次の偏肉についても同様である。厚肉部又は薄肉部の位置がずれているにも関わらず、肉厚測定方向を一定の方向に固定すると、偏肉とその向きを精度良く算出できない可能性がある。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計1、2を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管Pの肉厚測定中に同期回動させる(継目無管Pの周方向に回動させる)ため、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても、ずれに対するロバスト性が確保され、偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避可能である。
なお、2つの超音波肉厚計1、2を同期回動させるには、前述した各超音波肉厚計1、2を継目無管Pの周方向に回動させるための公知の機構(図示せず)を用いればよい。
【0049】
図7は、本実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法の第5ステップにおいて、6次偏肉(図6(b)に示す状態の6次偏肉)を測定した結果の一例を示す図である。
図7には、継目無管Pの搬送を停止した状態で(継目無管Pの一の断面において)、超音波肉厚計1で圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T9を測定した結果と、超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して30°を成す方向の継目無管Pの肉厚T10を測定した結果の他、超音波肉厚計1、2を継目無管Pの周方向に回動させて継目無管Pの全周の肉厚を測定した結果も示している。なお、図7に示す結果は、2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値を1次偏肉に基づき補正していない。
図7に示すように、T9>T10となっており、偏肉の向きが図6(b)に示す向きであると算出できることがわかる。
【0050】
<第2実施形態>
前述した本発明の第1実施形態に係る偏肉測定方法によれば、偏肉が2次、3次、4次及び6次の何れであって、2つの超音波肉厚計1、2を配置するだけで、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能であるという利点を有する。しかしながら、第1ステップによって決定された偏肉が2次である場合には、3本目以降の測定対象である継目無管Pの2次偏肉とその向きを精度良く測定可能なのであって、1本目と2本目については精度良く測定できるといえない。2次偏肉についても1本目から精度良く測定するには、2次偏肉を測定する場合のみ、3つの超音波肉厚計を配置すればよい。
本発明の第2実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法は、前述した第1実施形態に係る継目無管の偏肉測定方法と同様に、第1〜第5ステップを含み、第2ステップだけが第1実施形態と異なる。本実施形態に係る偏肉測定方法における第1ステップ、第3〜第5ステップは、前述した第1実施形態に係る偏肉測定方法における各ステップと同一であるため、その説明は省略し、第2ステップについてのみ説明する。
【0051】
本実施形態に係る偏肉測定方法における第2ステップでは、図8に示すように、第1圧延機の出側に3つの超音波肉厚計(第1超音波肉厚計3、第2超音波肉厚計4及び第3超音波肉厚計5)を配置する。そして、図8に示すように、第1超音波肉厚計3で第1圧延機が備える何れかの圧延スタンド(例えば、継目無管の搬送方向最下流側に位置する最終圧延スタンド)に配設された一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T11を測定し、第2超音波肉厚計4で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の継目無管Pの肉厚T12を測定し、第3超音波肉厚計5で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向及び第2超音波肉厚計4の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T13を測定する。このため、第1超音波肉厚計3及び第2超音波肉厚計4で、前述した第1状態(図8(a)、(b)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能であり、第3超音波肉厚計5で前述した第2状態(図8(c)、(d)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能である。従い、第1超音波肉厚計3〜第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T11〜T13に基づき、継目無管Pの2次偏肉とその向きを算出することが可能である。
【0052】
例えば、第1超音波肉厚計3による肉厚測定値T11<第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T13<第2超音波肉厚計4による肉厚測定値T12となるか、或いは、第2超音波肉厚計4による肉厚測定値T12<第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T13<第1超音波肉厚計3による肉厚測定値T11となれば、継目無管Pに生じている偏肉は、図8(a)、(b)に示す第1状態であり、第1の超音波肉厚計3による肉厚測定値T11と第2の超音波肉厚計4による肉厚測定値T12との差(T11−T12)の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、T11<T12の場合には偏肉の向きが図8(a)に示す向きで、T11>T12の場合には偏肉の向きが図8(b)に示す向きであると算出することが可能である。
また、例えば、第1超音波肉厚計3による肉厚測定値T11≒第2超音波肉厚計4による肉厚測定値T12<第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T13となるか、或いは、第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T13<第1超音波肉厚計3による肉厚測定値T11≒第2超音波肉厚計4による肉厚測定値T12となれば、継目無管Pに生じている偏肉は、図8(c)、(d)に示す第2状態であり、第1超音波肉厚計3による肉厚測定値T11(又は第2超音波肉厚計4による肉厚測定値T12)と第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T13との差(T11−T13、又は、T12−T13)の絶対値の2倍を偏肉(偏肉量)として算出し、T11≒T12>T13の場合には偏肉の向きが図8(c)に示す向きで、T11≒T12<T13の場合には偏肉の向きが図8(d)に示す向きであると算出することが可能である。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る偏肉測定方法によっても、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計(レーザ超音波肉厚計や電磁超音波肉厚計など)を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管Pであっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計1、2を配置する(ただし、2次偏肉を測定する場合のみ3つの超音波肉厚計3〜5を配置する)だけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本実施形態に係る偏肉測定方法によっても、小径サイズの継目無管Pであっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0054】
なお、本実施形態に係る偏肉測定方法においても、1次偏肉の影響を低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、第2ステップにおいて、第1超音波肉厚計3、第2超音波肉厚計4及び第3超音波肉厚計5のうち何れか一つの超音波肉厚計で測定した継目無管Pの長手方向肉厚分布に基づき、継目無管Pの1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、第1超音波肉厚計3、第2超音波肉厚計4及び第3超音波肉厚計5による肉厚測定値をそれぞれ補正し、第3〜第5ステップにおいて、2つの超音波肉厚計1、2のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管Pの長手方向肉厚分布に基づき、継目無管Pの1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0055】
また、本実施形態に係る偏肉測定方法においても、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避するには、第2ステップにおいて、第1超音波肉厚計3、第2超音波肉厚計4及び第3超音波肉厚計5を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管Pの肉厚測定中に同期回動させ、第3〜第5ステップにおいて、2つの超音波肉厚計1、2を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管Pの肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1、2、3、4、5・・・超音波肉厚計
P・・・継目無管
R1、R2、R3、R4、R5・・・圧延ロール
図1
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図8