【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、レーザ超音波肉厚計や電磁超音波肉厚計など、接触媒質(水など)を必要としない非接触型の超音波肉厚計を用いれば、ビーム径が数mmと小さいため、管周方向の肉厚測定分解能が高く、小径サイズの継目無管であっても、材料温度が高温な圧延ラインで小さな偏肉を検出できる可能性があることを見出した。また、測定すべき偏肉の次数(2次、3次、4次及び6次の何れか)が予めわかっていれば、当該次数の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測できるため、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置するだけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能であることを見出した。
【0012】
本発明は、上記の本発明者らの知見に基づき完成したものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第1の方法は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする。
(1)第1ステップ
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する。なお、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布は、圧延ライン外において、例えば、水浸超音波法を用いて測定したり、あるいは、接触式の3次元形状測定機を用いて管の外周形状及び内周形状を測定し、評価すればよい。
(2)第2ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、1本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方)を成す第1方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の前記継目無管の肉厚を測定し、2本目の測定対象である継目無管について、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記一の圧延ロールの圧下方向に対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方)を成す第3方向の前記継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第4方向の肉厚測定値に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管に対する前記2つの超音波肉厚計の肉厚測定方向を決定し、該決定された方向の肉厚を測定できるように配置された前記2つの超音波肉厚計で3本目以降の測定対象である継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する。
(3)第3ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する。
(4)第4ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する。
(5)第5ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する。
【0013】
本発明の第1の方法によれば、第1ステップにおいて、圧延ライン外(例えば、精整ライン)で、測定対象と同種(同寸法、同材質)の継目無管を用いて、圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉が予め決定される。具体的には、前記同種の継目無管の周方向肉厚分布を水浸超音波法や接触式の3次元形状測定機を用いて測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて(例えば、周方向肉厚分布にフーリエ解析を施すことで)2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価する(例えば、抽出した各偏肉の大小を比較し、最も大きいものを特定する)。そして、この評価結果に基づき、各偏肉のうち圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を決定する(例えば、2次偏肉が最も大きければ、2次偏肉を圧延ラインで測定すべき偏肉として決定する)。
【0014】
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉(管の周方向について約90°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、2次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第2ステップにおいて、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。ただし、
図3に示すように、2次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが45°を成す状態(
図3(a)、(b)に示す状態。以下、この状態を第1状態という)だけでなく、厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとが一致する(0°を成す)状態(
図3(c)、(d)に示す状態。以下、この状態を第2状態という)も生じ得る。従い、本発明の第1の方法では、
図3(a)、(b)に示すように、まず1本目の測定対象である継目無管Pについて、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ1(θ1は、45°及び0°のうち何れか一方。
図3(a)、(b)ではθ1=45°)を成す第1方向の継目無管Pの肉厚T1を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記第1方向に対して90°を成す第2方向の継目無管の肉厚T2を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか一方の状態(
図3(a)、(b)では第1状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T1、T2を測定する。次に、2本目の測定対象である継目無管Pについて、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して角度θ2(θ2は、45°及び0°のうち何れか他方。
図3(c)、(d)ではθ2=0°)を成す第3方向の継目無管Pの肉厚T3を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記第3方向に対して90°を成す第4方向の前記継目無管Pの肉厚T4を測定する。すなわち、第1及び第2状態のうち、何れか他方の状態(
図3(c)、(d)では第2状態)の厚肉部及び薄肉部の肉厚を測定し易いように超音波肉厚計1、2を配置して、肉厚T3、T4を測定する。そして、第1〜第4方向の肉厚測定値T1〜T4に基づき、3本目以降の測定対象である継目無管Pに対する2つの超音波肉厚計1、2の肉厚測定方向を決定する。換言すれば、第1〜第4方向の肉厚測定値に基づき、1、2本目の継目無管に生じている2次偏肉の向きが第1及び第2状態のうち何れの状態であるかを判断し、3本目以降の継目無管に生じる2次偏肉の向きも同じ状態であるという前提の下、3本目以降の継目無管の肉厚測定方向として、
図3(a)、(b)に示す肉厚測定方向を採用するべきか、或いは、
図3(c)、(d)に示す肉厚測定方向を採用するべきかを決定する。そして、決定された方向の肉厚を測定できるように配置された2つの超音波肉厚計で3本目以降の測定対象である継目無管Pの肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、継目無管の2次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図3(a)、(b)の何れの向きであるか、或いは、
図3(c)、(d)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0015】
また、前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉(管の周方向について約60°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、3次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第3ステップにおいて、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。
図4に示すように、3次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(
図4(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して60°を成す方向に位置する状態(
図4(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T5を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して60°を成す方向の継目無管Pの肉厚T6を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T5、T6に基づき、継目無管Pの3次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図4(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0016】
また、前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉(管の周方向について約45°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、4次偏肉の発生原因となる圧延機は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第4ステップにおいて、第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。
図5に示すように、4次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR1の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、厚肉部がこの薄肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(
図5(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向に位置し、薄肉部がこの厚肉部の位置する方向に対して45°を成す方向に位置する状態(
図5(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T7を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記一方の超音波肉厚計1の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T8を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T7、T8に基づき、継目無管Pの4次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図5(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0017】
さらに、前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉(管の周方向について約30°ピッチで厚肉部と薄肉部とが交互に発生する偏肉)である場合、6次偏肉の発生原因となる圧延機は、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機であると考えられる。このため、本発明の第1の方法では、第5ステップにおいて、第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置する。
図6に示すように、6次偏肉の向き(厚肉部又は薄肉部と圧延ロールR3の圧下方向PDとの関係)は、薄肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、厚肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(
図6(a)に示す状態)か、或いは、厚肉部が圧延ロールR3の圧下方向PDに位置し、薄肉部がこの圧下方向PDに対して30°を成す方向に位置する状態(
図6(b)に示す状態)かの何れかである。従い、本発明の第1の方法では、一方の超音波肉厚計1で一の圧延ロールR3の圧下方向PDの継目無管Pの肉厚T9を測定すると共に、他方の超音波肉厚計2で前記圧下方向PDに対して30°を成す方向の継目無管Pの肉厚T10を測定し、該2つの超音波肉厚計1、2による肉厚測定値T9、T10に基づき、継目無管Pの6次偏肉とその向きを算出する。例えば、一方の超音波肉厚計による肉厚測定値と他方の超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図6(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。
【0018】
以上のように、本発明の第1の方法によれば、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管であっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置するだけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本発明の第1の方法によれば、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0019】
上述した本発明の第1の方法によれば、偏肉が2次、3次、4次及び6次の何れであっても、2つの超音波肉厚計を配置するだけで、所望する偏肉とその向きを圧延ラインで測定可能であるという利点を有する。しかしながら、第1ステップによって決定された偏肉が2次である場合には、3本目以降の測定対象である継目無管の2次偏肉とその向きを精度良く測定可能なのであって、1本目と2本目については精度良く測定できるといえない。2次偏肉についても1本目から精度良く測定するには、2次偏肉を測定する場合のみ、3つの超音波肉厚計を配置すればよい。
【0020】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第2の方法は、対向する2つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第1圧延機と、各圧延ロールの圧下方向の成す角が120°となるように3つの圧延ロールが配設された圧延スタンドを複数備える第2圧延機とが設置された圧延ラインで製造される継目無管の偏肉を測定する方法であって、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする。
(1)第1ステップ
前記圧延ライン外において、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布を測定し、該測定した周方向肉厚分布に基づいて2次、3次、4次及び6次の各偏肉を抽出し評価することで、前記各偏肉のうち前記圧延ラインで測定すべき継目無管の偏肉を予め決定する。
なお、前述した本発明の第1の方法と同様に、測定対象と同種の継目無管の周方向肉厚分布は、圧延ライン外において、例えば、水浸超音波法を用いて測定したり、あるいは、接触式の3次元形状測定機を用いて管の外周形状及び内周形状を測定し、評価すればよい。
(2)第2ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が2次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に第1超音波肉厚計、第2超音波肉厚計及び第3超音波肉厚計を配置し、前記第1超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定し、前記第2超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第3超音波肉厚計で前記第1超音波肉厚計の肉厚測定方向及び前記第2超音波肉厚計の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、前記第1〜第3超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の2次偏肉とその向きを算出する
(3)第3ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が3次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して60°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の3次偏肉とその向きを算出する。
(4)第4ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が4次偏肉である場合、前記第1圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第1圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向に対して45°を成す方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記一方の超音波肉厚計の肉厚測定方向に対して45°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の4次偏肉とその向きを算出する。
(5)第5ステップ
前記第1ステップで決定した偏肉が6次偏肉である場合、前記第2圧延機の出側に2つの超音波肉厚計を配置し、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で前記第2圧延機が備える何れかの圧延スタンドに配設された一の圧延ロールの圧下方向の継目無管の肉厚を測定すると共に、前記2つの超音波肉厚計のうち他方の超音波肉厚計で前記圧下方向に対して30°を成す方向の前記継目無管の肉厚を測定し、該2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に基づき、前記継目無管の6次偏肉とその向きを算出する。
【0021】
本発明の第2の方法における第1ステップ、第3〜第5ステップは、前述した本発明の第1の方法における各ステップと同一であるため、その説明は省略する。本発明の第2の方法は、第2ステップだけが前述した本発明の第1の方法と異なる。
本発明の第2の方法における第2ステップでは、第1圧延機の出側に3つの超音波肉厚計(第1超音波肉厚計、第2超音波肉厚計及び第3超音波肉厚計)を配置する。そして、
図8に示すように、第1超音波肉厚計3で一の圧延ロールR1の圧下方向PDに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T11を測定し、第2超音波肉厚計4で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向に対して90°を成す方向の継目無管Pの肉厚T12を測定し、第3超音波肉厚計5で第1超音波肉厚計3の肉厚測定方向及び第2超音波肉厚計4の肉厚測定方向のそれぞれに対して45°を成す方向の継目無管Pの肉厚T13を測定する。このため、第1超音波肉厚計3及び第2超音波肉厚計4で、前述した第1状態(
図8(a)、(b)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能であり、第3超音波肉厚計5で前述した第2状態(
図8(c)、(d)に示す状態)の厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定可能である。従い、第1超音波肉厚計3〜第3超音波肉厚計5による肉厚測定値T11〜T13に基づき、継目無管Pの2次偏肉とその向きを算出することが可能である。例えば、
第1超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第2超音波肉厚計による肉厚測定値となるか、或いは、第2超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第1超音波肉厚計による肉厚測定値となれば、継目無管に生じている偏肉は、
図8(a)、(b)に示す第1状態であり、第1超音波肉厚計による肉厚測定値と第2超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図8(a)、(b)の何れの向きであるかを算出可能である。また、例えば、第1超音波肉厚計による肉厚測定値≒第2超音波肉厚計による肉厚測定値<第3超音波肉厚計による肉厚測定値となるか、或いは、第3超音波肉厚計による肉厚測定値<第1超音波肉厚計による肉厚測定値≒第2超音波肉厚計による肉厚測定値となれば、継目無管に生じている偏肉は、
図8(c)、(d)に示す第2状態であり、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値の2倍を偏肉(偏肉量)として算出し、何れの肉厚測定値が大きいかで、偏肉の向きが
図8(c)、(d)の何れの向きであるかを算出可能である。なお、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値の2倍を偏肉量として算出するのは、
図8(c)、(d)に示す第2状態では、第3超音波肉厚計で厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定できるものの、第1超音波肉厚計又は第2超音波肉厚計では厚肉部又は薄肉部の肉厚を測定できず、その中間の部分の肉厚を測定することになるためである。すなわち、偏肉量は、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差で評価すべきところ、第1超音波肉厚計による肉厚測定値(又は第2の超音波肉厚計による肉厚測定値)と第3超音波肉厚計による肉厚測定値との差の絶対値は、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差の半分の値に相当すると考えられる。このため、前記差の絶対値を2倍することで、厚肉部の肉厚と薄肉部の肉厚との差に合致する偏肉量を算出可能である。
【0022】
以上のように、本発明の第2の方法によっても、γ線肉厚計ではなく、ビーム径が小さく管周方向の肉厚測定分解能の高い超音波肉厚計を用いて偏肉を測定するため、小径サイズの継目無管であっても、小さな偏肉を検出可能である。また、第1ステップによって、圧延ラインで測定すべき偏肉(偏肉の次数)が予め決定されるため、当該偏肉の厚肉部及び薄肉部の位置を圧延ロールの圧下方向との関係より予測でき、各部の肉厚を測定可能なように2つの超音波肉厚計を配置する(ただし、2次偏肉を測定する場合のみ3つの超音波肉厚計を配置する)だけで、設置スペースの制約を受けることなく、偏肉及びその向きを算出可能である。すなわち、本発明の第2の方法によっても、小径サイズの継目無管であっても、所望する偏肉とその向きを材料温度が高温な圧延ラインで測定可能である。
【0023】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0024】
穿孔機でプラグと圧延ロールによりビレットを穿孔圧延して中空素管を製造する際、プラグの芯ずれ、ビレットの振れ回りや偏熱等に起因して、1次偏肉(管の周方向について約180°ピッチで厚肉部と薄肉部とが発生する偏肉)が発生する場合がある。この1次偏肉は、厚肉部又は薄肉部が継目無管の長手方向に沿ってスパイラル状に位置する傾向があり、2次、3次、4次、6次の各偏肉に重畳されることになる。このため、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、1次偏肉の影響を低減することが望ましい。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出することが可能である。具体的には、例えば、一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布の周波数と各周波数における強度(変動量)とをフーリエ解析などの信号解析により分析し、周波数から当該継目無管の長手方向各位置での1次偏肉の向き(スパイラル状に位置する厚肉部又は薄肉部の周方向位置)を算出し、強度(変動量)から当該継目無管の長手方向各位置での1次偏肉(偏肉量)を算出することが可能である。そして、上記の好ましい方法によれば、算出した1次偏肉に基づき、2つの超音波肉厚計による肉厚測定値が補正される。具体的には、2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を継目無管の長手方向各位置と紐付けて記憶し、同じく継目無管の長手方向各位置と紐付けて算出された1次偏肉の位相を反転させたもの(算出された1次偏肉の位相を180°ずらしたもの)を、継目無管の長手方向位置を揃えて上記の2つの超音波肉厚計による肉厚測定値に重畳することで、1次偏肉の影響を低減する補正を行うことが可能である。
以上のように、上記の好ましい方法によれば、1次偏肉の影響が低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めることが可能である。
【0025】
前述した本発明の第2の方法においても、1次偏肉の影響を低減し、2次、3次、4次、6次の各偏肉の算出精度を高めるには、前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計のうち何れか一つの超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計による肉厚測定値をそれぞれ補正し、前記第3〜第5ステップにおいて、
前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計のうち一方の超音波肉厚計で測定した継目無管の長手方向肉厚分布に基づき、該継目無管の1次偏肉を算出し、該算出した1次偏肉に基づき、
前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計による肉厚測定値を補正することが好ましい。
【0026】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて、前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【0027】
継目無管の厚肉部又は薄肉部の位置は、例えば3次偏肉の場合、理論的には、いずれか一方が第2圧延機の圧延ロールの圧下方向に位置し、いずれか他方がこの圧下方向に対して60°を成す方向に位置するものとなる。しかしながら、実際には圧延中の振動などの影響で理論通りにならず、厚肉部又は薄肉部の位置が継目無管の周方向にずれる可能性がある。2次、4次、6次の偏肉についても同様である。厚肉部又は薄肉部の位置がずれているにも関わらず、肉厚測定方向を一定の方向に固定すると、偏肉とその向きを精度良く算出できない可能性がある。
上記の好ましい方法によれば、2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させる(継目無管の周方向に回動させる)ため、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても、ずれに対するロバスト性が確保され、偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避可能である。
【0028】
前述した本発明の第2の方法においても、たとえ厚肉部又は薄肉部の位置が理論値からずれていたとしても偏肉とその向きの算出精度が大きく悪化することを回避するには、前記第2ステップにおいて、前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させ、前記第3〜第5ステップにおいて、
前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計を、それぞれの肉厚測定方向に対して±15°の範囲内で継目無管の肉厚測定中に同期回動させることが好ましい。
【0029】
前述した本発明の第1の方法における前記第2〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計としては、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計を例示できる。
【0030】
同様に、前述した本発明の第2の方法における前記第2ステップにおいて配置する前記第1超音波肉厚計、前記第2超音波肉厚計及び前記第3超音波肉厚計、並びに、前記第3〜第5ステップにおいて配置する前記2つの超音波肉厚計としては、レーザ超音波肉厚計又は電磁超音波肉厚計を例示できる。