(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明を実施するための一実施形態を説明する。
【0011】
図1の監視システムは、撮像装置100と、撮像装置100で撮像した画像を表示するモニタ300とから構成される。
撮像装置100は、撮像部10、画像信号処理部11、フォーカス位置制御部13、画像信号評価部14、評価値記憶部16、水滴付着判定部17、駆動制御部19、水滴除去部20を備えている。
【0012】
撮像部10は、撮像装置100が収納されているハウジングに設けられた撮像窓を介して撮像対象を撮像し画像を取得する。撮像部10は、予め設定された所定の周期で撮像対象を撮像する。なお、撮像装置100が天井に設置されている所謂ドームカメラの場合には、撮像窓は撮像装置を収納するドームカバーを指すものとする。ドームカメラのドームカバーは光学部材として機能する。
【0013】
撮像部10は、フォーカス位置制御部13の制御の下に、撮像レンズが可動制御されて、撮像レンズのフォーカス、すなわち合焦位置が変更可能に構成されている。通常撮像時は撮像部10の合焦位置は、撮像装置100で撮像しようとする撮像対象に合わされる。撮像部10の合焦位置の可変範囲は撮像レンズの仕様に応じて決められているが、合焦位置の最至近距離は通常、撮像レンズ前方の例えば数センチメートル程度となる。従って、撮像部10の合焦位置を強制的に至近距離に設定することで、撮像窓付近の位置で合焦させることができる。
【0014】
撮像部10は、撮像によって得られた画像信号を画像信号処理部11と、画像信号評価部14に与える。
【0015】
画像信号処理部11は、撮像部10から受け取った画像信号を所定のフォーマットの画像信号に変換し、変換した画像信号をモニタ300に与える。モニタ300は、例えば液晶モニタであり、画像信号処理部11から受け取った画像信号に基づいて、画像を表示する。
【0016】
フォーカス位置制御部13は、撮像部10の合焦位置を制御する。フォーカス位置制御部13は合焦位置のプリセット位置として、撮像対象の位置と至近距離の位置の少なくとも2つの位置を記憶している。撮像対象のプリセット位置はカメラ設置時に合焦位置が撮像対象の位置になるように設定し、記憶させる。至近距離のプリセット位置は、カメラ設置時に撮像窓付近に合焦する位置に設定して記憶させても良いし、撮像レンズの仕様上の最至近距離としても良い。フォーカス位置制御部13は、撮像部10の合焦位置を撮像対象の位置にするか至近距離の位置にするかを水滴除去判定部17の制御によって切り替える。または、通常は撮像対象に自動的に合焦するオートフォーカス機能を持たせ、水滴除去判定部17からの指示により、強制的に合焦位置を至近距離のプリセット位置または最至近距離に移動させる構成としても良い。
【0017】
画像信号評価部14は、撮像部10から受け取った画像信号のコントラストと合焦度合いのいずれか一方または両方を評価し、評価値を算出する。具体的には、画像信号の輝度レベルと画素数とのヒストグラムを作成して輝度値の分布を求め、ヒストグラムから演算により輝度値の標準偏差を算出し、この画像信号のコントラスト評価値とする。また、画像信号のAC成分の積分値を算出し、この画像信号の合焦度合い評価値とする。
【0018】
なお、コントラスト評価値および合焦度合い評価値の算出方法は、上記方法に限定されない。例えば、画像信号の輝度値の最大値と最小値の差を算出し、コントラスト評価値としても良い。また、例えば画像信号のAC成分の最大値を算出し、合焦度合い評価値としても良い。合焦度合いの評価値として画像信号のAC成分の値を用いる手法は、例えば自動でフォーカス調整するカメラ等に従来から使われている技術である。
【0019】
画像信号評価部14は、算出した評価値を評価値記憶部16と水滴付着判定部17にそれぞれ送る。
【0020】
評価値記憶部16は、例えばフラッシュメモリなどで構成され、画像信号評価部14から受け取った評価値を記憶する。評価値記憶部16で記憶した評価値は、水滴付着判定部17での判定時に読み出され、水滴付着判定部17に読み出されたタイミングで、新たに算出された評価値が上書きされて記憶内容が更新される。
【0021】
水滴付着判定部17は、画像信号評価部14から受け取った最新の画像信号の評価値、および評価値記憶部16から読み出した前回の画像信号の評価値に基づき、後述する方法で撮像窓に水滴が付着しているか否かを判定する。水滴付着判定部17は判定結果に基づき、フォーカス位置制御部13に合焦位置の切り替えを指示し、駆動制御部19に水滴除去部200の駆動を指示する。
【0022】
駆動制御部19は、水滴付着判定部17の指示に基づいて、水滴除去部20を駆動制御する。
【0023】
水滴除去部20は、例えばワイパーを備え、駆動制御部19の制御に基づいて、ワイパーを駆動して撮像窓に付着した水滴を除去する。水滴を除去する手段はワイパーに限らず、例えば圧縮空気を撮像窓に吹き付ける手段でも良い。
【0024】
撮像装置100における、撮像部10と水滴除去部20を除く構成要素は、プログラムに基づいて各種動作処理を制御する、例えばマイクロコンピュータなどにより構成することができる。
【0025】
(実施形態1)
更に
図2のフローチャートを用いて、実施形態1における動作の流れを説明する。
【0026】
ステップS101にて、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている状態で、画像信号評価部14は撮像画像信号の評価値を算出する。画像信号の評価値としては、コントラスト評価値(コントラスト評価値Aとする)と、合焦度合い評価値(合焦度合い評価値Aとする)のいずれか、または両方を算出する。いずれの評価値を算出するかはステップS102とS106で判定に用いる評価値に応じて予め設定しておく。算出された評価値は評価値記憶部16に送られ、評価値記憶部16は受け取った評価値を記憶する。同時に、算出された評価値は水滴付着判定部17に送られる。
【0027】
ステップS102にて、水滴付着判定部17は、ステップS101で算出した評価値に基づいて、撮像窓に水滴が付着している可能性があるか否かを判定する。合焦位置が撮像対象に合っている状態で撮像窓に水滴が付着すると、撮像窓から入射する入射光が水滴により散乱して、画像全体が白っぽくなるフレア状態となる。このため、撮像窓に水滴が付着することによって、水滴が付着する前と比較して画像信号の輝度レベルの分布が小さくなり輝度値の標準偏差が小さくなることでコントラスト評価値が小さくなる。また、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている状態で撮像窓に水滴が付着すると、付着した水滴の影響で撮像画像がぼやけるため、合焦度合い評価値は水滴付着前と比較して小さくなる。
【0028】
従って、水滴付着判定部17は、コントラスト評価値Aが予め設定した第1の閾値よりも小さい場合、および合焦度合い評価値Aが予め設定した第2の閾値よりも小さい場合に、水滴が付着している可能性があると判定する。判定する画像評価値としてコントラスト評価値Aと合焦度合い評価値Aの両方を用いる場合は、両方の評価値共が各閾値に対し小さい場合に水滴が付着している可能性があると判定する構成とすることが望ましい。この場合、コントラスト評価値と合焦度合い評価値の両方で判定することで、より誤判定を減らすことができる。
【0029】
水滴が付着している可能性があると判定した場合(S102/yes)には、ステップS103に進む。水滴が付着している可能性があると判定されなかった場合(S102/no)には、処理を終了する。
【0030】
ステップS103にて、水滴付着判定部17は、撮像部10の合焦位置を至近距離に合わせる様にフォーカス位置制御部13に指示する。フォーカス位置制御部13は、撮像部10の撮像レンズを可動させて合焦位置を至近距離にあわせる。
【0031】
ステップS104にて、撮像部10の合焦位置が至近距離に合っている状態で、画像信号評価部14は撮像画像のコントラスト評価値(コントラスト評価値Bとする)と合焦度合い評価値(合焦度合評価値Bとする)のいずれか、または両方を算出する。いずれの評価値を算出するかはステップS106で判定に用いる評価値に応じて予め設定しておく。算出された評価値は評価値記憶部16に送られると同時に、水滴付着判定部17に送られる。
【0032】
ステップS105にて、水滴付着判定部17は、撮像部10の合焦位置を撮像対象に合わせる様にフォーカス位置制御部13に指示する。フォーカス位置制御部13は、撮像部10の撮像レンズを駆動して合焦位置を撮像対象に合わせる。ステップS103で合焦位置を至近距離に合わせてから、ステップS105で合焦位置を撮像対象に戻すまでの時間は数フレーム期間で十分である。合焦位置を至近距離としている間は撮像対象の画像がぼやけるが、この間は撮像窓に水滴が付着する等している状態なので、撮像画像に対する影響は少ない。
ステップS106にて、水滴付着判定部17は、ステップS101で算出した画像信号評価値とステップS104で算出した画像信号評価値とを比較する。
【0033】
水滴が撮像窓に付着している状態では、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている場合と比較し、合焦位置を至近距離とした場合のコントラスト評価値は大きくなる。また、撮像窓に水滴が付着した状態では、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている場合と比較し、合焦位置を至近距離とした場合の合焦度合い評価値は大きくなる。これは、合焦位置を至近距離とすることによって撮像窓の水滴に合焦または略合焦するためである。
【0034】
従って、水滴付着判定部17は、コントラスト評価値Bがコントラスト評価値Aよりも大きい場合、および合焦度合い評価値Bが合焦度合い評価値Aよりも大きい場合に水滴が付着していると判定する。画像評価値としてコントラスト評価値と合焦度合い評価値の両方を用いる場合は、コントラスト評価値Bがコントラスト評価値Aよりも大きく、かつ合焦度合い評価値Bが合焦度合い評価値Aよりも大きい場合に水滴が付着していると判定することが好ましい。この場合、コントラスト評価値と合焦度合い評価値の両方で判定することで、誤判定をより少なくすることができる。
【0035】
ステップS106で水滴が付着していると判定した場合(S106/yes)、ステップS107に進む。ステップS106で水滴が付着していると判定しない場合(S106/no)、処理を終了する。
【0036】
ステップS107にて、駆動制御部19は、水滴付着判定部17の指示を受けて、水滴除去部200を駆動制御する。水滴除去部200は、水滴除去手段を駆動して撮像窓に付着した水滴を除去する。水滴除去部200は、水滴除去手段を所定の回数もしくは所定の時間駆動して停止し、処理を終了する。
【0037】
本実施形態では、撮像部が合焦位置を撮像対象にあわせて撮像し取得した画像のコントラスト評価値ならびに合焦度合い評価値を判定して、撮像窓に水滴が付着している可能性があるか否かを判定する。水滴が付着している可能性があると判定された場合には、合焦位置を至近距離に合わせて撮像し画像を取得する。合焦位置が撮像対象に合っている状態の画像と至近距離に合っている状態の画像とで、コントラスト評価値ならびに合焦度合い評価値を比較して、水滴付着の有無を判定する。このように2重の判定処理を実行することにより、水滴付着の検出精度を高めることが可能となる。
【0038】
上記のように水滴付着の検出精度を高めることが可能になるので、水滴を除去するワイパーなどを不必要に駆動することは回避され、水滴除去手段を適切に駆動することができる。この結果、水滴が付着していない状態で水滴除去手段を駆動するという無駄な動作を抑制することができる。特に、水滴除去手段としてワイパーを採用した場合、水滴が付着していない状態でワイパーを駆動すると、撮像窓を傷付けたり、ワイパー自体が極端に劣化したりする不具合が生じるため、本発明の効果は大きい。
【0039】
また、先行技術文献1に記載のような、発光素子、受光素子および検出器などの別装置を用いることなく、撮像装置に通常備えられている構成を使って水滴付着の有無を判定することができる。このため、装置を大型化せず、またコストの増大を極力抑えた状態で、精度良くカメラ撮像窓の水滴付着を検出することができる。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2の水滴付着検出装置の構成は実施形態1と同じである。実施形態2では実施形態1に対し、水滴除去部20の動作繰返し判定を追加している。以降の説明で実施形態1と共通または類似する内容については説明を省略する場合がある。
【0041】
図3のフローチャートで、ステップS101からS106までは
図2で説明した内容と同じである。
【0042】
ステップS201にて、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている状態で、画像信号評価部14は撮像画像信号の評価値を算出する。画像信号の評価値としては、コントラスト評価値(コントラスト評価値Cとする)と、合焦度合い評価値(合焦度合い評価値Cとする)のいずれか、または両方を算出する。いずれの評価値を算出するかはステップS204で判定に用いる評価値に応じて予め設定しておく。算出された評価値は評価値記憶部16に送られ、評価値記憶部16は受け取った評価値を記憶する。
【0043】
ステップS202にて、駆動制御部19は、水滴付着判定部17の指示を受けて、水滴除去部200を駆動制御する。水滴除去部200は、水滴除去手段を駆動して撮像窓に付着した水滴を除去する。水滴除去部200は、水滴除去手段を所定の回数もしくは所定の時間駆動して停止し、ステップS203に進む。
【0044】
ステップS203にて、撮像部10の合焦位置が撮像対象に合っている状態で、画像信号評価部14は撮像画像信号の評価値を算出する。画像信号の評価値としては、コントラスト評価値(コントラスト評価値Dとする)と、合焦度合い評価値(合焦度合い評価値Dとする)のいずれか、または両方を算出する。いずれの評価値を算出するかはステップS204で判定に用いる評価値に応じて設定する。算出された評価値は水滴付着判定部17に送られる。
【0045】
ステップS204にて、水滴付着判定部17は水滴除去装置駆動前後の画像信号評価値を比較し、水滴付着の有無を判定する。実施形態1でも説明したように、合焦位置が撮像対象に合っている状態で撮像窓に水滴が付着することにより、水滴が付着する前と比較してコントラスト評価値および合焦度合い評価値は小さくなる。
【0046】
従って、水滴付着判定部17は、コントラスト評価値Dがコントラスト評価値Cよりも大きい場合、および合焦度合評価値Dが合焦度合評価値Cよりも大きい場合に、水滴除去部20の動作前に水滴が付着していて水滴除去部20の動作により水滴が除去されたものと判定する。ステップS204の判定では、コントラスト評価値と合焦度合評価値のいずれか一方を比較して判定すれば十分である。また、評価値の比較の際には所定の閾値を設定して、コントラスト評価値Dがコントラスト評価値Cよりも第1の所定の閾値以上大きい場合、および/または、合焦度合評価値Dが合焦度合評価値Cよりも第2の所定の閾値以上大きい場合に、水滴除去部20の動作前に水滴が付着していて水滴除去部20の動作により水滴が除去されたものと判定する構成としても良い。判定に閾値を設定することにより、誤判定を減らすことができる。
【0047】
ステップS204で水滴が付着していたと判定した場合(S204/yes)、雨が降り続ける等して水滴が付着し続けている可能性があるため、ステップS201に戻り、S204で雨滴が付着していたと判定しなくなるまで(S204/no)、S201〜S204のループを繰り返す。ステップS204で水滴が付着していたと判定しない場合(S204/no)、雨が止んだ等して水滴が付着しなくなったとして処理を終了する。
【0048】
本実施形態では実施形態1の効果に加え、一度水滴付着有りと判定して水滴除去部を駆
動させた後は、撮像部の合焦位置を変えることなく水滴付着の有無を判定するので、撮像
対象を鮮明に撮像しながら適切に水滴付着の有無を判定することができる。