特許第6179487号(P6179487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許61794873レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179487
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20170807BHJP
【FI】
   H02M7/483
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-171699(P2014-171699)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-46988(P2016-46988A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潔
(72)【発明者】
【氏名】仲村 秀世
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 真史
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲也
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/061813(WO,A1)
【文献】 特開2013−102627(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145620(WO,A1)
【文献】 特開平09−147832(JP,A)
【文献】 特開2014−057520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3レベル電力変換装置の上下アームを構成する第1半導体スイッチ素子および第2半導体スイッチ素子を収納した第1モジュールと、
中間アームを構成する双方半導体スイッチ回路を収納した第2モジュールとを設け、
この第1モジュールと第2モジュールを隣り合わせに平行に近接配置し、
前記第1モジュールの高電位接続端子に平板状の高電位接続端子板を接続し、
低電位接続端子に平板状の低電位接続端子板を接続し、
前記第2モジュールの中間電位端子に中間電位接続端子板を接続するとともに、
前記第1モジュールの交流出力端子と前記第2モジュールの交流側接続端子とに共通の平板状の交流出力端子板を接続し、かつ、
前記第1モジュールのゲート端子および第2モジュールのゲート端子に共通に、前記各モジュールの半導体スイッチ素子の個別のゲート駆動回路を備えるゲート回路板を接続し、前記第1モジュールおよび第2モジュールの前記各接続端子と各接続端子板とを電気、機械的に結合するとともに前記ゲート端子と前記ゲート回路板とを電気、機械的に結合することにより前記第1モジュールと第2モジュールとを一体に結合し
前記第1モジュールおよび第2モジュールを複数組並列接続する場合、前記第1モジュールと第2モジュールとを交互に平行に近接配置し、全モジュールに共通に前記各接続端子板、交流出力端子板およびゲート回路板を設けることを特徴とする3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項2】
前記高電位接続端子板と低電位接続端子板および中間電位接続端子板は、前記第1モジュールおよび第2モジュールの上方へ垂直に延ばし、相互に近接して平行に配設することを特徴とする請求項1に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項3】
前記の第1モジュールおよび第2モジュールに設ける接続端子は、ピン状導体で構成し、それぞれ所定間隔離して1対ずつ設けることを特徴とする請求項1または2に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項4】
前記各接続端子板、交流出力端子板およびゲート回路板と前記第1モジュールおよび第2モジュールの接続端子とを圧着してカシメにより結合することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項5】
前記高電位接続端子板と低電位接続端子板および中間電位接続端子板のそれぞれの下端と上端に設ける端子接続部と外部接続端子部とを各接続端子板の対角となる位置に設けることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項6】
前記第1モジュールおよび第2モジュールは、同一形状のパッケージとして同じピン配列とすることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。
【請求項7】
少なくとも前記第1モジュールに収納した半導体スイッチ素子は、ワイドバンドギャップ半導体材料で構成した半導体スイッチ素子とすることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の3レベル電力変換装置の半導体モジュールユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3レベルインバータ等の電力変換装置の半導体スイッチ素子を2個直列接続して構成した上下アームと、双方向スイッチ回路を構成する中間アームとをそれぞれ収納した半導体モジュールを一体に組み合わせて構成した半導体モジュールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
3レベルインバータに限らず半導体電力変換装置においては、組み立てを簡素化して装置のコストを低減するために、半導体電力変換回路を1つあるいは複数のパッケージに収納してモジュール化することが行われている。
【0003】
図10は、特許文献1に記載された従来の3レベルインバータの1相分の回路(a)とこの回路を収容したモジュールの構成(b)を示すものである。
【0004】
図10(a)において、1は直流電源であり、その電圧をコンデンサ2、3により分割し、P、M、Nの3つの電位を形成する。4〜7は、順方向の電流を断続制御することが可能で、かつ逆方向電流に対して常に導通状態となる半導体スイッチ素子である。この半導体スイッチ素子は、ここでは、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)とそれに逆並列接続されたダイオードとで示されている。半導体スイッチ素子6と7は、逆方向に直列接続されており、これにより、順、逆両方向の電流の断続制御が可能な、いわゆる双方向(交流)スイッチを構成する。半導体スイッチ素子4、5は、直列接続して電力変換回路の1相分の上下アーム11を構成する。この上下アーム11に対して、半導体スイッチ素子6、7を直列接続して構成した交流スイッチは、中間アーム12と称する。
【0005】
図10(a)の回路において、交流出力端Uの電位は、上下アーム11の半導体スイッチ素子4がオンしたときは、直流電源1の高電位端Pの電位と等しく、半導体スイッチ素子5がオンしたときは、直流電源1の低電位端Nの電位と等しくなる。また、中間アームの半導体スイッチ素子6または7がオンしたとき、交流出力端Uの電位は2つのコンデンサ2、3の中間点Mの電位、すなわち直流電源1の中間電位と等しくなる。
【0006】
すなわち、この図10(a)の回路は、各半導体スイッチ素子のオン状態によって交流出力端Uの電位を3つの電圧レベルで選択できる3レベルインバータを構成する。
【0007】
このような3レベルの出力を発生する3レベルインバ‐タ回路は、中間アーム12を構成する半導体スイッチ素子6、7の耐圧が上下アーム11の半導体スイッチ素子4、5の1/2でよい特徴がある。また、動作条件(力率と変調率)によって上下アームと中間アームの各半導体スイッチ素子で発生する導通損失や、スイッチング損失が異なる。このため、この回路の適用される電力変換装置においては、運転条件によって、上下アームと中間アームを構成する半導体スイッチ素子のそれぞれに適した耐圧やスイッチング特性等の仕様が変わる。
【0008】
このために、特許文献1では、これまで、図10(a)に示す電力変換回路の全体を1つのモジュールに収納していたのを上下アーム11と中間アーム12とを別々のパッケージに収めて別モジュールとすることが提案されている。
【0009】
図10(b)に示すモジュール11Mは、図10(a)の回路の上下アーム12を収納した上下アームモジュールであり、モジュール12は、中間アーム12Mを収納したモジュールである。
【0010】
モジュール11Mの上面の端子C4、E5、Uは主回路端子である。モジュールM11は、端子C4を、を直流電源1の高電位端子Pに接続し、端子E5を、低電位端子Nに接続して使用し、端子Uから、モジュールM11の交流出力を取り出すようにする。G4、E4およびG5、E5は、それぞれ半導体スイッチ素子4,5のゲート端子であり、これらの端子に制御装置からゲート制御信号を加えてモジュール11Mの半導体スイッチ素子4,5のスイッチングを制御する。
【0011】
モジュール12Mの上面の端子C7,E7は主回路端子である。モジュール12Mは、端子C7を、直流電源1の中間電位端子Mに接続し、端子E6を、モジュールM11の交流出力端子Uに接続して使用する。G6、E6およびG7、E7は、それぞれ双方向スイッチ回路の半導体スイッチ素子6、7のゲート端子であり、これらの端子に制御装置からゲート制御信号を加えてモジュールM12の半導体スイッチ素子6、7のスイッチングを制御する。
【0012】
このように上下アーム11と中間アーム12に各別のモジュールに構成するようにすると、上下アームの半導体スイッチ素子と中間アームの半導体スイッチ素子は、もともと使用条件の異なるのであるので、各モジュールの設計の自由度が増し、製作が容易となる。そして、それぞれ複数種類用意された上下アームモジュール11Mと中間アームモジュール12Mの中からそのときの動作条件に適応したものを選択して電力変換装置を構成することができるので、電力変換装置の経済性をより向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO2012/169951号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように従来から、3レベル電力変換装置の上下アームと中間アームとを別々のモジュールにパケージすることが行われているが、さらにこの上下アームモジュールと中間アームモジュールを1つのユニットにまとめることは行われていない。
【0015】
この発明は、電力変換装置の製作のさらなる効率化のために、上下アームモジュールと中間アームモジュールとを一体的に取り扱うことができるようにした半導体モジュールユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を解決するため、この発明は、3レベル電力変換装置の上下アームを構成する第1半導体スイッチ素子および第2半導体スイッチ素子を収納した第1モジュールと、中間アームを構成する双方半導体スイッチ回路を収納した第2モジュールとを設け、この第1モジュールと第2モジュールを隣り合わせに平行に近接配置し、前記第1モジュールの高電位接続端子に平板状の高電位接続端子板を接続し、低電位接続端子に平板状の低電位接続端子板を接続し、前記第2モジュールの中間電位端子に中間電位接続端子板をするとともに、前記前記第1モジュールの交流出力端子と前記第2モジュールの交流側接続端子とに共通の平板状の交流出力端子板を接続し、かつ、前記第1モジュールのゲート端子および第2モジュールのゲート端子に共通に、前記各モジュールの半導体スイッチ素子の個別のゲート駆動回路を備えるゲート回路板を接続し、前記第1モジュールおよび第2モジュールの前記各接続端子と各接続端子板とを電気、機械的に結合するとともに前記ゲート端子と前記ゲート回路板とを電気、機械的に結合することにより前記第1モジュールと第2モジュールとを一体に結合したことを特徴とする。
【0017】
前記高電位接続端子板と低電位接続端子板および中間電位接続端子板は、前記第1モジュールおよび第2モジュールの上方へ垂直に延ばし、相互に近接して平行に配設するのがよい。
【0018】
前記の第1モジュールおよび第2モジュールに設ける接続端子は、ピン状導体で構成し、それぞれ所定間隔離して1対ずつ設けるのがよい。
【0019】
また、前記各接続端子板、交流出力端子板およびゲート回路板と前記第1モジュールおよび第2モジュールの接続端子とを圧着してカシメにより結合することができる。
【0020】
さらに、前記第1モジュールおよび第2モジュールを複数組並列接続する場合、前記第1モジュールと第2モジュールとを交互に平行に近接配置し、全モジュールに共通に前記各接続端子板、交流出力端子板およびゲート回路板を設けることができる。
【0021】
前記高電位接続端子板と低電位接続端子板および中間電位接続端子板のそれぞれの下端と上端に設ける端子接続部と外部接続端子部とを各接続端子板の対角となる位置に設けることができる。
【0022】
前記第1モジュールおよびだ2モジュールは、同一形状のパッケージとして同じピン配列とすることができる。その場合、不要な端子が生じて場合は、空き端子とする。
【0023】
また、少なくとも前記第1モジュールに収納した半導体スイッチ素子は、ワイドバンドギャップ半導体で構成した半導体スイッチ素子とするのがよい。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、平行に近接配置した、3レベル電力変換装置の上下アームを収納した第1モジュールと中間アームを収納して第2アームが、それぞれに共通に接続された交流出力端子板およびゲート回路板によりより機械的に結合されて、一体的なユニットとすることができるので、取り扱いが容易となり、電力変換装置の製作工数の低減が期待できる。
【0025】
また、第1モジュールおよび第2モジュールの直流一巡経路の配線導体となる接続された高電位接続端子板と低電位接続端子板および中間電位接続端子板は、相互に平行に近接配置されているので往復電流による磁束打ち消し効果が大きくなり配線の寄生インダクタンスを低減することができるので、SiC等のワイドバンドギャップ半導体で構成した高速半導体スイッチ素子を用いた場合に、発生するサージ電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施例を示す3レベルインバータの1相分の回路構成図。
図2】この発明に使用する上下アームを収容した第1モジュールと中間アームを収容した第2モジュールの構成を示す斜視図。
図3】この発明の第1の実施例のモジュールユニットの構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
図4】この発明の第1の実施例のモジュールユニットの構成を分解して示す斜視図。
図5】この発明の第1の実施例のモジュールユニットの組み立て手順を示す図。
図6】この発明の第1の実施例のモジュールユニットの冷却器への取付け状態を示す斜視図。
図7】この発明の第1の実施例のモジュールユニットとコンデンサ等の電気部品との取付け状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図。
図8】この発明の第2の実施例のモジュールユニットの構成を示す斜視図。
図9】この発明の第3の実施例のモジュールユニットの構成を示す斜視図。
図10】従来の電力変換装置のモジュールを示すもので、(a)はモジュールの回路図、(b)はモジュールの平面構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に、この発明の第1の実施例を示すのもので、3レベルインバータの1相分の回路構成図である。
【0029】
図1において、3レベルインバータの上下アームとなる、MOSFETで構成された半導体スイッチ素子とダイオードとの逆並列された半導体スイッチ4、5を直列接続した回路は、第1モジュール20に収容される。3レベルインバータの中間アームとなる双方向スイッチは、ダイオード10、11とIGBT12、13で構成され、これらは第2モジュール30に収容される。上下アーム、中間アームに適用する半導体スイッチは図1の例に限らず、例えば近年実用化されつつあるSiC(炭化珪素)等のワイドバンドギャップ半導体材料で構成した高速半導体スイッチ素子など、装置仕様により種々の半導体スイッチ素子を用いることができる。
【0030】
上下アームを構成するモジュール20からは、直流電源の高電位端子Pに接続する高電位接続端子20P、低電位端子Nに接続する低電位接続端子20N、交流出力を取り出す出力端子20U、および半導体スイッチ4、5のゲート接続端子20G4、20G5が引き出されている。
【0031】
また、中間アームを構成するモジュール30からは、直流電源の中間電位端子Mに接続する中間電位接続端子30M,上下アームの出力端子20Uに接続する接続端子30U、および半導体スイッチ12、13のゲート接続端子30G12、30G13が引き出される。
【0032】
直流電源1の高電位端子Pおよび低電位端子Nと中間電位端子Mとの間に、それぞれ直流コンデンサ2および3を接続する。コンデンサ2の接続された高電位端子Pと上下アームモジュール20の高電位接続端子20Pとは高電位接続導体40Pで接続する。コンデンサ3の接続された低電位端子Nと上下アームモジュール20の低電位接続端子20Nとは低電位接続導体40Nで接続する。さらに、中間アームモジュール30の中間電位接続端子30Mと直流電源2の中間電位端子Mとを中間電位接続導体40Mで接続する。そして、上下アームモジュール20の出力端子20Uと中間アーム30の出力端接続端子30Uとは出力接続導体40Uで接続し、これらの接続導体40P、40N、40M、40Uはインバータ回路における直流一巡電流経路となる。
【0033】
図2に、図1の上下アームを構成するモジュール20および中間アームを構成するモジュール30の外観構成を示す。各モジュールは、半導体スイッチ素子類を収容した絶縁樹脂ブロックで気密的にパッケージされている。ブロックの上面には複数の接続端子が配置され、それぞれの両端には、モジュールを冷却基板等に締め付け結合するための取付ねじを挿通する取付孔20e、30eが設けられている。
【0034】
両モジュール20および30に設けられた各接続端子はそれぞれ間隔を置いて配置された1対のピン電極で構成され、両モジュールでほぼ同じ配列としている。
【0035】
上下アームモジュール20の接続端子20P、20Nおよび20Uは、図1の上下アームモジュール20の高電位接続端子20P、低電位接続端子20Nおよび出力接続端子20Uである。モジュール20の接続端子20G4および20Gは、図1の上下アーム20の半導体スイッチ4および5のゲート端子である。
【0036】
また、中間アームモジュール30の接続端子30Mおよび30Uは、図1の中間アームモジュール30の中間電位接続端子30Mおよび出力端子30Uである。中間モジュール30の接続端子30G14および30G15は、図1の中間アーム30の半導体スイッチ14および15のゲート端子である。中間アームモジュール30の端子Bは、中間アームモジュール30の端子配列を、上下アームモジュール20の端子配列と同じ配列とするために設けられた電気的接続には用いられない空き端子である。
【0037】
モジュール20の出力端子20Uとモジュール30のと出力端子30Uが同列に配置される。モジュール20のゲート端子20G4、20G5とモジュール30のゲート端子30G12、30G13がそれぞれ同列となる。そして、モジュール20の高電位接続端子20Pとモジュール30の空き端子30Bが同列となり、モジュール20の低電位接続端子20Nとモジュール30の中間電位接続端子30Mが同列に配置される。
【0038】
次に、図3図4をを参照して、この発明の3レベルインバータのモジュールユニットについて説明する。
【0039】
図3は、この発明による接続端子板組体40を図2に示した2つのモジュール20、30に結合配置した3レベルインバータの1相ユニットの組み立て構成図である。
【0040】
モジュール20、30は、近接して平行に配置する。この平行に配置された2つのモジュール20、30上に跨って垂直に接続端子板組体40を固定配置する。
【0041】
この接続端子板組体40は、複数の垂直に立ち上がった複数の平板状の端子板と絶縁板を重ね合わせて構成されているため、図3においては詳細が見難いので、図4に分解して示す。以下の説明においてはこの図4を参照する。
【0042】
出力端子板41は、両モジュールの出力端子20Uと30Uの間を接続する接続導体40U(図1)となる接続端子板であり、平板状導電材により形成されている。その図4における手前(左端)側の端部に、その全幅に亘って直角に2段に折り曲げて形成した端子接続部41aを有する。この端子接続部41aには、両モジュールのピン状の接続端子20U、30Uを挿入嵌合するための嵌合孔41eが設けらている。さらに、端子板41の先端(右端)側には、端子板41を冷却器70等に支持固定するための固定ねじ41cが挿通されている。この固定ねじ41cの先端側に絶縁材製のスペ‐サ41dが嵌合されている。また、端子板41には、モジュール20と30に結合したとき、モジュールの取付孔20e、30eと対向する位置に、取付ねじを挿通するためのねじ挿通孔41fを備えている。
【0043】
接続端子板44および48は、それぞれ、図1における低電位接続導体40Nおよび高電位導体40Pとなる接続端子板であり、平板状導電材で形成されている。接続端子板44および48には、それぞれ、下端の図4において左端側(モジュール20側)に、モジュール20の接続端子20Nおよび20Pに接続するための端子接続部44aおよび48aが直角に折り曲げて形成されている。そして、接続端子板44および48の上端のこれらと対角をなす右端側(モジュール30側)に、外部との接続を行うためのねじ端子を構成する外部接続用接続端子部44bおよび48bを直角に折り曲げて形成している。外部接続端子部44bと48bは、互いに反対方向に張り出している。端子接続部44aおよび48aには、それぞれモジュール20のピン状の接続端子20Nおよび20Pを挿入、嵌合するための、嵌合孔44e(不図示)および48eが設けらている。
【0044】
接続端子板46は、図1における中間電位接続導体40Mとなる接続端子板であり、平板状導電材で形成されている。その上端の右端側(モジュール30側)にモジュール30の接続端子30Mに接続するための端子接続部46aが直角に折り曲げて形成される。そして、接続端子板46の上端のこれと対角をなす左端側(モジュール20側)に、外部との接続を行うためのねじ端子を構成する外部接続端子部46bが直角に折り曲げて形成されている。この接続端子板46には、外部接続端子部46bに結合してこれを左右両側に張出させる補助端子板46sが付属する。
【0045】
絶縁板42および43は、出力端子板41と低電位接続端子板44との間に挿入される絶縁板である。最外側の絶縁板42の下端側は、絶縁沿面距離を拡大して、モジュール20の端子20Nとモジュール30の端子30Mを上部から覆うために外側(出力端子板41側)へ折り曲げられ、上端には、接続端子板44の外部接続端子部44bを通すための凹部42gおよび、接続端子板46の外部接続続部46bおよび補助端子板46sを通すための凹部42hが形成されている。
【0046】
絶縁板45は、接続端子板44と46との間に挿入される絶縁板であり、上端の左端側(モジュール20側)に接続端子板46の外部接続端子部46bおよび補助端子板46sを通すための凹部45gを有する。
【0047】
絶縁板47は、接続端子板46と48との間に挿入される絶縁板であり、上端の左端側(モジュール20側)に接続端子板46の補助端子板46sを通すための凹部47gを有する。
【0048】
絶縁板49は、接続端子板48と、その外側に配置されるゲート回路板50との間に挿入される絶縁板である。
【0049】
ゲート回路板50は、各モジュールの半導体スイッチのゲート駆動回路を備えたプリント回路板で構成されており、モジュール20および30のゲート接続端子20Gおよび30Gに接続するためのゲート端子接続孔50eを複数備える。また、モジュール20、30に結合したとき、モジュールの取付孔20e、30eと対向する位置に、取付ねじ40cを挿通するためのねじ挿通孔50fを備える。
【0050】
全ての接続端子板や絶縁板は、図4に示すように、近接して平行に配列した2個のモジュール20および30のは全幅Wmに亘るようにするため、その幅W40を、モジュールの全幅Wmとほぼ等しい幅とする。絶縁板はその機能上、その幅W40をモジュールの全幅Wmより少し大きくしてモジュールの側端から少しはみ出すようにするのがよい。
【0051】
このような上下アームモジュール20、中間アームモジュール30、接続端子板組体40およびゲート回路板50を備えた3レベルインバータのモジュールユニットの組み立て手順を図5に示すので、以下にこの図にしたがって説明する。
【0052】
まず、図5(a)に示すように、3レベルインバータを構成する上下アームを収容したモジュール20と中間アームを収容したモジュール30をそれぞれゲート端子20G、30G側を手前にして平行に並べて近接して配置する。このとき、各モジュールの各列の接続端子が同一の列に並ぶようにモジュールの前端と後端を揃える。
【0053】
次いで、図5(b)に示すように、出力接続端子板41をモジュール20、30の後端(右端)側に両方に跨って水平に載置し、その各嵌合孔41eに各モジュールの出力接続端子20U,30Uを挿入し嵌合する。嵌合孔41eに挿入された接続端子20U、30Uを溶接またはろう付けするか、あるいはカシメ(圧潰)をすることにより接続端子20U、30Uと接続端子板41とを電気的および機械的に結合し、相互に固定する。
【0054】
モジュール20、30上に接続端子板41が固定されたところで、その手前に図5(c)および(d)に示すように絶縁板42および43を垂直に順次配置する。
【0055】
これに続き、絶縁板43の手前に、図5(e)に示すように低電位接続端子板44を垂直に配置する。このとき、端子板44の端子接続部44aの嵌合孔44e(不図示)にモジュール20の接続端子20Nを挿入、嵌合し、適宜の手段で接続端子板44と接続端子20Nとを電気的および機械的に結合して、固定する。
【0056】
引き続き、図5(f)に示すように、接続端子板44の手前に、絶縁板45を垂直に配置する。
【0057】
そして、この絶縁板45の手前に図5(g)に示すように、中間電位接続端子板46を垂直に配置する。この接続端子板46のここには図示されない端子接続部46aの嵌合孔46eにモジュール30の中間電位接続端子30Mを挿入、嵌合し、接続端子板46と接続端子30Mとを適宜の手段より電気的および機械的に結合し、接続端子板46を固定する。接続端子板46の上端部の接続端子部46bは、各絶縁板の凹部を通して右側(後端側)に張り出させる。
【0058】
次いで、図5(h)に示すように、接続端子板46の手前に絶縁板47を垂直に配置する。これに引き続き、図5(i)示すように高電位接続端子板48を垂直に配置する。この接続端子板48の下端の端子接続部48aの嵌合孔48eにモジュール20の高電位接続端子20Pを挿入、嵌合し、接続端子板48と接続端子とを電気的および機械的に結合して、接続端子板48を固定する。
【0059】
そして、図5(j)に示すように、接続端子板48の手前に絶縁板49を垂直に配置するとともにゲート回路板50を水平に配置する。ゲート回路板50の嵌合孔50eにそれぞれ、モジュール20のゲート接続端子20G4、20G5およびモジュール30のゲート接続端子30G12、30G13を挿入、嵌合し、ゲート回路板50とゲート端子とを電気的、機械的に結合し、固定する。
【0060】
さらに、中間電位接続端子板46の外部接続端子部46b上に補助端子板46sを載置し、電気、機械的に結合して、ねじ接続端子部が左右に張り出すようにする。
【0061】
これにより、モジュールと接続端子板組体とを結合したモジュール組体の組み立てが完了する。
【0062】
このように構成したモジュールユニットは、図6に示すように、冷却器70に取付けて使用する。この場合は、出力端子板41に設けられた取付けねじ41cを絶縁材で構成したスペーサ41dを介して、冷却器70にねじ込み固定する。また、図6には図示されないがモジュール20、30の両端の取付孔20e、30eに取付けねじ40cを挿通して、冷却器70にねじ込んで、モジュールを冷却器70に取付け、固定する。
【0063】
さらに、直流電源を分割するためのコンデンサ60をモジュールユニットに結合する場合は、図7示すように、ユニット上の接続端子板組体40の上端に形成された接続端子部を利用して結合する。このとき中間電位接続端子板46のねじ接続端子部46bには補助端子46を結合することにより、この補助端子46sを、低電位接続端板44の接続端子部44bと高電位接続端子板48の接続端子部48bのそれぞれと対向させる。この対向した端子46sと端子44bにそれぞれコンデンサ60-1の端子61-1と、62-1をねじ結合する。そして端子46sと端子48bにそれぞれコンデンサ60-2の端子61-2と、62-2をねじ結合する。
【0064】
図7(a)は、コンデンサの端子と接続端子板組体40の接続端子との結合状態を見やすくするために、コンデンサ60-1、60-2を仮想的に示している。
【0065】
側面の構成を示す図7(b)から明らかであるが、2個のコンデンサ60-1、60-2は、モジュール20、30の上に垂直に結合された接続端子板組体40の上部で支持される。
【0066】
なお、この発明における接続端子板組体40は、予め、低電位接続端子板44、中間電位接続端子板46、および高電位接続端子板48の間にそれぞれ絶縁板45、47を挿入して相互に重ね合わせて接着して、ラミネート構造とし、さらに、その両外側にそれぞれ絶縁板43、49貼り付けて一体的に構成し、これを並列配置されたモジュール20、30に結合するようにすることもできる。
【実施例2】
【0067】
図8にこの発明の第2の実施例を示す。この実施例は、上下アームを収容するモジュール20と中間アームを収容するモジュール30を2組並列接続して構成した例である。図8では、ラミネート構造の接続端子板組体40Aから絶縁板を省いて、接続端子板組体の構成を簡素化して示している。
【0068】
図8に示すように2組の上下アームを収容した第1モジュール20‐1、20‐2と、中間アームを収容した第2モジュール30‐1、30‐2は、第1モジュールと第2モジュールとを交互に平行に配列している。
【0069】
この2組の平行に配置されたモジュールに共通に接続端子板44A、46Aおよび48Aを重ねあわせて構成した接続端子板組体40Aと、ゲート回路板50Aとが設けられており、これらは、2組のモジュール20‐1、30‐1および20‐2、30‐2に跨って配置される。
【0070】
高電位接続端子板48Aには、上下アームを収容した第1モジュール20‐1および20‐2の高電位接続端子に接続するために端子接続部が2個(48a‐1、48a‐2)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端子部が2個(48b‐1、48b‐2)設けられている。
【0071】
低電位接続端子板44Aには、上下アームを収容した第1モジュール20‐1および20‐2の低電位接続端子に接続するために端子接続部が2個(不図示)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端子部が2個(44b‐1、44b‐2)設けられている。
【0072】
中間電位接続端子板46Aには、中間アームを収容した第2モジュール30‐1および30‐2の中間電位接続端子に接続するために端子接続部が2個(46a‐1、46a‐2)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端端子が2個(46b‐1、46b‐2)設けられている。
【0073】
コンデンサは、ここには図示していないが、各接続端子板の上部の外部接続端子部48b‐1と46b‐1との間、44b‐1と46b‐1との間、48b‐2と46b‐2との間および44b‐2と46b‐2との間にそれぞれ接続して、モジュールの上部に配置する。
【0074】
また各接続端子板の端子接続部と外部接続端子部は、各組のモジュールごとに接続端子板の対角となる位置に設けられている。例えば、接続端子板48Aにおいては、端子接続部48a‐1は、モジュール20‐1の直上の下端に設けられ、外部接続端子部48b‐1は、モジュール20‐1と対となるモジュール30‐1の直上の上端に設けられる。そして、もう一つの端子接続部48a‐2は、もう一方の組のモジュール20‐2の直上の下端に設けられ、外部接続端子部48b‐2は、モジュール20‐2と対となるモジュール30‐2の直上の上端に設けられるのである。
【0075】
これにより、この実施例2においても、各接続端子板相互間に対向して流れる電流の磁束の打ち消し合い作用により、各接続端子板の配線インダクタンスを軽減できる。そして、各接続端子板の端子接続部とねじ接続端子部とが各端子板の対角となる位置に設けられているため、第1の実施例と同様に各接続端子板の配線インダクタンスをより小さく抑えることができる。
【実施例3】
【0076】
図9にこの発明の第3の実施例を示す。この実施例は、3組の上下アームを収容するモジュールと中間アームを収容るモジュールを並列接続して構成した例である。図9は、実施例2の場合と同様に、ラミネート構造の接続端子板組体40Bから絶縁板を省いて、接続端子板組体の構成を簡素化して示している。
【0077】
図9に示すように3組の上下アームを収容した第1モジュール20‐1、20‐2、20‐3と、中間アームを収容した第2モジュール30‐1、30‐2、30‐3は、第1モジュールと第2モジュールが交互に平行に配列される。
【0078】
この3組の平行に配置されたモジュールに共通に接続端子板44B、46Bおよび48Bを重ねあわせて構成した接続端子板組体40Bと、ゲート回路板50Bとが設けられており、これらは、6個のモジュール20‐1、30‐1、20‐2、30−2、20−3および30‐3に跨って配置される。
【0079】
高電位接続端子板48Bには、上下アームを収容した第1モジュール20‐1、20‐2および20‐3の高電位接続端子に接続するための端子接続部が3個(48a‐1、48a‐2、48a‐3)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端子部が3個(48b‐1、48b‐2、48b‐3)設けられている。
【0080】
低電位接続端子板44Bには、上下アームを収容した第1モジュール20‐1、20‐2および20‐3の低電位接続端子に接続するための端子接続部が3個(不図示)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端子部が3個(44b‐1、44b‐2、44b‐3)設けられている。
【0081】
中間電位接続端子板46Bには、中間アームを収容した第2モジュール30‐1、30‐2および30‐3の中間電位接続端子に接続するための端子接続部が3個(46a‐1、46a‐2、46a‐3)設けられ、またコンデンサ等を接続するための外部接続端子部が3個(46b‐1、46b‐2、46b‐3)設けられている。
【0082】
コンデンサは、ここには図示していないが、各接続端子板の上部の外部接続用のねじ接続端子部48b‐1と46b‐1との間、44b‐1と46b‐1との間、48b‐2と46b‐2との間、44b‐2と46b‐2との間、48b‐3と46b‐3との間、および44b‐3と46b‐3との間にそれぞれ接続し、モジュールの上部に配置する。
【0083】
また各接続端子板の端子接続部と外部接続端子部は、各組のモジュールごとに接続端子板の対角となる位置に設けられている。例えば、接続端子板48Bにおいては、端子接続部48a‐1は、モジュール20‐1の直上の下端に設けられ、外部接続端子部48b‐1は、モジュール20‐1と対となるモジュール30‐1の直上の上端に設けられる。そして、端子接続部48a‐2は、他の組のモジュール20‐2の直上の下端に設けられ、外部接続端子部48b‐2は、このモジュール20‐2と対となるモジュール30‐2の直上の上端に設けられる。そして、他の1つの端子接続48a‐1は、他の組のモジュール20‐3の直上の下端に設けられ、外部接続端子部48b‐1は、このモジュール20‐3と対となるモジュール30‐3の直上の上端に設けられているのである。
【0084】
これにより、この実施例3においても、各接続端子板相互間に対向して流れる電流により形成される磁界の打ち消し合い作用により、各接続端子板の配線インダクタンスを軽減することができる。そして、各接続端子板の端子接続部と外部ねじ接続端子部とが各接続端子板の対角となる位置に設けられているため、第1の実施例および第2の実施例と同様に各接続端子板の配線インダクタンスをより小さく抑えることができる。
【0085】
この発明によれば、前記のとおり3レベルインバータにおける直流電流一巡電流経路における配線インダクタンスをより小さくすることができるので、特に、上下アームを収容したモジュールに含まれる半導体スイッチを、Si−C等のワイドバンドギャップ(WBG)半導体で構成した高速の半導体スイッチを使用しても、サージ電圧を抑えることができるので、3レベルインバータの性能、安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0086】
20、20‐1、20‐2、20‐3:上下アームを収容した第1モジュール
30、30‐1、30‐2、30‐3:中間アームを収容した第2モジュール
40:接続端子板組体
41:出力接続導体となる接続端子板
41a:端子接続部
42、43、45、47、49:絶縁板
44:低電位接続導体となる接続端子板
44a、44a‐1、44a‐2、44a‐3:端子接続部
44b、44b‐1、44b‐2、44b‐3:外部接続用接続端子部
46:中間電位接続導体となる接続端子板
46a、46a‐1、46a‐2、46a‐3:端子接続部
44b、46b‐1、46b‐2、46b‐3:外部接続用接続端子部
48:高電位接続導体となる接続端子板
48a、48a‐1、48a‐2、48a‐3:端子接続部
48b、48b‐1、48b‐2、48b‐3:外部接続用接続端子部
50:ゲート回路板
70:冷却器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10