特許第6179491号(P6179491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6179491-表面実装インダクタ及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179491
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】表面実装インダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20170807BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20170807BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01F41/10 C
   H01F15/10 F
   H01F15/10 C
   H01F27/28 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-180928(P2014-180928)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-58418(P2016-58418A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】宗内 敬太
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−032050(JP,A)
【文献】 特開2013−149814(JP,A)
【文献】 特開2011−003761(JP,A)
【文献】 特開2013−211333(JP,A)
【文献】 特開2001−052937(JP,A)
【文献】 特開2010−177492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/10
H01F 27/28
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材で該コイルを封止した成形体を備えた表面実装インダクタの製造方法において、
導線を巻回して形成したコイルを成形体内に埋設する工程と、
該成形体の表面の樹脂を除去して該成形体の表面に金属磁性体粉末を露出させる工程と、
該成形体にメッキ処理を施すことにより、該成形体表面に露出させた金属磁性体粉末の表面上に、選択的にメッキを成長させて該金属磁性体粉と接合するメッキ層を形成して該コイルの引き出し端部と接続される外部端子が形成される工程を備え
コイルを内蔵した成形体に外部端子が形成されることを特徴とする表面実装インダクタの製造方法。
【請求項2】
前記成形体の前記コイルの引き出し端部が位置する部分に導電性ペーストが施された請求項に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項3】
前記コイルの引き出し端が導電性ペーストにより前記成形体表面に固定される請求項に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項4】
前記外部端子が、前記成形体の底面と該底面に隣接する側面に渡ってL字状に形成さる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表面実装インダクタの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体とを備えた表面実装インダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面実装インダクタに、図5に示す様に、導線を巻回してコイル21を形成し、このコイル21を磁性粉末と樹脂を含む封止材で形成された成形体22内に埋設し、コイル21を成形体22の表面に外部端子24に接続したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この表面実装インダクタは、導線を巻回して形成したコイル21をタブレットに載置し、コイル21の引き出し端部21bをタブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて成型金型の内壁面との間に挟まれるようにコイルとタブレットを成型金型内に配置し、この金型を用い、樹脂成形法もしくは圧粉成形法によりコイル21を内蔵する成形体22が形成され、この成形体に導電性ペーストをディップにより塗布して外部端子24が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−245473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の更なる小型化に伴い、このような構造の面実装インダクタでは上面に形成された外部電極がシールド板と接触してショートする可能性が生じる。そのため電極の構造をL字状にした面実装インダクタへの要求が高まってきた。
この様な状況の中、従来の表面実装インダクタにおいて、外部端子の構造をL字状にしようとした場合、成形体に導電性ペーストをディップにより塗布しているために外部端子をL字状に形成することが難しかった。また、従来の表面実装インダクタは、導電ペースト槽にためられた導電性ペーストに成形体を浸す形になるため、成形体の外部端子を形成する部分が浸る程度の導電性ペーストが必要となる上、品質管理上廃棄しなければならない量を含めると無駄になる導電性ペーストが多く、製造コストが上昇する原因ともなっていた。
この様な問題点を解決するために、特開2009−170488号公報に示す様に、外部端子を板状の金属フレームで形成することが行われたが、金属フレームの厚み分、全体の形状が大きくなったり、コイルや成形体の大きさが小さくなって十分な特性が得られなくなったりする上、外部端子を形成するための工数が増加するという問題があった。
また、別の解決手法として、外部端子をスパッタにより形成することが考えられるが、高価な装置が必要となるという問題があった。
【0005】
本発明は、高価な装置を用いることなく、外部端子を容易に形成することができ、低背化、特性の向上が可能な表面実装インダクタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備えた表面実装インダクタにおいて、コイルは引き出し端部の表面が成形体の表面に露出する様に埋設され、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂が除去され、金属磁性体粉と外部端子を構成するメッキ層が接合され、外部端子とコイルの引き出し端が接続される。
また、本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備えた表面実装インダクタにおいて、コイルは成形体内に埋設されて引き出し端部が成形体から引き出され、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂が除去され、金属磁性体粉と外部端子を構成するメッキ層が接合され、外部端子とコイルの引き出し端が接続される。
さらに、本発明は、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備えた表面実装インダクタの製造方法において、導線を巻回して形成したコイルを成形体内に埋設する工程と、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂を除去し、成形体にメッキ処理を施して樹脂が除去された部分において金属磁性体粉と接合するメッキ層を形成してコイルの引き出し端と接続される外部端子が形成される工程を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面実装インダクタは、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備え、コイルは引き出し端部の表面が成形体の表面に露出する様に埋設され、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂が除去され、金属磁性体粉と外部端子を構成するメッキ層が接合され、外部端子とコイルの引き出し端が接続されるので、高価な装置を用いることなく、外部端子を容易に形成することができ、低背化、特性の向上が可能となる。
また、本発明の表面実装インダクタは、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備え、コイルは成形体内に埋設されて引き出し端部が成形体から引き出され、外部端子とコイルの引き出し端が接続されるので、高価な装置を用いることなく、外部端子を容易に形成することができ、低背化、特性の向上が可能となる。
さらに、本発明の表面実装インダクタの製造方法は、導線を巻回して形成したコイルと、主に金属磁性体粉末と樹脂を含有する封止材でコイルを封止した成形体を備え、導線を巻回して形成したコイルを成形体内に埋設する工程と、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂を除去し、成形体にメッキ処理を施して樹脂が除去された部分において金属磁性体粉と接合するメッキ層を形成してコイルの引き出し端と接続される外部端子が形成される工程を備えるので、高価な装置を用いることなく、外部端子を容易に形成することができ、低背化、特性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の表面実装インダクタの成形体の斜視図である。
図2】本発明の表面実装インダクタの成形体を加工した状態の成形体の斜視図である。
図3】本発明の表面実装インダクタの斜視図である。
図4】本発明の表面実装インダクタの外部端子を説明するための模式図である。
図5】従来の表面実装インダクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の表面実装インダクタによれば、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂が除去されるので、成形体を構成する金属磁性粉末が露出し、その周囲に比較してこの部分にメッキが成長しやすくなる。この時、成形体の表面の樹脂が除去される部分の形状を調整することにより、外部端子の形状を容易に変更することが可能となる。また、外部端子の厚みを20μm以下に薄くすることができ、その分成形体の大きさを大きくしたり、全体の形状を小さくしたりすることができる。外部端子を薄くできた分成形体の大きさを大きくした場合、導線の太さを太くしたり、コイルの大きさを大きくしたりできる。
また、本発明の表面実装インダクタの製造方法によれば、成形体の表面の外部端子が形成される部分の樹脂が除去されるので、成形体を構成する金属磁性粉末が露出し、その周囲に比較してこの部分にメッキが成長しやすくなる。この時、成形体の表面の樹脂が除去される部分の形状を調整することにより、外部端子の形状を容易に変更することが可能となる。また、外部端子の厚みを20μm以下に薄くすることができ、その分成形体の大きさを大きくしたり、全体の形状を小さくしたりすることができる。外部端子を薄くできた分成形体の大きさを大きくした場合、導線の太さを太くしたり、コイルの大きさを大きくしたりできる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の表面実装インダクタ及びその製造方法の実施例を図1乃至図4を参照して説明する。
図1は本発明の面実装インダクタの成形体の斜視図である。
図1において、11はコイル、12は成形体である。
コイル11は、導線をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部11aと、巻回部11aから引き出された引き出し端部11bを備えた空芯コイルが形成される。導線は断面が平角状の平角線が用いられる。引き出し端部11bは、導線の両端部が巻回部11aから巻回部を挟んで対向する様に引き出される。
成形体12は、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いてコイル11を内包する様に形成される。封止材としては、磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合したものが用いられる。この成形体12の長さ方向の対向する側面には、コイル11の引き出し端部11bの表面が露出する。
そして、この成形体12の長さ方向の対向する側面と底面に外部端子14が形成され、コイル11の引き出し端部11bと外部端子14が接続される。外部端子14は、NiやSn等の金属材料を用いたメッキ層によりL字状に形成される。
【0011】
この様な表面実装インダクタは以下の様にして製造される。まず、断面が平角状の絶縁被覆が施された導線をその両端が外周に位置する様に渦巻き状に2段の外外巻きに巻回して巻回部11aを形成した後、導線の両端を巻回部の外周から引き出して引き出し端部11bを形成して空芯コイル11が形成される。本実施例で用いる導線は絶縁被膜としてイミド変成ポリウレタン層を有するものを用いた。絶縁被膜は、ポリアミド系やポリエステル系などでもよく、耐熱温度が高いものの方が好ましい。また、本実施例では断面が平角形状のものを用いるが、丸線や断面が多角形状のものを用いてもよい。
次に、磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合して粉末状に造粒した封止材を用いて、圧縮成形法にて、図1に示すような空芯コイル11が埋設された成形体12を成形する。このとき、空芯コイル11の引き出し端部11bは、成形体12の長さ方向の対向する側面の外部端子が形成される位置にその表面が露出するようにする。本実施例では圧縮成形法で成形体を作成したが、圧粉成形法などの成形方法で成形体を作成してもよい。
続いて、空芯コイル11の引き出し端部11bの表面の被膜を機械剥離によって除去した後、図2に示す様に、成形体12の長さ方向の対向する側面と底面の外部端子が形成される部分13をレーザー照射、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去する。これにより、成形体12を構成する金属磁性粉末の表面や切断面が露出する。
さらに、この成形体12に導電材料でメッキ処理を施して、図3に示す様に成形体12の長さ方向の対向する側面と底面に金属磁性粉末と接合するメッキ層を形成して外部端子14が形成される。導電材料としては、例えばNiやSnを含有するもの、又は、その両方を含有するものが用いられる。外部端子14は成形体12の表面に露出していた空芯コイル11の引き出し端部11bと接続される。
【0012】
この様に形成された本発明の表面実装インダクタは、成形体が樹脂と金属磁性粉末を含む封止材を用いて形成されるので、図4(A)に示す様に、その表面は樹脂12aに覆われ、内部に金属磁性粉末12bが混在した状態となっている。ここで、成形体の外部端子が形成される部分をレーザー照射、ブラスト処理、研磨等を用いてその表面に存在する樹脂成分等を除去することにより、図4(B)に示す様に、成形体の外部電極を形成する部分に、成形体の表面に金属磁性粉末12bが露出する。この状態で成形体に導電材料でメッキ処理を施すことにより、図4(C)に示す様に、成形体の外部端子が形成される部分にメッキ層14が形成される。これは金属磁性粉末12bが金属性を有するために、成形体にメッキ処理を施すことにより、成形体の表面の金属磁性粉末が露出した部分に集中的に通電されてメッキが成長し、成形体の表面の金属磁性粉末を露出させた部分にメッキ層14が形成されることになる。
従って、本発明の表面実装インダクタは、成形体の表面の樹脂が除去された部分に、金属磁性粉末と接合するメッキ層が形成されて、成形体に空芯コイルの引き出し端部と接続される外部端子が形成される。
【0013】
以上、本発明の表面実装インダクタ及びその製造方法の実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、実施例では封止材として磁性材料に鉄系金属磁性粉末、樹脂にエポキシ樹脂を用いたが、磁性材料として他の組成の金属磁性粉末、その表面がガラス等の絶縁体で被覆された金属磁性粉末、表面を改質した金属磁性粉末を用いても良い。また、樹脂として、ポリイミド樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を用いても良い。さらに、外部端子は、成形体にNiやSn以外の導電材料でメッキ処理を施して、金属磁性粉末と接合するメッキ層を形成することにより形成しても良い。またさらに、成形体の外部端子が形成される部分の空芯コイルの引き出し端部が露出した位置に、Ag、Cu等の導体を含有する導電性ペースト等で構成される接合材を空芯コイルの引き出し端部を覆うように塗布した後、成形体にメッキ処理を施しても良い。この場合、この接合材によってコイルの引き出し端と外部端子の固着強度を向上させることができる。
また、実施例ではコイルの引き出し端部の表面が成形体の表面に露出する様にコイルを成形体内に埋設する例を示したが、コイルの引き出し端部が成形体から引き出される様にコイルを成形体内に埋設し、コイルの引き出し端部の表面の被膜を除去すると共に、成形体の外部端子が形成される部分の樹脂成分等を除去し、引き出し端部を外部端子が形成される部分に位置する様に加工し、この状態で成形体にメッキ処理を施して外部端子を形成しても良い。さらに、この場合において、外部端子が形成される部分に位置させたコイルの引き出し端部を覆う様に、Ag、Cu等の導体を含有する導電性ペースト等で構成される接合材を塗布して、コイルの引き出し端部を成形体に固定した状態で、成形体にメッキ処理を施して外部端子を形成しても良い。
【符号の説明】
【0014】
11 コイル
12 成形体
図1
図2
図3
図4
図5