特許第6179559号(P6179559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179559ストラットの引き起こし方法、およびクレーン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179559
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ストラットの引き起こし方法、およびクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20170807BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B66C23/26 C
   B66C23/42 B
【請求項の数】15
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-124146(P2015-124146)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-7787(P2017-7787A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖生
(72)【発明者】
【氏名】高岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲田 景子
(72)【発明者】
【氏名】黒津 仁史
(72)【発明者】
【氏名】宮 英司
(72)【発明者】
【氏名】村田 朝彦
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5693031(JP,B2)
【文献】 特許第2726239(JP,B2)
【文献】 特開2004−075294(JP,A)
【文献】 特許第5295417(JP,B1)
【文献】 特開2011−190084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して起伏可能に取り付けられたジブと、前記ブームに対して起伏可能に取り付けられた基端部および前記基端部の反対側に位置する先端部を有しており前記ジブを支持するためのストラットと、を備えるクレーンの当該ストラットを引き起こすための方法であって、
前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットを地上に倒した状態で、前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に引き起こしロープを固定する固定工程と、
前記ストラットのうち当該ストラットの重心よりも前記先端部側に位置する引き起こし部の鉛直方向の下側に前記引き起こしロープを配置する配置工程と、
前記固定工程および前記配置工程の後に、前記ストラットの長手方向において前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側において前記引き起こしロープを補助クレーンによって鉛直方向の上側へ吊り上げ、これにより、前記引き起こしロープを前記引き起こし部に接触させつつ前記ストラットを所定の位置まで引き起こす吊り上げ工程と、を備えるストラットの引き起こし方法。
【請求項2】
前記引き起こし部は、前記ストラットを地上に倒した状態で鉛直方向の下側から前記引き起こしロープを接触させることが可能な本体部と、前記本体部に接触した状態で吊り上げられる前記引き起こしロープが前記ストラットの回動軸に平行な平行方向に移動することにより前記本体部から逸脱しないように前記平行方向における前記引き起こしロープの移動を制限するための制限部と、を有しており、
前記配置工程において、前記引き起こしロープを前記本体部の鉛直方向の下側に配置するとともに、前記引き起こしロープを前記制限部によって前記平行方向における移動が制限されるように配置する、請求項1に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項3】
前記ストラットは、当該ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記引き起こしロープに接触することにより前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するための倒れ止め部を有しており、
前記配置工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向において前記倒れ止め部が前記引き起こしロープに接触するように当該引き起こしロープを前記引き起こし部と前記倒れ止め部との間に配置する、請求項1に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項4】
前記引き起こし部と前記倒れ止め部とは、当該引き起こし部および当該倒れ止め部によって閉じられた内側空間が形成されるように配置されており、
前記配置工程において、前記引き起こしロープを前記引き起こし部の鉛直方向の下側に配置するとともに前記内側空間に配置する、請求項3に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項5】
前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部は、前記内側空間と前記引き起こし部および前記倒れ止め部を挟んで前記内側空間の反対側に位置する外側空間とを連通する連通路を開閉するよう動かすことが可能なように構成されており、
前記配置工程において、前記連通路を開くように前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部を動かし、前記連通路を通じて前記外側空間から前記内側空間に引き起こしロープを挿入した後、前記連通路を閉じるように前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部を動かす、請求項4に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項6】
前記固定工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記引き起こし部に接触することにより前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するための倒れ止めロープを前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に固定し、
前記配置工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向において前記引き起こし部が前記倒れ止めロープに接触するように当該倒れ止めロープを前記引き起こし部の鉛直方向の上側に配置し、
前記吊り上げ工程において、前記補助クレーンによって前記引き起こしロープおよび前記倒れ止めロープを吊り上げる、請求項1に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項7】
前記吊り上げ工程の後に地上において前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位から前記引き起こしロープを取り外す取り外し工程と、をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項8】
前記下げ工程の前または後において、前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に補助ロープの第1端部を固定する第1端部固定工程と、
前記吊り上げ工程の後に、地上において前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位から前記引き起こしロープを取り外し、当該取り外した引き起こしロープを前記補助ロープの前記第1端部とは反対側の第2端部に固定する第2端部固定工程と、
前記第2端部固定工程の後に、前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側に位置する前記引き起こしロープが当該引き起こし部を跨いで地上付近に至るように当該引き起こしロープを吊った前記補助クレーンを地上に向けて下げ、これにより前記引き起こしロープに固定された前記補助ロープの前記第2端部を前記先端部側へと吊り上げる下げ工程と、
前記下げ工程の後に、地上において前記引き起こしロープを前記ストラットのうち前記基端部の近傍の部位に固定し、これにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させる保持工程と、をさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項9】
前記引き起こしロープに補助ロープの第1端部を固定する第1端部固定工程と、
前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に前記補助ロープの前記第1端部とは反対側の第2端部を固定することにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットに保持させる保持工程と、をさらに備え、
前記固定工程において、前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に引き起こしロープを固定し、
前記配置工程の後に、前記第1端部固定工程において、前記ストラットの長手方向において前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側に位置する前記引き起こしロープに前記補助ロープの前記第1端部を固定し、
前記第1端部固定工程の後に、前記吊り上げ工程において、前記補助ロープが前記引き起こし部を挟んで前記引き起こしロープの反対側に配置されるとともに当該補助ロープの前記第2端部が地上付近まで吊り下がるように、前記補助クレーンによって前記ストラットを所定の位置まで引き起こし、
前記吊り上げ工程の後に、前記保持工程において、地上において前記補助ロープの前記第2端部を前記ストラットのうち前記基端部の近傍の部位に固定し、これにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のストラットの引き起こし方法。
【請求項10】
機体と、
前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、
前記ブームに対して起伏可能に取り付けられたジブと、
前記ジブの後方において前記ブームに対して起伏可能に取り付けられており当該ジブを支持するストラットと、を備えたクレーンであって、
前記ストラットは、前記ブームに取り付けられており当該ストラットの回動中心である基端部および前記基端部の反対側に位置する先端部を有するストラット本体と、前記ストラット本体から当該ストラット本体の外側に向けて前記ストラットの回動軸に平行な平行方向に延びる引き起こし部と、を有しており、
前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラット本体のいずれか一つは、前記基端部の近傍に位置するとともに引き起こしロープを固定可能な固定部を有しており、
前記引き起こし部は、前記固定部の固定される前記引き起こしロープを鉛直方向の下側から接触させつつ吊り上げることにより前記ストラットを所定の位置まで引き起こすことが可能なように前記ストラットの重心よりも前記先端部側に配置される、クレーン。
【請求項11】
前記引き起こし部は、前記ストラットを地上に倒した状態で鉛直方向の下側から前記引き起こしロープを接触可能に構成された本体部と、前記本体部に接触した状態で吊り上げられる前記引き起こしロープが前記平行方向における前記ストラット本体の反対側に移動することにより前記本体部から逸脱しないように前記平行方向における前記引き起こしロープの移動を制限するために前記平行方向における前記ストラット本体の反対側から前記引き起こしロープに接触可能に構成された制限部と、を有する、請求項10に記載のクレーン。
【請求項12】
前記ストラットは、前記ストラット本体から当該ストラット本体の外側に向けて前記ストラットの回動軸と平行な平行方向に延びる倒れ止め部を有しており、
前記倒れ止め部は、前記引き起こし部と当該倒れ止め部との間に配置された状態で吊り上げられた引き起こしロープが、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向に接触することにより、前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するように、前記平行方向に直交する方向において前記引き起こし部と間隔をあけて並ぶように設けられている、請求項10に記載のクレーン。
【請求項13】
前記ストラットは、前記引き起こし部と前記倒れ止め部とを繋ぐように配置された連結部を有するとともに、前記ストラット本体、前記引き起こし部、前記倒れ止め部、および前記連結部によって閉じられるとともに前記引き起こしロープを挿入可能な内側空間を形成するように構成されている、請求項12に記載のクレーン。
【請求項14】
前記連結部または前記倒れ止め部は、前記引き起こし部、前記倒れ止め部、および前記連結部を挟んで前記内側空間の反対側に位置する外側空間と前記内側空間とを連通する連通路と、当該連通路を通じて前記外側空間から前記内側空間へ前記引き起こしロープを挿入するために当該連通路を開閉するよう動くことが可能な可動部と、を含む、請求項13に記載のクレーン。
【請求項15】
前記連通路および前記可動部は、前記倒れ止め部に含まれており、
前記平行方向における前記連通路の幅は、前記引き起こし部と前記倒れ止め部とが並ぶ方向における前記内側空間の幅よりも大きい、請求項14に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンが備えるストラットの引き起こし方法、およびクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体と、当該機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、当該ブームの先端に対して起伏可能に取り付けられたジブと、前記ジブの先端から吊り下げられたフックと、ストラットと、を備えたクレーンが知られている。このようなクレーンでは、例えば、機体に搭乗した操作者がブームおよびジブを起伏させつつ、フックに吊り下げられた吊り荷を所定の位置へ移動させることができる。ここで、前記ストラットは、ジブの後方においてブームの先端に起伏可能に取り付けられている。ストラットの先端は、ジブの先端に繋がっており、ジブの起伏に連動してストラットが起伏することにより当該ジブがストラットに支持される。
【0003】
特許文献1には、ストラットを地上に倒した状態から当該ストラットを所定の位置まで引き起こす方法が記載されている。特許文献1のストラットの引き起こし方法では、ストラットの先端に引き起こしロープを取り付け、当該引き起こしロープを補助クレーンによって吊り上げることにより、当該ストラットを所定の位置まで引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−75294号公報(特に、図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のストラットの引き起こし方法によって当該ストラットを引き起こす場合、揚程の長い高性能の補助クレーンを準備する必要がある。具体的には、以下のとおりである。
【0006】
特許文献1のストラットの引き起こし方法によって当該ストラットを所定の位置まで引き起こした後、引き起こしロープは、例えば、建設機械の稼働時において障害とならないように、補助クレーンから取り外した上でストラットに巻き付けられる。このようなストラットの引き起こし後の引き起こしロープの後処理は、地上における作業者によって行われる。このため、引き起こしロープは、当該引き起こしロープを補助クレーンから取り外した際にストラットの先端から地上まで垂れ下がる程度の長さに設定される。すなわち、特許文献1のストラットの引き起こし方法によって当該ストラットを引き起こす場合、補助クレーンの揚程は、ストラットが所定の位置まで引き起こされた際における地上からストラットの先端までの高さの2倍程度である必要がある。そのため、特許文献1のストラットの引き起こし方法によって当該ストラットを引き起こす場合、揚程の長い高性能の補助クレーンを準備する必要がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要とされる補助クレーンの揚程を短く抑えることが可能なストラットの引き起こし方法、およびクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るストラットの引き起こし方法は、機体と、前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して起伏可能に取り付けられたジブと、前記ブームに対して起伏可能に取り付けられた基端部および前記基端部の反対側に位置する先端部を有しており前記ジブを支持するためのストラットと、を備えるクレーンの当該ストラットを引き起こすための方法であって、前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットを地上に倒した状態で、前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に引き起こしロープを固定する固定工程と、前記ストラットのうち当該ストラットの重心よりも前記先端部側に位置する引き起こし部の鉛直方向の下側に前記引き起こしロープを配置する配置工程と、前記固定工程および前記配置工程の後に、前記ストラットの長手方向において前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側において前記引き起こしロープを補助クレーンによって鉛直方向の上側へ吊り上げ、これにより、前記引き起こしロープを前記引き起こし部に接触させつつ前記ストラットを所定の位置まで引き起こす吊り上げ工程と、を備える。
【0009】
上記のストラットの引き起こし方法では、ストラットの基端部の近傍の部位に引き起こしロープを固定し、当該引き起こしロープをストラットの重心よりも先端部側に位置する引き起こし部に接触させつつ補助クレーンによって吊り上げることによりストラットを所定の位置まで引き起こすため、当該補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。
【0010】
従来のストラットの引き起こし方法では、ストラットの先端部に固定した引き起こしロープを補助クレーンによって吊り上げることにより当該ストラットを所定の位置まで引き起こし、引き起こしロープを補助クレーンから取り外した後に、地上において引き起こしロープをストラットに固定するようにして後処理する。このため、先端部に固定される引き起こしロープは、ストラットが所定の位置まで引き起こされた状態において先端部から地上付近まで垂れ下がる程度の長さに設定する必要がある。そのため、補助クレーンには、地上から先端部までの高さの2倍程度の揚程が求められる。
【0011】
これに対して、上記のストラットの引き起こし方法では、引き起こしロープの固定部位は、ストラットが所定の位置まで引き起こされた状態において地上付近に位置する基端部の近傍の部位である。このため、引き起こしロープが先端部に固定される従来のストラットの引き起こし方法のように、地上にて引き起こしロープを後処理するために当該引き起こしロープの長さを調整する必要がない。そのため、上記のストラットの引き起こし方法では、引き起こしロープの長さは、基端部の近傍に固定されるとともに前記ストラットの長手方向において引き起こし部を挟んで基端部の反対側において補助クレーンに吊り上げられる程度の長さであればよく、これにより補助クレーンの揚程を地上から引き起こし部までの高さ程度に抑えることができる。
【0012】
前記引き起こし部は、前記ストラットを地上に倒した状態で鉛直方向の下側から前記引き起こしロープを接触させることが可能な本体部と、前記本体部に接触した状態で吊り上げられる前記引き起こしロープが前記ストラットの回動軸に平行な平行方向に移動することにより前記本体部から逸脱しないように前記平行方向における前記引き起こしロープの移動を制限するための制限部と、を有しており、前記配置工程において、前記引き起こしロープを前記本体部の鉛直方向の下側に配置するとともに、前記引き起こしロープを前記制限部によって前記平行方向における移動が制限されるように配置することが好ましい。
【0013】
上記のストラットの引き起こし方法では、引き起こし部の制限部によって引き起こしロープの回転軸方向における移動が制限されるように当該引き起こしロープを配置し、この状態で引き起こしロープを吊り上げることによりストラットを所定の位置まで引き起こすため、当該吊り上げに際して引き起こしロープがストラットの回動軸に平行な平行方向に移動することにより本体部から逸脱することを防止でき、これによりストラットを安全に引き起こすことができる。
【0014】
前記ストラットは、当該ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記引き起こしロープに接触することにより前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するための倒れ止め部を有しており、前記配置工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向において前記倒れ止め部が前記引き起こしロープに接触するように当該引き起こしロープを前記引き起こし部と前記倒れ止め部との間に配置することが好ましい。
【0015】
上記のストラットの引き起こし方法では、ストラットを地上に倒した状態で引き起こしロープを吊り上げることにより、ストラットの回動方向の反対方向において引き起こし部が引き起こしロープに接触しつつ当該ストラットが引き起こされ、当該ストラットが90°を超えて引き起こされたときに、ストラットの回動方向において倒れ止め部が引き起こしロープに接触し、これによりストラットが当該回動方向に沿って落下することを防止できるため、ストラットを安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0016】
前記引き起こし部と前記倒れ止め部とは、当該引き起こし部および当該倒れ止め部によって閉じられた内側空間が形成されるように配置されており、前記配置工程において、前記引き起こしロープを前記引き起こし部の鉛直方向の下側に配置するとともに前記内側空間に配置することが好ましい。
【0017】
上記のストラットの引き起こし方法では、引き起こしロープを引き起こし部および倒れ止め部によって閉じられた内側空間に配置するため、引き起こしロープを吊り上げるに際して当該引き起こしロープが如何なる方向に動いたとしても、前記内側空間から引き起こしロープが抜け出ることがなく、これによりストラットを安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0018】
前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部は、前記内側空間と前記引き起こし部および前記倒れ止め部を挟んで前記内側空間の反対側に位置する外側空間とを連通する連通路を開閉するよう動かすことが可能なように構成されており、前記配置工程において、前記連通路を開くように前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部を動かし、前記連通路を通じて前記外側空間から前記内側空間に引き起こしロープを挿入した後、前記連通路を閉じるように前記引き起こし部または前記倒れ止め部の少なくとも一部を動かすことが好ましい。
【0019】
上記のストラットの引き起こし方法では、連通路を開くように引き起こし部または倒れ止め部の少なくとも一部を動かすことにより当該連通路を通じて外側空間から内側空間へ引き起こしロープを挿入できるため、当該内側空間内に引き起こしロープを容易に配置できるとともに、内側空間に引き起こしロープを挿入した後に連通路を閉じるように引き起こし部または倒れ止め部の少なくとも一部を動かすことにより、引き起こしロープが引き起こし部および倒れ止め部に取り囲まれた状態で当該引き起こしロープを吊り上げることができるため、ストラットを安全に所定の位置にまで引き起こすことができる。
【0020】
前記固定工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記引き起こし部に接触することにより前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するための倒れ止めロープを前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に固定し、前記配置工程において、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向において前記引き起こし部が前記倒れ止めロープに接触するように当該倒れ止めロープを前記引き起こし部の鉛直方向の上側に配置し、前記吊り上げ工程において、前記補助クレーンによって前記引き起こしロープおよび前記倒れ止めロープを吊り上げることが好ましい。
【0021】
上記のストラットの引き起こし方法では、ストラットを地上に倒した状態で引き起こしロープを吊り上げることにより、ストラットの回動方向の反対方向において引き起こし部が引き起こしロープに接触しつつ当該ストラットが引き起こされ、当該ストラットが90°を超えて引き起こされたときに、ストラットの回動方向において引き起こし部が倒れ止めロープに接触し、これによりストラットが当該回動方向に沿って落下することを防止できるため、ストラットを安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0022】
上記のストラットの引き起こし方法は、前記吊り上げ工程の後に地上において前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位から前記引き起こしロープを取り外す取り外し工程と、をさらに備えることが好ましい。
【0023】
上記のストラットの引き起こし方法では、地上に倒した状態のストラットを引き起こすに際して、当該ストラットの回動中心となる基端部の近傍の部位にストラットを引き起こすための引き起こしロープを固定するため、ストラットを所定の位置まで引き起こした後に地上において基端部の近傍の部位から引き起こしロープを容易に取り外すことができる。
【0024】
前記下げ工程の前または後において、前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に補助ロープの第1端部を固定する第1端部固定工程と、前記吊り上げ工程の後に、地上において前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位から前記引き起こしロープを取り外し、当該取り外した引き起こしロープを前記補助ロープの前記第1端部とは反対側の第2端部に固定する第2端部固定工程と、前記第2端部固定工程の後に、前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側に位置する前記引き起こしロープが当該引き起こし部を跨いで地上付近に至るように当該引き起こしロープを吊った前記補助クレーンを地上に向けて下げ、これにより前記引き起こしロープに固定された前記補助ロープの前記第2端部を前記先端部側へと吊り上げる下げ工程と、前記下げ工程の後に、地上において前記引き起こしロープを前記ストラットのうち前記基端部の近傍の部位に固定し、これにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させる保持工程と、をさらに備えることが好ましい。
【0025】
上記のストラットの引き起こし方法では、補助ロープを用いることにより、地上における作業によって引き起こしロープおよび補助ロープをストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させることができる。このため、クレーンの稼働時において引き起こしロープおよび補助ロープが邪魔にならないように当該引き起こしロープおよび補助ロープをストラットに取り付けることができるとともに、補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。具体的には、以下のとおりである。
【0026】
上記のストラットの引き起こし方法では、ストラットを所定の位置まで引き起こした後に、ストラットのうち基端部の近傍に位置する部位に補助ロープの第1端部を固定するとともに、当該基端部の近傍に位置する部位から引き起こしロープを取り外し、これを補助ロープの第2端部に固定する。これにより、ストラットのうち基端部の近傍に位置する部位と内側空間との間において引き起こしロープと補助ロープとを繋いだロープ接続ユニットに撓みが生じ、引き起こし部を跨いで地上付近へと至るように当該ロープ接続ユニットの引き起こしロープを引き下ろすことが可能になる。
【0027】
その後、引き起こしロープを吊った補助クレーンを地上に向けて下げ、これにより地上付近まで引き下ろされた起こしロープを当該地上においてストラットのうち基端部の近傍の部位に固定する。これにより、引き起こしロープと補助ロープとを繋いだロープ接続ユニットは、ストラットのうち基端部の近傍の部位から引き起こし部跨いで折り返し、当該部位に戻るようにしてストラットに固定される。このため、引き起こしロープと補助ロープとを繋いだロープ接続ユニットは、ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持される。
【0028】
このように、上記のストラットの引き起こし方法では、地上における作業によって引き起こしロープおよび補助ロープをストラットの長手方向に延びる姿勢でストラットに保持させることができ、これによりクレーンの稼働時において引き起こしロープおよび補助ロープが邪魔になることを抑止できる。しかも、引き起こしロープおよび補助ロープを繋いだロープ接続ユニットをストラットに保持させるに際して、当該ロープ接続ユニットを吊り上げるように補助クレーンを上方へと引き上げる必要がないため、補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。
【0029】
前記引き起こしロープに補助ロープの第1端部を固定する第1端部固定工程と、前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に前記補助ロープの前記第1端部とは反対側の第2端部を固定することにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットに保持させる保持工程と、をさらに備え、前記固定工程において、前記ストラットのうち前記基端部の近傍に位置する部位に引き起こしロープを固定し、前記配置工程の後に、前記第1端部固定工程において、前記ストラットの長手方向において前記引き起こし部を挟んで前記基端部の反対側に位置する前記引き起こしロープに前記補助ロープの前記第1端部を固定し、前記第1端部固定工程の後に、前記吊り上げ工程において、前記補助ロープが前記引き起こし部を挟んで前記引き起こしロープの反対側に配置されるとともに当該補助ロープの前記第2端部が地上付近まで吊り下がるように、前記補助クレーンによって前記ストラットを所定の位置まで引き起こし、前記吊り上げ工程の後に、前記保持工程において、地上において前記補助ロープの前記第2端部を前記ストラットのうち前記基端部の近傍の部位に固定し、これにより前記引き起こしロープおよび前記補助ロープを前記ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させることが好ましい。
【0030】
上記のストラットの引き起こし方法では、補助ロープを用いることにより、地上における作業によって引き起こしロープおよび補助ロープをストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持させることができる。このため、クレーンの稼働時において引き起こしロープおよび補助ロープが邪魔にならないように当該引き起こしロープおよび補助ロープをストラットに取り付けることができるとともに、補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。具体的には、以下のとおりである。
【0031】
上記のストラットの引き起こし方法では、補助クレーンによって引き起こしロープを吊り上げる前に、前記ストラットの長手方向において引き起こし部を挟んで基端部の反対側において当該引き起こしロープに補助ロープの第1端部を固定する。これにより、引き起こしロープを吊り上げることによりストラットが所定の位置まで引き起こされると、補助ロープは、引き起こしロープとの間に引き起こし部を挟むように、地上に向かって吊り下がる。
【0032】
そして、地上付近まで吊り下げた補助ロープの第2端部を、当該地上においてストラットのうち基端部の近傍の部位に固定する。これにより、引き起こしロープと補助ロープとを繋いだロープ接続ユニットは、ストラットのうち基端部の近傍の部位から引き起こし部および倒れ止め部を跨いで当該部位に戻るようにして、ストラットに固定される。このため、引き起こしロープと補助ロープとを繋いだロープ接続ユニットは、ストラットの長手方向に延びる姿勢で当該ストラットに保持される。
【0033】
このように、上記のストラットの引き起こし方法では、地上における作業によって引き起こしロープおよび補助ロープをストラットの長手方向に延びる姿勢でストラットに保持させることができ、これによりクレーンの稼働時において引き起こしロープおよび補助ロープが邪魔になることを抑止できる。しかも、引き起こしロープおよび補助ロープを繋いだロープ接続ユニットをストラットに保持させるに際して、当該ロープ接続ユニットを吊り上げるように補助クレーンを上方へと引き上げる必要がないため、補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。
【0034】
本発明に係るクレーンは、機体と、前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して起伏可能に取り付けられたジブと、前記ジブの後方において前記ブームに対して起伏可能に取り付けられており当該ジブを支持するストラットと、を備えたクレーンであって、前記ストラットは、前記ブームに取り付けられており当該ストラットの回動中心である基端部および前記基端部の反対側に位置する先端部を有するストラット本体と、前記ストラット本体から当該ストラット本体の外側に向けて前記ストラットの回動軸に平行な平行方向に延びる引き起こし部と、を有しており、前記ブーム、前記ジブ、および前記ストラット本体のいずれか一つは、前記基端部の近傍に位置するとともに引き起こしロープを固定可能な固定部を有しており、前記引き起こし部は、前記固定部の固定される前記引き起こしロープを鉛直方向の下側から接触させつつ吊り上げることにより前記ストラットを所定の位置まで引き起こすことが可能なように前記ストラットの重心よりも前記先端部側に配置される。
【0035】
上記のクレーンでは、ストラット本体の基端部の近傍の部位に引き起こしロープを固定し、当該引き起こしロープをストラットの重心よりも先端部側においてストラット本体から平行方向に延びる引き起こし部に接触させつつ吊り上げることによりストラットを所定の位置まで引き起こすことができるため、当該引き起こしロープを吊り上げる補助クレーンに求められる揚程を短く抑えることができる。具体的には、上記のクレーンでは、地上から引き起こされた状態のストラット本体において先端部よりも地上側に位置する基端部に引き起こしロープを固定し、当該引き起こしロープを補助クレーンによって吊り上げることによりストラットを所定の位置まで引き起こすことができるため、ストラット本体の先端部に引き起こしロープを固定して当該引き起こしロープを補助クレーンによって吊り上げる場合に比して、当該補助クレーンの要する揚程を短く抑えることができる。
【0036】
前記引き起こし部は、前記ストラットを地上に倒した状態で鉛直方向の下側から前記引き起こしロープを接触可能に構成された本体部と、前記本体部に接触した状態で吊り上げられる前記引き起こしロープが前記平行方向における前記ストラット本体の反対側に移動することにより前記本体部から逸脱しないように前記平行方向における前記引き起こしロープの移動を制限するために前記平行方向における前記ストラット本体の反対側から前記引き起こしロープに接触可能に構成された制限部と、を有することが好ましい。
【0037】
上記のクレーンでは、引き起こし部が平行方向におけるストラット本体の反対側から引き起こしロープに接触可能に構成された制限部を有しており、引き起こしロープが本体部に接触した状態で吊り上げられるに際して、平行方向におけるストラット本体の反対側に移動する引き起こしロープが本体部から逸脱しないように当該回転軸方向における引き起こしロープの移動を制限部が制限するため、ストラットを安全に引き起こすことができる。
【0038】
前記ストラットは、前記ストラット本体から当該ストラット本体の外側に向けて前記ストラットの回動軸と平行な平行方向に延びる倒れ止め部を有しており、前記倒れ止め部は、前記引き起こし部と当該倒れ止め部との間に配置された状態で吊り上げられた引き起こしロープが、前記ストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態で前記回動方向に接触することにより、前記ストラットが当該ストラットの回動方向に沿って落下することを防止するように、前記平行方向に直交する方向において前記引き起こし部と間隔をあけて並ぶように設けられていることが好ましい。
【0039】
上記のクレーンでは、引き起こしロープに吊り上げによってストラットが地上から90°を超えて引き起こされたときに当該ストラットの回動方向において倒れ止め部が引き起こしロープに接触するように引き起こし部と倒れ止め部とが平行方向に直交する方向において間隔をあけて並んでいるため、ストラットが当該回動方向に沿って落下することを防止でき、これによりストラットを安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0040】
前記ストラットは、前記引き起こし部と前記倒れ止め部とを繋ぐように配置された連結部を有するとともに、前記ストラット本体、前記引き起こし部、前記倒れ止め部、および前記連結部によって閉じられるとともに前記引き起こしロープを挿入可能な内側空間を形成するように構成されていることが好ましい。
【0041】
上記のクレーンでは、ストラット本体、引き起こし部、倒れ止め部、および連結部によって閉じられた内側空間に引き起こしロープを配置した状態で当該引き起こしロープを吊り上げることにより、引き起こしロープが如何なる方向に動いたとしても、前記内側空間から引き起こしロープが抜け出ることがなく、これによりストラットを安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0042】
前記連結部または前記倒れ止め部は、前記引き起こし部、前記倒れ止め部、および前記連結部を挟んで前記内側空間の反対側に位置する外側空間と前記内側空間とを連通する連通路と、当該連通路を通じて前記外側空間から前記内側空間へ前記引き起こしロープを挿入するために当該連通路を開閉するよう動くことが可能な可動部と、を含むことが好ましい。
【0043】
上記のクレーンでは、連通路を開くように可動部を動かすことにより当該連通路を通じて外側空間から内側空間へ引き起こしロープを挿入できるため、当該内側空間内に引き起こしロープを容易に配置できるとともに、内側空間に引き起こしロープを挿入した後に連通路を閉じるように可動部を動かすことにより、引き起こしロープがストラット本体、引き起こし部、倒れ止め部、および連結部に取り囲まれた状態で当該引き起こしロープを吊り上げることができるため、ストラットを安全に所定の位置にまで引き起こすことができる。
【0044】
前記連通路および前記可動部は、前記倒れ止め部に含まれており、前記平行方向における前記連通路の幅は、前記引き起こし部と前記倒れ止め部とが並ぶ方向における前記内側空間の幅よりも大きいことが好ましい。
【0045】
上記のクレーンでは、平行方向における連通路の幅が引き起こし部と倒れ止め部とが並ぶ方向における内側空間の幅よりも大きいため、内側空間に配置された引き起こしロープを当該並ぶ方向における倒れ止め部側へと動かすことにより幅の大きい連通路を通じて当該引き起こしロープを外側空間へ容易に外すことができる。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、必要とされる補助クレーンの揚程を短く抑えることが可能なストラットの引き起こし方法、およびクレーンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本実施形態に係るクレーンの構成を示す側面図である。
図2】本実施形態に係るクレーンにおいて、ブーム、フロントストラット、およびリアストラットを地上に倒した側面図であって、固定工程および配置工程を経た状態を示す。図2では、ジブの図示を省略する。
図3A図2に示すクレーンのリアストラットのうち、基端部周辺の部位を拡大した上面図である。
図3B図2に示すクレーンのリアストラットのうち、基端部周辺の部位を拡大した側面図である。
図4A図2に示すクレーンのリアストラットのうち、先端部周辺の部位を拡大した上面図である。
図4B図2に示すクレーンのリアストラットのうち、先端部周辺の部位を拡大した側面図である。
図5】吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こし始めた状態を示す側面図である。
図6】吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こす途中の状態を示す側面図であって、ワイヤロープの第1部位が最大長さまで引き伸ばされた状態を示す。
図7】吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こしが完了した状態を示す側面図である。
図8A】変形例1に係るクレーンにおいて、図4Aと同様にリアストラットのうち先端部周辺の部位を拡大した上面図である。
図8B】変形例1に係るクレーンにおいて、図4Bと同様にリアストラットのうち先端部周辺の部位を拡大した側面図である。
図9A】変形例1に係るクレーンにおいて、吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こす途中の状態を示す側面図であって、リアストラットが地上から90°を超えない範囲で引き起こされた状態を示している。
図9B】変形例1に係るクレーンにおいて、吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こす途中の状態を示す側面図であって、リアストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態を示している。
図10】変形例2に係るクレーンにおいて、図4Aと同様にリアストラットのうち先端部周辺の部位を拡大した上面図である。
図11A】変形例2に係るクレーンにおいて、引き起こしユニットをリアストラットの長手方向における倒れ止め部側から視た図であって、連通路が閉じた状態を示している。
図11B】変形例2に係るクレーンにおいて、引き起こしユニットをリアストラットの長手方向における倒れ止め部側から視た図であって、連通路が開いた状態を示している。
図12】変形例2に係るクレーンにおける引き起こしユニットの上面図であって、連通路が開いた状態を示す。
図13】変形例3に係るクレーンであって、図4Bと同様にリアストラットの先端部周辺の部位を拡大した側面図である。
図14A】変形例3に係るクレーンにおいて、吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こす途中の状態を示す側面図であって、リアストラットが地上から90°を超えない範囲で引き起こされた状態を示している。
図14B】変形例3に係るクレーンにおいて、吊り上げ工程においてリアストラットを引き起こす途中の状態を示す側面図であって、リアストラットが地上から90°を超えて引き起こされた状態を示している。
図15】変形例4に係るストラットに引き起こし方法を示す概略図であって、(A)は吊り上げ工程の直後の様子を示しており、(B)は第1端部固定工程および第2端部固定工程の直後の様子を示しており、(C)は下げ工程の直後の様子を示しており、(D)は保持工程の直後の様子を示している。
図16】変形例5に係るストラットに引き起こし方法を示す概略図であって、(A)は第1端部固定工程および吊り上げ工程の直後の様子を示しており、(B)は保持工程の直後の様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本実施形態に係るクレーンX1の構成部材のうち主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態に係るクレーンX1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材または任意の工程を備え得る。
【0049】
図1は、本発明に係るクレーンX1を示している。図1に示すクレーンX1は、下部走行体1および当該下部走行体1上に配置された上部旋回体2を有する機体と、上部旋回体2の前部に取り付けられたアタッチメント3と、を備えている。
【0050】
機体の下部走行体1は、地上を走行可能に構成されており、例えば左右一対のクローラーを備える。機体の上部旋回体2は、下部走行体1が走行する地上に垂直な方向に延びる軸回りに旋回可能に構成されている。
【0051】
アタッチメント3は、荷物の吊り上げ作業および吊り下げ作業を行う。アタッチメント3は、上部旋回体2に対して起伏可能に取り付けられたブーム4と、ブーム4に繋がれたマストと、マストに繋がれており当該マストに繋がれたブーム4を支持するバランスウェイトと、ブーム4に対して起伏可能に取り付けられたジブ5と、ジブ5の先端から吊り下げられており前記荷物を保持するフック6と、ジブ5を支持するストラットユニット7と、を備えている。
【0052】
ブーム4は、上部旋回体2に対して回動自在に取り付けられた基端部41と、基端部41の反対側に位置しておりジブ5およびストラットユニット7が取り付けられた先端部43と、基端部41と先端部43とを繋ぐ中間部42と、を有している。基端部41は、上部旋回体2に回動自在に取り付けられており、これによりブーム4が上部旋回体2に対して起伏可能に構成されている。ブーム4の先端部43は、ガイラインを介して、ブーム4の後方において上部旋回体2に取り付けられたマストの先端に繋がっている。また、マストの先端は、ワイヤロープを介して、上部旋回体2の後部に設けられたバランスウェイトに繋がっている。そして、マストとバランスウェイトとを繋ぐワイヤロープがウインチによって巻き取られることにより、地上に対するマストの傾斜角度が変化し、これにより当該マストに繋がるブーム4が起伏する。
【0053】
ジブ5の基端部は、ブーム4の先端部43に回動自在に取り付けられており、これによりジブ5がブーム4に対して起伏可能に構成されている。ジブ5は、ブーム4の前方において当該ブーム4に対して起伏する。
【0054】
フック6は、ジブ5の他端から吊り下げられている。具体的には、フック6は、上部旋回体2に設けられたウインチに繋がるワイヤロープに取り付けられており、当該ワイヤロープがウインチによって巻き取られることにより鉛直方向に移動可能なように、当該他端から吊り下げられている。
【0055】
ストラットユニット7は、ブーム4に対して起伏するジブ5が前方に向けて倒れないように、ジブ5の後方において当該ジブ5を支持している。ストラットユニット7は、フロントストラット71と、当該フロントストラット71よりも後方に配置されたリアストラットユニット72と、ジブ5をフロントストラット71に繋ぐジブガイライン74と、フロントストラット71、リアストラットユニット72、およびブーム4を繋ぐワイヤロープ77と、を有している。
【0056】
フロントストラット71は、ジブ5の後方に位置しており、ブーム4に対して起伏可能に取り付けられている。ジブガイライン74は、フロントストラット71とジブ5とを繋いでおり、これによりジブ5がフロントストラット71に支持されている。具体的に、フロントストラット71の基端部は、ブーム4の先端部43に回動自在に取り付けられている。ジブガイライン74は、フロントストラット71の先端部とジブ5の先端部とを繋いでいる。フロントストラット71、ジブ5、およびジブガイライン74がなす三角形状は、常に一定の形状に保たれる。
【0057】
リアストラットユニット72は、フロントストラット71の後方において当該フロントストラット71を支持するリアストラット721と、リアストラット721が後方に向けて倒れないように当該リアストラット721を支持するバックストップ722と、を有している。
【0058】
リアストラット721は、本発明に係るストラットに相当する。なお、本実施形態では、ジブ5は、フロントストラット71およびリアストラット721の2つのストラットによって支持されているが、これに限らず、1つのストラットのみによって支持されていてもよい。
【0059】
リアストラット721は、フロントストラット71の後方に位置しており、ブーム4の先端部43に対して起伏可能に取り付けられている。ワイヤロープ77は、フロントストラット71とリアストラット721とを繋ぐ第1部位75と、リアストラット721とブーム4とを繋ぐ第2部位76と、を有しており、これによりジブ5がフロントストラット71およびリアストラット721を介してブーム4に支持されている。ブーム4、リアストラット721、およびワイヤロープ77の第2部位76がなす三角形状は、フロントストラット71、ジブ5、およびジブガイライン74がなす三角形状と同一に保たれる。フロントストラット71とリアストラット721とがなす角度は、ワイヤロープ77の第1部位75がウインチによって巻き取られることにより変化し、これによりジブ5がブーム4に対して起伏する。
【0060】
バックストップ722は、リアストラット721の後方に位置している。バックストップ722は、リアストラット721に固定されている。また、バックストップ722は、当該バックストップ722がブーム4に接触する位置にてリアストラット721の後方への回動を停止させるように構成される。
【0061】
以下では、図1に加えて、図2を参照しながら、リアストラットユニット72の詳細な構成について説明する。なお、図2は、クレーンX1においてブーム4、ジブ5、およびストラットユニット7を所定の位置まで引き起こす前の状態を示しており、ジブ5の図示は省略している。すなわち、図2に示されるブーム4およびストラットユニット7は、地上に倒された状態にある。また、図2では、リアストラット721を引き起こすための第1,第2引き起こしロープ110,120がリアストラット721に取り付けられているが、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされ、クレーンX1が図1の状態に至った際には、当該第1,第2引き起こしロープ110,120はリアストラット721から取り外される。
【0062】
図2に示すように、リアストラット721は、ジブ5およびフロントストラット71を支持するストラット本体721aと、当該リアストラット721を所定の位置まで引き起こすに際して第1,第2引き起こしロープ110,120を固定可能な固定部721bと、第1,第2引き起こしロープ110,120に接触可能な引き起こし部721cと、を有している。
【0063】
ストラット本体721aは、ブーム4の先端部43に回動自在に取り付けられた基端部A1と、基端部A1の反対側に位置する先端部A3と、基端部A1と先端部A3とを繋ぐ中間部A2と、を含んでいる。本実施形態では、先端部A3は、第1部位75が取り付けられるワイヤロープ取付け部A4を含んでおり、当該ワイヤロープ取付け部A4からストラット本体721aの先端までの部位が先端部A3となる。また、本実施形態では、リアストラット721の重心G1は、ストラット本体721aの中間部A2に位置している。
【0064】
ここで、図3Aおよび図3Bは、ストラット本体721aの基端部A1周辺の部位を拡大した図である。
【0065】
図2図3A図3Bに示すように、固定部721bは、ストラット本体721aの基端部A1の近傍に位置している。なお、基端部A1の近傍の位置とは、当該基端部A1に位置する作業者が固定部721bに対する第1,第2引き起こしロープ110,120の固定作業および取り外し作業を行うことができる程度の位置を指す。本実施形態では、固定部721bは、図3Bに示すように、ストラット本体721aの中間部A2に固定されており、バックストップ722よりも基端部A1側に位置している。また、本実施形態では、固定部721bは、中間部A2からストラット本体721aの長手方向におけるフロントストラット71の反対側に突出している。
【0066】
図3Aに示すように、固定部721bは、ストラット本体721aを挟んでその左右両側に位置する一対の第1固定部B1および第2固定部B2を含んでいる。第1固定部B1および第2固定部B2は、ストラット本体721aから当該ストラット本体721aの外側に向けて、リアストラット721の回動軸に平行な平行方向に延びている。具体的には、第1固定部B1は、ストラット本体721aの中間部A2から前記平行方向における一方側に突出しており、第2固定部B2は、ストラット本体721aの中間部A2から前記平行方向における他方側に突出している。第1固定部B1と第2固定部B2とは、ストラット本体721aの長手方向において同じ位置に配置されている。
【0067】
第1固定部B1および第2固定部B2は、環状に形成された第1,第2引き起こしロープ110,120の一端を留めることが可能な留め具を含んでいる。これにより、第1固定部B1および第2固定部B2には、第1,第2引き起こしロープ110,120を固定することが可能である。
【0068】
ここで、図4Aおよび図4Bは、ストラット本体721aの基端部A1周辺の部位を拡大した図である。
【0069】
図2に示すように、引き起こし部721cは、固定部721bに固定される第1,第2引き起こしロープ110,120を鉛直方向の下側から接触させつつ吊り上げることによりリアストラット721を所定の位置まで引き起こすことが可能なように、リアストラット721の重心G1よりも先端部A3側に配置されている。具体的には、本実施形態では、引き起こし部721cは、図2図4A,および図4Bに示されるように、ストラット本体721aの先端部A3に取り付けられている。より具体的には、先端部A3は、第1部位75が取り付けられるワイヤロープ取付け部A4よりも先端側に引き起こし部取付け部A5を含んでおり、当該引き起こし部取付け部A5に対して引き起こし部721cが取り付けられている。
【0070】
図4Aに示すように、引き起こし部721cは、ストラット本体721aを挟んでその左右両側に位置する一対の第1引き起こし部C1および第2引き起こし部C2を含んでいる。第1引き起こし部C1および第2引き起こし部C2は、ストラット本体721aから当該ストラット本体721aの外側に向けて、リアストラット721の回動軸に平行な平行方向に延びている。具体的には、第1引き起こし部C1は、ストラット本体721aの先端部A3から前記平行方向における一方側(第1固定部B1が突出する側)に突出しており、第2固定部B2は、ストラット本体721aの先端部A3から前記平行方向における他方側(第2固定部B2が突出する側)に突出している。本実施形態では、第1引き起こし部C1と第2引き起こし部C2とは、ストラット本体721aの長手方向において同じ位置に配置されており、同程度の長さを有している。具体的には、前記平行方向における第1,第2引き起こし部C1,C2の長さは、当該第1,第2引き起こし部C1,C2に対して引鉛直方向における下方から第1,第2引き起こしロープ110,120を接触させつつ当該第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げることにより、当該第1,第2引き起こし部C1,C2を介してストラット本体721aを引き起こすことが可能なように、第1,第2引き起こしロープ110,120の外径よりも長く設定される。
【0071】
図2および図3Bに示すように、バックストップ722は、リアストラット721に固定される本体部722aと、当該本体部722aをストラット本体721aに対して所定の角度で傾斜させた状態で支持する支持部722bと、を有している。
【0072】
本体部722aの一端は、ストラット本体721aの中間部A2に固定されている。本体部722aの他端は、本体部722aの一端よりも基端部A1側に位置している。
【0073】
支持部722bの一端は、ストラット本体721aの中間部A2のうち、本体部722aの一端が取り付けられた部位と固定部721bとの間の部位に固定されている。支持部722bの他端は、本体部722aの他端に固定されている。これにより、本体部722aは、ストラット本体721aに対して所定の角度で傾斜した状態に維持される。図1に示すように、本体部722aの他端は、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされた状態においてブーム4に固定され、これによりリアストラット721が後方に向けて倒れないように当該リアストラット721を支持する。
【0074】
ここで、図2図7を参照しながら、ブーム4、ジブ5、およびストラットユニット7を地上に倒した状態からリアストラット721を所定の位置まで引き起こす方法について詳細に説明する。リアストラット721は、以下の工程を含む方法によって、所定の位置まで引き起こされる。
【0075】
1)固定工程
この工程では、リアストラット721を所定の位置まで引き起こすための第1,第2引き起こしロープ110,120を固定部721bに固定する。
【0076】
まず、ブーム4、ジブ5、およびストラットユニット7を地上に倒す。このとき、図2に示すように、フロントストラット71およびリアストラット721をブーム4の先端部43よりも前方に延びる姿勢で倒し、フロントストラット71の上方にリアストラット721が位置する状態とする。この時点で、リアストラット721とブーム4とを繋ぐ第2部位76は、ストラット本体721aに固定されたストラット側ロープ761と、ブーム4に固定されたブーム側ロープ部材762に分離している。ストラット側ロープ761は、ストラット本体721aの先端部A3のワイヤロープ取付け部A4に対して取り付けられた一端761aと、一端761aの反対側において開放された他端761bと、を有しており、リアストラット721の長手方向に沿って延びている。また、ブーム側ロープ762は、ブーム4に取り付けられた一端と、当該一端の反対側において開放された他端と、を有しており、ブーム4に長手方向に沿って延びている。
【0077】
次に、固定部721bに対して第1,第2引き起こしロープ110,120を固定する。第1引き起こしロープ110および第2引き起こしロープ120の一端には、環状の止め輪が形成されており、第1引き起こしロープ110および第2引き起こしロープ120の他端には、環状の吊り輪が形成されている。そして、図3Bに示すように、第1引き起こしロープ110の一端に形成された止め輪を第1固定部B1が有する留め具に引掛け、これにより第1引き起こしロープ110を第1固定部B1に固定する。
【0078】
なお、図示は省略するが、第2引き起こしロープ120についても同様にして第2固定部B2に固定する。
【0079】
2)配置工程
この工程では、固定工程において固定部721bに固定された第1,第2引き起こしロープ110,120によってリアストラット721を引き起こすために、当該第1,第2引き起こしロープ110,120を第1,第2引き起こし部C1,C2の鉛直方向の下側に配置する。
【0080】
まず、第1固定部B1に固定された第1引き起こしロープ110を先端部A3に向けて引き延ばす。そして、図4Aおよび図4Bに示すように、先端部A3に固定された第1引き起こし部C1の鉛直方向の下側に第1引き起こしロープ110を配置する。
【0081】
なお、図4Bでは、配置工程の後に、第1引き起こしロープ110の他端に形成された吊り輪を吊り上げた状態を示しているため、当該吊り輪が第1引き起こし部C1よりも鉛直方向の上側に位置しているが、配置工程の段階では、当該吊り輪は、例えば第1引き起こし部C1よりも鉛直方向の下側の地上に載置されていてもよい。
【0082】
また、図示は省略するが、第2引き起こしロープ120についても同様にして、第2引き起こし部C2の鉛直方向の下側に配置する。
【0083】
また、本実施形態では、固定工程において固定部721bに第1,第2引き起こしロープ110,120を固定した後に配置工程において当該第1,第2引き起こしロープ110,120を引き起こし部721cの下側に配置したが、これに限らず、固定工程と配置工程との工程順序は特に限定されない。
【0084】
3)吊り上げ工程
この工程では、固定工程および配置工程を経た後に、第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げることによって、リアストラット721を所定の位置まで引き起こす。この第1,第2引き起こしロープ110,120の吊り上げ作業は、図2図4A,および図4Bに示すように、補助クレーン200によって行う。
【0085】
補助クレーン200は、上下動可能な吊り上げフック210と、第1,第2引き起こしロープ110,120を固定可能な幅規制部材220と、を備えている。
【0086】
吊り上げフック210には、幅規制部材220が吊り下げられており、吊り上げフック210を鉛直方向の上側に引き上げることにより、幅規制部材220に固定された第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げることが可能である。
【0087】
幅規制部材220の長さは、図4Aに示すように、ストラット本体721aの先端部A3における引き起こし部取付け部A5の幅よりも長く設定されている。幅規制部材220は、第1引き起こしロープ110の他端に形成された吊り輪が取り付けられる第1取付け部221と、第2引き起こしロープ120の他端に形成された吊り輪が取り付けられる第2取付け部222と、を有している。図4Aに示すように、第1取付け部221と第2取付け部222との離間距離H1は、リアストラット721の回動軸に平行な平行方向における第1引き起こし部C1の先端と第2引き起こし部C2の先端との離間距離H2よりも小さく設定されている。
【0088】
図2および図4Bに示すように、引き起こし部721cを挟んで基端部A1の反対側において、第1,第2引き起こしロープ110,120を補助クレーン200によって鉛直方向の上側に吊り上げる。具体的には、引き起こし部721cを挟んで基端部A1の反対側に位置する第1,第2引き起こしロープ110,120の吊り輪を幅規制部材220の第1,第2取付け部221,222に固定し、この状態で当該幅規制部材220を吊り上げフック210によって吊り上げる。これにより、第1,第2引き起こし部C1,C2の下側に位置する第1,第2引き起こしロープ110,120が当該第1,第2引き起こし部C1,C2に接触しつつ吊り上げられ、図5に示すように、基端部A1を中心としてリアストラット721が鉛直方向の上側へ回動しはじめる。
【0089】
なお、本実施形態では、第1,第2引き起こしロープ110,120は、第1,第2取付け部221,222に取り付けられた状態で吊り上げられるため、吊り上げ工程において、第1引き起こしロープ110と第2引き起こしロープ120との間隔は、第1取付け部221と第2取付け部222との離間距離H1と等しい状態にある。すなわち、第1引き起こしロープ110と第2引き起こしロープ120とは、第1引き起こし部C1の先端と第2引き起こし部C2の先端との離間距離H2よりも狭い間隔を維持した状態で吊り上げられる。
【0090】
次に、図6に示すように、フロントストラット71とリアストラット721とを繋ぐワイヤロープ77の第1部位75が最大長さまで延びる状態までリアストラット721を引き起こす。このとき、リアストラット721は、ワイヤロープ77の第1部位75に繋がるフロントストラット71によって回動方向の反対方向へと引っ張られる。本実施形態では、ワイヤロープ77の第1部位75が最大長さまで延びた状態において、リアストラット721が基端部A1を通る地上に対する鉛直線Y1よりもブーム4側に傾斜しているため、自重に従って回動方向に落下しようとする力とワイヤロープ77の第1部位75によって回動方向の反対方向に引っ張られる力が釣り合っている。
【0091】
このとき、ストラット側ロープ761は、自重に従って先端部A3から垂れ下がっており、当該ストラット側ロープ761の他端761bがブーム4から離間した状態にある。また、バックストップ722の本体部722aは、ブーム4から離間した状態にある。
【0092】
その後、補助クレーン300によってフロントストラット71を鉛直方向の上側に引き起こすことにより、リアストラット721を回動方向に沿って図7に示す所定の位置まで引き起こす。ここで、本実施形態におけるリアストラット721の所定の位置とは、図7に示すように、バックストップ722の本体部722aをブーム4に固定可能な位置、若しくはストラット側ロープ761の他端761bをブーム側ロープ762の他端に接続可能な位置である。
【0093】
なお、補助クレーン300によるフロントストラット71の引き起こし方法は、リアストラット721の引き起こし方法と同様の方法を用いてもよいし、例えばフロントストラット71の先端部に固定されたロープ部材を補助クレーンによって吊り上げる方法を用いてもよい。
【0094】
そして、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後、ストラット側ロープ761の他端761bをブーム側ロープ762の他端に接続し、バックストップ722の本体部722aをブーム4に固定することにより、リアストラット721がブーム4に対して所定の角度で傾斜した状態で当該ブーム4に支持される。
【0095】
4)取り外し工程
この工程では、固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外す。
【0096】
具体的には、前記吊り上げ工程においてリアストラット721を所定の位置まで引き起こした後、地上において第1,第2固定部B1,B2の留め具から第1,第2引き起こしロープ110,120の一端に形成された止め輪を取り外す。ここで、基端部A1は、リアストラット721の回動中心であるため、リアストラット721を地上に倒した図2の状態とリアストラット721を所定の位置まで引き起こした図6の状態とで、地上からの高さは同じである。このため、基端部A1の近傍に位置する固定部721bについても、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした図6の状態において、地上から作業可能な位置に配置される。そのため、固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外す作業は、地上において行われる。
【0097】
その後、補助クレーン200を動かし、当該補助クレーン200の吊り上げフック210から幅規制部材220および当該幅規制部材220に取り付けられた第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外す。これにより、取り外し工程が完了する。
【0098】
以上のようにして、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされる。
【0099】
このように、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法は、リアストラット721の基端部A1の近傍の固定部721bに第1,第2引き起こしロープ110,120を固定し、当該第1,第2引き起こしロープ110,120をリアストラット721の重心G1よりも先端部A3側に位置する引き起こし部721cに接触させつつ補助クレーン200によって吊り上げることにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こすことができるため、当該補助クレーン200に求められる揚程を短く抑えることができる。
【0100】
従来、リアストラット721の先端部A3に固定した第1,第2引き起こしロープ110,120を補助クレーン200によって吊り上げることにより当該リアストラット721を所定の位置まで引き起こし、第1,第2引き起こしロープ110,120を補助クレーン200から取り外した後に、地上において第1,第2引き起こしロープ110,120をリアストラット721に固定するようにして後処理していた。このため、先端部A3に固定される第1,第2引き起こしロープ110,120は、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされた状態において先端部A3から地上付近まで垂れ下がる程度の長さに設定する必要がある。そのため、補助クレーン200には、地上から先端部A3までの高さの2倍程度の揚程が求められる。
【0101】
これに対して、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法では、第1,第2引き起こしロープ110,120が固定される固定部721bは、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされた状態において地上付近に位置する基端部A1の近傍に位置している。このため、第1,第2引き起こしロープ110,120が先端部A3に固定される従来引き起こし方法のように、地上にて第1,第2引き起こしロープ110,120を後処理するために当該第1,第2引き起こしロープ110,120の長さを調整する必要がない。そのため、上記のリアストラット721の引き起こし方法では、第1,第2引き起こしロープ110,120の長さは、固定部721bから引き起こし部721cまで長さ程度であればよく、これにより補助クレーン200の揚程を地上から引き起こし部721cまでの高さ程度に抑えることができる。
【0102】
さらに、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法では、地上に倒した状態のリアストラット721を引き起こすに際して、当該リアストラット721の回動中心となる基端部A1の近傍の固定部721bに第1,第2引き起こしロープ110,120を固定するため、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後に地上において固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を容易に取り外すことができる。
【0103】
さらに、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法では、先端部A3のうちワイヤロープ取付け部A4よりも先端側に位置する引き起こし部取付け部A5に対して引き起こし部721cが取り付けられているため、重心G1から引き起こし部721cまでの距離が比較的長く、小さい力でリアストラット721を引き起こすことができるため、補助クレーン200の吊り上げ能力を抑えることができる。
【0104】
さらに、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法では、リアストラット721の回動軸に平行な平行方向において、ストラット本体721aを挟んで当該ストラット本体721aの両側に第1,第2引き起こし部C1,C2をそれぞれ突出させ、第1,第2引き起こしロープ110,120を第1,第2引き起こし部C1,C2に接触させつつ吊り上げるため、リアストラット721が当該リアストラット721の長手方向に延びる軸回りに傾くことを抑止できる。
【0105】
さらに、本実施形態に係るリアストラット721の引き起こし方法では、第1取付け部221と第2取付け部222との離間距離H1が第1引き起こし部C1の先端と第2引き起こし部C2の先端との離間距離H2よりも小さいため、吊り上げ工程において第1,第2引き起こしロープ110,120が第1,第2引き起こし部C1,C2から外れてしまうことを抑止できる。
【0106】
さらに、本実施形態に係るクレーンX1では、ストラット本体721aの基端部A1の近傍の固定部721bに第1,第2引き起こしロープ110,120を固定し、当該第1,第2引き起こしロープ110,120をリアストラット721の重心G1よりも先端部A3側においてストラット本体721aから平行方向に延びる引き起こし部721cに接触させつつ吊り上げることにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こすことができるため、当該第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げる補助クレーン200に求められる揚程を短く抑えることができる。
【0107】
ところで、本実施形態では、第1,第2引き起こしロープ110,120をリアストラット721の回動中心である基端部A1の近傍に固定し、当該第1,第2引き起こしロープ110,120を先端部A3に取り付けられた引き起こし部721cに接触させつつ吊り上げるため、基端部A1と先端部A3とが鉛直線Y1に沿って並ぶようにリアストラット721が地上から90°程度引き起こされると、引き起こし部721cが第1,第2引き起こしロープ110,120から離れてリアストラット721が自重に従って回動方向に沿って動くため、リアストラット721が地上に落下しないようにその動きを規制することが望まれる。
【0108】
本実施形態では、リアストラット721が地上から90°を超えて引き起こされた場合における当該リアストラット721の動きの規制は、ワイヤロープ77の第1部位75によって実現される。具体的には、本実施形態では、リアストラット721が地上から90°を超えて引き起こされた後、当該リアストラット721が所定の位置に至る前に、ワイヤロープ77の第1部位75が最大長さまで引き伸ばされ、これによりリアストラット721に対して回動方向の反対側へ力が加わるため、自重に従ったリアストラットの動きが規制される。
【0109】
なお、リアストラット721が地上から90°を超えて引き起こされた場合における当該リアストラット721の動きの規制は、例えば、変形例1および変形例2に示すように、リアストラット721自体に当該リアストラット721の倒れ止めを果たす部位を設けることにより実現してもよいし、変形例3に示すように第1,第2引き起こしロープ110に加えて第1,第2倒れ止めロープ410,420を補助クレーン200で吊り上げることにより実現してもよい。
【0110】
まず、図8A図8B図9A図9Bを参照しつつ、変形例1について説明する。
【0111】
変形例1におけるリアストラット721は、図8Aに示すように、上記の実施形態における引き起こし部721cに相当する引き起こし部d2と、リアストラット721が90°を超えて引き起こされた場合に倒れ止めの役割を果たす倒れ止め部d3と、を含む引き起こしユニット721dを有している。
【0112】
変形例1におけるリアストラット721の引き起こし方法では、引き起こし部d2と倒れ止め部d3との間に配置し、第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げることにより、図9Aに示すようにリアストラット721が地上から90°を超えない範囲においては引き起こし部d2と第1,第2引き起こしロープ110,120とを接触させつつリアストラット721を引き起こし、図9Bに示すようにリアストラット721が地上から90°を超えた際には倒れ止め部d3と第1,第2引き起こしロープ110,120とを接触させつつリアストラット721を倒れ止めする。
【0113】
引き起こしユニット721dの具体的な構成は以下のとおりである。
【0114】
引き起こしユニット721dは、ストラット本体721aを挟んでその左右両側に位置する一対の第1引き起こしユニットD1および第2引き起こしユニットD2を有している。第1,第2引き起こしユニットD1,D2のそれぞれは、上述した引き起こし部d2および倒れ止め部d3に加えて、先端部A3に取り付けられた接続部d1を有している。
【0115】
接続部d1には、引き起こし部d2と倒れ止め部d3との両方が繋がっており、当該引き起こし部d2および倒れ止め部d3が前記平行方向に沿ってリアストラット721の外側へと延びている。なお、接続部d1はなくともよく、引き起こし部d2および倒れ止め部d3が直接先端部A3にストラット本体721aに取り付けられてもよい。
【0116】
倒れ止め部d3は、リアストラット721が地上から90°を超えて引き起こされた状態で当該リアストラット721の回動方向において第1,第2引き起こしロープ110,120に接触することによりリアストラット721の落下を防止するように、前記平行方向に直交する方向において引き起こし部d2と間隔をあけて並んでいる。変形例1では、図10Bに示すように、倒れ止め部d3は、引き起こし部d2よりもストラット本体721aの先端側に位置しており、リアストラット721の長手方向において引き起こし部d2と並んで配置されている。
【0117】
ここで、変形例1では、引き起こしユニット721dは、上述した接続部d1、引き起こし部d2、および倒れ止め部d3に加えて、図8Aに示すように、引き起こし部d2と倒れ止め部d3との間から第1,第2引き起こしロープ110,120が逸脱することを防ぐための制限部d4を有している。
【0118】
制限部d4は、前記平行方向におけるストラット本体721aの反対側から当該第1,第2引き起こしロープ110,120に接触可能なように構成されている。具体的には、制限部d4は、引き起こし部d2の先端部と倒れ止め部d3の先端部とを繋ぐことにより、当該制限部d4、引き起こし部d2、接続部d1、倒れ止め部d3によって閉じられた内側空間S1を形成し、これにより当該内側空間S1に配置される第1,第2引き起こしロープ110が引き起こし部d2の先端部側に移動した際に当該第1,第2引き起こしロープ110と制限部d4とが接触する。変形例2では、制限部d4は、引き起こし部d2の先端部に形成された挿入孔および倒れ止め部d3の先端部に形成された挿入孔に挿入され、これにより引き起こし部d2および倒れ止め部d3から取り外し可能に構成されている。
【0119】
変形例1におけるリアストラット721の引き起こし方法において、第1、第2引き起こしロープ110,120を引き起こし部d2と倒れ止め部d3との間に配置する際には、引き起こし部d2および倒れ止め部d3から制限部d4を取り外した状態で当該引き起こし部d2の先端側から内側空間S1に第1、第2引き起こしロープ110,120を挿入する。その後、引き起こし部d2および倒れ止め部d3に制限部d4を取り付けることにより、接続部d1、引き起こし部d2、倒れ止め部d3、および制限部d4によって第1,第2引き起こしロープ110,120を取り囲む。
【0120】
そして、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後、引き起こし部d2および倒れ止め部d3から制限部d4を取り外すことにより、内側空間S1から第1,第2引き起こしロープ110,120を逸脱させる。この制限部d4の取り外し作業は、例えば、上部旋回体2から送出される電気信号によって行うことができる。この場合、制限部d4は、電気信号を受けて引き起こし部d2および倒れ止め部d3から外れるように構成される。
【0121】
このように、変形例1に係るリアストラット721の引き起こし方法では、リアストラット721を地上に倒した状態で第1,第2引き起こしロープ110,120を吊り上げることにより、リアストラット721の回動方向の反対方向において引き起こし部d2が第1,第2引き起こしロープ110,120に接触しつつ当該リアストラット721が引き起こされ、リアストラット721が90°を超えて引き起こされたときに、リアストラット721の回動方向において倒れ止め部d3が第1,第2引き起こしロープ110,120に接触し、これによりリアストラット721が当該回動方向に沿って落下することを防止できる。
【0122】
さらに、変形例1に係るリアストラット721の引き起こし方法では、制限部d4によって第1,第2引き起こしロープ110,120の前記平行方向における移動が制限されるため、吊り上げ工程において第1,第2引き起こしロープ110,120が前記平行方向に移動することにより引き起こし部d2から逸脱することを防止でき、これによりリアストラット721を安全に引き起こすことができる。
【0123】
なお、制限部d4はなくともよく、引き起こし部d2の先端と倒れ止め部d3の先端とが開放されていてもよい。
【0124】
次に、図10図11A図11B図12を参照しつつ、変形例2について説明する。
【0125】
変形例1では、引き起こしユニット721dの制限部d4を引き起こし部d2および倒れ止め部d3から着脱することによって内側空間S1に第1,第2引き起こしロープ110,120を挿入したが、変形例2では、倒れ止め部d3に相当する倒れ止め部e2の一部を回動させることにより、内側空間S1を外側空間S2に連通させ、これにより外側空間S2から内側空間S1へと第1,第2引き起こしロープ110,120を挿入する。
【0126】
引き起こしユニット721eの具体的な構成は以下のとおりである。
【0127】
引き起こしユニット721eは、変形例2における引き起こしユニット721dと同様に、ストラット本体721aを挟んでその左右両側に位置する一対の第1引き起こしユニットE1および第2引き起こしユニットE2を有している。
【0128】
第1,第2引き起こしユニットE1,E2は、変形例1における引き起こし部d2および制限部d4の両方に相当する引き起こし部e1と、変形例1における倒れ止め部d3に相当する倒れ止め部e2と、倒れ止め部e2の一部を動かすためのロープ部材e4と、を有している。
【0129】
引き起こし部e1は、リアストラット721を引き起こすための本体部e11と、第1,第2引き起こしロープ110,120の前記平行方向の移動を規制するための制限部e3と、を有している。
【0130】
本体部e11は、ストラット本体721aの先端部A3に繋がっており、前記平行方向に沿ってリアストラット721の外側へと延びている。本体部e11には、リアストラット721が所定の位置まで引き起こされるに際して第1,第2引き起こしロープ110,120が接触する。
【0131】
制限部e3は、本体部e11のうちストラット本体721aとは反対側に位置する先端部に接続された制限部本体e31と、制限部本体e31からストラット本体721a側へ突出するようにストラット本体721aとは間隔をあけて設けられており後述する倒れ止め部e2の倒れ止め部本体e22に接触可能な受け部e32と、を有している。
【0132】
制限部本体e31は、本体部e11に接触した状態で吊り上げられる第1,第2引き起こしロープ110,120が前記平行方向におけるストラット本体721aの反対側に移動することにより当該本体部e11から逸脱しないように、当該平行方向におけるストラット本体721aの反対側への第1,第2引き起こしロープ110,120の移動を規制するように構成されている。具体的には、制限部本体e31は、本体部e11の先端部からストラット本体721aの長手方向に沿って当該ストラット本体721aの先端側にのびており、これにより本体部e11に接触しつつ吊り上げられる第1,第2引き起こしロープ110,120が前記平行方向において制限部本体e31に接触可能なように構成されている。
【0133】
倒れ止め部e2は、ストラット本体721aの先端部A3に繋がるとともに軸取付け部e21と、当該軸取付け部e21に対して回動自在に取り付けられた倒れ止め部本体e22と、を有している。
【0134】
倒れ止め部本体e22は、軸取付け部e21から受け部e32に亘って前記平行方向に延びている。倒れ止め部本体e22の基端は、軸取付け部e21に対して回動自在に取り付けられている。これにより、倒れ止め部本体e22は、前記基端を中心として、ストラット本体721aの長手方向に平行な軸回りに回動可能である。また、倒れ止め部本体e22の先端は、図11Aに示すように、当該倒れ止め部本体e22が引き起こし部e1の本体部e11に平行な姿勢において、受け部e32に支持されている。これにより、図10に示すように、制限部e3が本体部e11と倒れ止め部e2とを繋ぎ、ストラット本体721a、本体部e11、制限部e3、および倒れ止め部e2に取り囲まれた内側空間S1が形成される。すなわち、変形例2における制限部e3は、本発明に係る制限部に相当するとともに、本発明に係る連結部にも相当する。
【0135】
ロープ部材e4は、図11Aに示すように、倒れ止め部本体e22の基端に接続されている。ロープ部材e4は、当該ロープ部材e4を引くことによって倒れ止め部本体e22を回動させることが可能なように構成されている。
【0136】
ここで、図11B図12には、ロープ部材e4を引くことにより先端が上方に向かって回動した倒れ止め部本体e22を示す。図11B図12に示すように、先端が上方を向くように倒れ止め部本体e22を回動させた場合、軸取付け部e21と受け部e32との間には、内側空間S1と外側空間S2とを連通する連通路R1が形成される。すなわち、倒れ止め部本体e22は、連通路R1開閉可能なように動くよう構成されている。前記平行方向における連通路R1の幅H4は、本体部e11と倒れ止め部本体e22とが並ぶ方向における内側空間S1の幅H3よりも大きい。
【0137】
変形例2におけるリアストラット721の引き起こし方法において、第1、第2引き起こしロープ110,120を内側空間S1に配置する際には、ロープ部材e4を引いて倒れ止め部本体e22を上側に回動させることにより連通路R1を開き、連通路R1を通じて外側空間S2から内側空間S1に第1、第2引き起こしロープ110,120を挿入する。その後、ロープ部材e4を引く力を開放することにより、連通路R1を閉じる。
【0138】
そして、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後、ロープ部材e4を引いて倒れ止め部本体e22を上側に回動させることにより連通路R1を開き、当該連通路R1を通じて内側空間S1から外側空間S2へと第1,第2引き起こしロープ110,120を逸脱させる。
【0139】
このように、変形例2に係るリアストラット721の引き起こし方法では、第1,第2引き起こしロープ110,120を閉じられた内側空間S1に配置した状態で吊り上げ工程を行うため、吊り上げ工程において第1,第2引き起こしロープ110,120が如何なる方向に動いたとしても、前記内側空間S1から第1,第2引き起こしロープ110,120が抜け出ることがなく、これによりリアストラット721を安全に所定の位置まで引き起こすことができる。
【0140】
さらに、変形例2に係るリアストラット721の引き起こし方法では、連通路R1を開くように倒れ止め部本体e22を動かすことにより連通路R1を通じて外側空間S2から内側空間S1へ第1,第2引き起こしロープ110,120を挿入できるため、当該内側空間S1内に第1,第2引き起こしロープ110,120を容易に配置できる。
【0141】
さらに、変形例2に係るリアストラット721の引き起こし方法では、制限部e3によって第1,第2引き起こしロープ110,120の前記平行方向における移動が制限されるため、吊り上げ工程において第1,第2引き起こしロープ110,120が前記平行方向に移動することにより内側空間S1から逸脱することを防止できる。
【0142】
さらに、変形例2に係るクレーンでは、前記平行方向における連通路R1の幅H4が本体部e11と倒れ止め部本体e22とが並ぶ方向における内側空間S1の幅H3よりも大きいため、内側空間S1に配置された第1,第2引き起こしロープ110,120を当該並ぶ方向における倒れ止め部本体e22側へと動かすことにより幅の大きい連通路R1を通じて当該第1,第2引き起こしロープ110,120を外側空間S2へ容易に外すことができる。
【0143】
なお、変形例2では、倒れ止め部e2の一部である倒れ止め部本体e22を動かすことによって連通路R1を開閉したが、これに限らず、引き起こし部e1の一部を動かすことが可能なように構成し、当該引き起こし部e1の一部によって連通路R1を開閉してもよい。
【0144】
次に、図13図14A図14Bを参照しながら、変形例3について説明する。
【0145】
変形例3におけるリアストラット721の引き起こし方法では、図13に示すように、リアストラット721の倒れ止めを行うための第1,第2倒れ止めロープ410,420を準備し、固定部721bに固定した第1,第2倒れ止めロープ410,420を第1引き起こし部C1の鉛直方向の上側に配置した状態で、第1,第2引き起こしロープ110,120および第1,第2倒れ止めロープ410,420を吊り上げることにより、図14Aに示すようにリアストラット721が地上から90°を超えない範囲においては引き起こし部721cと第1,第2引き起こしロープ110,120とを接触させつつリアストラット721を引き起こし、図14Bに示すようにリアストラット721が地上から90°を超えた際には引き起こし部721cと第1,第2倒れ止めロープ410,420とを接触させつつリアストラット721を倒れ止めする。
【0146】
このように、変形例3に係るリアストラット721の引き起こし方法では、リアストラット721を地上に倒した状態で第1,第2引き起こしロープ110,120および第1,第2倒れ止めロープ410,420を吊り上げることにより、リアストラット721の回動方向の反対方向において引き起こし部721cが第1,第2引き起こしロープ110,120に接触しつつ当該リアストラット721が引き起こされ、当該リアストラット721が90°を超えて引き起こされたときに、リアストラット721の回動方向において引き起こし部721cが第1,第2倒れ止めロープ410,420に接触し、これによりリアストラット721が回動方向に沿って落下することを防止できる。
【0147】
なお、変形例3では、第1,第2引き起こしロープ110,120は、第1,第2引き起こしロープ110,120と同様に第1,第2固定部B1,B2に固定されたが、これに限らず、取り外し工程において地上における作業によって取り外すことができるように基端部A1の近傍の部位に固定されればよい。すなわち、第1,第2引き起こしロープ110,120と第1,第2引き起こしロープ110,120とは、それぞれ異なる部位に固定してもよい。
【0148】
また、上記の実施形態では、吊り上げ工程の後に、取り外し工程において固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外すことにより、当該第1,第2引き起こしロープ110、120とリアストラット721とを完全に分離したが、これに限らず、変形例4および変形例5に示すリアストラット721の引き起こし方法のように、吊り上げ工程の後に第1,第2引き起こしロープ110、120をリアストラット721に保持させてもよい。具体的には、以下のとおりである。
【0149】
図15(A)〜(D)は、変形例4に係るリアストラット721の引き起こし方法を示す概略図である。以下では、図15(A)〜(D)を用いて、第1,第2引き起こしロープ110、120のうち第1引き起こしロープ110側におけるリアストラット721の引き起こし工程について説明する。なお、第2引き起こしロープ120側においても同様の工程にてリアストラット721が引き起こされる。
【0150】
図15(A)〜(D)に示すように、変形例4では、クレーンX1は、上記の実施形態における引き起こし部721cに代えて、第1引き起こし部C1を通すことが可能な内側空間を取り囲むように形成された引き起こし部600を備えている。具体的には、変形例4では、引き起こし部600は、当該引き起こし部600をリアストラット721の長手方向に貫く内側空間が形成されたパイプ状をなしている。
【0151】
変形例4に係るリアストラット721の引き起こし方法は、上記の実施形態とは異なり、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後における取り外し工程を有してらず、これに代えて第1端部固定工程、第2端部固定工程、下げ工程、および保持工程を有することにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後の第1引き起こしロープ110を当該リアストラット721に保持させる。以下では、変形例4に係るリアストラット721の引き起こし方法において、上記の実施形態と異なる点を説明する。
【0152】
変形例4では、まず、配置工程において、第1引き起こしロープ110が引き起こし部600に取り囲まれるように当該第1引き起こしロープ110を内側空間に通す。その後、図15(A)に示すように、吊り上げ工程において、第1引き起こしロープ110のうち引き起こし部600を挟んで基端部A1とは反対側の端部を補助クレーン200にて吊り上げることにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こす。
【0153】
次に、図15(B)に示すように、第1端部固定工程において、第1引き起こしロープ110とは別に準備した補助ロープ500の第1端部510を第1固定部B1に固定する。補助ロープ500の長さは、例えば第1引き起こしロープ110の長さと同程度に設定される。また、図15(B)に示すように、第2端部固定工程において、第1固定部B1から第1引き起こしロープ110を取り外し、当該取り外した第1引き起こしロープ110を補助ロープ500のうち第1端部510の反対側の第2端部520に固定する。
【0154】
次に、図15(C)に示すように、下げ工程において、引き起こし部600を挟んで基端部A1の反対側に位置する第1引き起こしロープ110が、当該引き起こし部600を跨いで内側空間の外側を通って地上付近に至るように、第1引き起こしロープ110を吊った補助クレーン200のフックを地上に向けて下げる。これにより、第1引き起こしロープ110に固定された補助ロープ500の第2端部510を先端部A3側へと吊り上げる。
【0155】
最後に、図15(D)に示すように、保持工程において、地上において補助クレーン200から第1引き起こしロープ110を取り外し、当該第1引き起こしロープ110を第1固定部B1に固定することにより、第1引き起こしロープ110および補助ロープ500をリアストラット721の長手方向に延びる姿勢で当該リアストラット721に保持させる。
【0156】
以上のように、変形例4では、地上における作業によって第1引き起こしロープ110および補助ロープ500をリアストラット721の長手方向に延びる姿勢で当該リアストラット721に保持させることができるため、クレーンX1の稼働時において引き起こしロープ110および補助ロープ500が邪魔になることを抑止できる。しかも、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後に第1引き起こしロープ110をさらに上方へと吊り上げるように補助クレーン200のフックを引き上げる必要がなく、これにより補助クレーン200に求められる揚程を短く抑えることができる。
【0157】
さらに、変形例4では、補助ロープ500は、リアストラット721の引き起こしに使用されることなく、第1引き起こしロープ110をリアストラット721に保持させるために使用されるため、強度の高い材質によって補助ロープ500を形成する必要がなく、当該補助ロープ500を軽量化することができる。このため、補助ロープ500のコストを低減することができるとともに、当該補助ロープ500の重量がクレーンX1の吊り能力に影響を及ぼすことを抑止できる。
【0158】
さらに、変形例4では、補助クレーン200によって吊り上げられる第1引き起こしロープ110が引き起こし部600によって取り囲まれるため、当該第1引き起こしロープ110が内側空間から逸脱することによりリアストラット721が回動方向に沿って落下してしまうことを抑止できる。
【0159】
なお、変形例4では、引き起こし部600は、内側空間を完全に取り囲んでいるが、これに限らず、変形例2の場合と同様に内側空間開くように変位可能に構成されていてもよい。
【0160】
また、変形例4では、引き起こし部600は、パイプ状をなしているが、これに限らず、引き起こし部600に形状はクレーンX1の使用態様等に応じて適宜変更可能である。例えば、引き起こし部600は、内側空間を取り囲むように形成されたリング状をなしていてもよいし、中心部に内側空間に相当する貫通孔を有する円板状をなしていてもよい。
【0161】
また、変形例4では、引き起こし部600は、内側空間を取り囲む形状をなしているが、これに限らず、第1引き起こしロープ110と補助ロープ500とを繋いだロープ接続ユニットが引き起こし部600を跨ぐようにしてリアストラット721に保持され得るのであれば、内側空間を形成されなくともよい。例えば、引き起こし部600は、前記のロープ接続ユニットが引掛けられるように設けられた滑車状をなしていてもよい。
【0162】
また、変形例4では、補助ロープ500の第1端部510と第1引き起こしロープ110とは、同一の第1固定部B1に固定されるが、これに限らず、基端部A1の近傍であれば異なる部位に固定されてもよい。
【0163】
図16(A),(B)は、変形例5に係るリアストラット721の引き起こし方法を示す概略図である。以下では、図16(A),(B)を用いて、第1,第2引き起こしロープ110、120のうち第1引き起こしロープ110側におけるリアストラット721の引き起こし工程について説明する。なお、第2引き起こしロープ120側においても同様の工程にてリアストラット721が引き起こされる。
【0164】
図16(A),(B)に示すように、変形例5では、クレーンX1は、変形例4の場合と同様に引き起こし部721cに代えて引き起こし部600を備えている。
【0165】
変形例4に係るリアストラット721の引き起こし方法は、上記の実施形態とは異なり、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後における取り外し工程を有してらず、これに代えて第1端部固定工程および保持工程を有することにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後の第1引き起こしロープ110を当該リアストラット721に保持させる。以下では、変形例5に係るリアストラット721の引き起こし方法において、上記の実施形態と異なる点を説明する。
【0166】
変形例5では、まず、配置工程において、第1引き起こしロープ110が引き起こし部600に取り囲まれるように当該第1引き起こしロープ110を内側空間に通す。
【0167】
次に、第1端部固定工程において、第1引き起こしロープ110のうち引き起こし部600を挟んで基端部A1の反対側の端部に対して、変形例4と同様の補助ロープ500の第1端部510を固定する。
【0168】
そして、図16(A)に示すように、吊り上げ工程において、第1引き起こしロープ110のうち引き起こし部600を挟んで基端部A1とは反対側の端部を補助クレーン200にて吊り上げることにより、リアストラット721を所定の位置まで引き起こす。この際、補助ロープ500は、当該第1引き起こしロープ110との間に引き起こし部600を挟むように位置し、当該補助ロープ500の第2端部520が地上付近まで吊り下がる。
【0169】
最後に、図16(B)に示すように、保持工程において、地上において補助ロープ500の第2端部520を第1固定部B1に固定するとともに、補助クレーン200のフックを下げることにより当該補助クレーン200から第1引き起こしロープ110を取り外す。これにより、第1引き起こしロープ110および補助ロープ500をリアストラット721の長手方向に延びる姿勢で当該リアストラット721に保持させる。
【0170】
以上のように、変形例5では、地上における作業によって第1引き起こしロープ110および補助ロープ500をリアストラット721の長手方向に延びる姿勢で当該リアストラット721に保持させることができるため、クレーンX1の稼働時において引き起こしロープ110および補助ロープ500が邪魔になることを抑止できる。しかも、リアストラット721を所定の位置まで引き起こした後に第1引き起こしロープ110をさらに上方へと吊り上げるように補助クレーン200のフックを引き上げる必要がなく、これにより補助クレーン200に求められる揚程を短く抑えることができる。
【0171】
なお、変形例5では、保持工程において、補助クレーン200のフックを下げることにより当該補助クレーン200から第1引き起こしロープ110を取り外したが、これに限らず、当該フックの一部に開閉機能を備え付け、保持工程において前記一部を開くことにより、当該開いた一部を通じて第1引き起こしロープ110を補助クレーン200から取り外してもよい。
【0172】
また、上記の実施形態では、ストラットユニット7は、ジブ5を支持するフロントストラット71およびリアストラット721を有しており、当該ストラット71,721によってジブ5が支持されるが、ストラットユニット7に含まれるストラットの数は、これに限定されない。例えば、ストラットユニット7には、1つのストラットが含まれており、当該ストラットによってジブ5が支持されてもよい。この場合、当該1つのストラットが本発明に係るクレーンのストラットに相当する。
【0173】
また、上記の本実施形態では、引き起こし部721cは、ストラット本体721aの先端部A3に配置されているが、これに限らず、リアストラット721の重心G1よりも先端部A3側に配置されていればよい。すなわち、引き起こし部721cは、リアストラット721の重心G1よりも先端部A3側であれば、当該ストラット本体721aの中間部A2に取り付けられていてもよい。
【0174】
また、上記の実施形態では、固定部721bは、リアストラット721に含まれているが、これに限らず、地上において第1,第2引き起こしロープ110,120の取付け作業および取り外し作業が行うことが可能な程度に基端部A1の近傍に位置するのであれば、ブーム4が固定部721bを含んでいてもよいし、フロントストラット71が固定部721bを含んでいてもよい。
【0175】
また、上記の実施形態では、引き起こし部721cは、リアストラット721の回動軸に平行な方向においてストラット本体721aの両側に突出するように設けられているが、これに限らず、鉛直方向の下側から第1,第2引き起こしロープ110,120を接触させつつリアストラット721を引き起こすことが出来るのであれば、引き起こし部721cの配置は特に限定されない。例えば、引き起こし部721cは、前記平行方向においてストラット本体721aの内側に配置されていてもよい。このような場合、リアストラット721を引き起こすための引き起こしロープは、第1,第2引き起こしロープ110,120の2本でなくともよく、例えば1本の引き起こしロープによってリアストラット721を引き起こしてもよい。
【0176】
また、上記の本実施形態では、取り外し工程において、固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外した後に補助クレーン200の吊り上げフック210から幅規制部材220および第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外したが、これに限らず、逆の手順にて取り外し工程が行われてもよい。
【0177】
また、上記の本実施形態では、取り外し工程において、固定部721bから第1,第2引き起こしロープ110,120を取り外したが、これに限らず、例えば第1,第2引き起こしロープ110,120を補助クレーン200から取り外した後に、固定部721bに第1,第2引き起こしロープ110,120を固定したまま当該第1,第2引き起こしロープ110,120をリアストラット721に巻き付けるようにして保持させてもよい。
【0178】
以上説明した上記の実施形態およびその変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態およびその変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0179】
d2,e1 引き起こし部
d3,e2 倒れ止め部
d4,e3 制限部
e11 本体部
A1 基端部
A3 先端部
G1 重心
R1 連通路
S1 内側空間
S2 外側空間
X1 クレーン
1 下部走行体(機体)
2 上部旋回体(機体)
4 ブーム
5 ジブ
110,120 第1,第2引き起こしロープ
200 補助クレーン
410,420 第1,第2倒れ止めロープ
500 補助ロープ
510 第1端部
520 第2端部
721 リアストラット(ストラット)
721a ストラット本体
721b 固定部
721c 引き起こし部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16