(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る荷役車両の油圧駆動装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧駆動装置を備えた荷役車両を示す側面図である。同図において、本実施形態に係る荷役車両1は、バッテリ式のフォークリフトである。荷役車両1は、車体フレーム2と、この車体フレーム2の前部に配置されたマスト3とを備えている。マスト3は、車体フレーム2に傾動可能に支持された左右1対のアウターマスト3aと、これらのアウターマスト3aの内側に配置され、アウターマスト3aに対して昇降可能なインナーマスト3bとからなっている。
【0014】
マスト3の後側には、昇降用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ4が配置されている。リフトシリンダ4のピストンロッド4pの先端部は、インナーマスト3bの上部に連結されている。
【0015】
インナーマスト3bには、リフトブラケット5が昇降可能に支持されている。リフトブラケット5には、荷物を積載するフォーク(昇降物)6が取り付けられている。インナーマスト3bの上部にはチェーンホイール7が設けられ、チェーンホイール7にはチェーン8が掛装されている。チェーン8の一端部はリフトシリンダ4に連結され、チェーン8の他端部はリフトブラケット5に連結されている。リフトシリンダ4を伸縮させると、チェーン8を介してフォーク6がリフトブラケット5と共に昇降する。
【0016】
車体フレーム2の左右両側には、傾動用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ9がそれぞれ支持されている。ティルトシリンダ9のピストンロッド9pの先端部は、アウターマスト3aの高さ方向ほぼ中央部に回動可能に連結されている。ティルトシリンダ9を伸縮させると、マスト3が傾動する。
【0017】
車体フレーム2の上部には、運転室10が設けられている。運転室10の前部には、リフトシリンダ4を作動させてフォーク6を昇降させるためのリフト操作レバー11と、ティルトシリンダ9を作動させてマスト3を傾動させるためのティルト操作レバー12とが設けられている。
【0018】
また、運転室10の前部には、操舵を行うためのステアリング13が設けられている。ステアリング13は、油圧式のパワーステアリングであり、パワーステアリング(PS)用油圧シリンダとしてのPSシリンダ14(
図2参照)により運転者の操舵をアシストすることが可能である。
【0019】
また、荷役車両1は、アタッチメント(図示せず)を動作させるアタッチメント用油圧シリンダとしてのアタッチメントシリンダ15(
図2参照)を備えている。アタッチメントとしては、例えばフォーク6を左右移動、傾動、回転させるもの等がある。また、運転室10には、アタッチメントシリンダ15を作動させてアタッチメントを動作させるためのアタッチメント操作レバー(図示せず)が設けられている。
【0020】
さらに、運転室10には、特に図示はしないが、荷役車両1の走行方向(前進/後進/ニュートラル)を切り換えるためのディレクションスイッチが設けられている。
【0021】
図2は、本発明に係る油圧駆動装置の第1実施形態を示す油圧回路図である。同図において、本実施形態の油圧駆動装置16は、リフトシリンダ4、ティルトシリンダ9、アタッチメントシリンダ15及びPSシリンダ14を駆動する装置である。
【0022】
油圧駆動装置16は、単一の油圧ポンプモータ17と、この油圧ポンプモータ17を駆動する単一の電動モータ18とを備えている。油圧ポンプモータ17は、作動油を吸い込むための吸込口17aと、作動油を吐出するための吐出口17bとを有している。油圧ポンプモータ17は、一方向に回転可能な構成とされている。
【0023】
電動モータ18は、電動機または発電機として機能する。具体的には、油圧ポンプモータ17が油圧ポンプとして作動する場合には、電動モータ18は電動機として機能し、油圧ポンプモータ17が油圧モータとして作動する場合には、電動モータ18は発電機として機能する。電動モータ18が発電機として機能すると、電動モータ18で発生した電力がバッテリ(図示せず)に蓄電される。つまり、回生動作が行われることとなる。
【0024】
油圧ポンプモータ17の吸込口17aには、作動油を貯留するタンク19が油圧配管20を介して接続されている。油圧配管20には、タンク19から油圧ポンプモータ17への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁21が設けられている。油圧ポンプモータ17は、リフト操作レバー11による上昇操作時にはリフトシリンダ4に作動油を供給するポンプとして機能するとともに、リフト操作レバー11による下降操作時にはリフトシリンダ4から排出される作動油により駆動される油圧モータとして機能する。
【0025】
油圧ポンプモータ17の吐出口17bとリフトシリンダ4のボトム室4bとは、油圧配管22を介して接続されている。油圧配管22には、リフト上昇用の電磁比例弁23が配設されている。電磁比例弁23は、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bへの作動油の流通を許容する開位置23aと、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bへの作動油の流通を遮断する閉位置23bとの間で切り換えられる。
【0026】
電磁比例弁23は、通常は閉位置23b(図示)にあり、ソレノイド操作部23cに操作信号(リフト操作レバー11の上昇操作の操作量に応じたリフト上昇用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置23aに切り換わる。すると、油圧ポンプモータ17からリフトシリンダ4のボトム室4bに作動油が供給され、リフトシリンダ4が伸長し、これに伴ってフォーク6が上昇する。なお、電磁比例弁23は、開位置23aにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。油圧配管22における電磁比例弁23とリフトシリンダ4との間には、電磁比例弁23からリフトシリンダ4への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁24が設けられている。
【0027】
油圧配管22における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁23との分岐点には、油圧配管25を介してティルト用の電磁比例弁26が接続されている。油圧配管25には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁26への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁27が設けられている。
【0028】
電磁比例弁26とティルトシリンダ9のロッド室9a及びボトム室9bとは、油圧配管28,29を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁26は、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のロッド室9aへの作動油の流通を許容する開位置26aと、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のボトム室9bへの作動油の流通を許容する開位置26bと、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9への作動油の流通を遮断する閉位置26cの間で切り換えられる。
【0029】
電磁比例弁26は、通常は閉位置26c(図示)にあり、開位置26a側のソレノイド操作部26dに操作信号(ティルト操作レバー12の後傾操作の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置26aに切り換わり、開位置26b側のソレノイド操作部26eに操作信号(ティルト操作レバー12の前傾操作の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置26bに切り換わる。電磁比例弁26が開位置26aに切り換わると、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のロッド室9aに作動油が供給され、ティルトシリンダ9が収縮し、これに伴ってマスト3が後傾する。電磁比例弁26が開位置26bに切り換わると、油圧ポンプモータ17からティルトシリンダ9のボトム室9bに作動油が供給され、ティルトシリンダ9が伸長し、これに伴ってマスト3が前傾する。なお、電磁比例弁26は、開位置26a,26bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
【0030】
油圧配管25における逆止弁27の上流側には、油圧配管30を介してアタッチメント用の電磁比例弁31が接続されている。油圧配管30には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁31への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁32が設けられている。
【0031】
電磁比例弁31とアタッチメントシリンダ15のロッド室15a及びボトム室15bとは、油圧配管33,34を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁31は、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15のロッド室15aへの作動油の流通を許容する開位置31aと、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15のボトム室15bへの作動油の流通を許容する開位置31bと、油圧ポンプモータ17からアタッチメントシリンダ15への作動油の流通を遮断する閉位置31cの間で切り換えられる。
【0032】
電磁比例弁31は、通常は閉位置31c(図示)にあり、開位置31a側のソレノイド操作部31dに操作信号(アタッチメント操作レバーの一方側操作の操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置31aに切り換わり、開位置31b側のソレノイド操作部31eに操作信号(アタッチメント操作レバーの他方側操作の操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置31bに切り換わる。なお、アタッチメントシリンダ15の動作については省略する。また、電磁比例弁31は、開位置31a,31bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
【0033】
油圧配管30における逆止弁32の上流側には、油圧配管35を介してPS用の電磁比例弁36が接続されている。油圧配管35には、油圧ポンプモータ17から電磁比例弁36への方向にのみ作動油を流通させる逆止弁37が設けられている。
【0034】
電磁比例弁36とPSシリンダ14の第1ロッド室14a及び第2ロッド室14bとは、油圧配管38,39を介してそれぞれ接続されている。電磁比例弁36は、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14の第1ロッド室14aへの作動油の流通を許容する開位置36aと、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14の第2ロッド室14bへの作動油の流通を許容する開位置36bと、油圧ポンプモータ17からPSシリンダ14への作動油の流通を遮断する閉位置36cの間で切り換えられる。
【0035】
電磁比例弁36は、通常は閉位置36c(図示)にあり、開位置36a側のソレノイド操作部36dに操作信号(ステアリング13の左右一方側操作の操作速度に応じたPS用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置36aに切り換わり、開位置36b側のソレノイド操作部36eに操作信号(ステアリング13の左右他方側操作の操作速度に応じたPS用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置36bに切り換わる。なお、PSシリンダ14の動作については省略する。また、電磁比例弁36は、開位置36a,36bにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
【0036】
油圧配管22における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁23との分岐点は、油圧配管40を介してタンク19と接続されている。油圧配管40には、アンロード弁41及びフィルタ42が設けられている。また、油圧配管40と電磁比例弁26,31,36とは、油圧配管43〜45を介して接続されている。さらに、電磁比例弁23,26,31,36は、油圧配管46を介して油圧配管40と接続されている。
【0037】
油圧ポンプモータ17の吸込口17aとリフトシリンダ4のボトム室4bとは、油圧配管(下降油路)47を介して接続されている。油圧配管47は、リフト操作レバー11による単独下降操作時にはリフトシリンダ4から排出される作動油が油圧ポンプモータ17の吸込口17aへと流れるように、リフトシリンダ4のボトム室4bと油圧ポンプモータ17の吸込口17aとを接続する。油圧配管47には、リフト下降用の電磁比例弁(第1制御弁)48が配設されている。電磁比例弁48は、リフトシリンダ4のボトム室4bから油圧ポンプモータ17の吸込口17aへの作動油の流通を許容する開位置48aと、リフトシリンダ4のボトム室4bから油圧ポンプモータ17の吸込口17aへの作動油の流通を遮断する閉位置48bとの間で切り換えられる。
【0038】
電磁比例弁48は、通常は閉位置48b(図示)にあり、ソレノイド操作部48cに操作信号(リフト操作レバー11の下降操作の操作量に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値)が入力されると、開位置48aに切り換わる。すると、フォーク6の自重によりフォーク6が下降し、これに伴ってリフトシリンダ4が収縮し、リフトシリンダ4のボトム室4bから作動油が流れ出る。なお、電磁比例弁48は、開位置48aにあるときは、操作信号に応じた開度で開く。
【0039】
油圧配管47における油圧ポンプモータ17と電磁比例弁48との分岐点は、油圧配管(バイパス油路)49を介してタンク19と接続されている。油圧配管49には、圧力補償弁(流量制御弁)50が配設されている。圧力補償弁50は、圧力補償機能付きの流量制御弁である。なお、油圧配管49には、フィルタ54が設けられている。
【0040】
圧力補償弁50は、作動油の流通を許容する開位置50aと、作動油の流通を遮断する閉位置50bと、作動油の流通量を調整する絞り位置50cとの間で切り換えられる。圧力補償弁50の閉位置50b側のパイロット操作部と電磁比例弁48の上流側(前側)とは、パイロット流路51を介して接続されている。圧力補償弁50の開位置50a側のパイロット操作部と電磁比例弁48の下流側(後側)とは、パイロット流路52を介して接続されている。圧力補償弁50は、電磁比例弁48の前後の圧力差に応じた開度で開く。具体的には、圧力補償弁50は、通常は閉位置(図示)にある。そして、電磁比例弁48の前後の圧力差が大きくなるほど、圧力補償弁50の開度が小さくなる。
【0041】
上述で説明したシリンダのうち、作動油の給排によりリフトシリンダ(第1油圧シリンダ)4と異なる動作を行うティルトシリンダ9、アタッチメントシリンダ15、及びPSシリンダ14を総称して「第2油圧シリンダ70」と称することがある。また、第2油圧シリンダ70を操作するためのレバーである、ティルト操作レバー12、ステアリング13、アタッチメント操作レバーを総称して「第2操作部73」と称することがある。
【0042】
図3は、油圧駆動装置16の制御系を示す構成図である。同図において、油圧駆動装置16は、リフト操作レバー11の操作量を検出するリフト操作レバー操作量センサ(操作量検出部)55と、ティルト操作レバー12の操作量を検出するティルト操作レバー操作量センサ56と、アタッチメント操作レバー(図示せず)の操作量を検出するアタッチメント操作レバー操作量センサ57と、ステアリング13の操作速度を検出するステアリング操作速度センサ58と、電動モータ18の実回転数(モータ実回転数)を検出する回転数センサ59と、コントローラ60と、を備えている。
【0043】
コントローラ60は、操作レバー操作量センサ55〜57、ステアリング操作速度センサ58、回転数センサ59の検出値を入力し、所定の処理を行い、電動モータ18、電磁比例弁23,26,31,36,48制御する。なお、第2操作部73の操作量を検出するセンサ56,57,58を「第2操作量検出部71」と称することがある。また、油圧ポンプモータ17の吐出口17bと第2油圧シリンダとの間に配設され、第2操作部73の操作に基づいて前記作動油の流れを制御する電磁比例弁26,31,36を「第2制御弁72」と称することがある。
【0044】
図4は、油圧駆動装置16の制御系のブロック構成を示すブロック構成図である。
図4に示すように、コントローラ60は、モータドライバ61と、力行トルク制限制御目標回転数算出部66と、モータ指令回転数算出部67と、判定部69と、を備える。
【0045】
モータドライバ61は、比較部62A,62Bと、PID演算部63と、力行トルク制限値算出部68と、出力トルク決定部(制御部)64と、モータ制御部(制御部)65とを有している。比較部62Aは、モータ指令回転数算出部67で設定されたモータ指令回転数と回転数センサ59により検出されたモータ実回転数との回転数偏差を算出する。比較部62Bは、力行トルク制限制御目標回転数算出部66で設定された力行トルク制限制御目標回転数と回転数センサ59により検出されたモータ実回転数との回転数偏差を算出する。PID演算部63は、モータ指令回転数とモータ実回転数との回転数偏差のPID演算を行い、当該回転数偏差がゼロになるような電動モータ18の力行トルク指令値を求める。PID演算は、比例(Proportional)動作、積分(Integral)動作及び微分(Derivative)動作を組み合わせた演算である。力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限制御目標回転数と回転数センサ59により検出されたモータ実回転数との回転数偏差に基づいて、電動モータ18の力行トルク制限値を算出し、設定する。力行トルク制限値とは、電動モータ18の出力トルクが力行側へ向かう場合に、出力トルクが大きくならないように制限するための値である。なお、力行トルク制限値算出部68が設定する力行トルク制限値については詳述する。
【0046】
制御部を構成する出力トルク決定部64及びモータ制御部65は、モータ指令回転数(回転数指令値)に基づく回転数となるように電動モータ18を制御し、電動モータ18の出力トルクが力行側へ向かう場合は、力行トルク制限値に基づく回転数となるように電動モータ18を制御する。出力トルク決定部64は、PID演算部63で得られた力行トルク指令値(モータ指令回転数に基づいている値である)と力行トルク制限値算出部68で設定された電動モータ18の力行トルク制限値とを比較し、電動モータ18の出力トルクを決定する。具体的には、力行トルク指令値が力行トルク制限値以下のときは、力行トルク指令値を電動モータ18の出力トルクとし、力行トルク指令値が力行トルク制限値よりも高いときは、力行トルク制限値を電動モータ18の出力トルクとする。モータ制御部65は、出力トルク決定部64で決定された出力トルクを電流信号に変換して電動モータ18に送出する。なお、電動モータ18が、力行トルク制限値に基づく回転数となるように制御されることにより、モータ指令回転数に基づく駆動を達成できない場合、圧力補償弁50は、油圧配管49を介してタンク19へ作動油を排出する。
【0047】
モータ指令回転数算出部67は、各センサ55,56,57,58で検出された検出値を取得し、当該検出値に基づいてモータ指令回転数(回転数指令値)を設定する。モータ指令回転数算出部67は、各操作レバーの操作量に応じてモータ指令回転数を設定する。なお、モータ指令回転数算出部67が設定するモータ指令回転数については詳述する。力行トルク制限制御目標回転数算出部66は、各センサ55,56,57,58で検出された検出値を取得し、当該検出値に基づいて力行トルク制限制御目標回転数を設定する。力行トルク制限制御目標回転数算出部66は、各操作レバーの操作状況に応じて力行トルク制限制御目標回転数を設定する。
【0048】
判定部69は、リフト操作レバー11の下降操作が単独で行われたか否かと、リフト操作レバー11の下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われたか否かを判定する。例えば、リフト下降+ティルト操作、リフト下降+アタッチメント操作、リフト下降+パワーステアリング操作、リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作が行われた場合、判定部69は、リフト操作レバー11を含む第2操作部73の操作が同時に行われたと判定する。判定部69は、判定結果をモータ指令回転数算出部67及び力行トルク制限値算出部68に判定結果を出力する。
【0049】
図6(a)に示すように、判定部69によりリフト操作レバー11の下降操作が単独で行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数(回転数指令値と)して、下降必要回転数を設定する。また、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、予め設定された最小回転数を設定する。この最小回転数は、ポンプや電動機の仕様等によって定められてよく、0rpmか0rpmに近い値に設定される。
【0050】
図6(a)に示すように、判定部69によりリフト操作レバー11の下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数及び第2油圧シリンダ必要回転数のうちの最大値を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、第2油圧シリンダ必要回転数を設定する。
【0051】
具体的には、
図6(b)に示すように、「リフト下降+パワーステアリング操作」が行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数及びPS必要回転数のうちの最大値(N_max_Lift_PS)を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、PS必要回転数(N_max_PS)を設定する。「リフト下降+ティルト操作」又は「リフト下降+アタッチメント操作」が行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数、ティルト必要回転数、アタッチメント必要回転数のうちの最大値(N_max_Lift_Tilt_ATT)を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、ティルト必要回転数、アタッチメント必要回転数(N_max_Tilt_ATT)を設定する。「リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作」又は「リフト下降+アタッチメント操作+パワーステアリング操作」が行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数、ティルト必要回転数、アタッチメント必要回転数、パワーステアリング必要回転数のうちの最大値(N_max_Lift_PS_Tilt_ATT)を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、ティルト必要回転数、アタッチメント必要回転数、PS必要回転数のうちの最大値(N_max_PS_Tilt_ATT)を設定する。
【0052】
図5は、コントローラ60により実行される制御処理手順を示すフローチャートである。なお、本制御処理では、フォーク6の下降(リフト下降)を含む動作のみを対象としている。また、本制御処理を実行する周期は、実験等により適宜決められている。
【0053】
同図において、まず操作レバー操作量センサ55〜57により検出されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12及びアタッチメント操作レバーの操作量と、ステアリング操作速度センサ58により検出されたステアリング13の操作速度とを取得する(手順S101)。
【0054】
続いて、手順S101で取得されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12、アタッチメント操作レバーの操作量及びステアリング13の操作速度に基づいて、操作条件としてのリフト下降モードを判定する(手順S102)。リフト下降モードとしては、リフト下降単独操作、リフト下降+ティルト操作、リフト下降+アタッチメント操作、リフト下降+パワーステアリング操作、リフト下降+ティルト+パワーステアリング操作がある。
【0055】
続いて、手順S101で取得されたリフト操作レバー11、ティルト操作レバー12、アタッチメント操作レバーの操作量及びステアリング13の操作速度と手順S102で判定されたリフト下降モードとに応じた電磁比例弁ソレノイド電流指令値を求める(手順S103)。電磁比例弁ソレノイド電流指令値としては、リフト操作レバー11の下降操作の操作量に応じたリフト下降用ソレノイド電流指令値、ティルト操作レバー12の操作量に応じたティルト用ソレノイド電流指令値、アタッチメント操作レバーの操作量に応じたアタッチメント用ソレノイド電流指令値、ステアリング13の操作速度に応じたパワーステアリング(PS)用ソレノイド電流指令値がある。
【0056】
続いて、手順S102で得られた操作条件に対する必要回転数を求める(手順S104)。必要回転数としては、リフト必要モータ回転数、ティルト必要モータ回転数、アタッチメント必要モータ回転数及びパワーステアリング(PS)必要モータ回転数がある。リフト必要モータ回転数は、リフト動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。ティルト必要モータ回転数は、ティルト動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。アタッチメント必要モータ回転数は、アタッチメント動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。PS必要モータ回転数は、PS動作を行うのに必要な電動モータ18の回転数である。
【0057】
続いて、モータ指令回転数算出部67は、手順S102で判定されたリフト下降モードと手順S104で得られた必要回転数に基づいて、モータ回転数指令値(モータ指令回転数)を設定する(手順S105)。このとき、モータ指令回転数は、上述の
図6に基づいて設定される。
【0058】
続いて、手順S102で判定されたリフト下降モードに基づいて、電動モータ18の力行トルク制限値を設定する(手順S106)。力行トルク制限値は、許容する力行トルクの値のことである。このとき、力行トルク制限値算出部68は、上述の
図6に基づいて設定される。
【0059】
手順S107を実施した後、手順S103で得られた電磁比例弁ソレノイド電流指令値を対応する電磁比例弁のソレノイド操作部に送出する(手順S107)。このとき、リフト下降用ソレノイド電流指令値を電磁比例弁48のソレノイド操作部48cに送出する。また、ティルト用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁26のソレノイド操作部26d,26eの何れかに送出し、アタッチメント用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁31のソレノイド操作部31d,31eの何れかに送出し、PS用ソレノイド電流指令値を求めたときは、その電流指令値を電磁比例弁36のソレノイド操作部36d,36eの何れかに送出する。
【0060】
続いて、手順S105で設定されたモータ回転数指令値(モータ指令回転数)と回転数センサ59により検出されたモータ実回転数と手順S106で設定された電動モータ18の力行トルク制限値とに基づいて電動モータ18の出力トルクを求め、その出力トルクを制御信号として電動モータ18に送出する(手順S108)。手順S108の処理は、
図4に示すように、コントローラ60に含まれるモータドライバ61により実行される。
【0061】
次に、本実施形態の油圧駆動装置16の動作を
図7を参照して説明する。
図7(a)は、積荷荷重が大きい状態(高負荷状態)において、リフト下降操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。
図7(a)の状態では十分な回生を行うことができる。
図7(b)は、積荷荷重が小さい状態(低負荷状態)において、リフト下降操作を行う場合のタイミングチャートを示す図である。
図7(b)の状態では十分な回生を行うことができない。
図7(a)及び
図7(b)の上段では、下降必要回転数を示すグラフC1が破線で記載され、第2油圧シリンダ必要回転数を示すグラフC2が破線で記載されている。グラフC2は、時刻t1で立ち上り、時刻t2でゼロとなる。実線で示されるグラフAが実回転数を示している。
【0062】
まず、
図7に示すように、スタートから時刻t1までの間は、リフト下降操作が単独で行われる。従って、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数(グラフC1)を設定する。また、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、予め設定された最小回転数(ここでは0rpmとする)を設定する。時刻t1から時刻t2の間は、リフト下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われる。従って、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数及び第2油圧シリンダ必要回転数のうちの最大値(ここでは下降必要回転数のグラフC1)を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、第2油圧シリンダ必要回転数(グラフC2)を設定する。そして、時刻t2以降は、リフト下降操作が単独で行われる。従って、モータ指令回転数算出部67は、モータ指令回転数として、下降必要回転数(グラフC1)を設定する。また、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、予め設定された最小回転数(ここでは0rmpとする)を設定する。
【0063】
図7(a)に示す高負荷状態においては、スタートから時刻t1までの間は、リフト下降操作が単独で行われて十分に回生を行うことができるため、モータ出力トルクは回生側へ向かう。従って、力行トルク制限を受けることなく、実回転数(グラフA)が下降必要回転数(グラフC1)と等しくなる。時刻t1から時刻t2の間も、十分な回生を行うことができるため、モータ出力トルクが、第2油圧シリンダが動作する分だけ力行側へ向かう。従って、力行トルク制限を受けることなく、実回転数(グラフA)が下降必要回転数(グラフC1)と等しくなる。時刻t2以降は、リフト下降操作が単独で行われて十分に回生を行うことができるため、モータ出力トルクは回生側へ向かう。従って、力行トルク制限を受けることなく、実回転数(グラフA)が下降必要回転数(グラフC1)と等しくなる。
【0064】
図7(b)に示す低負荷状態においては、十分に回生を行うことができない。従って、スタートから時刻t1までの間は、モータ出力トルクが力行側へ向かわないように力行トルク制限がかかる。従って、力行トルク制限(力行トルク制限値は0rpm)を受けて、実回転数(グラフA)が0rpmとなる。時刻t1から時刻t2の間は、十分な回生を行うことができないが、力行トルク制限値が第2油圧シリンダ必要回転数(グラフC2)であるため、実回転数(グラフA)が第2油圧シリンダ必要回転数(グラフC2)と等しくなり、それに伴って、モータ出力トルクが力行側へ向かう。t2以降は、モータ出力トルクが力行側へ向かわないように力行トルク制限がかかる。従って、力行トルク制限(力行トルク制限値は0rpm)を受けて、実回転数(グラフA)が0rpmとなる。
【0065】
なお、実回転数が下降必要回転数を下回った場合は、圧力補償弁50及びパイロット流路51で不足分の流量を補う。また、実回転数が第2油圧シリンダ必要回転数を上回った場合はアンロード弁41で過剰分をタンク19へバイパスさせるため、安定的な動作が可能となる。
【0066】
次に、本実施形態に係る荷役車両1の油圧駆動装置16の作用・効果について説明する。
【0067】
本実施形態に係る荷役車両1の油圧駆動装置16において、判定部69によりリフト操作レバー11の下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、回転数指令値として、下降必要回転数及び第2油圧シリンダ必要回転数のうちの最大値を設定する。従って、積荷が重い場合は高い回転数にて高効率に回生を行うことが出来る。一方、判定部69によりリフト操作レバー11の下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われたと判定された場合、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、第2油圧シリンダ必要回転数を設定する。従って、積荷が軽いいことによって電動モータ18の出力トルクが力行側へ向かう場合に、第2操作部73の操作が同時に行われたときは、制御部が力行トルク制限値に基づく回転数となるように電動モータ18を制御し、第2油圧シリンダ70を動作させるのに必要最低限の回転数で回転することで、消費電力を抑制することができる。以上より、積荷が重い場合の回生効率を向上させると共に、積荷が軽い場合の電力消費を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る荷役車両1の油圧駆動装置16において、第2油圧シリンダ70には、複数の油圧シリンダが含まれ、判定部69によりリフト操作レバー11の下降操作を含む第2操作部73の操作が同時に行われたと判定された場合、モータ指令回転数算出部67は、回転数指令値として、下降必要回転数及び第2油圧シリンダ70の複数の油圧シリンダの必要回転数のうちの最大値を設定し、力行トルク制限値算出部68は、力行トルク制限値として、第2油圧シリンダ70の複数の油圧シリンダの必要回転数のうちの最大値を設定してよい。これにより、第2油圧シリンダが複数の油圧シリンダを含む場合であっても、積荷が重い場合の回生効率を向上させると共に、積荷が軽い場合の電力消費を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る荷役車両1の油圧駆動装置16は、油圧配管47における電磁比例弁48と油圧ポンプモータ17の吸込口17aとの間に設けられた分岐点とタンク19とを接続する油圧配管49と、油圧配管49に設けられた圧力補償弁50と、を備える。電動モータ18が、力行トルク制限値に基づく回転数となるように制御されることにより、回転数指令値に基づく駆動を達成できない場合、圧力補償弁50は、油圧配管49を介してタンク19へ作動油を排出してよい。これにより、不要な作動油をタンク19へ戻すことができる。
【0070】
以上、本発明に係る荷役車両の油圧駆動装置の好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0071】
上述の実施形態では、第2油圧シリンダとして、ティルトシリンダ、PSシリンダ、及びアタッチメントシリンダが設けられている。しかし、第2油圧シリンダは少なくとも一本あればよく、一部は省略されてよい。例えば、上記実施形態では、アタッチメント及びパワーステアリングが搭載されているが、本発明の油圧駆動装置は、アタッチメント及びパワーステアリングが搭載されていないフォークリフトにも適用可能である。また、本発明の油圧駆動装置は、フォークリフト以外のバッテリ式の荷役車両であれば適用可能である。
【0072】
リフト操作レバーの下降操作に基づいて作動油の流れを制御する制御弁、及び第2操作部の操作に基づいて作動油の流れを制御する制御弁として、電磁式の比例弁を例示したが、油圧式、機械式のいずれでもよい。