(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒は、白金、金、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項6に記載の触媒部材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本願発明の実施形態の説明]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
本実施形態1に従った多孔質部材1は、ベース部材5とカーボンナノ構造体(10、20)とを備える。ベース部材5は、気孔率が80%以上である多孔質体を含む。カーボンナノ構造体(10、20)は、ベース部材5の表面に形成され、幅が100nm以下である。
【0016】
このようにすれば、気孔率が80%以上とした多孔質体をベース部材5として用い、さらに当該ベース部材5の表面に幅が100nm以下のカーボンナノ構造体を形成することで、多孔質部材の表面積を極めて大きくすることができる。このため、フィルタや触媒、または電池の電極といった用途に適用することで優れた特性を得ることができる。また、ベース体の気孔率を80%以上とすることで、多孔質部材1における通気抵抗を十分低くすることができ、フィルタや触媒(たとえばカーボンナノ構造体の表面に触媒を配置したような触媒部材)に多孔質部材1を適用することで、処理する流体(たとえば気体)の圧力損失を抑制することができる。
【0017】
なお、ここで気孔率(%)とは、(1−(多孔質体の見かけ比重)/(多孔質体を構成する材料の真比重))×100と規定され、ベース体中の細孔の割合が高いほど気孔率の値は大きくなる。
【0018】
上記多孔質部材1において、ベース部材5の表面には複数の細孔が形成されていてもよい。ベース部材5では、表面から、当該表面より内側に位置する細孔の側壁にまでカーボンナノ構造体(10、20)が形成されていてもよい。この場合、カーボンナノ構造体(10、20)を形成する領域の面積を広げることになるので、結果的に多孔質部材1の表面積をより増大させることができる。
【0019】
上記多孔質部材1において、ベース部材5を構成する材料は金属を含んでいてもよい。この場合、多孔質部材1について十分高い強度をえることができる。また、ベース部材5の材料として導電体である金属を用いることで、多孔質部材1に電流を流すことができ、当該多孔質部材1を2次電池の電極といった用途に容易に適用できる。
【0020】
上記多孔質部材1において、ベース部材5を構成する材料はセラミックスを含んでいてもよい。この場合、ベース部材5として一般的な金属を用いる場合より、多孔質部材1の耐熱温度を高めることができる。そのため、たとえば触媒などに多孔質部材1を適用する場合、当該触媒の使用温度を十分高い温度域に設定することができる。
【0021】
上記多孔質部材1において、当該多孔質部材1の厚みを10mmとし、測定風圧を2m/sとしたときの圧力損失が1000Pa以下であってもよい。この場合、多孔質部材1の圧損(通気抵抗)は十分低い状態であるため、気体などの流体を、多孔質部材1を通過するように流通させる場合の圧力損失を十分低く維持することができる。
【0022】
[本願発明の実施形態の詳細]
(多孔質部材の構造)
図1〜
図5を参照して、本発明の実施形態である多孔質部材1を説明する。多孔質部材1は、平板状、柱状、筒状など任意の形状を採用することができる。
【0023】
多孔質部材1は、多孔質体を含むベース部材5と、ベース部材5の表面に形成されたカーボンナノ構造体の一例であるカーボンナノチューブ10とを備える。ベース部材5は、
図2に示すように三次元網目構造を有している。異なる点からいえば、ベース部材5と、当該ベース部材5の表面に形成されたカーボンナノチューブ10とを含む網目構造部3は、
図2に示すように三次元網目構造を有している。カーボンナノチューブ10は、多孔質部材1の最表面から内側に延びる細孔の内部にまで形成されている。なお、ベース部材5の表面に形成されたカーボンナノチューブ10に代えて、他のカーボンナノ構造体としてのカーボンナノウォール20(
図4および
図5を参照)が形成されていてもよい。または、ベース部材5の表面には、カーボンナノチューブ10およびカーボンナノウォール20(
図4および
図5参照)の両方が形成されていてもよい。また、このようなベース部材5の表面に形成されるカーボンナノ構造体としては、他にもグラファイトテーブルなど、幅が100nm以下であり炭素から構成される微細構造体が形成されていてもよい。
【0024】
ここで、カーボンナノチューブ10とは、炭素によって構成されるグラフェンシートが単層または多層の同軸管状になっている構造体を言う。また、カーボンナノウォール20とは、基材(ベース部材5)の表面から突出し、グラフェンシートの単層または多層からなる帯状の構造体を言う。また、異なる観点から言えば、カーボンナノウォール20とは、厚みTを50nm以下、高さHを50nm以上、ベース部材5の表面に沿った方向における長さを100nm以上としたウォール状構造を言う。
【0025】
ベース部材5としては、たとえば多孔質の金属部材を用いることができる。金属部材としては、たとえば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)などめっき法により薄膜を形成することが可能な金属であればベース部材5を構成する材料として適用できる。また、ベース部材5を構成する金属材料としてはステンレス鋼、または当該金属を粉末状にした上で、スラリーに含有させ、このスラリーをスポンジや不織布などの多孔質体に塗布することが可能であるような金属を用いることができる。
【0026】
また、ベース部材5の材料としては、たとえば無機材料を用いることもできる。無機材料としてはたとえば、石英ガラス(SiO
2)を用いることができる。石英ガラスを用いる場合には、ゾルゲル法により石英ガラスを含むベース部材5を形成することができる。また、ベース部材5を構成する材料として、その他の多成分ガラス(たとえばSiO
2−Al
2O
3−B
2O
5など)を用いることができる。この場合、たとえば多成分ガラスの原料を含むスラリーをスポンジや不織布などに塗布し、焼成することで多成分ガラスを含むベース部材5を形成することができる。
【0027】
また、ベース部材5を構成する材料としてセラミックスを用いることもできる。セラミックスとしては、たとえばAl
2O
3、AlN、SiCなどの単成分系のセラミックス、またはムライト(Al
2O
3−SiO
2)やコーディエライト(MgO−Al
2O
3−SiO
2)などの多成分系のセラミックスを用いることができる。この場合も、上述したガラス材料などと同様に、ゾルゲル法や原料を含むスラリーを利用することで、ベース部材5を作製できる。
【0028】
ベース部材5の表面に形成されるカーボンナノ構造体の一例であるカーボンナノチューブ10は、たとえばその直径を0.34nm以上100nm以下とすることができる。また、カーボンナノチューブ10の長さはたとえば10μm以下とすることができる。また、
図4および
図5に示すカーボンナノウォール20の厚みTはたとえば0.34nm以上15nm以下とすることができる。また、カーボンナノウォール20の高さHは、60nm以上7μm以下とすることができる。また、隣接するカーボンナノウォール20の間の距離はたとえば50nm以上1000nm以下とすることができる。
【0029】
上述した多孔質部材1では、多孔質体を含むベース部材5の表面に、さらにカーボンナノ構造体が形成されていることから、単純な多孔質体に対してその表面積を増大させることができる。この結果、単位体積当たりの表面積のきわめて大きな部材を得ることができる。したがって、たとえば本発明による多孔質部材1を触媒の担持体として用いる場合(たとえばカーボンナノ構造体の表面に職版を配置する場合)には、単位体積当たりの触媒の量を増大させることができ、高い性能を有する触媒を実現できる。
【0030】
また、多孔質部材1を熱交換器の冷媒と接触する部位に適用することにより、冷媒(熱媒体)との熱交換の効率を向上させることができる。また、上述した多孔質部材1をたとえばフィルタに適用すれば、従来の多孔質体を用いる場合よりもベース部材5の表面に形成されたカーボンナノ構造体によってより微細な凹凸が形成されていることから、従来のフィルタでは捕集することができなかった径の小さな微粒子を補足することができる。この結果、より効率的に集塵することができる。また、多孔質部材1では単位体積当たりの表面積を極めて大きくすることができることから、大きな表面積が求められる電池の電極材料などにも多孔質部材1を適用することが可能である。
【0031】
(多孔質部材の製造方法)
図1〜
図5に示した多孔質部材1の製造方法を説明する。まず、材料準備工程(S10)を実施する。具体的には、多孔質体であるベース部材5を準備する。たとえばベース部材5としてニッケルを含む多孔質体を準備してもよい。なお、ベース部材5を構成する材料としては、他の任意の金属(たとえば銅や金など)、もしくはガラスなどの無機材料、またはセラミックスを用いることができる。
【0032】
また、ベース部材5の製造方法としては、以下のような方法を用いることができる。たとえば連通気孔を有する多孔体(発泡樹脂成形体)の表面に金属層を形成する。形成方法としては、電気めっき、無電解めっきなの液相法、蒸着法、スパッタ法、CVD法などの気相法を用いることができる。その後、当該多孔体を熱処理することによって、多孔体を分解し、さらに熱処理後の金属層が酸化している場合には当該金属層に対して還元処理を行なう、といった方法を用いてもよい。
【0033】
また、ベース部材5の製造方法として、ベース部材5を構成するべき材料(たとえば金属など)を含むスラリーを上述した発泡樹脂成形体の表面に塗布し、熱処理を行なうことによって成形体を分解するとともにスラリー中の上記材料から膜を形成する、といった方法を用いることもできる。
【0034】
次に、ベース部材5の表面に、カーボンナノ構造体(たとえばカーボンナノチューブ10)を形成するための触媒となるナノ粒子を配置する。当該ナノ粒子の材質としては、たとえば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などを用いることができる。これらのナノ粒子は、従来周知の任意の方法によりベース部材5の表面に形成することができる。たとえば、触媒となる金属ナノ粒子を分散した溶液にベース部材5を浸漬したあと当該ベース部材5を乾燥させる、といった方法を用いてナノ粒子を形成することができる。なお、ベース部材5の材質がカーボンナノ構造体を形成するための触媒として作用する場合、上記ナノ粒子を配置しなくてもよい。また、カーボンナノ構造体としてカーボンナノウォール20を形成する場合には、上記のようにベース部材5の表面に金属ナノ粒子を分散配置しなくてもよい。
【0035】
次に、カーボンナノ構造体を成長させる工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、任意の方法によりカーボンナノ構造体(10、20)を形成できるが、好ましくは化学気相成長法(CVD法)を用いることができる。このようにして、
図1〜
図5に示した多孔質部材1を得ることができる。
【0036】
(多孔質部材の特性)
多孔質部材1の気孔率は、たとえば50%以上98%以下とすることができる。当該気孔率は、好ましくは80%以上98%以下、より好ましくは90%以上98%以下である。また、多孔質部材1の孔について、単位長さ(1cm)当たりの孔の数は、ベース部材5を形成するときに用いる発泡樹脂成形体の構造を調整することにより、たとえば2個以上60個以下の範囲で任意に調整することができる。なお、単位長さ当たりの孔の数は、多孔質部材1のサンプル表面において、任意の5か所について単位長さの直線を設定し、当該直線により横切られる孔の数を計測したうえで、当該計測値の平均値を算出することにより特定できる。
【0037】
また、多孔質部材1の圧力損失は、たとえば測定風速を2m/s、サンプルである多孔質部材の厚みを10mmとしたときに1000Pa以下とすることができる。また、当該圧力損失は、好ましくは500Pa以下、より好ましくは150Pa以下である。なお、圧力損失の測定方法は、従来周知の任意の方法で測定することができるが、たとえば以下のような方法を用いることができる。まず、測定ダクト内にサンプルである多孔質部材を配置し、当該多孔質部材の上流側と下流側とのそれぞれの測定ダクト内部とつながるようにU字管マノメータを配置する。この状態で、上流側から気体を測定ダクト内に流し、多孔質部材の上流側の圧力(入口圧力)と下流側の圧力(出口圧力)とを上記U字管マノメータによって測定する。圧力損失は、入口圧力(上流側静圧)−出口圧力(下流側静圧)という式で表わされ、上記U字管マノメータにおける液体(水)の液面高さの差として測定することができる。
【0038】
(多孔質部材の適用例)
図6を参照して、本実施形態に従った多孔質部材を用いた電池30は、本発明による多孔質部材1により構成される正極31と、負極32と、セパレータ33と、電解液34と、容器35とを主に備えている。容器35の内部には、上述した本実施形態による多孔質部材1により構成された正極31が配置されている。この正極31と対向するように負極32が配置されている。正極31と負極32との間にはセパレータ33が配置されている。そして、この容器35の内部に電解液34が充填されている。正極31および負極32からはそれぞれ端子が容器35の外部にまで延びるように接続されている。
【0039】
正極31としては、ベース部材5として金属を用いることができる。当該ベース部材5を構成する金属としては、たとえばアルミニウムなどを用いてもよい。このように正極31に本実施形態による多孔質部材1を適用することにより、正極31の単位体積当たりの表面積を大きくすることができる。この結果、電池の性能を向上させることができる。なお、電池30の構造は、
図6に示した構造に限定されない。たとえば、正極31とセパレータ33と負極32との積層体をコイル状に巻き取ってから容器35の内部に配置する、あるいは正極31とセパレータ33と負極32とからなる積層体を複数準備し、その複数の積層体を容器35の内部に配置してもよい。
【0040】
図7を参照して、本実施形態に従った多孔質部材1をフィルタとして用いたフィルタリング装置40を説明する。フィルタリング装置40は、たとえばオイルミストコレクタなどであり、筺体43の内部に本実施形態に従った多孔質部材1を適用したフィルタ41が配置され、さらに筺体43にはファン42が設置されている。フィルタ41と対向する筺体43の部分にはフィルタリングを行なう対象の気体を導入するための開口部44が形成されている。フィルタ41を構成する多孔質部材1において、ベース部材5の材料としてはたとえばステンレス鋼、ニッケルクロム合金、ニッケルなどの金属を用いることができる。ベース部材5の材料としてステンレス鋼を用いる場合、比較的フィルタ41の製造コストを低減できるとともに、フィルタ41の耐熱性および耐酸化性を向上させることができる。また、ニッケルクロム合金をベース部材5の材料として用いる場合、ステンレス鋼を用いる場合より製造コストは高くなるが、フィルタ41の耐熱性を向上させることができる。
【0041】
フィルタリング装置40では、ファン42を作動させることにより、矢印に示すように開口部44からフィルタリング対象の気体が筺体43の内部に吸い込まれる。当該気体がフィルタ41を通過するときに、フィルタ41を構成する多孔質部材1の表面(カーボンナノ構造体が形成された表面)に気体が接触することにより、当該気体に含有されているフィルタリング対象物(たとえばオイルや微粒子など)をフィルタ41において捕捉することができる。このようにオイルや微粒子などのフィルタリング対象物が捕捉された後、気体は矢印に示すように筺体43中を流れ、ファン42により筺体43の外部へと排出される。
【0042】
なお、フィルタ41は、本実施形態に従った多孔質部材1のみにより構成してもよいが、当該多孔質部材1の上流側(開口部44に近い側)に他の不織布やその他の部材から構成された他のフィルタを配置してもよい。
【0043】
このようにすれば、従来よりもよりサイズの小さなフィルタリング対象物の捕捉率を向上させることができる。
【0044】
図8を参照して、本実施形態に従った多孔質部材1を適用した放熱部材50を説明する。
図8を参照して、放熱部材50は、金属などを含むベース体52と、このベース体52に接続された放熱体51とを主に備える。放熱体51は、上述した本実施形態に従った多孔質部材1により構成されている。また、この放熱体51の表面には突起状のフィンが複数形成されている。なお、放熱体51の形状は
図8に示したような構造に限られることなく、他の任意の構造を採用してもよい。
【0045】
このように、放熱体51に本実施形態に従った多孔質部材1を用いることで、放熱体51の表面積を増大させることができるので、この放熱体51に接触する冷却媒体(たとえば空気や冷却水など)と放熱体51との接触面積を増大させることができる。この結果、放熱部材50における法熱効率をより高めることができる。
【0046】
図9を参照して、本実施形態に従った多孔質部材1を適用したヒートパイプ60を説明する。ヒートパイプ60は、筒状の筺体62と、この筺体62の内部の一方端に配置された蒸発器61と、この筺体62内部に封入されている作動液体67とを主に備えている。なお、筺体62内部は実質的に真空状態になるまで減圧されている。蒸発器61に、上述した本実施形態に従った多孔質部材1を適用する。
【0047】
次に、ヒートパイプ60の動作を簡単に説明する。筺体62において、蒸発器61が設置された一方端部を加熱し、反対側の端部を冷却する。その結果、加熱された側の一方端部(蒸発器61が設置された端部)では、作動液体67が蒸発して当該液体の蒸気が発生する。そして、この蒸気が矢印64に示すように筺体62内部を流通し、筐体62の他方端部において冷却されることにより当該作動液体が凝縮して液体に戻る。液体に戻った作動液体67は、矢印66に示すように筺体62内を流れ、蒸発器61側へと流通する。この結果、矢印63に示すようにヒートパイプ60の一方端部が加熱されると、他方端部においては矢印65に示すように気化していた作動液体67の凝縮に伴って矢印65に示すように放熱される。すなわち、ヒートパイプ60の筺体62内における作動液体67の蒸発と凝縮に伴う潜熱移動により、この筺体62の両端部における小さな温度差で加熱部(蒸発器61)が配置された一方端部側から冷却部側(筺体62における反対側の他方端部側)に大量の熱が輸送される。
【0048】
このようなヒートパイプ60においては、たとえば同じサイズの銅の丸棒における熱伝導を考えた場合に比べて100倍にも達する熱移送特性を得ることができる。なお、冷却部から加熱部に向けた矢印66に示す作動液体67の移動においては、たとえば冷却部から加熱部に向かって筺体62の内部に金網(ウイッグ)を配置する、または冷却部から加熱部に向けて筐体62の内壁に細かい溝(グループ)を形成する、といった構成を採用することにより、作動液体67の表面張力による毛管作用により作動液体67を還流させることができる。このようなヒートパイプはいわゆるウイッグ式と呼ばれる。
【0049】
なお、ヒートパイプ60の方式としては他の任意の形式を用いることができる。たとえば、加熱部の垂直方向上側に冷却部を配置した配置、すなわち筺体62を鉛直方向に立てたような配置としたサーモサイフォン式と呼ばれる形式を採用してもよい。この場合、冷却部から加熱部への作動液体67の移動には重力を利用している。また、自励振動式のヒートパイプにおける加熱部に本実施形態による多孔質部材1を採用してもよい。
【0050】
この場合、蒸発器61として本実施形態による多孔質部材1を適用することにより作動液体67と蒸発器61との接触面積を増大させることができるので、より効率的に作動液体67を蒸発させることができる。この結果、ヒートパイプ60の熱移送特性をより向上させることができる。
【0051】
なお、上述した放熱部材50やヒートパイプ60に用いられる多孔質部材1のベース部材5を構成する材料としては、たとえば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au),アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)など、熱伝導率が高く、化学耐久性に優れた材料を用いることができる。
【0052】
(実施例1)
以下のように、本実施形態に従った多孔質部材の一例である、カーボンナノ構造体が表面に形成された金属多孔質体を試作した。試料として、ニッケルからなる多孔質体(ニッケルからなるセルメット(登録商標))を準備した。
【0053】
<製造工程>
石英反応管を持つ電気炉にて、石英反応管内部のベース部材を所定の温度に加熱する。その後、原料ガスの炭化水素含む不活性ガスを石英反応管内部に所望の時間流しながら、カーボンナノチューブを形成し、その後自然冷却する。
【0054】
誘導結合型プラズマCVD装置の容器内でベース部材を所望の温度に加熱する。その後、ガス導入部より炭化水素と不活性ガスや水素ガス等のガスを容器内に供給する。次に、高周波電源から13.56MHzの高周波を所望の時間だけ容器内の電極に供給することにより、ベース部材上にカーボンナノウオールを形成する。
【0055】
<結果>
上述のようにして得られた、カーボンナノウォールが表面に形成された多孔質体の走査型電子顕微鏡写真を
図10〜
図13に示す。
図10は、倍率が10倍であり、多孔質体の表面の一部を示している。また、
図11は、多孔質体の最表面(1層目)に位置する網目構造部3の表面を示す拡大写真である。
図11の倍率は5000倍である。また、
図12および
図13は、それぞれ多孔質体の最表面から2層目、3層目に位置する網目構造部3を示す拡大写真である。
図12および
図13の倍率は5000倍である。
【0056】
図10〜
図13に示した写真から分かるように、多孔質体の網目構造部3における1層目〜3層目まで、いずれも十分にカーボンナノ構造体が形成されていることがわかる。そして、このように表面層から内部にまでカーボンナノ構造体が形成された多孔質体では、十分に単位体積当たりの表面積を増大させることができる。
【0057】
(実施の形態2)
図14〜
図17を参照して、本発明に従った触媒部材100を説明する。この発明に従った触媒部材100は、平板状、柱状、筒状など任意の形状を採用することができる。触媒部材100は、多孔質体からなるベース部材500と、ベース部材500の表面に形成されたカーボンナノ構造体200と、カーボンナノ構造体200の表面に配置された触媒220と、を備える。ベース部材500は
図15に示すように網目構造を有している。異なる観点から言えば、表面に触媒220が形成されたカーボンナノ構造体200とベース部材500とからなる網目構造部300は、
図15に示すように3次元網目構造を有している。カーボンナノ構造体200としては、たとえばカーボンナノチューブやカーボンナノウォール、グラファイトテープなどが挙げられる。以下、表面に触媒220が形成されたカーボンナノ構造体200を、触媒付きカーボンナノ構造体110と呼ぶ。また、ベース部材500としては、たとえば多孔質の金属部材を用いることができる。具体的には、ベース部材500としてはたとえばニッケルからなる多孔質部材を用いることができる。
【0058】
このようにすれば、多孔質体からなり3次元網目構造を有するベース部材500(すなわち網目構造部300)の表面には、
図15に示すように複数の細孔が存在することになるので、当該ベース部材500の単位体積当たりの表面積は通常のバルク体より極めて大きくなる。そのため、ベース部材500の単位体積当たりに形成される触媒付きカーボンナノ構造体110の数も、単なるバルク体の表面に触媒付きカーボンナノ構造体110を形成した場合より多くできる。したがって、触媒付きカーボンナノ構造体110の表面に配置される触媒220の密度が一定である場合には、触媒部材100の単位体積当たりの触媒220の密度を高めることができる。この結果、高い密度で触媒反応を起こすことが可能となる高性能の触媒部材100を実現できる。
【0059】
上記触媒部材100において、ベース部材500の表面には複数の細孔が形成されていてもよい。異なる観点から言えば、ベース部材500は3次元網目構造を有し、その最表面から内部側へ延びるように複数の細孔がベース部材500には形成されている。そして、ベース部材500では、上記表面から、当該表面より内側に位置する細孔の側壁にまで触媒付きカーボンナノ構造体110が形成されている。この場合、ベース部材500の内部に延びる細孔の内部にまで触媒付きカーボンナノ構造体110が形成された状態となるので、結果的に当該カーボンナノ構造体200の表面に配置された触媒220もベース部材500の内部にまで配置された状態になる。
【0060】
上記触媒部材100において、触媒220は、
図17に示すようにカーボンナノ構造体200の表面に分散配置されている粒状体である。この場合、微細なカーボンナノ構造体200の表面に、さらに微細な粒状体として触媒220を配置することになるので、小さなサイズで分散配置させることが触媒反応に有利に作用する触媒220を用いた場合に、特に触媒部材100の性能を向上させることができる。
【0061】
上記触媒部材100において、触媒220は、
図18に示すようにカーボンナノ構造体200の側壁の少なくとも一部を覆う膜状体であってもよい。この場合、
図18に示すようにカーボンナノ構造体200の表面に粒状体として触媒220を配置した場合より、触媒220の表面積を大きくできる。したがって、触媒220の表面積を大きくすることが触媒反応に有利に作用する触媒220を用いた場合に、特に触媒部材100の性能を向上させることができる。
【0062】
上記触媒部材100において、触媒220は、白金(Pt)、金(Au)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。これらの金属は、触媒として作用することができる。
【0063】
次に、
図14〜
図17に示した触媒部材の製造方法を説明する。まず、材料準備工程(S10)を実施する。具体的には、金属からなる多孔質体であるベース部材500を準備する。たとえばベース部材500としてニッケルからなる多孔質体を準備してもよい。なお、ベース部材500を構成する材料としては、他の任意の金属(たとえば銅や金など)を用いることができる。
【0064】
次に、ベース部材500の表面に、カーボンナノ構造体200を形成するための触媒となるナノ粒子を配置する。当該ナノ粒子の材質としては、たとえば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などを用いることができる。これらのナノ粒子は、従来周知の任意の方法によりベース部材500の表面に形成することができる。たとえば、触媒となる金属ナノ粒子を分散した溶液にベース部材500を浸漬したあと当該ベース部材500を乾燥させる、といった方法を用いてナノ粒子を形成することができる。なお、ベース部材500の材質がカーボンナノ構造体200を形成するための触媒として作用する場合、上記ナノ粒子を配置しなくてもよい。また、カーボンナノ構造体200としてカーボンナノウォールを形成する場合には、上記のようにベース部材500の表面に金属ナノ粒子を分散配置しなくてもよい。
【0065】
次に、カーボンナノ構造体を成長させる工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、任意の方法によりカーボンナノ構造体200を形成できるが、好ましくは化学気相成長法(CVD法)を用いることができる。
【0066】
次に、触媒を形成する工程(S30)を実施する。この工程(S30)では、任意の方法によりカーボンナノ構造体200の表面に触媒220を形成する。たとえば、触媒220となる金属(たとえば白金など)を含む無電解メッキ液に、カーボンナノ構造体200が表面に形成されたベース部材500を浸漬することにより、カーボンナノ構造体200の表面に触媒220となる金属を析出させてもよい。あるいは、触媒220となる金属を含む金属錯体の気体を、カーボンナノ構造体200が形成されたベース部材500に接触させることにより、カーボンナノ構造体200の表面に当該金属錯体を吸着させ、その後大気中にカーボンナノ構造体200が形成されたベース部材500を放置することにより、カーボンナノ構造体200の表面に金属錯体由来の金属からなる触媒220を形成してもよい。このようにして、
図14〜
図18に示した触媒部材1を得ることができる。
【0067】
(実施例2)
以下のように、本発明による触媒部材を構成する、カーボンナノ構造体が表面に形成された金属多孔質体を試作した。
【0068】
<試料>
ニッケルからなる多孔質体(ニッケルからなるセルメット(登録商標))を準備した。
【0069】
<製造工程>
上記多孔質体の表面への、カーボンナノチューブの形成方法は、以下のような工程である。まず、石英反応管を持つ電気炉にて、石英反応管内部のベース部材を所定の温度に加熱する。その後、原料ガスの炭化水素含む不活性ガスを石英反応管内部に所望の時間流しながら、カーボンナノチューブを形成し、その後自然冷却する。
【0070】
上記多孔質体の表面へのカーボンナノウォールの形成方法は、以下のような工程である。まず、誘導結合型プラズマCVD装置の容器内でベース部材を所望の温度に加熱する。その後、ガス導入部より炭化水素と不活性ガスや水素ガス等のガスを容器内に供給する。次に、高周波電源から13.56MHzの高周波を所望の時間だけ容器内の電極に供給することにより、ベース部材上にカーボンナノウオールを形成する。
【0071】
<結果>
上述のようにして得られた、カーボンナノウォールが表面に形成された多孔質体の走査型電子顕微鏡写真を
図19〜
図22に示す。
図19は、倍率が10倍であり、多孔質体の表面の一部を示している。また、
図20は、多孔質体の最表面(1層目)に位置する網目構造部300の表面を示す拡大写真である。
図20の倍率は5000倍である。また、
図21および
図22は、それぞれ多孔質体の最表面から2層目、3層目に位置する網目構造部300を示す拡大写真である。
図21および
図22の倍率は5000倍である。
【0072】
図19〜
図22に示した写真から分かるように、多孔質体の網目構造部300における1層目〜3層目まで、いずれも十分にカーボンナノ構造体が形成されていることがわかる。そして、このように表面層から内部にまでカーボンナノ構造体が形成された多孔質体において、
図17や
図18に示すようにカーボンナノ構造体の表面に触媒220を配置することにより、触媒220の密度が高い触媒部材を容易に得ることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。