(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平11−88101号公報)には、
図8に示すような弾性表面波素子102が記載されている。弾性表面波素子102は、圧電基板111と、圧電基板111上に設けられた誘電体膜112と、誘電体膜112上に設けられたIDT(Inter Digital Transducer)電極113、114と、を有している。
【0003】
誘電体膜112は、弾性表面波素子102の比帯域を調整するための膜である。誘電体膜112の材質は金属酸化物であり、たとえばSiO
2などが用いられる。この誘電体膜112は、製作上の容易性の観点から、
図8に示すように、圧電基板111の主面111Mの全面にスパッタなどにより形成される。なお、弾性表面波素子102には、さらに、IDT電極113、114を覆うように特性補償用誘電体部121が設けられている。特性補償用誘電体部121は、弾性表面波素子102の温度が変化しても周波数特性が大きく変化しないように補うものである。
【0004】
図9には、弾性表面波素子102を含み、パッケージ構造をした弾性表面波装置101が記載されている。弾性表面波装置101は、弾性表面波素子102の他に、圧電基板111上に設けられた樹脂部材115を有している。樹脂部材115は、枠状の樹脂支持部115Aと、樹脂支持部115Aを介してIDT電極113、114を覆うように設けられる樹脂カバー部115Bと、により構成される。この圧電基板111と樹脂部材115とにより気密状態となる空間Sが形成され、弾性表面波が励振可能となる。なお、弾性表面波装置101は、弾性表面波素子102に信号を供給するためのビア導体118を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電基板111の材質はニオブ酸リチウムなどの無機圧電材料であり、樹脂部材115の材質は樹脂であり、これらは材質が異なるため、線膨張係数が異なる。そのため、弾性表面波装置101が温度変化のある環境におかれた場合に、圧電基板111および樹脂部材115が膨張または収縮することにより、熱応力が発生する。
【0007】
樹脂部材115の樹脂支持部115Aおよび樹脂カバー部115Bはどちらも樹脂材料であり、また、線膨張係数の値が近似しているので、熱応力による影響が小さい。そのため、樹脂支持部115Aと樹脂カバー部115Bとの間では、剥離が起きにくい。それに対し、圧電基板111と、樹脂支持部115Aとは線膨張係数が異なるため、熱応力が発生すると、圧電基板111と樹脂支持部115Aの界面に対して平行方向に、せん断力が発生する。
【0008】
ところが、
図9に記載された弾性表面波装置101では、圧電基板111の主面111Mと樹脂支持部115Aとの間に、誘電体膜112が設けられている。圧電基板111に対する誘電体膜112の密着力は小さいため、前述したせん断力が発生すると、圧電基板111と誘電体膜112との間で剥離が起きやすくなる。その結果、弾性表面波装置101に示されたパッケージ構造では、内部の気密状態を維持しにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、温度変化のある環境において、圧電基板と樹脂部材との間に熱応力が発生したとしても、圧電基板と樹脂部材との剥離を抑制でき、内部の気密状態を維持できる弾性表面波装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弾性表面波装置は、圧電基板と、圧電基板の主面に設けられる誘電体膜と、誘電体膜を介して圧電基板上に設けられるIDT電極と、IDT電極に対して距離を設けながら、かつ、IDT電極を覆うように、圧電基板に設けられる樹脂部材と、を備えるものであって、圧電基板と樹脂部材とが直接接触する樹脂接触領域を有し、樹脂接触領域は、IDT電極を囲むような形状をしている。
【0011】
好ましくは、IDT電極に対して電気的に接続するように、圧電基板の主面に設けられる中継電極と、中継電極に対して電気的に接続するように、少なくとも樹脂部材に設けられるビア導体と、をさらに備え、圧電基板の主面側から弾性表面波装置を投影して見たときに、ビア導体は、誘電体膜に重なっておらず、中継電極に重なる位置にある。
【0012】
また、樹脂部材は、IDT電極を囲うように設けられる樹脂支持部と、IDT電極に対して距離を設けながら、かつ、IDT電極を覆うように、樹脂支持部に設けられる樹脂カバー部と、を備え、圧電基板の主面側から弾性表面波装置を投影して見たときに、樹脂支持部は、誘電体膜に重ならない位置にあることが好ましい。
【0013】
さらに好ましくは、樹脂接触領域は、閉じた枠状の形状である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る弾性表面波装置は、圧電基板と樹脂部材とが直接接触している樹脂接触領域を有し、さらに、樹脂接触領域は、IDT電極を囲むような形状をしている。圧電基板に対する密着力は、誘電体膜よりも樹脂部材のほうが大きいので、本発明に係る弾性表面波装置は、背景技術に記載された弾性表面波装置に比べて、圧電基板に対する樹脂部材の密着力が大きくなる。これにより、弾性表面波装置が温度変化のある環境におかれたとしても、圧電基板と樹脂部材との間における剥離を抑制でき、内部の気密状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る弾性表面波装置1の斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、
図2(B)に示した弾性表面波装置1のZ1−Z1断面図であり、
図2(B)は、
図1に示した弾性表面波装置1のY1−Y1断面図である。
【
図3】弾性表面波装置1を圧電基板11の主面11M側から投影して見たときの図である。実線により囲まれた領域は、圧電基板11と樹脂部材15とが接触した樹脂接触領域RC、ビア導体18の投影
図VP、誘電体膜12の投影
図DPである。太実線により囲まれた領域は、中継電極17の投影
図EPである。細字破線はIDT電極13、14である。
【
図4】弾性表面波装置1の誘電体膜12およびIDT電極13、14に関する第1変形例を示した図である。
【
図5】弾性表面波装置1の中継電極17およびビア導体18に関する第2変形例を示した図である。
【
図6】弾性表面波装置1のビア導体18に関する第3変形例を示した図である。
【
図7】弾性表面波装置1の樹脂支持部15Aに関する第4変形例を示した図である。
【
図8】特許文献1に示した弾性表面波素子102の斜視図である。
【
図9】
図8に示した弾性表面波素子102を含む弾性表面波装置101を正面(Y方向)から見たときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1、
図2(A)および
図2(B)に示すように、本実施形態に係る弾性表面波装置1は、圧電基板11と、誘電体膜12と、IDT(Inter Digital Transducer)電極13、14と、樹脂部材15と、を有する。この圧電基板11、誘電体膜およびIDT電極13、14により弾性表面波素子が構成される。樹脂部材15は、樹脂支持部15Aおよび樹脂カバー部15Bにより構成される。ただし、樹脂部材15は、樹脂支持部15Aおよび樹脂カバー部15Bが同じ材料により一体となって形成されていてもよい。弾性表面波装置1は、さらに、中継電極17、ビア導体18を備えていてもよい。
【0017】
弾性表面波装置1は、圧電基板11および樹脂部材15を外郭としたパッケージ構造をしている。このパッケージ構造により、内部の空間Sが気密封止されている。前述したとおり、温度変化のある環境においては、弾性表面波装置1には、圧電基板11と樹脂部材15との間に熱応力が発生する。本実施形態に係る弾性表面波装置1は、この熱応力が発生しても、圧電基板11と樹脂部材15とが剥離しにくい構造をしている。
【0018】
なお、ここでいう温度変化は、たとえばJEDEC(Solid State Technology Association)のJEDJESD22−A104Cに記載されているヒートサイクル試験における温度変化が挙げられる。
【0019】
以下、
図1、
図2(A)および
図2(B)を参照しながら、弾性表面波装置1の構造について説明する。
【0020】
圧電基板11は、弾性表面波装置1の基材である。圧電基板11の材質は無機圧電材料であり、たとえばニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、水晶、ランガサイト、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、四ホウ酸リチウムなどが挙げられる。本実施形態では127°YカットX伝搬のLiNbO
3が用いられる。
【0021】
誘電体膜12は、圧電基板11の主面11Mに設けられ、所定パターンを有している。誘電体膜12は、弾性表面波装置1の比帯域を調整するための膜であり、少なくとも、圧電基板11の主面11Mと、IDT電極13、14との間に設けられる(
図2(B)のうちの左半分で示した図を参照)。ただし、誘電体膜12のパターンは、IDT電極13、14のパターンと同じ形状である必要は無く、IDT電極13、14のパターンよりも広い面積で圧電基板11の主面11Mに設けられていてもよい(
図2(B)のうちの右半分で示した図を参照)。
【0022】
誘電体膜12は、たとえばスパッタ法やCVD法などの一般的な成膜プロセスにより圧電基板11の主面11Mの全面に形成される。その後、フォトレジストをパターニングし、ドライエッチング法やウェットエッチング法などの適宜のエッチング法により、全面に形成された誘電体膜12の一部を除去することで所定パターンに形成される。誘電体膜12を除去する際に、IDT電極13、14をマスクとして用いれば、IDT電極13、14のパターンと同じ形状の誘電体膜12を形成できる。誘電体膜12の厚みは、たとえば0.01μmである。誘電体膜12の材質は、金属酸化物または金属窒化物であり、たとえばSiO
2、Si
3N
4、SiON、SiO、Ta
2O
5、TiO
2、TiN、AlN、Al
2O
3、TeO
2などが挙げられる。
【0023】
IDT電極13、14は、誘電体膜12を介して圧電基板11上に設けられる。IDT電極13、14は、弾性表面波の伝搬方向(X方向)に沿って配列される複数の電極指13A、14Aと、複数の電極指13A、14Aのそれぞれに接続されるバスバー13B、14Bと、バスバー13B、14Bのそれぞれに接続される引き出し部13C、14Cと、を有する。電極指13A、14Aは、弾性表面波の伝搬方向に対して交互に配列されている。
【0024】
IDT電極13、14は、NiCr層、Pt層、Ti層、AlCu層、Ti層がこの順で積層された積層膜からなる。IDT電極13、14は、薄膜形成法により得られた積層膜をリフトオフ法でパターニングすることにより形成される。IDT電極13、14の厚みは、たとえば0.2μmである。IDT電極13、14の波長は、たとえば1.9μmとなるように形成され、メタライゼーションレシオは、たとえば0.5となるように形成される。なお、弾性表面波の伝搬方向の両側に、1対の反射器(図示省略)が形成されていてもよい。
【0025】
樹脂部材15のうちの樹脂支持部15Aは、圧電基板11の主面11Mのうちの外周側に設けられる。樹脂支持部15Aは、閉じた枠状の形状をしており、IDT電極13、14を連続的に囲むように形成される。樹脂支持部15Aの厚みは、誘電体膜12の厚みとIDT電極13、14の厚みとの合計値より大きい。樹脂支持部15Aの材質としては、たとえばポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
【0026】
樹脂部材15のうちの樹脂カバー部15Bは、IDT電極13、14に対して距離を設けながら、かつ、IDT電極13、14を覆うように、樹脂支持部15A上に設けられる。具体的には、樹脂カバー部15Bは、フィルム状の形状をしており、樹脂支持部15Aに当接した状態で、圧電基板11の主面11Mと平行に配置される。これにより、弾性表面波装置1において、圧電基板11と樹脂部材15とにより閉じられた空間Sが形成され、弾性表面波が励振可能となる。樹脂カバー部15Bの材質としては、たとえばポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
【0027】
図3は、弾性表面波装置1を圧電基板11の主面11M側から投影して見たときの図である。
図2(B)および
図3に示すように、弾性表面波装置1は、圧電基板11と樹脂部材15とが直接接触している樹脂接触領域RCを有する。
図3において、斜線のハッチングで示された領域が、樹脂接触領域RCである。
【0028】
本実施形態では、圧電基板11に対する密着力は、誘電体膜12に含まれる酸化物材料または窒化物材料よりも、樹脂部材15に含まれる樹脂材料のほうが大きいという性質を利用している。そのため、樹脂接触領域RCでは、圧電基板11と樹脂部材15との間にせん断力がはたらいたとしても、圧電基板11と樹脂部材15とが剥離しにくい。また、樹脂接触領域RCは、IDT電極13、14を囲むように閉じた枠状の形状をしている。そのため、圧電基板11と樹脂部材15の間における流体(気体または液体)の出入りが防止され、パッケージ構造における内部の気密状態を維持できる。
【0029】
なお、樹脂支持部15Aおよび樹脂カバー部15Bはどちらも樹脂材料であり、線膨張係数の値が近似しているので、互いの密着力は大きい。そのため、樹脂支持部15Aおよび樹脂カバー部15Bの間における剥離は起きにくい。
【0030】
中継電極17は、IDT電極13、14とビア導体18とを電気的に接続するため、圧電基板11の主面11Mに設けられる。中継電極17は、AlCu層やTi層などが積層された積層膜である。中継電極17も、薄膜形成法により得られた積層膜をリフトオフ法でパターニングすることにより形成される。引きまわし用の配線の電気抵抗は小さいほうがよいので、中継電極17の厚みはIDT電極13、14の厚みより大きく形成される。具体的には、中継電極17の厚みは、たとえば2.5μmである。
【0031】
ビア導体18は、樹脂部材15を厚み方向に貫通するように設けられる。ビア導体18の一方端は、中継電極17を介してIDT電極13、14と電気的に接続される。ビア導体18の他方端は、樹脂カバー部15Bの外側の表面に露出し、外部端子19に接続される。ビア導体18の材質としては、たとえば、Al、Pt、Cu、Au、Ti、Ni、Cr、W、Ag、Pd、Co、Mnなどの一般的な金属が用いられる。本実施形態では、たとえば電解めっき法によりNiとAuの積層膜として形成される。なお、ビア導体18は、ビア穴の全てに導体が充填されたものであってもよいし、ビア穴の一部に空洞を有する中空構造であってもよい。
【0032】
ここで
図2(B)および
図3を参照して、弾性表面波装置1におけるビア導体18、中継電極17および誘電体膜12の位置関係について説明する。
図3において、X方向およびY方向のクロスハッチングにて示された領域はビア導体18の投影
図VPであり、X方向およびY方向に対して45°の角度をなすクロスハッチングにて示された領域は誘電体膜12の投影
図DPであり、太実線により囲まれた領域は中継電極17の投影
図EPである。
図3に示すように、弾性表面波装置1を圧電基板11の主面11M側から投影して見たときのビア導体18は、誘電体膜12に重なっておらず、中継電極17に重なる位置に設けられている。
【0033】
弾性表面波装置1が温度変化のある環境におかれた場合、金属を含むビア導体18が軸方向(Z方向)に膨張または収縮し、これによりビア導体18の軸方向に対して平行に熱応力が発生する。背景技術で示した
図9のように、圧電基板111と樹脂支持部115Aとの間に誘電体膜112があると、圧電基板111に対する誘電体膜112の密着力が小さく、この軸方向の熱応力により圧電基板111と樹脂支持部115Aとが剥離してしまうおそれがある。
【0034】
それに対し、本実施形態に係る弾性表面波装置1は、
図2(B)および
図3に示すように、ビア導体18の軸方向に誘電体膜12は存在しておらず、中継電極17が存在する。そして中継電極17は、圧電基板11と直接接触することにより強固に密着している。そのため、ビア導体18の軸方向に対して平行に熱応力が発生しても、圧電基板11と中継電極17とが剥離しにくくなり、圧電基板11と樹脂支持部15Aも剥離しにくくなる。これにより、弾性表面波装置1の内部の気密状態を維持できる。また、ビア導体18の軸方向における密着力が大きいので、ビア導体18、中継電極17およびIDT電極13、14の断線を抑制できる。
【0035】
なお、弾性表面波装置1には、IDT電極13、14を覆うように特性補償用誘電体部21が設けられていてもよい。特性補償用誘電体部21は、弾性表面波装置1の温度が変化しても周波数特性が大きく変化しないように補うものである。特性補償用誘電体部21は、たとえばバイアススパッタリング法により形成され、その厚みは、たとえば0.7μmである。特性補償用誘電体部21の材質は、誘電体膜12と同じであることが好ましい。材質が同じであれば、特性補償用誘電体部21上にレジストを形成し、特性補償用誘電体部21と誘電体膜12とを同時にエッチングすることによりパターニングできる。
【0036】
本実施形態に係る弾性表面波装置1は、圧電基板11と樹脂部材15とが直接接触する樹脂接触領域RCを有する。さらに、樹脂接触領域RCは、IDT電極13、14を囲むように閉じた枠状の形状をしている。圧電基板11に対する密着力は、誘電体膜12よりも樹脂部材15のほうが大きいので、本実施形態に係る弾性表面波装置1は、背景技術に記載された弾性表面波装置101に比べて、圧電基板11に対する樹脂部材15の密着力が大きくなる。これにより、弾性表面波装置1が温度変化のある環境におかれたとしても、圧電基板11と樹脂部材15との間における剥離を抑制できる。
【0037】
また、弾性表面波装置1は、圧電基板11の主面11M側から投影して見たときに、ビア導体18は、誘電体膜12に重なっておらず、中継電極17に重なる位置にあることが好ましい。すなわち、ビア導体18の軸方向には、誘電体膜12ではなく、中継電極17が存在しているのが好ましい。これにより、ビア導体18の軸方向に対して平行に熱応力が発生しても、圧電基板11と中継電極17とが剥離しにくくなり、圧電基板11と樹脂部材15も剥離しにくくなる。
【0038】
また、弾性表面波装置1は、圧電基板11の主面11M側から投影して見たときに、樹脂支持部15Aは、誘電体膜12に重ならない位置にあることが好ましい。圧電基板11に対する密着力は、誘電体膜12よりも樹脂支持部15Aのほうが大きいので、圧電基板11と樹脂支持部15Aとが直接接触する面積を大きくしたほうが、全体の密着強度が向上するからである。
【0039】
本実施形態においては、誘電体膜12、IDT電極13、14、中継電極17、ビア導体18の位置、形状などを任意に変更することができる。
図4(A)および
図4(B)〜
図6(A)および
図6(B)は、代表的な変形例を示した図である。以下、これらの変形例について説明する。なお、
図2(A)および
図2(B)に示した弾性表面波装置1と共通する構成については、図中に同じ符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図4(A)および
図4(B)に示した弾性表面波装置1Aは、弾性表面波装置1に関する第1変形例である。第1変形例に係る弾性表面波装置1Aは、中継電極17が無く、IDT電極33、34に対してビア導体38が接続されている。中継電極17が無いので、部品点数を少なくできる。
【0041】
第1変形例に係る弾性表面波装置1Aも、圧電基板11と樹脂部材35とが直接接触する樹脂接触領域RCを有する。そしてさらに、樹脂接触領域RCは、IDT電極33、34を囲むように閉じた枠状の形状をしている。これにより、弾性表面波装置1Aが温度変化のある環境におかれたとしても、圧電基板11と樹脂部材35との間における剥離を抑制できる。
【0042】
図5(A)および
図5(B)に示した弾性表面波装置1Bは、弾性表面波装置1に関する第2変形例である。第2変形例に係る弾性表面波装置1Bは、誘電体膜42およびIDT電極43、44の一部が、圧電基板11と樹脂支持部45Aとの間にもぐり込んで存在している。
【0043】
第2変形例に係る弾性表面波装置1Bも、圧電基板11と樹脂部材45とが直接接触する樹脂接触領域RCを有する。そしてさらに、樹脂接触領域RCは、IDT電極43、44を囲むように閉じた枠状の形状をしている。これにより、弾性表面波装置1Bが温度変化のある環境におかれたとしても、圧電基板11と樹脂部材45との間における剥離を抑制できる。また、圧電基板11の主面11M側から投影して見たときに、ビア導体48は、誘電体膜42に重なっておらず、中継電極47に重なる位置にある。これにより、ビア導体48の軸方向に対して平行に熱応力が発生しても、圧電基板11と中継電極47とが剥離しにくくなり、圧電基板11と樹脂部材45も剥離しにくくなる。
【0044】
図6(A)および
図6(B)に示した弾性表面波装置1Cは、弾性表面波装置1に関する第3変形例である。第3変形例に係る弾性表面波装置1Cは、ビア導体58を階段状に形成したものである。具体的には、
図6(B)に示すように中継電極17にビア導体58の一方端が接続され、そこから続いて樹脂支持部55Aの表面を沿うようにX方向に引き延ばされ、そこから続いて樹脂カバー部55Bを貫通するようにビア導体58が形成される。この構造によれば、設計上の外部端子19の位置を容易に変更できる。
【0045】
第3変形例に係る弾性表面波装置1Cも、圧電基板11と樹脂部材55とが直接接触する樹脂接触領域RCを有する。そしてさらに、樹脂接触領域RCは、IDT電極13、14を囲むように閉じた枠状の形状をしている。これにより、弾性表面波装置1Cが温度変化のある環境におかれたとしても、圧電基板11と樹脂部材55との間における剥離を抑制できる。また、圧電基板11の主面11M側から投影して見たときに、ビア導体58は、誘電体膜12に重なっておらず、中継電極17に重なる位置にある。これにより、ビア導体58のZ方向に対して平行に熱応力が発生しても、圧電基板11と中継電極17とが剥離しにくくなり、圧電基板11と樹脂部材55も剥離しにくくなる。
【0046】
本実施形態では、樹脂支持部がIDT電極を囲むように閉じた枠状の形状の構成とされているが、当該樹脂支持部は、必ずしも閉じていなくともよい。たとえば、
図7に示した第4変形例の弾性表面波装置1Dのように、中継電極67が基板端面まで延伸されており、当該延伸部において、樹脂支持部65Aが一部開口していてもよい。この場合でも、気密性は十分に保たれる。
【0047】
本実施形態は、請求の範囲に記載された発明を限定するものでなく、技術的思想の同一性が認められる範囲で種々の変形が可能である。たとえば、樹脂支持部と樹脂カバー部とが、別々の構成でなく一体となった状態で基板に設けられてもよい。また、弾性表面波装置は、親基板に複数の弾性表面波装置を形成した後、その親基板を個片化することにより作製してもよい。