(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2の電極指の先端と、前記第1及び第2の電極指の先端と対向している前記第2,第1のバスバーとの間の距離が、弾性表面波の波長をλとしたときに、0.5λ以下とされている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
前記第1の電極指が、電極指の延びる方向において隔てられた複数の前記太幅部を有し、前記第2の電極指が、電極指の延びる方向において隔てられた複数の前記太幅部を有し、前記第1の電極指の複数の太幅部と、前記第2の電極指の複数の太幅部とが、前記第1の電極指と第2の電極指とが対向している部分において、電極指の延びる方向において交互に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性波装置。
前記第2の電極指において、電極指の延びる方向において隣り合っている太幅部間に、前記第1の電極指に設けられている一つの前記太幅部が位置しており、前記第1の電極指の延びる方向において隣り合っている太幅部間に、前記第2の電極指の一つの太幅部が位置している、請求項9に記載の弾性波装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の略図的正面断面図及びその要部を示す部分切欠拡大平面図である。
【0021】
弾性波装置1は、本実施形態では、1ポート型弾性表面波共振子である。
図1(a)に示すように、弾性波装置1は、圧電基板2を有する。本実施形態では、圧電基板2は、128度Y−XのLiNbO
3基板からなる。もっとも、圧電基板2は、逆速度面が凸であり、例えばLiNbO
3やLiTaO
3などのように電気機械結合係数が比較的大きければ、他の圧電単結晶、あるいは圧電セラミックスにより形成されてもよい。圧電基板2上には、IDT電極3が形成されている。IDT電極3の弾性表面波伝播方向両側に、反射器4,5が形成されている。IDT電極3の詳細を、
図1(b)を参照して後ほど詳述する。
【0022】
本実施形態では、IDT電極3及び反射器4,5は、Pt膜と、Pt膜上に積層されたAl膜とを有する積層金属膜からなる。本実施形態では、Pt膜の厚みを36nm、Al膜の厚みを150nmとした。もっとも、IDT電極及び反射器を構成する金属材料は特に限定されない。また、積層金属膜ではなく、単一の金属膜を用いてもよい。電極の厚みについても特に限定されるものではない。
【0023】
図1(a)で図示は省略しているが、本実施形態では、上記IDT電極3及び反射器4,5が設けられている領域の上面に、厚み570μmのSiO
2膜が形成されている。SiO
2膜の表面には、IDT電極および反射器の電極形状に対応した凹凸が形成されている。
【0024】
IDT電極3は、交叉幅重み付けが施されていない正規型のIDT電極であり、電極指周期は1.921μmである。もっとも、IDT電極3の電極指周期は特に限定されない。また、電極指の対数は133対、交叉部は15λ(λはIDT電極で励振される弾性波の波長)である。反射器4,5は両端を短絡してなるグレーティング反射器である。反射器4,5における電極指の本数は20本である。
【0025】
本実施形態の弾性波装置1の特徴は、IDT電極3において、ピストンモードを形成することにより横モードリップルを抑圧する構造が備えられていることにある。これを、
図1(b)を参照して説明する。
【0026】
IDT電極3は、第1のバスバー11と、第1のバスバー11と隔てられて配置された第2のバスバー12とを有する。第1のバスバー11と第2のバスバー12とは、弾性表面波伝播方向に平行に延びている。
【0027】
また、第1のバスバー11に、複数本の第1の電極指13の基端が接続されている。複数本の電極指13の先端は、第1のバスバー11から第2のバスバー12側に向かって延ばされている。すなわち、弾性表面波伝播方向と直交する方向に、複数本の第1の電極指13が延ばされている。
【0028】
他方、複数本の第2の電極指14の基端が、第2のバスバー12に接続されている。複数本の第2の電極指14の先端は、第2のバスバー12から第1のバスバー11側に向かって延ばされている。すなわち、複数本の第2の電極指14も、弾性表面波伝播方向と直交する方向に延びている。
【0029】
複数本の第1の電極指13と複数本の第2の電極指14とは、間挿し合っている。第1の電極指13には、太幅部13a,13b,13c,13dが設けられている。第2の電極指14にも、太幅部14a,14b,14c,14dが設けられている。太幅部13a〜13d,14a〜14dを代表して太幅部13aの形状を説明する。太幅部13aは、第1の電極指13の残り部分よりもその幅方向寸法すなわち弾性表面波伝播方向に沿う寸法が長くされている。本実施形態では、太幅部13aは、電極指13の側縁から弾性表面波伝播方向に突出する等脚台形の形状とされている。もっとも、太幅部の形状はこれに限定されず、半円状の突出部などの様々な形状の突出部を電極指13の側縁から弾性表面波伝播方向に突出させてもよい。
【0030】
太幅部13a,13bは、第1の電極指13において、第1の電極指13の基端側に寄せられて設けられている。言い換えれば、太幅部13a,13bは、第1のバスバー11側に寄せられて形成されている。他方、太幅部13c,13dは、第1の電極指13の先端側に、すなわち第2のバスバー12側に寄せられて設けられている。
【0031】
他方、第2の電極指14においては、先端側に太幅部14a,14bが設けられている。太幅部14a,14bと、太幅部13a,13bとは、第1のバスバー11に近い領域で弾性表面波伝播方向と直交する方向において、すなわち電極指の延びる方向において交互に配置されている。従って、太幅部13aが、太幅部14aと太幅部14bとの間に入り込んでおり、逆に、太幅部14bが、太幅部13aと太幅部13bとの間に入り込むように設けられている。もっとも、
図1(b)では、太幅部13aの電極指14側の端縁は、太幅部14a及び太幅部14bの電極指13側の端縁と、電極指方向において重なる位置に設けられている。この太幅部13aの電極指14側の端縁は、太幅部14a,14bの電極指13側の端縁よりも電極指14側に入り込んでいてもよい。同様に、太幅部14aの電極指13の端縁も、太幅部13a,13bの電極指14側の端縁と電極指方向において重なっているが、太幅部13a,13bの電極指14側の端縁よりも電極指13側に入り込んでいてもよい。
【0032】
本発明においては、好ましくは、このように、第1の電極指13の電極指方向に複数配置された太幅部13a,13bと、第2の電極指14において、電極指方向において複数配置された太幅部14a,14bとが、電極指方向において交互に配置されている構造が望ましい。すなわち、第1の電極指13及び第2の電極指14がそれぞれ複数の太幅部を有し、第1の電極指13の一つの太幅部が、第2の電極指の電極指方向において隣り合う太幅部間に位置するように、第2の電極指14の一つの太幅部14bが、第1の電極指13において電極指方向において隣り合う太幅部13a,13b間に位置するように設けることが望ましい。それによって、電極指に一つの太幅部を設けた構造に比べ、共振周波数と反共振周波数との間の周波数域における損失を低減することができる。これは、低音速部内に音速の異なる複数の領域が存在することにより、IDT電極の交差幅方向中央領域において励振された弾性波が、音速が異なる部分の各境界で反射されて、交差幅の外側にしみだす割合が低くなるためと考えられる。従って、第1の電極指13と第2の電極指14とが弾性波伝搬方向において対向している部分において、複数の太幅部13a,13bと、複数の太幅部14a,14bとが互いに間挿し合うように配置されていることが望ましい。
【0033】
同様に、太幅部13c,13dと、太幅部14c,14dとは、第2のバスバー12に近い側において、上記電極指の延びる方向において交互に配置されている。
【0034】
上記太幅部13a,13bと太幅部14a,14bとが設けられている領域において、
図1に示す領域V2が形成される。
図1(b)の右側のV1〜V6は、IDT電極3の中央から弾性表面波伝播方向と直交する方向において外側に向かって配置されている領域を示す。領域V1〜V6を伝播する弾性波の速度(以下、音速とする)V
1〜V
6を
図1(b)に模式的に示す。以下、本明細書では、領域Vn(nは自然数)の音速をV
nとする。ここで、領域V1は、上記太幅部13bと、太幅部13cとの間に位置されているIDT中央領域である。
【0035】
上記太幅部13a,13b,14a,14bが設けられている領域V2は、IDT中央の領域V1よりも音速が低い。
【0036】
他方、本実施形態では、電極指13の基端において、電極指幅方向に突出している突出部13eが設けられている。従って、突出部13eが設けられている領域V3においては、音速が、後述する高音速部の領域V5よりも低められている。もっとも、領域V3では、第2の電極指14が存在しないため、音速V
3は領域V2の音速V
2よりも高音速である。
【0037】
上記のように太幅部13a,13b,14a,14bを設けることにより、より低音速の領域V2を設ける構成は、特許文献1や特許文献2においても記載されていた。なお、第2のバスバー12側においても、同様に、太幅部13c,13d,14c,14dが設けられている領域が領域V2となる。
【0038】
本実施形態では、第1のバスバー11が、内側バスバー部11A、中央バスバー部11B及び外側バスバー部11Cを有する。ここで、内側及び外側とは、IDT電極3におけるIDT電極の電極指の延びる方向において、第1,第2の電極指13,14が存在している側を内側、反対側を外側としている。
【0039】
内側バスバー部11Aは、上記複数本の第1の電極指13の基端が接続されている部分である。内側バスバー部11Aは、本実施形態では、弾性表面波伝播方向に延びる細長い帯状の形状を有している。ここはメタライズされている部分であるため、この内側バスバー部11Aは、低音速である領域V4を構成している。
【0040】
他方、中央バスバー部11Bには、弾性表面波伝播方向に沿って複数の開口部15が分散配置されている。本実施形態では、開口部15は、電極指の延びる方向に延びる連結部16,16間に位置している。連結部16は、本実施形態では、第1の電極指13と同じ幅を有し、かつ第1の電極指13の延長上に位置している。もっとも、連結部16の寸法及び設ける位置はこれに限定されるものではない。また、開口部15は、本実施形態では矩形の形状を有しているが、矩形の形状に限定されるものでもない。
【0041】
中央バスバー部11Bでは、弾性表面波伝播方向に沿って、連結部16と開口部15とが交互に配置されている。従って、メタライズされていない部分が多いため、中央バスバー部11Bは、高音速の領域V5を構成する。外側バスバー部11Cは、開口部を有しない。従って、外側バスバー部11Cはメタライズされた領域であり、この領域V6は、低音速の領域となる。
【0042】
第2のバスバー12側においても、同様に、内側バスバー部12A、中央バスバー部12B及び外側バスバー部12Cが形成されている。同一部分については同一の参照番号を付することによりその説明を省略する。
【0043】
弾性波装置1では、IDT電極3が上記のように構成されているため、中央領域V1の外側に低音速領域が設けられ、低音速領域である領域V2〜V4の外側に高音速の領域V5が存在している。従って、ピストンモードを形成することが可能となり、横モードリップルを効果的に抑圧することができる。さらに、弾性波を効果的に閉じ込めることができる。これを、
図2〜
図6を参照して詳述する。
【0044】
図2は、本実施形態の弾性波装置のインピーダンス周波数特性を示す図である。また
図4は、比較例の弾性波装置のインピーダンス周波数特性を示す図である。この比較例の弾性波装置のIDT電極の要部を、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、本比較例では、第1のバスバー1011が、太い帯状のメタライズ領域のみを有するように構成されている。すなわち、本比較例では、上記実施形態とは異なり、複数の開口部15を有する中央バスバー部11Bは設けられていない。従って、第1のバスバー1011が設けられている部分はV14で示す低音速の領域となる。
【0045】
また、比較例では、
図1(b)で示した突出部13eは設けられていない。さらに、比較例では、突出部13a〜13dに代えて、太幅部13xが設けられている。電極指14側においても、同様に太幅部14xが設けられている。太幅部13x,14xが、音速V12の低音速領域を構成している。その他の構成は、本比較例においては、上記実施形態と同様である。比較例の弾性波装置におけるIDT電極の電極指の延びる方向における各領域V11〜V14の音速V
11〜V
14を
図3の右側に模式的に示す。
【0046】
図2と
図4とを対比すれば明らかなように、
図4では、共振周波数と反共振周波数との間及び反共振周波数よりも高域側に、大きなリップルが現れている。このリップルは横モードリップルである。
【0047】
上記実施形態では、各領域V1〜V6の音速V
1〜V
6が、
図1(b)に示すとおりとなっている。すなわち、太幅部13a,13b,14a,14bに加えて、内側バスバー部11Aが設けられていることによって、低音速領域である領域V2,V3,V4の音速の平均値が効果的に低められている。
【0048】
従って、低音速領域と中央領域との間の音速の差ΔVが非常に大きくなっている。よって、横モードリップルを効果的に抑圧することが可能となると考えられる。すなわち、ΔVが大きいほど、ピストンモードがより確実に発生し、横モードリップルを効果的に抑圧し得ることが可能とされている。
【0049】
さらに、バスバー11においては、開口部15が設けられていることにより、中央バスバー部11Bが設けられている高音速領域である領域V5の音速V
5が効果的に高められている。これにより、弾性波がバスバーの方向へ漏洩することを抑制することができ、デバイスのロスを低減することができる。
図5は、上記太幅部13a,13b,14a,14bにおける弾性表面波伝播方向に沿う寸法Xと、中央領域の音速V
1と太幅部の音速V
2との音速差ΔV’との関係を示す図である。
図5から明らかなように、上記太幅部13a,13b,14a,14bの弾性表面波伝播方向に沿う寸法が大きくなるほどΔV’は大きくすることができる。
【0050】
他方、
図6は、ピストンモードが形成される条件を満たすときの、中央領域と低音速領域の音速差ΔVと、低音速領域の電極指の延びる長さ方向に沿う寸法Yとの関係を示す図である。
図6から明らかなように、低音速領域の電極指の延びる方向における長さ方向寸法Yが小さい場合には、ピストンモードを形成するために必要な中央領域と低音速領域の音速差ΔVが大きくなることがわかる。すべての横モードリップルを抑圧できる理想的なピストンモードを形成するためには、寸法Yは小さいほうが望ましい。すなわち、中央領域と低音速領域の音速差ΔVを大きくするほうが望ましい。
【0051】
図3の比較例の構造のような場合は、低音速領域を太幅部のみで形成することになるため、中央領域と低音速領域の音速差をあまり大きくすることができない。したがって、ピストンモードを形成するためには、寸法Yを大きく取る必要があるが、この場合には理想的なピストンモードを形成することができない。したがって、
図4のように横モードリップルが発生する。
【0052】
一方、本実施形態における
図1(b)の構造では、内側バスバー11Aが設けられているため、中央領域と低音速領域の音速差ΔVを大きくすることができ、ピストンモードを形成するために必要な寸法Yを小さくすることができる。したがって、理想的なピストンモードを形成することが可能となり、横モードリップルを効果的に抑圧することができる。
【0053】
発明者らの実験によれば、上記太幅部13a,13b,14a,14bなどが設けられている部分において、電極指のデューティ比は0.7〜0.9の範囲とすることが望ましいことが確かめられている。デューティ比がより大きい方がΔVを大きくすることができるが、プロセス上の制約により、0.9以下とすることが望ましい。
【0054】
また、本実施形態では、上記第2の電極指14の先端と、第1のバスバー11との間の弾性表面波伝播方向と直交する方向に沿う距離、すなわち領域V3で示される電極指先端と相手側のバスバーとの間のギャップの寸法は小さい方が望ましい。もっとも、領域V3の上記寸法を小さくするにも、プロセス上の限界がある。本願発明者らの実験によれば、弾性表面波の波長をλとしたとき、当該ギャップの寸法は、0.5λ以下、より好ましくは0.25λ以下であることが望ましい。
【0055】
上記領域V3における電極指の幅方向寸法は上記突出部13e、14eが設けられているため、本実施形態では、領域V1における電極指13,14の幅よりも拡がっている。もっとも、この突出部13e、14eは設けられずともよい。従って、領域V3における電極指14の幅は、中央領域である領域V1における電極指14の幅と等しくてもよい。
【0056】
好ましくは、本実施形態のように、領域V3に突出部13e、14eを設け、より一層領域V3における音速を低めることが望ましい。すなわち、低音速領域である領域V2〜V4全体の音速であるV
2〜V
4の平均値をより一層低めることができる。
【0057】
また、内側バスバー部11Aが位置している領域V4も低音速領域である。ここでは、前述したように、全体がメタライズされているため音速が効果的に低められている。この内側バスバー部11Aは、細長い帯状の形状を有しているが、この内側バスバー部11Aの弾性波伝播方向と直交する方向に沿う寸法すなわち幅は、0.5λ以下とすることが望ましい。
【0058】
また、中央バスバー部11Bにおける連結部16の幅は、本実施形態では領域V1における電極指13,14の幅と等しくされている。もっとも、連結部16の幅方向寸法は電極指13,14の幅方向寸法と等しくする必要は必ずしもない。
【0059】
なお、領域V1における電極指のデューティ比は0.5とされている。本実施形態においては、高音速領域である中央バスバー部11Bの弾性波伝搬方向と垂直な方向の幅は、2.0λとされている。高音速領域は、IDTで励振される弾性表面波のエネルギーが、外側バスバー部11Cの部分で十分に小さくなるような幅であればよい。
【0060】
本実施形態では、上記のように、太幅部13a,13b,13c,13d、太幅部14a,14b,14c,14dが設けられており、中央領域である領域V1の外側に、低音速領域である領域V2〜V4と、開口部15が形成されている高音速領域である領域V5とが設けられている。そして、中央領域と低音速領域の音速の平均との差である音速差ΔVが非常に大きくされているため、上記横モードリップルを効果的に抑圧することが可能とされている。これは、上記音速差ΔVが大きいほど理想に近いピストンモードを発生させることができることによる。従って、
図2に示したように、横モードスプリアスを効果的に抑圧することが可能とされている。
【0061】
図7〜
図14は、本発明の第2〜第9の実施形態に係る弾性波装置の各要部を説明するための部分切欠模式的平面図である。
【0062】
図7に示す第2の実施形態のように、第1の電極指13の基端側に、
図1(b)に示した突出部13eが設けられずともよい。第2の実施形態では、第2の電極指14においても基端側に突出部が同様に設けられていない。
【0063】
また、第2の実施形態では、第1の電極指13の1つの太幅部13aに対し、隣り合う第2の電極指14に2個の太幅部14a,14bが設けられている。従って、1.5対の突出部が配置されている。領域V1〜V6の音速V
1〜V
6の関係は
図7の右側に示すとおり、音速V
3と音速V
5が等しくなる。本実施形態においても、低音速領域である領域V2〜V4の音速V
2〜V
4の平均値が中央領域である領域V1の音速V
1よりも効果的に低められる。従って、第1の実施形態と同様に、横モードリップルを効果的に抑圧することができる。その他の構成は、第2の実施形態は第1の実施形態と同様とされている。
【0064】
図8に示す第3の実施形態では、第1のバスバー11側において、第2の電極指14の先端に太幅部14aが設けられている。この太幅部14aが設けられている部分の近傍において、第1の電極指13には太幅部は設けられていない。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。本実施形態における領域V1〜V6の音速V
1〜V
6を
図8の右側に模式的に示す。本実施形態においても、領域V2〜V4の音速V
2〜V
4の平均値が、中央領域である領域V1の音速V
1よりも効果的に低められる。従って、第1の実施形態と同様に横モードリップルを抑圧することができる。
【0065】
第3の実施形態のように、第1及び第2の電極指13,14のうち、一方にのみ太幅部が設けられていてもよい。また、太幅部の数についても、1つの電極指において1つの太幅部14aのみが一方のバスバー11側において設けられていてもよい。
【0066】
なお、本実施形態では、第1の電極指13の先端側に、太幅部14aと同様に1つの太幅部が設けられており、第2のバスバー側においては、第2の電極指14に太幅部が設けられていない。
【0067】
図9に示す第4の実施形態では、第1のバスバー11側において、第1の電極指13及び第2の電極指14のそれぞれに、太幅部13a、太幅部14aが設けられている。すなわち、第1のバスバー11側に寄せられた領域において、低音速領域を形成するために、電極指13,14のそれぞれに、1つの太幅部13a、14aが設けられている。また、電極指13の基端に
図1(b)に示した突出部13eは設けられていない。第2の電極指の基端においても上記突出部は設けられていない。
【0068】
なお、第1の電極指13の先端側、すなわち第2のバスバー側においても、第1の電極指の先端と、第2の電極指の基端近傍に太幅部がそれぞれ1個設けられている。
【0069】
本実施形態のように、電極指13,14に、それぞれ各1個の太幅部が設けられて低音速領域V2の音速V
2を効果的に低めてもよい。この場合においても、第1〜第3の実施形態と同様に、ピストンモードの原理により、横モードリップルを効果的に抑圧することができる。
【0070】
図10に示す第5の実施形態のように、中央バスバー部11Bに設けられる開口部15の弾性波伝播方向に沿う寸法を大きくしてもよい。ここでは、開口部15の両側の連結部16,16のピッチは、第1の電極指13の弾性波伝播方向に沿う周期の2倍とされている。このように、開口部15の形状を第1の実施形態よりも大きくしてもよい。その他の構成は第1の実施形態と同様である。本実施形態においても、高音速領域である領域V5の音速V
5を効果的に高め得るため、横モードリップルを効果的に抑圧しつつ、弾性波を確実に閉じ込めることができる。特に、開口部15の面積が大きくなるため、領域V5の音速V
5をより一層効果的に高めることができる。
【0071】
図11に示す第6の実施形態では、連結部16,16が、第2の電極指14の先端の延長線上に位置している。このように、連結部16,16は、第1の電極指13の延長上ではなく、第2の電極指14の延長上に設けられていてもよい。この場合、対称性を高めるには、第2のバスバー12側においては、第1の電極指13の先端の延長上に連結部を設けることが望ましい。
【0072】
図12に示す第7の実施形態では、連結部16の幅が、すなわち弾性波伝播方向に沿う寸法が、電極指13,14よりも小さくされている。そして、第1,第2の電極指13,14の各延長上に連結部16が設けられている。従って、開口部15の弾性波伝播方向に沿う寸法が小さくなっている。このように連結部16の配置形態は適宜変更することができる。さらに
図13に示す第8の実施形態のように、
図12に示した連結部16のうち弾性波伝播方向に沿って1本おきに、連結部16ではなく、外側バスバー部11Cから内側バスバー部11Aに至らない電極ストリップ16aを設けてもよい。また、電極ストリップ16aとは逆に、内側バスバー部11Aから外側バスバー部11C側に向かって延び、外側バスバー部11Cに至っていない電極ストリップを設けてもよい。
【0073】
さらに、
図14に示す第9の実施形態のように、複数本の連結部16が設けられる位置を、電極指13,14の延長線から弾性波伝播方向においてずれた位置としてもよい。
【0074】
図7〜14に示したように、本発明における開口部15の形状、連結部16の寸法、形状、ピッチ等は高音速領域である領域V5の音速V
5を高め得る限り、様々な形態で変形することができ、特に図示の構造に限定されるものではない。
【0075】
また、低音速領域である領域V2〜V4の音速V
2〜V
4の平均値を低め得る限り、太幅部13a,13b,14a,14bなどの形状及び寸法等についても適宜変形し得る。
【0076】
また、前述したように、電極指13と電極指14が隣り合っている部分において、一方の電極指にのみ太幅部を設けてもよく、上記第1の実施形態のように双方の電極指13,14に太幅部を設けてもよい。さらに、太幅部は、電極指の基端側にのみ、あるいは、先端側にのみ設けられてもよい。すなわち、基端側及び先端側の内の少なくとも一方の側に、太幅部が設けられていればよい。
【0077】
また、太幅部の低音速領域における数についても1個や2個に限定されず、任意の数の太幅部を設けることができる。
【0078】
本発明は弾性表面波装置に限らず、弾性境界波装置などの様々な弾性波装置に適用することができる。また、1ポート型共振子を構成する電極形状に限らず、帯域フィルタやトラップフィルタなどの様々な弾性波装置に本発明を適用することができる。