特許第6179599号(P6179599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179599
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】コンデンサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/18 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H01G4/24 311
   H01G4/24 301A
   H01G4/24 301B
   H01G4/24 301G
   H01G4/24 321C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-537879(P2015-537879)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2014074033
(87)【国際公開番号】WO2015041126
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-195105(P2013-195105)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 茂紀
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/069485(WO,A1)
【文献】 特開平10−261543(JP,A)
【文献】 特開2006−086359(JP,A)
【文献】 特開2013−171989(JP,A)
【文献】 特開平06−168845(JP,A)
【文献】 特開平03−201421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる原反に所定形状の内部導体を設ける内部導体形成工程と、
前記原反に所定形状の開口部を設ける開口部形成工程と、
前記内部導体および前記開口部が設けられた前記原反を複数層にわたって重ねる複層化工程と、
前記複層化工程で重ねられた原反から、複数の誘電体層が重なり、前記開口部が各誘電体層の縁に露出し、前記開口部の内部に前記内部導体の表面が露出する誘電体部を切り出す誘電体部形成工程と、
前記誘電体部形成工程で切り出された前記誘電体部の端面に、前記開口部に入り込む端子導体を設ける端子導体形成工程と、
を備えるコンデンサ素子の製造方法。
【請求項2】
前記原反は、樹脂フィルムからなる、請求項1に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項3】
前記原反は、熱硬化性材料を主たる材料とする未硬化状態または半硬化状態の樹脂フィルムであり、
前記複層化工程よりも後に、前記樹脂フィルムを熱硬化させる工程を実施する、
請求項2に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項4】
前記複層化工程は、平膜状の複数の前記原反を積み重ねる、請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項5】
前記内部導体および前記開口部は、前記誘電体部形成工程で前記誘電体部の端面が切り出されるカットラインを対象軸として、線対称にパターン形成されており、前記対象軸の両側で一体に設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体部の内部で対向する複数の内部導体を、誘電体部の端面に設ける端子導体により組毎に導通させるコンデンサ部品の製造方法に関する。また、本発明は、平膜状の誘電体を積み重ねて誘電体部を構成した積層型のコンデンサ部品と、それを用いたコンデンサモジュールおよび電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ部品として、誘電体部が樹脂フィルムで構成されるフィルムコンデンサ部品や、誘電体部がセラミックスで構成されるセラミックコンデンサが知られている。これらのコンデンサ部品において誘電体部は、内部導体を設けた帯状の誘電体を巻き重ねて構成されることや、内部導体を設けた平膜状の誘電体を積み重ねて構成されることが一般的である。
【0003】
ここで、フィルムコンデンサ部品の一般的な製造方法について説明する。
【0004】
まず、帯状の2つの樹脂フィルムが用意され、それぞれの表面に金属蒸着法などによって導体膜が形成される。次に、導体膜がそれぞれエッチング等でパターニングされ、コンデンサ部品の内部導体が形成される。この際、2つの樹脂フィルムそれぞれの内部導体は、互いに、樹脂フィルムの幅方向に位置が微小にずれるように形成される。次に、2つの樹脂フィルムが重ね合わされてからロール状に巻き取られることで誘電体部が形成される。そして、誘電体部の両端に、複数の内部導体を組毎に導通させる端子導体が設けられる。
【0005】
上述のような製造方法で製造されるフィルムコンデンサ部品では、誘電体部の両端に各内部導体の縁が露出し、そこに端子導体が接触(線接触)する。このため、内部導体と端子導体との接触面積が小さく、形状誤差によってフィルムコンデンサ部品の等価直列抵抗(ESR)が過大になることがあった。そこで、フィルムコンデンサ部品において、内部導体と端子導体とを面接触させる製造方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0006】
特許文献1に記載のフィルムコンデンサ部品の製造方法では、2つの樹脂フィルムを、樹脂フィルムの端部が微小にずれる状態で重ね合わせてから巻き取ることにより、誘電体部の端面を凹凸状にし、内部導体の表面を誘電体部の端面から露出させる。そして、誘電体部の凹凸状の端面に端子導体を設けることで、内部導体と端子導体とを面接触させる。
【0007】
特許文献2に記載のフィルムコンデンサ部品の製造方法では、熱収縮量が異なる2つの樹脂フィルムを熱収縮させることにより、誘電体部の端面を凹凸状にし、内部導体の表面を誘電体部の端面から露出させる。そして、誘電体部の凹凸状の端面に端子導体を設けることで、内部導体と端子導体とを面接触させる。
【0008】
特許文献3に記載のフィルムコンデンサ部品の製造方法では、誘電体部の端面を誘電体部と反応するガスにより浸食させることにより、誘電体部の端面を凹凸状にし、内部導体の表面を誘電体部の端面から露出させる。そして、誘電体部の凹凸状の端面に端子導体を設けることで、内部導体と端子導体とを面接触させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−294789号公報
【特許文献2】特開平8−102427号公報
【特許文献3】特開平1−248607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のフィルムコンデンサ部品の製造方法では、複数の誘電体部を一度に製造する場合、樹脂フィルムの原反を分割して個々の誘電体部を巻き取る必要があった。このため、複数の樹脂フィルムの巻き取りを平行して行う必要があり、コンデンサ部品の製造コストが高止まりするという問題があった。
【0011】
その上、特許文献2に記載のフィルムコンデンサ部品の製造方法では、熱収縮量が大きく異なる2つの樹脂フィルムを採用する必要があり、誘電体フィルムの材料が限定されてコンデンサ部品の特性上の最適材料を採用することが難しく、また、樹脂フィルムの材料コストが高くなるという問題があった。
【0012】
また、特許文献3に記載の製造方法では、誘電体部の化学反応を利用するので内部導体と端子導体との間に不要な残留成分が残ることがあり、このため、樹脂フィルムを化学反応させる工程と、残留成分を除去する工程とが必要となり、やはりコンデンサ部品の製造コストが高止まりするという問題があった。また、残留成分の除去が不十分な場合、内部導体と端子導体との接触抵抗が高くなったり、コンデンサ部品の信頼性が低下したりすることがあった。
【0013】
そこで、本願の第1の発明の目的は、内部導体と端子導体とが面接触するコンデンサ部品の製造方法であって、簡易な製造工程で低廉にコンデンサ部品を製造できるコンデンサ部品の製造方法を提供することにある。
【0014】
また、第2の発明の目的は、平膜状の複数の誘電体層が積み重なる積層型のコンデンサ部品であって、誘電体層の材料が制限されることや、内部導体と端子導体とが面接触する位置に不要な残留成分が生じることが無い、コンデンサ部品と、それを用いたコンデンサモジュールおよび電力変換装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の第1の発明に係るコンデンサ部品の製造方法は、誘電体からなる原反に所定形状の内部導体を設ける内部導体形成工程と、前記原反に所定形状の開口部を設ける開口部形成工程と、前記内部導体および前記開口部が設けられた前記原反を複数層にわたって重ねる複層化工程と、前記複層化工程で重ねられた原反から、複数の誘電体層が重なり、前記開口部が各誘電体層の縁に露出し、前記開口部の内部に前記内部導体の表面が露出する誘電体部を切り出す誘電体部形成工程と、前記誘電体部形成工程で切り出された前記誘電体部の端面に、前記開口部に入り込む端子導体を設ける端子導体形成工程と、を実行する。
【0016】
この製造方法により製造されるコンデンサ部品では、誘電体部の端面に設けられる端子導体が、開口部に入り込んで、開口部の内部に露出する内部導体の表面に面接触する。したがって、コンデンサ部品のESRが安定したものになる。また、この製造方法では、原反を複層化してから分割するので、コンデンサ部品ごとに複層化の工程を行う必要が無く、簡易な製造工程で低廉にコンデンサ部品を製造できる。また、誘電体の原反の材料が限定されず、コンデンサ部品の特性上の最適材料を採用することができる。また、化学反応により誘電体部の端面を凹凸状にする必要が無く、内部導体と端子導体との間に化学反応による残留成分が生じることを防ぐことができる。
【0017】
前記原反は、樹脂フィルムからなることが好ましい。これにより、大容量化が容易なフィルムコンデンサ部品を実現できる。
【0018】
前記原反は、熱硬化性材料を主たる材料とする未硬化状態または半硬化状態の樹脂フィルムであり、前記複層化工程よりも後に、前記樹脂フィルムを熱硬化させる工程を実施することが好ましい。これにより、高耐熱なコンデンサ部品を実現できる。
【0019】
前記複層化工程は、平膜状の複数の前記原反を積み重ねることが好ましい。これにより、積層型のコンデンサ部品を製造することができる。積層型のコンデンサ部品は、製造過程で原反に大きなテンションがかかることがなく、熱硬化性材料のように製造時に脆い原反を利用しても原反が損傷し難く、効率的にコンデンサ部品を製造できる。
【0020】
前記内部導体および前記開口部は、前記誘電体部形成工程で前記誘電体部の端面が切り出されるカットラインを対象軸として、線対称にパターン形成されており、前記対象軸の両側で一体に設けられることが好ましい。これにより原反に一体に設けられる内部導体と開口部との形成サイズを大きくし、また、形成する数を減らすことができる。これらのことによって内部導体と開口部との形成精度を高められる。
【0021】
本願の第2の発明に係るコンデンサ部品は、平膜状の複数の第1の誘電体層と複数の第2の誘電体層とが積み重なる誘電体部と、前記第1の誘電体層に沿って拡がる第1の内部導体と、前記第2の誘電体層に沿って拡がり前記第1の内部導体に対向する第2の内部導体と、前記誘電体部の端面に設けられて前記複数の第1の内部導体に導通する第1の端子導体と、前記誘電体部の端面に設けられて前記複数の第2の内部導体に導通する第2の端子導体と、を備え、前記第1の端子導体に覆われる位置で、前記第2の誘電体層が前記第1の誘電体層よりも凹んで、前記第1の内部導体の表面が露出しており、前記第2の端子導体に覆われる位置で、前記第1の誘電体層が前記第2の誘電体層よりも凹んで、前記第2の内部導体の表面が露出している。
【0022】
積層型のコンデンサ素子は、実際の製造においては、原反を利用して一度に複数製造される。このため、積層型のコンデンサ素子に特許文献1に記載の製造方法を適用することはできなかった。一方、積層型のコンデンサ素子に特許文献2に記載の製造方法を適用して内部導体と端子導体とを面接触させると、誘電体部の材料に制約が生じてしまう。また、積層型のコンデンサ素子に特許文献3に記載の製造方法を適用して内部導体と端子導体とを面接触させると、内部導体と端子導体との間に不要な残留成分が生じてしまう。これに対して、第2の発明の積層型のコンデンサ素子は、内部導体と端子導体とが面接触していても、誘電体部の材料に制約が無く、内部導体と端子導体との間に不要な残留成分が生じることもない。
【0023】
前記第1の端子導体と前記第2の端子導体とは、前記誘電体部の同一の端面に設けられていることが好ましい。これにより、等価直列インダクタンス(ESL)が低いコンデンサ素子を構成できる。
【0024】
前記誘電体層は、樹脂フィルムからなることが好ましい。これにより、セラミックコンデンサよりも、大型化と大容量化とが容易なフィルムコンデンサ素子を構成できる。
【0025】
前記樹脂フィルムは、熱硬化した熱硬化性材料を主たる材料とすることが好ましい。これにより、高耐熱なコンデンサ素子を構成できる。
【0026】
本発明のコンデンサモジュールは、複数の前記コンデンサ素子を備え、前記複数の積層型のコンデンサ素子同士を電気的に接続するとともに、全体として概略直方体状に連結して構成されていることが好ましい。これにより、コンデンサモジュールにおいて、誘電体部の充填効率を高めてサイズを小型化できる。
【0027】
本発明の電力変換装置は、上述のコンデンサモジュールと、電力入力端子および電力出力端子を備えて前記電力入力端子から入力される電力を変換して前記電力出力端子に出力する電力変換部と、を備え、
前記コンデンサモジュールは、前記電力変換部の電力入力端子または電力出力端子に接続されることが好ましい。これにより、大電流に対応する小型のコンデンサモジュールを用いた、高い出力密度の電力変換装置を構成できる。
【発明の効果】
【0028】
第1の発明によれば、端子導体と内部導体とが面接触するコンデンサ素子を、原反を複層化してから分割して製造でき、コンデンサ素子ごとに複層化の工程を行う必要が無く、簡易で製造工程で低廉にコンデンサ素子を製造できる。
【0029】
また、第2の発明に係るコンデンサ素子によれば、平膜状の複数の誘電体層が積み重なる積層型のコンデンサ素子において、内部導体の表面と端子導体とを面接触させても、誘電体部の材料に制約が無く、内部導体と端子導体との間に不要な残留成分が生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の斜視図および側面断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造フローを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造過程での側面断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造過程での平面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るコンデンサ素子の製造フローを示す図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るコンデンサ素子を製造する原反の側面断面図および平面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係るコンデンサ素子の斜視図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るコンデンサ素子を製造する原反の平面図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係るコンデンサ素子を製造する原反の平面図である。
図10】本発明の第6の実施形態に係るコンデンサモジュールおよび電力変換装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法について説明する。
【0032】
図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法で製造されるコンデンサ素子10の斜視図である。図1(B)は、コンデンサ素子10の側面断面図である。以下、コンデンサ素子10において、図1における上側を向く面を天面10A、図1における下側を向く面を底面10B、図1における左側を向く面を左端面10C、図1における右側を向く面を右端面10Dと称する。
【0033】
コンデンサ素子10は、全体として概略直方体状であり、誘電体部11と第1の内部導体14B,14C,14Dと第2の内部導体15A,15B,15Cと第1の端子導体16と第2の端子導体17とを備えている。
【0034】
誘電体部11は、第1の誘電体層12A,12B,12C,12Dと、第2の誘電体層13A,13B,13Cと、を備えている。第1の誘電体層12A〜12Dと、第2の誘電体層13A〜13Cとは、それぞれ誘電体部11において天面10Aおよび底面10Bに平行な面内で拡がる平膜状であり、誘電体部11の天面10Aから底面10Bにかけて交互に積み重ねられている。第1の誘電体層12A〜12Dおよび第2の誘電体層13A〜13Cは、熱硬化性樹脂を主な材料とする樹脂フィルムからなり、熱硬化性樹脂が熱硬化した状態にある。第1の誘電体層12A,12B,12C,12Dは、天面10A側から視て互いに同じパターン形状を有している。また、第2の誘電体層13A,13B,13Cは、天面10A側から視て第1の誘電体層12A,12B,12C,12Dとは鏡像の関係にあたるパターン形状を有している。
【0035】
第1の内部導体14B〜14Dは、誘電体部11の内部で、第1の誘電体層12B〜12Dの表面に沿って拡がるように設けられている。第2の内部導体15A〜15Cは、誘電体部11の内部で、第2の誘電体層13A〜13Cの表面に沿って拡がるように設けられている。第1の内部導体14B〜14Dと第2の内部導体15A〜15Cとは、それぞれ誘電体部11の内部で、第1の誘電体層12B,12Cまたは第2の誘電体層13A〜13Cを挟んで対向している。
【0036】
第1の端子導体16は、誘電体部11の左端面10Cを覆うように設けられ、第1の内部導体14B〜14Dに導通している。第2の端子導体17は、誘電体部11の右端面10Dを覆うように設けられ、第2の内部導体15A〜15Cに導通している。
【0037】
ここで、第1の誘電体層12A〜12Dは、誘電体部11の左右方向の中心(図1(B)中に一点鎖線で示す。)を基準としてと、誘電体部11の左端面10C側にずらして誘電体部11に積層されている。第2の誘電体層13A〜13Cは、誘電体部11の左右方向の中心(図1(B)中に一点鎖線で示す。)を基準としてと、誘電体部11の右端面10D側にずらして誘電体部11に積層されている。このため、誘電体部11の左端面10Cでは、第2の誘電体層13A〜13Cが第1の誘電体層12A〜12Dよりも凹んで複数の開口部19が形成されている。また、誘電体部11の右端面10Dでは、第1の誘電体層12A〜12Dが第2の誘電体層13A〜13Cよりも凹んで複数の開口部19が形成されている。
【0038】
第1の内部導体14B〜14Dは、左端面10C側の縁が第1の誘電体層12B〜12Dの縁に到達し、右端面10D側の縁が第1の誘電体層12B〜12Dの縁に到達しないように成形されている。したがって、第1の内部導体14B〜14Dは、右端面10D側の縁近傍が誘電体部11の内部に埋もれており、左端面10C側の縁近傍の表面が、左端面10Cで開口部19に露出している。
【0039】
第2の内部導体15A〜15Cは、右端面10D側の縁が第2の誘電体層13A〜13Cの縁に到達し、左端面10C側の縁が第2の誘電体層13A〜13Cの縁に到達しないように成形されている。したがって、第2の内部導体15A〜15Cは、左端面10C側の縁近傍が誘電体部11の内部に埋もれており、右端面10D側の縁近傍の表面が、右端面10Dで開口部19に露出している。
【0040】
そして、第1の端子導体16は、誘電体部11の左端面10Cで第2の誘電体層13A〜13Cが凹む開口部19に入り込み、第1の内部導体14B〜14Dに面接触している。また、第2の端子導体17は、誘電体部11の右端面10Dで第1の誘電体層12A〜12Dが凹む開口部19に入り込み、第2の内部導体15A〜15Cに面接触している。したがって、本実施形態に係るコンデンサ素子10は、内部導体14B〜14D,15A〜15Cと端子導体16,17との接触面積が大きく、ESRが安定したものになる。
【0041】
このコンデンサ素子10は、誘電体部11が樹脂フィルムからなるため、セラミックコンデンサよりも大型で大容量な特性を実現することが容易である。また、誘電体部11が、硬化したポリビニルアセタール等の熱硬化性樹脂を主たる材料とするため、例えばPET、PPE、PBT等の熱可塑性樹脂からなるフィルムコンデンサ素子よりも高耐熱な特性が得られ、コンデンサ素子10を高温環境で利用することが可能になる。ただし、コンデンサ素子10が高温環境で利用する用途のものでない場合には、誘電体部11が熱可塑性樹脂により構成されていてもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係るコンデンサ素子10の製造方法について説明する。
【0043】
図2は、本実施形態に係るコンデンサ素子10の製造フローを示す図である。図3は、コンデンサ素子10の製造過程での構造を段階的に示す側面断面図である。図4は、コンデンサ素子10の製造過程での構造を示す平面図である。図3には、コンデンサ素子10が切り出されるカットラインCL1,CL2を、また、図4には、コンデンサ素子10が切り出されるカットラインCL1,CL2,CL3を、それぞれ破線で示している。カットラインCL1,CL2とカットラインCL3とは、互いに垂直に設けられる。カットラインCL1とカットラインCL2とは、互いに平行に設けられ、それぞれ交互に並べられる。
【0044】
コンデンサ素子10の製造工程では、まず、原反打ち抜き工程(図2:S11)が実行される。原反打ち抜き工程では、未硬化状態または半硬化状態の樹脂フィルムが巻かれた原反ロールから、ロール・ツー・ロール方式で所定面積の原反シートを打ち抜く。原反シートの形状は、複数個のコンデンサ素子10を縦横に並べて成形できるように設定される。
【0045】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、内部導体形成工程(図2:S12)が実行される。内部導体形成工程では、図3(S12)に示すように、後にコンデンサ素子(10)の誘電体層(12A,13A,12B,13B,12C,13C,12D)となる原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dを用意し、所定のパターンにNi,Al等の金属を蒸着することで、後にコンデンサ素子(10)の内部導体(15A,14B,15B,14C,15C,14D)となる内部導体25A,24B,25B,24C,25C,24Dを形成する。この際、内部導体25A,24B,25B,24C,25C,24Dは、原反シート23A,22B,23B,22C,23C,22DにおいてカットラインCL1またはカットラインCL2に少なくとも一部が重なるように設けられる。
【0046】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、開口部形成工程(図2:S13)が実行される。開口部形成工程では、図3(S13)に示すように、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dそれぞれの所定の位置を打ち抜き、後にコンデンサ素子(10)の開口部(19)となる開口部29を形成する。この際、開口部29は、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22DにおいてカットラインCL1またはカットラインCL2に少なくとも一部が重なるように設けられる。
【0047】
ここで、開口部形成工程後の原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dの平面形状について説明する。図4(A)は、原反シート22Aの平面図である。図4(B)は、原反シート23Aの平面図である。図4(C)は、原反シート22Bの平面図である。なお、原反シート23B,23Cは、原反シート23Aと同一の形状である。原反シート22C,22Dは、原反シート22Bと同一の形状である。
【0048】
図4(A)および図4(C)において、開口部29は、原反シート22A,22B(および原反シート22C,22D)の誘電体部11となる領域毎に、カットラインCL2に沿って、カットラインCL2の両脇にはみ出すように設けられる。また、図4(B)において、開口部29は、原反シート23A(および原反シート23B,23C)の誘電体部11となる領域毎に、カットラインCL1に沿って、カットラインCL1の両脇にはみ出すように設けられる。
【0049】
また、図4(C)に示す第1の内部導体24B(および第1の内部導体24C,24D)は、原反シート22B(および原反シート22C,22D)において、カットラインCL1のみを跨いでカットラインCL1の両側の誘電体部11となる領域に延びる長方形状に形成され、各誘電体部11となる領域でカットラインCL2上の開口部29よりも手前(カットラインCL1側)に端部が位置するように形成されている。
【0050】
図4(B)に示す第2の内部導体25A(および第2の内部導体25B,25C)は、原反シート23A(および原反シート23B,23C)において、カットラインCL2のみを跨いでカットラインCL2の両側の誘電体部11となる領域に延びる長方形状に形成され、各誘電体部11となる領域でカットラインCL1上の開口部29よりも手前(カットラインCL2側)に端部が位置するように形成されている。
【0051】
このように、内部導体24B,25A(および内部導体24C,24D,25B,25C)および開口部29は、内部導体形成工程(図2:S12)および開口部形成工程(図2:S13)を経て、カットラインCL1またはカットラインCL2を対象軸として線対称なパターンで形成される。
【0052】
なお、本実施の形態においては、開口部29は内部導体24B,25Aの全幅にわたって連続的に形成されているが、内部導体24B,25Aの幅方向に沿って所定間隔で複数個並ぶように非連続的に形成してもよい。
【0053】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、複層化工程(図2:S14)が実行される。複層化工程では、図3(S14)に示すように、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dが積み重ねられる。この際、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dを加圧して密着させ、また、加熱されて熱可塑性樹脂を硬化させることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂を加熱により硬化させる工程は、複層化工程よりも後であれば、どのような工程順で行ってもよい。
【0054】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、誘電体部形成工程(図2:S15)が実行される。誘電体部形成工程では、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22DがカットラインCL1,CL2,CL3に沿って分割されて、図3(S15)に示す誘電体部11が一度に複数形成される。この際、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22DにおいてカットラインCL1,CL2に沿って設けられていた開口部29が分割され、各誘電体部11の左端面10Cおよび右端面10Dに、開口部19が形成される。
【0055】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、端子導体形成工程(図2:S16)が実行される。端子導体形成工程では、図3(S16)に示すように、各誘電体部11の左端面10Cおよび右端面10Dが、金属材料によりメタリコン(金属溶射)され、これにより、各誘電体部11の左端面10Cおよび右端面10Dを覆う端子導体16,17が形成される。なお、本実施形態においては誘電体部11を樹脂フィルムで構成しているので、メタリコンにより端子導体16,17を形成するが、誘電体部11が樹脂フィルム以外のセラミックス等の材料で構成される場合には、ディップ法や印刷法を用いて端子導体16,17を形成するとよい。
【0056】
この際、誘電体部11の左端面10Cおよび右端面10Dに設けられる端子導体16,17が開口部19に入り込み、開口部19に露出する内部導体(15A,14B,15B,14C,15C,14D)に面接触する。
【0057】
以上の各工程を経て、本実施形態に係るコンデンサ素子10は製造される。この製造方法では、複層化工程(図2:S14)の後に誘電体部形成工程(図2:S15)を行うので、従来のように誘電体部11の成形後に部品毎の複層化を並列に行う必要が無く、簡易で低廉な製造工程を実現できる。また、硬化前の熱硬化性材料からなる脆い原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dを利用しても、製造過程で原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dに過大なテンションがかかることがなく、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dの損壊が発生し難いため、効率的にコンデンサ素子10を製造できる。原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dとしては、一律の熱収縮量のものを利用できるので、コンデンサ素子10の特性上の最適材料を採用することができる。また、原反シート22A,23A,22B,23B,22C,23C,22Dに開口部29を設けてカットすることにより誘電体部11の端面に開口部19を設けることができ、従来のように化学反応を利用して誘電体部11の端面を凹凸状にする必要が無く、このことによっても簡易で低廉な製造工程を実現でき、その上、内部導体15A,14B,15B,14C,15C,14Dと端子導体16,17との間に不要成分が残ることを防ぐことができる。
【0058】
以上に説明した第1の実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法により本発明は実現できる。なお、本発明は積層型のコンデンサ素子の製造方法に限られるものでは無く、巻回型のコンデンサ素子の製造方法においても実現することができる。その場合には、熱可塑性樹脂を主たる材料とする樹脂フィルムにより、誘電体部を構成すると好適である。
【0059】
また、本実施形態では、誘電体部形成工程で全てのカットラインCL1,CL2,CL3を切断する場合について説明したが、必ずしも誘電体部形成工程で全てのカットラインCL1,CL2,CL3を切断する必要はない。例えば、誘電体部形成工程に先立つ複層化工程において、各原反シートを積み重ねるよりも前に、各原反シートをカットラインCL1およびカットラインCL2に沿って短冊状に分割し、短冊状の各原反シートを積み重ねた後で、最後にカットラインCL3に沿って各原反シートを切断するようにしてもよい。このようにすると、カットラインCL1,CL2の切断によって成形される各誘電体部の左端面10Cおよび右端面10Dの形状を高い形状精度にすることができる。そして、複層化工程に先立ってカットラインCL1,CL2の切断を行う場合でも、各原反シートをキャリアフィルムで支持して、キャリアフィルム上で各原反シートのカットラインCL1,CL2を切断するようにすれば、キャリアフィルムで支持される複数の短冊状の原反シートを一度に積層することができ、短冊状の原反シート毎に複層化工程を並列して実行する必要がなくなる。このようにして、工程数の著しい増大を防ぎながら、各誘電体部の左端面10Cおよび右端面10Dの形状精度を高めることもできる。
【0060】
また、本実施形態では、原反打ち抜き工程の後で、内部導体形成工程や開口部形成工程を実行したが、原反打ち抜き工程は、内部導体形成工程や開口部形成工程よりも後の工程で実行してもよい。原反打ち抜き工程を、内部導体形成工程や開口部形成工程よりも後の工程で実行する例については、第2の実施形態で後述する。
【0061】
また、本実施形態では、原反シートの隣接する誘電体部となる領域において、各内部導体や開口部を線対称な形状で設けたが、原反シートの各誘電体部となる領域において、各内部導体や開口部が合同な形状で設けられてもよい。原反シートの各誘電体部となる領域において、各内部導体や開口部を合同な形状で設ける例については、第3および第4の実施形態で後述する。
【0062】
また、本実施形態では、2つの端子導体を誘電体部の対向する端面に配置したが、複数の端子導体が誘電体部の同じ端面に配置されてもよい。複数の端子導体が誘電体部の同じ端面に配置される例については、第4および第5の実施形態で後述する。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態に係るコンデンサの製造方法について説明する。
【0064】
本実施形態は、製造工程の順番が第1の実施形態と相違し、原反打ち抜き工程を内部導体形成工程と開口形成工程との後で実行する。
【0065】
図5は、本実施形態に係るコンデンサ素子の製造フローを示す図である。
【0066】
本実施形態に係るコンデンサ素子10の製造工程では、まず、内部導体形成工程(図5:S21)が実行される。内部導体形成工程では、樹脂フィルムが巻かれた原反ロールに対してロール・ツー・ロール方式で、所定のパターンにNi,Al等の金属を蒸着することで、後にコンデンサ素子の内部導体となる電極パターンを形成する。
【0067】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、開口部形成工程(図5:S22)が実行される。開口部形成工程では、電極パターンが形成された樹脂フィルムに対してロール・ツー・ロール方式で、パンチング等の処理を行って所定の位置を打ち抜いて開口部を形成する。
【0068】
次に、コンデンサ素子10の製造工程では、原反打ち抜き工程(図5:S23)が実行される。原反打ち抜き工程では、電極パターンおよび開口部が形成された樹脂フィルムに対して、ロール・ツー・ロール方式で所定面積の原反シートを打ち抜く。
【0069】
この後、第1の実施形態と同様に、複層化工程(図5:S24)と誘電体部形成工程(図5:S25)と、端子導体形成工程(図5:S26)とを実行し、コンデンサ素子10を製造する。
【0070】
本実施形態の製造方法のように、原反打ち抜き工程(図5:S23)は内部導体形成工程(図5:S21)と開口部形成工程(図5:S22)の後に実行してもよい。また、原反打ち抜き工程(図5:S23)は内部導体形成工程(図5:S21)と開口部形成工程(図5:S22)の間に実行してもよい。いずれにしても、複層化工程(図5:S24)の後に誘電体部形成工程(図2:S25)を行うことで、簡易で低廉な製造工程を実現できる。
【0071】
次に、本発明の第3の実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法について説明する。
【0072】
本実施形態では、各原反に形成する内部導体のパターンと開口部のパターンとが、第1の実施形態と相違し、いずれも誘電体部となる領域ごとに合同なパターンとなっている。
【0073】
図6(A)は、本実施形態に係るコンデンサ素子の原反シートを積み重ねた状態での側面断面図である。図6(B)および図6(C)は、コンデンサ素子30の原反シートの平面図である。図6には、コンデンサ素子10が切り出されるカットラインCL1,CL2を、それぞれ破線で示している。カットラインCL1とカットラインCL2とは、互いに垂直に設けられる。
【0074】
本実施形態は、原反シート32A,33A,32B,33B,32C,33C,32Dを積み重ねて分割することに誘電体部31を形成する。原反シート33A,32B,33B,32C,33C,32Dには、それぞれ、内部導体35A,34B,35B,34C,35C,34Dを天面側の片面に形成する。また、原反シート32A,32B,32C,32Dには、開口部39Aを形成し、原反シート33A,33B,33Cには、開口部39Bを形成する。
【0075】
ここで、原反シート32A,33A,32B,33B,32C,33C,32Dの平面形状について説明する。図6(B)は、原反シート33Aの平面図である。図6(C)は、原反シート32Bの平面図である。なお、原反シート33B,33Cは、原反シート33Aと同一の形状である。原反シート32C,32Dは、原反シート32Bと同一の形状である。
【0076】
開口部39Aは、原反シート32B(および原反シート32A,32C,32D)において誘電体部31となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの一方(図6中の右側のカットラインCL1)に沿って設けられる。
【0077】
開口部39Bは、原反シート33A(および原反シート33B,33C)において誘電体部31となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの他方(図6中の左側のカットラインCL1)に沿って設けられる。
【0078】
また、第1の内部導体34B(および第1の内部導体34C,34D)は、原反シート32B(および原反シート32C,32D)において誘電体部31となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの他方(図6中の左側のカットラインCL1)のみに接し、開口部39Aから離れるように設けられる。
【0079】
第2の内部導体35A(および第2の内部導体35B,35C)は、原反シート33A(および原反シート33B,33C)において誘電体部31となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの一方(図6中の右側のカットラインCL1)のみに接し、開口部39Bから離れるように設けられる。
【0080】
これにより、内部導体34B,35A(および内部導体34C,34D,35B,35C)および開口部39A,39Bは、誘電体部31となる領域毎に合同なパターンで形成される。
【0081】
これらの原反シート32A,33A,32B,33B,32C,33C,32Dは積み重ねられた状態で、カットラインCL1,CL2に沿って分割されて、複数の誘電体部31が形成される。これにより、各誘電体部31において開口部39Bが左端面に露出し、開口部39Aが右端面に露出する。そして、各誘電体部31の左端面および右端面を覆う端子導体がそれぞれ形成される。これにより、各誘電体部31の開口部39A,39Bに端子導体が入り込み、内部導体35A,34B,35B,34C,35C,34Dと端子導体とが面接触する。
【0082】
次に、本発明の第4の実施形態に係るコンデンサ素子40の製造方法について説明する。
【0083】
本実施形態では、2つの端子導体が誘電体部の同じ端面に配置される点で、第1の実施形態と相違する。図7(A)は、本実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法で製造される積層型のコンデンサ素子40の斜視図である。
【0084】
積層型のコンデンサ素子40は、全体として概略直方体状であり、誘電体部41と第1の内部導体44と第2の内部導体45と第1の端子導体46と第2の端子導体47とを備えている。誘電体部41は、天面および底面に平行な面内で拡がる平膜状の誘電体層を積み重ねた構成である。第1の内部導体44と第2の内部導体45とは、誘電体部41の内部で各誘電体層の表面に沿って拡がるように交互に設けられている。第1の内部導体44と第2の内部導体45とは、それぞれ誘電体部41の内部で、誘電体層を挟んで対向している。第1の端子導体46と第2の端子導体47とは、誘電体部41の同じ端面に設けられている。第1の端子導体46は、誘電体部41における誘電体層の積層方向に延びており、第1の内部導体44に導通している。第2の端子導体47は、誘電体部41における誘電体層の積層方向に延びており、第2の内部導体45に導通している。
【0085】
図7(B)は、第1の内部導体44が設けられる第1の誘電体層41Aを示す平面図である。第1の誘電体層41Aは、第1の内部導体44と開口部49Aとが形成されている。第1の内部導体44は、誘電体層41Aの縁近傍を除いて誘電体層41Aを覆うように拡がるとともに、誘電体層41Aの縁近傍の一部で端子導体46に導通する位置まで延びている。開口部49Aは、誘電体層41Aの縁近傍の一部で端子導体47に接する位置の周辺に設けられており、第1の内部導体44とは間隔を空けて離れるように形成されている。
【0086】
図7(C)は、第2の内部導体45が設けられる第2の誘電体層41Bを示す平面図である。第2の誘電体層41Bは、第2の内部導体45と開口部49Bとが形成されている。第2の内部導体45は、誘電体層41Bの縁近傍を除いて誘電体層41Bを覆うように拡がるとともに、誘電体層41Bの縁近傍の一部で端子導体47に導通する位置まで延びている。開口部49Bは、誘電体層41Bの縁近傍の一部で端子導体46に接する位置の周辺に設けられており、第2の内部導体45とは間隔を空けて離れるように形成されている。
【0087】
第1の内部導体44の端子導体46に導通する部分と、第2の内部導体45の開口部49Bとは互いに重なる位置に配されており、第2の内部導体45の開口部49Bに端子導体46が入り込むことにより、第1の内部導体44と端子導体46とは面接触する。
【0088】
同様に、第2の内部導体45の端子導体47に導通する部分と、第1の内部導体44の開口部49Aとは互いに重なる位置に配されており、第1の内部導体44の開口部49Aに端子導体47が入り込むことにより、第2の内部導体45と端子導体47とは面接触する。
【0089】
なお、このコンデンサ素子40は、第1乃至第3の実施形態で説明した構成と比べて、ESLがより低い特性を有している。これは、コンデンサ素子40に電流が流れる場合に、図7(B)および図7(C)に矢印で示すように、内部導体44と端子導体46との間に流れる電流Iと、内部導体45と端子導体47との間に流れる電流Iとの方向が逆向きになることで、電流Iによる磁界と電流Iによる磁界とが打ち消し合うためである。コンデンサ素子40のESLは、電流Iが流れる位置、即ち、端子導体46が設けられる位置と、電流Iが流れる位置、即ち、端子導体47が設けられる位置と、が近ければ近いほど低いものになる。従来の巻回型のコンデンサ素子であれば、対をなす端子導体を同一端面上に配置したり、距離を近付けることが困難であるが、本実施の形態で示すような積層型のコンデンサ素子では、対をなす端子導体を同一端面上に配置したり、距離を近付けることは容易である。
【0090】
ここで、誘電体層41Aが切り出される原反シート51と、誘電体層41Bが切り出される原反シート52との平面形状について説明する。図8(A)は、原反シート51の平面図である。図8(B)は、原反シート52の平面図である。図8には、コンデンサ素子40が切り出されるカットラインCL1,CL2を、それぞれ破線で示している。カットラインCL1とカットラインCL2とは、互いに垂直に設けられる。
【0091】
開口部49Aは、原反シート51において誘電体部41となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの一方側(図8中の右側のカットラインCL1)側に寄せるとともに、両側のカットラインCL2のうちの一方側(図8中の下側)に接して設けられる。
【0092】
開口部49Bは、原反シート52において誘電体部41となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの他方側(図8中の左側のカットラインCL1)側に寄せるとともに、両側のカットラインCL2のうちの一方側(図8中の下側)に接して設けられる。
【0093】
また、第1の内部導体44は、原反シート51において誘電体部41となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの他方側(図8中の左側のカットラインCL1)側に近い位置で、両側のカットラインCL2のうちの一方側(図8中の下側)に接するように設けられる。
【0094】
また、第2の内部導体45は、原反シート52において誘電体部41となる領域毎に、両側のカットラインCL1のうちの一方側(図8中の右側のカットラインCL1)側に近い位置で、両側のカットラインCL2のうちの一方側(図8中の下側)に接するように設けられる。
【0095】
これにより、内部導体44,45および開口部49A,49Bは、誘電体部41となる領域毎に合同なパターンで形成される。
【0096】
次に、本発明の第5の実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法について説明する。
【0097】
本実施形態は、原反シートにおける内部導体および開口部のパターンが線対称である点で、第4の実施形態と相違する。
【0098】
図9(A)は、原反シート51の平面図である。図9(B)は、原反シート52の平面図である。図9には、コンデンサ素子が切り出されるカットラインCL1,CL2を、それぞれ破線で示している。カットラインCL1とカットラインCL2とは、互いに垂直に設けられる。
【0099】
原反シート61,62は、内部導体64,65と開口部69A,69Bとを備えている。原反シート61,62は、前述の第4の実施形態における原反シートを、カットラインC2で区切られる2つの領域のうちの一方(図9中の下側)を、カットラインC1に沿う方向に反転させた形状である。このため、開口部69A,69Bは、原反シート61,62においてカットラインC1に沿って並びカットラインC2で区切られる2つの領域毎に、中央のカットラインC2を跨いで両側の領域に延びるように設けられている。内部導体64,65は、カットラインC2で区切られる2つの領域それぞれの中央に設けられた矩形部分同士を、カットラインC2と平行に延びる線路状の部分で繋いだような形状である。このように、内部導体64,65および開口部69A,69Bは、誘電体部となる領域毎にカットラインC2を対象軸とする線対称なパターンで形成してもよい。
【0100】
図10(A)は本発明の実施形態に係る電力変換装置72の模式図である。図10(B)は、本発明の実施形態に係るコンデンサモジュール70の斜視図である。図10(C)は、本発明の実施形態に係る電力変換装置72の等価回路図である。
【0101】
電力変換装置72は、コンデンサモジュール70とインバータ71とを備えている。
【0102】
インバータ71は、直流接続端子DC1,DC2と、交流接続端子AC1,AC2,AC3とを備え、電力入力端子である直流接続端子DC1,DC2間に印加される直流電力を、3相交流の交流電力に変換して、電力出力端子である交流接続端子AC1,AC2,AC3から出力する機能を有している。コンデンサモジュール70は、インバータ71の直流接続端子DC1,DC2に対してシャントに接続されて、平滑コンデンサとして利用されている。
【0103】
コンデンサモジュール70は、複数のコンデンサ素子75とケース76とを備えている。コンデンサ素子75は、前述のコンデンサ素子40と同様のものである。すなわち、コンデンサ素子75は、誘電体部77の内部導体と面接触する2つの端子導体78,79を、誘電体部77の同一端面に設けた構成であり、ESRが極めて低く安定した特性を有している。ケース76は概略直方体状であり、複数のコンデンサ素子75の端子導体78,79を同一の方向に向けた状態で、複数のコンデンサ素子75を整列させて内部に納めるように構成されている。このコンデンサモジュール70は、巻回型のフィルムコンデンサよりもコンデンサ素子の充填効率が高いため、小型であっても大きな容量を有することができる。
【0104】
なお、複数のコンデンサ素子75の端子導体78,79は、ここでは、それぞれ個別に外部接続するように構成されているが、接続端子を2つ設けて、各コンデンサ素子75の一方の端子導体78同士と他方の端子導体79同士とが接続されるように構成してもよい。
【0105】
このようなコンデンサモジュール70とインバータ71とを備える電力変換装置72は、小型で容量が大きくESRの低いコンデンサモジュール70を平滑コンデンサとしているため、小型であっても高い出力密度を得ることができる。
【0106】
なお、インバータに替えてコンバータを設けて電力変換装置を構成してもよい。また、コンデンサモジュール70に替えて単体のコンデンサ素子75を直接接続するようにしてもよい。また、コンデンサモジュール70を電力入力端子に替えて電力出力端子に接続してもよい。また、コンデンサモジュール70は平滑用ではなくACフィルタとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0107】
10,30,40,75…コンデンサ素子
11,31,41,77…誘電体部
12A,12B,12C,12D,41A…第1の誘電体層
13A,13B,13C,41B…第2の誘電体層
14B,14C,14D,24B,24C,24D,34B,34C,34D,44,64…第1の内部導体
15A,15B,15C,25A,25B,25C,35A,35B,35C,45,65…第2の内部導体
16,46,78…第1の端子導体
17,47,79…第2の端子導体
19,29,39A,39B,49A,49B,69A,69B…開口部
22A,23A,22B,23B,22C,23C,22D,32A,33A,32B,33B,32C,33C,32D,51,52,61,62…原反シート
70…コンデンサモジュール
71…インバータ
72…電力変換装置
76…ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10