(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179647
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】LEDランプの光源
(51)【国際特許分類】
F21V 29/85 20150101AFI20170807BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20170807BHJP
F21K 9/00 20160101ALI20170807BHJP
F21K 9/237 20160101ALI20170807BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170807BHJP
【FI】
F21V29/85
F21V29/503
F21K9/00 100
F21K9/237
F21Y115:10 300
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-167811(P2016-167811)
(22)【出願日】2016年8月30日
(62)【分割の表示】特願2014-546235(P2014-546235)の分割
【原出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-225315(P2016-225315A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-214111(P2013-214111)
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135965
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 要泰
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】陸名 雅三
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰久
(72)【発明者】
【氏名】松崎 将幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 信雄
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−156036(JP,A)
【文献】
特開2013−122899(JP,A)
【文献】
特開2012−119314(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0268936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/85
F21K 9/00
F21K 9/237
F21V 29/503
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外球で覆われたLEDランプの光源において、
ランプ軸線に沿って延在する筒状の光源支持体と、
前記光源支持体の外周部に配置された複数個のLED素子とを備え、
前記光源支持体は、ランプ軸線に垂直断面で見るとn角形(n=3,4,…)を形成し、n角形の角部には全長にわたって間隙が形成され、
前記光源支持体の両端部は全面的に開放されている、LEDランプの光源。
【請求項2】
外球で覆われたLEDランプの光源において、
複数枚の光源支持体片から構成され、隣接する該光源支持体片の間に間隙を空けて、ランプ軸線に垂直断面で見るとn角形(n=3,4,…)を形成するよう構成された光源支持体と、
各々の前記光源支持体片の外周面に搭載された複数個のLED素子とを備え、
前記光源支持体は、前記外球内でランプ軸線に沿って位置決めされ、
前記光源支持体の両端部は全面的に開放されている、LEDランプの光源。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLEDランプの光源において、
前記光源支持体は、ランプ口金から延在する支柱によって、ランプ軸線に沿って位置決めされている、LEDランプの光源。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLEDランプの光源において、
前記光源支持体は、銅、アルミニウム、又は熱伝導樹脂から形成されている、LEDランプの光源。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のLEDランプの光源において、更に、
前記光源支持体片の外周面に配置された実装基板を備え、該実装基板により前記LED素子へ給電されている、LEDランプの光源。
【請求項6】
請求項5に記載のLEDランプの光源において、
前記実装基板は、メタルコアのプリント配線板で形成されている、LEDランプの光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止形のLEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
照明用ランプは、概して、白熱電球、蛍光灯、HIDランプ、LEDランプと順次開発され、実用化されてきた。LEDランプは、発光ダイオード素子(LED素子)を光源として利用したランプである。LEDランプは、青色LED素子の開発により白色の発光が可能となり、最近、照明用ランプとして利用が拡がりつつある。
【0003】
図1A〜1Cは、現在広く販売されているLEDランプの一例を示す図である。これらのLEDランプ100は、一般に、出力が10W以下(典型的には7W程度)のランプである。
図1A〜1Cに示すように、ランプ形状は種々あるが、基本的に、口金102、放熱部104及びグローブ106から成っている。放熱部104は、アルミニウムのダイキャストから形成され、多くの場合、外周面に放熱フィンが形成されている。グローブ106は、透光性の樹脂から成る。
【0004】
LED素子は、白熱電球、蛍光灯、HIDランプ等と異なり、半導体素子であるため真空雰囲気又は所定のガス雰囲気中に配置する必要性がない。従って、アルミダイキャスト部分104とグローブ106との間は、適当な接着剤で固定されている。このため、アルミダイキャスト部分104とグローブ106とで形成される内部空間は、ランプ外部との間で気密封止にはなってない(以下、「非気密封止形」又は「開放形」という。)。
【0005】
本発明者等は、本発明に関連する次の先行特許文献が存在することを承知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-16223「ランプ」(公開日:2010/01/21)、特許第5081746号、出願人:パナソニック株式会社
【特許文献2】国際公開WO 2010/004702「電球形状照明用光源」(国際公開日:2010/01/14)、特許第5129329号、出願人:パナソニック株式会社
【特許文献3】特開2012-156036「LEDランプ」(公開日:2012/08/16)、出願人:岩崎電気株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LED素子は、半導体素子であり、半導体の接合部の温度と素子寿命が密接な関係にある。即ち、使用時の接合部の温度が比較的低い場合には素子寿命は長期間となるが、温度が高くなるにつれ素子寿命は急激に短くなる。従って、LEDランプでは、LED素子の温度が高いとランプ寿命が短縮化し、ランプ照度も劣化する。
【0008】
そのため、本出願人は、前掲特許文献3により、次のようなアイデアを提案した。即ち、気密封止されたランプ構成において、ランプ内に冷却ガスとしての低分子量ガス(例えば、ヘリウムガス)を封入する。ランプ内には、ランプ軸線方向に長い形状の銅製の光源支持体を配置し、その周囲に光源として複数個のLED素子を搭載する。光源支持体にはランプ軸線に沿って貫通孔を形成して冷却ガス流路とし、LED素子を裏面からも効率良く冷却する。この発明に関しては、一定の冷却効果が有ることが確認され、特許文献3の
図6にその効果がグラフで示されている。
【0009】
特許文献3の出願後、本発明者等は、特許文献3に記載のLEDランプより更に高い冷却・放熱手段を備えたLEDランプの構成の研究開発を進めてきた。一方、この研究開発の過程において、ランプ内にヘリウム100%の冷却ガスを封入した場合、LED素子に変色が発生することが判明した。
【0010】
そこで、本発明は、高い冷却・放熱機能を有し、同時にLED素子に変色が発生することがない気密封止形のLEDランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑みて、本発明に係るLEDランプは、一面では、LED光源を覆う外球を有する気密封止形のLEDランプであって、前記外球内の封入ガスは、ヘリウムに対して、少なくとも酸素を混入したヘリウムと酸素の混合ガスである。
【0012】
更に、上記気密封止形のLEDランプでは、前記混合ガスは、ヘリウムガスに対して、大気又は乾燥空気を混入して生成した混合ガスであってよい。
【0013】
更に、本発明に係るLEDランプは、一面では、LED光源を覆う外球を有する気密封止形のLEDランプであって、前記外球内に封入されたヘリウムガスと、固体の酸素ディスペンサーとを備え、ランプ点灯時には、前記酸素ディスペンサーの供給する酸素により、前記外球内でヘリウムと酸素の混合ガスが生成される。
【0014】
更に、上記気密封止形のLEDランプでは、前記混合ガスは、ヘリウムガスに対して、体積比で2〜10%の酸素を混入した混合ガスであってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い冷却・放熱機能を有し、同時にLED素子に変色が発生することがない気密封止形のLEDランプを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、現在広く販売されている非気密封止形のLEDランプの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、現在広く販売されている非気密封止形のLEDランプの他の一例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、現在広く販売されている非気密封止形のLEDランプの更に他の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る気密封止形のLEDランプの一例を示す図であり、LEDランプの正面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1実施形態に係る気密封止形のLEDランプの一例を示す図であり、4枚の光源支持体の位置関係が分かるように斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2A及び2Bに示すLEDランプで使用される光源支持体を説明する図である。
【
図4】
図4は、
図2A及び2Bに示すLEDランプで使用されるLED素子を説明する図である。
【
図5】
図5は、封入ガスと光束維持率の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、封入ガスと冷却効果の関係を、ジャンクション温度により示した図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る気密封止形のLEDランプの製造方法のフローであり、各ステップの右側にその段階の簡単なランプの図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るLEDランプの実施形態に付いて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。また、以下に説明する実施形態は、例示であって、本発明の範囲を限定するものではないことを承知されたい。
【0018】
(LEDランプの構成)
図2A及び2Bは、本発明の本実施形態に係るLEDランプの一例を示す図である。ここで、
図2AはLEDランプの正面図であり、
図2Bは4個の光源支持体の位置関係が分かるように斜め下方から見た斜視図である。このLEDランプ10は、
図1A〜1Cで説明した現在広く宣伝・販売されている7W程度の低出力LEDランプより高出力の12W程度のLEDランプを対象としている。このため、冷却・放熱手段が更に重要な検討事項となる。
【0019】
図2Aに示すLEDランプ10は、一端が口金2で気密封止された外球6の内部に、複数個のLED素子18が配置されている。複数個のLED素子18は、光源支持体14に適当な間隔で搭載され固定される。
【0020】
更に、この光源支持体14は、外球6の一端に固着されたステム8から延在する支柱20によって、外球6の内部の適当な箇所に位置決め支持されている。所望により、光源支持体14に隣接する支柱20の部分には、絶縁性チューブ(図示せず。)が被せられ、光源支持体14と支柱20との間の電気絶縁性が確保される。
【0021】
更に、口金2に近い外球6の内部には、熱遮蔽部材24が設けられていてもよい。熱遮蔽部材24は、例えば、セラミック、金属板、マイカ板等で形成されている。
【0022】
外球6の内部空間22に封入されるガスに関しては、後で、詳しく説明する。
【0023】
(各構成要素の説明)
図2Aに示すLEDランプ10の各要素に関して簡単に説明する。
【0024】
口金2は、白熱電球やHIDランプで使用されているねじ込みタイプ(E型)や差し込みタイプであってよい。外球6は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光性の硬質ガラスから成るBT管である。しかし、任意の形状であってよい。外球6は、透明タイプ又は拡散タイプ(曇りガラスのタイプ)のいずれであってもよい。公知の白熱電球やHIDランプと同様に、口金2と外球6との間は気密封止され、外球内部空間と外部空間との間は気密封止状態となっている。
【0025】
図2Bに示すように、このLEDランプ10では、4枚の光源支持体片14−1〜14−4から成る光源支持体片を備えている。各光源支持体片14−1〜14−4の外周面には、実装基板16が固定され、各実装基板16には4個のLED素子18が実装されている。所望により、光源支持体14の外周面と実装基板16との間に、熱伝導シート(図示せず。)を介在配置してもよい。
【0026】
図3は、この光源支持体14を説明する図である。光源支持体片14−1〜14−4の外形は、板状体であり、熱伝導性の良好な材質から成り、例えば、銅、アルミニウム、熱伝導樹脂等から成る。熱伝導樹脂は、樹脂に金属粉・金属片を混入して熱伝導係数を高くしたものである。
【0027】
4枚の光源支持体片14−1〜14−4は、
ランプ軸線に垂直断面で見ると、概して矩形を形成するように配置されている。更に、隣接する光源支持体片の間は接続されてなく、スリット(間隙)26を空けて配置されている。図示する光源支持体14は、4枚の光源支持体片が
ランプ軸線に垂直断面で見ると矩形を形成するように配置しているが、これに限定されない。即ち、3枚の光源支持体片で三角形を形成するように配置してもよく、任意の枚数(n個)の光源支持体片で任意の多角形(n角形)を形成するように配置してもよい。更に、各光源支持体14に実装されるLED素子も、任意所望の個数であってよい。
【0028】
各LED素子18に対する給電は、LED素子を直列に接続するリード線(図示せず。)により行われる。光源支持体14が良好な電気伝導体の場合、光源支持体を給電線として利用してもよい。
【0029】
実装基板16は、プリント配線板から成り、LED素子に給電するための必要な回路パターンが形成されている。LED素子18の放熱・冷却効果を高めるため、実装基板16は、板厚を比較的薄くするか、或いはメタルコア基板(金属コア基板)として形成することが好ましい。プリント配線板の技術分野に於いて、メタルコア基板は公知の技術である。金属の良好な熱伝導性により、高い放熱・冷却効果が期待できる。
【0030】
(LED素子の変色とその対策)
図2A及び2Bに示すLEDランプに於いて、外球内に封入するガスとして、冷却性能が高い観点から、100%のヘリウムガスHeを使用していた。しかし、点灯後、比較的短時間でLED素子が茶色に変色し、その結果、光束が劣化する現象が発生した。
【0031】
図4は、LED素子18の概略断面図である。LED素子18は、窒化アルミニウムAlN基板30の上に、白色の窒化ガリウムGaN系チップ32が搭載され、窒化ガリウム系チップの表面に透明なシリコーン密着層36が形成されている。窒化ガリウム系チップ32とシリコーン密着層36の側面には、シリコーン封止剤34が形成され、これらを保護している。シリコーン密着層36及びシリコーン封止剤34の上には、薄黄色の蛍光体シート38,40が、形成されている。シリコーン密着層36の上にある蛍光体シートは、シリコーンに無機蛍光体を混入した蛍光体シート蛍光体層40を形成し、シリコーン封止剤34の上にある蛍光体シートは、シリコーンから成る蛍光体シート散乱層38を形成している。蛍光体シート蛍光体層40の上を、ほぼ半球形状のシリコーンレンズ42が覆っている。
【0032】
本発明者等は、茶色に変色したLED素子18の各構成要素を分析した結果、元々透明であったシリコーン密着層36が、茶色に変色していることを確認した。更に、シリコーン密着層36以外の各要素に関しては、変色は見られないことも確認した。茶色に変色したシリコーン密着層36が、薄黄色の半透明の蛍光体シート蛍光体層40を透して見えるので、LED素子全体が変色しているように見える。
【0033】
従来の常識では、ヘリウムガスHeは、反応性が低い不活性ガスと知られているため、LED素子18の各要素への悪影響はないと考えられていた。また、酸素ガスは、構成要素を酸化し劣化する原因となるため、排除することが好ましいと考えられていた。実際、前掲特許文献1の段落0017には、「バルブ9の内部は、…不活性ガス(例えば、窒素である。)が封入されていても良い。バルブ9の内部を気密状体にすることで、封止体17を構成する樹脂(シリコーン樹脂)や蛍光体粒子が酸化により劣化するのを防ぐことができる。」の記載がある。同様に、前掲特許文献2の段落0040には、「LEDおよび蛍光体が吸湿することを防止するため、グルーブ41の内部空間に窒素ガスや乾燥空気を封入するか、内部のガスを排気して真空状態にしておくのが好ましい。」の記載がある。同様に、前掲特許文献3の段落0067には、「外球内部は、低分子量ガスで満たされているため、酸素は存在しなく、LED素子18、関連する回路パターン、その他の構成要素が酸化、腐食することもない。」の記載がある。
【0034】
しかし、本発明者等が確認したLEDランプでは、点灯後、比較的短時間でシリコーン密着層36に茶色の変色が発生している。現時点では、シリコーン密着層36の変色の原因を究明するには至っていない。
【0035】
そこで、本発明者等は、封入ガスの組成を変えて、即ち、ヘリウムガスHeに対して種々のガスを混入した混合ガスを用いて、変色の発生の度合いを実験により検証した。その結果、ヘリウムガスHeに対して、所定量の酸素O
2を混入した混合ガスでは、長期間、変色が発生しないことを発見した。LED素子の変色の程度は、変色による光束の劣化を光束維持率として捉え、定量的に規定している。
【0036】
表1は、封入ガスと光束維持率の関係の実験データである。表1に示す各データは、夫々の条件で製造した少なくとも5個のランプの測定値の平均値を示している。
【0038】
従来例は、外球内にヘリウムガスのみを封入したLEDランプである。点灯後100時間経過した時点で、光束維持率のデータより、光束は初期光束の6.6%まで低下したことが判る。
【0039】
本実施例は、ヘリウムHeと酸素O
2の混合ガスを封入したLEDランプである。ヘリウム97%と酸素3%の混合ガス(体積%)及びヘリウム93%と酸素7%の混合ガス(体積%)のいずれの場合も、点灯後491時間経過した時点で、光束は初期光束の100.2%を維持していた。ヘリウムと酸素の混合比に関しては、更なるデータの蓄積が必要であるが、現時点で、ヘリウムと酸素の混合ガスに関して酸素の比率が少なくとも2〜10%程度の範囲では、良好な光束維持率Mlが確保されよう。
【0040】
比較例は、空気を封入したLEDランプである。空気は、窒素N
278%と酸素O
221%の混合ガス(体積%)である。乾燥空気を封入した場合、点灯後1000時間経過した時点で、光束は初期光束の97.8%を維持していた。大気を封入した気密封止型ランプは、結局、開放形(非気密封止形)ランプと同じと考えられる。大気中の開放形ランプの場合、点灯後856時間経過した時点で、光束は初期光束の95.0%を維持していた。
【0041】
なお、ヘリウムガスの一部を酸素で置き換えたため、冷却性能の低下が懸念された。しかし、LED素子のジャンクション温度Tjのデータで見る限り、ヘリウム100%のランプではTj=121℃であり、ヘリウムと酸素の混合ガスのランプではTj=103〜105℃であり、冷却性能の低下は見られなかった。なお、本実施例において使用したLED素子のジャンクション温度Tjの許容温度は、135℃である。
【0042】
図5は、表1の点灯時間tと光束維持率Mlを、ガス組成をパラメータにして示したグラフである。
【0043】
図6は、表1のガス組成とジャンクション温度Tjの関係を示したグラフである。なお、比較例の空気に関しては、経験上、ヘリウムやヘリウムを主体とした混合ガスに比較すれば冷却効果は低いが、元々、空気自体の冷却効果はかなり高いことが知られている。比較例の空気の場合も、ジャンクション温度Tjの許容温度135℃以下であった。
【0044】
(LEDランプの製造方法)
図7は、本実施形態に係る気密封止形のLEDランプの製造方法のフローであり、各ステップの右側にその段階の簡単なランプの図を示している。
【0045】
ステップS1のマウント組立工程で、LED素子18を光源支持体14に固定し、光源支持体を支柱20に取り付けてマウントを形成、ステム8を取り付ける。
【0046】
ステップS2の封止工程で、マウントを外球6の外球内部に挿入し、マウントが取り付けられたステム8と外球6とをバーナーで熱して封着する。
【0047】
ステップS3の排気行程で、封止済みの外球内部から排気管を通じて一度真空状態に排気する。その後、所定のヘリウムと酸素の混合ガスを封入し、チップオフ(排気管をバーナーで溶かして封着すること)して気密封止する。
【0048】
ステップS4の口金付け工程で、口金2のトップ部及びサイド部を半田付けする。
【0049】
ステップS5の点灯試験、検査を経て、LEDランプ10が完成する。
【0050】
ここで、ステップS2〜S4では、 外球の取り付け部、ステム等がバーナーによって1000℃近くの高温に熱せられる。この熱が、外球内部のLED素子18に伝わって損傷しないようにするため、熱遮蔽部材24(
図2A,
図2B参照)が、外球の口金取り付け部分とLED素子18との間に設けられている。
【0051】
[その他の実施形態]
表1、
図5及び
図6に関連して、密封形LEDランプにヘリウムと酸素の混合ガスを封入した場合、比較的長期間、光束維持率Mlが高く維持されることを説明した。
ランプ製造時にヘリウムと酸素の混合ガスを封入する代わりに、ランプ外球内に、ヘリウムガスと固体の「酸素ディスペンサー」とを封入して、ランプ点灯時には、前記酸素ディスペンサーの供給する酸素により、前記外球内でヘリウムと酸素の混合ガスが生成されるようにしてもよい。この混合ガスは、ヘリウムガスに対して、体積比で2〜10%の酸素が混合した混合ガスとなることが好ましい。
【0052】
酸素ディスペンサーは、所定量の酸素をランプ外球内に意図的に添加することを目的とする部品である。例えば、従来の放電ランプでは、ランプ外球内に残留した有機物が放電管のエネルギーにより分解されて炭素が発生し、放電管(バーナー)の表面に付着し薄膜を形成する。予め酸素ディスペンサーを封入しておくと、酸素ディスペンサーは、所定量の酸素を放出することにより、炭素が放電管の表面に付着する前に、一酸化炭素や二酸化炭素に変えて、付着を防止する。
【0053】
なお、シリコーン密着層36の変色の原因及びヘリウムと酸素の混合ガスを封入した場合に変色が抑制されるメカニズムが、ランプ外球内に残留した有機物の炭化及び酸素による炭化抑制と同じであるか否かを含めて、現時点では不明である。
【0054】
しかし、所定量の酸素をランプ外球内に意図的に添加する酸素ディスペンサーは、その機能に於いて、本実施形態におけるヘリウムと酸素の混合ガスの生成に利用出来る。
【0055】
[まとめ]
以上により、本発明に係る気密封止形のLEDランプの実施形態に付いて説明したが、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【0056】
本実施形態では、ヘリウムと酸素の混合ガスについて説明したが、例えば、他の種類のガスを混入した場合であっても、それが新たな効果を生じる別の発明でない限り、本発明の範囲内である。従って、ヘリウムに対して、大気又は乾燥空気を混入して、ヘリウムと酸素の混合ガスを生成する場合も、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0057】
2:口金、 6:外球、 8:ステム、 10:LEDランプ、 14:光源支持体、 14−1,14−2,14−3,14−4:光源支持体片、 16:実装基板、 17:封止体、 18:LED素子、 20:支柱、 22:内部空間、 24:熱遮蔽部材、 30:基板、 32:窒化ガリウム系チップ、 34:シリコーン封止剤、 36:シリコーン密着層、 38:蛍光体シート、 38:蛍光体シート散乱層、 40:蛍光体シート蛍光体層、 42:シリコーンレンズ、 100:LEDランプ、 102:口金、 104:放熱部,アルミダイキャスト部分、 106:グローブ、
Tj:ジャンクション温度、 Ml:光束維持率、