特許第6179684号(P6179684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179684
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20170807BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20170807BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20170807BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H02G3/22
   H02G3/04 068
   H01B17/58 C
   B60R16/02 622
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-28748(P2017-28748)
(22)【出願日】2017年2月20日
(62)【分割の表示】特願2016-181211(P2016-181211)の分割
【原出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2017-108627(P2017-108627A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋和
(72)【発明者】
【氏名】矢橋 智宏
(72)【発明者】
【氏名】林 将志
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−032855(JP,A)
【文献】 特開2013−009527(JP,A)
【文献】 特開平11−306889(JP,A)
【文献】 特開平06−109179(JP,A)
【文献】 実開昭55−056424(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とが交互に繰り返されることで可撓性を有する蛇腹状に形成されるとともに内部に電線を収容するコルゲートチューブに被せ付けられるグロメットであって、
前記コルゲートチューブの外周側にシール状態で接続可能な筒状に形成されたコルゲート側端部と、前記コルゲート側端部の内周面において、前記コルゲートチューブの谷部に密着するように設けられた複数のシール用リップとを備え、
前記コルゲート側端部の外周面の先端部には先細りテーパ状の逃がし面が形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記シール用リップは、前記コルゲート側端部における前記先端部の内側に位置するものを含んでいることを特徴とする請求項1記載のグロメット。
【請求項3】
前記シール用リップのうち前記先端部の内側に位置するものは、他の前記シール用リップよりも突出高さを高くしてあることを特徴とする請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
山部と谷部とが交互に繰り返されることで可撓性を有する蛇腹状に形成されるとともに内部に電線を収容するコルゲートチューブに被せ付けられるグロメットであって、
前記コルゲートチューブの外周側にシール状態で接続可能な筒状に形成されたコルゲート側端部と、前記コルゲート側端部の内周面において、前記コルゲートチューブの谷部に密着するように設けられた複数のシール用リップとを備え、
前記コルゲート側端部の内周面であって前記コルゲート側端部の外周面に配された締め付けバンドによって締め付けられる幅領域内に含まれる部位には、前記シール用リップが設けられた部分の少なくとも一部と、前記コルゲートチューブの前記山部の突出端面とが当接することで前記シール用リップの潰れを規制する規制受け部とが設けられることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
前記シール用リップは、前記幅領域内に前記シール用リップの一部が含まれるように位置することを特徴とする請求項4に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車では、バッテリとインバータとの間やインバータとモータとの間等に配索されるワイヤハーネスを金属製パイプに挿通して配線する場合が多い。金属製パイプは自動車ボディの床下において前後方向に沿って配されている。この金属製パイプは電線に対するシールド機能と飛び石等からの保護の機能を有している。金属製パイプはエンジンルーム内に導入された後は、インバータ側と金属編組部を介して接続されることがある。金属編組部は金属素線をメッシュ状に編組したものであり、金属製パイプの端部に被せ付けられ、かしめリングにてかしめ付けることによって接続されている。さらに、金属製パイプと金属編組部との接続部分にはゴム材よりなる防水用のグロメットが嵌着されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−311699号公報:図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グロメットが装着される箇所にも高圧洗浄水が吹き付けられる事態が想定される。しかしながら、上記した従来構造ではかかる事態に十分に対応できるものではなく、コルゲートチューブとグロメットとの間、及びパイプとグロメットとの間のシールが経時的に低下してしまう懸念があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、防水性を高めることができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のグロメットに係る第1の発明は、山部と谷部とが交互に繰り返されることで可撓性を有する蛇腹状に形成されるとともに内部に電線を収容するコルゲートチューブに被せ付けられるグロメットであって、前記コルゲートチューブの外周側にシール状態で接続可能な筒状に形成されたコルゲート側端部と、前記コルゲート側端部の内周面において、前記コルゲートチューブの谷部に密着するように設けられた複数のシール用リップとを備え、前記コルゲート側端部の外周面の先端部には先細りテーパ状の逃がし面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のグロメットに係る第2の発明は、山部と谷部とが交互に繰り返されることで可撓性を有する蛇腹状に形成されるとともに内部に電線を収容するコルゲートチューブに被せ付けられるグロメットであって、前記コルゲートチューブの外周側にシール状態で接続可能な筒状に形成されたコルゲート側端部と、前記コルゲート側端部の内周面において、前記コルゲートチューブの谷部に密着するように設けられた複数のシール用リップとを備え、前記コルゲート側端部の内周面であって前記コルゲート側端部の外周面に配された締め付けバンドによって締め付けられる幅領域内に含まれる部位には、前記シール用リップが設けられた部分の少なくとも一部と、前記コルゲートチューブの前記山部の突出端面とが当接することで前記シール用リップの潰れを規制する規制受け部とが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明の作用効果は次の通りである。例えば、コルゲート側端部の端面に高圧洗浄水が浴びせられる事態を想定すると、仮に、端面が切り立って形成されていれば高圧洗浄水の圧力を受け易い。このため端面部分が捲れ上がり、洗浄水がグロメットの内部に進入してしまう虞がある。その点、第1の発明であれば、高圧洗浄水を逃がし面のテーパに沿って逃がすことができるため、端面部分の捲れ上がりが有効に緩和され、もってグロメットのシール機能を高めることができる。
【0009】
第2の発明の作用効果は次の通りである。仮に、締め付けバンドがコルゲート側端部を過度に締め付けるようなことがあっても、規制受け部によってシール用リップの潰れを規制することができる。このことによって、グロメットのシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】グロメットの装着部位の周辺を示す分解斜視図
図2】グロメットの断面図
図3】グロメットの装着部位における断面図
図4】グロメットの変形例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明のグロメットは、前記シール用リップが前記コルゲート側端部における前記先端部の内側に位置するものを含んだ構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、コルゲート側端部における開口縁のシール機能を向上させることができる。
【0012】
(2)本発明のグロメットは、前記シール用リップのうち前記先端部の内側に位置するものが、他の前記シール用リップよりも突出高さが高くなった構成としてもよい。
このような構成によれば、シール機能が低下しやすいコルゲート側端部の開口縁のシール機能を強化することができる。
【0013】
(3)本発明のグロメットは、前記シール用リップが、前記幅領域内に前記シール用リップの一部が含まれるように位置するように構成してもよい。
このような構成によれば、コルゲート側端部において締め付けバンドで締め付けられる幅領域内には、シール用リップの一部が設けられ、他は幅領域外に設けられる。上記幅領域内に位置するシール用リップは締め付けバンドによる締め付け力の作用によって劣化しやすいが、幅領域の外側に設けられたシール用リップは締め付け力の影響を受けにくいため、グロメットのシール性保持に寄与する。
【0014】
<実施例1>
次に、本発明のグロメットを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例ではハイブリッド自動車において、リア側の車室内に搭載されたバッテリとエンジンルーム内に搭載されたインバータとの間を接続するワイヤハーネスWHの配索経路中に設けられたグロメットG1について説明する。
【0015】
ワイヤハーネスWHは、図1に示すように、複数本の電線よりなる。ワイヤハーネスWHの一部は導電金属製のシールドパイプ1中に挿通される。シールドパイプ1はアルミニウムあるいはアルミニウム合金製であり、車両ボディの床下に配されている。また、図3に示すように、シールドパイプ1の先端はラッパ状に拡開して拡開部2が形成されている。
【0016】
シールドパイプ1の一端部には金属編組部3の一端側が接続されている。金属編組部3は、例えば、表面に錫メッキ加工を施した銅系金属素線をメッシュ状にかつ長尺の筒状に編組して形成したものである。この金属編組部3内にはシールドパイプ1から引き出された電線が挿通されている。金属編組部3はシールドパイプ1の外周面に被せ付けられ、かしめリング4でかしめ固定されている。
【0017】
かしめリング4は公知のものである。かしめリング4は、自然状態ではリング状の本体部4Aの一部が径方向外方へ迂回してかしめ部4Bとして突出する形態となっている。かしめリング4を締め付ける時には、かしめ部4Bの根元部分を摘んで接近させることで、本体部4Aを縮径状態に移行させることでき、これにより、金属編組部3がシールドパイプ1にかしめ固定される。
【0018】
金属編組部3は、シールドパイプ1と接続される側の一部範囲を除いてコルゲートチューブ5内に挿通されており、金属編組部3の端部は図示しないインバータとの接続部にまで至っている。かくして、ワイヤハーネスWHはシールドパイプ1および金属編組部3が設けられた長さ範囲に亘ってシールド性が確保される。
【0019】
コルゲートチューブ5は合成樹脂材にて一体かつ長尺の筒状に形成されている。コルゲートチューブ5の周面は山部5Aと谷部5Bとが繰り返される蛇腹形状に形成され、良好な可撓性を有している。このコルゲートチューブ5とシールドパイプ1との間には、コルゲートチューブ5から露出した金属編組部3を収容するグロメットG1が架け渡されるようにして装着されている。
【0020】
グロメットG1はゴム質材(例えばEPDM)により一体に形成されている。グロメットG1は軸方向の中央部が基部6となっており、その一部は径方向外方へかつ周方向に所定長さ範囲に亘って膨出する収容部7が形成されている。この収容部7の内部空間は、かしめリング4のかしめ部4Bを収容するための空間である。
【0021】
グロメットG1の一端側にはパイプ側端部8が形成され、他端側にはコルゲート側端部9が形成されている。パイプ側端部8及びコルゲート側端部9は共に円筒形状に形成され、パイプ側端部8はシールドパイプ1の端部を内側へ挿通可能であり、コルゲートチューブ5側端部はコルゲートチューブ5の外周側へ挿通可能である。
【0022】
パイプ側端部8の外周面における端部寄りの位置には間隔を開けて二条の突縁10が全周に亘って形成されている。この両突縁10間は締め付けバンド12を位置決めするための装着溝11となっている。なお、装着溝11の溝幅は締め付けバンド12の幅よりも若干広めに設定されている。
【0023】
締め付けバンド12は公知のものであるため、説明は簡単に留める。締め付けバンド12は合成樹脂材にて一体かつ帯状に形成されている締め付けバンド12の一端部には他端側を挿通可能なロック部13が形成されており、他端側には長さ方向に沿って鋸歯状の係止縁(図示しない)が多数形成されている。また、ロック部13内には係止爪(図示しない)が撓み可能に形成されており、ロック部13へ通された他端側を引っ張り操作して各係止縁と選択的に係止させることで、パイプ側端部8を縛り付け、シールドパイプ1に締め付け固定することができる。
【0024】
一方、パイプ側端部8の内周面には図2に示すように、複数(図示では4条)のパイプ側シール用リップが設けられている。各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4は全周に沿って一体に突出形成されていて、それぞれはシールドパイプ1の外周面に密着してシールをとることができる。本実施例においては、各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4はパイプ側端部8の開口縁に設けられたもの(第1リップ14-1)、装着溝11における軸方向中央部の直下の部位に設けられた(第2リップ14-2)、開口縁から離れた側の突縁10の直下から僅か奥方へずれた部位に設けられたもの(第3リップ14-3)、及び第3リップ14-3からさらに奥方へずれた部位に設けられたもの(第4リップ14-4)によって構成されている。このように、本実施例では締め付けバンド12によって締め付けられる幅領域(図2中のWで示された範囲の領域)内には第2リップ14-2のみが位置し、他は幅領域からずれて配置され補助リップとして機能するようにしている。また、各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4の突出高さはいずれも均一高さに揃えられている。
【0025】
また、パイプ側端部8の外周面の先端には先細りテーパ状のパイプ側逃がし面15が形成されている。すなわち、パイプ側端部8の端面には軸線に対しほぼ直角に切り立つ環状の起立面18が形成されている。そして、上記したパイプ側逃がし面15はこの起立面18の外周縁から先端側に位置する突縁10の頂部に至るまでの間において全周に亘って形成されている。
【0026】
一方、コルゲート側端部9の外周面においても軸方向の中央部には締め付けバンド12を位置決めするための取付け溝16が全周に亘って凹み形成されている。コルゲート側端部9の外周面の先端にも先細りテーパ状のコルゲート側逃がし面17が形成されている。すなわち、コルゲート側端部9の端面には軸線に対しほぼ直角に切り立つ環状の起立面19が形成されている。そして、上記したコルゲート側逃がし面17はこの起立面19の外周縁から所定の係止角度をもって全周に亘って形成されている。なお、本実施例では、パイプ側逃がし面15の傾斜角度α1はコルゲート側逃がし面17の傾斜角度α2より小さく設定されている(α1<α2)。
【0027】
コルゲート側端部9の内周面には、図2に示すように複数のコルゲート側シール用リップ20-1〜20-4が設けられている。これらはコルゲート側端部9の開口縁に設けられたものから奥方へ順に、均一ピッチにて設けられている。このピッチはコルゲートチューブ5の山部5A・谷部5Bのピッチと同一である。各コルゲート側シール用リップ20-1〜20-4の突出高さは各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4より高めに設定されていて、コルゲートチューブ5の端部がコルゲート側端部9内に挿通された状態では、各コルゲート側シールリップの突出端部がコルゲートチューブ5の谷部5Bの底面に密着してシールがとられるようになっている。
【0028】
また、各コルゲート側シール用リップ20-1〜20-4のうち中央に位置する二条(20-2,20-3)については、取付け溝16内においてコルゲート側端部9を緊締する締め付けバンド12の幅領域内にそれぞれの一部が含まれるよう位置するが、開口縁に設けられたコルゲート側シール用リップ20-1及び最も奥部に設けられたコルゲート側シール用リップ20-4は、共に幅領域Wの外に位置して補助リップとして機能するようにしてある。
【0029】
さらに、コルゲート側端部9において締め付けバンド12の幅領域W内にはコルゲートチューブ5の一つの山部5Aが位置するようにしてあり、図3では締め付けバンド12のほぼ直下に山部5Aが位置するようにしてあり、この山部5Aは、コルゲート側端部9の内周面のうち幅領域W内に位置する両コルゲート側シール用リップ20−2、20-3の間の部位に当接する。かくして、同部位は締め付けバンド12が過剰に締め付けられるようなことがあった場合に、幅領域W内に含まれるコルゲート側シール用リップ20-1〜20-4の過剰な潰れを回避する規制受け部21として機能することができる。
【0030】
本実施例1においては、例えば、次のようにしてグロメットG1の取付けがなされる。まず、コルゲートチューブ5内に挿通された金属編組部3の一部を外部に引き出しておき、シールドパイプ1の端部の外周面に被せ付ける。そして、この被せ付けられた部位へ、予めシールドパイプ1側に嵌合されていたかしめリング4を移動させ、ここの状態でかしめリング4のかしめ部4Bをかしめてやれば、金属編組部3がシールドパイプ1にかしめ固定される。
【0031】
その後、シールドパイプ1あるいはコルゲートチューブ5側に予め嵌め込まれていたグロメットG1を金属編組部3のかしめ部位へ向けて移動させる。そして、かしめリング4のかしめ部4BをグロメットG1の収容部7内に収容させつつ、コルゲート側端部9をコルゲートチューブ5の端部の外周側に、パイプ側端部8をシールドパイプ1の外周側にそれぞれ被せ付ける。これにより、グロメットG1はシールドパイプ1とコルゲートチューブ5とを跨ぐようにして装着される。
【0032】
このとき、パイプ側端部8においては各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4はシールドパイプ1の外周面に密着し、コルゲート側端部9においては各コルゲート側シール用リップ20-1〜20-4はコルゲートチューブ5の対応する谷部5Bに入り込んでそれぞれの底面に密着している。
【0033】
最後に、パイプ側端部8の装着溝11内において締め付けバンド12を締め付け、またコルゲート側端部9において取付け溝16において締め付けバンド12を締め付ければ、グロメットG1の取付けが完了する。
【0034】
以上のようにして取り付けられたグロメットG1によれば、各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4及び各コルゲート側シール用リップ20-1〜20-4によってシールドパイプ1との間あるいはコルゲートチューブ5との間への水の進入を防止することができる。
【0035】
ところで、パイプ側端部8およびコルゲート側端部9において締め付けバンド12の幅領域W内に、パイプ側シール用リップ14-2およびコルゲート側シール用リップ20-2、20-3が含まれるように、あるいは直下に位置するようにしてあるため、締め付けバンド12が適切に締め付けられる限りは、パイプ側シール用リップ14-2およびコルゲート側シール用リップ20-2、20-3に適切なシール圧を付与することができる。また、コルゲートチューブ5側においては締め付けバンド12が過剰な締め付けがなされることがあっても、締め付けバンド12の直下にコルゲートチューブ5の山部5Aが位置するようにして、規制受け部21に当接させるようにしたため、コルゲート側シール用リップ20-2、20-3が過剰に潰されることがなく、シール性が確保される。
【0036】
また、締め付けバンド12の幅領域内に含まれるパイプ側シール用リップ14-2およびコルゲート側シール用リップ20-2、20-3は締め付けバンド12から常に締め付け圧力が作用するため、経時的に劣化を生じてシール機能が低下することが考えられる。しかし、本実施例では締め付けバンド12の幅領域Wの外側にも同領域Wを挟むようにして、パイプ側シール用リップ14−1,14−3,14−4及びコルゲート側シール用リップ20-1、20−4のそれぞれを位置させた。これら幅領域W外のリップは経時劣化の進行が遅く、シール性の長期保持に有効となる。とりわけ、高圧洗浄水が吹きかけられる可能性の高いパイプ側端部8にかかる構造を設ける意義は大きい。
【0037】
さらに、シール性を考慮する場合に、最も厳しい状況となるのは、高圧洗浄水がパイプ側端部8の端面に噴き付けられる場合である(コルゲート側端部9の端面に噴きつけられることもありうる)。従来であれば、この端面は軸線に対し直角に切り立った起立面の面積が大きかったため、端面の捲れ上がりを生じ水の進入を許す虞があった。しかし、本実施例ではパイプ側逃がし面15に加えコルゲート側逃がし面17も設けることで、起立面18,19の面積が従来よりも十分に小さくなり、また高圧洗浄水の圧力を両逃がし面15,17に沿って逃がすようにしたため、グロメットG1の両端部8,9の端面が捲れ上がってしまう事態を確実に緩和することができ、シール性を保持することができる。
【0038】
また、コルゲート側端部9においては開口縁に形成されたコルゲート側シール用リップ20-1〜20-4がコルゲートチューブ5の谷部5Bに入り込んでいるため、このことによっても捲れ上がりが生じにくくなっている。この点を踏まえ、本実施例では、パイプ側逃がし面15の傾斜角度α1よりもコルゲート側逃がし面17の傾斜角度α2の方が大きい設定としても、捲れ上がりを生じにくい。したがって、その分だけコルゲート側端部9の方がパイプ側端部8よりも端部の肉厚を増加させうる。コルゲートチューブ5側は電線の配索方向が適宜に変更される側であるため、その際にコルゲート側端部9に一定の肉厚を確保して剛性を高め得るようにすることはコルゲートチューブ5への追従性を確保する上で有意義である。
【0039】
コルゲート側端部9では、従来は、コルゲートチューブ5に対しては締め付けバンド12を用いず、テープ巻きによって接続するようにしていた。しかし、このようなテープ巻きは作業上のばらつきが多く接続信頼性が乏しい、という点も指摘されていたが、本実施例のように締め付けバンド12による締め付けであれば、治具等の使用により一定の締め付け力を比較的簡単に得ることができるから、接続信頼性が高められる。さらに、テープ巻きの場合はテープが経年劣化することも懸念されるが、本実施例ではかかる心配もない。
【0040】
図4はコルゲート側シール用リップ20-1〜20-4およびパイプ側シール用リップ14-1〜14-4の変形例を示している。同図に示すグロメットG2においては、各コルゲート側シール用リップ20-1〜20-4および各パイプ側シール用リップ14-1〜14-4のうち、開口縁に位置するもの14-1,20−1を他のものよりも突出高さを高くしてある。このようにする理由は、締め付けバンド12を締め付けるとパイプ側端部8及びコルゲート側端部9の開口縁全体が拡開気味になり、開口縁に位置するコルゲート側シール用リップ20-1およびパイプ側シール用リップ14-1のシール機能が低下する虞があることへの対応のためである。
このようにすることによっても、グロメットG2のシール性向上に寄与することができる。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、金属編組部3とコルゲートチューブ5とを別体に形成したが、金属編組部3をコルゲートチューブ5内にインサートして一体に形成したものであってもよい。
(2)上記実施例では、シールドパイプ1を金属材料のみによって形成したが、樹脂製のパイプ内に金属製の筒状体をインサートして形成するようにしてもよい。
【0042】
(3)上記実施例では、ワイヤハーネスWHの配索領域に沿ってシールドパイプ1及び金属編組部3を設けてシールド機能を確保したが、本発明を、シールドが要求されないような条件で利用する場合には、パイプは必ずしも導電性金属である必要はなく、また金属編組部3は省略してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…シールドパイプ
3…金属編組部
5…コルゲートチューブ
5A…山部
5B…谷部
8…パイプ側端部
9…コルゲート側端部
12…締め付けバンド
14−1〜14−4…パイプ側シール用リップ
15…パイプ側逃がし面
17…コルゲート側逃がし面
20−1〜20-4…コルゲート側シール用リップ
21…規制受け部
G1,G2…グロメット
WH…ワイヤハーネス
W…幅領域
図1
図2
図3
図4