(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液状エポキシ樹脂100重量部につき硬化開始温度100℃未満の硬化剤を1〜200重量部含有し、且つ溶剤を含有しない穴埋め用硬化性樹脂組成物であり、下記穴埋めプリント配線板の製造方法に専ら用いられる、穴埋め用硬化性樹脂組成物。
[基材が有機材製のプリント配線板に設けられたメッキスルーホールの余剰部分をバックドリル工法にて除去し、貫通穴全体を上記穴埋め用硬化性樹脂組成物にて充填し、充填樹脂を、先ず70〜90℃の加熱により硬化率60〜73%とし、次いで130〜200℃の加熱をし、完全硬化させる、穴埋めプリント配線板の製造方法]
穴埋めプリント配線板の製造方法が、充填樹脂の完全硬化後に更に、プリント配線板表面の少なくとも一部を平坦化するものであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の穴埋め用硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明を、最良の実施形態に基づき、図面を用い、詳細に説明する。
尚、粘度はJIS Z8803、粒径はJIS K5600−2−5、による。
【0018】
本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法において、メッキスルーホール(
図1A、1)[即ち、内壁(壁面)がメッキ(
図1A、2)された貫通孔]を備えたプリント配線板を用いる。
【0019】
このようなプリント配線板は、例えば以下のような方法にて製造される。即ち、基材(基板)表面に回路を形成→この基材から積層板を形成→積層板に貫通孔を形成→貫通孔内壁をメッキし、メッキスルーホールを形成。
【0020】
基材(
図1A、3)が、有機材製、特にガラスクロス入り樹脂(エポキシ樹脂等)製である場合、本願発明効果(ボイドの発生防止等)が特に顕著に発揮される。
【0021】
基材から積層板を形成するには、例えば基材を所望枚数、重ねて熱プレス等により一体化して、行うことができる。
【0022】
積層板に貫通孔を形成するには、具体的にはドリル等により、行うことができる。
【0023】
貫通孔内壁をメッキするには、例えば化学メッキ及び/又は電気メッキ等により、行うことができる。
【0024】
メッキスルーホールにおいて、メッキ厚としては、例えば10〜50μmである。メッキ金属種としては、銅等が挙げられる。メッキスルーホールの孔径(内径)は例えば100〜800μm、孔長は例えば200〜10000μmである。
【0025】
本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法において、メッキスルーホールの余剰部分(不要部分等を含む。)をバックドリル工法にて除去する。
メッキスルーホールの余剰部分としては、例えばスルーホールスタブ等が挙げられる。
【0026】
バックドリル工法による除去は、例えばドリルにて、プリント配線板表面から余剰部分が除去される深さまで、メッキスルーホール中心軸に沿って掘り進めることにより行うことができる。掘削孔径は、例えばメッキスルーホール孔径より通常20〜200%程度、大きいものであり、具体的には120〜1600μmである。
【0027】
本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法において、貫通穴全体[即ち、上記掘削空間(
図1B、4)(余剰部分の除去により生まれた空間)と、メッキスルーホールの残余部分(
図1B、5)]を穴埋め用硬化性樹脂組成物(
図1C、6)にて充填する。
【0028】
穴埋め用硬化性樹脂組成物としては、液状エポキシ樹脂及び充填剤を含有し、且つ溶剤を含有しないもの、を用いる。
【0029】
液状エポキシ樹脂とは、常温で液状又は半固体状態のエポキシ樹脂をいい、例えば、常温で流動性をもつエポキシ樹脂が挙げられる。そのような液状エポキシ樹脂としては、例えば粘度(室温、mPa・s)が20000以下、特に1000〜10000が好ましい。
【0030】
具体的には、液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、例えば次式、
【化1】
[式中、nは0若しくは1を表す。]
で表されるものが挙げられ、1種以上含有してよい。
【0031】
更に、液状エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、例えば次式、
【化2】
[式中、nは0若しくは1を表す。]
で表されるものが挙げられ、1種以上含有してよい。
【0032】
更に、液状エポキシ樹脂の具体例としてはフェノールノボラック型のもの、多官能グリシジルアミン、ナフタレン型のもの、ジフェニルチオエーテル(スルフィド)型のもの、トリチル型のもの、脂環式タイプのもの、アルコール類から調製されるもの、ジアリルビスA型のもの、メチルレゾルシノール型のもの、ビスフェノールAD型のもの、及びN,N,O−トリス(グリシジル)−p−アミノフェノール等が挙げられ、1種以上含有してよい。
【0033】
好ましくは、液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、F型又はAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン、N,N,O−トリス(グリシジル)−p−アミノフェノール等が挙げられ、1種以上含有してよい。
【0034】
液状エポキシ樹脂の市販品としては、「Epon(商標)828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)及び「Epon807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)(以上、HEXION社製)、「ELM−100」(多官能グリシジルアミン、住友化学社製)、「RE−305S」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製)等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0035】
硬化剤としては、少なくとも後述の初期硬化反応を開始させることができるようなものを、用いる。そのような硬化剤としては、硬化開始温度100℃未満(例えば60℃以上100℃未満)、好ましくは80℃未満(例えば70℃以上80℃未満)、の硬化剤である。硬化開始温度が低過ぎると、穴埋め用硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下し、逆に高過ぎると、ボイドの発生防止効果が得られない。
【0036】
尚、「硬化開始温度」とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られるグラフ(縦軸が発熱量、横軸が加熱温度)において、加熱していった際の最初の変化点(上昇点)温度を言う。
【0037】
硬化剤としては、例えば脂肪族(又は変性脂肪族)ポリアミン、芳香族(又は変性芳香族)ポリアミン、イミダゾール類(2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、アミン類(一級・二級・三級アミン、芳香族アミン等)、アミン類を変性したアミンアダクト[アミン−酸無水物(ポリアミド)アダクト]、アミド樹脂、ポリアミドアミン、メルカプタン類、ルイス酸のアミン錯体(BF3−アミン錯体等)、有機酸ヒドラジド類、メラミン類、有機酸ヒドラジド類、アミン類のカルボン酸塩、オニウム塩等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0038】
硬化剤としては、2種以上の硬化剤から成るものも用いることができる。例えば、イミダゾール化合物と酸無水物併用系、イミダゾール化合物とフェノール樹脂併用系等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0039】
硬化剤としては、下記硬化剤と硬化触媒とから成るものも用いることができる。即ち、硬化剤としては、具体的にはフェノール樹脂類、酸無水物類、ポリカルボン酸類、潜在性硬化剤[ジシアンジアミド(DICY)類等]が挙げられ、1種以上用いることができる。硬化触媒としては、具体的にはイミダゾール(2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等)、三級アミン、芳香族アミン、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0040】
硬化物の耐薬品性向上、熱膨張抑制を目的に、硬化開始温度100℃以上(例えば100〜200℃、典型的には110〜180℃)の硬化剤を、更に加えてもよい。そのような硬化剤としては、具体的には2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0041】
硬化開始温度100℃未満の硬化剤又は硬化触媒の市販品としては、「フジキュアー(商標)FXR−1020」(変性脂肪族ポリアミン、T&K TOKA社製)、「キュアゾール(商標)2E4MZ」(イミダゾール類、四国化成社製)、「2MZ」(イミダゾール類、四国化成社製)、「EPICURE(商標)W」(変性芳香族ポリアミン、三菱化学社製)、「PN−23」(アミンアダクト、味の素ファインテクノ社製)等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0042】
硬化開始温度100℃以上の硬化剤又は硬化触媒の市販品としては、「MEH−8000H」(フェノール樹脂類、明和化成社製)、「2PHZ」(イミダゾール類、四国化成社製)、「キュアゾール(商標)2MZA−PW」(イミダゾール類、四国化成社製)、「リカシッド(商標)MH−700」(酸無水物類、新日本理化社製)等が挙げられ、1種以上用いることができる。
【0043】
穴埋め用硬化性樹脂組成物には更に、充填剤を含有するのが好ましい。充填剤の配合により、硬化収縮による凹みを防ぎ、硬化物特性(耐薬品性、熱膨張抑制等)を向上させることができる。充填剤としては、無機充填剤(具体的には、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等)が挙げられ、1種以上用いることができる。充填剤の形態は、例えば平均粒径0.1〜100μmの粉体である。
【0044】
穴埋め用硬化性樹脂組成物には、その他、添加剤として、消泡剤(ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン系、フッ素系、高分子系、界面活性剤、エマルジョンタイプ等)、着色剤、粘度調節剤、チキソトロピー剤、レベリング剤、有機充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、安定剤、酸化防止剤、蛍光体等を含有してよい。
【0045】
穴埋め用硬化性樹脂組成物には、溶剤を含有しない。溶剤を含有した場合、加熱硬化の際、溶剤がガス化し、ボイド(気泡)発生の原因となる。
【0046】
穴埋め用硬化性樹脂組成物の粘度(25℃、Pa・s)は、例えば10〜100である。
【0047】
穴埋め用硬化性樹脂組成物の配合組成において、液状エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化剤は1〜200(好ましくは1〜100)重量部、充填剤は好ましくは10〜1000(最も好ましくは50〜150)重量部、含有される。この配合組成物に、更に、液状エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化開始温度100℃以上の硬化剤1〜200(好ましくは1〜100)重量部、加えてもよい。
【0048】
本願発明の穴埋め用硬化性樹脂組成物は専ら、本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法においてのみ用いられるものに限定される。
【0049】
穴埋め用硬化性樹脂組成物の充填方法は、例えば大気圧下又は減圧真空下スクリーン印刷法、スルーホールへインキを直接充填する直接充填法等により行うことができる。
【0050】
本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法において、充填樹脂を、先ず初期硬化させる。初期硬化温度は、70〜90℃、好ましくは80℃未満、である。初期硬化温度が低過ぎると、作業中に硬化が始まってしまい、逆に高過ぎるとボイドの発生防止効果が得られない。
【0051】
初期硬化は、初期硬化率が60〜73%、好ましくは65%以上、最も好ましくは70%以上、となる迄、行う。初期硬化の硬化率が低過ぎると、完全硬化時の水分の蒸発やガスの発生を押さえ込むことができない。そのような初期硬化時間は、例えば30〜180(典型的には60〜120)分間である。
【0052】
本願発明の穴埋めプリント配線板の製造方法において、次いで充填樹脂を、130〜200℃、好ましくは130〜180℃、最も好ましくは150〜180にて加熱(「後加熱」)する。後加熱温度が低過ぎると硬化物の耐熱性や耐薬品性が低下し、逆に高過ぎると熱損傷を起こす。後加熱時間は、例えば30〜180(典型的には30〜60)分間である。
【0053】
こうして充填樹脂の完全硬化物を得た後、更に、プリント配線板表面の少なくとも一部(全面を含む。)を平坦化する、ことが好ましい。具体的には、少なくとも、充填樹脂硬化物の露出部を平坦化するのが好ましい。例えば、充填樹脂の露出した突出部(
図1C、7)を、完全硬化後、平坦になるまで、バフ、ベルトサンダー等により研磨・除去する(
図1D、8)。
【0054】
以上のようにして、貫通穴全体が、本願発明の穴埋め用硬化性樹脂組成物の完全硬化物で充填されており、ボイドの存在しない、穴埋めプリント配線板が製造される。
【0055】
特に、貫通穴全体が、本願発明の穴埋め用硬化性樹脂組成物の完全硬化物で充填されており、ボイドが存在せず、且つプリント配線板表面が平坦化された穴埋めプリント配線板が製造される。
【実施例】
【0056】
以下、本願発明を、実施例に基づき、具体的に説明する。
【0057】
<用いたプリント配線板>
下記メッキスルーホールを備えたプリント配線板を用いた。
プリント配線板[ガラスクロス入りエポキシ樹脂製基材、層数2、全厚1600μm]
【0058】
メッキスルーホール[孔径250μm、孔長1600μm、メッキ厚30μm、銅メッキ]
【0059】
<穴埋め用硬化性樹脂組成物の調製>
・調製例1〜15
表1、2に示した配合組成に従って、各配合成分を均一混合して、穴埋め用硬化性樹脂組成物を調製した(調製例1〜15)。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
*)ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート
【0062】
<穴埋めプリント配線板の製造方法>
・製造実施例1〜11、製造比較例1〜11
上記プリント配線板のメッキスルーホール開口端から深さ800μmまで、直径600μmのドリルにて掘削して、スルーホールスタブを除去した。
【0063】
次いで、掘削空間と残余のメッキスルーホールとを、表3、4に示す穴埋め用硬化性樹脂組成物にて、大気圧下スクリーン印刷法により充填した。
【0064】
次いで、表3、4に示す所定の初期硬化条件下、初期硬化率となるまで、充填樹脂を初期硬化した。
【0065】
尚、初期硬化率は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、硬化反応前と硬化反応後の穴埋め樹脂のエポキシ基吸収ピーク(910cm
−1)の吸光度を比較し、その減少率から初期硬化率を求めた。尚、炭酸カルシウム吸収ピーク(873cm
−1)を、対照とした。
【0066】
即ち、初期硬化率(%)=
100×[1−{(反応後の穴埋め樹脂における、エポキシ基ピークの吸光度/炭酸カルシウムピークの吸光度)/(反応前の穴埋め樹脂における、エポキシ基ピークの吸光度/炭酸カルシウムピークの吸光度)}]
【0067】
尚、充填剤の入っていないインキについては、硬化反応前のエポキシ基吸収ピーク(910cm
−1)の吸光度を基準として硬化反応後のピーク減少率から初期硬化率を求めた。
【0068】
即ち、初期硬化率(%)=
100×[1−(反応後の穴埋め樹脂における、エポキシ基ピークの吸光度/反応前の穴埋め樹脂における、エポキシ基ピークの吸光度)]
【0069】
次いで、表3、4に示す所定の完全硬化条件下、初期硬化樹脂を完全硬化させた。
次いで、プリント配線板全面をパフにより研磨し、平坦化した。
【0070】
こうして製造された穴埋めプリント配線板について、ボイドの発生状況を検査した。検査結果を表3、4に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
・製造実施例12
ガラスクロスの入っていないプリント配線板を用いた以外は、製造実施例1と同様にして、穴埋めプリント配線板を製造した。
【0074】
製造された穴埋めプリント配線板について、ボイドの発生状況を検査したところ、ボイドは全く発生していなかった。
【0075】
・製造比較例12
初期硬化工程を省略した以外は、製造実施例1と同様にして、穴埋めプリント配線板を製造した。
【0076】
製造された穴埋めプリント配線板について、ボイドの発生状況を検査したところ、ドリル切削部分にボイドが確認された。
【0077】
・製造比較例13
ガラスクロスの入っていないプリント配線板を用い、且つ初期硬化工程を省略した以外は、製造実施例1と同様にして、穴埋めプリント配線板を製造した。
【0078】
製造された穴埋めプリント配線板について、ボイドの発生状況を検査したところ、ドリル切削部分にボイドが確認されたが、製造比較例12のボイドより小さかった。
【0079】
<穴埋めプリント配線板のボイドの発生状況検査>
製造されたプリント配線板を切断し、この切断面を光学顕微鏡(100倍)にて観察した。そして、下記評価基準に従って、ボイドの発生状況を評価した。
【0080】
掘削空間の断面積に対する、ボイドの断面積割合にて、評価した。表中、「ボイドの発生状況」の欄において、「○」は0〜1%、「△」は1〜5%、「×」は5%以上、を表す。