特許第6179706号(P6179706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179706
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液体材料吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20170807BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C11/00
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-19842(P2013-19842)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2013-188737(P2013-188737A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-31765(P2012-31765)
(32)【優先日】2012年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】水野 亨
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩二
(72)【発明者】
【氏名】竹島 正明
(72)【発明者】
【氏名】石井 政裕
(72)【発明者】
【氏名】牧田 光悦
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−279932(JP,A)
【文献】 特開2001−246299(JP,A)
【文献】 特開平07−132259(JP,A)
【文献】 特開2012−024704(JP,A)
【文献】 特開2010−102892(JP,A)
【文献】 特開2008−062137(JP,A)
【文献】 特開平11−033458(JP,A)
【文献】 特開2007−222789(JP,A)
【文献】 特開2007−105730(JP,A)
【文献】 特開2004−055607(JP,A)
【文献】 特開平09−122553(JP,A)
【文献】 特開2006−223965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出するニードルと、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジを塗布対象物に対して相対移動可能に保持する相対移動手段と、
前記相対移動手段を支持する基台と、
前記基台に固定され、前記ニードルの先端を先端側から撮像する下カメラとを備え、
前記シリンジを保持して水平一軸或いは二軸方向に移動可能なフレームに固定され、前記塗布対象物を上方から撮像する上カメラと、
基準穴を有する治具とを有し、
前記治具の前記基準穴を前記下カメラ及び前記上カメラでそれぞれ撮像することによって、双方のカメラの座標のずれ量を特定し、そのずれ量を補正し、
さらに、前記下カメラは、前記ニードル先端周辺の樹脂付着を撮像する、液体材料吐出装置。
【請求項2】
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出するニードルと、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジを相対移動可能に保持する相対移動手段と、
前記相対移動手段を支持する基台と、
前記ニードルによる液体材料の捨て打ち用に設けられた捨て打ち部と、
前記シリンジとともに前記相対移動手段に保持され、前記ニードル先端或いは塗布対象物を斜め上方から撮像する傾斜カメラとを備え、
前記捨て打ち部は鉛直方向に起立するピンを有し、捨て打ちを行う時は前記ピン先端と前記ニードル先端を近接させ、前記傾斜カメラは前記ピン先端と前記ニードル先端の位置を撮像して両者が近接していることを確認可能とする、液体材料吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の材料や接着剤等の粘性流体を含む液体材料を対象物に吐出する液体材料吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する工程において用いられる、所定の液体材料を対象物に対して吐出し塗布等する液体材料吐出装置として、例えばディスペンサを備える装置が一般に用いられている。ディスペンサ50は、図13に示すように、液体材料60を内部に保持するシリンジ51と、シリンジ内部に加圧空気を供給するチューブ52と、加圧空気の圧力を制御する圧力制御部53と、液体材料の温度を検出する温度センサ54と、当該温度を制御する温度制御部55とから構成される。
【0003】
ディスペンサ50においては、液体材料60に対して加圧空気を介して加えられる圧力(圧力の値と加圧時間)を制御することで、吐出させる液体材料の体積を制御している。一般的には、シリンジ51の内部を、チューブ52及び圧力制御部53の内部に設けられたバルブ56を介して所定の圧力を有する外部の圧力空気源61と接続し、このバルブ56を解放する時間によって加圧時間の制御を行っている。さらにバルブ56とシリンジ51との間に減圧弁57を設置し、この減圧弁57を用いてシリンジ51内部に付加される圧力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−246299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、カメラによって塗布対象物の位置を認識する認識工程を開示する。しかし、塗布対象物の微小化が進むにつれ、カメラによって塗布対象物の位置を認識するだけでは微量且つ精密な塗布を行うのに不十分となる場合もあり、より多くの情報が必要となってきている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、カメラを利用して塗布対象物の位置認識とは異なる新たな情報を取得可能とし、微量且つ精密な塗布に寄与することができる液体材料吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、液体材料吐出装置である。この装置は、
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出するニードルと、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジを塗布対象物に対して相対移動可能に保持する相対移動手段と、
前記相対移動手段を支持する基台と、
前記基台に固定され、前記ニードルの先端を先端側から撮像する下カメラとを備え、
前記シリンジを保持して水平一軸或いは二軸方向に移動可能なフレームに固定され、前記塗布対象物を上方から撮像する上カメラと、
基準穴を有する治具とを有し、
前記治具の前記基準穴を前記下カメラ及び前記上カメラでそれぞれ撮像することによって、双方のカメラの座標のずれ量を特定し、そのずれ量を補正し、
さらに、前記下カメラは、前記ニードル先端周辺の樹脂付着を撮像する。
【0013】
本発明のもう一つの態様は、液体材料吐出装置である。この装置は、
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出するニードルと、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジを相対移動可能に保持する相対移動手段と、
前記相対移動手段を支持する基台と、
前記ニードルによる液体材料の捨て打ち用に設けられた捨て打ち部と、
前記シリンジとともに前記相対移動手段に保持され、前記ニードル先端或いは塗布対象物を斜め上方から撮像する傾斜カメラとを備え、
前記捨て打ち部は鉛直方向に起立するピンを有し、捨て打ちを行う時は前記ピン先端と前記ニードル先端を近接させ、前記傾斜カメラは前記ピン先端と前記ニードル先端の位置を撮像して両者が近接していることを確認可能とする。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カメラを利用して塗布対象物の位置認識とは異なる新たな情報を取得可能とし、微量且つ精密な塗布に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る液体材料吐出装置における、下カメラ581によるニードル503先端への樹脂付着量検出手順説明図。
図2】下カメラ581によるニードル503先端の撮像画像の例。
図3】上カメラ587を利用した補正データ取得手順の説明図。
図4】上カメラ587による撮像画像の一例の説明図。
図5A】同液体材料吐出装置のニードル503の下端周辺の拡大側断面図。
図5B】同底面図。
図6A】同液体材料吐出装置のニードル503の下端の押さえ付け状態の一例を示す底断面図。
図6B】同状態の別の例を示す底断面図。
図6C】同液体材料吐出装置のプランジャー537の形状の一例を示す断面図。
図6D】同プランジャー537の形状の別の例を示す断面図。
図7】1つのニードル503に対して1つ設けられた小型カメラ585の配置説明図。
図8】本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の平面図。
図9】同液体材料吐出装置の正面図。
図10】同液体材料吐出装置の右側面図。
図11】同液体材料吐出装置のディスペンサユニット5内の配管説明図。
図12】同液体材料吐出装置の捨て打ち部589の模式的説明図。
図13】シリンジを有するディスペンサの一般的な概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
まず、図8図11を参照して本装置の全体構成を説明した後に、図1図7により要部を詳細に説明する。
【0019】
図8は、本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の平面図である。図9は、同液体材料吐出装置の正面図である。図10は、同液体材料吐出装置の右側面図である。図11は、同液体材料吐出装置のディスペンサユニット5内の配管説明図である。この液体材料吐出装置は、基台1と、載置台2と、XYZテーブル3と、ディスペンサユニット5と、搬送ユニット9と、主制御部12とを備える。なお、水平面内で直交する2方向をX方向及びY方向、鉛直方向をZ方向と定義している。
【0020】
載置台2は基台1の上面に固定され、XYZテーブル3は載置台2に固定され、ディスペンサユニット5はXYZテーブル3によってXYZの各方向に移動自在に支持される。搬送ユニット9は基台1の上面に固定され、塗布対象物としての基板11が搬送ユニット9によってX方向に搬送される。なお、塗布対象物としては、半導体実装基板等の基板のほか、LCD(Liquid Cristal Display)パネルやLED(発光ダイオード)等がある。主制御部12は、基台1(筐体)の内部にあって装置全体の動作を制御するもので、記憶部13と演算部15と圧力制御部17とを有する。
【0021】
XYZテーブル3は、台板301と、X軸スライドガイド303と、X軸スライダ305と、Y軸支持フレーム311と、Y軸スライドガイド313と、Y軸スライダ315と、Z軸支持フレーム321と、Z軸スライドガイド323と、Z軸スライダ325とを有する。
【0022】
台板301は載置台2の上面に固定され、X軸スライドガイド303は台板301の上面に固定され、Xスライダ305はボールネジ駆動機構で駆動されてX軸スライドガイド303に沿って移動可能である。なお、ボールネジ駆動機構は、ボールネジ軸をモータで回転駆動することで、該ボールネジ軸に螺合するボールネジナットを該ボールネジ軸の軸方向に移動するものである。
【0023】
Y軸支持フレーム311はX軸スライダ305に固定され、Y軸スライドガイド313はY軸支持フレーム311に固定され、Y軸スライダ315はボールネジ駆動機構で駆動されてY軸スライドガイド313に沿って移動可能である。Z軸支持フレーム321はY軸スライダ315に固定され、Z軸スライドガイド323はZ軸支持フレーム321に固定され、Z軸スライダ325はボールネジ駆動機構で駆動されてZ軸スライドガイド323に沿って移動可能である。したがって、Z軸スライダ325はXYZの各方向に移動自在であり、Z軸スライダ325に取り付けられたディスペンサユニット5もXYZの各方向に移動自在である。
【0024】
ディスペンサユニット5は、シリンジ501及び吐出部としてのニードル503並びにこれらに対する配管を4系統有する。図11に示すように、各系統のシリンジ501は、切替弁551を介して圧空源591及び真空源592に接続されている。切替弁551と圧空源591及び真空源592との間にはそれぞれ調圧弁596,597があり、シリンジ501内の圧力を調整可能である。負圧は遮蔽弁561によって遮蔽可能である。また、開放弁562を開くことでシリンジ501の内部圧力を大気圧に等しくできる。各々の弁は圧力制御部17によって制御される。
【0025】
水平一軸或いは二軸方向(すなわちXY方向)に移動可能なフレームとしてのZ軸支持フレーム321には下方を(すなわち基板11を上方から)撮像可能な上カメラ587(鉛直方向の視野軸を有する)が取り付け固定され、基板11に塗布済みの液滴を撮像可能である。ニードル503を側方から撮像するために横カメラ580が基台1に取り付けられ、ニードル503の下端に保持された液摘を撮像可能である。また、下カメラ581(鉛直方向の視野軸を有する)は基台1に固定され、ニードル503を下方から撮像可能である。
【0026】
これらのカメラは様々な役割を果たすことができる。例えば下カメラ581と不図示の治具(基準器)を利用して上カメラ587のXY座標の特定できる。具体的には、板状治具の基準穴(貫通孔)を下カメラ581及び上カメラ587でそれぞれ撮像することで双方のカメラの座標のずれを特定し、当該ずれ量を補正できる。また、下カメラ581で撮像および画像処理を行うことでニードル503先端のXY座標の特定(必要に応じて補正)でき、さらに基板11の塗布面の高さを測定する測定器(不図示)先端を下カメラ581で撮像することでその先端のXY座標の特定(必要に応じて補正)できる。また、装置稼動中に同じく下カメラ581でニードル503先端周辺の樹脂付着状態を撮像して、樹脂付着による品質不具合が懸念される場合(樹脂付着の異常を検出したとき)はノズルクリーニングを実施するなどの用途が考えられる。なお、異常としては、例えばニードル503の先端径に対して大きく膨らんだ又ははみ出た付着樹脂外形が考えられる。また、異常検出時に音声や光、画像等により作業者に報知する報知手段(例えば警告灯やスピーカー、モニタ)を備えるとよい。
【0027】
図1(A)〜(C)は、下カメラ581によるニードル503先端への樹脂付着量検出手順の説明図である。まず、ディスペンサユニット5は、捨て打ち部589(捨打ち樹脂受け)の上方に移動し、指定回数分だけ樹脂塗布(樹脂捨打ち)を行う。樹脂捨打ち後、ディスペンサユニット5は下カメラ581の上方に移動し、下カメラ581でニードル503先端を撮像し、ニードル503先端への樹脂付着を検出する。なお、これらの工程は装置稼動前の動きの例であり、装置稼働中の場合は指定ワーク又は指定基板への塗布終了後に樹脂付着の検出を実施可能である。
【0028】
図2(A)〜(C)は、下カメラ581によるニードル503先端の撮像画像の例であり、図2(A)は正常状態(樹脂付着なし)、図2(B)は樹脂付着があるものの閾値内のため正常と判断される場合、図2(C)は閾値を超える樹脂付着のため異常と判断される場合を示す。樹脂付着量が閾値を超えるか否かの判定は、画像処理装置内でパターンマッチング処理で実施する。あるいは、2値化処理でも実施可能な場合もある。なお、下カメラ581による撮像は、背景の影響を受けないように、カメラ倍率をニードル503先端平面がモニタ全面に映し出される条件にするとよい。また、樹脂付着量が増大してきたときに、異常と判定する閾値以内であっても、樹脂付着量が増えつつあると判定するようにしてもよい。この場合、例えば、異常と判定する閾値よりも小さい閾値を少なくとも1つ設定しておく。樹脂付着量増大の判定は複数の閾値を設けて段階的に行ってもよい。
【0029】
また、上カメラ587は例えば、基板11上に塗布された数個の液滴を撮像し画像処理をすることでそれら液滴の中心位置(XY座標)を特定し、ニードル503のプログラム上のXY中心位置(各々の液滴を塗布した時のXY座標の設定値)と実際の液滴中心位置(XY座標)のズレ量を特定して補正することが可能である。
【0030】
図3は(A)〜(C)、上カメラ587を利用した補正データ取得手順の説明図である。まず、ノズルクリーニングを実施してニードル503先端の樹脂付着を除去後、ディスペンサユニット5は、基板11(ここではショット校正用の基板)の上方の指定位置に移動し、この位置で樹脂塗布(点塗布)を実施する。その後、上カメラ587が塗布された液滴上方(塗布時のニードル503中心のXY座標設定値)に移動する。このときの移動量は、上カメラ587の中心位置とニードル503の中心との距離と等しい。上カメラ587は、塗布された液滴を撮像し、画像処理により液滴中心位置(XY座標)及び液滴の外径を測定する(図4)。なお、以上の塗布から測定までの動作は、複数回実行してもよく、この場合は例えば複数回分の測定データの平均を取っても取ってもよい。ここで、塗布時のニードル503中心のXY座標設定値と液滴中心位置(XY座標)にズレがあったときは、当該ズレ量をXY補正データとして蓄積し、実際の塗布実行時、ディスペンサユニット5による塗布位置をXY補正データにより補正する。また、液滴外径を基に、液滴面積を計測し、吐出状態の経時変化を判定することもできる。図4は、上カメラ587による撮像画像の一例の説明図である。図4に示すオフセット量Xとオフセット量YがXY補正データとなる。
【0031】
本装置の全体的な動作を概説する。まず、図8の搬送ユニット9の搬入部91に塗布対象物としての基板11が供給される。基板11は、搬入部91から塗布部95まで搬送されて所定位置に位置決めされる。ディスペンサユニット5は、XYZテーブル3の支持により塗布部95上(基板11上)に移動し、液体材料を基板11に塗布する。塗布作業が終了すると、基板11は搬出部97に搬送されて排出される。なお、必要に応じて、塗布部95の前段に予熱部を設けてヒータ等の予熱手段で基板11の温度を上げ、塗布部95の後段に予熱部を設けて基板11の温度を保持又は上げる。所定数の基板11に対して塗布作業を実行後、ディスペンサユニット5はY方向に後退する。
【0032】
図5Aは、同液体材料吐出装置のニードル503の下端周辺の拡大側断面図である。図5Bは、同底面図である。図6Aは、同液体材料吐出装置のニードル503の下端の押さえ付け状態の一例を示す底断面図である。図6Bは、同状態の別の例を示す底断面図である。図6Cは、同液体材料吐出装置のプランジャー537の形状の一例を示す断面図である。図6Dは、同プランジャー537の形状の別の例を示す断面図である。
【0033】
シリンジ501とニードル503は、相互に着脱自在に取り付けられる(シリンジ501下端部の雄ネジとニードル503上端部の雌ネジとが螺合されている)。ニードル503はニードルホルダ533に保持され、シリンジ501はシリンジケース511に保持される。ニードルホルダ533はシリンジケース511に固定されており、シリンジ交換時はシリンジケース511からシリンジ501のみを取り外すことができる。
【0034】
ニードル503の先端部材(針状部)は、図6A及び図6Bに示すように、ニードルホルダ533の押し付け面535にプランジャ537(バネを内蔵した付勢力を持つツール)で側方から押し付けられている。これにより、シリンジ交換時のニードル503の位置ずれを防止でき、かつニードル交換時のニードル503の位置再現性を高めることができる。押し付け面535は、ニードル503の先端部材が嵌る凹部形状であるとよく、例えば図6Aに示すような円弧面(半円周面)若しくは楕円弧面又は図6Bに示すようなV溝面であってもよい。また、プランジャー537の先端面のうちニードル503の先端部材を押す部分は、図6A及び図6Bのように平面であってもよいし、ニードル503の先端部材が嵌る凹部形状、例えば図6Cに示すような円弧面(先端部材よりも大径)若しくは楕円弧面又は図6Dに示すようなV溝面であってもよい。
【0035】
図8に示す横カメラ580は、真空校正に用いられる。すなわち、ニードル503の先端(下端)に所定量の液摘を吐出させた後、横カメラ580で液摘を撮像しながら画像処理により真空校正を実施する。真空校正には例えば本出願人提案の特開2007−29912号に開示の技術が利用可能である。簡単に説明すると、ニードル503の下端に液滴が保持された状態で横カメラ580にて撮像し、撮像した液滴の形状から当該液滴の下端とニードル503の基準位置(下端)との距離を演算部15で算出する。算出した距離が一定時間設定された範囲内にとどまるように圧力制御部17で真空値を調整する。
【0036】
図7に示すように、傾斜カメラとしての小型カメラ585(傾斜方向の視野軸を有する)がニードル503とともにZ軸スライダ325に取り付けられており、小型カメラ585はXYZ各方向にニードル503とともに移動可能である。これにより、小型カメラ585でニードル503の下端を図示の例では斜め上方から常時撮像することができ、例えば操作者がニードル503の下端の汚れ等を監視するのに便利である。小型カメラ585は全てのニードル503に対して各々1個ずつ設けられている。小型カメラ585は、カメラ部分(レンズ、鏡筒、撮像素子)が径9mm×長さ23.5mm、カメラ部分を取り付けるカメラケースの最大径が19mm、カメラケースを他の部品に取り付けるフランジが19mm×34mmと小型のものである。
【0037】
この小型カメラ585の視野に含まれれば、例えば不図示のモニタに拡大表示すること等により、製品塗布プログラム動作時の基板11近傍のニードル503の位置確認や、塗布後の液滴の塗布状態の確認に用いることができる。また、基板11上の塗布対象物が例えば複数の部品の隙間のように寸法変動要素を含む場合は、当該隙間等を小型カメラ585で撮像して、その寸法を算出して適正な塗布量となるようニードル503からの液体材料の吐出量を補正すること(隙間が大きければ吐出量を増やし、隙間が小さければ吐出量を減らす等)も可能である。
【0038】
さらにこの小型カメラ585の応用として次のような例が挙げられる。図12(A)及び(B)に示すように、基台1の所定位置に捨て打ち部589が設けられており、捨て打ち部589は流動を促進する鉛直方向に起立するピン591を有し、ニードル503先端の液滴をピン591に乗り移すことで、捨て打ち時にニードル503への液滴の再付着を防止している。このとき、図12(C)に示すようにピン591とニードル503の先端位置がずれると液滴の乗り移りが上手くいかず、捨て打ちするはずだった液滴が残り、本来の塗布に悪影響を及ぼすリスクがある。そこで、小型カメラ585でピン591とニードル503の先端位置を撮像し、例えば不図示のモニタに拡大表示すること等により、このずれが発生していることを捨て打ち前に認識することが可能となり、位置補正等により捨て打ちミスを未然に防ぐことが可能となる。
【0039】
本実施の形態によれば、下カメラ581、上カメラ587、及び小型カメラ585を利用して塗布対象物の位置認識の他に新たな種々の情報を取得可能となり、微量且つ精密な塗布に寄与することが可能となる。その他の効果は下記のとおりである。
【0040】
(1) ニードル503の先端部材がニードルホルダ533の押し付け面535にプランジャ537で側方から押し付けられているため、シリンジ交換時のニードル503の位置ずれを防止でき、かつニードル交換時のニードル503の位置再現性を高めることができる。
【0041】
(2) 1つのニードル503に対して1つの小型カメラ585がニードル503とともにZ軸スライダ325に取り付けられているので、操作者はモニタでニードル503の下端の状況を常時監視することができて便利である。
【0042】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0043】
実施の形態におけるニードル503は、非接触塗布ノズル(ジェットディスペンサ等)としてもよく、同じように本発明の作用効果が実施される。
【符号の説明】
【0044】
1 基台、2 載置台、3 XYZテーブル、5 ディスペンサユニット、9 搬送ユニット、12 主制御部、13 記憶部、15 演算部、17 圧力制御部、501 シリンジ、503 ニードル、511 シリンジケース、533 ニードルホルダ、701 発光部、702 受光部、514 反射部材、515 開口、535 押し付け面、537 プランジャー、585 小型カメラ
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図5A
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