(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力センサーの検査装置として、圧力容器内に収容した圧力センサーに対し、圧力容器外から熱媒体を供給して、圧力センサーを冷却および加熱するものが知られている(特許文献1参照)。
この検査装置は、被検査物である圧力センサーを収納する圧力容器と、圧力容器内の圧力を制御する圧力制御部と、圧力容器内に圧力センサーを挟み込むように配設され、圧力センサーを冷却または加熱する2枚の冷熱プレートと、これら冷熱プレートの温度を制御する温度制御部と、圧力センサーの出力信号を計測する計測部と、圧力制御部、温度制御部および計測部を制御すると共に、出力信号を計測時の温度および圧力の情報と共に取得する演算処理部と、を備えている。
また、温度制御部は、高温、常温、低温の熱媒体を貯留した3つの媒体タンクと、この3つの媒体タンクと2枚の冷熱プレートとを並列に接続する循環流路と、3つの媒体タンクを選択的に切り替える切替機構と、を有している。そして、3つの媒体タンクから2枚の冷熱プレートに液体の熱媒体(「カルデン」:登録商標)を選択的に供給し、圧力センサーの各温度における温度特性が検査される。このように、高温、常温、低温の3つの媒体タンクから、熱媒体を選択的に供給することで、圧力センサーを所定の温度まで冷却または加熱する時間を短縮するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の圧力センサーの検査装置では、各温度における計測の待ち時間が短くなり、全体として検査時間を短縮することができる。しかし、比熱の高い液体の熱媒体を用いるようにしているため、3つの媒体タンク、これに付随する3つのポンプ、切替用の複数のバルブおよび切替え流路が必要になり、温度制御部の構造が複雑になると共に、媒体タンクの温度管理やバルブ切替等、温度制御系の制御が複雑になる問題があった。
【0005】
本発明は、検査時間を短縮化および構造の単純化を図ることができる圧力センサーの検査装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力センサーの検査装置は、検査対象物である複数の圧力センサーを検査基板にセットした状態で収容すると共に、圧力センサーに検査圧力を加える圧力容器と、検査基板に接触し、圧力センサーを検査温度となるように降温および昇温する冷熱印加部と、冷熱印加部に降温および昇温のための熱媒体
としてドライエアーを供給する冷熱供給源と、冷熱供給源と冷熱印加部とを接続する媒体流路と、圧力センサーの出力信号を測定する測定部と、を備え、
圧力容器は、圧力室を構成する本体容器および蓋容器を有し、冷熱印加部は、本体容器を兼ねていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、熱媒体として、比熱の低いドライエアーを用いているため、冷熱供給源において、熱媒体を短時間で降温(冷却)または昇温(加熱)し、冷熱印加部に供給することができる。これにより、冷熱供給源に複数の検査温度に対応する熱媒体を貯留しておく必要がない。すなわち、冷熱供給源において、リアルタイムで検査温度または検査温度に対応する温度のドライエアーを生成し、且つ必要熱量をドライエアーの流量(風量)で充足することで、検査時間の短縮化を図ることができると共に、冷熱供給源の構造の単純化を図ることができる。しかも、検査温度を任意の温度に容易に設定することができる。また、ドライエアーを供給することで、冷熱印加部における結露等を、有効に防止することができる。
さらに、構造を単純化することができると共に、圧力容器における圧力室の体積(容量)も小さくすることができる。したがって、圧力室の降圧および昇圧、すなわち検査圧力の変更を短時間で行うことができ、この点でも、検査時間の短縮化を図ることができる。
【0010】
この場合、本体容器は、内側の本体容器インナーと外側の本体容器アウターとを重ね合せて構成され、本体容器インナーの外面に形成された通路溝と、通路溝を覆う本体容器アウターの内面とにより、冷熱印加部におけるドライエアー用の内部流路が形成され、本体容器インナーは、熱伝導性材料で構成され、本体容器アウターは、断熱性材料で構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、冷熱印加部におけるドライエアー用の内部流路を、簡単に形成することができる。また、本体容器インナーを熱伝導性材料で構成すると共に、本体容器アウターを断熱性材料で構成しているため、ドライエアーとの熱交換を円滑に行い得るだけでなく、冷熱印加部からの熱の逃げを有効に防止することができる。
【0012】
また、媒体流路は、冷熱印加部にドライエアーを供給する媒体送気流路と、冷熱印加部から排気されるドライエアーの媒体排気流路と、を有し、媒体排気流路の下流端は、大気に開放されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、媒体流路を、循環流路とすることによる構造の複雑化を回避することができる。
【0014】
本発明の他の圧力センサーの検査装置は、検査対象物である複数の圧力センサーを検査基板にセットした状態で収容すると共に、圧力センサーに検査圧力を加える圧力容器と、検査基板に接触し、圧力センサーを検査温度となるように降温および昇温する冷熱印加部と、冷熱印加部に降温および昇温のための熱媒体としてドライエアーを供給する冷熱供給源と、冷熱供給源と冷熱印加部とを接続する媒体流路と、圧力センサーの出力信号を測定する測定部と、を備え、冷熱供給源は、熱媒体を冷却するクーラーと、熱媒体を加熱するヒーターと、熱媒体を送気するファンと、クーラー、ヒーターおよびファンを制御する温度制御部と、を有し、温度制御部は、常温から低温の特定の温度を検査温度とするときに、クーラーおよびファンを常時ONとし、ヒーターにより検査温度を制御すること
を特徴とする。
【0015】
この構成によれば、
熱媒体として、比熱の低いドライエアーを用いているため、冷熱供給源において、熱媒体を短時間で降温(冷却)または昇温(加熱)し、冷熱印加部に供給することができる。これにより、冷熱供給源に複数の検査温度に対応する熱媒体を貯留しておく必要がない。すなわち、冷熱供給源において、リアルタイムで検査温度または検査温度に対応する温度のドライエアーを生成し、且つ必要熱量をドライエアーの流量(風量)で充足することで、検査時間の短縮化を図ることができると共に、冷熱供給源の構造の単純化を図ることができる。しかも、検査温度を任意の温度に容易に設定することができる。また、ドライエアーを供給することで、冷熱印加部における結露等を、有効に防止することができる。
さらに、常温から低温の特定の温度を検査温度とする場合において、クーラーによりエアーの飽和水蒸気量を低減してから、所定の検出温度に昇温するため、検出温度に対応するドライエアーを簡単に生成することができる。すなわち、降温(冷却)のためのクーラーを、ドライエアーの生成装置として兼用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力センサーの検査装置(以下、「検査装置」という。)について説明する。この検査装置は、圧力センサーを直接的に降温(冷却)および昇温(加熱)して、その温度特性を検査するものである。例えば、高圧、中圧、低圧等(0〜200KPa)の検査圧力のそれぞれに対し、高温(50〜150℃)、常温(10〜40℃)、低温(−50〜0℃)の検査温度における温度特性を検査する。
【0018】
図1は、検査装置を模式的に表した構成図である。同図に示すように、検査装置1は、検査対象物である複数の圧力センサーSをセットした検査基板2と、検査基板2を収容する圧力容器3と、圧力容器3内の圧力である検査圧力を調整する圧力調整部4と、圧力容器3内の検査基板2に接触し、圧力センサーSを検査温度に降温および昇温する冷熱印加部5と、圧力容器3外に配設され、冷熱印加部5に降温および昇温のためのドライエアー(熱媒体)を供給する冷熱供給源6と、冷熱供給源6と冷熱印加部5とを接続する媒体流路7と、圧力センサーSの出力信号を測定する測定部8と、これら構成装置を統括制御する制御部9と、を備えている。
【0019】
検出基板2は、詳細は図示しないが、複数の圧力センサーSをマトリクス状にセットする基板本体と、セットした複数の圧力センサーSを上側から押える押えプレートと、を有している。基板本体は、主要部をアルミニウム等の金属プレートで構成されると共に、各圧力センサーSに導通するバンプ電極を有するFPC(Flexible Printed Circuit)を有している。また、押えプレートも、アルミニウム等の金属プレートで構成され、圧力センサーSの圧力導入孔に対応させて複数の開口部がマトリクス状に形成されている。なお、検出基板2には、検査対象となる圧力センサーSの大きさ、接続端子の数および位置、圧力導入孔Saの位置等に対応して、複数種のものが用意されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、圧力容器3は、下側の本体容器21と、本体容器21に対し取外し可能に構成され上側の蓋容器22とで構成されている。蓋容器22は、蓋容器アウター23と蓋容器インナー24との2重構造を有している。同様に、本体容器21は、本体容器アウター25と本体容器インナー26との2重構造を有しており、実施形態のものは、本体容器インナー26(および本体容器アウター25)が上記の冷熱印加部5を兼ねた構造になっている。この場合、冷熱印加部5を兼ねる本体容器インナー26と、これを閉塞する蓋容器インナー24とは、高い伝熱性を有するアルミニウム等の金属で形成されている。一方、本体容器アウター25と蓋容器アウター23とは、高い断熱性を有する樹脂等で形成されている。
【0021】
詳細は後述するが、本体容器インナー26を構成する冷熱印加部5と蓋容器インナー24との接合面には、無端のシール材27(Oリング)が介設され、圧力容器3の気密性が維持されている。また、本体容器インナー26と蓋容器インナー24との間には、周方向に複数個のクランパ28が設けられており、この複数個のクランパ28により、本体容器インナー26に蓋容器インナー24が締結(閉止)される。また、蓋容器インナー24の下面には広く凹入部24aが形成されている。そして、この凹入部24aにより、冷熱印加部5(本体容器インナー26)と蓋容器インナー24との間に、検査基板2を収容する圧力室29が構成されている。
【0022】
蓋容器アウター23は、蓋容器インナー24に重ね合せた状態でねじ止めされ、同様に本体容器アウター25は、本体容器インナー26に重ね合せた状態でねじ止めされている。この場合、蓋容器アウター23は、蓋容器インナー24に対し断熱材および補強材として機能している。また、本体容器アウター25は、本体容器インナー26に対し、断熱材として機能すると共に、後述のように継手等の取付け部分として機能している。なお、本実施形態では、本体容器インナー26(および本体容器アウター25)が冷熱印加部5を兼ねる構造としているが、蓋容器インナー24(および蓋容器アウター23)が冷熱印加部5を兼ねる構造とすることも可能である。
【0023】
図1に示すように、圧力調整部4は、正圧源となるコンプレッサー31と、負圧源となる真空ポンプ32と、コンプレッサー31および真空ポンプ32の出力側に接続された圧力コントローラ33と、圧力コントローラ33と圧力容器3とを接続する圧力配管34と、を有している。図示しないが、圧力コントローラ33には、圧力を検出するセンシング部が内蔵されており、圧力コントローラ33は、このセンシング部の検出結果に基づいて、コンプレッサー31と真空ポンプ32とを切替え駆動して、圧力容器3に所定の検査圧力を付与する。
【0024】
なお、圧力容器3には、モニター用の圧力センサーが組み込まれており(図示せず)、圧力容器3内の圧力は、圧力コントローラ33とは別に上記の制御部9により管理されている。また、図示しないが、圧力コントローラ33には、大気開放バルブが設けられており、圧力コントローラ33は、大気開放バルブを開いて、圧力容器3内(圧力室29)をゲージ圧に設定することができる。
【0025】
図1に示すように、測定部8は、圧力容器3に収容したコネクタモジュール41と、コネクタモジュール41に接続された測定回路42と、を有している。コネクタモジュール41は、検査基板2のFPCと測定回路42とを接続する信号線等において、圧力容器3の内部と外部との間に介設したコネクタであり、本体容器インナー26(冷熱印加部5)に形成した矩形開口85(
図4参照)に取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、コネクタモジュール41は、信号線等の配線基板であるプローブ基板43と、圧力容器3の内外を通過するリード配線部44と、プローブ基板43を支持する第1絶縁ブロック45と、第1絶縁ブロック45との間にリード配線部44を気密に保持する第2絶縁ブロック46と、を有している。第1絶縁ブロック45と第2絶縁ブロック46とは、リード配線部44を挟み込んで相互に固定(ねじ止め)され、この状態でそれぞれの下部が、上記の矩形開口85に嵌合している。
【0027】
プローブ基板43は、一方の端部にプローブ47を設けると共に他方の端部にFPC用コネクタ48を設けた接続用PCB(Printed Circuit Board)49を、ホルダー基板50に取り付けて構成されている。プローブ47(実際には、横並びのプローブ群)は、検査基板2におけるFPCの接続端子(実際には、横並びの接続端子群)に接触し、FPC用コネクタ48(実際には、横並びのコネクタ群)は、リード配線部44に接続されている。
【0028】
第1絶縁ブロック45は、プローブ基板43を支持する基板支持部45aと、検査基板2の端部が載置される基板載置部45bと、上記の矩形開口85に嵌合する嵌合部45cと、で一体に形成されている。また、第2絶縁ブロック46は、第1絶縁ブロック45との間にリード配線部44を挟持する挟持部46aと、挟持部46aの上下中間位置から側方に張り出した張出し部46bと、で一体に形成されている。
【0029】
そして、相互に固定された第1絶縁ブロック45および第2絶縁ブロック46は、それぞれの嵌合部45cおよび挟持部46aの下部の部分で矩形開口85に嵌合している。また、第1絶縁ブロック45と第2絶縁ブロック46とは、側方に張り出した基板載置部45bおよび張出し部46bの部分で、本体容器インナー26(冷熱印加部5)の内面に固定されている。本体容器インナー26と、基板載置部45bおよび張出し部46bとの間には、開口部シール材51(Oリング)が介設されており、圧力室29の一部である矩形開口85廻りの気密性が維持されている。
【0030】
図1に示すように、冷熱供給源6は、熱媒体であるエアーを冷却するクーラー61と、エアーを加熱するヒーター62と、エアーを冷熱印加部5に送気するファン63と、これらクーラー61、ヒーター62およびファン63を制御する温度コントローラ64(温度制御部)と、これら構成装置を収容すると共に吸気口66および送気口67を形成した筐体65と、を有している。そして、吸気口66から送気口67に連なるエアー流路68には、吸気口66側からファン63、クーラー61の放熱器61a(蒸発器)、ヒーター62が順に配設されている。
【0031】
温度コントローラ64は、検査基板2に組み込んだ温度センサー(図示せず)の検出結果に基づいて、ヒーター62により検査温度を制御する。具体的には、検査温度が「高温」の場合、温度コントローラ64は、クーラー61をOFFとし、ヒーター62により検査温度を制御する。また、検査温度が「常温」および「低温」の場合、温度コントローラ64は、クーラー61をONとし、ヒーター62により検査温度を制御する。この結果、吸気口66から取り込んだ外気エアーは、ドライエアーとして、送気口67から送気される。そして、冷熱供給源6により生成されたドライエアーは、媒体流路7を介して冷熱印加部5に供給される。
【0032】
なお、検査中において温度コントローラ64は、ファン63をONとしておくことは言うまでもないが、例えば検査温度を「低温」から「高温」にシフトするときのように、多くの熱量を必要とする場合には、送風量を多くするようにファン63を制御することが好ましい。
【0033】
図1に示すように、媒体流路7は、例えば冷・熱に対し耐熱性のチューブで構成されており、冷熱印加部5にドライエアーを供給する媒体送気流路71と、冷熱印加部5から排気されるドライエアーの媒体排気流路72と、を有している。媒体送気流路71は、上流側端部が冷熱供給源6の送気口67に接続され、下流側端部が冷熱印加部5の流入口93(後述する)に接続されている。また、媒体排気流路72は、上流側端部が冷熱印加部5の流出口94(後述する)に接続され、下流側端部が大気に開放されている。すなわち、冷熱供給源6から供給されるドライエアーは、使い捨ての形式で冷熱印加部5に供給される。なお、媒体流路7(チューブ)には、断熱被覆を施すことが好ましい。
【0034】
次に、
図2および
図4を参照して、冷熱印加部5について詳細に説明する。冷熱印加部5は、上述のように2重構造の本体容器21における本体容器インナー26(および本体容器アウター25)として形成され、2重構造の蓋容器22における蓋容器インナー24との間に、圧力容器3の圧力室29を構成している。なお、冷熱印加部5は、上面視長方形に形成されており、以降の説明では、冷熱印加部5の長辺方向を「X軸方向」とし、短辺方向を「Y軸方向」として説明を進める。
【0035】
本体容器インナー26である冷熱印加部5は、蓋容器インナー24との接合面を構成する四周枠部81と、四周枠部81の表側(圧力室29側)に窪入形成され、検査基板2がセットされる基板セット部82と、基板セット部82のX軸方向に隣接して四周枠部81の表側に大きく窪入形成され、上記のコネクタモジュール41が取り付けられるモジュール取付部83と、基板セット部82に対応して四周枠部81の裏側に形成されたドライエアー用の流路部84と、を有している。
【0036】
モジュール取付部83には、Y軸方向に長く延在する矩形開口85が形成され、この矩形開口85に、下部を嵌合するようにしてコネクタモジュール41が気密に取り付けられている。また、基板セット部82には、これに載置するように検査基板2がセットされる。この場合、検査基板2は、X軸方向の一方の端部をコネクタモジュール41のプローブ基板43に接触(導通)した状態で、基板セット部82上に着脱可能に載置(セット)される。
【0037】
流路部84は、冷熱印加部5(本体容器インナー26)の裏面に形成した流路溝86を有しており、この流路溝86と、これを覆う(閉止する)本体容器アウター25の内面との間に、ドライエアーが導入される内部流路87が構成されている。本体容器アウター25の上角部は切り欠かれており、この部分に装着した流路部シール材88(テフロンソフトテープ)により、内部流路87を囲むように冷熱印加部5の外面と本体容器アウター25の内面とがシールされている。このように、内部流路87を含む冷熱印加部5は、厳密には、本体容器インナー26と本体容器アウター25の内面とで構成されている。
【0038】
内部流路87は、Y軸方向の両端に流路間隙を構成した第1流路隔壁91と、Y軸方向の中間部に流路間隙を構成した第2流路隔壁92とを、流路間隙を存して交互に配設することにより、変形蛇行状に形成されている。これに対し、本体容器アウター25には、内部流路87に連なる一対の流入口93と、一対の流入口93のY軸方向の中間に位置して流出口94とが形成されている。一対の流入口93は、流路部84のX軸方向の両端部であってY軸方向の中間位置に臨んで、内部流路87に連通している。また、流出口94は、流路部84の中心位置に臨んで、内部流路87に連通している。
【0039】
一方、上記の媒体送気流路71の下流側端部は2分岐し、本体容器アウター25に取り付けた2つ流入側継手95を介して、一対の流入口93に接続(連通)されている。同様に、媒体排気流路72の上流側端部は、本体容器アウター25に取り付けた流出側継手96を介して、流出口94に接続(連通)されている。なお、図中の符号97は、上記の圧力配管34を圧力容器3に接続するための配管継手である。
【0040】
媒体送気流路71を介して各流入口93に流入したドライエアーは、第1流路隔壁91の位置における分流と、第2流路隔壁92の位置における合流を繰り返し、第1流路隔壁91および第2流路隔壁92に添って、中央の流出口94まで蛇行しながら流れる。すなわち、内部流路87は、相互に連通する蛇行状の一対の流路を、流出口94を中心に左右(X軸方向)対称に配置して、構成されている。
【0041】
第2流路隔壁92は、複数の流路溝86の境界部分として冷熱印加部5の本体部分と一体に形成されているが、第1流路隔壁91は、この本体部分と別体に形成されている。第1流路隔壁91は、例えばヒートシンクとして用いられる熱伝導性の極めて高い材料で構成され、流路溝86に形成したスリット溝に圧入或いは接着されている。これにより、冷熱印加部5(の本体部分)と内部流路87を流れるドライエアー(熱媒体)との間で熱交換が円滑に行われる。
【0042】
ドライエアーへの放熱、或いはドライエアーからの吸熱により、冷熱印加部5は冷却または加熱され、降温または昇温する。冷熱印加部5が降温または昇温すると、伝熱により検査基板2を介して、圧力センサーSが検査温度となるように降温または昇温する。また同時に、伝熱により蓋容器インナー24および圧力室29も降温または昇温される。したがって、検査対象となる複数の圧力センサーSのみならず、その周囲の部材および雰囲気が降温または昇温され、複数の圧力センサーSが偏りなく均一に検査温度となる。
【0043】
次に、
図1を参照して、検査装置1の制御系について簡単に説明する。この制御系は、パーソナルコンピュータで構成された制御部9と、上記の圧力コントローラ33と、上記の温度コントローラ64と、を備えている。制御部9のハードディスクドライブ等には、検査処理(検査方法)を実現するための専用アプリケーションが記憶されており、制御部9は、この専用アプリケーションに基づいて、検査における各種演算処理を実施する。
【0044】
制御部9の出力部(キーボード)からは、所望の検査圧力および検査温度が入力される。また、測定部8(測定回路42)から入力した検査結果である各圧力センサーSの出力信号は、制御部9(CPU)により演算処理され、記憶部(RAM)に記憶されると共に、出力部(ディスプレイ)に表示される。
【0045】
上述のように、圧力コントローラ33は、制御部9の「高圧」、「中圧」、「低圧」の制御指示に基づいて、コンプレッサー31および真空ポンプ32を制御し、圧力室29に所定の検査圧力を付与する。同様に、温度コントローラ64は、制御部9の「高温」、「常温」、「低温」の制御指示に基づいて、クーラー61、ヒーター62およびファン63を制御し、検査基板2の複数の圧力センサーSを所定の検査温度に降温または昇温する。
【0046】
ここで、制御部9による圧力センサーSの検査方法について、簡単に説明する。この検査方法では、その準備段階として、制御部9に検査圧力および検査温度が入力される。また、図外のローダーにより、検査基板2に検査対象となる複数の圧力センサーSがセットされる。続いて、圧力センサーSがセットされた検査基板2が、圧力容器3に投入セットされる。なお、検査方法のルーチンワークにおいて、常温による検査が最後に行われるため、圧力容器3への検査基板2の投入セットにおいて、熱的な支障を生ずることはない。
【0047】
検査においては、先ず検査温度を低温(−40℃)とし、検査圧力を高圧(120KPa:絶対圧)、低圧(13KPa:絶対圧)、中圧(60KPa:絶対圧)の順で変化させて、それぞれの検査圧力における各圧力センサーSの出力信号を測定する(低温測定工程)。次に、検査温度を高温(125℃)とし、同様に高圧、低圧、中圧の順で変化させて、それぞれの検査圧力における各圧力センサーSの出力信号を測定する(高温測定工程)。最後に、検査温度を常温(25℃)とし、高圧、低圧、中圧の順で変化させて、それぞれの検査圧力における各圧力センサーSの出力信号を測定する(常温測定工程)。
【0048】
図5は、検査装置1における検査圧力および検査温度の経時的変化を表している。同図に示すように、低温測定工程では、検査温度が「低温」に安定したところで、検査圧力を高圧、低圧、中圧に順に変化させて測定を行う。同様に、高温測定工程では、検査温度が「高温」に安定したところで、検査圧力を高圧、低圧、中圧に順に変化させ測定を行う。さらに、常温測定工程では、検査温度が「常温」に安定したところで、検査圧力を高圧、低圧、中圧に順に変化させ測定を行う。
【0049】
いずれの検査温度においても、検査温度が安定するのに8分程度の時間を要し、また検査圧力を変化させて測定を行う測定時間は5分程度であった。したがって、一連の検査に要する検査時間(サイクルタイム)は、40分程度であった。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、熱媒体としてドライエアーを用いるようにしているため、冷熱供給源6において、所望の温度のドライエアーを短時間で生成し、冷熱印加部5に供給することができる。これにより、冷熱印加部5において、検査対象の圧力センサーSを短時間で、所望の検査温度に降温(冷却)または昇温(加熱)することができる。また、検査温度を任意の温度に容易に変更することができる。さらに、液体を熱媒体とする従来の検査装置のように、検査温度別の液体タンクや配管系を必要としない。
【0051】
しかも、検査装置1全体ではなく、検査基板2のみを降温および昇温するようにしているため、検査のための熱量を最小限にすることができる。したがって、検査時間の短縮化を図ることができると共に、冷熱供給源6の構造の単純化を図ることができる。すなわち、検査時間の短縮化を犠牲にすることなく、検査装置1の小型化およびコストダウンを達成することができる。
【0052】
また、熱媒体としてドライエアーを用いることで、冷熱印加部5における結露等を、有効に防止することができる。この点を含め、熱媒体に気体を用いることで、リークによる電気部品への影響を回避することができる。すなわち、従来技術のように、絶縁性の高価な液体を用いる場合に比して、極端なコストダウンを達成することができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、圧力容器3の本体容器21を構成する本体容器インナー26および本体容器アウター25が、冷熱印加部5を兼ねている。このため、構造を単純化することができるだけでなく、圧力室29の容量を可能な限りも小さくすることができる。したがって、圧力室29の降圧および昇圧を短時間で行うことができ、この点でも、検査時間の短縮化を図ることができる。