特許第6179771号(P6179771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179771新規デルマトポンチン活性化ペプチド及びそれを包含する化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179771
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】新規デルマトポンチン活性化ペプチド及びそれを包含する化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20170807BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20170807BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20170807BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K8/64
   A61Q19/08
   A61Q17/04
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-537178(P2013-537178)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2013-542950(P2013-542950A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】FR2011000591
(87)【国際公開番号】WO2012062977
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】1004380
(32)【優先日】2010年11月9日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513098112
【氏名又は名称】アイエスピー インヴェストメンツ アイエヌシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ダルファラ クロード
(72)【発明者】
【氏名】ドムロージ ノウハ
(72)【発明者】
【氏名】ボット ジーン−マリー
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195726(JP,A)
【文献】 特開2008−201777(JP,A)
【文献】 特開平05−148297(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/012472(WO,A1)
【文献】 特表2002−519332(JP,A)
【文献】 特開2008−063285(JP,A)
【文献】 Neropeptides,1992年,Vol.23,p.143-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のペプチド:
R1−(AA)n−X1−Arg−X2−Trp−X3−X4−X5−X6(R3)−(AA)p−R2
であって、式中、
X1は、アスパラギン酸又はアミノ酸なしを表し、
X2は、グルタミン又はグルタミン酸を表し、
X3は、アスパラギン又はリシン又はグルタミン又はアミノ酸なしを表し、
X4は、フェニルアラニン又はチロシン又はアミノ酸なしを表し、
X5は、チロシン又はアラニン又はアミノ酸なしを表し、
X6は、システイン又はアミノ酸なしを表し、
AAは、アルギニン、システイン、ロイシン、グリシン及びグルタミン酸を除く任意のアミノ酸を表し;n及びp=0又は1であり、nはpと異なり;
R1は、遊離した、又はアシル型(R−CO−)の基で置換された、N末端アミノ酸の一級アミン官能基を表し、ここでラジカルRはアセチル型の飽和若しくは不飽和C1〜C30アルキル鎖、又はベンゾイル、トシル若しくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基のいずれかであり;
R2は、遊離した、又はC1〜C30アルキル鎖で置換されたヒドロキシル基又は−NH2、−NHY若しくは−NYY’基(Y及びY’はC1〜C4アルキル鎖又はその塩の1つを表す)のいずれかを有する、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を表し;
R3は、遊離した、又はメチル若しくはアセチル基で置換されているか、又はジスルフィド結合によって別のシステインに共有結合している、X6位のシステインのチオール官能基を表す、ペプチドであって、
以下の配列の1つに対応することを特徴とする、ペプチド:
(SEQ ID NO5):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys(Cys)−(NH2)
(SEQ ID NO9):Asp−Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys−NH2
(SEQ ID NO12):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−NH2
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、
以下の配列の1つに対応することを特徴とする、ペプチド:
(SEQ ID NO5):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys(Cys)−(NH2)
(SEQ ID NO9):Asp−Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys−NH2
【請求項3】
水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化若しくはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオール又はこれらの溶媒のいずれかの混合物のような1つ以上の生理学的に好適な溶媒に可溶化されることを特徴とする、請求項1〜2のうちいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項4】
薬物として使用するための、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の一般式(I)のペプチド。
【請求項5】
治癒剤として使用するための、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
生理学的に好適な媒体中に、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つのペプチドを、デルマトポンチン活性化剤として包含する化粧品組成物。
【請求項7】
前記ペプチドが、最終組成物の総重量を基準にして10−9M〜10−3Mの濃度で存在することを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドが、最終組成物の総重量を基準にして10−8M〜10−5Mの濃度で存在することを特徴とする、請求項6又は7のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
局所投与を意図することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのその他の活性化剤も含有することを特徴とする、請求項6〜9のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
その他の活性化剤が、再生剤、抗加齢剤、抗皺剤、肥厚化剤、抗フリーラジカル剤、抗糖化剤、水和剤、抗菌剤、抗真菌剤、角質溶解剤、筋弛緩剤、角質除去剤、及びトーニング剤、真皮巨大分子の合成若しくはエネルギー代謝を刺激する作用剤、皮膚分化、色素沈着若しくは色素脱失を調節する作用剤、爪若しくは毛髪の成長を刺激する作用剤、微小循環を刺激する作用剤、日焼け防止剤又はメタプロテイナーゼ阻害剤から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚の線維芽細胞による細胞外マトリックスのタンパク質の発現を増大するための、活性化剤として請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のペプチドを生理学的に好適な媒体中に包含する組成物の非治療的使用。
【請求項13】
真皮の密度及び皮膚の弾力性を増大し、フェイスラインのたるみ若しくはボリューム低下、皮膚菲薄化、弛緩、小皺、深い皺及び皮膚委縮を防止又は抑制するための、活性化剤として請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のペプチドを生理学的に好適な媒体中に包含する組成物の非治療的使用。
【請求項14】
UV照射を受ける皮膚のコラーゲン及び弾性線維の分解を防止するための、活性化剤として請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のペプチドを生理学的に好適な媒体中に包含する組成物の非治療的使用。
【請求項15】
UV照射、UVA照射によって引き起こされる日光弾性線維症及び/又は弾性線維の組織崩壊に関連する非審美的兆候を防止又は抑制するための、請求項14に記載の非治療的使用。
【請求項16】
表皮及び真皮の再生を増大するための、活性化剤として請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のペプチドを生理学的に好適な媒体中に包含する組成物の非治療的使用。
【請求項17】
請求項6〜11のうちいずれか一項に記載の組成物であって、
皮膚の加齢及び光加齢の兆候を防止及び/又は治療することを目的に処置すべき皮膚に局所適用されることを特徴とする、組成物。
【請求項18】
弾性線維の組織崩壊を防止するために日光暴露の前に適用される、又はコラーゲン及び弾性繊維が受けた損傷を修復するために日光暴露の後に適用されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容活性成分及び皮膚医薬活性成分並びにそれを含む組成物に関する。
【0002】
本発明は、皮膚の老化の兆候、特に皺、たるみ、皮膚のボリューム及び弾力性の低下を防止又は抑制するための有用な新規分子を提供することを目的とする。
【0003】
より具体的には、本発明は、デルマトポンチンの発現を活性化するペプチド、かかるペプチドを含有する化粧品又は医薬組成物、細胞外マトリックスのタンパク質発現を増大するため、及びコラーゲン線維及びUVによる弾性線維の劣化を防止するためのかかる組成物の使用、並びに、最後に、皮膚の加齢及び光加齢の兆候を防止及び/又は治療することを目的とする美容ケア方法に関する。
【背景技術】
【0004】
皮膚は、複数の層(真皮、真皮表皮接合部、表皮)からなる被覆器官である。真皮は皮膚を支持する組織で、水、エラスチン線維及びコラーゲン線維(真皮線維の70%)からなり、プロテオグリカンの間質マトリックス内に封入されている。線維芽細胞は真皮の主要細胞成分であり、コラーゲン線維及びエラスチン線維合成の供給源である。
【0005】
最外部の表皮は、互いに密接に連結した角化細胞から主として多層化した上皮である。表皮の基底面は、主に角化細胞及びメラニン細胞である増殖細胞の層からなり、これが真皮表皮接合部(DEJ)上に固定されている。DEJは、真皮と表皮との間の境界面を構成する細胞外トレリス型構造である。
【0006】
皮膚は、他のすべての器官と同様に、加齢の複雑な生理学的プロセスを経る。内因性又は経時による加齢は、遺伝的にプログラムされた老化の結果であり、内生要因による生物化学的変化とは区別される。皮膚において、加齢は、真皮及び表皮の萎縮、乾燥、弾力性低下、並びに小皺及び皺の出現を招く、細胞及び細胞外マトリックスの再生速度低下によって特徴づけられる。
【0007】
外因性加齢は、汚染、太陽、疾患、生活習慣などの身体が一生を通して受ける環境的要因によるストレスによるものである。その影響は、太陽に慢性的に暴露する領域において内因性加齢の影響と組み合わされる;これは光加齢と呼ばれる。光加齢に関連する主な変化は、真皮で起こり、次のものがある:色素斑の出現、皺の原因となるコラーゲン線維の減少及び断片化並びに日光弾性線維症の構成要素となるジストロフィー性弾性線維の蓄積。
【0008】
皮膚加齢を抑制できる活性化剤を識別するために多数の方法の研究が実施され、例えば、環境ストレス(太陽、汚染等)からの保護、細胞再生の活性化、並びに細胞外コラーゲン及びエラスチンマトリックスの強化がある。この研究の結果、多少有効な活性化剤が非常に多く市販されてきた。したがって、皮膚加齢を防止又は抑制できる新規化合物の識別はなお重要である。本発明がより明確に標的とする問題は、加齢又は光加齢中に出現する皮膚細胞外マトリックスのフィブリル構造の崩壊の治療である。
【0009】
本発明者は、最近、この機能を満足するための有益な分子標的を識別した。それはデルマトポンチンという、チロシンに富む小さな酸性タンパク質で、真皮中、より具体的にはコラーゲン線維の周囲に豊富に存在する。デルマトポンチンはコラーゲン線維の構造化において重要な役割を果たし(非特許文献1)、線維芽細胞(非特許文献2)、角化細胞のインテグリンαβ及びプロテオグリカン型受容体を介した接着のプロセスに参加する。これらの特性は、デルマトポンチンに治癒における重要な役割を与える(非特許文献3)。
【0010】
この結果を裏付けて、デルマトポンチン不在の遺伝子改変マウスは、真皮の厚さ及びそのコラーゲン含有量の低下、並びに皮膚の弾力性低下を生じる(非特許文献4)。
【0011】
その構造的役割とは無関係に、デルマトポンチンはデコリンとの三量体複合体に結合することができ、それゆえTGF−β1の作用を増強する(非特許文献5)。
【0012】
特許文献1は、細胞接着及び治癒を促進する作用剤としての、デルマトポンチンから誘導したペプチドの使用を開示している。
【0013】
特許文献2は、椎間板ヘルニアの生物学的治療という状況においてTGF−βの活性化を増強するために未変性デルマトポンチンを使用できることを開示している。
【0014】
しかし、現在まで、活性化皮膚細胞におけるデルマトポンチンの活性化並びに皮膚の加齢及び光加齢の兆候の防止又は修復に関して、本発明によるペプチドが記載されたことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−201777号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0065089号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Jonathan et al.,J. Biol.Chem., 1993, vol.268, pp.19826−19832
【非特許文献2】Lewandowska et al.,J. cell Sci., 1991, vol.99, pp.657−668
【非特許文献3】Akamoto et al.,Biochem, 2010, vol. 49, pp.147−155
【非特許文献4】Takeda et al. J. Invest. Dermatol. 2002, vol.119, pp.678−683
【非特許文献5】Okamoto et al.,Biochem J. 1999 Feb 1;337(3):537−41
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、以下の一般式(I)を有するペプチド:
−(AA)−X−Arg−X−Trp−X−X−X−X(R)−(AA)−R
が優れたデルマトポンチン活性化剤であることを実証した。その結果、これらのペプチドは皮膚の加齢及び光加齢の抑制に好適である。
【0018】
本発明のペプチドは、以下の事実を特徴とする:
−デルマトポンチン発現を活性化する、
−I型及びIII型コラーゲン及びフィブロネクチンの発現を増大する、
−UV照射を受ける皮膚のコラーゲン及び弾性線維のフィブリル構造の分解を防止する。
【0019】
用語「デルマトポンチンを活性化する又はデルマトポンチンを活性化できるペプチド又は活性化剤」は、遺伝子発現の直接又は間接的調節によりタンパク質合成を増大することによって、又はタンパク質の安定化若しくはメッセンジャーRNA転写の安定化のようなその他の生物学的プロセスによって、細胞中に存在するデルマトポンチンの量を増大することができる一般式(I)の全てののペプチドを指す。
【0020】
皮膚という用語は、皮膚、粘膜及び皮膚付属物を形成するすべての被覆組織を指し、毛髪、睫毛及び眉毛を包含する。
【0021】
したがって、本発明の第1の目的は、一般式(I)のペプチドを提供することであり
−(AA)−X−Arg−X−Trp−X−X−X−X(R)−(AA)−R
式中、
は、アスパラギン酸又はアミノ酸なしを表し、
は、グルタミン又はグルタミン酸を表し、
は、アスパラギン又はリシン又はグルタミン又はアミノ酸なしを表し、
は、フェニルアラニン又はチロシン又はアミノ酸なしを表し、
は、チロシン又はアラニン又はアミノ酸なしを表し、
は、システイン又はアミノ酸なしを表し、
AAは、任意のアミノ酸を表し、n及びpは0〜2の整数であり;
は、遊離した、又はアシル型(R−CO−)の基で置換されたN末端アミノ酸の一級アミン官能基を表し、ここでラジカルRはアセチル型の飽和若しくは不飽和C〜C30アルキル鎖、又はベンゾイル、トシル若しくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基のいずれかであり;
は、遊離した、又はC〜C30アルキル鎖から選択される基で置換されたヒドロキシル基又は−NH、−NHY若しくは−NYY’基(Y及びY’はC〜Cアルキル鎖を表す)のいずれかを有する、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を表し;
は、遊離した、又はメチル若しくはアセチル基で置換されているか、ジスルフィド結合によって別のシステインに共有結合している、X位のシステインのチオール官能基を表す。
【0022】
前記一般式(I)の配列は、3〜12個のアミノ酸残基からなり、塩の形態であることができる。
【0023】
本発明の有利な実施形態によると、ペプチドは好ましくは一般式(I)に対応し、
−(AA)−X−Arg−X−Trp−X−X−X−X(R)−(AA)−R
式中、
は、アスパラギン酸又はアミノ酸なしを表し、
は、グルタミン又はグルタミン酸を表し、
は、アスパラギン又はリシン又はグルタミン又はアミノ酸なしを表し、
は、フェニルアラニン又はチロシン又はアミノ酸なしを表し、
は、チロシン又はアラニン又はアミノ酸なしを表し、
は、システイン又はアミノ酸なしを表し、
AAは、アルギニン、システイン、ロイシン、グリシン及びグルタミン酸を除く任意のアミノ酸を表し;n及びp=0又は1であり、nはpと異なり;
は、遊離した、又はアシル型(R−CO−)の基で置換された、N末端アミノ酸の一級アミン官能基を表し、ここでラジカルRはアセチル型の飽和若しくは不飽和C〜C30アルキル鎖、又はベンゾイル、トシル若しくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基のいずれかであり;
は、遊離した、又はC〜C30アルキル鎖から選択される基で置換されたヒドロキシル基又は−NH、−NHY若しくは−NYY’基(Y及びY’はC〜Cアルキル鎖を表す)のいずれかを有する、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を表し;
は、遊離した、又はメチル若しくはアセチル基で置換されているか、ジスルフィド結合によって別のシステインに共有結合している、X位のシステインのチオール官能基を表す。
【0024】
前記一般式(I)の配列は、3〜7個のアミノ酸残基からなり、塩の形態であることができる。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態によると、ペプチドは以下の配列を有する:
(SEQ ID NO1):Asp−Arg−Gln−Trp−NH
(SEQ ID NO2):Asp−Arg−Glu−Trp−NH
(SEQ ID NO3):Asp−Arg−Gln−Trp−Asn−Tyr−NH
(SEQ ID NO4):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys−NH
(SEQ ID NO5):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys(Cys)−(NH
(SEQ ID NO6):Asp−Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−NH
(SEQ ID NO7):Asp−Arg−Gln−Trp−Asn−Tyr−Ala−Cys−NH
(SEQ ID NO8):Asp−Arg−Gln−Trp−Asn−Tyr−Ala−Cys(Cys)−(NH
(SEQ ID NO9):Asp−Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys−NH
(SEQ ID NO10):Asp−Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−Cys(Cys)−(NH
(SEQ ID NO11):Asp−Arg−Gln−Trp−Lys−Phe−NH
(SEQ ID NO12):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr−NH
(SEQ ID NO13):Arg−Glu−Trp−Gln−Phe−Tyr.
【0026】
特に有益な実施形態によると、ペプチドはSEQ ID NO5の配列に対応する。
【0027】
別の特に有益な実施形態によると、ペプチドはSEQ ID NO9又はSEQ ID NO10の配列に対応する。
【0028】
別のさらに有益な実施形態によると、ペプチドはSEQ ID NO12又はSEQ ID NO13の配列に対応する。
【0029】
本発明のペプチドを構成し、用語AAによって示されるアミノ酸は、異性体のL体及びD体のいずれであることもできる。好ましくは、アミノ酸はL体である。
【0030】
用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸の鎖を指す。
【0031】
用語「ペプチド」は、上記のような本発明の天然若しくは合成ペプチド、又はそれがタンパク質分解又は合成のいずれによって得られるかにかかかわらず、少なくとも1つのその断片、又はその配列が全部若しくは部分的に上記のペプチドの配列からなる任意の天然若しくは合成ペプチドも指す。
【0032】
分解に対する耐性を改善するため、本発明のペプチドの保護形態を使用する必要がある場合がある。好ましくは、N末端アミノ酸の一級アミン官能基を保護するため、アシル型(R−CO−)のR基による置換が使用され、ここでラジカルRは、アセチル型の飽和若しくは不飽和C〜C30アルキル鎖、又はベンゾイル、トシル、若しくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基のいずれかであり、さらにより好ましくはアセチル基である。好ましくは、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を保護するため、C〜C30アルキル鎖型のR基、又はNH、NHY若しくはNYY基(ここでYはC〜Cアルキル鎖を表す)、さらにより好ましくはNH2基による置換が使用される。
【0033】
本発明によるペプチドは、N末端若しくはC末端の終端又は両方の終端で保護されてもよい。
【0034】
本発明によるペプチドの二量体化を阻害するため、C末端システインのチオール官能基を、メチル若しくはアセチル基、又は別のシステインによって置換することができる。後者の場合、置換により2つのシステイン残基の間にジスルフィド結合が形成される。
【0035】
したがって、本発明は、本発明によるペプチド及び有利にはSEQ ID NO1〜SEQ ID NO13の配列のペプチドが保護形態又は非保護形態であり、好ましくはC末端終端で保護形態であることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0036】
本発明による一般式(I)のペプチドは、古典的な化学合成(固相中又は液体均質相中での)、又は構成アミノ酸からの酵素合成(Kullman et al. J. Biol.Chem.,1980,vol.225,p.8234)のいずれかによって得ることができる。
【0037】
本発明によるペプチドは、天然由来でも合成由来でもよい。好ましくは本発明によると、ペプチドは合成由来であり、化学合成によって得られる。
【0038】
本発明によると、活性化剤は単一のペプチドでもペプチドの混合物でもよい。
【0039】
本発明によるペプチドは、有利には1つ又はそれ以上の生理学的に好適な溶媒、例えば水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化若しくはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオール又はこれらの溶媒のいずれかの混合物に可溶化される。
【0040】
用語「生理学的に好適な」は、選択された溶媒が毒性又は不耐性反応を生じることなく皮膚への接触に適することを意味する。
【0041】
希釈されたペプチドは、続いて滅菌濾過により滅菌される。
【0042】
この希釈段階の後、ペプチドは、リポソームのような化粧品、若しくは、医薬品用ベクター又は化粧品分野で使用されるその他のマイクロカプセルに封入若しくは収容され、又は粉末状有機ポリマー、タルク及びベントナイトのような鉱物担体上に吸着され、より一般的には、生理学的に好適なベクターに可溶化されるか又は結合される。
【0043】
本発明の第2の主題によると、一般式(I)のペプチドを薬物として使用できる。
【0044】
特に有利には、一般式(I)のペプチドを治癒剤として使用できる。
【0045】
本発明の別の目的は、本発明によるペプチドを生理学的に好適な媒体中に包含する、医薬治癒組成物を提供することである。
【0046】
本発明の特定の態様によると、前記ペプチドを、加齢又は早期光加齢に関連する皮膚科学的症状の治療、特に遅延治癒、弛緩及び皮膚委縮、日光弾性線維症並びに真皮表皮接合低下の治療に使用することができる。
【0047】
有利には、本発明のこの実施形態によると、医薬組成物は局所使用に好適と考えられ、又は皮下若しくは皮内注射に適した液体形態であってもよく、特に複数回の表層局所脂肪溶解型注射に好適である。
【0048】
本発明の第3の目的は、一般式(I)のペプチドをデルマトポンチン活性化剤として、生理学的に好適な媒体中に包含する化粧品組成物を提供することである。
【0049】
本発明の有利な実施形態によると、本発明の活性化剤は本発明の組成物中に、最終組成物の全重量を基準にして約10−9M〜10−3Mの濃度、好ましくは10−8M〜10−5 Mの濃度、さらにより好ましくは5.10−5M〜5.10−6Mで存在する。
この濃度範囲は、所望の分子影響、すなわち、デルマトポンチン、I型及びIII型コラーゲン及びフィブロネクチンの活性化を得るために必要な活性化剤の量を示す。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、皮膚に対して生理学的に好適な媒体を包含する局所適用に好適な形態である。「生理学的に好適な」は、皮膚又はヒトの皮膚付属物との接触において、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応又はその他の副作用の危険なく、使用に好適な媒体を指す。
【0051】
「局所適用」とは、本発明による活性化剤、又はそれを含有する組成物の皮膚表面上への適用又は塗布を指す。
【0052】
これらの組成物は、特に、水性、水性アルコール又は油性の溶液;水中油型若しくは油中水型エマルション又は複数のエマルション;水性若しくは無水ゲル;コロイドの形態であってもよい。これらの組成物は、皮膚、粘膜、唇及び/又は皮膚付属物への適用に好適なクリーム、懸濁液、又は粉末の形態であることもできる。これらの組成物は多少流体であってもよく、クリーム、ローション、ミルク、漿液、ポマード、クリーム、ペースト又は泡の外観を有してもよい。さらに、スティックのような固体形態であってもよく、エアロゾル形態で皮膚に適用されてもよい。当該組成物は、ケア製品として及び/又は皮膚のメークアップ製品として使用できる。
【0053】
さらに、これらの組成物はすべて、想定される使用分野で一般的に使用される添加剤並びにその配合に必要な補助剤、例えば共溶媒(エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール、湿潤剤等)、増粘剤、希釈剤、乳化剤、酸化防止剤、着色剤、日焼け防止剤、顔料、充填剤、防腐剤、香料、臭気吸収剤、精油、微量元素、必須脂肪酸、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、化学又は鉱物フィルタ、水和剤又は温泉水等を包含する。例として、多糖類のような天然型の水溶性ポリマー、又はポリペプチド、メチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロース型のセルロース誘導体、又は合成ポリマー、ポロキサマー、カルボマー、シロキサン、PVA又はPVP、特にISPカンパニーが販売するポリマーを挙げることができる。
【0054】
いずれの場合も、当業者は、これらの補助剤並びにその比率が、本発明の組成物が探究する有利な特性を相殺しないように選択されることを確認するであろう。これらの補助剤は、例えば、組成物の総重量の0.01〜20%の範囲の濃度で存在してもよい。本発明の組成物がエマルションであるとき、脂肪相は組成物の全重量を基準にして5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%で存在してもよい。組成物に使用される乳化剤及び共乳化剤は、考慮する分野で従来使用されるものから選択されるであろう。例えば、それらは組成物の全重量を基準にして0.3〜30重量%の範囲の比率で使用できる。
【0055】
当然、本発明の活性化剤は、単独でも他の活性化剤と共にでも使用できる。
【0056】
有利には、本発明にしたがって使用できる組成物は、さらに、皮膚の加齢の兆候の防止及び改善の分野において、本発明の活性化剤の作用を増強することを目的とした少なくとも1つのその他の活性化剤、又は考慮する組成物の特性の範囲拡大を可能にする別の活性化剤を含有する。
【0057】
非限定的に、以下の分類の成分を挙げることができる:再生剤、抗加齢剤、抗皺剤、肥厚化剤、抗フリーラジカル剤、抗糖化剤、水和剤、抗菌剤、抗真菌剤、角質溶解剤、筋弛緩剤、角質除去剤、及びトーニング剤、真皮巨大分子の合成若しくははエネルギー代謝を刺激する作用剤、皮膚分化、色素沈着若しくは色素脱失を調節する作用剤、爪若しくはは毛髪の成長を刺激する作用剤、微小循環を刺激する作用剤、日焼け防止剤又はメタプロテイナーゼ阻害剤。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、本発明による組成物は、本発明によるペプチドとは別に、以下も包含するであろう
−少なくとも1つのシトクロムc活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つの水和化合物、例えばアクアポリン活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つのサーチュイン活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つの細胞付着増大化合物、及び/又は
−少なくとも1つの、マトリックスタンパク質の産生を増大する化合物、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン及び/又は
−少なくとも1つのプロテアーゼ活性調節化合物、及び/又は
−少なくとも1つの概日リズム調節化合物、及び/又は
−少なくとも1つのHSPタンパク質調節化合物、及び/又は
−少なくとも1つの細胞エネルギー増加化合物、及び/又は
−少なくとも1つの皮膚色素沈着調節化合物、及び/又は
−少なくとも1つのコエンザイムQ10活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つの、バリア機能を改善する化合物、例えばトランスグルタミナーゼ又はHMG−CoAレダクターゼ活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つのミトコンドリア保護化合物。
【0059】
前記化合物は、植物のペプチド加水分解物のような天然由来でもよく、又はペプチドのような合成由来でもよい。
【0060】
その機能とは関係なく、本発明の活性化剤に関連する組成物中のその他の活性化剤は非常に多様な化学構造を有してもよい。非限定的には、ペプチド、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンB群、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン(dihydroepiandrosterone))、フィトステロール、サリチル酸及びその誘導体、レチノイド、フラボノイド、糖アミン、アゾール、金属塩、植物由来のペプチド抽出物又はポリマーが挙げられる。
【0061】
本発明の第4の目的は、真皮表皮接合部の構造を強化し、真皮表皮接合部の構成成分の発現を刺激し、真皮表皮接合部の支持領域の緻密化を増大し、又はさらには基底角化細胞及び/又はメラニン細胞の真皮表皮接合部への固着を改善するための、活性化剤として一般式(I)のペプチドを包含する化粧品組成物の使用に関する。
【0062】
本発明の第5の目的は、皮膚の線維芽細胞による細胞外マトリックスのタンパク質の発現を増大するための、活性化剤として一般式(I)のペプチドを包含する化粧品組成物の使用に関する。
【0063】
本発明の有利な態様によると、当該活性化剤は、真皮の密度及び弾力性、したがって皮膚の引き締まりを増大し、フェイスラインのたるみ、ボリュームの低下、皮膚菲薄化、弛緩、小皺、深い皺及び皮膚委縮を防止又は抑制することを可能にする。
【0064】
本発明の第6の目的は、外的ストレスを受ける皮膚のコラーゲン線維及び弾性線維の分解を防止するための、活性化剤として一般式(I)のペプチドを包含する化粧品組成物の使用に関する。
【0065】
「外部ストレス」という表現は、環境によって生じうるストレスを指す。例として、汚染、UV照射、又は刺激物質のようなストレスを挙げることができる。汚染は、「外的」汚染、例えば、ディーゼル粒子、オゾン又は重金属によるもの、並びに「体内」汚染、特に塗料溶剤、接着剤、若しくは壁紙からの排出物(トルエン、スチレン、キシレン又はベンズアルデヒド等)又はタバコの煙によるものの両方を指す。
【0066】
活性化剤は、UV照射、より具体的にはUVA照射後の弾性線維の分解及び組織崩壊を制限すること及びコラーゲン線維の再構築を刺激することを可能にすることが実証されている。
【0067】
弾性線維の組織崩壊とは、日光への繰り返しの暴露による変化すべて、並びに日光弾性線維症に典型的なジストロフィー性弾性線維の蓄積を指す。肌の悪化は改善されにくく、加齢に関連する皮膚の下垂又はたるみの一因であり、主に真皮に深く振盪するUVA照射によって生じる。
【0068】
本発明の特定の実施形態は、UV照射、より具体的にはUVA照射への暴露によって引き起こされる日光弾性線維症及び/又は弾性線維の組織崩壊に関連する非審美的な兆候を防止又は抑制するための、本発明によるペプチドを包含する化粧品組成物の使用に関連する。
【0069】
本発明の第7の目的は、表皮及び真皮の再生を増大するための、活性化剤として一般式(I)のペプチドを包含する化粧品組成物の使用に関する。
【0070】
「表皮及び真皮の再生」という表現は、本発明の有利な態様により、本発明のペプチドが角化細胞及び線維芽細胞の増殖及び移動の増大を引き起こし、それによって表皮の再生の加速、より一般的には皮膚のより良い再生を促進することを意味する。
【0071】
本発明の第8の目的は、本発明の組成物が処置すべき皮膚に局所適用されることを特徴とする、皮膚の加齢及び光加齢の兆候を防止及び/又は治療することを目的とする美容ケアのための方法に関する。
【0072】
皮膚の加齢の兆候により、加齢による皮膚及び皮膚付属物の外観のすべての変化が理解される。例えば、皮膚菲薄化、たるみ、弾力性喪失及び弛緩、深い線及び皺、引き締まり及びハリの喪失、皮膚萎縮又はその他のUV照射への暴露の結果生じる皮膚の内的分解等である。
【0073】
本発明は、特に、UV照射による肌ストレスから皮膚を保護することを目的とした美容処置の方法に関する。
【0074】
特定の1つの実施形態において、該当組成物は、弾性線維の組織崩壊を防止するための日焼け前のケア処置として、日光に暴露する前に適用される。
【0075】
本発明の第2の実施形態において、該当組成物はコラーゲン及び弾性繊維が受けた損傷を修復するための日焼け後ケア処置として、日光暴露の後に適用される。
【0076】
本発明のその他の利点及び特徴は、例証及び非限定的な目的で提供される以下の実施例を見ることでより明白になるであろう。
【実施例1】
【0077】
SEQ ID NO5及びSEQ ID NO9ペプチドのデルマトポンチン発現に対する活性化作用の実証
【0078】
本研究の目的は、SEQ ID NO5ペプチド及びSEQ ID NO9ペプチドが線維芽細胞におけるデルマトポンチンの発現に与える影響を明らかにすることである。この目的のため、正常ヒト繊維芽細胞培養及び生体外(ex vivo)で培養された皮膚で特異的な免疫蛍光標識を実施した。
【0079】
プロトコル:正常ヒト線維芽細胞を24又は48時間培養し、1日1回SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドの10−6M溶液で処理する。続いて当該細胞を洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを用いて周囲温度にて10分間固定する。
【0080】
ヒト皮膚試料を培養液の気液界面に置く。SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドの10−6M溶液を局所適用した後、当該試料を24時間又は48時間インキュベートする。続いて前記皮膚試料をホルムアルデヒドで固定してパラフィン中に包埋するか又は−20℃で凍結することによってOCTで固定する。続いて3〜4μmの切片を作製する(低温切片の場合は6μm)。パラフィン包埋した試料の免疫標識を、特定部位のアンマスキング後に実施する。OCT包埋した試料の免疫標識を、37℃で冷アセトンを用いて固定した後に実施する。
【0081】
固定された細胞又は切片を、特定のウサギデルマトポンチンポリクローナル抗体(Proteintech group, Ref:10537−1−AP)、続いて蛍光マーカーに結合した二次抗体の存在下でインキュベートする。アドホック(ad hoc)培地にマウントした後、細胞を落射蛍光顕微鏡(ニコン エクリプスE600顕微鏡)で観察する。
【0082】
結果:試験したすべての条件下で、10−6MのSEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドで処理した線維芽細胞において、対照条件下よりも強い蛍光が観察されている。
ヒトの皮膚は、SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドで処理した試料の真皮において、より強い蛍光を示す。
【0083】
結論:SEQ ID NO5及びSEQ ID NO9ペプチドは、真皮の線維芽細胞によるデルマトポンチンの発現を非常に実質的に刺激する。
【実施例2】
【0084】
SEQ ID NO 5ペプチドで処理した皮膚細胞の超微細構造の研究
【0085】
本研究の目的は、10−6MのSEQ ID NO5ペプチドで処理した角化細胞及び線維芽細胞の細胞内構造を観察することである。
【0086】
プロトコル:
NHEK又は線維芽細胞をディッシュ又はTranswellシステム内で培養する、又は生体外(ex vivo)培養した皮膚をSEQ ID NO5ペプチドの10−6M溶液で48時間処理する(培地は24時間毎に交換する)。皮膚細胞又は試料をPBSで洗浄した後、カルノフスキー高張固定液(4%パラホルムアルデヒド、5%グルタルアルデヒドを含む0.08Mリン酸バッファー)によって、周囲温度で1時間、その後4℃で24時間、固定する。細胞をスクレイピングにより基質から剥がし、4℃、1000rpmで5分間遠心分離する。上清を除去し、0.1Mカコジル酸ナトリウムバッファーをペレットに沈着させる。細胞を2%アガーと混合し、その後、四酸化オスミウムによって、1時間後、固定する。次に、検体を、一連のアルコール(50〜100%)の連続的通過により脱水する。その後、皮膚細胞又は試料を樹脂でコーティングする。重合を、約12時間、60℃で実行する。0.5μmの準超薄切片を、ウルトラミクロトームを用いて作製する。切片を、下塗りされたスライド(subbed slide)上に加熱下にて置き、その後、トルイジンブルーで染色する。その後スライドを再度脱水し、好適な培地にマウントする。最適な試験領域を選択した後、ブロックを所望の寸法にサイズ変更し、超薄切片を作製する。「銀白」色及び好適な寸法の切片のみを、酢酸ウラリルおよびクエン酸鉛で二重標識した電子顕微鏡のグリッド上にマウントし、60又は80KVで透過電子顕微鏡観察する。
【0087】
結果:超微細構造研究により、SEQ ID NO5ペプチドで処理した角化細胞において、細胞小器官、特にミトコンドリアが集積していることがわかる。Transwell(登録商標)システムの培養液において、角化細胞間の細胞間接触は、未処理対照よりも接着して見え、嵌合はより染色されて見える。同様に、生体外(ex vivo)皮膚培養物では、基底層の細胞間により狭い細胞接触が観察される。
【0088】
SEQ ID NO5ペプチドで処理した培養物中の線維芽細胞において、カベオラ体、粗面小胞体及びゴルジ体は対照細胞よりも実質的に発達していることが観察される。未処理の対照細胞との比較により、細胞外マトリックスの構成成分のより強い分泌も観察される。
【0089】
結論:培養物中の角化細胞において、SEQ ID NO5ペプチドは10−6Mで細胞活性の全体的な刺激を引き起こし、これは特にミトコンドリアの密度増大を伴う。
【0090】
線維芽細胞において、SEQ ID NO5ペプチドは、細胞外マトリックスの構成成分の合成の増大を誘発する。
【0091】
生体外(ex vivo)皮膚培養において、SEQ ID NO5ペプチドは基底角化細胞の細胞間接触を増大する。
【実施例3】
【0092】
SEQ ID NO5ペプチドのフィブロネクチン発現に対する活性化作用の実証
【0093】
本発明の目的は、SEQ ID NO5ペプチドが、線維芽細胞によって合成される細胞外マトリックスのタンパク質であるフィブロネクチンの発現に与える影響を明らかにすることである。そのために、繊維芽細胞培養物及び生体外(ex vivo)皮膚培養物で特異的な免疫蛍光標識を実施した。
【0094】
プロトコル:培養物中のヒト皮膚線維芽細胞を、1日1回、SEQ ID NO5ペプチドの10−6M溶液で処理する(活性化剤を含有する培地は24時間毎に交換する)。続いて当該細胞を洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを用いて周囲温度にて10分間固定する。
【0095】
ヒト皮膚試料を培養液の気液界面に置く。SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドの10−6M溶液を局所適用した後、当該試料を24時間又は48時間インキュベートする。続いて前記皮膚試料をホルムアルデヒドで固定してパラフィン中に包埋するか又は−20℃で凍結することによってOCTで固定する。続いて3〜4μmの切片を作製する(低温切片の場合は6μm)。パラフィン包埋した試料の免疫標識を、特定部位のアンマスキング後に実施する。OCT包埋した試料の免疫標識を、37℃で冷アセトンを用いて固定した後に実施する。
【0096】
固定された細胞又は切片を特定のウサギフィブロネクチンポリクローナル抗体(Sigma,Ref:F−3648)、続いて蛍光マーカーに結合した二次抗体の存在下でインキュベートする。続いて、細胞を落射蛍光顕微鏡(ニコン エクリプスE600顕微鏡)で観察する。
【0097】
結果:10−6MのSEQ IN NO5ペプチドで処理した線維芽細胞で、対照細胞よりも強い細胞質蛍光が観察される。
【0098】
生体外(ex vivo)皮膚において、蛍光は主に乳頭真皮の上部の真皮表皮接合部の直下に位置している。
【0099】
結論:SEQ ID NO5ペプチドは、線維芽細胞におけるフィブロネクチンの発現を非常に実質的に刺激する。
【0100】
ヒトの皮膚において、SEQ ID NO5ペプチドは真皮表皮接合部の支持領域の緻密化を刺激する。
【実施例4】
【0101】
SEQ ID NO5ペプチドのコラーゲンI及びコラーゲンIII皮膚細胞外マトリックスの分子発現に対する活性化作用の実証
【0102】
本研究の目的は、SEQ ID NO5ペプチドが皮膚細胞外マトリックスの分子発現に与える影響を明らかにすることである。この目的のため、真皮から得たヒト線維芽細胞のコラーゲンI及びIIIの発現を試験した。
【0103】
プロトコル:正常ヒト線維芽細胞を24又は48時間培養し、1日1回SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドの10−6M溶液で処理する。続いて当該細胞を洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを用いて周囲温度にて10分間固定する。
【0104】
ヒト皮膚試料を培養液の気液界面に置く。SEQ ID NO5ペプチド又はSEQ ID NO9ペプチドの10−6 M溶液を局所適用した後、当該試料を24時間又は48時間インキュベートする。続いて前記皮膚試料をホルムアルデヒドで固定してパラフィン中に包埋するか又は−20℃で凍結することによってOCTで固定する。続いて3〜4μmの切片を作製する(低温切片の場合は6μm)。パラフィン包埋した試料の免疫標識を、特定部位のアンマスキング後に実施する。OCT包埋した試料の免疫標識を、37℃で冷アセトンを用いて固定した後に実施する。
【0105】
固定された細胞又は切片を特定のウサギコラーゲンIポリクローナル抗体(Rockland,Ref:600−401−103)又は特定のウサギコラーゲンIIIポリクローナル抗体(Rockland,Ref:600−401−105)、続いて蛍光マーカーに結合した二次抗体の存在下でインキュベートする。アドホック(ad hoc)培地にマウントした後、細胞を落射蛍光顕微鏡(ニコン エクリプスE600顕微鏡)で観察する。
【0106】
結果:10−6MのSEQ ID NO5ペプチドで処理した培養物及び皮膚切片で、対照条件下よりも強い蛍光が観察されている。
【0107】
結論:SEQ ID NO5ペプチドは10−6Mにて、皮膚細胞外マトリックスの2つの必須線維状タンパク質であるコラーゲンI及びコラーゲンIIIの発現を増大する。
【実施例5】
【0108】
SEQ ID NO5ペプチドのUV照射を受けたエラスチン線維に対する保護作用の実証
【0109】
本研究の目的は、SEQ ID NO5ペプチドが真皮中に存在する弾性線維に与える影響を明らかにすることである。この目的のため、生体外(ex vivo)で培養した皮膚試料で弾性線維の特異的染色を実施した。
【0110】
プロトコル:ヒト皮膚試料を培養液の気液界面に置く。SEQ ID NO5ペプチドの10−6M溶液を局所適用し、当該試料を48時間インキュベートした後、5J/cmにてUVA照射する。平行して、未処理の照射対照を作製する。
【0111】
前記皮膚試料をホルムアルデヒドで固定した後、パラフィン中に包埋する。続いて4μmの切片を作製する。前記皮膚切片をパラフィンから連続的に除去した後、別々のキシレン浴及びアルコール浴中で再水和する。エラスチン線維を、Elastika van Gieson染色キット(VWR,Ref:1.15974)を用いて染色する。染色した皮膚切片を、脱水し、Eukitt封入剤にマウントし、顕微鏡観察する。
【0112】
結果:顕微鏡観察の結果、照射及び10−6MのSEQ ID NO5ペプチドで処理した試料は、対照条件下よりも弾性線維の分解が少なく、弾性線維の組織がよく保存された。
【0113】
結論:SEQ ID NO5ペプチドは10−6Mで、UV照射によって引き起こされる弾性線維の改変を防止する。
【実施例6】
【0114】
SEQ ID NO5ペプチドの再生作用の実証
【0115】
本発明の目的は、SEQ ID NO5ペプチドが皮膚線維芽細胞及び正常ヒト角化細胞(NHEK)に与える再生作用を明らかにすることである。そのために、Ibidiインビトロ治癒モデル(Integrated Bio Diagnostics、ドイツ国ミュンヘン)を使用した。
【0116】
プロトコル:この実験は、細胞層の中央における無細胞領域の維持及び、「瘢痕」のいずれかの側に配置された細胞が移動又は増殖して間隙を埋めるのに要する時間の評価からなる。接着性シリコンカルチャーインサートを培養皿のウェルの底に置く。このインサートは厚さ500 μmの不透過性の膜で分離された2つの別個のチャンバを具備するという特殊な特徴を有する。2つのチャンバの各々に同じ細胞型の細胞を播種し、コンフルエントまで培養する。続いて、インサートを滅菌鉗子で取り除き、2つの細胞層の間に幅400μmの無細胞領域を作る。続いて、細胞を、培地に添加したSEQ ID NO5ペプチドの10−6M又は3.10−6M溶液で、ペプチドを24時間毎に交換しながら処理する。位相差顕微鏡観察(オリンパスCK40顕微鏡X5をオリンパスE−510カメラに接続)を、増殖及び移動プロセスにより間隙が充填されるまでの異なる時間(0、6、24、30及び48時間)において実施した。
【0117】
結果:顕微鏡観察で、10−6MのSEQ ID NO5ペプチドで処理したヒト角化細胞により、30時間後に間隙がすべて充填されることが示される。同時に、対照条件下では、細胞間隙はまだ充填されていない。
【0118】
10−6MのSEQ ID NO5ペプチドで処理したヒト線維芽細胞では、48時間後に間隙の全充填が見られる。同時に、対照条件下では、細胞間隙はまだ充填されていない。
【0119】
細胞を3.10−6MのSEQ ID NO5で処理した場合の方が、間隙が早く充填されることから、このペプチドの作用は用量依存性である。
【0120】
結論:線維芽細胞及び正常ヒト角化細胞(NHEK)は、SEQ IN NO5ペプチドの存在下で培養した場合、対照条件と比較して、より早く間隙を充填した。
【0121】
SEQ ID NO5ペプチドは、線維芽細胞及びNHEKの増殖及び移動を刺激し、その結果皮膚再生を促進する。
【実施例7】
【0122】
組成物の調整
1−日焼け止めクリーム:
【0123】
【表1】
【0124】
A相及びB相の構成成分を別々に70℃〜75℃で加熱する。B相をA相に撹拌下で乳化する。C相を、撹拌を増大することによって45℃にて添加する。続いて、温度が40℃未満のときにD相を添加する。強力に撹拌しながら25℃まで冷却を継続する。
2−フェイシャルスカルプティングクリーム:
【0125】
【表2】
【0126】
【0127】
A相を65〜70℃にて調製及び溶融する。C相を65〜70℃に加熱する。AをB中に乳化する直前にB相をA相に加える。約45℃で、D相を添加することによってカルボマーを中和する。続いて、E相を軽微な撹拌下で添加し、25℃まで冷却を継続する。続いて、望ましい場合にはF相を添加する。
3−日中用保護クリーム:
【0128】
【表3】
【0129】
【0130】
A相を調製し、撹拌下で75℃に加熱する。B相を、カーボポール、続いてキサンタンガムを撹拌下で分散することによって調製する。放置する。75℃に加熱する。
【0131】
該温度にて、ロータ/ステータ撹拌下でAをBに乳化する。急速撹拌下でC相を中和する。40℃で冷却した後、D相、続いてE相を添加する。冷却を、軽微な撹拌下で継続し、F相を添加する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]