特許第6179774号(P6179774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179774デミスタユニットおよびこれを備えたEGRシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179774
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】デミスタユニットおよびこれを備えたEGRシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/08 20060101AFI20170807BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20170807BHJP
   F02M 26/35 20160101ALI20170807BHJP
【FI】
   B01D45/08 Z
   B01D45/08 B
   B01D53/92 215
   B01D53/92ZAB
   B01D53/92 331
   F02M26/35
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-39900(P2014-39900)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-165103(P2015-165103A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2016年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲司
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直大
(72)【発明者】
【氏名】田中 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓道
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−016856(JP,U)
【文献】 実開平04−114408(JP,U)
【文献】 実開昭55−133212(JP,U)
【文献】 特開昭59−019515(JP,A)
【文献】 特開2013−170539(JP,A)
【文献】 特開平08−254160(JP,A)
【文献】 特表2012−518748(JP,A)
【文献】 特開2002−332919(JP,A)
【文献】 特開2013−044456(JP,A)
【文献】 特開平04−037609(JP,A)
【文献】 特開平07−280182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00−45/18
B01D 53/92
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部空間に流体を流入させる入口に対向するように前記ケーシング内に配置され、前記内部空間で屈曲する上流側流路を形成する邪魔板と、
前記上流側流路と前記内部空間のうちの前記上流側流路の下流側である下流側流路とを隔てるとともに、通過する流体からミストを除去するデミスタ本体と、
水平面に沿って配置され、前記デミスタ本体を前記ケーシングの下方から支持するデミスタ支持板と、を備え、
前記下流側流路は、前記ケーシングが形成する内壁面と前記デミスタ支持板と前記デミスタ本体とにより囲まれるとともに前記デミスタ支持板と前記デミスタ本体とにより前記上流側流路から隔てられており、
前記邪魔板は、前記ケーシングが形成する内壁面のうちの上側の天井に固定されるとともに、両端側が前記ケーシングの前記内壁面のうちの両側壁に固定されるデミスタユニット。
【請求項2】
前記邪魔板および前記デミスタ本体は、前記ケーシングの上部領域に設けられるとともに、前記邪魔板の下端は、前記デミスタ本体の下端より鉛直方向下側に配置される請求項1に記載されるデミスタユニット。
【請求項3】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部空間に流体を流入させる入口に対向するように前記ケーシング内に配置され、前記内部空間で屈曲する上流側流路を形成する邪魔板と、
前記上流側流路と前記内部空間のうちの前記上流側流路の下流側である下流側流路とを隔てるとともに、通過する流体からミストを除去するデミスタ本体と、を備え、
前記邪魔板および前記デミスタ本体は、前記ケーシングの上部領域に設けられるとともに、前記邪魔板の下端は、前記デミスタ本体の下端より鉛直方向下側に配置されており、
水平面に沿って配置され、前記デミスタ本体を前記ケーシングの下方から支持するとともに、前記下流側流路と前記上流側流路のうちの前記下流側流路の下側に配置される領域とを隔てるデミスタ支持板と、
前記デミスタ本体から前記デミスタ支持板の鉛直方向下側に突出する垂れ下がり板と、
をさらに備え
前記垂れ下がり板の下端は、前記邪魔板の下端と鉛直方向の位置が等しいか前記邪魔板の下端よりも鉛直方向上側に配置されているデミスタユニット。
【請求項4】
記内部空間のうち、前記ミストが貯留される貯留空間を前記上流側流路から隔てる多孔板をさらに備える請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載されるデミスタユニット。
【請求項5】
エンジン本体の排ガスの一部が導かれるスクラバと、
前記スクラバからの排ガスが導かれる請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のデミスタユニットと、を備え、
前記デミスタユニットからの排ガスが前記エンジン本体へと導かれるEGRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスからミストを除去するデミスタユニットおよびこれを備えたEGRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラからの排ガスに含まれるミストを除去するためにデミスタやミストエリミネータが用いられる(特許文献1参照)。特許文献1には、除塵塔の出口配管や、排ガス脱硫装置のスクラバの下流に設けられたデミスタが開示されている。
また、内燃機関の排ガスの一部を取り出し、内燃機関の吸気側へ導き再度吸気させることによって排ガス中の窒素酸化物を低減するEGR(排気再循環:Exhaust Gas Recirculation)システムが知られている。このEGRシステムに対してもデミスタが用いられ、再循環させる排ガスからミストを除去した後に内燃機関の吸気側へと導くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−131764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のデミスタ(場合によっては「ミストエリミネータ」と称される。)は、特許文献1に示されているように、配管の途中に設けられたり、排ガス脱硫装置等の構造物内に設けられたりするのが一般的である。このような設置位置は、ミストが多い雰囲気とされる場合があり、デミスタの除去限界を超えることがある。これに対して、デミスタを多段化等することが考えられるが、装置が大型化してしまうという問題がある。
特に、船舶用のEGRシステムの場合には、内燃機関の近傍に設置する必要が生じるため、デミスタをコンパクトにすることが要求される。
【0005】
図5には、比較例としてのデミスタユニット100が示されている。デミスタユニット100は、排ガス上流側に位置する拡大管101と、排ガスからミストを除去するデミスタ本体102とを備えている。拡大管101は、その流路の下流側に行くにしたがい、流路の断面積が拡大するように形成されている。デミスタ本体102は、拡大管101によって断面積が拡大された流路の横断面全体にわたって配置されている。
【0006】
拡大管101は、排ガスの流速分布を可及的に生じさせないように均一に減速させ、排ガスの流速を調整するために用いられる。これは、ミストを除去するために適切な流速がデミスタ本体102に応じて決められているからである。このように、適切な流速を得るために拡大管102が必要とされるため、デミスタユニット100全体の大きさが排ガスの流れ方向に大型化せざるを得ないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コンパクトに形成されるデミスタユニットおよびこれを備えたEGRシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によるデミスタユニットは、ケーシングと、前記ケーシングの内部空間に流体を流入させる入口に対向するように前記ケーシング内に配置され、前記内部空間で屈曲する上流側流路を形成する邪魔板と、前記上流側流路と前記内部空間のうちの前記上流側流路の下流側である下流側流路とを隔てるとともに、通過する流体からミストを除去するデミスタ本体と、水平面に沿って配置され、前記デミスタ本体を前記ケーシングの下方から支持するデミスタ支持板と、を備え、前記下流側流路は、前記ケーシングが形成する内壁面と前記デミスタ支持板と前記デミスタ本体とにより囲まれるとともに前記デミスタ支持板と前記デミスタ本体とにより前記上流側流路から隔てられており、前記邪魔板は、前記ケーシングが形成する内壁面のうちの上側の天井に固定されるとともに、両端側が前記ケーシングの前記内壁面のうちの両側壁に固定されている。
【0009】
このようなデミスタユニットは、入口から内部空間に流入した流体に対向するように邪魔板が配置されているので、流体が邪魔板に衝突して邪魔板に沿って広がって流れることにより、流体を減速させて流速を均一化させることができる。また、流体が邪魔板に衝突する際に、流体に含まれるミストが邪魔板に付着し、大まかなミストを第一次的に除去することができる。
また、邪魔板により屈曲した上流側流路を形成することにより、流体の流速を均一化させるとともに、屈曲して流れる際の遠心力を利用してさらにミストを除去することができる。
このように邪魔板によって減速されるとともに流速が均一化された流体は、デミスタ本体へと導かれ、デミスタ本体にて残存するミストが最終的に除去される。
このようなデミスタユニットは、拡大管を用いて流体がデミスタ本体を通過する流速を均一に減速させる図5に示したようなデミスタユニットに比較して、流体の流れ方向に直線状に所定の距離を確保する必要がある拡大管を省略することができるので、コンパクトに形成されることができる。
【0010】
前記邪魔板および前記デミスタ本体は、前記ケーシングの上部領域に設けられるとともに、前記邪魔板の下端は、前記デミスタ本体の下端より鉛直方向下側に配置されている。
【0011】
邪魔板の下端をデミスタ本体の下端よりも下側に配置することにより、邪魔板の下端にて屈曲した流体が上方に折り返したうえでデミスタ本体へと導かれるようにすることができる。これにより、流体がデミスタ本体に流入する流速をさらに均一化させ、デミスタ本体にてミストを適切に除去させることができる。
【0012】
本発明の第2態様によるデミスタユニットは、ケーシングと、前記ケーシングの内部空間に流体を流入させる入口に対向するように前記ケーシング内に配置され、前記内部空間で屈曲する上流側流路を形成する邪魔板と、前記上流側流路と前記内部空間のうちの前記上流側流路の下流側である下流側流路とを隔てるとともに、通過する流体からミストを除去するデミスタ本体と、を備え、前記邪魔板および前記デミスタ本体は、前記ケーシングの上部領域に設けられるとともに、前記邪魔板の下端は、前記デミスタ本体の下端より鉛直方向下側に配置されており、水平面に沿って配置され、前記デミスタ本体を前記ケーシングの下方から支持するとともに、前記下流側流路と前記上流側流路のうちの前記下流側流路の下側に配置される領域とを隔てるデミスタ支持板と、前記デミスタ本体から前記デミスタ支持板の鉛直方向下側に突出する垂れ下がり板とをさらに備え、前記垂れ下がり板の下端は、前記邪魔板の下端と鉛直方向の位置が等しいか前記邪魔板の下端よりも鉛直方向上側に配置されている。
【0013】
デミスタ支持板の下側に突出する垂れ下がり板を備えることにより、デミスタ支持板の下面に沿って流れた流体が垂れ下がり板に衝突することになる。垂れ下がり板に衝突した流体は垂れ下がり板を乗り越えて周囲を流れた後にデミスタ本体へと流れ込む。このように、垂れ下がり板があることによって流体がデミスタ支持板の端部をショートカットしてデミスタ本体へと流れ込むことを防止することができ、デミスタ本体へと流れ込む流体の流速分布を均一に保つことができる。
【0014】
本発明の第3態様によるデミスタユニットは、ケーシングと、前記ケーシングの内部空間に流体を流入させる入口に対向するように前記ケーシング内に配置され、前記内部空間で屈曲する上流側流路を形成する邪魔板と、前記上流側流路と前記内部空間のうちの前記上流側流路の下流側である下流側流路とを隔てるとともに、通過する流体からミストを除去するデミスタ本体と、を備え、前記内部空間のうち、前記ミストが貯留される貯留空間を前記上流側流路から隔てる多孔板をさらに備えている。
【0015】
ミストが貯留される貯留空間と上流側流路とを隔てるように多孔板を設けることとしたので、上流側流路を流れる流体が貯留空間の液面に直接的に接触することを防止することができる。これにより、貯留空間に貯留される液体が、上流側流路を流れる流体に再混合されることを低減することができる。
【0016】
本発明によるEGRシステムは、エンジン本体の排ガスの一部が導かれるスクラバと、前記スクラバからの排ガスが導かれる上述のうちのいずれかに記載のデミスタユニットとを備え、前記デミスタユニットからの排ガスが前記エンジン本体へと導かれるものである。
【0017】
デミスタユニットがコンパクトに形成されることにより、EGRシステムをコンパクトに形成することができ、エンジン本体の近傍に設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるデミスタユニットおよびEGRシステムは、コンパクトに形成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るデミスタが適用されたEGRシステムを備えたディーゼルエンジンを示す斜視図である。
図2図1のEGRシステムを備えたディーゼルエンジンを示す概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるデミスタを示す側断面図である。
図4図3のデミスタを平面視した状態を示す縦断面図である。
図5】比較例のデミスタを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、デミスタユニットの一実施の形態について説明する。
デミスタユニット1は、図1に示されているように、例えば船舶の推進用に用いられる2サイクル大型ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という。)に設けられたEGRシステム2に利用されている。エンジンは、エンジン本体3と、過給機5と、EGRシステム2とを備えている。
【0021】
エンジン本体3は、過給機5により生成された燃焼用空気を用いて燃料を燃焼させることにより、動力を生成し、排ガスを排気する。排ガスは、煙突を介して環境に排出される。
【0022】
過給機5は、図2に示されているようにエンジン本体3とEGRバルブ6との間に配置されるとともに、軸流タービン11と遠心圧縮機12とを備えている。軸流タービン11は、エンジン本体3から排気された排ガスを用いて、回転動力を生成し、排ガスを排気する。遠心圧縮機12は、軸流タービン11により生成された回転動力を用いて、外気および/またはEGRブロア8から供給される排ガスを圧縮することにより燃焼用空気を生成する。
【0023】
EGRシステム2は、EGRバルブ6とスクラバ7とデミスタユニット1とEGRブロア8とを備えている。EGRバルブ6は、エンジン本体3の上側に配置されており、過給機5から煙突に流れる排ガスの一部をスクラバ7に供給する。スクラバ7とEGRブロア8とは、エンジン本体3とEGRバルブ6との間に配置されている。
【0024】
スクラバ7は、ベンチュリ管を備えており、ベンチュリ管により、EGRバルブ6から供給される排ガスの高速の流れが生成される。スクラバ7は、排ガスの高速の流れに洗浄液を散布することにより、洗浄液のミストを生成する。このとき、排ガスは、排ガスに含まれるダストがミストに接触し、ダストが除去される。
【0025】
デミスタユニット1は、スクラバ7によりダストが除去されたダスト除去後排ガスからミストを除去することにより、ミスト除去後排ガスを生成する。
【0026】
EGRブロア8は、デミスタユニット1によりミストが除去されたミスト除去後排ガスを昇圧して過給機5の遠心圧縮機12に供給する。
【0027】
図3は、デミスタユニット1を示している。デミスタユニット1は、ケーシング21と、多孔板22と、デミスタ支持板23、とデミスタ本体24と、邪魔板25と、垂れ下がり板26とを備えている。
【0028】
ケーシング21は、内部に内部空間を形成する容器とされている。ケーシング21の内部空間には、貯留空間31と、上流側流路32と、下流側流路33とが形成されている。貯留空間31は、ケーシング21の内部空間の下部に配置されている。下流側流路33は、ケーシング21の内部空間の上部の一部に配置されている。上流側流路32は、貯留空間31と下流側流路33とが隣接しないように、貯留空間31と下流側流路33との間に配置され、貯留空間31の上側に配置されている。
【0029】
ケーシング21は、さらに、デミスタユニット入口28と、デミスタユニット出口29とが形成されている。デミスタユニット入口28は、ケーシング21が形成する内壁面のうちの上流側流路32に面する壁面に形成され、スクラバ7によりダストが除去されたダスト除去後排ガスを上流側流路32に導入する。デミスタユニット出口29は、ケーシング21が形成する内壁面のうちの下流側流路33に面する壁面(本実施形態では天井)に形成され、下流側流路33をEGRブロア8に接続する。
【0030】
多孔板22は、流体が通過可能に複数の孔が形成された平坦な板から形成されている。多孔板22は、水平面に沿ってケーシング21の内部空間に配置され、貯留空間31と上流側流路32とを隔てている。多孔板22は、例えばメッシュ状の板であってもよい。
【0031】
デミスタ支持板23は、流体が通過することができない板から形成されている。デミスタ支持板23は、ケーシング21の内部空間のうちの下流側流路33の下部に概ね水平面に沿って配置され、上流側流路32と下流側流路33とを隔てている。デミスタ支持板23の底部は邪魔板25の下端よりも鉛直方向下側となるように形成されている。
【0032】
デミスタ本体24は、流体が通過可能であるように複数回屈曲した複数の流路が形成されており、全体形状としては図3に示したような平坦な板状体とされている。デミスタ本体24は、ケーシング21の内部空間に概ね鉛直面に沿って配置され、上流側流路32と下流側流路33とを隔てている。すなわち、下流側流路33は、ケーシング21が形成する内壁面とデミスタ支持板23とデミスタ本体24とにより囲まれ、デミスタ支持板23とデミスタ本体24とにより上流側流路32から隔てられている。デミスタ本体24は、デミスタ本体24を通過する流体からミストを除去する。デミスタ本体24の下部は、デミスタ支持板23によって支持されている。
【0033】
邪魔板25は、流体が通過することができない板から形成されている。邪魔板25は、ケーシング21の内部空間のうちのデミスタ本体24とデミスタユニット入口28との間に配置され、デミスタ本体24が沿う鉛直面に平行である鉛直面に沿って配置されている。邪魔板25は、さらに、図4に示されているように、デミスタユニット入口28に対向するように、すなわち、デミスタユニット入口28から上流側流路32に流入する流体が衝突するように、配置されている。このとき、邪魔板25は、デミスタユニット入口28から邪魔板25までの距離がデミスタユニット入口28の直径以下となるように、配置されている。
【0034】
邪魔板25は、さらに、図3に示されているように、ケーシング21の上部領域に設けられている。より具体的には、ケーシング21が形成する内壁面のうちの上側の天井に固定されている。また、邪魔板25の両側端は、ケーシング21の両側壁に固定されている。
邪魔板25は、邪魔板25の下端がデミスタ本体24の下端より鉛直方向下側に配置されるように形成されている。邪魔板25の下方の流路面積は、この下方領域に入る前の流路面積よりも大きくして、邪魔板25の下方を排ガスが通過する際に再加速されないように形成する。このように、邪魔板25は、デミスタユニット入口28から入る流体が下向きに流れ、下向きに流れた流体が折り返して上向きに流れるように、上流側流路32を屈曲させている。
【0035】
垂れ下がり板26は、流体が通過することができない板から形成されている。垂れ下がり板26は、デミスタ本体24が沿う鉛直面に沿うように、すなわちデミスタ本体24の上流面の下方への延長面に沿うように面一に配置され、上端がデミスタ支持板23に接合されている。垂れ下がり板26は、さらに、下端が邪魔板25の下端と鉛直方向の位置が等しくなるように、または鉛直方向上側に配置するように形成されている。すなわち、垂れ下がり板26は、上流側流路32のうちのデミスタ支持板23の下側の領域からデミスタ本体24に向かう(図3において右側に向かう)流体を下側に導くように形成されている。
【0036】
次に、上記構成のデミスタユニット1を備えたEGRシステム2の作用について説明する。
EGRシステム2は、エンジン本体3が、過給機5により生成された燃焼用空気を用いて燃料を燃焼させることにより、動力を生成し、排ガスを排気する。過給機5は、エンジン本体3から排気された排ガスを用いて、EGRブロア8から供給される排ガスを昇圧することにより燃焼用空気を生成し、排ガスを排気する。EGRバルブ6は、過給機5から排気される排ガスのうちの所定の流量の排ガスをスクラバ7に供給する。
【0037】
スクラバ7は、EGRバルブ6から供給される排ガスからダストを除去することによりダスト除去後排ガスを生成する。デミスタユニット1は、スクラバ7により生成されたダスト除去後排ガスからミストを除去することにより、ミスト除去後排ガスを生成する。EGRブロア8は、デミスタユニット1により生成されたミスト除去後排ガスを昇圧して過給機5に供給する。
【0038】
スクラバ7からデミスタユニット1に供給された排ガスは、デミスタユニット入口28から上流側流路32に導入される。デミスタユニット入口28から導入された排ガスは、邪魔板25に衝突し、邪魔板25の上流面に沿って広がって流れる。このときに、排ガスに含まれる比較的大きなミストは邪魔板25に付着し、除去される。邪魔板25に付着した液滴は、下方へと流れ、貯留空間31へと滴下する。
邪魔板25に衝突して邪魔板25の上流面に沿って上方へと流れた排ガスはケーシング21の天井面に衝突した後に向きを変え、また邪魔板25の上流面に沿って左右の幅方向に流れた排ガスはケーシング21の両側面に衝突した後に向きを変え、最終的には排ガスの全体の流れは下向きとなる。このように邪魔板25により下向きに流された排ガスは、邪魔板25の下端を迂回するように折返し、デミスタ本体24に向かって上向きに流れる。
邪魔板25の下端を流れた排ガスは、一部が上流側流路32のうちのデミスタ支持板23の下側の領域に流れる。デミスタ支持板23の下側の領域に流れた排ガスは、垂れ下がり板26に衝突した後にその下端を迂回して、デミスタ本体24に向かって上向きに流れる。このように排ガスが屈曲した上流側流路32を流れ、垂れ下がり板26の下端を迂回する際の遠心力により、排ガスに含まれるミストがさらに分離され、多孔板22の孔を通過して貯留空間31に貯留される。このとき、多孔板22は、上流側流路32を流れる排ガスが貯留空間31内の液面に直接的に接触することを防止し、貯留空間31に貯留されるミストが再度取り込まれることを防止する。
【0039】
上流側流路32を流れた排ガスは、デミスタ本体24を通過して下流側流路33に供給される。排ガスに含まれるミストは、排ガスがデミスタ本体24を通過することにより、凝集して落下し、多孔板22の孔を通過して貯留空間31に貯留される。デミスタ本体24によりミストが除去された排ガスは、下流側流路33を流れ、デミスタユニット出口29を介して、EGRブロア8に供給される。
【0040】
以上の通り、本実施形態にかかるデミスタユニット1を備えたEGRシステムによれば、以下の作用効果を奏する。
デミスタユニット入口28から内部空間に流入した排ガスに対向するように邪魔板25が配置されているので、排ガスが邪魔板25に衝突して邪魔板25に沿って広がって流れることにより、排ガスを減速させて流速を均一化させることができる。また、排ガスが邪魔板25に衝突する際に、排ガスに含まれるミストが邪魔板25に付着し、大まかなミストを第一次的に除去することができる。
また、邪魔板25により屈曲した上流側流路32を形成することにより、排ガスの流速を均一化させるとともに、屈曲して流れる際の遠心力を利用してさらにミストを除去することができる。
【0041】
デミスタユニット1は、排ガスが流れる流路を邪魔板25によって屈曲させることにより、図5に比較例として示した拡大管101を有するデミスタユニット100に比較して、長手方向の長さを短く、コンパクトに形成することができる。
【0042】
邪魔板25の下端をデミスタ本体の下端よりも下側に配置することにより、邪魔板25の下端にて屈曲した排ガスが上方に折り返したうえでデミスタ本体24へと導かれるようにすることができる。これにより、排ガスがデミスタ本体24に流入する流速をさらに均一化させ、デミスタ本体にてミストを適切に除去させることができる。
【0043】
デミスタ支持板23の下側に突出する垂れ下がり板26を備えることにより、デミスタ支持板23の下面に沿って流れた排ガスが垂れ下がり板26に衝突することになる。垂れ下がり板26に衝突した排ガスは垂れ下がり板26を乗り越えて周囲を流れた後にデミスタ本体24へと流れ込む。このように、垂れ下がり板26があることによって排ガスがデミスタ支持板23の端部をショートカットしてデミスタ本体24へと流れ込むことを防止することができ、デミスタ本体24へと流れ込む流体の流速分布を均一に保つことができる。
【0044】
ミストが貯留される貯留空間31と上流側流路32とを隔てるように多孔板22を設けることとしたので、上流側流路32を流れる排ガスが貯留空間31の液面に直接的に接触することを防止することができる。これにより、貯留空間31に貯留される液体が、上流側流路を流れる流体にミストとして再混合されることを低減することができる。
【0045】
デミスタユニット1をコンパクトに形成することができるので、EGRシステム2をコンパクトに形成することができ、エンジン本体3の近傍に設置することができる
【0046】
なお、本実施形態では、デミスタユニット1をEGRシステム2に適用する場合を一例として説明したが、本発明のデミスタユニットはこれに限定されるものではなく、例えばボイラ等の排ガス処理に用いられるものであれば適用することができる。
【0047】
邪魔板25は、デミスタ本体24が十分に適切に排ガスからミストを除去することができるときに、下端がデミスタ本体24の下端より上側に配置されるように形成されることができる。デミスタユニット1は、邪魔板25の下端がデミスタ本体24の下端より上側に配置された場合でも、邪魔板25が上流側流路32を屈曲させることにより、コンパクトに形成されることができる。
【0048】
また、本実施形態では、邪魔板25が鉛直方向に沿って設けられる構成として説明したが、下端が下流側(デミスタ本体24側)に所定角度傾斜した状体であっても良い。
【0049】
また、垂れ下がり板26は、デミスタ本体24が十分に適切に排ガスからミストを除去することができるときに、省略することができる。デミスタユニット1は、垂れ下がり板26が省略された場合でも、邪魔板25が上流側流路32を屈曲させることにより、コンパクトに形成されることができる。
【0050】
また、多孔板22は、上流側流路32を流れる排ガスが、貯留空間31に貯留されたミストを再度取り込まないときに、省略することができる。デミスタユニット1は、多孔板22が省略された場合でも、邪魔板25が上流側流路32を屈曲させることにより、コンパクトに形成されることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :デミスタユニット
2 :EGRシステム
7 :スクラバ
21:ケーシング
22:多孔板
23:デミスタ支持板
24:デミスタ本体
25:邪魔板
26:垂れ下がり板
28:デミスタユニット入口
29:デミスタユニット出口
31:貯留空間
32:上流側流路
33:下流側流路
図1
図2
図3
図4
図5