特許第6179807号(P6179807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179807
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ダイクッション制御装置と方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B21D24/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-206372(P2013-206372)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-66597(P2015-66597A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 穣
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−026738(JP,A)
【文献】 特開2007−030009(JP,A)
【文献】 特開平10−202327(JP,A)
【文献】 特開昭62−187600(JP,A)
【文献】 特許第4610635(JP,B2)
【文献】 特開2011−083782(JP,A)
【文献】 特開平05−285700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/02
B30B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイクッション装置の設定ストロークと設定クッション力の設定関係を入力可能であり、制御情報を表示する設定表示装置と、
前記設定関係から前記制御情報を演算し出力する演算制御装置と、を備え、
前記演算制御装置は、
プレス機械の制約条件を記憶する記憶部と、
前記設定関係から設定仕事量を演算する設定演算部と、
前記設定仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定する設定判定部と、
前記設定仕事量と前記設定判定部による設定判定結果を前記制御情報として出力する設定出力部と、を有し、
前記設定表示装置は、前記設定関係、設定仕事量及び設定判定結果を表示する、ことを特徴とするダイクッション制御装置。
【請求項2】
前記演算制御装置は、
プレス機械の作動中における実ストロークと実クッション力の実測関係を検出する実測検出部と、
前記実測関係から実測仕事量を演算する実測演算部と、
前記実測仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定する実測判定部と、
前記実測仕事量と前記実測判定部による実測判定結果を前記制御情報として出力する実測出力部と、を有し、
前記設定表示装置は、前記実測関係、実測仕事量及び実測判定結果を表示する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション制御装置。
【請求項3】
プレス機械の制約条件は、プレス機械のメインモータの定格仕事量、又はエネルギーを蓄積する装置の仕事量の一部又は全部を前記定格仕事量に加算した仕事量である、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション制御装置。
【請求項4】
ダイクッション装置の設定ストロークと設定クッション力の設定関係を入力可能であり、制御情報を表示する設定表示装置と、
前記設定関係から前記制御情報を演算し出力する演算制御装置と、を準備し、
前記演算制御装置により、
プレス機械の制約条件を記憶し、
前記設定関係から設定仕事量を演算し、
前記設定仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定し、
前記設定仕事量と前記判定による設定判定結果を前記制御情報として出力し、
前記設定表示装置により、前記設定関係、設定仕事量及び設定判定結果を表示する、ことを特徴とするダイクッション制御方法。
【請求項5】
前記演算制御装置により、
プレス機械の作動中における実ストロークと実クッション力の実測関係を検出し、
前記実測関係から実測仕事量を演算し、
前記実測仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定し、
前記実測仕事量と前記判定による実測判定結果を前記制御情報として出力し、
前記設定表示装置により、前記実測関係、実測仕事量及び実測判定結果を表示する、ことを特徴とする請求項4に記載のダイクッション制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械のダイクッション制御装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス機械(またはプレス)は、例えば上金型と下金型の間にワークを挟持し、その間にプレス力を作用させてワークを塑性変形させる塑性加工機械である。この加工をプレス加工と呼ぶ。
プレス機械は、機械プレス、油圧プレス、及びサーボプレスに大別される。また機械プレスは、プレス力を発生させる機構の相違により、クランク式とリンク式に区分される。
【0003】
ダイクッション装置は、プレス機械において上金型とブランクホルダの間にワークを挟みワークのしわ押さえ力(クッション力)を発生する装置である。
かかるダイクッション装置を制御する手段は、例えば特許文献1〜3に開示されている。
【0004】
特許文献1の「ダイクッション機構並びにその制御装置及び制御方法」は、サーボモータを駆動源として外部への力を生ずるダイクッション機構の制御装置である。また、特許文献1は、サーボモータの制御状態に関連して、ダイクッション機構が異常な力を生じることを防止する異常防止部を具備するものである。
【0005】
特許文献2の「プレス機械のダイクッション装置」は、サーボモータとボールネジの組合せにより制動部材を駆動するリニア駆動装置と、制動部材の速度を減速してクッションパッドに伝達する液圧式変速装置とを備えるものである。
【0006】
特許文献3の「プレス機械のプレス加工条件設定装置」は、金型情報とマシン情報から、エア圧を算出し、プレス加工条件としてのエアタンク内のエア圧がそのエア圧となるように給排気バルブを切換制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4610635号公報
【特許文献2】特開2011−83782号公報
【特許文献3】特開平5−285700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成形素材の多様化等の影響で、より細かなクッション力設定が可能になりつつあるが、逆に設定方法が複雑化して、システムの許容以上の能力で運転してしまう可能性がある。
クッション力や成形ストロークは、入力範囲設定で簡単にスペック範囲外になることを防止できるが、クッションの仕事量は、設定項目ではないので、チェックしていないか、クッション力の上限値にマージンを取るなどして対応していた。
【0009】
ダイクッション装置は、クッション力とそのクッション力を作用させるクッションストローク(以下、単に「ストローク」と呼ぶ)を予め設定する必要がある。このクッション力とストロークは、近年の成形素材の多様化に伴い、一定値でなく、複数のステップに分けて設定することが行なわれる。
【0010】
しかし、クッション力とストロークの設定は、ダイクッション装置の能力範囲で自由に設定できるため、クッション力やストロークの設定範囲を制限した場合でも、ダイクッション装置による消費エネルギーが過大となることがあった。そのため、プレス機械の運転中に、プレス速度が低下したり、プレス加工中で停止したりすることがあった。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、プレス機械のプレス速度の低下やプレス加工中の停止を防止し、かつクッション力とストロークをプレス機械の制約条件を満たす範囲で自由に設定することができるダイクッション制御装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、ダイクッション装置の設定ストロークと設定クッション力の設定関係を入力可能であり、制御情報を表示する設定表示装置と、
前記設定関係から前記制御情報を演算し出力する演算制御装置と、を備え、
前記演算制御装置は、
プレス機械の制約条件を記憶する記憶部と、
前記設定関係から設定仕事量を演算する設定演算部と、
前記設定仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定する設定判定部と、
前記設定仕事量と前記設定判定部による設定判定結果を前記制御情報として出力する設定出力部と、を有し、
前記設定表示装置は、前記設定関係、設定仕事量及び設定判定結果を表示する、ことを特徴とするダイクッション制御装置が提供される。
【0013】
前記演算制御装置は、
プレス機械の作動中における実ストロークと実クッション力の実測関係を検出する実測検出部と、
前記実測関係から実測仕事量を演算する実測演算部と、
前記実測仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定する実測判定部と、
前記実測仕事量と前記実測判定部による実測判定結果を前記制御情報として出力する実測出力部と、を有し、
前記設定表示装置は、前記実測関係、実測仕事量及び実測判定結果を表示する。
【0014】
プレス機械の制約条件は、プレス機械のメインモータの定格仕事量、又はエネルギーを蓄積する装置の仕事量の一部又は全部を前記定格仕事量に加算した仕事量である。
【0015】
また本発明によれば、ダイクッション装置の設定ストロークと設定クッション力の設定関係を入力可能であり、制御情報を表示する設定表示装置と、
前記設定関係から前記制御情報を演算し出力する演算制御装置と、を準備し、
前記演算制御装置により、
プレス機械の制約条件を記憶し、
前記設定関係から設定仕事量を演算し、
前記設定仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定し、
前記設定仕事量と前記判定による設定判定結果を前記制御情報として出力し、
前記設定表示装置により、前記設定関係、設定仕事量及び設定判定結果を表示する、ことを特徴とするダイクッション制御方法が提供される。
【0016】
前記演算制御装置により、
プレス機械の作動中における実ストロークと実クッション力の実測関係を検出し、
前記実測関係から実測仕事量を演算し、
前記実測仕事量が前記制約条件を満たすか否かを判定し、
前記実測仕事量と前記判定による実測判定結果を前記制御情報として出力し、
前記設定表示装置により、前記実測関係、実測仕事量及び実測判定結果を表示する。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の装置と方法によれば、設定演算部により設定ストロークと設定クッション力の設定関係から設定仕事量を演算し、設定判定部により設定仕事量がプレス機械の制約条件を満たすか否かを判定する。従って、設定表示装置により、設定関係、設定仕事量及び設定判定結果を表示することにより、プレス速度の低下やプレス加工中の停止をプレス機械の作動前に認識することができる。
これにより、プレス速度の低下やプレス加工中の停止を防止し、かつクッション力とストロークを、プレス機械の作動前に、プレス機械の制約条件を満たす範囲で自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ダイクッション装置を備えたプレス機械の全体構成図である。
図2】ダイクッション装置と本発明によるダイクッション制御装置との関係を示す図である。
図3】本発明によるダイクッション制御装置の模式図である。
図4】本発明によるダイクッション制御方法の全体フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、ダイクッション装置10を備えたプレス機械Pの全体構成図である。
この図において、プレス機械Pは、ボルスタ1の上面に固定された下金型2に対し、上下動するスライド3の下面に固定された上金型4を下降させる。これによりプレス機械Pは、下金型2と上金型4との間で図示しないワーク(被加工材:ブランクとも呼ぶ)を加圧して所定の形状にプレス成形するようになっている。
この場合、下金型2は、ボルスタ1に支持され、ボルスタ1はベッド8によって支持され、ベッド8がプレス成形荷重を受ける。
【0021】
また、上金型4および下金型2によりワークをプレス成形する際に、ワークを保持するブランクホルダ5がクッションピン6を介してクッションパッド7により支持される。
ブランクホルダ5は、ワークのプレス成形時に上金型4との間でワークを保持するものであり、ワーク下面の周縁部を支持してワークのしわ押さえを行う。
クッションピン6は、ボルスタ1を貫通して上下に延びる昇降移動可能な棒状の部品である。
クッションパッド7は、上面でクッションピン6を支持している。クッションパッド7は、ブランクホルダ5の下方に位置し、ブランクホルダ5と同期して上下動する。
上述した構成によりブランクホルダ5、クッションピン6、及びクッションパッド7は、全体として一体となって上下動する。
【0022】
ダイクッション装置10は、プレス機械Pの上金型4とブランクホルダ5の間にワーク(被加工材)を挟み、ブランクホルダ5にクッションピン6とクッションパッド7を介して上向きのクッション力fを付加しながらこれらを上下動させる装置である。
【0023】
図1において、ダイクッション装置10は、油圧クッション12と、空圧クッション20とを備える。
【0024】
油圧クッション12は、リニア駆動装置14と液圧式変速装置16とを備える。
【0025】
リニア駆動装置14は、サーボモータ14aとボールネジ14bの組合せにより制動部材15を所定の直線に沿って駆動可能であり、かつ制動部材15の直線運動からエネルギーを回生可能に構成されている。
【0026】
液圧式変速装置16は、クッションパッド7の上下動を封入された液圧を介してリニア駆動装置14の制動部材15の直線運動に増速し、かつ制動部材15の直線運動を液圧を介してクッションパッド7の上下動に減速するようになっている。
液圧式変速装置16は、大径ピストン17、小径ピストン18、及びパスカルシリンダ19を有する。
大径ピストン17は、クッションパッド7の下方に位置し、ブランクホルダ5と共に上下動可能に構成されている。
小径ピストン18は、リニア駆動装置14の制動部材15に連結され、これと共に直線運動する。
パスカルシリンダ19は、大径ピストン17及び小径ピストン18をそれぞれ独立して軸方向に移動可能に案内し、その間に非圧縮性の作動液が封入されている。
【0027】
空圧クッション20は、空圧シリンダ21、空圧タンク22、電磁弁23、開閉弁24を有し、空圧源25から空圧シリンダ21に所定圧力の空気を供給し排気するようになっている。
【0028】
ダイクッション装置10は、さらにダイクッション装置10の作動中におけるストロークsを検出するストローク検出装置26と、クッション力fを検出するクッション力検出装置28とを備える。
ストローク検出装置26は、この例ではクッションパッド7に取り付けられたリニアエンコーダであり、クッションパッド7の上下の移動量をリアルタイムに出力する。なお、ストローク検出装置26は、この例に限定されず、その他の構成のセンサであってもよい。
クッション力検出装置28は、この例では、パスカルシリンダ19内の圧力(大径ピストン17と小径ピストン18の間の圧力)を検出する液圧センサ28aと、空圧シリンダ21内の圧力を検出する空圧センサ28bである。なお、クッション力検出装置28は、この例に限定されず、その他の構成のセンサであってもよい。
【0029】
また、本発明は、上述したダイクッション装置10に限定されず、その他の周知のダイクッション装置であってもよい。以下、上述したダイクッション装置10を用いて本発明を説明する。
【0030】
図2は、ダイクッション装置10と本発明によるダイクッション制御装置30との関係を示す図である。
この図において、29は、ダイクッション装置10のストロークsとクッション力fを制御するクッションコントローラである。
【0031】
図3は、本発明によるダイクッション制御装置30の模式図である。
この図において、本発明のダイクッション制御装置30は、設定表示装置32と演算制御装置34を備える。
【0032】
設定表示装置32は、ダイクッション装置10の設定ストロークs1と設定クッション力f1の設定関係A1を入力可能であり、かつ制御情報Bを表示するようになっている。なお、「設定ストロークs1」とは、設定するストロークsを意味し、「設定クッション力f1」とは設定するクッション力fを意味する。
設定関係A1の入力は、オペレータ(人)により手動で行うのが好ましいが、その他の手段、例えば外部コンピュータからの入力であってもよい。
【0033】
設定表示装置32は、この例ではタッチパネル式のディスプレイである。設定関係A1は、この例では、ステップ1〜8にそれぞれ対応する設定ストロークs1と設定クッション力f1であり、表又はグラフで入力するようになっている。なお、設定関係A1は、設定クッション力f1と設定ストロークs1との関係を表す曲線であってもよい。
また、設定表示装置32は、設定ストロークs1と設定クッション力f1の設定関係A1を制御情報Bの一部として、表又はグラフで表示する。なお、制御情報Bの詳細は後述する。
【0034】
演算制御装置34は、例えばコンピュータ(PC)であり、入力された設定関係A1から制御情報Bを演算し出力する。
【0035】
図3において、演算制御装置34は、記憶部35a、設定演算部35b、設定判定部35c、及び設定出力部35dを有する。
【0036】
記憶部35aは、プレス機械Pの制約条件Cを記憶する。
ここでプレス機械Pの制約条件Cは、プレス機械Pのメインモータの定格仕事量を最大仕事量CMとして設定するのがよい。
また、プレス機械Pがエネルギーを蓄積する装置、例えばフライホイールを有している場合には、エネルギーを蓄積する装置(すなわちフライホイール)の仕事量の一部又は全部をメインモータの定格仕事量に加算した仕事量を最大仕事量CMとして設定してもよい。
さらに、ワークのプレス加工に要する仕事量(ワーク加工仕事量)が既知又は予測できる場合には、ワーク加工仕事量を上述した仕事量から減算した仕事量を最大仕事量CMとして設定してもよい。
【0037】
設定演算部35bは、入力された設定関係A1から設定仕事量W1を演算する。設定仕事量W1は、設定関係A1における設定ストロークs1と設定クッション力f1を積算することにより求める。なお、設定関係A1が、設定クッション力f1と設定ストロークs1との関係を表す曲線である場合には、曲線を表す式を積分することで設定仕事量W1を求めるのがよい。
【0038】
設定判定部35cは、演算により求めた設定仕事量W1がプレス機械Pの制約条件Cを満たすか否かを判定する。すなわち、設定仕事量W1を最大仕事量CMと比較し、設定仕事量W1が最大仕事量CMより小さい場合には、「制約条件Cを満たす」と判断し、設定仕事量W1が最大仕事量CMと等しいかこれより大きい場合には、「制約条件Cを満たさない」と判断する。
設定出力部35dは、演算により求めた設定仕事量W1と設定判定部35cによる設定判定結果を制御情報Bとして出力する。
【0039】
設定表示装置32は、入力された設定関係A1、演算により求めた設定仕事量W1及び設定判定部35cによる設定判定結果を表示する。
設定判定結果は、「制約条件Cを満たさない」場合には、音又は色により、注意を促すアラーム表示であるのがよい。
【0040】
図3において、演算制御装置34は、さらに実測検出部36a、実測演算部36b、実測判定部36c、及び実測出力部36dを有する。
【0041】
実測検出部36aは、上述したストローク検出装置26とクッション力検出装置28の検出データを受信し、実ストロークs2と実クッション力f2の実測値からその関係(実測関係A2)をリアルタイムで検出する。
なお、「実ストロークs2」とは実測されたストロークsを意味し、「実クッション力f2」とは実測されたクッション力fを意味する。
【0042】
実測演算部36bは、検出された実測関係A2から実測仕事量W2を演算する。実測仕事量W2は、実測関係A2における実ストロークs2とを積算することにより求める。なお、実測関係A2が、f2=g2(s2)で表す曲線の場合には、これを積分することで実測仕事量W2を求めるのがよい。
【0043】
実測判定部36cは、演算により求めた実測仕事量W2が上述したプレス機械Pの制約条件Cを満たすか否かを判定する。すなわち、実測仕事量W2を最大仕事量CMと比較し、実測仕事量W2が最大仕事量CMより小さい場合には、「制約条件Cを満たす」と判断し、実測仕事量W2が最大仕事量CMと等しいかこれより大きい場合には、「制約条件Cを満たさない」と判断する。
実測出力部36dは、演算により求めた実測仕事量W2と実測判定部36cによる実測判定結果を制御情報Bとして出力する。
【0044】
設定表示装置32は、実ストロークs2と実クッション力f2の実測関係A2、演算により求めた実測仕事量W2及び実測判定部36cによる実測判定結果を表示する。
実測判定結果は、「制約条件Cを満たさない」場合には、音又は色により、注意を促すアラーム表示であるのがよい。また、プレス速度の低下やプレス加工中の停止の可能性がある場合には、アラーム表示と共に、プレス機械Pを所定のサイクル位置(例えば復帰位置)でサイクル停止させてもよい。
【0045】
図4は、本発明によるダイクッション制御方法の全体フロー図である。この図に示すように、本発明のダイクッション制御方法はS1〜S11の各ステップ(工程)からなる。
【0046】
本発明のダイクッション制御方法では、上述した設定表示装置32と演算制御装置34を準備する。
【0047】
ステップS1〜S6は、プレス機械Pの作動前の動作を示している。
ステップS1では、演算制御装置34により、プレス機械Pの制約条件Cを記憶する。
ステップS2では、設定表示装置32により、ダイクッション装置10の設定ストロークs1と設定クッション力f1の設定関係A1を入力する。
ステップS3では、設定関係A1から設定仕事量W1を演算する。
ステップS4では、設定仕事量W1が制約条件Cを満たすか否かを判定する。
ステップS5では、設定仕事量W1と設定判定部35cによる設定判定結果を制御情報Bとして出力する。
ステップS6では、設定表示装置32により、設定関係A1、設定仕事量W1及び設定判定結果を表示する。
【0048】
ステップS7〜S11は、プレス機械Pの作動中の動作を示している。
ステップS7では、ダイクッション装置10の作動中における実ストロークs2と実クッション力f2の実測関係A2を検出する。
ステップS8では、実測関係A2から実測仕事量W2を演算する。
ステップS9では、実測仕事量W2が制約条件Cを満たすか否かを判定する。
ステップS10では、実測仕事量W2と実測判定部36cによる実測判定結果を制御情報Bとして出力する。
ステップS11では、設定表示装置32により、実測関係A2、実測仕事量W2及び実測判定結果を表示する。
【0049】
上述した本発明の装置と方法によれば、設定演算部35bにより設定ストロークs1と設定クッション力f1の設定関係A1から設定仕事量W1を演算し、設定判定部35cにより設定仕事量W1がプレス機械Pの制約条件Cを満たすか否かを判定する。従って、設定表示装置32により、設定関係A1、設定仕事量W1及び設定判定結果を表示することにより、プレス速度の低下やプレス加工中の停止をプレス機械Pの作動前に認識することができる。
これにより、プレス速度の低下やプレス加工中の停止を防止し、かつ設定クッション力f1と設定ストロークs1を、プレス機械Pの作動前に、プレス機械Pの制約条件Cを満たす範囲で自由に設定することができる。
【0050】
また、プレス機械Pの作動中において、実測演算部36bにより実ストロークs2と実クッション力f2の実測関係A2から実測仕事量W2を演算し、実測判定部36cにより実測仕事量W2が制約条件Cを満たすか否かを判定する。従って、プレス機械Pの作動中に、設定表示装置32により、実測関係A2、実測仕事量W2及び実測判定結果を表示することにより、プレス速度の低下やプレス加工中の停止を未然に防止することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0052】
A1 設定関係、A2 実測関係、B 制御情報、C 制約条件、
CM 最大仕事量、f クッション力、f1 設定クッション力、
f2 実クッション力、P プレス機械、s ストローク、
s1 設定ストローク、s2 実ストローク、W1 設定仕事量、
W2 実測仕事量、1 ボルスタ、2 下金型、3 スライド、
4 上金型、5 ブランクホルダ、6 クッションピン、
7 クッションパッド、8 ベッド、10 ダイクッション装置、
12 油圧クッション、14 リニア駆動装置、14a サーボモータ、
14b ボールネジ、15 制動部材、16 液圧式変速装置、
17 大径ピストン、18 小径ピストン、19 パスカルシリンダ、
20 空圧クッション、21 空圧シリンダ、22 空圧タンク、
23 電磁弁、24 開閉弁、25 空圧源26 ストローク検出装置、
28 クッション力検出装置、28a 液圧センサ、28b 空圧センサ、
29 クッションコントローラ、30 ダイクッション制御装置、
32 設定表示装置、34 演算制御装置、35a 記憶部、
35b 設定演算部、35c 設定判定部、35d 設定出力部、
36a 実測検出部、36b 実測演算部、36c 実測判定部、
36d 実測出力部
図1
図2
図3
図4