(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179891
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】生産方法、加工方法、加工品及び茶
(51)【国際特許分類】
A23B 7/02 20060101AFI20170807BHJP
F26B 5/16 20060101ALI20170807BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20170807BHJP
A23F 3/14 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A23B7/02
F26B5/16
A23L19/00 A
A23F3/14
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-112719(P2013-112719)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-230509(P2014-230509A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】513135082
【氏名又は名称】有持 要
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】有持 要
【審査官】
野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/105568(WO,A1)
【文献】
特開2005−204586(JP,A)
【文献】
特開昭61−100155(JP,A)
【文献】
特開2001−071695(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/048866(WO,A1)
【文献】
特開2012−065648(JP,A)
【文献】
実開昭49−050580(JP,U)
【文献】
特開2001−302401(JP,A)
【文献】
特開2006−158279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00− 3/42
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法であって、
木製の吸水材が前記果皮に接触した状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、生産方法。
【請求項2】
前記乾燥ステップの前に、アルベドを付けたまま前記果皮を切り取る切取ステップをさらに含み、
前記乾燥ステップにおいて、前記吸水材で前記果皮を外皮の側と前記アルベドの側の両側から挟み込んで、前記果皮に圧力をかけることにより前記切取ステップで切り取られた形状を維持しつつ前記果皮を乾燥させる、請求項1記載の生産方法。
【請求項3】
前記吸水材は、柾目の経木であり、
前記乾燥ステップにおいて、吸湿性のプレス材が前記吸水材に接触した状態で前記プレス材及び前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかける、請求項2記載の生産方法。
【請求項4】
前記乾燥ステップにおいて、前記切り取られた形状が有する前記アルベドが付いたままの複数の箇所同士を接触させた状態で、前記果皮に圧力をかけることにより前記果皮を乾燥させる、請求項2又は3記載の生産方法。
【請求項5】
前記乾燥ステップにおいて、前記吸水材及び前記果皮を共に密封した状態で、前記果皮に圧力をかけることにより前記果皮を乾燥させる、請求項1から4のいずれかに記載の生産方法。
【請求項6】
前記吸水材は、スギを原料とする、請求項1から5のいずれかに記載の生産方法。
【請求項7】
柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法であって、
前記果皮にアルベドを付けたまま文字の形に切り取る切取ステップと、
木製の吸水材が前記果皮に接触する状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、生産方法。
【請求項8】
柑橘類の果皮を飲食に用いられる加工品に加工する加工方法であって、
木製の吸水材が前記果皮に接触した状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産方法、加工方法、加工品及び茶に関するものであり、特に、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法等に関する。なお、本願において「飲食に用いられる加工品」とは、成分を抽出するための加工品を含む。そのような加工品の例としては、茶の葉やだしが含まれる。すなわち、そのものを食することが主な目的ではなく、それらに含まれる成分を抽出することを主な目的とする加工品が含まれる。
【背景技術】
【0002】
柑橘類の果実は、主に比較的堅い果皮、やわらかく果肉を包む内皮、果肉及び種子から構成されている。また、果皮は、主に外から見える、オレンジ色の部分(以下、「外皮」と表記)と、白い繊維質の部分(以下、「アルベド」と表記)から構成されている。
【0003】
従来、果皮と果肉が一体となったまま柑橘類を乾燥させることで長期間高品質を維持できる食品を提供する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、柑橘系果実に対してカット処理及び流体加熱や真空凍結の乾燥処理を施すことが記載されている。
【0004】
また、柑橘類の果皮を遠赤外線乾燥装置等による加熱により乾燥させ、柑橘類の果皮が有する香り、色、質感を活かしたポプリの製造方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/098333号
【特許文献2】特開2000−245817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、柑橘類の果皮を精密に成形加工した場合、わずかな温度変化でも果皮が変形する。そのため、せっかく文字や図形のような形状に加工しても、長期間にわたって見て鑑賞することができなくなる。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、果皮と果実とを併せて食するための技術である。そのため、カット処理としては、0019段落に記載されているように、「輪切り、いちょう切り、斜め切り、くし形切り等の切り方」のように単に細分化のためのカット処理が例示されている。精密に成形加工することが想定されていない。また、0024段落に記載されているように、「果皮を軟化」させるために、「沸騰水又は約100℃の0.2〜10%アルカリ溶液中で30秒〜5分」といった高温での加熱が想定されている。さらに、0030段落に記載されているように、乾燥処理のために、50〜70℃の熱風での加熱や、真空凍結乾燥等の処理が想定されている。このような処理は、精密に成形加工した果皮の形状を変形・変質させることが予想される。
【0008】
特許文献2に記載の技術も、0005段落において、「好みの形状にデザインすることができる」とあるものの、「リーフ(葉)形、短冊形、三角形、円形等」とされているように、比較的簡単な形状が想定されていた。精密に成形加工した形状を保存しつつ乾燥させることが想定されていない。また、特許文献2に記載の技術も、例えば0004段落に「遠赤外線装置を用いて30〜70℃で乾燥する」とあるように、加熱により乾燥させる技術である。
【0009】
以上のとおり、従来は、温度条件を変更する以外の方法で果皮を乾燥させることによりその形状を保存する乾燥方法や、精密に成形された形状を保存しつつ果皮を乾燥して飲食に用いられる加工品を生産する生産方法が開発されていなかった。しかも、柑橘類の果皮をあくまで飲食に用いられる加工品として提供する場合、安全性にも配慮して加工する必要がある。
【0010】
ゆえに、本発明は、精密に成形加工した柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法であって、果皮の形状を保存する乾燥処理を施すことで長期間にわたって見た目にも鑑賞に堪える加工品の生産方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法であって、木製の吸水材が前記果皮に接触した状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、生産方法である。
【0012】
本発明の第2の観点は、第1の観点の生産方法であって、前記乾燥ステップの前に、アルベドを付けたまま前記果皮を切り取る切取ステップをさらに含み、前記乾燥ステップにおいて、前記吸水材で前記果皮を外皮の側と前記アルベドの側の両側から挟み込んで、前記果皮に圧力をかけることにより前記切取ステップで切り取られた形状を維持しつつ前記果皮を乾燥させる。
【0013】
本発明の第3の観点は、第2の観点の生産方法であって、前記吸水材は、柾目の経木であり、前記乾燥ステップにおいて、吸湿性のプレス材が前記吸水材に接触した状態で前記プレス材及び前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかける。
【0014】
本発明の第4の観点は、第2又は第3の観点の生産方法であって、前記乾燥ステップにおいて、前記切り取られた形状が有する前記アルベドが付いたままの複数の箇所同士を接触させた状態で、前記果皮に圧力をかけることにより前記果皮を乾燥させる。
【0015】
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の生産方法であって、前記乾燥ステップにおいて、前記吸水材及び前記果皮を共に密封した状態で、前記果皮に圧力をかけることにより前記果皮を乾燥させる。
【0016】
本発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の生産方法であって、前記吸水材は、スギを原料とする。
【0017】
本発明の第7の観点は、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法であって、前記果皮にアルベドを付けたまま文字の形に切り取る切取ステップと、木製の吸水材が前記果皮に接触する状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、生産方法である。
【0018】
本発明の第8の観点は、柑橘類の果皮を飲食に用いられる加工品に加工する加工方法であって、木製の吸水材が前記果皮に接触した状態で前記吸水材越しに前記果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して前記果皮を乾燥させる乾燥ステップを含む、加工方法である。
【0019】
本発明の第9の観点は、柑橘類の果皮から加工されて飲食に用いられる加工品であって、前記果皮の複数の箇所のアルベドが接着して立体的に成形された状態で乾燥したものである、加工品である。
【0020】
本発明の第10の観点は、第1から第7のいずれかの観点の前記生産方法により生産された前記加工品を含むか、第8の観点の前記加工方法により加工された前記柑橘類の果皮を含むか、又は、第9の観点の前記加工品を含む、茶である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の各観点によれば、柑橘類の果皮を精密に成形加工しても、木の吸水性を利用しつつ圧力をかけることにより、果皮の形を崩すことなく乾燥させることが可能となる。そのため、乾燥した状態で長期間にわたって鑑賞に堪える加工品であって、飲食に用いられる茶等の加工品を柑橘類の果皮から生産することが可能となる。
【0022】
発明者は、精密に成形加工した柑橘類の果皮を乾燥させる際、果皮の形状の美しさを損なう変形を避けられる乾燥方法を長期間検討してきた。その過程で、特に、精密に成形加工した果皮の形状を崩さない吸水材の材質を長期間検討してきた。結果として、木製の吸水材を用いたプレス乾燥が最適との知見に達した。木製の吸水材の優れた点としては、少なくとも、果皮と張り付かず、果皮の水分を吸収し、果皮の発色を損なわず、さらに食用となる果皮の安全性を保つ点が挙げられる。また、乾燥時の加熱が不要となるため、精密に成形加工した果皮のわずかな変形、変色又は変質も避けられる。
【0023】
また、本発明の第2又は第7の観点によれば、木製の吸水材で果皮を両側から挟み込んで乾燥させる。木製の吸水材であれば、果皮に付着力の強いアルベドを残していても、精密に加工した果皮の形を崩さずに、乾燥後の果皮をアルベドごと吸水材からはがすことが容易である。特に、第7の観点によれば、生産される加工品が文字の形状をしている。このため、温度変化による少しのねじれや歪みも許されないところ、柔軟性及び靱性のあるアルベドを果皮に残したまま切り取ることで、文字の形状を確保することが可能となる。しかも、圧力をかけて果皮の厚みを同程度とすることにより可読性を高めることが容易となる。
【0024】
さらに、本発明の第3の観点によれば、吸湿性のプレス材が吸水材の水分を吸うことにより、吸水材が前記果皮を乾燥させることが容易となる。しかも、吸水材の木目を柾目とすることにより、吸水材の厚みを介してもプレス材に果皮を乾燥させることが容易となる。さらに、経木のような薄板を用いることにより、プレス材に果皮を乾燥させることがさらに容易となる。
【0025】
さらに、本発明の第4及び第9の観点によれば、2次元的な柑橘類の果皮から3次元的な立体を含めて成形することが可能となる。アルベドの接着作用を利用することにより、人体に有害な接着剤が不要である。しかも、このようにして接着した果皮は、お湯に付けても接着した形状を保つことができる。そのため、成形した加工品を茶などの飲食に用いられる加工品として供給することが可能となる。
【0026】
さらに、本発明の第5の観点によれば、吸水材が果皮の水分のみを吸収するため、効果的に乾燥させることが可能となる。
【0027】
さらに、本発明の第6の観点によれば、特に効果的に乾燥させることが可能である。飲食に用いられる加工品の生産にスギの殺菌性が有効となるためである。また、同じく殺菌性で知られる赤松やヒノキよりも木の香りが少なく、加工品への移り香が少なくなるため、果皮を乾燥させて飲食に用いられる加工品(茶等)を生産する上で特に有用といえる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願発明の実施例に係る、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法のフロー図である。
【
図2】
図1のフロー図における乾燥ステップの概要を示す図である。
【
図3】本願発明の実施例に係る生産方法により生産された柑橘類の果皮を乾燥した加工品の例を示す図であり、(a)「HAPPY」の文字を形成したもの、(b)「オメデトウ」の文字を形成したもの、(c)「GOODLUCK」の文字を形成したもの、(d)カエルの図形を形成したもの、(e)メガネの立体形状を形成したものを例示した図である。
【
図4】本願発明に係る方法とは異なる方法により生産された加工品を比較例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
図1及び
図2を参照して、本願発明の実施例に係る、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法のフローについて説明する。
図1は、本願発明の実施例に係る、柑橘類の果皮から飲食に用いられる加工品を生産する生産方法のフロー図である。
図2は、
図1のフロー図における乾燥ステップの概要を示す図である。
【0031】
まず、柑橘類の果皮を切り取りたい形状に合わせて、型を作製する(ステップST001)。続いて、作製した型を用いて、果皮にアルベドが付いた状態のまま果皮を型抜きする(ステップST002)。
【0032】
続いて、
図2に示すように、型抜きした果皮1を外皮3の側とアルベド5の側の両側からスギを原料とする薄い木製シート7
1及び7
2(本願請求項における「吸水材」の一例)で挟み込み、さらに塩化ナトリウムを染み込ませたパルプシート9
1及び9
2(本願請求項における「プレス材」の一例)で両側から挟み込む(ステップST003)。果皮1、木製シート7、パルプシート9が空気中の水分を吸わないように、挟んだ状態のまま水分を通さない袋11に密封する(ステップST004)。密封した袋の上から2〜3kgの重りを乗せて加圧しながら室温で1日程度静置する(ステップST005)。これにより、吸水材及びパルプシートに水分を吸わせて果皮を乾燥させる。ステップST002は、本願請求項における「切取ステップ」の一例である。ステップST003からステップST005は、全体として本願請求項における「乾燥ステップ」の一例である。
【0033】
ここで、柑橘類としては、加工のしやすさ、形の崩れにくさ、発色のよさなどを考慮し、ネーブルオレンジの果皮を用いた。型は、果皮を型抜きしやすいように、エッジに刃が作りこまれたものを用いた。
【0034】
吸水材は、果皮と張り付かず、果皮の水分を吸収し、果皮の発色を損なわないことが必要である。さらに飲食に用いられる果皮の安全性を保つ必要もある。これらの観点から、木製のもの、特に、針葉樹であるスギを原料とする薄い木製シート7を用いた。具体的には、木製シート7として、木目が柾目の経木を用いた。これは、柾目であれば果皮の水分が木製シート7の厚み方向に容易に透過し、パルプシート9に吸わせることが容易となるためである。また、経木のような薄板を用いることにより、水分の木製シート7の透過がさらに容易となる。木製シート7が果皮に接触した状態で果皮に圧力をかけることにより、木の吸水性を利用して果皮を乾燥させた。また、塩化ナトリウムを染み込ませたパルプシート9を木製シート7に接触させたまま力をかけることにより、木製シート7の吸水性を高く維持した。
【0035】
また、果皮1にアルベド5が付いた状態のまま果皮1を切り取るのは、精密に切り抜きをした果皮1の形状を維持するためである。外皮3は、鑑賞性に欠かせない部分であるが、熱による収縮率が高く、乾燥後にもろくなってしまう。一方、アルベド5が果皮1に付着していれば、柔軟性、靱性を果皮1に与える。
【0036】
生産された乾燥後の柑橘類の果皮は、
図3に例示するとおり、乾燥した状態の茶の材料と合わせてパッケージに入れることにより、見て鑑賞に堪える茶とすることができる。
図3は、生産された柑橘類の果皮を乾燥した加工品の例を示す図であり、(a)「HAPPY」の文字を形成したもの、(b)「オメデトウ」の文字を形成したもの、(c)「GOODLUCK」の文字を形成したもの、(d)カエルの図形を形成したもの、(e)メガネの立体形状を形成したものを例示した図である。なお、
図3(d)に示すカエルの図形は、かぼすの果皮を原料とした。
図3(e)に示すとおり、本願発明に係る生産方法により、柑橘類の果皮で立体形状を形成することも可能である。
【0037】
図3に示すパッケージは、それぞれ手の平サイズの大きさである。果皮の文字13や果皮の図形15は、それぞれ非常に細い線状の部分を含んでいることが分かる。果皮を適切に乾燥しなければ、外皮が変色したりアルベドから遊離したりする等の不具合が生じる。本願発明に係る生産方法は、そのような不具合を生じずに鑑賞に堪える加工品を柑橘類の果皮から生産可能とするものである。
【0038】
図4に、本願発明に係る生産方法とは異なる生産方法により生産した加工品を比較例として示す。木製シート7及びパルプシート9を用いない自然乾燥を行った場合、必要な乾燥時間は、温度・湿度により大きく影響された上に本実施例に係る方法よりも多くの時間を要した。さらに、加工品17及び19は、大きく変形してしまい、多少の退色が見られた(
図4(a))。同じく圧力をかけずに加熱(80-90℃、30分)した場合、加工品21は、変形した上に黒く変色した(
図4(b))。また、加熱の結果、果皮の芳香が損なわれた。アルベドを除去して他の工程は本願発明に係る生産方法と同じように加工した場合、加工品23の強度が低下して破損した(
図4(c))。吸水材として木製シート7の代わりにキッチンペーパー又はレーヨン紙を用いた場合、加工品25及び27に紙が張りついた。また、加工品25のように、紙をはがす際に破損したものもあった(
図4(d))。
【0039】
なお、柑橘類としては、加工品の生産に適するものであれば何を用いてもよいが、加工性の良さの観点から、ネーブルオレンジ以外では、タンジェロ、かぼす等が好ましい。
【0040】
また、密封に用いる器としては、外からプレス材及び吸水材を介して果皮に圧力をかけられればよい。例えば、可塑性又は弾性の袋でもよいし、可塑性又は弾性の容器でもよい。また、器は、器外からの水分の透過を防ぐものが好ましい。
【0041】
さらに、吸水材としては、飲食に用いるための果皮の安全性を損なわず、果皮の水分を吸収することができるものであれば、他の材料を用いてもよい。
【0042】
さらに、ステップST002とステップST003の間に、果皮の切り取られた形状が有するアルベドが付いたままの複数の箇所同士を接触させてもよい。アルベド同士を接触させて圧力をかけて乾燥させることにより、人体に有害な接着剤などを用いずとも果皮の任意の箇所同士を接着させることが可能である。このようにして接着した果皮は、お湯に付けても接着した形状を保つことができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・果皮、3・・・外皮、5・・・アルベド、7・・・木製シート、9・・・パルプシート、11・・・袋、13・・・果皮の文字、15・・・果皮の図形