特許第6180008号(P6180008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180008静体状態に応じてデータパケットの送信優先度を制御する携帯端末、システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6180008
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】静体状態に応じてデータパケットの送信優先度を制御する携帯端末、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20170807BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20170807BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H04M1/00 R
   H04M11/04
   G08B21/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-64248(P2017-64248)
(22)【出願日】2017年3月29日
【審査請求日】2017年4月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年度福岡工業大学情報工学部情報通信工学科予稿集第67頁及び第83頁に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 法彦
(72)【発明者】
【氏名】重留 天斗
(72)【発明者】
【氏名】新谷 尭弘
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−173307(JP,A)
【文献】 特開2015−090557(JP,A)
【文献】 特開2014−229177(JP,A)
【文献】 後藤 亮文,“屋内環境における移動ユーザを優先中継ノードとするDTNの情報転送方式の提案”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年 1月17日,第112巻,第404号,p.69-74
【文献】 加藤 裕介,“配信優先度を考慮した蓄積運搬転送型通信による災害時情報配信システムの提案”,情報処理学会 研究報告 グループウェアとネットワークサービス(GN) 2015−GN−093 [online],日本,情報処理学会,2015年 1月19日,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 19/00−31/00
H04B 7/24− 7/26
H04M 1/00
H04M 1/24− 3/00
H04M 3/16− 3/20
H04M 3/38− 3/58
H04M 7/00− 7/16
H04M 11/00−11/10
H04M 99/00
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに所持される携帯端末において、
所定条件に該当した後、測位部によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動するデータパケット送信発動手段と、
前記位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する静体検知手段と、
前記静体状態が検知された際に、前記データパケットに含める優先度を高く設定する優先度制御手段と、
ネットワークの接続が確認された際に、前記優先度が高いデータパケットから順に送信するデータパケット送信手段と
を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記優先度制御手段は、前記静体検知手段によって前記静体状態にない場合、前記データパケットに含める優先度を低く設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記データパケット送信手段は、蓄積運搬転送方式のDTN(Delay/Disruption-Tolerant Networking)プロトコルに基づくものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記静体検知手段は、前記所定時間毎に実行され、先の時刻に測位された位置情報を中心とした所定位置範囲に、現に測位された位置情報が含まれる場合、「静体状態」を検知し、
前記優先度制御手段は、前記データパケット送信発動手段から入力されたデータパケットを一定期間保持すると共に、前記静体検知手段によって静体状態にあると検知される毎に、前記優先度が高くなるように増分したデータパケットを繰り返し、前記データパケット送信手段へ出力する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記データパケット送信手段は、異なるデータ長の複数のバンドルを備えており、前記優先度が高いデータパケットほど、データ長が短いバンドルを用いて送信する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記データパケット送信手段は、異なる誤り耐性の冗長符号を付与可能なものであり、前記優先度が高いデータパケットほど、誤り耐性が高い冗長符号を付与する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記データパケット送信手段は、疎通確認パケットを送信し且つ応答を受信することによって、ネットワークの接続を確認する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記データパケット送信発動手段における前記所定条件は、
ユーザによって当該携帯端末に対して前記データパケットの送信発動が操作された際、
携帯電話網からの緊急地震速報に基づくメッセージを受信した際、又は、
加速度センサによって地震に相当する揺れを検知した際
であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の複数の携帯端末と、前記データパケットの宛先となる所定サーバとを有するシステムであって、
前記所定サーバは、複数の携帯端末から受信したデータパケットを、前記優先度順に、オペレータに明示する
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
ユーザに所持される携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
所定条件に該当した後、測位部によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動するデータパケット送信発動手段と、
前記位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する静体検知手段と、
前記静体状態が検知された際に、前記データパケットに含める優先度を高く設定する優先度制御手段と、
ネットワークの接続が確認された際に、前記優先度が高いデータパケットから順に送信するデータパケット送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする携帯端末用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データパケットの送信優先度を制御する技術に関する。特に、大規模災害時に、無線ネットワークを介して安否情報のデータパケットを転送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模災害時の無線ネットワークにおける限られた通信資源の中で、ビデオのリアルタイム通信を実現する技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、前方誤り訂正方式の冗長度をフィードバックによって動的に制御すると共に、冗長データの伝送帯域幅を制御する。
また、防災・災害情報ネットワークを用いて被災者の安否情報を収集すると共に、それら安否情報をインターネットを介して検索する技術もある(例えば非特許文献2参照)。
更に、東日本大震災以降は、各通信事業者から提供された災害情報アプリケーションが、携帯電話機やスマートフォンに予めインストールされることも多く、携帯端末を利用した安否確認システムも一般的となってきている。
【0003】
従来、携帯端末に対するユーザの操作状況を確認することによって、ユーザの安否確認の精度を高めた技術がある(例えば特許文献1参照)。また、二次災害によるユーザの被災状況を把握する技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、警報が発令された際に、その警報発令の位置範囲に、その警報発令から所定時間経過後のユーザの位置が含まれる場合、携帯端末における安否情報取得アプリが自動的に起動されるものである。
【0004】
災害時の無線ネットワークとしては、蓄積運搬転送方式のDTN(Delay, Disruption, Disconnection Tolerant Networking、遅延耐性ネットワーク)の技術がある(例えば非特許文献3参照)。この技術は、TCP(Trasmission Control Protocol)では対応できないような、物理リンクの間欠や大きな遅延時間の変動が生じる劣悪な通信環境であっても、エンドツーエンドで信頼性のあるデータ転送を実現する。
特に、DTNによれば、災害などで通信インフラ機能の一部が停止した場合であっても、ノード間を中継転送しながら、最終的な宛先までデータパケットを転送することができる。送信元ノード及び中継ノードは、データパケットを自らの送信バッファに蓄積し、通信可能圏内に入った他のノードへデータパケットを転送する。
【0005】
被災者からの安否情報のデータパケットは、安否確認システムのアプリケーションサーバに収集される。DTNを用いることによって、被災者からの安否情報のデータパケットが、安否確認システムのアプリケーションサーバへの到達確率も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−146523号公報
【特許文献2】特開2016−184822号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】内田法彦ら、「リアルタイム通信を可能とする防災・災害情報ネットワーク」、[online]、[平成29年3月1日検索]、インターネット<URL:http://ci.nii.ac.jp/naid/110002938614>
【非特許文献2】坂本大吾ら、「無線通信を主体とした防災・災害情報ネットワークシステム:安否情報検索システムの開発と機能評価」、[online]、[平成29年3月1日検索]、インターネット<https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=88795&item_no=1&page_id=13&block_id=8>
【非特許文献3】「Delay tolerant networking with data triage method based on emergent user policies for disaster information network system」、[online]、[平成29年3月1日検索]、インターネット<URL:downloads.hindawi.com/journals/misy/2014/495750.pdf>
【非特許文献4】RFC 5050 (Experimental) “Bundle Protocol Specification”、 [online]、[平成29年3月1日検索]、インターネット<URL:https://tools.ietf.org/html/rfc5050>
【非特許文献5】五十嵐亮裕ら、「無線通信における連続メディアのためのパケットロス制御」、[online]、[平成29年3月1日検索]、インターネット<URL: https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=169070&file_id=1&file_no=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、大規模災害時には、無線ネットワークとしてDTNを用いることによって、大量の携帯端末から発信された安否情報が、安否確認システムのアプリケーションサーバに流れ込むこととなる。
このとき、安否確認システムのオペレータは、大量の安否情報の中から、災害救助の緊急度が高い被災者の安否情報を、一刻も早く発見しなければならない。
【0009】
しかしながら、安否確認システムのオペレータにとって、大量の安否情報の中から、客観的に緊急度の高い安否情報を発見することは容易ではない。
また、オペレータは、被災者自ら記述したメッセージや、その安否情報が発信された位置情報によってしか、被災者の緊急度を主観的に判断することしかできない。即ち、オペレータとしては、緊急度を客観的に判断することが難しい。
更に、中継転送される全ての安否情報は、同じ条件(プロトコル)で転送されていく。これに対し、オペレータとしては、緊急度の高い安否情報ほど、できるだけ早く、安否確認システムのアプリケーションサーバに到達してほしいと考える。
【0010】
そこで、本発明は、特に災害時における被災者の客観的な緊急度に応じて、安否情報のデータパケットの送信及び明示の優先度を制御することができる携帯端末、システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ユーザに所持される携帯端末において、
所定条件に該当した後、測位部によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動するデータパケット送信発動手段と、
位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する静体検知手段と、
静体状態が検知された際に、データパケットに含める優先度を高く設定する優先度制御手段と、
ネットワークの接続が確認された際に、優先度が高いデータパケットから順に送信するデータパケット送信手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
優先度制御手段は、静体検知手段によって静体状態にない場合、データパケットに含める優先度を低く設定することも好ましい。
【0013】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
データパケット送信手段は、蓄積運搬転送方式のDTN(Delay/Disruption-Tolerant Networking)プロトコルに基づくものであることも好ましい。
【0014】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
静体検知手段は、所定時間毎に実行され、先の時刻に測位された位置情報を中心とした所定位置範囲に、現に測位された位置情報が含まれる場合、「静体状態」を検知し、
優先度制御手段は、データパケット送信発動手段から入力されたデータパケットを一定期間保持すると共に、静体検知手段によって静体状態にあると検知される毎に、優先度が高くなるように増分したデータパケットを繰り返し、データパケット送信手段へ出力することも好ましい。
【0015】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
データパケット送信手段は、異なるデータ長の複数のバンドルを備えており、優先度が高いデータパケットほど、データ長が短いバンドルを用いて送信することも好ましい。
【0016】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
データパケット送信手段は、異なる誤り耐性の冗長符号を付与可能なものであり、優先度が高いデータパケットほど、誤り耐性が高い冗長符号を付与することも好ましい。
【0017】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
データパケット送信手段は、疎通確認パケットを送信し且つ応答を受信することによって、ネットワークの接続を確認することも好ましい。
【0018】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
データパケット送信発動手段における所定条件は、
ユーザによって当該携帯端末に対してデータパケットの送信発動が操作された際、
携帯電話網からの緊急地震速報に基づくメッセージを受信した際、又は、
加速度センサによって地震に相当する揺れを検知した際
であることも好ましい。
【0019】
本発明によれば、前述した複数の携帯端末と、データパケットの宛先となる所定サーバとを有するシステムであって、
所定サーバは、複数の携帯端末から受信したデータパケットを、優先度順に、オペレータに明示することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、ユーザに所持される携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
所定条件に該当した後、測位部によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動するデータパケット送信発動手段と、
位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する静体検知手段と、
静体状態が検知された際に、データパケットに含める優先度を高く設定する優先度制御手段と、
ネットワークの接続が確認された際に、優先度が高いデータパケットから順に送信するデータパケット送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の携帯端末、システム及びプログラムによれば、特に災害時における被災者の客観的な緊急度に応じて、安否情報のデータパケットの送信及び明示の優先度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明におけるシステム構成図である。
図2】本発明の携帯端末における機能構成図である。
図3】本発明におけるデータパケットの送信処理を表す機能構成図である。
図4】データパケットの送信を発動する際におけるユーザインタフェースを表す画面表示図である。
図5】携帯端末の測位部に基づく位置情報の揺れを表すグラフである。
図6】経過時間に応じて静体/動体の検知を表すグラフである。
図7】本発明におけるシーケンス図である。
図8】本発明における優先度に応じたデータパケットの送信制御を表すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0025】
図1によれば、大規模災害が発生し、携帯端末1から、そのユーザの安否情報を発信する場合を想定する。
携帯端末1は、ユーザ所持のスマートフォンやタブレットのような端末であって、各ユーザに常に所持されるものである。
携帯端末1は、通信インフラ機能が正常である場合、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントや携帯電話網の基地局に接続し、安否情報のデータパケットを送信する。
一方で、携帯端末1は、通信インフラ機能の一部が停止している場合、DTNを用いて、通信可能圏内の他のノードへ、その安否情報を送信することができる。
携帯端末1から発信された安否情報は、インターネットに接続されたアプリケーションサーバ2によって受信される。
【0026】
アプリケーションサーバ2は、例えば災害救助センタの安否確認システムのサーバであると想定する。アプリケーションサーバ2は、大量の携帯端末1から安否情報のデータパケットを受信すると共に、災害救助のオペレータに対してそれら安否情報を明示する。
【0027】
ここで、本願発明者らは、「静体状態」にある携帯端末から発信された安否情報ほど、緊急度が高いのではないか、と考えた。
災害時には、動けない被災者ほど、災害救助の緊急度が高いと考えられる。自ら負傷した被災者に限られず、家族や老人を守るために動けない被災者もいる。
このような場合であっても、動けない被災者が所持する携帯端末は、通信インフラ機能の一部が停止した場合であっても、DTNを用いることによって通信可能圏内の他のノードを発見(スキャン)し、そのノードへ中継して、安否情報のデータパケットを、アプリケーションサーバ2まで転送する。
【0028】
しかしながら、中継転送される全ての安否情報は、同じ条件(プロトコル)で転送されると共に、オペレータとしても大量の安否情報の中から、緊急度が高い安否情報を客観的に判断することは難しい。
そのために、本発明によれば、静体状態が継続しているユーザの安否情報のデータパケットほど、高い優先度で中継転送する(データトリアージ法)と共に、アプリケーションサーバ2は、静体状態が継続しているユーザの安否情報ほど、オペレータが視認しやすいように明示する。
【0029】
図2は、本発明の携帯端末における機能構成図である。
図3は、本発明におけるデータパケットの送信処理を表す機能構成図である。
【0030】
図2によれば、携帯端末1は、ハードウェアとして例えば、通信インタフェースと、GPS(Global Positioning System)センサと、携帯電話インタフェースと、ユーザインタフェースと、加速度センサとを搭載する。
通信インタフェースは、例えば無線LANのインタフェースである。インフラストラクチャモードとしては、アクセスポイントと通信し、アドホックモードとしては、通信可能圏内の他のノードと通信する。
GPSセンサは、GPS衛星からの測位電波を受信し、緯度経度を出力するものである。
携帯電話インタフェースは、LTE(Long Term Evolution)や3G(3rd Generation)のような携帯電話網に対するインタフェースであり、例えば緊急地震速報を受信可能なものである。
ユーザインタフェースは、例えばタッチパネルディスプレイであって、ユーザが安否情報を指先で入力することができるものである。
加速度センサは、例えば地震のような揺れを検知することができるものである。
【0031】
また、図2によれば、携帯端末1は、測位部10と、データパケット送信発動部11と、静体検知部12と、優先度制御部13と、データパケット送信部14とを有する。これら機能構成部は、携帯端末1に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムによって実現される。また、これら機能部の処理の流れは、データパケット送信制御方法としても理解できる。
【0032】
[測位部10]
測位部10は、GPSセンサによるGPS測位、又は、通信インタフェースによる基地局測位を用いて、現在位置を測位する。スマートフォンのような携帯端末1は、測位部10を一般的に搭載している。勿論、加速度センサや地磁気センサを用いた自律測位であってもよい。
測位された位置情報(緯度経度)は、データパケット送信発動部11及び静体検知部12へ出力される。
【0033】
[データパケット送信発動部11]
データパケット送信発動部11は、「所定条件」に該当した後、「位置情報」と「優先度」とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動する。「位置情報」は、測位部10から入力されたものである。「優先度」は、データパケットの緊急度を明示するものであり、そのデータパケットの送信順を制御する。
【0034】
データパケットの発動のトリガとなる「所定条件」とは、例えば以下のような3つの場合がある。
【0035】
<条件1:ユーザによってデータパケットの送信発動が操作された際>
図4は、データパケットの送信を発動する際におけるユーザインタフェースを表す画面表示図である。
図4によれば、ユーザ自ら、スマートフォンに対して安否情報システム用のアプリケーションを起動し、名前やメッセージ、安否情報を入力することができる。安否情報としては、例えば「安全」「負傷」「救助要」を選択することができる。このとき、安否情報のデータパケットに含める「優先度」は、救助要>負傷>安全の順で設定することが好ましい。
【0036】
<条件2:携帯電話網からの緊急地震速報に基づくメッセージを受信した際>
携帯電話網から「地震津波警報システムETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)」の緊急ページング信号を受信した際に、安否情報のデータパケットを自動的に生成して、送信を発動するものであってもよい。尚、ETWSは、LTEや3Gにおける標準規格である。
勿論、ETWSの緊急地震速報を受信した際に、携帯端末1が、図3のような安否情報システム用のアプリケーションを自動的に起動するものであってもよい。
【0037】
<条件3:加速度センサによって地震に相当する揺れを検知した際>
携帯端末1は、時間経過に対する加速度の変化パターンとして、地震パターンを予め記憶している。そして、加速度センサから出力された加速度の変化を、地震パターンと常時比較して、一致するか否かを判定する。地震パターンと一致した際に、安否情報のデータパケットを自動的に生成して、送信を発動する。
勿論、地震パターンを検知した際に、携帯端末1が、図3のように安否情報システム用のアプリケーションを自動的に起動するものであってもよい。
【0038】
データパケット送信発動部11は、生成した安否情報のデータパケットを、優先度制御部13へ出力する。
【0039】
[静体検知部12]
静体検知部12は、測位部10からの位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する。「静体状態」が継続するほど、災害時に被災者が動けない状態にあると判断する。
静体検知部12は、「所定時間」毎に実行され、先の時刻に測位された位置情報を中心とした「所定位置範囲」に、現に測位された位置情報が含まれる場合、「静体状態」にあると検知する。
即ち、静体検知部12は、所定時間毎に「静体状態」「動体状態」を、優先度制御部13へ出力する。
【0040】
「所定位置範囲」とは、測位方式によって生じる位置情報の誤差(例えば25m)を吸収するもの(位置フィルタ)である。
図5は、携帯端末の測位部に基づく位置情報の揺れを表すグラフである。
図5によれば、GPS測位による緯度経度の揺れと、基地局測位による緯度経度の揺れとが表されている。この揺れを吸収するように、「所定位置範囲」を予め設定しておく。
【0041】
「所定時間」とは、日常時に対して、災害時特有の時間(例えば20分)の継続するもの(時間フィルタ)である。
図6は、経過時間に応じて静体/動体の検知を表すグラフである。
図6によれば、経過時間に対して移動距離を表している。一般に、例えば日常時に20分以内であれば所定位置範囲25m以上移動しているとする。この場合、21分以上、25m以内に留まる場合、静体状態にあると判断する。
【0042】
[優先度制御部13]
優先度制御部13は、データパケット送信発動部11から入力されたデータパケットを一定期間だけ保持し、静体検知部12から「静体状態」が検知される毎に、保持しているデータパケットの優先度を高く設定する。例えば優先度を1増分するものであってもよい。
また、優先度制御部13は、「動体状態」が検知される毎に、保持しているデータパケットの優先度を低く設定する。例えば優先度を1減分するものであってもよい。
これによって、静体状態が継続する限り、優先度が増分されながら、安否情報のデータパケットの送信が繰り返されることとなる。
【0043】
[データパケット送信部14]
データパケット送信部14は、ネットワークを介してデータパケットを送信する。ここで、データパケット送信部14は、優先度制御部13から出力された安否情報のデータパケットを、物理レイヤの通信インタフェースへ出力する。
【0044】
図2によれば、データパケット送信部14は、例えばIP(Internet Protocol)レイヤと、トランスポートレイヤと、DTNレイヤとから構成されている。DTNレイヤは、蓄積運搬転送方式のプロトコルに基づくものであって、通信インフラ機能の一部が停止している場合にのみ機能するものであってもよい。尚、DTNレイヤが機能する場合、トランスポートレイヤ部はUDP(User Datagram Protocol)として機能する。
【0045】
通信インフラ機能が正常である場合、DTNレイヤは機能することなく、優先度制御部13から入力されたデータパケットは、トランスポートレイヤ及びIPレイヤを介して、通信インタフェースからネットワークへ送信される。
一方で、通信インフラ機能の一部が停止した場合、DTNレイヤが機能し、ネットワークの接続が確認された際に、優先度が高いデータパケットから順に送信する。
【0046】
図7は、本発明におけるシーケンス図である。
【0047】
(S71)携帯端末1は、所定条件(例えば緊急地震速報の受信)に該当した後、安否確認システムのアプリケーションを自動的に起動する。そして、測位部10によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動する。
その後、所定時間毎(例えば20分毎)に、以下のS72〜S74の処理を繰り返す。
(S72)携帯端末1は、位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する。
(S73)携帯端末1は、静体状態である場合、データパケットの優先度を増分し、動体状態である場合、データパケットの優先度を減分する。
(S74)携帯端末1のDTNレイヤは、通信可能圏内に存在する他のノードを常にスキャンしている。携帯端末1は、疎通確認パケットを送信し且つ応答を受信することによって、ネットワークの接続、即ち、通信可能圏内の他のノードに対する疎通を確認する。具体的には、ICMP(Internet Control Message Protocol)のechoコマンドを用いたpingコマンドの送受信によって確認する。
その後、携帯端末1は、優先度が高いデータパケットから順に送信する(データトリアージ)。
S72〜S74を所定時間毎に繰り返す処理を、一定期間(例えば1日)継続する。本発明によれば、1日中、静体状態あるような被災者を最高優先度の安否情報のデータパケットで送信することとなる。
【0048】
図8は、本発明における優先度に応じたデータパケットの送信制御を表すシーケンス図である。
【0049】
(S81)データパケット送信部14における送信バッファの内容
DTNレイヤは、トランスポートレイヤの上で、「バンドル」プロトコルを載せたオーバーレイネットワーク構成をとる。バンドルプロトコルは、蓄積運搬転送方式の送信バッファを有し、送信元ノードから宛先ノードまで、中継ノードでデータパケットを保持しながら転送する。尚、バンドルプロトコルのヘッダフィールドやシグナリングなどの技術的仕様は、RFCによって規定されている(例えば非特許文献4参照)。
DTNレイヤは、当該携帯端末2自ら発動したデータパケットと、他の端末から中継のために受信したデータパケットとをマージして、送信バッファに記憶する。図8によれば、送信バッファには、9個のデータパケットが送信待ちとなっている。
【0050】
(S82)優先度順のデータパケットの送信
次に、本発明のDTNレイヤは、バッファ内のデータパケットを優先度順にソートする。これによって、DTNレイヤは、高い優先度のデータパケットから順に、トランスポートレイヤへ出力する(データトリアージ)。
【0051】
<データ長の可変>
データパケット送信部14は、異なるデータ長の複数のバンドルを備えており、優先度が高いデータパケットほど、データ長が短いバンドルを用いて送信する。データ長が短いほど、無線通信の品質劣化の影響を受けにくく、到達可能性が高くなる。
具体的には、データ長を、優先度に応じて例えば以下のように制御することができる。
優先度=高 -> データ長430byte
優先度=中 -> データ長1720byte
優先度=低 -> データ長4300byte
ここでは、優先度に応じて、データ長を10倍までの間で可変させている。
【0052】
<誤り耐性の可変>
データパケット送信部14は、異なる誤り耐性の冗長符号を付与可能なものであり、優先度が高いデータパケットほど、誤り耐性が高い冗長符号を付与する。誤り耐性が高い符号ほど、冗長データ量は多くなるが、無線通信の品質劣化が多くても、その誤りを訂正することができ、到達可能性が高くなる。
冗長符号としては、例えばReed-Solomon符号における前方誤り訂正符号方式(Forward Error Correction)を適用することができる。これは、情報ビットkに対して符号長nとした場合、ビット誤り位置が既知の場合にはn-kビットの誤り訂正能力を有する。例えば、受信側におけるパケットロス率が一定であれば、目標パケットロス率Eに対する符号長kを決定することができる(例えば非特許文献5参照)。
具体的には、符号長を、優先度に応じて例えば以下のように制御することができる。
優先度=高 -> 符号長100%
優先度=中 -> 符号長40%
優先度=低 -> 符号長10%
ここでは、優先度に応じて、符号長を10倍までの間で可変させている。
【0053】
(S83)アプリケーションサーバ2における安否情報リストの明示
アプリケーションサーバ2は、携帯端末1からのデータパケットの宛先となる。アプリケーションサーバ2は、多数の携帯端末から受信した安否情報のデータパケットを、優先度順に、オペレータに明示する。これによって、オペレータは、高い優先度の安否情報から順に確認することができる。ここで、高い優先度とは、安否情報のデータパケットが発動された後、静体状態が継続していることを表す。即ち、被災した位置から動けない被災者からの安否情報ほど、災害救助センタのオペレータに視認されやすくなる。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯端末、システム及びプログラムによれば、特に災害時における被災者の客観的な緊急度に応じて、データパケットの送信及び明示の優先度を制御することができる。
【0055】
本発明によれば、災害時に負傷などにより移動できなくなった被災者の安否情報のデータパケットを、データトリアージ法によって、高い優先度で転送することができる。また、災害情報センタのオペレータにとって、静体状態が継続する緊急度が高い安否情報ほど視認しやすくなる。
【0056】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0057】
1 携帯端末
10 測位部
11 データパケット送信発動部
12 優先度制御部
13 静体検知部
14 データパケット送信部
2 アプリケーションサーバ
【要約】
【課題】災害時における被災者の客観的な緊急度に応じて、安否情報のデータパケットの送信及び明示の優先度を制御する携帯端末、システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】ユーザに所持される携帯端末において、所定条件に該当した後、測位部によって測位された位置情報と、送信順を制御する優先度とを含むデータパケットを生成し、当該データパケットの送信を発動するデータパケット送信発動手段と、位置情報が、所定位置範囲に所定時間継続して滞留する「静体状態」を検知する静体検知手段と、
静体状態が検知された際に、データパケットに含める優先度を高く設定する優先度制御手段と、ネットワークの接続が確認された際に、優先度が高いデータパケットから順に送信するデータパケット送信手段とを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図6
図7
図8