(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180104
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】工作機械に用いられる流体圧シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/30 20060101AFI20170807BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B23B31/30 Z
F15B15/14 335Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-262312(P2012-262312)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108461(P2014-108461A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年11月1日東京国際展示場において開催された第26回日本国際工作機械見本市にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】春園 嘉英
【審査官】
永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−168906(JP,A)
【文献】
特開昭56−003111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00 − 33/00
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に用いられる駆動用の回転流体圧シリンダ装置であって、
ピストンにより2つの油室に区画されたシリンダ本体と、
該シリンダ本体を経由して前記各油室に夫々が接続された油路A、Bと、
該油路A、Bの夫々に対して具設された圧力検出手段と、
前記各油室に夫々が接続され流体を流通させる流体路A、Bと、
該流体路A、Bの夫々に対して具設されたプラグと、を備え、
前記圧力検出手段とプラグは互い違いに前記回転流体圧シリンダ装置に対して回転軸まわりに等間隔に配置され、
前記各圧力検出手段により検出された圧力値を差分演算することにより流体の圧力変動を検知することを特徴とする回転流体圧シリンダ装置。
【請求項2】
前記検出手段がシリンダの回転軸方向と平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転流体圧シリンダ装置。
【請求項3】
前記圧力検出手段により検知された圧力変動を検知し、圧力異常を検出した際には、圧力異常信号を発信し、工作機械の運転を停止させる安全手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転流体圧シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械などに使用する駆動用の流体圧シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャックの駆動装置として、特開昭60−99507号公報には、シリンダ本体内に圧力媒体を密封する逆止弁手段と、密封したの圧力を監視する検出手段を備えた装置が例示されている。
この装置は、チャックが工作物を把握後に遮断するもので、圧力を監視する検出手段として、検知棒48と密封加圧体の作用でシリンダ本体外周面から突出するようになされる検出ピストン45と、これら両者間でスプリングにより常時検出ピストン側へ向けて弾撥押圧されているようになされる摺動板42Bとからなり、密封加圧体の自動監視を行う回転流体圧シリンダが記載されている。
(文章中の付番は特開昭60−99507号に記載の付番と一致させている。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−99507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来技術の回転流体圧シリンダにおいては、密封した圧力媒体の圧力を監視する検出手段は、検知棒と密封加圧体の作用でシリンダ本体外周面から突出するようになされた検知ピストンと、これら両者間でスプリングにより常時検出ピストン側へ向けて断撥押圧されているようになされる摺動板で構成される。
そのため、回転中の回転流体圧シリンダの密封した圧力媒体の圧力を監視する場合、検知棒と検知ピストンに遠心力が作用し、検知棒と検知ピストンがシリンダ本体に押し付けられる。
したがって、従来の回転流体圧シリンダにおいては、検知棒と検知ピストンとシリンダ本体との間に摩擦抵抗が生じることにより、検出手段が回転動作時の圧力変化に対して正確な圧力測定ができす、正常な圧力の監視が出来ないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、工作機械に用いられる駆動用の
回転流体圧シリンダ装置であって、ピストンにより2つの油室に区画されたシリンダ本体と、該シリンダ本体を経由して前記各油室に
夫々が接続された油路A、Bと、該油路A、Bの夫々に対して具設された圧力検出手段と、前記各油室に
夫々が接続され流体を流通させる
流体路A、Bと、該流体路A、Bの夫々に対して具設されたプラグと、を備え、前記圧力検出手段とプラグは互い違いに
前記回転流体圧シリンダ装置に対して回転軸まわりに等間隔に配置され、複数の圧力検出手段により検出された圧力値を差分演算することにより流体の圧力変動を検知することを特徴とする。
また、前記検出手段がシリンダの回転軸方向と平行に設けられていることを特徴とする。
また、前記圧力検出手段により検知された圧力変動を検知し、圧力異常を検出した際には、圧力異常信号を発信し、工作機械の運転を停止させる安全手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、密封した圧力媒体の圧力を検知する手段として、複数の圧力流体路の夫々に直接的に圧力媒体の圧力を測定する圧力検出手段を配設することにより、検出手段がシリンダの回転動作による遠心力の影響により生じる摩擦抵抗を受けることなく、回転流体圧シリンダの密封した圧力媒体の圧力変動の監視を行うことが出来る。
さらに、シリンダピストンにより分割された圧力流体室のそれぞれに圧力検出手段を接続することにより、2系統の圧力検出手段の信号を演算することが可能となり、密封した圧力媒体に作用した遠心力の影響をうけることなく、回転流体圧シリンダの密封した圧力媒体の圧力変動の監視を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の実施例1に係る
図1の
A−A断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る図
2の
B−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態について、実施例を添付図面にもとづいて詳細に説明する。
尚、本実施例での圧力媒体は油圧駆動のための作動油としている。
図1は本発明に係る回転流体圧シリンダ装置の断面図である。
1はシリンダ本体、2はピストンロッド、3はシリンダピストンである。
シリンダ本体1の内部に設けられる油室4は、該シリンダピストン3により左右の2つの油室4A、4Bに分割されており、Oリング5がシール材として備えられている。
前記ピストンロッド2には、回転フランジ6が嵌挿されて設けられている。
7及び8は、圧力検出手段として設けられるダイヤフラム式圧力センサーである。
【0009】
圧力センサー7は、油路B10に接続されており、油路B10を介して油室4Bに密封された作動油の圧力を検出でき、圧力センサー8は、油路A9に接続されており、油路A9を介して油室4Aに密封された作動油の圧力を検出できる。
これら2つの圧力センサー7、8の圧力検出部はシリンダ回転軸と平行に配設されている。また、2つの圧力センサー7と圧力センサー8は、互いにシリンダ回転軸に対して対称位置に取り付けられている。
2つの圧力センサー7及び8は、それぞれ配線A11と配線B12を介して、無線送信機(図示せず)に接続されており、検出した回転流体圧シリンダの密封した圧力媒体の圧力値をシリンダ本体の外部に配置した無線受信機(図示せず)に、送信している。
また、
図2に示すピストンロッド2の右端は、図示しないドローチューブに連結されて設けられ、シリンダピストン3の左右動でチャック本体のジョーを動作させて工作物の把持、または開放が行なわれるようになされる。
【0010】
図2は
図1のA−A断面図であり、
図3は
図2のB−B断面である。
本実施例のシリンダ本体1には、前述の油路A9と油路B10とは別系統の油路A17と油路B18が設けられている。
油路A17は、油室4Aに接続して設けられ、チャック本体1の外方端部へプラグA15が取り付けられている。このプラグA15は、シリンダピストン3の動作時に開放となる逆止弁機能を有している。
同様に油路B18は、油室4Bに接続して設けられ、チャック本体1の外方端部へプラグB16が取り付けられている。このプラグB16は、シリンダピストン3の動作時に開放となる逆止弁機能を有している。
【0011】
次に本発明に係る回転流体圧シリンダ装置の動作について説明する。
シリンダを動作させる場合、シリンダピストン3を右方向へ駆動させる際には、図示しない外部供給装置からの圧油が、プラグA15を介して、油室4Aに導かれ、油室4A内の駆動油の圧力によりシリンダピストン3を右側方向に移動させる。この時、シリンダピストン3の右側への移動に伴って油室4Bの圧油は油路Bを通り、プラグB16を介して、シリンダ本体1の外方へ回収される。
【0012】
また、シリンダピストン3を左方向へ駆動させる際には、図示しない外部供給装置からの圧油が、プラグB16を介して、油室4Bに導かれ、油室4B内の駆動油の圧力によりシリンダピストン3を左側方向に移動させる。この時、シリンダピストン3の左側への移動に伴って油室4Aの圧油は油路Aを通り、プラグB15を介して、シリンダ本体1の外方へ回収される。
【0013】
回転流体圧シリンダのピストン駆動後に、回転動作を行なっている際、密封した圧力媒体が万一漏出して圧力低下を来したり、密封圧力媒体の温度変化により圧力変化を来した場合、油室4A、油室4Bの圧力を9の油路Aと10の油路Bを通じて圧力センサー7及び8で圧力変化を検出する。
回転流体圧シリンダが回転動作中においても、圧力センサー7及び8で圧力変化を検出するので、機械構造による摩擦抵抗が生じることなく、検出手段が回転動作時の圧力変化に対して正確な圧力測定ができ、油室4A、油室4Bの圧力変化を誤差なく検出することが出来る。
また、シリンダピストン3により分割された2つの油室4A及び油室4Bのそれぞれに圧力センサー7及び8を設けることにより、2つの圧力センサー7及び8の信号の差分を演算することにより、密封した圧力媒体に作用した遠心力の影響をうけることなく、回転流体圧シリンダの密封した圧力媒体の圧力変動の監視を行うことが出来る。
【0014】
次に本発明における圧力異常検知の方法について説明する。
まず、目標圧力値幅20を設定する。
目標圧力値幅20は、基準圧力値を決めて、その基準圧力値に対して前後の圧力値を定めて目標圧力の許容幅を定めるものである。
回転流体圧シリンダの動作を行なう際、圧力センサー7、8を用いて、シリンダの油室4A、油室4B内部の実際の圧力値を測定し、2つの圧力センサー7及び8の信号の差分を演算することにより、測定圧力値21を求める。
圧力センサー7、8により検出された測定圧力値21と前記目標圧力値幅20を比較し、測定圧力値21が目標圧力値幅20の内に入っている場合には、圧力異常と判断せず、圧力異常通知を行なわずに通常の回転流体圧シリンダの動作を継続させる。
万一、密封した圧力媒体が漏出して圧力低下を来したり、密封圧力媒体の温度変化により圧力変化を来し、圧力センサー7、8により検出された測定圧力値21が目標圧力値幅20を超過、または低下した場合は、圧力異常と判断し、圧力異常通知通知信号25を出力させる。
【0015】
この圧力異常通知通知信号25を元に、運転を中止させる信号を発生させたり、警報を発生させたりすることが出来る。
本実施例では、目標圧力値幅20は、1つの数値幅の例を示しているが、目標圧力値幅20を複数個設定することにより、複数の条件での異常を感知することができる。
また、本実施例では、圧力通知信号を発生させる例を説明しているが、検出した測定圧力値を表示し、現状の圧力を常に通知することも出来る。
【符号の説明】
【0016】
1 シリンダ本体
2 ピストンロッド
3 シリンダピストン
4 油室
5 Oリング
6 回転フランジ
7 圧力センサー
8 圧力センサー