特許第6180106号(P6180106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社佐藤渡辺の特許一覧

<>
  • 特許6180106-道路舗装復旧工法 図000003
  • 特許6180106-道路舗装復旧工法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180106
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】道路舗装復旧工法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/32 20060101AFI20170807BHJP
   E01C 7/22 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E01C7/32
   E01C7/22
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-269774(P2012-269774)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114613(P2014-114613A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592090315
【氏名又は名称】株式会社佐藤渡辺
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 志伸
(72)【発明者】
【氏名】梶田 光信
(72)【発明者】
【氏名】原 義久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順一
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−227119(JP,A)
【文献】 特開平11−061724(JP,A)
【文献】 特開2006−232311(JP,A)
【文献】 実開昭58−006806(JP,U)
【文献】 特開2004−324161(JP,A)
【文献】 特公昭63−46802(JP,B2)
【文献】 特開昭60−217901(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/064767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントで製造された加熱アスファルト混合物である加熱舗装材料を密封自在な袋体に小分け梱包して密封状態で常温保管する工程と、
前記袋体に梱包したままの状態で前記加熱舗装材料を再加熱する工程と、
再加熱された前記加熱舗装材料を前記袋体から取り出して舗装面の復旧箇所に敷き均し転圧する工程とを有し、
前記袋体は、出し入れ口を折り返すことで内部を密閉状態にし得ることを特徴とする道路舗装復旧工法。
【請求項2】
前記加熱舗装材料を再加熱する工程では、一対の加熱プレートで前記容器を挟持した状態で加熱を行うことを特徴とする請求項1記載の道路舗装復旧工法。
【請求項3】
前記加熱舗装材料を再加熱する工程では、加熱温度が200℃程度までの範囲内で加熱が行われることを特徴とする請求項1又は2記載の道路舗装復旧工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装の復旧工法に関し、特に、舗装材料を再加熱して使用する道路舗装復旧工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンホールや電柱などの設置工事、ガス管や水道管などの配管埋設工事、既設埋設管の修理・補修や点検作業を行うための工事においては、道路舗装面を一旦壊して路盤を露出させて開削作業が行われ、これらの工事後には、壊した舗装面を平坦な舗装面に戻す復旧作業が行われる。
【0003】
アスファルト舗装面の復旧作業には、舗装材料として、加熱した状態で使用する材料(加熱アスファルト混合物又は加熱舗装材料)と常温で使用する材料(常温舗装材料)がある。加熱舗装材料は、アスファルトプラントで規定の温度にて加熱混合され、アスファルトプラントから工事現場に搬送されて、本復旧材又は一部仮復旧材として使用される。一方、常温舗装材料は常温で袋詰めされたものを工事現場で常温のまま敷設し、一般には仮復旧材として使用される。ここでいう本復旧とはその作業で復旧を完了させる復旧作業であり、仮復旧とはその後に本復旧を行うことを前提とした仮の復旧作業である。加熱舗装材料と常温舗装材料は共に復旧箇所に均等に引き均され、その後転圧機を用いて既存の舗装面と面一に仕上げられる。
【0004】
加熱舗装材料は、施工に際しての温度管理が重要であり、アスファルトプラントから搬送されて工事現場で使用されるまでの間に規定温度以下に低下しないことが必要になる。それ故に、施工者側では運搬による加熱舗装材料の温度低下を考慮して必要量より多めに購入することがなされており、特に小規模復旧の場合には、2〜3割程度の廃棄材が発生する。また、温度管理が不十分な場合には温度低下による品質劣化が懸念される。一方、常温舗装材料の多くは、揮発硬化タイプのため硬化速度(強度発現)が遅く、長期間放置すると材料が飛散するトラブル発生の懸念があり、本復旧材として用いることができないのは勿論のこと、仮復旧材としても本復旧までの期間が長い場合には適さない。
【0005】
これに対して、加熱舗装材料を現場で加熱して使用する復旧工法が提案されている。下記特許文献1には、加熱舗装材料が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材を用意し、粒状加熱合材にアスファルト乳剤を混合してバーナーで加熱して混合加熱合材を生成することなどが提案されている。
【0006】
前述した従来技術は、開放雰囲気で冷却された加熱舗装材料を開放雰囲気で直火加熱して利用するものであり、仮復旧材としての使用は可能であるが、本復旧材として使用することができない。また、仮復旧材として使用する場合にも、温度低下による品質劣化によって本復旧までの期間が長い場合には十分な安定度を維持することができない。また、アスファルト乳剤を混合する必要があるので現場での施工が煩雑になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−112197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、加熱舗装材料を用いる道路舗装の復旧工法において、煩雑な温度管理を不要にすること、小規模復旧の場合であっても廃棄材の発生を極力抑制することができること、現場での良好な施工性を確保しながら、本復旧材としても使用可能な良好な品質を確保できること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による道路舗装復旧工法は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
アスファルトプラントで製造された加熱アスファルト混合物である加熱舗装材料を密封自在な袋体に小分け梱包して密封状態で常温保管する工程と、前記袋体に梱包したままの状態で前記加熱舗装材料を再加熱する工程と、再加熱された前記加熱舗装材料を前記袋体から取り出して舗装面の復旧箇所に敷き均し転圧する工程とを有し、前記袋体は、出し入れ口を折り返すことで内部を密閉状態にし得ることを特徴とする道路舗装復旧工法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の道路舗装復旧工法は、加熱アスファルト混合物を容器内に収容して密封状態にすることおよび温度管理可能な間接加熱をすることで、加熱アスファルト混合物の酸化を抑制でき、これによって加熱アスファルト混合物の劣化を抑制することができることを見出して前述した特徴に至ったものである。
【0011】
前述した特徴を備えた道路舗装復旧工法によると、加熱アスファルト混合物(加熱舗装材料)を用いる道路舗装の復旧工法において、煩雑な温度管理を不要にすることができ、容器に加熱舗装材料を小分け梱包することで小規模復旧の場合であっても廃棄材の発生を極力抑制することができる。また、容器に梱包したままの状態で加熱舗装材料を再加熱して使用することで、現場での良好な施工性を確保しながら、加熱舗装材料の酸化による劣化を極力抑えて本復旧材としても使用可能な良好な品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法の基本構成を示した説明図である。
図2】加熱舗装材料を再加熱する工程の具体例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面などを参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法の基本構成を示した説明図である。本工法は、先ず図1(a)に示すように、アスファルトプラント1で製造された加熱アスファルト混合物である加熱舗装材料を密封自在な容器2に小分け梱包する。容器2としては、出し入れ口を折り返すことで内部を密封状態にし得る袋体などを用いることができる。容器2の容量は、例えば小規模復旧において1回に使用する加熱アスファルト混合物が収容される量以下に設定する。容器2(例えば袋体)の材質は熱伝導が容易で、内容物を容易に加熱することができるものが好ましい。
【0014】
容器2に小分け梱包された加熱舗装材料は、容器2の出し入れ口を封止するなどして密封状態にする。容器2が袋体の場合には出し入れ口を折り畳むなどして収容された加熱舗装材料を密封する。加熱舗装材料が収容された容器2は、図1(b)に示すように、密封状態で常温保管される。
【0015】
道路舗装の復旧現場では、常温に温度低下した加熱舗装材料が収容された容器2を現場に搬送し、図1(c)に示すように、容器2に梱包したままの状態で加熱舗装材料を再加熱する。再加熱に際しては、加熱体3を容器2に接触させることで容器2を介して加熱体3の熱を容器2内の加熱舗装材料に伝達させる。加熱体3としては施工現場に備えられる電源(商用交流電源又はバッテリ電源)からの電気供給で加熱する電熱体などを用いることができる。加熱体3の加熱温度は、温度調整手段4などで調整自在にすることが好ましく、可能な加熱温度は、200℃程度までとし、通常は120〜140℃に設定する。
【0016】
常温に温度低下した加熱舗装材料を再加熱する工程では、例えば図2に示すように加熱体3として一対の加熱プレート3Pを用いることができる。この場合は、図2(a)に示すように、一対の加熱プレート3Pで一つの容器2を挟持した状態で加熱を行うようにしてもよいし、図2(b)に示すように、容器2を積層した状態で各容器2を一対の加熱プレート3Pで挟持して加熱を行うようにしてもよい。
【0017】
道路舗装の復旧現場で再加熱された加熱舗装材料は、図1(d)に示すように、容器2から取り出して舗装面Sの復旧箇所に敷き均す。その後は、従来の工法と同様に、転圧機を用いて転圧して舗装面を完成させる。
【0018】
表1は、本発明の実施形態によって再加熱した加熱舗装材料の性状に関する試験結果を示したものである。ここでは、加熱アスファルト混合物として、一般に仮復旧材料として用いられる細粒タイプ(細粒度アスファルト合材)と一般に本復旧材料として用いられる密粒タイプ(密粒度アスファルト合材)を用い、アスファルトプラントで製造した加熱アスファルト混合物を容器2内で密封した状態で常温保存し、製造日の翌日と1年後の加熱アスファルト混合物を2時間程度再加熱し、マーシャル安定度試験(Marshall stability test)を実施した。また、アスファルトプラントで製造した直後の加熱アスファルト混合物に対しても同様のマーシャル安定度試験を実施した。
【0019】
ここでのマーシャル安定度試験とは、通常はアスファルト混合物の配合設計に用いる安定度試験の1つで、試験方法は円筒形混合物供試体(直径100mm、厚さ約63mm)の側面を円弧形2枚の載荷板ではさみ規定の温度(60℃)、規定の載荷速度(50mm/min)により直径方向に荷重を加え、供試体が破壊するまでに示す最大荷重(安定度)とそれに対応する変形量(フロー値)を測定するものである。ここでは何れの条件においてもマーシャル締め固め温度を143℃とした。マーシャル締め固め温度は、アスファルトの温度(℃)−動粘度(mm2/s)曲線から求められる。
【0020】
【表1】
【0021】
表1に示した試験結果から明らかなように、本発明の実施形態によって再加熱された加熱アスファルト混合物は、細粒タイプ,密粒タイプの両方において、安定度とフロー値が共にアスファルトプラント製造直後のものと比較して良好な値を示しており、密度もアスファルトプラント製造後のものと同等の値を示している。また、これらの値は何れも舗装設計施工指針を満足するものであった。
【0022】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法によると、アスファルトプラントで製造された加熱アスファルト混合物を容器に梱包して密封状態にし、その状態で常温保管した後、容器に梱包したままの状態で再加熱して使用することで、加熱アスファルト混合物をプラント製造直後のものと同等の品質で使用することができる。さらに、加熱アスファルト混合物は容器に梱包した後常温保存することができるので、煩雑な温度管理が不要になり、運搬時の保温設備なども不要になる。また、所望の容量を有する容器に小分け梱包して、各容器単位で簡易に再加熱することができるので、良好な施工性が得られ、小規模復旧の場合であっても廃棄材の発生を極力抑制することができる。
【符号の説明】
【0023】
1:アスファルトプラント,2:容器,
3:加熱体,3P:加熱プレート,4:温度調整手段
図1
図2