(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、例示的に記載する。
<<<重合触媒組成物>>>
本発明の変性シリカの製造方法は、下記の第1要素、第2要素及び第3要素からなる重合触媒組成物の存在下で単量体を重合させることを特徴とする。
【0009】
<<第1要素>>
上記の重合触媒組成物を構成する第1要素は、希土類元素含有化合物である。第1要素は、希土類元素含有化合物として、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む。ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さないのが好ましい。該希土類元素化合物及び希土類元素化合物とルイス塩基との反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。第1要素は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
希土類元素含有化合物としては、下記の希土類元素含有化合物を好適に使用することができる。
【0013】
<希土類元素含有化合物>
上記希土類元素含有化合物としては、下記一般式(I):
【化2】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
a〜R
fは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体を含む
。
【0015】
ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
なお、重合反応系において、重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0016】
上記一般式(I)
で表されるメタロセン錯体において、式中のCp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCp
Rは、C
9H
7−XR
X又はC
9H
11−XR
Xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミル、スタニル、シリルが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)
における二つのCp
Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0017】
一般式(I)
における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウム、ネオジム、プラセオジム、ガドリニウム、セリウム、ホルミウム、スカンジウム及びイットリウムが好適に挙げられる。
【0018】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR
3)
2]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(I)におけるR
a〜R
f)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R
a〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R
a〜R
fのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィンが導入され易くなる。同様の観点から、R
a〜R
cのうち少なくとも一つが水素原子であり、R
d〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0020】
上記一般式(I)
で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
また、上記一般式(I)
で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0031】
<<第2要素>>
上記の重合触媒組成物を構成する第2要素は、下記一般式
(Xa):
AlR1R2R3 ・・・ (Xa)
(式中、R1及びR2は、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R1ないしR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)で表される有機金属化合物
を含む。
【0032】
一般式(Xa)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた第2要素としての有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、重合触媒組成物における第2要素の配合量は、前記第1要素に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0033】
<<第3要素>>
上記重合触媒組成物を構成する第3要素は、シリカを含み、具体的には、狭義の二酸化ケイ素(一般式でSiO
2で示される)のみを示すものではなく、ケイ酸系化合物を意味し、具体的には、無水ケイ酸の他に、含水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩を含む。なお、シリカの凝集状態も問わず、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、乾燥シリカ、コロイダルシリカなども含まれる。また、いずれの製法で製造されたシリカも含み、湿式法、乾式法いずれも含む。中でも耐摩耗性の優れた湿式シリカが好ましい。シリカのBETも特に限定されず、例えば、10〜1000m
2/gの範囲のシリカを含む。このようなシリカとしては、東ソーシリカ株式会社製「ニップシールAQ」、BET205m
2/gが挙げられる。
なお、非特許文献1において触媒組成物として使用されるシリカは、焼成して無水化したものであるが、本発明においては、シリカの焼成は要しない。
重合触媒組成物におけるシリカの配合重量は、後に添加する重合体部分を構成する単量体100重量部に対して
120重量部以上であり、好ましくは
120〜1000重量部であり、より好ましくは120〜500重量部である。シリカの配合重量を単量体の配合重量
100重量部に対して120重量部以上とすることで、生成される変性シリカのゴム組成物への必要添加量を減じることができる。
【0034】
<<<重合触媒組成物の製造方法>>>
本発明に係る重合触媒組成物は、第2要素と第3要素とを混合熟成させた後、第1要素を添加して反応させて製造する
。そうすることで、生成される変性シリカの重合体部分の重合反応を高め、かつ、シス1,4−結合量を高めることができる。
上記の好適な重合触媒組成物の製造方法においては、まず、溶媒中で第2要素と第3要素とを混合熟成させることにより、第2要素と第3要素の水分とが反応して、陰電荷を有する複合体(アニオン複合体)が形成される。この反応は、例えばアルキルアルミニウムと水との反応により、メチルアルミノキサンが生成されることが、S. Pasynkiewiczによりポリヘドロン、第9巻、第429〜453頁(1990年)で詳細に解説されていることから裏付けられる。その結果、第3要素のシリカ近傍に第2要素を含むアニオン複合体が被膜を形成するかのごとく存在することになると想定される。
この状況下において、第1要素である希土類元素含有化合物を添加して反応させることにより、第1要素由来の希土類元素カチオン性化合物と第2要素、及び第2要素と第3要素との反応由来のシリカ含有アニオン複合体が反応系内に生成することになる。
本発明に係る第1要素の希土類元素含有化合物の希土類元素は、通常3つの配位子が配位するが、条件によっては、アニオンの存在下で配位子の1つ以上を離してカチオン化する、という特性を有する。そのため、第2要素と第3要素を反応させてなるアニオン複合体と、第1要素とを反応させることで、第1要素がカチオン化し、次いで、前記アニオン複合体が生成されたカチオンと結合した状態となりやすい。
ここで、希土類元素カチオン性化合物を有する触媒組成物において、希土類元素にアルミニウム等の金属(ここではYとされる)が隣接する場合、触媒の活性中心は希土類元素ではなく、隣接する金属元素Y側に移行することが示されている(Y.Matsuura et al.,“Polymerization via the Insertion of Ethylene into an Al−C Bond Catalyzed by Lanthanide(Gd,Sm) Metallocene Cations” 58th Symposium on Organomethallic Chemistry,Japan,Abstracts,The Kinki Chemical Society,Japan,2011参照)。重合触媒組成物の場合、希土類元素ではなく、隣接する金属元素Yに重合反応の活性中心が移行し、Yにおいて重合体が生成されることとなる。
上記重合触媒組成物においては、希土類元素が、シリカ粒子上に被膜状で存在する金属元素Yと隣接した状態で存在することから、活性中心はシリカ粒子上に移行し得る。これにより、重合反応はシリカ粒子上の金属元素Yの位置で行われることとなり、シリカに非常に近接した重合体が生成されることとなる。一部の重合体は、シリカのポーラス上に入り込んた状態となり、シリカ粒子と一体化する可能性もある。
このように、上記重合触媒組成物中では、第2要素由来の金属元素Yと、第3要素由来のシリカと重合体が、近接または一体化し、これにより、シリカ表面を重合体が覆うか、シリカ表面に重合体が結合するように変性された、変性シリカの製造が可能である。
希土類元素化合物を含む重合触媒組成物において、重合反応の効率を上げるためには、希土類元素化合物の配合量を増加させることがなされるが、希土類元素化合物は高価であるため、多量に使用するのは困難である、という問題があった。しかし、上記重合触媒組成物を用いる場合、重合反応の効率は、希土類元素化合物ではなく、シリカ及び金属元素Yの配合量に依存する。これらの配合量を増加させることによる製造コストの増加は比較的低いといえる。
【0035】
なお、第1要素は水の存在により失活しやすい、という問題があるが、第1要素は、上記アニオン複合体と共存させても失活しにくい。したがって、第3要素たるシリカは、焼成等で無水物化する必要はなく、むしろ、第3要素は一定量以上の水分を含んでいる必要がある。焼成等の工程を省略できることにより、製造コストを下げ、かつ製造工程の効率化を図ることが可能となる。好適な含水率は、0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上である。上限は特にないが、60重量%以下であることが望ましく、50重量%以下であることがより望ましく、40重量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
<<<変性シリカ>>>
上記の重合触媒組成物での存在下で、共役ジエン単量体及び非共役オレフィンからなる群より選択された少なくとも1つの単量体を重合させることで、本発明の変性シリカを製造可能である。ここで、添加する単量体としては、共役ジエン単量体及び/または非共役オレフィンであれば特に限定されないが、その重合体がシリカ表面を覆うことにより、シリカのゴム組成物中での相溶性を高めることができるものであれば、好適に使用可能である。
【0037】
変性シリカ中のシリカの含有量は、該変性シリカ100重量部に対して
65重量部以上、特に65重量部以上100重量部未満、さらに75重量部以上100重量部未満とすることが好ましい。シリカの含有量を
65重量部以上とすることで、該変性シリカのゴム組成物への必要添加量を減じることができる。
【0038】
単量体として用いる共役ジエン化合物は、炭素数が4〜8であることが好ましい。中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。また、これら共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
一方、単量体として用いる非共役オレフィンは、共役ジエン化合物以外のオレフィンであり、非環状オレフィンであることが好ましい。また、該非共役オレフィンの炭素数は2〜8であることが好ましく、エチレン、プロピレン及び1−ブテンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。これら非共役オレフィンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、オレフィンは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。
【0040】
<<<変性シリカの製造方法>>>
上記重合触媒組成物は、多様な重合体の製造に利用可能であるが、本明細書では、特に、ポリブタジエンを有する変性シリカの製造について例示的に説明する。但し、以下に詳述する製造方法は、あくまで例示に過ぎない。前記ポリブタジエンは、上記重合触媒組成物の存在下、単量体としての1,3−ブタジエンを重合させることにより製造することができる。
【0041】
上記重合触媒組成物を用いたポリブタジエンを有する変性シリカの製造方法は、少なくとも、重合工程を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を含む。
【0042】
<<重合工程>>
前記重合工程は、ブタジエン単量体を重合する工程である。
前記重合工程においては、上記重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、単量体である1,3−ブタジエンを重合させることができる。
【0043】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またそれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
前記重合工程は、例えば、(1)単量体として1,3−ブタジエンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。
【0045】
また、前記重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0046】
前記重合工程において、1,3−ブタジエンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、1,3−ブタジエンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0047】
<<洗浄工程>>
前記洗浄工程は、前記重合工程において得られたポリブタジエンを洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸がポリマー中に残存してしまうことで混練および加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、ポリブタジエン中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(試験例1:変性シリカの製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、1L耐圧ガラス反応器にシリカ50.0g(商品名:ニップシールAQ、重量減少法により算出した含水率5.5重量%、東ソーシリカ株式会社製)、ノルマルヘキサン50.0g、トリメチルアルミニウム70.0mmol(東ソーファインケム株式会社製)及びジイソブチルアルミニウムハイドライド70.0mmol(東ソーファインケム株式会社製)を仕込み、室温で30分間混合熟成させた。次いで、ビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC
9H
6)2GdN(SiHMe
2)
2]22mg(32.5μmol)を仕込み室温で30分間熟成させた。その後、グローブボックスから反応器を取り出し、1,3−ブタジエン25.0g(0.46mol)を含むノルマルヘキサン溶液100.0gを添加した後、65℃で180分間反応を行った。その後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、70℃で真空乾燥し変性シリカを得た。得られた変性シリカの収量は61.5gであり、シリカ含有率は81重量%となった。
【0050】
(試験例2)
試験例1においてビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)を用いないこと以外は、同様の方法で重合反応を試みたが、収量は50.0gであり、変性反応は進行しないことを確認した。
【0051】
(試験例3)
試験例1において、空気中100℃で2時間加熱処理したシリカ(商品名:ニップシールAQ、重量減少法により算出した含水率0.1重量%未満、東ソーシリカ株式会社製)を用いたこと以外は、同様の方法で重合反応を試みたが、収量は50.0gであり、変性反応は進行しないことを確認した。
【0052】
<変性シリカの評価方法>
上記試験例1で得られた変性シリカを用いて、表1に示すような配合で他の配合成分を混合して、ラボ混練機で混練し、加硫プレスで加硫して厚さ2.0mmとした重合体組成物シートを調製し、実施例1とした。また、同様に、市販のシリカを用いて表1に示す配合で調製した重合体組成物シートを比較例1,2とした。比較例1、2中のシリカは、混練時に配合した。実施例1及び比較例1、2の重合体組成物について、下記の方法に従って、200%伸長時の引張り応力(M200)を測定した。
【0053】
25℃でASTM D412に準拠して、200%伸長時の引張り応力(M200)の測定を行った。測定結果は、比較例1の値を100とする指数値として表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
*1:宇部興産株式会社 UBEPOL BR150L
*2:日本シリカ工業株式会社 ニップシールAQ BET表面積=220m
2/g
*3:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
*4:N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−p−フェニレンジアミン
大内新興化学工業株式会社 ノクラック6C
*5:三新化学工業株式会社 サンセラーD
*6:大内新興化学工業株式会社 ノクセラーDM
*7:大内新興化学工業株式会社 ノクセラーNS
【0056】
表1の結果より、本願発明の変性シリカを配合した加硫ゴム組成物において、シランカップリング剤の配合を行わなくても良好な引っ張り応力がみられることが確認された。これは、補強性が良好であることを示す。