特許第6180134号(P6180134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180134小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180134
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20170807BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01N21/03 Z
   G01N21/01 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-42601(P2013-42601)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169951(P2014-169951A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】392035189
【氏名又は名称】橋本電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(72)【発明者】
【氏名】田中 利男
(72)【発明者】
【氏名】島田 康人
(72)【発明者】
【氏名】梅本 紀子
(72)【発明者】
【氏名】小幡 勝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正敏
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178012(US,A1)
【文献】 特開2012−085571(JP,A)
【文献】 特開2007−333440(JP,A)
【文献】 特開2001−133397(JP,A)
【文献】 特開2012−085572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
G01N 1/00− 1/44
G01N 35/00−37/00
A01K 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の小魚類を個別に収容するための多数のウエルが一主面に形成されたウエルアレイ板を有し、
前記ウエルアレイ板は、前記小魚類の視覚情報の取得のためにイメージング装置の光軸と交差する位置に配置される小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置において、
前記各ウエル内の各小魚類に直接接触することなく前記各ウエル内の各小魚類を付勢することにより、前記各ウエルの平坦底部上に前記各小魚類を横臥させる魚体付勢部を有することを特徴とする小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項2】
前記魚体付勢部は、前記各ウエル内に下降水流を形成する水流形成手段を含み、
前記各ウエルは、
前記平坦底部の全周から上方へ立設された側壁部と、
前記平坦底部と前記側壁部の近傍に配設されて前記各ウエル内の水を排水する排水孔と、
を有する請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項3】
前記水流形成手段は、前記各ウエルの前記各排水孔を通じて前記各ウエル内の水を吸引する吸水ポンプを含む請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項4】
前記魚体付勢部は、各小魚類が水とともに前記各ウエルに個別に収容された前記ウエルアレイ板を所定方向に機械的に振動させる振動装置を含む請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項5】
前記振動装置は、前記ウエルの平坦な底面と平行な方向へ前記ウエルアレイ板を振動させる請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項6】
前記魚体付勢部は、前記ウエルアレイ板が固定される回転体を有し、この回転体は、前記ウエルアレイ板を回転させることにより前記各ウエル内の小魚類を前記各ウエルの内面の所定位置に押しつける請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項7】
前記魚体付勢部は、前記ウエルアレイ板近傍に配置された磁界形成手段を含み、
前記磁界形成手段は、前記各ウエル内の小魚類の体内に蓄積された磁性物質を磁気付勢することにより、前記小魚類に所望の姿勢を与える請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置。
【請求項8】
前記磁界形成手段は、前記ウエルの底面近傍に配置された永久磁石からなる請求項記載の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼブラフィシュ等の小魚類を良好に視認乃至撮像するための小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に医学分野、とりわけ製薬産業や遺伝子産業において、ゼブラフィシュの利用が注目されている。たとえば、ゼブラフィシュの卵に遺伝子材料や特定の化学材料が注入された後、ゼブラフィシュ成体が目視乃至撮像される。これにより、他の生体を用いるよりも、材料の作用乃至効果を高能率に確認することができる。
【0003】
ゼブラフィシュ成体の観察乃至撮像のために、種々の顕微鏡や電子撮像装置などのイメージング装置が用いられている。しかしながら、ゼブラフィシュは約数mmと非常に小さい。このため、数多くのゼブラフィシュ成体の対象領域を正確に観察乃至撮像することは、熟練作業者であっても骨が折れる作業であった。その理由は、イメージング装置の光軸に対するゼブラフィシュの姿勢が不定であるため、ゼブラフィシュの対象領域の形状や色調などが様々に変化すること、及び、この対象領域が背骨などの背後に隠れてしてしまうためである。
【0004】
この問題を改善するために、プリズムなどの反射面を含む複雑な光学系を用いることにより、複数方向からゼブラフィシュを撮像する技術が知られている。しかしながら、イメージング装置の光軸を屈折させる反射面の追加は、反射面の汚れ等による画像鮮明度の低下などの問題が派生させる。
【0005】
ゼブラフィシュの全周を回転する回転撮像系の採用により、ゼブラフィシュの姿勢変化にによる対象領域の視認性低下問題は解決される。けれども、この種の回転撮像系は非常に高価かつ撮影時間の長時間化が問題であるとともに、多数のゼブラフィシュを回転撮像系の中心に1つずつセットしなければならないという厄介な問題を派生させる。
【0006】
結局、ゼブラフィシュの対象領域を比較的正確に視認可能であるにもかかわらず、取り扱いが容易なゼブラフィシュ・イメージング装置を低コストで製造することが、医学分野におけるゼブラフィシュの普及のために重要であることが、理解される。
【0007】
ゼブラフィシュを個別に収容する多数のウエルが配列されたウエルアレイ板を、静止イメージング装置に対して移動させるゼブラフィシュ・イメージング装置は、構造が簡単であり、かつ、作業能率を大幅に向上させる。一般に、この静止イメージング装置は、顕微鏡又はイメージング装置とともに、ゼブラフィシュ照明のための光源を含む。ゼブラフィシュは、ウエルアレイ板の各ウエルに水とともに収容される。各ウエル内のゼブラフィシュは、観察乃至撮像後、しばしば水槽に戻される。ウエルアレイ板の一例が、特許文献1により提案されている。
【0008】
ゼブラフィシュのある1つの臓器に生じた病変等の視認において、ゼブラフィシュの側視が最も容易であることが知られている。さらに、ゼブラフィシュの側視のためには、各ゼブラフィシュをウエルアレイ板の各ウエルの底面上に個別に横臥させ、静止イメージング装置の光軸を略垂直に設けることが簡単である。
【0009】
そこで、本発明者らは、ウエルアレイ板の各ウエル内に水とゼブラフィシュを収容し、顕微鏡で観察する実験を行った。投入を容易とするために、各ウエルの内側面は傾斜している。その結果、ゼブラフィシュは、ゆっくりと沈降した後、底面に達するものの、ゼブラフィシュは、様々な姿勢でウエルの底面や側面に付着することがわかった。好ましくないゼブラフィシュの着底姿勢例を図1図2に示す。
【0010】
図1は、ウエルアレイ板1Aの部分断面図であり、図2は、ウエルアレイ板1Aの部分平面図である。平板状のウエルアレイ板1Aは、ゼブラフィシュ2を収容するための多数のウエル3Aを有する。上端が開口されたウエル3Aはそれぞれ、平坦底部31Aと、この平坦底部31Aを囲む側壁部32Aとにより区画されている。図1図2は、2つのウエル3Aだけを示す。左側のウエル3Aに収容されたゼブラフィシュ2は、平坦底部31A上に正常な姿勢で横臥している。しかし、右側のウエル3Aに収容されたゼブラフィシュ2は、側壁部32Aに接しており、その結果、ウエルアレイ板の上方から垂直に観察乃至撮像する場合、ゼブラフィシュ3の特定患部の良好な画像乃至映像の取得は困難となっている。
【0011】
ピンセットなどを用いて、ゼブラフィシュの着底姿勢を改善することは可能である。けれども、ゼブラフィシュは非常に小さいため、この姿勢修正作業は作業者に過大な負担を要求する。更に位置調整時間によるゼブラフィッシュへのストレスを生じさせたり、ゼブラフィシュにピンセットで傷を与えたりする可能性も生じる。
【0012】
結局、多数のウエルをもつウエルアレイ板は、ゼブラフィシュ・イメージング装置の構成を大幅に簡素化するものの、上記した回転イメージング装置や複数光軸イメージング装置に比べて、多数のゼブラフィシュの対象領域の観察、撮像には不適格であることがわかった。
【0013】
さらに言えば、上記特許文献1に開示されているようなウエルアレイ板の採用は、各ゼブラフィシュの着底姿勢がばらばらであるため、観察乃至撮像において、オペレータは、ピンセットでゼブラフィシュの姿勢や位置を修正することが必須であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願2007/0178012号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明の1つの目的は、ウエルアレイ板を用いる小魚類イメージング装置技術における上記問題点に鑑みなされたものであり、各ウエル内の小魚類の少なくとも姿勢を容易に所望方向へ補正可能な小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置を提供することである。本発明のもう1つの目的は、各ウエル内の小魚類を各ウエルの底面上に一括して横臥させることが可能な小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置を提供することをその目的としている。
【0016】
上記課題を解決するためになされた第1発明の小魚類配列装置は、小魚類をそれぞれ収容する多数のウエルをもつウエルアレイ板を含む。さらに、各ウエル内の小魚類にそれぞれ所定の姿勢を与える魚体付勢部をもつ。この魚体付勢部は、各ウエルの小魚類に直接触れることなく、各ウエル内の小魚類に力学エネルギーを一斉に与える。これにより、各ウエル内の小魚類は、各ウエル内の力学的に最も安定な位置にて、力学的に最も安定な姿勢を保持することができる。
【0017】
したがって、小魚類が個別に収容される多数のウエルが形成されたウエルアレイ板を用いるにもかかわらず、各ウエルの小魚類のイメージングを正確かつ容易に行うことができる。また、ピンセットなどにより小魚類を直接付勢することがないため、小魚類に傷を与えることも防止することができる。
【0018】
好適には、この魚体付勢部は、各ウエル内の小魚類それぞれを、各ウエルの底面に横臥させる。これにより、小魚類の位置制御と、姿勢制御が容易となり、かつ、小魚類の対象領域の視認が容易となる。
【0019】
好適な態様において、イメージング装置は、構成が簡単な静止光学系を有する静止イメージング装置からなる。この静止イメージング装置は、少なくとも顕微鏡乃至電子撮像装置を有する。
【0020】
好適には、イメージング装置は、ウエルアレイ板のウエルの底面に横たわる小魚類を撮像するために略垂直方向に延在する光軸をもつ。ウエルの底面は略水平方向に形成される。好適には、イメージングのために、ウエルアレイ板はウエルの底面と平行に移動される。これにより、ウエルアレイ板の簡単な移動操作により、各ウエル内の小魚類は順番に撮像乃至観察可能となる。その結果、小魚類イメージング装置の構造を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【0021】
装置ストの低減のために、イメージング装置として、既存の顕微鏡や電子撮像装置を用いることができる。言い換えれば、本発明の小魚類イメージング装置用の小魚類配列装置は、ウエルアレイ板及び魚体付勢部のみで構成することができる。したがって、多くの研究機関では、既に各種のイメージング装置を装備しているため、小魚類イメージング装置のトータルコストを低減することができる。
【0022】
好適態様によれば、魚体付勢部は、各ウエル内にそれぞれ下降水流を形成する水流形成手段を含む。各ウエルは、小魚類が横臥可能な平坦底部を有する。側壁部が平坦底部の全周から上方へ立設されている。排水孔が、側壁部の底部又は平坦底部に設けられる。下降水流は、小魚類を平坦底部に押しつけるので、容易に小魚類を横臥させることができる。
【0023】
好適態様によれば、水流形成手段は、各排水孔を通じて各ウエル内の水を吸引する吸水ポンプを含む。各ウエル内には上方から水が供給される。これにより、下降水流を容易に形成することができる。好適には、各排水孔は、ウエルの平坦底部と側壁部との境界近傍に配置される。これにより、下降水流は、小魚類により曲げられて、平坦底部の周囲から排出されるため、排水孔が小魚類の視認の邪魔になることが防止される。
【0024】
好適態様によれば、魚体付勢部は、ウエルアレイ板を所定方向へ機械的に振動させる振動装置を含む。ウエルには、小魚類が水とともに収容される。振動装置としては、超音波振動装置や扁心モータを用いた振動装置あるいは、更に緩慢にウエルアレイ板を揺動させる揺動装置を用いることができる。
【0025】
振動により水がウエルから逸脱するのを防止するために、ウエルアレイ板の上面に遮蔽蓋板を被せることが好適である。これにより、振動により、水がウエルの上端開口から逸脱することが防止される。好適態様によれば、振動装置は、ウエルアレイ板をウエルの平坦底部と平行な方向へ振動させる。これにより、小魚類は平坦底部の中央部に横臥する。
【0026】
好適態様によれば、魚体付勢部は、ウエルアレイ板を回転させる回転体を含む。ウエルアレイ板の回転により生ずる遠心力により、小魚類は、各ウエルの内面、特に好適にはその平坦底部に押しつけられる。これにより、小魚類は平坦底部の中央部に確実に横臥させられる。ウエルアレイ板の回転により水が各ウエルから逸脱するのを防止するために、各ウエルの上端開口を遮蔽する蓋板が採用されることが好適である。
【0027】
好適態様によれば、魚体付勢部は、ウエルアレイ板近傍に配置された磁界形成手段を含む。この磁界形成手段は、各ウエル内の小魚類の体内に収容された磁性物質を磁気付勢することにより、小魚類に所望の姿勢を与える。磁性物質としては、小魚類の餌に導入された微小磁性粉末からなる。好適には、永久磁石からなる磁界形成手段は、小魚類内の磁性物質を各ウエルに隣接する平坦底部乃至側壁部を通じて磁気吸引する。その結果、小魚類は磁気力により、平坦底部上に誘導され、横臥させられる。永久磁石の個数、位置、磁極形状などにより、ウエル内に形成する磁界の3次元分布を調整することができる。
【0028】
好適態様によれば、ウエルアレイ板は、平板状のフレームと、このフレームに保持される多数の小魚類ホルダとを有する。このフレームは、格子状に配列された両端開口の貫通孔を有する。各小魚類ホルダは、各貫通孔に着脱可能に個別に保持される。さらに、各小魚類ホルダは、小魚類が横臥可能な平坦底部と、この平坦底部の全周から上方へ立設された側壁部とを有する。
【0029】
このようにすれば、たとえばウエルアレイ板の多数のゼブラフィシュのイメージングにより選択(スクリーニング)された特定の小魚類ホルダをフレームから抜き出すことにより、この特定の小魚類ホルダに収容された小魚類(たとえばゼブラフィシュ)を複数の方向から精細に観察乃至撮像することができる。また、フレームから抜き出されたこの特定の小魚類ホルダだけを振動することにより、この特定の小魚類ホルダ内の小魚類の姿勢や位置だけを調整することもできる。
【0030】
好適態様によれば、各小魚類ホルダは、平坦底部と側壁部との境界部の近傍に配設された排水孔乃至吸水孔を有する。これにより、水流により、各小魚類ホルダ内の小魚類の姿勢や位置を調節することができる。
【0031】
好適態様によれば、ウエルアレイ板は、列状に配列された両端開口の貫通孔を有する平板状のフレームと、各貫通孔にそれぞれ着脱可能に保持される多数の小魚類ホルダ列とを有する。小魚類ホルダ列はそれぞれ、行方向に配列された多数の小魚類ホルダを有する。小魚類ホルダはそれぞれ、一個の小魚類を横臥させるための平坦底部と、前記平坦底部の全周から上方へ立設された側壁部とを有する。
【0032】
このようにすれば、たとえばウエルアレイ板の多数のゼブラフィシュのイメージングにより選択(スクリーニング)された特定の小魚類ホルダ列をフレームから抜き出すことにより、この特定の小魚類ホルダ列に収容された小魚類(たとえばゼブラフィシュ)を他の方向(特に水平方向)から精細に観察乃至撮像することができる。また、フレームから抜き出されたこの特定の小魚類ホルダ列だけを振動することにより、この特定の小魚類ホルダ内の小魚類の姿勢や位置だけを調整することもできる。
【0033】
好適態様によれば、各小魚類ホルダ列は、各小魚類ホルダの平坦底部と側壁部との境界部の近傍に配設された排水孔乃至吸水孔を有する。これにより、水流により、各小魚類ホルダ内の小魚類の姿勢や位置を調節することができる。
【0034】
上記課題を解決するためになされた第2発明の小魚類配列装置は、多数の小魚類を個別に収容するための多数のウエルが一主面に形成されたウエルアレイ板を有する。このウエルアレイ板は、複数の貫通孔を有する平板状のフレームと、各貫通孔にウエル深さ方向へ相対変位可能に挿入される複数のウエルブロックとを有する。各ウエルブロックはそれぞれ、小魚類を収容するための1個以上のウエルを有する。
【0035】
これにより、ウエルアレイ板の上方乃至下方から一括して各小魚類を観察乃至撮像することができる。この一次イメージングにより選択された特定のウエル内の小魚類は、この特定のウエルを有するウエルブロックをフレームに対して垂直変位させることにより、他のウエル、他のウエルブロック、フレームなどに邪魔されることなく、側面からの観察乃至撮像が可能となる。したがって、このウエルアレイ板を用いることにより、魚体観察精度を低下させることなく、イメージング処理の能率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、従来のウエルアレイ板の一部を示す部分断面図である。
図2図2は、図1に示されるウエルアレイ板の一部を示す部分平面図である。
図3】実施例1の小魚類配列装置の一部を示す部分断面図である。
図4】実施例2の小魚類配列装置を示す模式平面図である
図5図4に示される小魚類配列装置を示す側面図である。
図6図4に示されるウエルアレイ板の一部を示す部分断面図である。
図7】実施例3の小魚類配列装置を示す模式断面図である。
図8図7に示される小魚類配列装置の模式断面図である。
図9】実施例4の小魚類配列装置の一部を示す縦断面図である。
図9A図9の小魚類配列装置の一部を示す平面図である。
図10】実施例4の1つの変形態様を示す模式断面図である。
図11】実施例4のもう一つの変形態様を示す模式断面図である。
図12】実施例4のもう1つの変形態様を示す模式断面図である。
図13】実施例5のウエルアレイ板を示す斜視図である。
図14図13に示されるウエルアレイ板の部分拡大斜視図である。
図15図13に示されるウエルアレイ板の部分拡大斜視図である。
図16】実施例6のウエルアレイ板の一部を示す部分断面図である。
図17】実施例7のウエルアレイ板の一部を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施例1)
本発明の実施例1が図3を参照して説明される。図3は、ゼブラフィシュ・イメージング装置のための小魚類配列装置を示す模式図である。この小魚類配列装置は、ウエルアレイ板1及び吸水ポンプ(魚体付勢部、水流形成手段)5からなる。
【0038】
図3は、ウエルアレイ板1の部分断面を示す。平板状のウエルアレイ板1は、透明樹脂を成形して製造されている。行列状に配列された多数のウエル3が、ウエルアレイ板1の上面に形成されている。上端が開口されたウエル3はそれぞれ、平坦底部31と、この平坦底部31を囲む側壁部32とにより区画されている。平坦底部31の平坦な底面30には、ゼブラフィシュ2が正常な姿勢でそれぞれ横臥されている。底面30は、ゼブラフィシュ2が長方形形状をもち、横臥可能なサイズを有している。側壁部32は、ウエル3を囲む4つの斜面をもつ。これにより、ウエル3の上端開口は、底面30よりも広い長方形の形状をもつ。
【0039】
これにより、ウエル3の底面30に横臥しているゼブラフィシュ2は、電子撮像装置からなるイメージング装置(図示せず)により撮像される。このイメージング装置は図略のベースに固定されており、垂直方向に伸びる光軸をもつ。ウエルアレイ板1は、水平移動される。各ウエル3内のゼブラフィシュ2がイメージング装置の光軸と交差する時、イメージング装置は、ゼブラフィシュ2を撮像する。
【0040】
各ウエル3には、水Wが充填されている。ウエルアレイ板1は、吸水ポンプ5につながる排水孔4を有する。多数の排水孔4が、各ウエル3の側壁部32の最下部に形成された多数の排水口に連通している。吸水ポンプ5を駆動することにより、各ウエル3内の水Wは、外部に排水される。各ウエル3の上方から、水Wが各ウエル3に補給される。その結果、ウエル3内には、下降水流が形成される。ウエル3内に投入されたゼブラフィシュは、しばしば側壁部32に付着する。しかし、この下降水流は、側壁部32に付着するゼブラフィシュを底面30まで降下させ、底面30に押しつける。
【0041】
底面30上のゼブラフィシュ2を底面30の中央部に保持するために、側壁部32に形成された多数の排水口から水Wを吹き出すこともできる。その結果、底面30上のゼブラフィシュ2は、側壁部32から等距離の位置に移動される。これにより、その後に行われるイメージング装置によるゼブラフィシュの観察乃至撮像が容易となる。
【0042】
(実施例2)
本発明の実施例2が図4-図6を参照して説明される。図4は、ゼブラフィシュ・イメージング装置のための小魚類配列装置を示す模式平面図である。図5は、この小魚類配列装置を示す側面図である。図6は、ウエルアレイ板1の部分断面図である。この小魚類配列装置は、ウエルアレイ板1及び振動装置(魚体付勢部)6からなる。
【0043】
行列状に配列された多数のウエル3を有するウエルアレイ板1は、排水孔をもたない点を除いて、実施例1のウエルアレイ板1と同じである。各ウエル3内に、ゼブラフィシュ2が個別に収容されている。ウエルアレイ板1の上面には、平板状の蓋板10が嵌められている。これにより、水及びゼブラフィシュ2は、各ウエル3内に密封される。
【0044】
振動装置6は、ベッド60と、ベッド60の上面に固定された超音波振動装置61、62からなる。超音波振動装置61、62は、ウエルアレイ板1を挟んでおり、ウエルアレイ板1の両端部は、超音波振動装置61、62に支持されている。超音波振動装置61、62は、ウエルアレイ板1を水平方向に振動させる。この振動により、ウエル3の魚体2はウエル3内の水とともに水平方向に振動する。その結果、ウエル3の側壁部に付着するゼブラフィシュ2は、側壁部から離れてウエル3の底面に横臥する。
【0045】
この実施例では、図4に示されるように、振動方向Vは、魚体2の長手方向と直角であるが、振動方向Vと魚体2の長手方向とを平行としてもよい。また、ウエルアレイ板1の振動のために、超音波振動装置61、62の代わりに、より振動数が低く、振幅が大きい機械振動装置、たとえば偏心モータなどを用いても良い。さらに、ウエルアレイ板1を水平方向に更にゆっくりと往復移動させることも可能である。これにより、これらの振動装置の振動力は、ウエルアレイ板1やウエル3内の水を通じてゼブラフィシュ2に作用し、ゼブラフィシュ2は、ウエル3の底面中央部に整列される。
【0046】
(実施例3)
本発明の実施例3が図7-図8を参照して説明される。図7は、ゼブラフィシュ・イメージング装置のための小魚類配列装置を示す模式縦断面図である。図8は、この小魚類配列装置を示す模式横断面図である。この小魚類配列装置は、ウエルアレイ板1及び回転体(魚体付勢部)7からなる。蓋板10により、ウエルアレイ板1の上端開口は遮蔽されている。
【0047】
回転体7は、回転軸70の上端に固定されたドラム71を有する。このドラム71は、底部と側壁部とにより囲まれた上端開口の凹部72を有しており、4個のウエルアレイ板1がこの側壁部の内側面にはめ込まれている。
【0048】
回転軸70を回転する時、各ウエルアレイ板1は回転体7とともに高速回転する。その結果、各ウエル3内のゼブラフィシュは、ウエル3の底面に押しつけられる。なお、図7図8はゼブラフィシュに遠心力を作用させる原理のみを示すが、在来の遠心装置のように、回転終期に回転体7の側壁部乃至ウエルアレイ板1を水平に寝かせることが好適である。
【0049】
(実施例4)
本発明の実施例4が図9および図9Aを参照して説明される。図9は、ゼブラフィシュ・イメージング装置のための永久磁石式小魚類配列装置を示す模式断面図であり、図9Aは、図9に示される小魚類配列装置の一部を示す平面図である。この小魚類配列装置は、ウエルアレイ板1と、1つのウエル当たり2つの永久磁石(魚体付勢部)8、8Aとからなる。ウエルアレイ板1は、多数のウエル3を有し、各ウエル3の底面には、ゼブラフィシュ2が横臥している。ゼブラフィシュ2の体内は、小さい磁性ボール80が存在する。この軟磁性の磁性ボール80は、ゼブラフィシュ2の食餌行動を利用して、ゼブラフィシュ2の体内に導入される。
【0050】
ウエルアレイ板1は、各ウエル3にそれぞれ隣接して側壁部32に形成された下端開口の磁石収容溝36をもつ。一対の永久磁石8、8Aは、磁石収容溝36のウエル側の側面に接着されている。永久磁石8、8Aは、ウエル3の底面30の長手方向において、互いに所定間隔を隔てて配置されている。永久磁石8のN極および永久磁石8AのS極はウエル3に対面している。永久磁石8、8Aは、ウエル3の底面30の近くに磁界を形成する。図9および図9Aに示される破線は、永久磁石8、8A間を流れる磁束を示す。
【0051】
その結果、ゼブラフィッシュ2の腹部に位置する磁性ボール80は、磁気力により永久磁石8、8A側へ引っ張られる。このため、たとえば下降水流などによりウエル2内を降下するゼブラフィッシュ2がウエル3の底面30に到着する直前に、磁性ボール80に磁気力を作用させることにより、図9および図9Aに示される横臥姿勢を確実にゼブラフィッシュ2に与えることができる。ウエル3内に形成すべき磁界の強さや磁界の方向などは、永久磁石8、8Aの残留磁界、形状、接着位置を調整することにより、種々調整可能である。さらに、永久磁石8、8Aの位置を調節可能としてもよい。
【0052】
実施例4の変形態様が図10-図12を参照して説明される。図10によれば、一個の永久磁石8がウエル3の平坦底部を介して、ゼブラフィシュ2の直下に配置される。永久磁石8の上面は、所定間隔を隔ててN極及びS極の両方をもつ。
【0053】
図11は、永久磁石8の着磁方向を変更した例を示す。その結果、ウエル3の下部における磁界パターンが変更される。図12は、ウエルアレイ板1の変形態様を示す。このウエルアレイ板1は、隣接するウエル3を囲む側壁部32を薄い平板により形成したものである。これにより、各ウエル3の周囲に格子状の凹部34が形成される。その結果、永久磁石8は、平坦底部31を通じてウエル3内の空間に作用するだけでなく、側壁部32を通じてウエル3内の空間に作用することができる。
【0054】
(実施例5)
本発明の実施例5が図13-図15を参照して説明される。図13は、ウエルアレイ板1を示す斜視図である。図14図15は、このウエルアレイ板1の部分拡大斜視図である。図13に示されるように、このウエルアレイ板1は、格子状に形成された96個の貫通孔13を有するフレーム11と、各貫通孔13に個別に収容される96個のウエルブロック12とを有する。フレーム11は、樹脂成形により平板状に形成されている。各貫通孔13は、略正方形の断面を有する角孔からなる。各ウエルブロック12はそれぞれ、一個のウエル3を有している。ただし、図13-図15において、1つのウエルブロック12だけが図示されている。
【0055】
したがって、ウエルブロック12は、図略の平坦底部と、この平坦底部を囲んで立設された側壁部32とからなる。1つの側壁部から把手部33が突出している。これら平坦底部及び側壁部32に囲まれて、ゼブラフィシュを収容するためのウエル3が区画形成されている。図15に示されるように、各ウエルブロック12は、各貫通孔13に対して垂直方向へ着脱可能となっている。
【0056】
図略のイメージング装置による撮像動作が、以下に説明される。まず、96個のウエルブロック12がフレーム11の各貫通孔13に挿入される。次に各ウエルブロック12のウエルにゼブラフィシュ及び水がそれぞれ導入される。次に、上記された魚体付勢部を用いて、各ゼブラフィシュの横臥姿勢が整えられる。次に、イメージング装置を用いて、格子状に配列された各ゼブラフィシュが上方乃至下方から撮像される。
【0057】
その後、この一次イメージングにより特定されたゼブラフィシュを収容するウエルブロック12が上方へ抜き出され、この特定のゼブラフィシュは、水平方向を含む種々の方向から精密に観察乃至撮像される。この二次イメージングにより、ゼブラフィシュが判断が難しい病変形状をもつ場合でも、その正確な判断が可能となる。
【0058】
(実施例6)
本発明の実施例6が図16を参照して説明される。図16は、ウエルアレイ板1の部分断面図である。図16に示されるように、このウエルアレイ板1は、多数の貫通孔13を有するフレーム11と、各貫通孔13に個別に収容される多数のウエルブロック12とを有する。したがって、このウエルアレイ板1は、実施例5のウエルアレイ板1と本質的に同じ構造をもつ。
【0059】
けれども、この実施例のウエルアレイ板1によれば、各ウエルブロック12は、フレーム11の厚さよりも大幅に高く形成されている。さらに、各ウエルブロック12の側壁部32の上端には、鍔部14が形成されている。ウエルブロック12は、フレーム11に対して垂直方向に移動可能となっている。しかし、鍔部14がフレーム11の上端に接触することにより、ウエルブロック12がフレームから下方へ脱落することが防止される。
【0060】
一次イメージングにおいて、各ウエルブロック12は上方へ変位される。精細な観察が必要と判断されたゼブラフィシュを収容する特定のウエルブロック12は、フレーム11に対して下方に変位される。これにより、プリズムやミラーを用いることなく、このウエルブロック12内のゼブラフィシュを水平方向へ観察乃至撮像することが可能となる。
【0061】
(実施例7)
本発明の実施例7が図17を参照して説明される。図17は、ウエルアレイ板1の部分平面図である。このウエルアレイ板1は、多数の貫通孔13を有するフレーム11と、各貫通孔13に個別に収容される多数のウエルブロック12とを有する。したがって、このウエルアレイ板1は、実施例6のウエルアレイ板1に類似した構造をもつ。
【0062】
けれども、この実施例のウエルアレイ板1によれば、フレーム11の各貫通孔13は、細長い水平断面を有する。各貫通孔13は、互いに平行に配列されている。各貫通孔13に個別に挿入される各ウエルブロック12も、それぞれ細長い水平断面を有している。各ウエルブロック12はそれぞれ、一列に配列された多数のウエルを有する。
【0063】
一次イメージングにおいて精細な観察が必要と判断されたゼブラフィシュを収容する特定のウエルブロック12は、フレーム11から抜き出される。又は、フレーム11に対して下方に変位される。これにより、プリズムやミラーを用いることなく、このウエルブロック12内のゼブラフィシュを所定の水平方向へ観察乃至撮像することが可能となる。特に、図17に示されるウエル形状を採用すれば、水平方向からのゼブラフィシュの腹部の観察乃至撮像が容易となる。
【符号の説明】
【0064】
1 ウエルアレイ板
2 ゼブラフィシュ
3 ウエル
30 ウエルアレイ板の底面
31 ウエルアレイ板の平坦底部
32 ウエルアレイ板の側壁部
33 ウエルブロックの把手部
36 磁石収容溝
4 排水孔
5 吸水ポンプ(魚体付勢部、水流形成手段)
6 振動装置(魚体付勢部)
60 振動装置のベッド
61、62 超音波振動装置
7 回転体(魚体付勢部)
70 回転体の回転軸
71 回転体のドラム
72 回転体の凹部
8、8A 永久磁石(魚体付勢部)
80 ゼブラフィシュ内の磁性ボール
10 蓋板
11 ウエルアレイ板のフレーム
12 ウエルアレイ板のウエルブロック
13 ウエルアレイ板1の貫通孔
14 ウエルブロックの鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17