特許第6180139号(P6180139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180139保護膜形成用複合シートおよび保護膜形成用フィルム付チップの製造方法
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  • 特許6180139-保護膜形成用複合シートおよび保護膜形成用フィルム付チップの製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180139
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シートおよび保護膜形成用フィルム付チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170807BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170807BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20170807BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170807BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J133/04
   C09J11/06
   B32B27/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-48330(P2013-48330)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-175548(P2014-175548A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 佳
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033636(JP,A)
【文献】 特開2012−033637(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047610(WO,A1)
【文献】 特開平09−165558(JP,A)
【文献】 特開2011−228502(JP,A)
【文献】 特開2008−060434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B32B 27/00
C09J 7/02
C09J 11/06
C09J 133/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び第1粘着剤層を構成層として含む粘着シートの第1粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムが第2粘着剤層を介して設けられた保護膜形成用複合シートであって、
第2粘着剤層の平面視における形状が、粘着シートの平面視における形状に含まれる形状であり、
第2粘着剤層が、アクリル重合体(A)、架橋剤(B)を含有する非エネルギー線硬化性粘着剤組成物からなり、
アクリル重合体(A)が、架橋剤(B)の官能基と反応する官能基を有し、
架橋剤(B)の官能基が、アクリル重合体(A)の官能基に対して1当量以上であり、
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にある、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
非エネルギー線硬化性粘着剤組成物が、さらに可塑剤(C)を含有する請求項に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
可塑剤(C)の含有量が、アクリル重合体(A)100質量部に対して5〜70質量部である請求項に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
以下の工程(1)〜(3)を含む保護膜形成用フィルム付チップの製造方法;
工程(1):請求項1〜のいずれかに記載の保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムをワークに貼付する工程、
工程(2):保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を得る工程、
工程(3):保護膜形成用フィルムまたは保護膜と、第2粘着剤層とを分離する工程。
【請求項5】
以下の工程(4)をさらに含む請求項に記載の保護膜形成用フィルム付チップの製造方法;
工程(4):ワークと、保護膜形成用フィルムまたは保護膜とをダイシングする工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや半導体チップに保護膜を形成でき、かつ、半導体チップの製造効率の向上が可能な保護膜形成用複合シートに関する。特に、いわゆるフェースダウン(face down)方式で実装される半導体チップの製造に用いられる保護膜形成用複合シートに関する。
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプなどの電極を有する半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう。)が用いられ、該電極が基板と接合される。このため、チップの回路面とは反対側の面(チップ裏面)は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなったチップ裏面は、有機膜により保護されることがある。従来、この有機膜からなる保護膜を有するチップは、液状の樹脂をスピンコート法によりウエハ裏面に塗布し、乾燥し、硬化してウエハとともに保護膜を切断して得られる。しかしながら、このようにして形成される保護膜の厚み精度は充分でないため、製品の歩留まりが低下することがあった。
【0004】
上記問題を解決するため、ダイシングテープ上に半導体裏面用フィルムを積層したダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムが開示されている(特許文献1)。
【0005】
半導体裏面用フィルムを支持するダイシングテープには、リングフレーム等の治具に対する良好な保持力と、ピックアップ時における良好な剥離性とが求められる。
【0006】
近年の半導体パッケージの薄型化、小型化により、上記の保持力および剥離性を同時に達成する必要があり、同時解決が困難を極めている。チップをピックアップするための優れた剥離性を得るためには、ダイシングテープの粘着剤層を構成する粘着剤を低粘着性とすることが考えられる。しかしながら、粘着剤を低粘着性とすると、リングフレームに対する良好な保持力が失われる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−33637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような問題を解決するため、特許文献1においては、半導体裏面用フィルムとダイシングテープとの間に、紫外線硬化型粘着剤からなる粘着剤層を設け、リングフレームに対する保持力とピックアップ時における剥離性との両立を図っている。このようなダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いた半導体装置の製造においては、紫外線照射工程を行うために、工程数が多く、設備面とコスト面の増加が懸念される。
【0009】
本発明の課題は、半導体装置の製造工程数を削減することができ、リングフレーム等の治具に対して良好な保持力を有し、ピックアップ時における剥離性に優れる保護膜形成用複合シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の要旨を含む。
〔1〕基材及び第1粘着剤層を構成層として含む粘着シートの第1粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムが第2粘着剤層を介して設けられた保護膜形成用複合シートであって、
第2粘着剤層の平面視における形状が、粘着シートの平面視における形状に含まれる形状であり、
第2粘着剤層が、アクリル重合体(A)、架橋剤(B)を含有する非エネルギー線硬化性粘着剤組成物からなり、
アクリル重合体(A)が、架橋剤(B)の官能基と反応する官能基を有し、
架橋剤(B)の官能基が、アクリル重合体(A)の官能基に対して1当量以上であり、
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にある、保護膜形成用複合シート。
【0012】
〕非エネルギー線硬化性粘着剤組成物が、さらに可塑剤(C)を含有する〔〕に記載の保護膜形成用複合シート。
【0013】
〕可塑剤(C)の含有量が、アクリル重合体
(A)100質量部に対して5〜70質量部である〔〕に記載の保護膜形成用複合シート。
【0015】
〕以下の工程(1)〜(3)を含む保護膜形成用フィルム付チップの製造方法;
工程(1):〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムをワークに貼付する工程、
工程(2):保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を得る工程、
工程(3):保護膜形成用フィルムまたは保護膜と、第2粘着剤層とを分離する工程。
【0016】
〕以下の工程(4)をさらに含む〔〕に記載の保護膜形成用フィルム付チップの製造方法;
工程(4):ワークと、保護膜形成用フィルムまたは保護膜とをダイシングする工程。
【発明の効果】
【0017】
本発明の保護膜形成用複合シートによれば、半導体装置の製造工程数を削減することができる。また、本発明の保護膜形成用複合シートは、リングフレーム等の治具に対して良好な保持力を有し、ピックアップ時における剥離性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る保護膜形成用複合シートの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の保護膜形成用複合シートの詳細を説明する。
保護膜形成用複合シートは、基材及び第1粘着剤層を構成層として含む粘着シートの第1粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムが第2粘着剤層を介して設けられている。
【0020】
基材
基材は特に限定されず、たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレン テレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0021】
基材の厚さは特に限定されず、好ましくは20〜300μm、より好ましくは60〜100μmである。基材の厚みを上記範囲とすることで、保護膜形成用複合シートが十分な可とう性を有するため、ワーク(例えば半導体ウエハ等)に対して良好な貼付性を示す。
【0022】
また、基材が第1粘着剤層と接する面には、第1粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー等の他の層を設けてもよい。
【0023】
第1粘着剤層
本発明における第1粘着剤層は、基材の一方の面に積層され、従来より公知の種々の粘着剤組成物により形成され得る。第1粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤組成物が用いられる。
【0024】
第1粘着剤層の厚さは、1〜100μmであることが好ましく、さらに1〜60μmであることが好ましく、特に1〜30μmであることが好ましい。
【0025】
第2粘着剤層
本発明における第2粘着剤層は、非エネルギー線硬化性粘着剤組成物からなる。第2粘着剤層を非エネルギー線硬化性粘着剤組成物で構成することで、エネルギー線照射工程(例えば紫外線照射工程等)を行う必要がないため、半導体装置の製造工程を簡略化できる。本発明において非エネルギー線硬化性粘着剤組成物とは、該組成物を構成する成分中に未反応の重合性基が実質的に含まれていないものをいう。
【0026】
非エネルギー線硬化性粘着剤組成物としては特に限定されないが、アクリル系粘着剤組成物を例として具体的に説明する。
【0027】
アクリル系粘着剤組成物は、粘着剤組成物に十分な粘着性および造膜性(シート形成性)を付与するためにアクリル重合体(A)、架橋剤(B)を含有することが好ましく、さらに可塑剤(C)を含有することがより好ましい。
【0028】
(A)アクリル重合体
アクリル重合体(A)は、少なくともこれを構成するモノマーに、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有する重合体であり、後述する架橋剤(B)の官能基と反応する官能基(以下、「反応性官能基」と記載することがある。)を有することが好ましい。アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0029】
また、アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70〜30℃、さらに好ましくは−60〜20℃の範囲にある。アクリル重合体(A)のガラス転移温度を上記範囲とすることで、保護膜形成用フィルム付チップ(硬化後の保護膜が固着したチップを含む。以下同じ。)のピックアップ性を向上させることができる。さらに、アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にあれば、保護膜形成用フィルム付チップのピックアップ性を著しく向上させることができ、非エネルギー線硬化性粘着剤組成物に可塑剤(C)を配合せず、または配合量が少ない場合にも、高い保護膜形成用フィルム付チップのピックアップ性を得ることができる。
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、アクリル重合体(A)を構成するモノマーの組み合わせにより調整することができる。
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、アクリル重合体(A)を構成するモノマーの単独重合体のガラス転移温度に基づき、以下の計算式(FOXの式)で求められる。アクリル重合体(A)のTgをTg copolymer、アクリル重合体(A)を構成するモノマーXの単独重合体のTgをTg x、モノマーYの単独重合体のTgをTg y、モノマーXのモル分率をWx(mol%)、モノマーYのモル分率をWy(mol%)として、FOXの式は以下の式(1)で表される。
100/Tg copolymer=Wx/Tg x+Wy/Tg y ・・・(1)
【0030】
さらにFOXの式は、アクリル重合体(A)が3つ以上のモノマーによる共重合組成となっても、上式(1)と同様の加成性が成り立つものとして扱うことができる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレート;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N−メチロールアクリルアミド等が共重合されていてもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
アクリル重合体(A)の反応性官能基は、後述する架橋剤(B)の官能基と反応して三次元網目構造を形成し第2粘着剤層の凝集性を高めるため、後述する保護膜形成用フィルムや保護膜形成用フィルムを硬化して得られる保護膜を第2粘着剤層から剥離することが容易になる。アクリル重合体(A)の反応性官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が挙げられる。これらのうちでも、架橋剤として好ましい、後述する有機多価イソシアネート化合物と選択的に反応させやすいことから、水酸基であることが好ましい。反応性官能基は、上述した水酸基含有(メタ)アクリレートやアクリル酸等の反応性官能基を有する単量体を用いてアクリル重合体(A)を構成することで、アクリル重合体(A)に導入できる。
【0033】
この場合、アクリル重合体(A)は、その構成する全単量体中、反応性官能基を有する単量体を1〜50質量%含むことが好ましく、2〜15質量%含むことがさらに好ましい。アクリル重合体(A)における反応性官能基を有する単量体の含有量が1質量%未満であると、アクリル重合体(A)の架橋密度が低下し、第2粘着剤層から保護膜形成用フィルムや保護膜を剥離することが困難になることがある。また、アクリル重合体(A)における反応性官能基を有する単量体の含有量が50質量%を超えると、一般に極性の高い反応性官能基同士の相互作用が過大となり、アクリル重合体(A)の取扱いが困難となる懸念がある。
【0034】
(B)架橋剤
本発明においては、粘着剤層に凝集性を付与するため、非エネルギー線粘着剤組成物に架橋剤(B)を添加することが好ましい。架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤等が挙げられ、反応性の高さから有機多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0035】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、イソシアヌレート体、 アダクト体(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物、例えばトリメチロールプロパンアダクトキシリレンジイソシアネート等)や、有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0036】
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0037】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0038】
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0039】
金属キレート系架橋剤の具体な例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート系架橋剤;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート系架橋剤;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート系架橋剤などが挙げられる。
【0040】
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記のような架橋剤(B)が有する官能基(例えばイソシアネート基)は、アクリル重合体(A)の反応性官能基(例えば水酸基)に対して、好ましくは1当量以上、より好ましくは1〜5当量である。本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、第2粘着剤層に含まれる架橋剤(B)の官能基がアクリル重合体(A)の反応性官能基に対して1当量未満であると、第2粘着剤層の凝集性が低下し、第2粘着剤層上に設けられた保護膜形成用フィルムや保護膜の剥離が困難となる。その結果、ピックアップ性が低下する。アクリル重合体(A)の反応性官能基数に対する架橋剤の官能基数を上記範囲とすることで、第2粘着剤層の凝集性の低下を抑制することができる。また、アクリル系粘着剤組成物が可塑剤(C)を含有する場合には、第2粘着剤層に形成される三次元網目構造中に後述する可塑剤(C)を均一に保持したまま、保護膜形成用フィルムや保護膜と第2粘着剤層との界面に可塑剤(C)が滲出し、密着性が過度に低下することを防止できる。その結果、ダイシング性とピックアップ性に優れた保護膜形成用複合シートを得ることができる。
【0042】
架橋剤(B)は、アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは15〜50質量部、特に好ましくは18〜50質量部の比率で用いられる。架橋剤の配合量を上記範囲とすることで、アクリル重合体の反応性官能基数に対する架橋剤の官能基数の調整が容易となる。
【0043】
(C)可塑剤
可塑剤(C)としては、1,2−シクロヘキシルジカルボン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、安息香酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。このような可塑剤(C)を用いることで、厚み40〜150μmの薄型ウエハのダイシング性や保護膜形成用フィルム付チップのピックアップ性が良好となる。
これらのうちでも、芳香環またはシクロアルキル環に2つ以上のカルボキシル基を付加した多価カルボン酸の一部または全部がアルコールとエステル化した有機酸エステル化合物が、ピックアップ性を向上させる効果が高く好ましい。その中でも、1,2−シクロヘキシルジカルボン酸エステル、フタル酸エステル、ピロメリット酸エステル、トリメリット酸エステルがより好ましく、これらを具体的に表すと、下記式(I)〜(IV)に示す多価カルボン酸におけるカルボキシル基の一部または全部がアルコールとエステル化した有機酸エステル化合物である。多価カルボン酸のカルボキシル基とエステルを形成するアルコールとしては、エタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−ブタノール、2−ベンジル−1−ブタノール、イソデカノール、1−オクタノール等が挙げられる。一分子にこれらの2種以上とのエステルが存在していてもよい。
【0044】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0045】
可塑剤(C)の含有量は、アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜60質量部、さらに好ましくは20〜50質量部である。可塑剤(C)の含有量がこのような範囲にあることで、保護膜形成用フィルム付チップのダイシング性とピックアップ性をさらに向上することができる。
【0046】
また、第2粘着剤層には、他の成分として、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0047】
第2粘着剤層の厚さは特に限定されないが、通常1〜100μm、好ましくは1〜60μm、より好ましくは1〜30μmである。
【0048】
第2粘着剤層の平面視における形状は、上述した粘着シートの平面視における形状に含まれる形状であれば特に限定されない。
【0049】
(保護膜形成用フィルム)
保護膜形成用フィルムは、(1)シート形状維持性、(2)初期接着性、(3)硬化性を有しているものであればよい。
【0050】
保護膜形成用フィルムには、バインダー成分の添加により(1)シート形状維持性および(3)硬化性を付与することができ、バインダー成分としては、重合体成分および硬化性成分を含有する第1のバインダー成分または重合体成分および硬化性成分の性質を兼ね備えた硬化性重合体成分を含有する第2のバインダー成分を用いることができる。
【0051】
保護膜形成用フィルムを硬化までの間、被着体に仮着させておくための機能である(2)初期接着性は、感圧接着性であってもよく、熱により軟化して接着する性質であってもよい。(2)初期接着性は、通常バインダー成分の諸特性や、後述する無機フィラーの配合量の調整などにより制御される。
【0052】
(第1のバインダー成分)
第1のバインダー成分は、重合体成分と硬化性成分を含有することにより、保護膜形成用フィルムにシート形状維持性と硬化性を付与する。なお、第1のバインダー成分は、第2のバインダー成分と区別する便宜上、硬化性重合体成分を含有しない。
【0053】
重合体成分
重合体成分は、保護膜形成用フィルムにシート形状維持性を付与することを主目的として保護膜形成用フィルムに添加される。
【0054】
上記の目的を達成するため、重合体成分の重量平均分子量(Mw)は、通常20,000以上であり、20,000〜3,000,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定される場合の値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8120GPC」に、高速カラム「TSK gurd column HXL−H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0055】
なお、後述する硬化性重合体と区別する便宜上、重合体成分は後述する硬化機能官能基を有しない。
【0056】
重合体成分としては、アクリル系重合体、ポリエステル、フェノキシ樹脂(後述する硬化性重合体と区別する便宜上、エポキシ基を有しないものに限る。)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等を用いることができる。また、これらの2種以上が結合したもの、たとえば、水酸基を有するアクリル重合体であるアクリルポリオールに、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを反応させることにより得られるアクリルウレタン樹脂等であってもよい。さらに、2種以上が結合した重合体を含め、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系重合体を用いる場合には、上述のアクリル系粘着剤組成物が含有するアクリル重合体(A)と同じものを用いることができる。
【0057】
非アクリル系樹脂
また、重合体成分として、ポリエステル、フェノキシ樹脂(後述する硬化性重合体と区別する便宜上、エポキシ基を有しないものに限る。)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体またはこれらの2種以上が結合したものから選ばれる非アクリル系樹脂の1種単独または2種以上の組み合わせを用いてもよい。このような樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜100,000のものが好ましく、20,000〜80,000のものがさらに好ましい。
【0058】
非アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−30〜150℃、さらに好ましくは−20〜120℃の範囲にある。
【0059】
非アクリル系樹脂を、アクリル系重合体と併用した場合には、後述する保護膜形成用複合シートを用いて被着体へ保護膜形成用フィルムを転写する際に、保護膜形成用フィルムと第2粘着剤層の層間剥離を容易に行うことができる。また、転写面の凹凸に保護膜形成用フィルムが追従しやすくなる傾向がある。
【0060】
非アクリル系樹脂を、アクリル系重合体と併用する場合には、非アクリル系樹脂の含有量は、非アクリル系樹脂とアクリル系重合体との質量比において、通常1:99〜60:40、好ましくは1:99〜30:70の範囲にある。非アクリル系樹脂の含有量がこの範囲にあることにより、上記の効果をより高い程度で得ることができる。
【0061】
硬化性成分
硬化性成分は、保護膜形成用フィルムに硬化性を付与することを主目的として保護膜形成用フィルムに添加される。硬化性成分としては、熱硬化性成分を用いることができる。熱硬化性成分は、少なくとも加熱により反応する官能基を有する化合物を含有する。硬化性成分が有する官能基同士が反応し、三次元網目構造が形成されることにより硬化が実現される。硬化性成分は、重合体成分と組み合わせて用いるため、保護膜形成用フィルムを形成するための塗工用組成物の粘度上昇を抑制し、取り扱い性を向上させる等の観点から、通常その重量平均分子量(Mw)は、10,000以下であり、100〜10,000であることが好ましい。
【0062】
熱硬化性成分
熱硬化性成分としては、たとえば、エポキシ系熱硬化性成分が好ましい。エポキシ系熱硬化性成分は、エポキシ基を有する化合物を含有し、エポキシ基を有する化合物と硬化剤を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0063】
エポキシ基を有する化合物
エポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」ということがある。)としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
熱硬化剤
熱硬化剤は、エポキシ化合物に対する硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0065】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0066】
熱硬化剤の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。
【0067】
硬化促進剤
硬化促進剤を、保護膜形成用フィルムの熱硬化の速度を調整するために用いてもよい。硬化促進剤は、特に、熱硬化性成分として、エポキシ系熱硬化性成分を用いるときに好ましく用いられる。
【0068】
好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0069】
硬化促進剤は、エポキシ化合物および熱硬化剤の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の量で含まれる。硬化促進剤を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着性を有し、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高い信頼性を達成することができる。硬化促進剤の含有量が少ないと硬化不足で十分な接着性が得られず、過剰であると高い極性をもつ硬化促進剤は高温度高湿度下で保護膜形成用フィルム中を接着界面側に移動し、偏析することにより半導体装置の信頼性を低下させることがある。
【0070】
(第2のバインダー成分)
第2のバインダー成分は、硬化性重合体成分を含有することにより、保護膜形成用フィルムに造膜性(シート形成性)と硬化性を付与する。
【0071】
硬化性重合体成分
硬化性重合体成分は、硬化機能官能基を有する重合体である。硬化機能官能基は、互いに反応して三次元網目構造を構成しうる官能基であり、加熱により反応する官能基が挙げられる。
【0072】
硬化機能官能基は、硬化性重合体の骨格となる連続構造の単位中に付加していてもよいし、末端に付加していてもよい。硬化機能官能基が硬化性重合体成分の骨格となる連続構造の単位中に付加している場合、硬化機能官能基は側鎖に付加していてもよいし、主鎖に直接付加していてもよい。硬化性重合体成分の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用フィルムにシート形状維持性を付与する目的を達成する観点から、通常20,000以上である。
【0073】
加熱により反応する官能基としてはエポキシ基が挙げられる。エポキシ基を有する硬化性重合体成分としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂が挙げられ、具体的な製品名としては、三菱化学株式会社製のjER1256、jER4250等が挙げられる。
【0074】
また、エポキシ基を有する硬化性重合体成分は、上述のアクリル系重合体と同様の重合体であって、単量体として、エポキシ基を有する単量体を用いて重合したもの(エポキシ基含有アクリル系重合体)であってもよい。このような単量体としては、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0075】
エポキシ基含有アクリル系重合体を用いる場合、その好ましい態様はアクリル系重合体と同様である。
【0076】
エポキシ基を有する硬化性重合体成分を用いる場合には、硬化性成分としてエポキシ系熱硬化性成分を用いる場合と同様、熱硬化剤や、硬化促進剤を併用してもよい。
【0077】
第2のバインダー成分は、硬化性重合体成分と併せて、上述の重合体成分や硬化性成分を含有していてもよい。
【0078】
保護膜形成用フィルムが熱硬化性成分および熱硬化性重合体成分のいずれか単独または両方を含有する場合には、保護膜形成用フィルムは熱硬化性を有することとなる。より十分な熱硬化性を保護膜形成用フィルムに付与するためには、保護膜形成用フィルムが少なくとも熱硬化性成分を含有していることが好ましい。しかしながら、保護膜形成用フィルムが熱硬化性成分のみを含有する場合には、保護膜形成用フィルムのシート形状維持性が劣ることがある。そこで、保護膜形成用フィルムは、熱硬化性成分と、重合体成分および熱硬化性重合体成分のいずれか単独または両方と、を含有することが好ましい。
【0079】
保護膜形成用フィルムにさらに十分な熱硬化性を付与する観点から、保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分の量は、重合体成分および硬化性重合体成分の合計100質量部に対して、50〜300質量部であることが好ましく、70〜250質量部であることがより好ましい。
【0080】
保護膜形成用フィルムには、バインダー成分のほか、以下の成分を含有させてもよい。
【0081】
無機フィラー
保護膜形成用フィルムは、無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを保護膜形成用フィルムに配合することにより、硬化後の保護膜形成用フィルムにおける熱膨張係数を調整することが可能となり、被着体である半導体チップに対して硬化後の保護膜形成用フィルムの熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の保護膜形成用フィルムの吸湿率を低減させることも可能となる。
【0082】
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。上記無機フィラーは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。上述の効果をより確実に得るための、無機フィラーの含有量の範囲としては、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分の質量に占める割合が、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜75質量%、特に好ましくは15〜60質量%である。
【0083】
着色剤
保護膜形成用フィルムには、着色剤を配合することができる。着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等による半導体装置の誤作動を防止することができる。また、レーザーマーキング等の手段により保護膜形成用フィルムに刻印を行った場合に、文字、記号等のマークが認識しやすくなるという効果がある。
着色剤としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤の配合量は、保護膜形成用フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0084】
カップリング剤
無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤を、保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性および/または保護膜形成用フィルムの凝集性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤を使用することで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。このようなカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうちでも、シランカップリング剤が好ましい。
【0085】
シランカップリング剤としては、その有機官能基と反応する官能基が、重合体、硬化性成分や硬化性重合体成分などが有する官能基と反応する基であるシランカップリング剤が好ましく使用される。
このようなシランカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0086】
シランカップリング剤は、重合体成分、硬化性成分および硬化性重合体成分の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0087】
汎用添加剤
保護膜形成用フィルムには、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0088】
保護膜形成用フィルムは、単一組成のフィルムであってもよく、また組成の異なる2種以上のフィルムの積層フィルムであってもよい。2種以上のフィルムで構成する場合、たとえば、半導体ウエハに接着されるフィルムには、フィルムの接着性を向上させうる比較的多量に配合し、他方のフィルムには、耐擦過性の向上等のために硬化性成分の配合量を増加してもよい。
【0089】
保護膜形成用フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜250μm、特に好ましくは7〜200μmである。
【0090】
上記のような各層からなる、本発明の保護膜形成用複合シートの構成を図1に示す。図1に示すように、保護膜形成用複合シート10は、基材1及び第1粘着剤層2を構成層として含む粘着シート5の第1粘着剤層2上に、保護膜形成用フィルム4が第2粘着剤層3を介して設けられている。保護膜形成用フィルム4は、第2粘着剤層3上に剥離可能に形成される。保護膜形成用フィルム4は、ワークと略同形状またはワークの形状をそっくり含むことのできる形状であれば特に限定されず、図1に示すように第2粘着剤層3と同形状としてもよい。
【0091】
保護膜形成用複合シートの形状は、枚葉のものに限られず、長尺の帯状のものであってもよく、これを巻収してもよい。
【0092】
また、保護膜形成用複合シートの使用前に、保護膜形成用フィルムや第1粘着剤層、第2粘着剤層を保護するために、保護膜形成用フィルム上に剥離シートを積層しておいてもよい。剥離シートとしては、上述した基材として例示したフィルムを用いることができる。剥離シートの保護膜形成用フィルムに接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が比較的低い剥離シートは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また剥離シートの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0093】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0094】
上記の剥離剤を用いて剥離シートの基体となるフィルム等の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された剥離シートを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成すればよい。
【0095】
また、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などによりフィルムの積層を行うことにより剥離シートの表面張力を調整してもよい。すなわち、少なくとも一方の面の表面張力が、上述した剥離シートの保護膜形成用フィルムと接する面のものとして好ましい範囲内にあるフィルムを、当該面が保護膜形成用フィルムと接する面となるように、他のフィルムと積層した積層体を製造し、剥離シートとしてもよい。
【0096】
図1に示す構成の保護膜形成用複合シートによれば、保護膜形成用フィルムを取り囲む領域において、第1粘着剤層の十分な接着性により、保護膜形成用複合シートを治具に接着することができる。それとともに、保護膜形成用フィルムと第2粘着剤層との界面における接着性(密着力)を制御し、保護膜形成用フィルム付チップのピックアップを容易にすることができる。
また、保護膜形成用フィルムをワークに貼付後、保護膜形成用複合シートがダイシング工程においてワークを支持するためのダイシングシートとして機能する場合に、保護膜形成用フィルムや保護膜と第2粘着剤層との間の密着性が保たれ、ダイシング工程において保護膜形成用フィルム付チップが剥離(チップ飛散)することを抑制できるという効果が得られる。保護膜形成用複合シートが、ダイシング工程においてワークを支持するためのダイシングシートとして機能する場合、ダイシング工程において保護膜形成用フィルム付ウエハに別途ダイシングシートを貼り合せてダイシングをする必要がなくなり、半導体装置の製造工程を簡略化できる。
【0097】
このような保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムは、チップの保護膜とすることができる。保護膜形成用フィルムはフェースダウン方式のチップ裏面に貼付され、適当な手段により硬化されて封止樹脂の代替としてチップを保護する機能を有する。また、保護膜形成用フィルムを半導体ウエハに貼付した場合には、保護膜がウエハを補強する機能を有するためにウエハの破損等を防止しうる。
【0098】
[保護膜形成用複合シートの製造方法]
次に、図1に示す保護膜形成用複合シートの製造方法の一例について説明するが、本発明の保護膜形成用複合シートは、このような製造方法により得られるものに限定されるものではない。
まず、基材の表面に第1粘着剤層を形成し、粘着シートを得る。基材の表面に第1粘着剤層を設ける方法は特に限定されず、剥離シート(第1剥離シート)上に所定の膜厚になるように、第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物(第1粘着剤組成物)を塗布し形成した第1粘着剤層を基材表面に転写する方法;基材表面に第1粘着剤組成物を直接塗布して第1粘着剤層を形成する方法;が挙げられる。
剥離シートとしては、上述した基材として例示したフィルムを用いることができる。
【0099】
また、別の剥離シート(第2剥離シート)上に、第2粘着剤層を構成する非エネルギー線硬化性粘着剤組成物(第2粘着剤組成物)を塗布して第2粘着剤層を形成する。次いで、別の剥離シート(第3剥離シート)を第2粘着剤層上に積層し、第2剥離シート/第2粘着剤層/第3剥離シートの積層体を得る。
【0100】
また、別の剥離シート(第4剥離シート)上に保護膜形成用組成物を塗布し保護膜形成用フィルムを形成する。次いで、別の剥離シート(第5剥離シート)を保護膜形成用フィルム上に積層し、第4剥離シート/保護膜形成用フィルム/第5剥離シートの積層体を得る。
【0101】
次いで、第2剥離シート/第2粘着剤層/第3剥離シートの積層体から第3剥離シートを、第4剥離シート/保護膜形成用フィルム/第5剥離シートの積層体から第4剥離シートを剥離しながら、第2粘着剤層と保護膜形成用フィルムを積層しつつ、保護膜形成用フィルムに貼付されるワークと略同形状あるいはワークの形状をそっくり含むことのできる形状に、第2粘着剤層と保護膜形成用フィルムとを切込み、残余の部分を除去して、第2剥離シート/第2粘着剤層/保護膜形成用フィルム/第5剥離シートの積層体を得る。
【0102】
そして、第1粘着剤層の上に第1剥離シートが積層されている場合には第1剥離シートを、第2剥離シート/第2粘着剤層/保護膜形成用フィルム/第5剥離シートからなる積層体の第2剥離シートを剥離しながら、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを積層し、基材/第1粘着剤層/第2粘着剤層/保護膜形成用フィルム/第5剥離シートからなる積層体の保護膜形成用複合シートを得る。
【0103】
[保護膜形成用フィルム付チップの製造方法]
次に、本発明の保護膜形成用複合シートを用いた保護膜形成用フィルム付チップの製造方法について説明する。
【0104】
本発明の保護膜形成用フィルム付チップの製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む。
工程(1):保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムをワークに貼付する工程、
工程(2):保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を得る工程、
工程(3):保護膜形成用フィルムまたは保護膜と、第2粘着剤層とを分離する工程。
【0105】
以下においては、保護膜形成用フィルム付チップの製造方法の一例として、工程(1)、(3)、(2)の順で行う場合について説明する。
【0106】
ワークは、シリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよく、さらには、個片化済みのチップでもよい。
ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は50〜500μm程度である。
【0107】
その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
【0108】
チップへの分割方法は、一般的なブレードダイシングのほか、チップと同形状の溝をウエハの表面側から形成し、溝に到達するまで裏面研削を行って個片化するいわゆる先ダイシング法、レーザーダイシング法等を採用することができる。
【0109】
回路形成、裏面研削および場合によって行われるチップへの分割に次いで、ウエハまたはチップの裏面に保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムを貼付する。貼付方法は特に限定されない。
【0110】
次いで、ワークがウエハである場合は、ウエハと保護膜形成用フィルムを、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする(ダイシング工程)。ダイシングは、ウエハと保護膜形成用フィルムをともに切断するように行われる。本発明の保護膜形成用複合シートは、ウエハを支持するダイシングシートの役割を果たすことができる。ダイシング工程においては、保護膜形成用複合シートの外周部がリングフレーム等の他の治具と接合することで、半導体ウエハに貼付された保護膜形成用複合シートが装置に固定され、ダイシングが行われる。保護膜形成用複合シート上での半導体ウエハのダイシングは、公知のダイシングシートを用いた常法と同様に行われる。なお、ダイシング工程は、保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を得る工程の後に行うこともできる。
また、ワークが個片化済みのチップである場合は、保護膜形成用フィルムのみをチップサイズにダイシングする。保護膜形成用フィルムのみをダイシングする方法は特に限定されないが、例えばレーザーダイシング法を採用することができる。
【0111】
このようにダイシングされたチップ(保護膜形成用フィルム付チップ)またはあらかじめ個片化されていたチップに保護膜形成用フィルムを積層したものを、コレット等の汎用手段によりピックアップすることで、保護膜形成用フィルムと第2粘着剤層とを分離し、保護膜形成用フィルム付チップを得ることができる。本発明の保護膜形成用複合シートによれば、非エネルギー線硬化性粘着剤組成物からなる第2粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを形成しているため、保護膜形成用フィルムを第2粘着剤層から剥離する際に、エネルギー線照射工程を必要とせず、保護膜形成用フィルム付チップの製造工程を簡略化できる。また、保護膜形成用フィルムを第2粘着剤層から剥離することが容易である。つまり、保護膜形成用フィルム付チップのピックアップ性に優れる。また、本発明の保護膜形成用複合シートは、リングフレーム等の治具への貼付性に優れる。
【0112】
そして、保護膜形成用フィルムを加熱硬化して、チップの裏面に保護膜を形成する。保護膜形成用フィルムの加熱硬化する工程は、保護膜形成用フィルム付チップの基板等へのダイボンドの前であっても、後であってもよい。この結果、チップの裏面に硬化樹脂からなる保護膜が形成される。このような保護膜の形成方法によれば、ウエハの裏面に直接樹脂膜用の塗布液を塗布・被膜化するコーティング法と比較して、保護膜の厚さの均一性に優れる。
【0113】
なお、上記の保護膜形成用フィルム付チップの製造方法では、一例として工程(1)、(3)、(2)の順で行う場合について説明したが、例えば、保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムをウエハに貼付した後であって、保護膜形成用フィルムと第2粘着剤層とを分離する前に、保護膜形成用フィルムを加熱硬化して保護膜を得てもよい。つまり、保護膜形成用フィルム付チップの製造方法は、工程(1)、(2)、(3)の順で行ってもよい。この場合には、ウエハの裏面に保護膜が形成される。この場合においても、保護膜形成用フィルムを熱硬化した保護膜の固着した保護膜形成用フィルム付チップのピックアップが容易となる本発明の効果を得ることができる。
【0114】
その後、保護膜にレーザー印字することもできる。レーザー印字はレーザーマーキング法により行われ、レーザー光の照射により保護膜の表面を削り取ることで保護膜に品番等をマーキングする。
【0115】
最後に、保護膜形成用フィルム付チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に保護膜を有する半導体チップを、別の半導体チップ、たとえばTSV(Through Silicon Via)チップなどに接着することで、半導体装置を製造することもできる。
【0116】
本発明の保護膜形成用複合シートは、上記のような使用方法の他、半導体化合物、ガラス、セラミックス、金属などの保護に使用することもできる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例または比較例において、<リングフレーム保持性>および<ピックアップ性>は以下のように評価した。
【0118】
<リングフレーム保持性>
保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムを、シリコンウエハ(直径8インチ、厚み200μm、#2000研磨)の研磨面に貼付した後、保護膜形成用複合シートの第1粘着剤層をリングフレームへ貼付した。
【0119】
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製 DFD651、ディスコ社製ダイシングブレード 27HECCを装着)を用いて、カット速度50mm/秒、回転数35000rpm、基材への切込み量15μmの条件でウエハのダイシングを行い、5mm×5mmの保護膜形成用フィルム付チップを得た。
次いで、エキスパンダーを用いてエキスパンドを行った(エキスパンド速度5mm/秒で3mm引き落とし)。この時点で、目視にてリングフレームと第1粘着剤層との間の浮きを確認した。浮きが発生しなかった場合を「A」、浮きが発生した場合を「B」と評価した。
【0120】
<ピックアップ性>
リングフレーム保持性の評価の後、エキスパンダーを逆さにし、基材側から保護膜形成用フィルム付チップをプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製、MODEL−9500)で突き、保護膜形成用フィルム付チップが落下した際の力を測定した。第2粘着剤層から保護膜形成用フィルムを容易に分離できる目安として、この際の力が200gf以下の場合を「A」、200gfを超える場合を「B」と評価した。
【0121】
<粘着剤組成物(1)の作成>
アクリル酸エチル36質量部、アクリル酸ブチル59質量部及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル5質量部からなるアクリル重合体(重量平均分子量:(820,000)、ガラス転移温度:−42℃)を95.2質量部、イソシアネート架橋剤(三井化学社製、D−110N)を4.8質量部で配合し、酢酸エチルに溶解し、30%希釈溶液の粘着剤組成物(1)を得た。なお、架橋剤が有するイソシアネート基は、アクリル重合体の有する水酸基に対して0.50当量であった。配合部数は、全て固形分換算による配合部数である(以下、同じ)。
【0122】
<粘着剤組成物(2)の作成>
アクリル酸ブチル95質量部及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル5質量部からなるアクリル重合体(重量平均分子量:500,000、ガラス転移温度:−52℃)を64.5質量部、芳香族ポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製 コロネートL)を12.9質量部、可塑剤(1,2−シクロヘキシルカルボン酸ジイソノニルエステル、BASFジャパン株式会社製)を22.6質量部で配合し、酢酸エチルに溶解し、27%希釈溶液の粘着剤組成物(2)を得た。なお、架橋剤が有するイソシアネート基は、アクリル重合体の有する水酸基に対して1.0当量であった。
【0123】
<粘着剤組成物(3)の作成>
アクリル酸エチル70質量部、メタクリル酸メチル20質量部及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル10質量部からなるアクリル重合体(重量平均分子量:400,000、ガラス転移温度:−5℃)を84.2質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、D−110N)を15.8質量部で配合し、トルエンに溶解し、27%希釈溶液の粘着剤組成物(3)を得た。なお、架橋剤が有するイソシアネート基は、アクリル重合体の有する水酸基に対して1.0当量であった。
【0124】
<保護膜形成用組成物の作成>
アクリル酸ブチル55質量部、アクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸グリシジル20質量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル15質量部からなるアクリル重合体(重量平均分子量:800,000、ガラス転移温度:−28℃)を19質量部、エポキシ樹脂{液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜200g/eq)60質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量800〜900g/eq)10質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量274〜286g/eq)30質量部の混合エポキシ樹脂}を19質量部、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤(ジシアンアミド(旭電化製 アデカハ−ドナー3636AS))を0.4質量部、硬化促進剤{2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール(四国化成工業(株)製 キュアゾール2PHZ)}を0.4質量部、黒色顔料{カーボンブラック(三菱化学社製 #MA650、平均粒径28nm)}を2質量部、シランカップリング剤{ポリ3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル[又はメトキシ]メトキシ[又は3−](2,3−エポキシプロポキシ)シロキサン}を0.35質量部、無機充填材{平均粒径3.1μmの不定形シリカフィラーと平均粒径0.5μmの球形シリカフィラーの混合物}を30質量部で配合し、メチルエチルケトンに溶解し、50%希釈溶液の保護膜形成用組成物を得た。
【0125】
(実施例1)
<保護膜形成用複合シートの作成>
粘着剤組成物(1)を、シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)からなる剥離シートのシリコーン処理面に塗布し、100℃で2分間加熱し、厚さ10μmの第1粘着剤層を形成した。
ポリプロピレンフィルム(厚さ80μm)に片面から電子線を照射して基材とした。
基材の電子線照射面に、第1粘着剤層を転写し、粘着シートを得た。
【0126】
粘着剤組成物(2)を、シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)からなる剥離シートのシリコーン処理面に塗布し、100℃で2分間加熱し、厚さ10μmの第2粘着剤層を形成した。
その後、第2粘着剤層に、他の剥離シートを貼り合せ、剥離シート/第2粘着剤層/他の剥離シートの積層体を得た。他の剥離シートはシリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)であり、該剥離シートのシリコーン処理面を第2粘着剤層に貼り合せた。
【0127】
保護膜形成用組成物を、シリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)からなる剥離シートのシリコーン処理面に塗布し、100℃で2分間加熱し、厚さ25μmの保護膜形成用フィルムを形成した。
その後、保護膜形成用フィルムに、他の剥離シートを貼り合せ、剥離シート/保護膜形成用フィルム/他の剥離シートの積層体を得た。他の剥離シートはシリコーン剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)であり、該剥離シートのシリコーン処理面を保護膜形成用フィルムに貼り合せた。
【0128】
上記で得られた、剥離シート/保護膜形成用フィルム/他の剥離シートの積層体と、剥離シート/第2粘着剤層/他の剥離シートの積層体とから、一方の剥離シートを剥離しながら、保護膜形成用フィルムと第2粘着剤層とをラミネート(23℃、1m/分)した。
次いで、第2粘着剤層と保護膜形成用フィルムとを円形に抜き加工(220mm径)しつつ、第2粘着剤層に積層された剥離シートを除去した。これにより、剥離シート上に、同一の円形状の保護膜形成層および第2粘着剤層がこの順に積層された積層体を得た。
そして、剥離シート/第1粘着剤層/基材の積層体の剥離シートを剥がしながら、第2粘着剤層と第1粘着剤層とを積層し、剥離シート/保護膜形成用フィルム/第2粘着剤層/第1粘着剤層/基材の積層体を得た。その後、該積層体の剥離シートを剥離して、保護膜形成用複合シートを得、リングフレーム保持性およびピックアップ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
(実施例2)
粘着剤組成物(2)に代えて、粘着剤組成物(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0130】
(比較例1)
第2粘着剤層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、保護膜形成用複合シートを得た。
つまり、比較例1においては、剥離シート/保護膜形成用フィルム/他の剥離シートについて、保護膜形成用フィルムを抜き加工(220mm径)しつつ、剥離シートを除去し、次いで、剥離シート/第1粘着剤層/基材の積層体の剥離シートを剥がしながら、第1粘着剤層と保護膜形成用フィルムとを積層して、剥離シート/保護膜形成用フィルム/第1粘着剤層/基材の積層体を得た。その後、該積層体の剥離シートを剥離して、保護膜形成用複合シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0131】
(比較例2)
粘着剤組成物(1)に代えて、粘着剤組成物(3)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【符号の説明】
【0133】
1:基材
2:第1粘着剤層
3:第2粘着剤層
4:保護膜形成用フィルム
5:粘着シート
10:保護膜形成用複合シート
図1