(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
情報処理機器を収容する2列のラック列からなり、前記2列のラック列を構成する情報処理装置であるラック毎に複数の各情報処理機器の吸気面側を揃えて装着し、複数の前記ラックを吸気面を揃えてラック列とし、前記ラック列の吸気面側を対面させた通路をコールドアイルとし、前記ラック列の排気面側を対面させた通路をホットアイルとして形成される室に、冷却用空気を送風して前記情報処理機器の温度管理を行う空調システムにおいて、
前面から吸気して背面に排熱する前記ラックの列を相互の排気面側をホットアイルを挟んで前記室の床上に平行に配置してなる2列からなるラック列群と、
前記ラック列群の吸気面側にコールドアイルを挟んで平行に前記室の壁面に沿って、前記ラックと同じ高さ、幅を有し、底面が開口する鋼板製の略直方体形状のフレーム構造体を連接することで配置され冷却用空気を水平方向へ吹き出す前面吹出口ユニットと、
前記室の床下に床スラブと上げ床である床との間に形成される床下空間と、
前記床下空間内に設置される床下空調機と、
前記ホットアイルの床下に前記ホットアイルに沿って形成される吸込チャンバーと、
前記吸込チャンバーと前記床下空調機の吸込口とを連通するダクトと、
前記床下空調機の吹出口と前記前面吹出口ユニットとを連絡する床下チャンバーと
を備え、
前記前面吹出口ユニットは、
各前記ラックの吸気面と略同形状の端面が複数の吹出口で形成される全面吹出しで、前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面を形成する各吹出口には水平方向へ吹出すよう設置されるファンを各々備え、複数の前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面である吹出口から各前記ラックの吸気面に向かって冷却用空気を水平方向へ吹き込めるよう、各前記ラックの吸気面と対向して配置され、
前記フレーム構造体の底面を床下チャンバーと連結することで、複数の前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面である吹出口から前記床下空調機の送風機の吐出圧により各前記ラックの吸気面に向かって冷却用空気を吹き込み、
前記床下空調機は、各前記ラックの排気面からの排気を前記吸込チャンバーを介して吸い込み、再び冷却用空気を生成して前記床下チャンバーを介して前記前面吹出口ユニットへ供給する
ことを特徴とする空調システム。
【背景技術】
【0002】
昨今、サーバ、ルータ、ゲートウエイ、サーバの周辺機器であるネットワークデバイス等の情報処理機器が、例えば、ラック状の入れ物に設置されているデータセンターのサーバ室、或いは高度な通信機器をやはりラック状の入れ物に設置している通信電子機器設置室、或いは高度高速な計算が可能な高性能なスーパーコンピュータを設置した電算機室等において、電子情報処理機器の演算回路の集積のめざましい進化により、情報処理機器の発熱も増え、さらに情報処理機器が小型化したことによる情報処理機器の集積化が進み、室内の平面積あたりの発熱負荷が増大している。
これら情報機器の正常な動作環境を維持するために、室内は常に冷房されている。
【0003】
上記の通り、集積化が進んだ電子情報処理機器の演算回路、例えば中央演算処理装置(CPU機能を持つMPUチップ)等は、演算に多くの電力を必要としそのため発熱も多大であるにもかかわらず、その演算を実現するには一定の温度環境に保っておく必要があるので、発熱をいち早く演算回路の周囲から除去しなければならない。MPUチップには空冷の仕組みがあるとしても、MPUチップを実装している基板を保持する情報処理機器の筐体内には熱がこもりがちである。そのため、情報処理機器は空冷ファンを備えているのが常である。
これら情報処理機器が高温の空気を吸い込んだ場合、例えばMPUチップの温度環境を逸脱しそうな温度になると、微細なCPU回路の熱による短絡事故等ハード破壊を防止するために、機器の緊急回避としてのシステム停止により熱上昇を回避する場合がある。ハード破壊は免れても、システム動作停止により演算処理のエラー停止等を引き起こし、演算処理や通信で儲ける情報処理の事業に多大な損失を起こしてしまう。このようなシステム停止等のトラブルは避けなければならない。
【0004】
発熱量の増加及び集積化の密度増加により、空調機によりせっかく空気を冷却して室内へ送風しても、情報処理機器内の冷却空気の通りが悪くて冷気が機器内に供給できず、CPU温度保護の緊急回避システム停止により、ラックに実装された情報処理機器が次々ダウンする問題が頻発し、室内の冷やすべきところへの冷気供給が課題となっている。
また、例えばサーバラック設置の部屋貸しを行うデータセンターの営業上、情報処理機器を設置できる室の建物割合を大きくするという機械室を除く建物のレンタブル比を向上させ、サーバ室の絶対的大きさも大きくさせるため、無駄に大風量の空調機を設置せず、最低限の空調機容量で機械室を小さくしたいとの要望もある。
【0005】
一般には、従前の電算室空調と同じく、空調機により還気を冷却した給気として二重床下を経由して床吹出口を介し室内に冷気を導き、室内の情報処理機器の排熱を冷気により冷却し、温まった還気を天井吸込口を介して天井を経由して再び空調機へ戻す空気循環で冷却する空調システムが採用されている。
この空調システムは、情報処理機器間で信号や電力の授受に必要なケーブル設置に必須な床下空間を利用し、冷たく重い空気を下から供給し、熱を帯びて軽くなった空気を上方の天井を介して空調機に戻すという、情報処理機器の集積度が小さい時代には理にかなっている空調ではある。
【0006】
特に、最近の情報処理機器は自身で小さな冷却ファンを備えており、空気冷却の通行方向が決まっている機器がある。このような情報処理機器を有し、これら情報処理機器の向きを揃えてラック状に複数段配置している情報処理装置を備え、二重床下から吹き出す室の場合、情報処理装置の前面同士、後面同士を互いに向かい合わせ、例えば二重床下から吹き出された冷気が情報処理装置の前面から吸い込まれ、後面に熱気として排出される「コールドアイル・ホットアイル方式」が空調システムの主流となって採用されている。
なお、二重床吹き出し方式のサーバ室の場合、情報処理機器を搭載したラックは、大別して、前面から給気して背面や上面に排気しているものと、下面から給気して背面や上面に排気するものとの2通りがある。集積度が上がってきた情報処理機器を搭載したラックでは、前者が主流である。
【0007】
その一例を、
図16に示す従来のサーバ室用空調システムに基づいて説明する。
サーバ室1は、床スラブから二重床としてポスト根太等で持ち上がられ、金属ダイカストパネルを敷き詰めて歩行面を形成する床2と、機械室との仕切り壁、室間同士の紙面と平行な不図示の壁、及び天井3とで囲まれて、建屋の中に構築される。床2上には、それぞれ情報処理機器であるサーバ等を、各情報処理装置の空冷用冷気取り入れの吸気面を同じ垂直面に揃えて搭載する複数台のラック4が設置され、情報処理装置の吸気面同士を相互に向かい合わせた複数のラック4で形成されるラック列の間に通路5が形成される。
床2の下には床スラブ上面と挟まれて床下空間6が確保され、そこに各ラック4の電力ケーブルや相互の通信ケーブル等が多数それぞれ転がし配線として配置収容されている。また、通路5の外側の機械室には、床2と同レベル上に空気調和装置7が設置される。空気調和装置7は、サーバ室1内の空気を還気として壁上部の吸込口7aから吸い込んで内蔵する冷却コイルにより冷却し、その冷却後の給気を冷却用空気として底面に設けられた吹出口7bから送出する。
【0008】
この空気調和装置7に用いられる下吹空調機は、フィルター、冷却コイル、送風機とを備え、サーバ室1上部の高温空気を吸い込み、床下に低温空気を吹き出す。空調機内の空気の流れは上部から下部(縦型)である。
床2の一部は通路5に位置するように孔あきパネル8を設け、空気調和装置7から送出される冷却用空気が孔あきパネル8を通して床2上に給気される。
各ラック4は、内部に空冷用冷気取り入れの吸気面を同じ垂直面に揃えて、複数の情報処理機器が搭載され、筐体4aの前面全体(吸気面4b)から冷却用空気を、情報処理機器が有する冷却ファン4cによって取り込み、筐体4aの背面方向へ排気する。吸気面4bは、開口率の高いパンチング板になっていることが多い。
【0009】
次に、
図16の空調システムの作用を説明する。
ラック4に収納された情報処理機器は、その演算処理量等により、消費電力つまり発熱量が変化するが、基本的に24時間/日電源がOFFされずに動作している。この情報処理機器の発熱を除去するため、情報処理機器の冷却ファン4cによって取り込むべき冷気を、空気調和装置7により送出させる。空気調和装置7により送出される給気である冷却用空気は、機械室床直上レベルと連通した床下空間6に供給される。
床下空間6に供給された冷却用空気は、空気調和装置7送風機の送出圧により床面の孔あきパネル8を通り、情報処理機器の冷却ファン4cの吸入圧によりラック4前面の吸気面4bを通り、ラック4の筐体4a内の情報処理機器9内を冷却する。
【0010】
ラック4の筐体4a内に送られた冷却用空気は、その筐体4a内の情報処理機器9の発熱を冷却し自身は昇温して、ラック4の背面方向へ冷却ファン4cの送出圧で放出される。この放出される空気は、サーバ室1の天井下を高温成層を形成させながら、空気調和装置7の送風機の吸引圧で、機械室の壁上部の吸込口7aに吸い込まれ、空気調和装置7の冷却コイルにより温調され、再び冷却用空気となって吹き出される。空気の流れを
図16に矢印で示した。
【0011】
図16に示す従来の空調システムでは、例えばラック4に高負荷サーバ10が情報処理機器として搭載された場合には、高負荷サーバ10が有する冷却ファン4cの送風量も、その発熱量の多さから増大しているが、サーバ室1側として高負荷サーバ10に合わせて、空気調和装置7からの送出量を増大させ、孔あきパネル8から送風しようとすると、低負荷部分の孔あきパネル8の吹出口の風量も増加してしまう。
これは、
図16に示す従来の空調システムでは、床下からのみ給気されるが、サーバ室1内では平面視で孔あきパネル8がばらつきを持って分散して設けられ、無孔パネルの設置部位でも空気漏れの多い上げ床で仕切られる床下空間6を介して送風してなお、サーバ室1の機械室から距離のある中央部における孔あきパネル8での吹き上げ風速を面速1m/sec程度に常に確保する必要があり、サーバ室1への空気調和装置7の送風機の全供給量を負荷変動に応じて低減等することは、サーバ室1の中央部での給気不足によるラック内情報処理機器のダウンを引き起こす虞の回避を目的とした、室内給気風量分布の確保の面からできなかった。つまり逆に、送風量増加をさせるにしても、どの孔あきパネル8からも吹出量をそれなりに増加するようにしか構成できない。
【0012】
このような状況下では、高負荷サーバ10の冷却ファン4cは自身の風量が大きいため、近傍の床2の孔あきパネル8から吹き出された冷風はすべて高負荷サーバ10に吸い込まれるが、低負荷サーバ等の情報処理機器9ではその冷却ファン4cの風量は少なく、近くの孔あきパネル8から吹き出され情報処理機器9に吸い込まれなかった冷気が、そのまま上方の天井下の温度成層をなしている高温還気層を掻き乱すことになる。これにより、コールドアイルを形成する各ラック4の複数の情報処理機器9の吸気面4bを同じ垂直面に揃えた筐体4aの前面側の上部にて、還気として機械室へ戻すべき高温空気の一部を掻き乱し、近くの情報処理機器9の冷却ファン4cの吸引により、コールドアイルに高温還気を導入させることになりかねない。
【0013】
また、床吹出し空調だけでは、コールドアイル側にも高さ側に温度分布が生じ、ラック4上部側でのサーバ吸込み温度の上昇等の温度障害が生じる虞が大きい。
また、前述のように、サーバ室1の中央部での給気不足によるラック内情報処理機器のダウン防止のため、サーバ室1の機械室から距離のある中央部における孔あきパネル8での吹き上げ風速を常に確保する必要から、高負荷サーバ10に合わせた低い給気温度での大風量床吹き出し空調にせざるを得ず、負荷想定風量(高負荷サーバや低負荷サーバの負荷大小を加味した各温度差や各冷却風量の合算)よりも過剰な送風量や冷熱負荷が生じ、無駄な空調(増エネルギー)となっていた。
【0014】
また、サーバ室1の床下空間6を介して送風され、機械室から距離のある中央部の孔あきパネル8の吹上げ風速を所定値確保する必要があるのに、サーバラック側の演算負荷による熱負荷変化に応じて、配置を変更したり、吹出し風量の抵抗を変化させたりできない孔あきパネル8の分散配置となっているので、床下送風量が大きくなるほど冷風の分布が悪くなり、高負荷サーバ10が設置されていない多風量の不要な場所にも多量の送風を行うこととなり、床設置の吹出口である孔あきパネル8の送風量の調整が困難となる。
送風量を増やすために、既に通路5では床パネルの殆どが孔あきパネル8であるところ、床吹出口である孔あきパネル8の個数をさらに増やすには、通路5の幅を広くして床スペースを確保する必要があり、つまりサーバ室1からみるとラック4を設置できるスペースが小さくなる。ラック列設置面積が減少する。
【0015】
そこで、ラック4間の筐体4aの前面全体(吸気面4b)の上部をキャッピング遮蔽体11を取り付けてコールドアイルにキャッピング(つまりチャンバー化)を施して対応している。
また、
図17に示すように、高負荷サーバ10にあわせて、床開口(床吹出口)に床吹ファン12を設置して送風することで、
図16の空調システムの孔あきパネル8の設置の配置不変更や吹き出し風量の抵抗不変化への対応を、高負荷サーバ10部分だけ風量を増加させようとする対応策とすることも考えられる。
【0016】
しかし、高負荷サーバ10の設置が無い低負荷サーバの近傍でも、孔あきパネル8の吹出風速は、開口率50%としてその開口部で3〜5m/secと既に高速であり、それをさらに高速にする床吹ファン12による吹出しは、情報処理機器の冷却ファン4cの送風方向(水平方向)と向きが違う、下から上への垂直方向の冷気風速をさらに高速にするので、高負荷サーバ10等の情報処理機器9の冷却ファン4cの吸い込み風量を増やすこと無く、上方への風の吹き抜け問題を発生させる。
せっかくの風量増加策も、情報処理機器9に吸い込まれなかった冷気が、そのまま上方の天井下の温度成層をなしている高温還気層を掻き乱すことになる。つまり、還気として機械室へ戻すべき高温空気の一部を掻き乱し、近くの情報処理機器9の冷却ファン4cの吸引により、コールドアイルに高温還気を導入させることになりかねない。
【0017】
このように、局所的に床吹出ファン12等を設置すると吹出風速が大きくなることから、高負荷サーバ10が適正に空調空気を吸込むことが困難となる。そのため、コールドアイルのキャッピングのためキャッピング遮蔽体11をラック列上部に施工することとなるが、稼働中のサーバ室1でのキャッピング遮蔽体11の取付工事等は、振動を嫌うハードディスクや埃を嫌う情報処理機器9の特性上、困難である。
サーバラックはセキュリティの掛かった客先所有物のため、サーバラック本体に何かを取り付けるような対策は困難である。
そこで、一方から冷気を吸気し他方から排熱を排出するサーバを収容するラックが配置された部屋の空調を行う既設の空調システムにおいて、排熱を含む部屋内の空気を冷却する空調機と、発熱機器の吸気側に存在するラックの前部に対して着脱自在なフード装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
特許文献1のフード装置は、ラックの前部を覆い、フード装置の内部を空調機で冷却された冷気が流れるフード装置と、フード装置の下方に設けられ、空調機で冷却された冷気を部屋の床下からフード装置へ送り出す床吹出口とを備えている。床吹出口には、風量調整装置として床吹出しファンを設ける場合ある。
また、ラックの上面から通路側へ向けて延びる天壁部と、この天壁部から床へ向けて延びる側壁部とを有する遮蔽体によって、ラックの前面側に外部空間から区画された通路内空間を画成することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、間隔をあけて配置された他のラックとの間の空間を覆うことで空気調節装置による気流を制御するための気流調節部材を設けることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0019】
また、サーバラックを配列した室内の、ラック列の並びにラック間に設置され、室内の下部空間(床下空間ではない床上の)から吸い込んだ空気を上部空間において吹き出すことにより、室内の下部空間にある還気と比較して低温度の空気が持ち上げられ、室内に設置したラック上部の情報処理機器に吸い込まれるようにした送風装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、互いに対向するラックのラック前面同士の間を給気空間とし、ラック背面同士の間を排気空間とするコールドアイル・ホットアイル空調であると共に、給気空間の天井裏空間に給気ダクトを設け、排気空間の天井裏空間に排気ダクトを設け、これらを送風ファンで接続すると共に、ラックのラック背面に対向して冷却パネルを設け、さらに、この冷却パネルに排気をより接触させて背面直後で冷却するよう、背面の対面に複数のファンを冷却パネルに備えるようにして、排気を冷却パネルに流すようにしている開示もある(例えば、特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の技術では、上述したように、サーバラックはセキュリティのかかった客先所有物のため、サーバラック本体に何かを取り付けるような対策は困難であるという課題を解決できていない。
しかも、特許文献1では、空調システムを構築後にフード装置を都度装着することとなり、操作が煩雑となる。
また、特許文献2では、空調システムを構築後に機器収容用ラックの上面から通路側へ向けて延びる天壁部と、この天壁部から床へ向けて延びる側壁部とを有する遮蔽体を設けることとなり、操作が煩雑となる。
【0022】
また、特許文献4では、室内の下部のラック冷却用の空調空気を送風装置によって上部に送るという、室内の高さ方向におけるコールドアイル側の温度勾配を少なくする、つまり給気温度のばらつきを少なくすることが目的であるから、コールドアイル内の風量は不変である。あくまでコールドアイルへの冷気給気は、床面の孔あきパネルから送られているのである。高負荷サーバの冷却ファンは自身の風量が大きいため、近傍の床の孔あきパネルから吹き出された冷風はすべて高負荷サーバに吸い込まれるが、低負荷サーバ等の冷却ファンの風量は少なく、近くの孔あきパネルから吹き出され情報処理機器に吸い込まれなかった冷気が、そのまま上方の天井下の温度成層をなしている高温還気層を掻き乱すことになる問題点はそのままである。
【0023】
また、送風装置は、下部空間から吸って上部空間だけに高速で吹き付けるので、下部の情報処理装置の冷却ファンが吸引力で負けて、今度は下部の冷却がうまくいかなくなる問題がある。
また、ラック列内に送風装置であるファンタワーを配置するので、ラック間の近接設置による信号ケーブルの短縮化ができるラックが少なくなり、床下空間の各種ケーブルの取り回しも留意しなければならないという問題、及びサーバ等情報処理機器を備えたラックの設置面積の減少が生じる。
【0024】
また、特許文献5では、対向するラック背面同士に挟まれた空間を電算機ラックから排気される排気空間とし、排気空間には、電算機ラックにおけるラック背面の排気口に対向して冷却手段としての冷却パネルを設け、電算機ラックの排気口から排気空間に排気される空気が冷却パネルを通過することにより冷却されるように構成されており、排気を空調機で冷却する空調方式とは異なる方式が採用されている。
このように、特許文献5では、発熱の出るラック近傍で発熱処理(コイル冷却)をする方式となっているため、局所に設置するパネルのみで冷却することとなり、冗長化が図りづらい(例えば、故障時にバックアップができず、障害時の空調に支障をきたす)等の問題がある。
また、特許文献5の
図8では、冷却パネルの設置によって排気空間の障害物となる虞がある。
【0025】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、情報処理機器の負荷の増大に伴う床スペースの有効利用、ラック設置スペース確保、温度障害(回り込み等による吸い込み温度上昇)の回避及び送風量低減を可能とした空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
請求項1に係る発明は、情報処理機器を収容する2列のラック列からなり、前記2列のラック列を構成する情報処理装置であるラック毎に複数の各情報処理機器の吸気面側を揃えて装着し、複数の前記ラックを吸気面を揃えてラック列とし、前記ラック列の吸気面側を対面させた通路をコールドアイルとし、前記ラック列の排気面側を対面させた通路をホットアイルとして形成される室に、冷却用空気を送風して前記情報処理機器の温度管理を行う空調システムにおいて、前面から吸気して背面に排熱する前記ラックの列を相互の排気面側をホットアイルを挟んで前記室の床上に平行に配置してなる2列からなるラック列群と、前記ラック列群の吸気面側にコールドアイルを挟んで平行に前記室の壁面に沿って、前記ラックと同じ高さ、幅を有し、底面が開口する鋼板製の略直方体形状のフレーム構造体を連接することで配置され冷却用空気を水平方向へ吹き出す前面吹出口ユニットと、前記室の床下に床スラブと上げ床である床との間に形成される床下空間と、前記床下空間内に設置される床下空調機と、前記ホットアイルの床下に前記ホットアイルに沿って形成される吸込チャンバーと、前記吸込チャンバーと前記床下空調機の吸込口とを連通するダクトと、前記床下空調機の吹出口と前記前面吹出口ユニットとを連絡する床下チャンバーとを備え、前記前面吹出口ユニットは、各前記ラックの吸気面と略同形状の端面が複数の吹出口で形成される全面吹出しで、前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面を形成する各吹出口には水平方向へ吹出すよう設置されるファンを各々備え、複数の前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面である吹出口から各前記ラックの吸気面に向かって冷却用空気を水平方向へ吹き込めるよう、各前記ラックの吸気面と対向して配置され、
前記フレーム構造体の底面を床下チャンバーと連結することで、複数の前記情報処理機器の吸気面と略同形状の端面である吹出口から前記床下空調機の送風機の吐出圧により各前記ラックの吸気面に向かって冷却用空気を吹き込み、前記床下空調機は、各前記ラックの排気面からの排気を前記吸込チャンバーを介して吸い込み、再び冷却用空気を生成して前記床下チャンバーを介して前記前面吹出口ユニットへ供給することを特徴とする。
【0029】
請求項
2に係る発明は、
請求項1記載の空調システムにおいて、前記前面吹出口ユニットは、風量調整機構を備えていることを特徴とする。
請求項
3に係る発明は、請求項
2記載の空調システムにおいて、前記風量調整機構は、前記前面吹出口ユニットの底面の開口にダンパを設けることによって構成されることを特徴とする。
請求項
4に係る発明は、請求項
3記載の空調システムにおいて、前記風量調整機構は、前記前面吹出口ユニットの底面の開口の開口面積を塞ぎ板によって調整することによって構成されることを特徴とする。
【0030】
請求項
5に係る発明は、請求項1乃至請求項
4の何れか記載の空調システムにおいて、前記床下空調機は、ケーシング内に冷却コイル、送風機を配置し、前記床下チャンバーの壁面に沿って形成された複数の取付開口に、ファンセクションの一部を嵌合して装着されることを特徴とする。
請求項
6に係る発明は、請求項
1乃至請求項5の何れか記載の空調システムにおいて、前記床下チャンバーは、前記床下空調機の吹出口から供給される冷却用空気を前記前面吹出口ユニットの底部開口部から前記前面吹出口ユニット内に送り込めるように、前記床下空間の壁面に沿って、前記床スラブから立設配置されるパネルによって区画されることを特徴とする。
【0031】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項
6の何れか記載の空調システムを、並列に連接したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、前面吹出口ユニットは、床下チャンバーから供給される冷却空気を、ラックに向かうサイドフローとして、直接ラック前面の吸気面に吹き付け、吸気面を通りラックの筐体内に送り込むので、高負荷サーバ等の情報処理機器が搭載されたラックが連結された場合でも空調できる。
本発明によれば、前面吹出口ユニットは、床下チャンバーから供給される冷却空気を、ラックに向かうサイドフローとして、直接ラック前面の吸気面に吹き付け、吸気面を通りラックの筐体内に送り込むのに際し、各ラック毎に吹き付けるサイドフロー量の調整が容易であり、且つ、吹出口の風速にも床吹出しの孔あきパネルのように高速でなくて無理が無く、情報処理機器の冷却ファンの小さな静圧に対して無理のない同方向風向で送るので、情報処理機器の吸込温度上昇を回避し、無駄な送風をすることがなくなり、送風動力の低減が可能となる。
【0033】
本発明によれば、前面吹出口ユニットは、床下チャンバーから供給される冷却空気を、ラックに向かうサイドフローとして、直接ラック前面の吸気面に吹き付け、吸気面を通りラックの筐体内に送り込むので、高速の向きの異なる冷たい吸気を、情報処理機器の内部冷却風向へ無理に風向を変えるためのコールドアイルのキャッピング措置が不要となる。
本発明によれば、高負荷ラックのラック列中の設置割合が増えても、コールドアイル・ホットアイルの通路幅を給気のために増やす必要が無く、サーバ設置向け床平面スペースが有効に利用可能となる。
【0034】
本発明によれば、サーバ室において、室全体空調のための外付け空調機が併設される場合、室上部に高温還気の温度成層を形成して、その高温還気を外付け空調機に戻すのに際し、ラック吸込面にサイドから高速ではない一定の風速で吹き付けるので、上部の温度成層の高温域を乱し崩すことなく、吹き込めるので、コールドアイルの高温空気巻き込みが防止できる。
本発明によれば、室をモジュール対応として区切ることができ、建物竣工時の次期実装工区等と仕切り、従来の情報処理機器を実装する前工区とは大きく発熱密度が異なる、新型の情報処理機器を実装する高負荷ラック列群を有するモジュールとは区画でき、それぞれの工区に応じた給気温度の設定と風量により効率的な空調が可能となる。
本発明によれば、吸込チャンバーと床下チャンバーとに複数の床下空調機を接続可能に構成していることで、床上の室内ラック列の実装ラックの数に応じて、床下空調機を増設できるので、イニシャルコストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜
図5は、本発明の第一実施形態に係る空調システムをサーバ室20に適用した例を示す。
サーバ室20は、壁31a〜31d、天井31e及び床スラブ31fで囲まれる建物の室として構築される。床スラブ31f上には、例えばポスト及び根太上に金属ダイカスト製床パネルを敷き詰める等して、二重床構造を構成するように床30が設置される。
壁31c及び壁31dは、例えばボード貼り内面の外壁や、廊下や他用途室と隔てる、例えばボード貼り仕切り壁等で構成され、壁31a及び壁31bは、同用途のサーバ室を区切る鋼板サンドイッチパネル(以降、パネルという。)を立設した壁であることが望ましい。
【0037】
床30上には、2列のラック列群42が複数台のラック41を連接して通路44を挟んで形成される。各ラック41には、高負荷サーバ又は低負荷サーバ等の情報処理機器43を吸気面43a側を揃え、排気面43b側に情報処理機器43付属のファン43cを揃えて所定数搭載し、複数の各ラック41を吸気面を揃えてラック列とする。つまり、排気面43bもラック列として揃い、その排気面43bを通路44側に向けて並べている。通路44は、床30に孔あきダイカスト製床パネルやグレーチング等の床吸込口になる床材を敷設して構成される。
2列のラック列群42のサーバ等である情報処理機器43の吸気面43aと対向して、壁31a,31bに沿って複数のタワー型の前面吹出口ユニット50がそれぞれ床30から立設して配置される。
【0038】
タワー型の前面吹出口ユニット50は、ラック41の高さ及び横幅を等しくする、鋼材製の略直方体枠組み及びそれに鋼板を貼設する形状のフレーム構造体51で構成される。
フレーム構造体51は、前面にパンチング板又は網等、空気を通す無数の開口を有する材料を貼った吹出口52aを備え、2列のラック列群42と対面する側の前面52と、天板53と、壁31a,31bに平行に沿って位置する壁面54と、枠組みを介して前面52及び天板53の両端部に直交して配置される壁面55a,55bと、それぞれの辺を形成する鋼材製枠組みとを備え、底面56には板材を貼らず開口し、底面56の下部の床30の床パネルやグレーチングを除去して形成される底面開口56aが、床30の下部に形成される床下チャンバー32a,32bと連通する。なお、前記壁面54は壁31a,31bの表面板を共用として省略してもよい。
【0039】
ファン59を有するタワー型の前面吹出口ユニット50は、パンチング板又は網等、空気を通す無数の開口を有する材料を貼った吹出口52aを設けた前面52を、2列のラック列群42の各ラック41と対向するように配置し、内部57に鋼材製枠組みに支持させ吹出口52a内面に位置する図示しない複数のバーに沿って、複数のファン59を縦横方向に吹き出し方向を水平にして設置する。
タワー型の前面吹出口ユニット50位置の床30下には、床下チャンバー32a,32bが、連続する底面開口56aの外輪郭に対向する平面積分の床下領域を、壁面を形成するパネル33a,33bで仕切って形成される。
【0040】
パネル33a,33bは、床スラブ31fと床30との間に形成される床下空間の、壁面54に平行に、距離を底面開口56aの奥行き分程離して床スラブ31fより立設され、複数の床下空調機34のファンセクションの筐体が嵌るようにそれぞれ装着される開口33c,33dを所定の位置に開設している。また、パネル33a,33bのそれぞれ端部側は、連続する底面開口56aの外輪郭に沿って壁面54に直交するように曲げられて、パネルの垂直末端を壁面54の床下領域で当接するように設置される。
床下空調機34は、冷却コイル、送風機を必須として備え、フィルターも備えていることが望ましい。床下空調機34は、床下の床スラブ31f上に例えば鋼材製基礎とともに設置されるが、後述の吸込チャンバー35の下方の搬入経路を経て、床上のラック列群42の実装進捗に合わせて、一部の台数を後から追加設置できるようにされている。
【0041】
床下空調機34は、床下チャンバー32a,32bの開口33c,33dに、ファンセクションの一部を嵌め隙間を充填材で埋めて設置される。当初のサーバ室20の運転開始時に床上の負荷であるラック列群42の実装部分が少ない場合は、それに合わせて床下空調機34も全台数の内一部台数だけ装着して運転する。装着しない床下チャンバー32a,32bの開口33c,33dは、同じ大きさのパネル蓋によって閉じられている。
床下空調機34の冷風吐出口34aは、床下チャンバー32a,32bとそれぞれ連通する。
床下空調機34の還気吸込口(セクション)34bは、平面視で通路44に対向する床下領域を、床下空調機34の高さよりも床スラブ31fから離れた高さに底部を位置させて床スラブ31fから鋼材で支持し、開放された上面に床30を頂く、パネルで5面を封鎖して箱形36に仕切って形成される吸込チャンバー35と連通する。
【0042】
吸込チャンバー35を形成する底付きの箱形36は、2列のラック列群42の間に形成されたホットアイルである通路44の背面に沿って床下に延長する形で配置される2つの側面パネル36a,36bと、2つの側面パネル36a,36bの両端部に直交して、つまり通路44の端部に沿って床下に延長する形で取り付けられる2つの端面パネル36c,36dと、2つの側面パネル36a,36b、2つの端面パネル36c,36dのそれぞれの下端が形成する底面に位置し、床スラブ31fから支持される底面パネル36eとで構成され、底面パネル36eには、各床下空調機34の還気吸込口34bに短ダクト36fを介して連絡する還気出口である開口36gが形成されている。
床下チャンバー32a,32bと吸込チャンバー35との間の空間は、UPS(無停電電源装置)からサーバ室20へのケーブルラック配線や、空調機への熱媒配管の収容空間37とされる。
【0043】
次に、本実施形態に係る空調システムの作用を説明する。
ラック列群42の各ラック41内には、高負荷サーバであったり低負荷サーバであったり、ルータ、ゲートウエイ、サーバの周辺機器であるネットワークデバイス等であったりする情報処理機器43が、ラック41毎に各情報処理機器43の冷却ファン43cからの排気面43bを揃えて搭載され、ラック列群42としては、排気を通路44側へ排出するようにしている。ところが、搭載する情報処理機器により、ラック41毎に合計した排気風量は異なっている。
【0044】
あるラック41の運転時は、対応するタワー型の前面吹出口ユニット50内のファン59を作動させると共に、対応する床下空調機34を作動させ、床下空調機34から温調されて送出される冷却用空気が、対応する床下チャンバー32aまたは32bに供給される。
床下チャンバー32aまたは33bに供給された冷却用空気は、床下空調機34の送風圧及びファン59の吸入圧により、床面の底面開口56aを通り、
図4に示すように、タワー型の前面吹出口ユニット50の、空気を通す無数の開口を有する材料を貼った吹出口52aからラック41に向かうサイドフローを形成する。各ラック41に対し対応するタワー型の前面吹出口ユニット50からラック41に向かうサイドフローの風速は、ラック41の情報処理機器43の冷却ファン43cの合計風量をラック前面積で除した風速よりも僅かに速くなるようにファン59によって生成される。
【0045】
冷却用空気のサイドフローは、直接ラック41前面の吸気面43aに吹き付けられ、そのままの風向を維持したまま、情報処理機器43の冷却ファン43cの搬送力により吸気面43aを通り、ラック41の筐体内の情報処理機器43内部に送られる。ラック41の筐体内の各情報処理機器43内部に送られた冷却用空気は、サーバ等である情報処理機器43の演算により発熱した部位を冷却し、
図1、
図3、
図4に示すように、高温の排気となって冷却ファン43cの吐出側からラック41の背面方向へ放出される。2列のラック列群42を構成するラック41は、前述のように背面方向を揃えて対面しているので、2列のラック列群42の間の通路44にホットアイルが形成される。
この放出される高温排気は、
図2〜
図4に示すように、通路44の床下に設けられた吸込チャンバー35を通って還気用開口36gからダクト36fを介して各床下空調機34の還気吸込口34bを経て空調機34に吸い込まれ、冷却コイルに到達する。
そして、再び冷却用空気に温調されて冷気吐出口34aから床下チャンバー32aまたは32bに吹き出される。
【0046】
本実施形態によれば、タワー型の前面吹出口ユニット50は、床下チャンバー32a,32bから供給される冷却空気を、ラック41に向かうサイドフローとして、直接ラック41前面の吸気面43aに吹き付け、吸気面43aを通りラック41の筐体内に送り込むので、サーバ43の吸込温度上昇、特にラック41等の温度障害を回避することができる。
従って、従来の高負荷サーバ対応として必須であるキャッピング(吸込面を対面させる2つのサーバラック列の天板上を蓋して、サーバラック冷風吸込面と通路部とをチャンバー化すること)が不要となる。
また、高負荷サーバを搭載するラック41が、サーバラック列群42の内側にまばらに配置されている場合には、高負荷サーバに対して冷却用空気をサイドフローとして、高負荷サーバを搭載するラック41の前面に、当該ラック41の情報処理機器43の冷却ファン43cの風量合計をラック吸気面積で除した風速より僅かに速い風速で、つまり周囲の低負荷サーバ搭載のラック41よりも多い風量でそれぞれ吹き付けるので、それぞれのラック41が要求する冷却用空気をきめ細かく過不足無く供給でき、高負荷サーバを効率的に冷却することが可能となる。
【0047】
また、高負荷サーバを搭載するラック41が、独立あるいは少ない連続でまばらに配置されている場合には、高負荷サーバに対して冷却用空気をサイドフローとして、高負荷サーバを搭載するラック41の前面に、当該ラック41の情報処理機器43の冷却ファン43cの風量合計をラック吸気面積で除した風速より僅かに速い風速、つまり当該ラック41が必要とする風量分だけそれぞれ吹き付けるので、ラック41が単独や少ない連続である、実装が少ないサーバ室20の運用初期でも、要求する冷却用空気をきめ細かく過不足無く供給でき、高負荷サーバを効率的に冷却することが可能となる。
また、床下空調機34から前面吹出口ユニット50を介して各ラック41への経路が、それぞれ適した風速で供給できるよう独立しているので、高負荷情報処理機器を実装するラック41では低い温度(例えば18℃)で給気するが、低負荷情報処理機器43を実装するラック41では高い温度で給気するように給気温度設定を変更することもできる。これにより、空調システムの熱源における冷凍サイクルの蒸発温度を、給気温度に応じて低下させなければならないが、それぞれの給気温度に応じて冷凍機系統を分割すれば、熱源冷凍サイクルの蒸発温度は系統毎に変えることができ、総合した冷凍サイクルの成績係数(COP)も向上させることができ、空調エネルギーを省エネルギー化できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、例えば、
図4に示すように、コールドアイルのサイドフローによる低温給気部分と、空気が動きにくいことでホットアイルと熱的につながり上部に熱溜まりとなる高温空気とで温度成層が形成されるが、ラック41の前面に、当該ラック41の情報処理機器43の冷却ファン43cの風量合計をラック吸気面積で除した風速より僅かに速い風速で吹き付けることで、室内上部の高温空気層を乱さず、且つコールドアイルを僅かに正圧としているので、温度成層を乱すことが無く、つまり室内上部熱溜まりから高温空気をコールドアイルに巻き込んでしまうショートサーキットを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、サーバ43負荷又は吸込面温度により空調機34を制御して空調機34の風量を可変とし、タワー型の前面吹出口ユニット50の前面吹出口からの風量を可変とすることができるので、高負荷サーバが搭載されたラック41にのみ適正な冷風を直接吹き付け、低負荷サーバが搭載されたラック41には不要な冷風を送らないように、タワー型の前面吹出口ユニット50のファン59を運転することが可能となり、省エネルギーとなる。
また、本実施形態では、2列のサーバラック42の全てのラック41にそれぞれサーバ43が全て搭載された場合について説明したが、本発明はこれに限らず、サーバ43が搭載されていないラック41がある場合には、そのラック41と対向するタワー型の前面吹出口ユニット50の床30下側には空調機34を配置せず、開口33c,33dを封鎖してサーバ43が搭載されるラック41に対してタワー型の前面吹出口ユニット50から冷却空気を供給する。
【0050】
従って、その後、不使用であったラック41にサーバ43を搭載する場合には、そのラック41に対応して空調機43を設置する。
また、本実施形態に係る空調システムでは、例えば、床面の底面開口56aに風量調整機構を設け、タワー型の前面吹出口ユニット50の前面吹出口からの風量を可変とすることができる。
また、本実施形態では、タワー型の前面吹出口ユニット50にファン59を設置した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、
図5に示すように、ファン59を設置しないタワー型の前面吹出口ユニット50でも使用可能である。
【0051】
その場合は、例えば、
図6に示すように、床下チャンバー32a,32bでは、タワー型の前面吹出口ユニット50位置の床30下における底面開口56a毎に、前面吹出口ユニット50の、前面52及び天板53の両端部に直交して配置される壁面55a,55bがあるが、壁面55a,55bとそれぞれ上端を接して、その床下部分に、通風抵抗となるパンチング板60を床スラブから立設して設ける。
これにより、高負荷サーバを搭載するラック41が、独立あるいは少ない連続でまばらに配置されている場合には、高負荷サーバに対して冷却用空気をサイドフローとして、高負荷サーバを搭載するラック41の前面に、当該ラック41の情報処理機器43の冷却ファン43cの風量合計をラック吸気面積で除した風速より僅かに多い風速、つまり当該ラック41が必要とする風量分だけそれぞれ吹き付け、床下のパンチング板60を介して、ラック41を設置していない箇所の室の空調風量として、隣接するタワー型の前面吹出口ユニット50から小さい風量でサイドフロー供給できるようにしておく。
【0052】
また、高負荷サーバを搭載するラック41が連続してラック列群42を形成している場合でも、対応する床下空調機34の一台がダウン停止しても、両側に隣接する床下空調機34の風量を増大し、パンチング板60を介して供給することで、バックアップを果たすこともできる。
また、タワー型の前面吹出口ユニット50の吹出口52aからの風量を調整するために、例えば、
図7〜
図9に示すように、風量調節機構を設ける。
【0053】
図7は、ダンパ61を床面の底面開口56aに設けた例を示す。ダンパ61は、例えば、枠体63に複数のダンパ板62を軸支し、図示しない可動装置によってダンパ板62の開閉又は傾き調整を行い、風量を調整する。
図8は、床面の底面開口56aを塞ぎ板64によって床面の底面開口56aの開口面積を調整して風量を調整する。
図9は、タワー型の前面吹出口ユニット50の壁面52の内側に塞ぎ板65を取り付けて吹出口52aの開口面積を調整して風量を調整する。
【0054】
本発明の第一実施形態に係る空調システムでは、1つのサーバ室20に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、
図10に示すように、3つのサーバ室20を並列に配置しても良い。
即ち、本発明では、ある一定規模の面積により、空調を完結させたサーバ室20を連結させることでモジュール対応とすることができる。
上述したように、第一実施形態に係る空調システムは、床下が高く作業者が立って作業できる階高を有する場合に適用される。
【0055】
図11〜
図13は、本発明の第二実施形態に係る空調システムを示す。
本実施形態では、床下が低く、作業者が立って作業できる空間が形成できない場合に適用される。
本実施形態では、空調機34Aが低床設置型の床下空調機とされ、サーバ室20Aの両端に配置された空調機械室に空調機(AHU)34Bを設置し、吸込チャンバー35に代えて空調機34A毎の戻り空気吸込口35Aを設置した点で、第一実施形態に係る空調システムとは相違する。なお、第一実施形態と同一の構成要素については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
空調機34Aは、フィルター、冷却コイル、送風機を備える。空調機34Aは、低床式の床下に設置されるため、空調機34に比べて能力が劣る。その不足分を、空調機(AHU)34Bで補う。
本実施形態では、
図1において省略した空調機械室21に空調機(AHU)34Bを設置する。
空調機(AHU)34Bから供給される冷却用空気は、パネル33a,33bの両端部に連結するパネル65a,65b,65c,65dによって床下チャンバー32a,32bに導かれる。
戻り空気吸込口35Aは、通路44の下部と各空調機34Aの空気吸込口34bとを連絡する不燃性のキャンバス継手66で各空調機34Aの空気吸込口34bに接続される。
【0057】
次に、本実施形態に係る空調システムの作用を説明する。
サーバ43の運転時はタワー型の前面吹出口ユニット50内のファン59を作動させると共に空調機34Aを作動させ、空調機34Aから送出される冷却用空気が床下チャンバー32a,32bに供給される。
床下チャンバー32a,32bに供給された冷却用空気は、空調機34Aの送風圧及びファン59の吸入圧を受けて、床面の底面開口56aを通り、
図4に示すように、タワー型の前面吹出口ユニット50の無数の開口から成る吹出口52aからラック41に向かうサイドフローを形成する。タワー型の前面吹出口ユニット50とラック41との間にコールドアイルが形成される。タワー型の前面吹出口ユニット50の無数の開口から成る吹出口52aからラック41に向かうサイドフローの風速は、空調機34Aの空気吸込口34bから空調機34に吸い込まれる風速より僅かに速くなるようにファン59によって生成される。
【0058】
冷却空気のサイドフローは、直接ラック41前面の吸気面43aに吹き付け、吸気面43aを通りラック41の筐体内に送られる。ラック41の筐体内に送られた冷却用空気はその筐体内のサーバ43を冷却し、
図11、
図12に示すように、高温の排気となって背面方向に放出される。2列のラック列群42の間にホットアイルが形成される。
この放出される空気は、
図11〜
図13に示すように、通路44の床下に設けられた複数の戻り空気吸込口35Aを通って開口36fからダクト36gを介して各空調機34の空気吸込口34bから空調機34に吸い込まれる。なお、本例では、
図2の吸込チャンバー35に代えて複数の戻り空気吸込口35Aを設けているので、高温の排気は、各戻り空気吸込口35Aからそれぞれ吸い込まれる。
そして、再び冷却用空気となって床下チャンバー32a,32bに吹き出される。
【0059】
なお、第二実施形態では、空調機34Aは、床下の床スラブ31f上に例えば鋼材製基礎とともに設置されるのは第一実施形態と同じだが、床下空間に搬入経路を確保するのは難しいので、床のダイカスト製床パネルを外して床下に搬入することとなるが、その場合も、サーバ室20A内のラック列42が設置されていない将来設置スペースの床パネルを外して床下空間へ空調機34Aを入れ込み、最後の床下チャンバー32a,32bの開口33c,33dの何れかに、ファンセクションの一部を嵌める前に、コロ等で水平移動させれば設置が可能である。当初のサーバ室20の運転開始時に床上の負荷であるラック列群42の実装部分が少ない場合は、それに合わせて空調機34Aも全台数の内一部台数だけ装着して運転する。装着しない床下チャンバー32a,32bの開口33c,33dは、同じ大きさのパネル蓋によって閉じられている。また、排気を床面の孔あき床パネルを介し、戻り空気吸い込み口35Aを介してキャンパス継ぎ手36gを通って空調機34Aへ還気が吸い込まれるが、実装していない空調機34A部分は床面を無孔パネルに交換して塞いでおけばよい。
【0060】
本実施形態においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、本実施形態に係る空調システムでは、第一実施形態と同様に、例えば、床面の底面開口56aに風量調整機構を設け、タワー型の前面吹出口ユニット50の前面吹出口からの風量を可変とすることができる。
また、本実施形態では、タワー型の前面吹出口ユニット50にファン59を設置した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、第一実施形態と同様に、例えば、
図5に示すように、ファン59を設置しないタワー型の前面吹出口ユニット50でも使用可能である。
【0061】
その場合は、例えば
図14に示すように、床下チャンバー32a,32b内に空調機34A毎に通気抵抗となるパンチング板60Aを設け、サーバ負荷に合わせてタワー型の前面吹出口ユニット50の吹出口52aからの風量を調整することができる。
また、タワー型の前面吹出口ユニット50の吹出口52aからの風量を調整するために、第一実施形態と同様に、例えば、
図7〜
図9に示すように、風量調節機構を設ける。
図7は、ダンパ61を床面の底面開口56aに設けた例を示す。ダンパ61は、例えば、枠体63に複数のダンパ板62を軸支し、図示しない可動装置によってダンパ板62の開閉又は傾き調整を行い、風量を調整する。
図8は、床面の底面開口56aを塞ぎ板64によって床面の底面開口56aの開口面積を調整して風量を調整する。
図9は、タワー型の前面吹出口ユニット50の壁面52の内側に塞ぎ板65を取り付けて吹出口52aの開口面積を調整して風量を調整する。
【0062】
本発明の第二実施形態に係る空調システムでは、1つのサーバ室20Aに適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、第一実施形態と同様に、例えば、
図15に示すように、3つのサーバ室20Aを並列に配置しても良い。
即ち、本発明では、ある一定規模の面積により、空調を完結させたサーバ室20Aを連結させることでモジュール対応とすることができる。