(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レールは、第1の前記案内壁である基壁と、前記基壁の幅方向の一端が前記スライダを摺動させるための摺動空間を確保しつつ折り返されてなり、第2の前記案内壁である第1折り返し壁とを有し、
前記ベースは金属からなり、
前記外装部材は樹脂からなり、
第1の前記外装部材は、前記ベースと前記基壁との間に位置する外装裏壁と、前記ベースと前記第1折り返し壁との間に位置する第1外装表壁とを有し、
前記当接部材は、前記軸部と、前記軸部の両端側で前記軸部と一体に形成された一対の前記凸部とからなり、
第1の前記当接部材は、前記軸部が前記外装裏壁に装着されることにより、一方の前記凸部が前記基壁に当接し、他方の前記凸部が前記ベースに当接し、
第2の前記当接部材は、前記軸部が前記第1外装表壁に装着されることにより、一方の前記凸部が前記第1折り返し壁に当接し、他方の前記凸部が前記ベースに当接している請求項4記載の車両用シートリクライニング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の車両用シートリクライニング装置では、レールに対してスライダが摺動するため、レールとスライダとの間には、延在方向と直交する方向で不可避の隙間が存在する。このため、車両が悪路走行中、バックレストがレールの延在方向に振れることにより、ストライカを通じてスライダが延在方向と直交する方向に振れ、スライダとレールとの間で打音が発生する。
【0007】
打音を生じない程、レールとスライダとの間の隙間を小さくすれば、高精度の加工が必要になり、製造コストが高騰化する。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、優れた静粛性を発揮するとともに、製造コストの高騰化を生じない車両用シートリクライニング装置を提供すべきことを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用シートリクライニング装置は、車体と、前記車体に設けられた車両用シートとの間に設けられた車両用シートリクライニング装置において、
前記車両用シートは、前記車体に設けられたシート本体と、前記シート本体に対して傾動するバックレストとを有し、
前記バックレストにはロック装置が固定され、
前記車体に固定され、前記バックレストの傾動時に描かれる前記ロック装置の軌跡と整合する延在方向に延びるレールと、
前記レールに前記延在方向で摺動可能なスライダと、
前記スライダに設けられ、前記ロック装置と係合又は非係合するストライカと、
前記レールと前記スライダとの間に設けられ、前記スライダの摺動を規制又は許容するラッチ機構とを有し、
前記スライダは、前記ストライカが固定される板状のベースと、前記ベースに装着された外装部材とからなり、
前記レールと前記スライダとの間には、
前記外装部材に装着された状態で前記スライダの摺動を許容しつつ前記延在方向
及び前記レールの幅方向と直交する方向で前記レールと前記スライダとに当接する当接部材が設けられていることを特徴とす
る。
【0010】
本発明の車両用シートリクライニング装置では、レールとスライダとに当接する当接部材が設けられている。当接部材はスライダの摺動を許容しつつ延在方向と直交する方向でレールとスライダとに当接している。このため、バックレストがレールの延在方向に振れることにより、ストライカを通じてスライダが延在方向と直交する方向に振れたとしても、スライダとレールとの間で打音が発生しない。
【0011】
また、この車両用シートリクライニング装置では、当接部材を設けることにより、レールとスライダとの隙間を管理する高精度の加工が不要又は簡易で足りる。
【0012】
したがって、本発明の車両用シートリクライニング装置によれば、優れた静粛性を発揮するとともに、製造コストの高騰化を生じない。
【0013】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、延在方向は直線であってもよく、湾曲であってもよい。
【0014】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、レールは延在方向に延びる平坦な案内壁を有することが好ましい。また、スライダは案内壁と対面する平坦な被案内壁を有することが好ましい。当接部材は被案内壁に設けられ得る。当接部材は、被案内壁側の底面が大面積であり、案内壁側の先端が小面積である山形状をなし、ゴム又は軟質樹脂からなる凸部を有していることが好まし
い。
【0015】
この場合、バックレストがレールの延在方向と直交する方向に振れても、当接部材の凸部の変形によってその振れを吸収し、スライダとレールとの衝突を防ぐことが可能となる。
【0016】
また、当接部材の凸部の寸法管理は、金型で行うことができ、容易である。当接部材の山形状としては、円錐状、角錐状、半球状等、種々の形状を採用することができる。
【0017】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、当接部材は、被案内壁に固定され、凸部と一体をなす軸部を有し得る。また、被案内壁の案内壁側の表面には、軸部から凸部を突出させ、底面と当接する載置面と、載置面から案内壁側に立ち上がる周面とからなり、表面から凹設された凹部が形成され得る。そして、凹部は、凸部の潰れを許容する容積に設定されていることが好まし
い。
【0018】
ストライカに過大な力が作用し、凸部が案内壁に押しつぶされても、被案内壁が案内壁と当接すれば、それ以上凸部が潰れない。つまり、凸部は凹部内でのみ潰れ、凹部外にはみ出さない。このため、スライダの摺動時の抵抗力が増加することなく、スライダの摺動性が安定する。
【0019】
また、凸部が凹部内で変形し、被案内壁が案内壁と当接すれば、被案内壁と案内壁とによってストライカに作用する力を好適に支持できる。また、凸部が過剰に潰れることによる当接部材の破損が生じないため、ストライカに作用する力が解除されれば、凸部が復帰し、繰り返しその機能を発揮することができる。このため、この車両用シートリクライニング装置は高い耐久性を発揮することができる。
【0020】
また、レールへの組付後、凹部が当接部材の凸部のストッパとなり、当接部材の脱落の憂いもない。
【0021】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、被案内壁は、軸部を挿入する切欠きを有することが好まし
い。この場合、切欠きに軸部を挿入し、被案内壁に当接部材を装着できるため、組み付けが容易である。また、穴に軸部を挿入するよりも、不十分挿入を生じ難くなる。
【0022】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、レールは、第1の案内壁である基壁と、基壁の幅方向の一端がスライダを摺動させるための摺動空間を確保しつつ折り返されてなり、第2の案内壁である第1折り返し壁とを有し得る。また、スライダは、ストライカが固定される板状の金属からなるベースと、ベースに装着された樹脂からなる外装部材とからなり得る。第1の外装部材は、ベースと基壁との間に位置する外装裏壁と、ベースと第1折り返し壁との間に位置する第1外装表壁とを有し得る。当接部材は、軸部と、軸部の両端側で軸部と一体に形成された一対の凸部とからなり得る。そして、第1の当接部材は、軸部が外装裏壁に装着されることにより、一方の凸部が基壁に当接し、他方の凸部がベースに当接し得る。また、第2の当接部材は、軸部が第1外装表壁に装着されることにより、一方の凸部が第1折り返し壁に当接し、他方の凸部がベースに当接し得
る。
【0023】
この場合、レールが内部に摺動空間を形成するU字形状である。また、摺動空間を摺動するスライダのベースが金属からなり、そのベースにストライカが固定されている。このため、ストライカに過大な力が作用しても、スライダが好適に摺動する。
【0024】
また、ベースには外装裏壁及び第1外装表壁を有する第1の外装部材が装着され、外装裏壁に第1の当接部材が装着され、第1外装表壁に第2の当接部材が装着される。第1の当接部材は、基壁と外装裏壁との間の打音と、ベースと外装裏壁との間の打音とを防止する。第2の当接部材は、第1折り返し壁と第1外装表壁との間の打音と、ベースと第1外装表壁との間の打音とを防止する。このため、より優れた静粛性を発揮する。また、当接部材が対称形のため、向きを確かめる必要がなく組み立てが容易である。
【0025】
本発明の車両用シートリクライニング装置において、レールは、基壁の幅方向の他端が摺動空間を確保しつつ折り返されてなり、第3の案内壁である第2折り返し壁を有することが好ましい。第2の外装部材は、ベースと基壁との間に位置する外装裏壁と、ベースと第2折り返し壁との間に位置する第2外装表壁とを有し得る。そして、第3の当接部材は、軸部が第2外装表壁に装着されることにより、一方の凸部が第2折り返し壁に当接し、他方の凸部が前記ベースに当接していることが好まし
い。
【0026】
この場合、レールが内部に摺動空間を形成するC字形状となり、スライダがレールから抜け難い。また、第2の外装部材における第2外装表壁に第3の当接部材が装着される。第3の当接部材は、第2折り返し壁と第2外装表壁との間の打音と、ベースと第2外装表壁との間の打音とを防止する。このため、より優れた静粛性を発揮する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の車両用シートリクライニング装置によれば、優れた静粛性を発揮するとともに、製造コストの高騰化を生じない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、
図1において、紙面右側を車両の前面と規定し、紙面左側を車両の後側と規定し、紙面手前側を車両の右側と規定し、紙面奥側を車両の左側と規定して表示する。また、各図に表示する左右方向、前後方向及び上下方向は、全て
図1に対応させている。
【0030】
図1に示すように、実施例の車両用シートリクライニング装置1は、ロック装置3とともに、車体5に設置された車両用シート7に適用される。車両用シート7は、搭乗者が腰掛けるシート本体7aと、搭乗者がもたれ掛かるバックレスト7bとにより構成されている。バックレスト7bは、シート本体7aの後端部に設けられた支持軸7cに傾動可能に支持されており、シート本体7aの後端部から斜め後方に立ち上がっている。
【0031】
バックレスト7bの左側面(
図1において、バックレスト7bより紙面奥側)の上方には、ロック装置3が固定されている。ロック装置3は、車体5の後方に向かって開く進入口3a、この進入口3aを塞ぐように変位可能なフォーク(図示省略)等を有する公知の構成を備えている。進入口3aに車両用シートリクライニング装置1のストライカ13が進入した状態でフォークが進入口3aを塞ぐことにより、ロック装置3がストライカ13と係合し、バックレスト7bの傾動姿勢が固定される。そして、ストライカ13が車両用シートリクライニング装置1によって前後方向に段階的に変位することにより、その変位がロック装置3を介してバックレスト7bに伝達される。このため、バックレスト7bの傾動姿勢が段階的に変化するようになっている。バックレスト7bが傾動する際、ロック装置3は、支持軸7cを中心とする円弧上の軌跡C1を描く。
【0032】
図示は省略するが、車両用シート7の近傍には、ロック装置3とストライカ13との係合を解除する解除レバーが設けられている。例えば、大きい荷物を積載するためにバックレスト7bを前方に倒す場合、搭乗者がその解除レバーを操作すると、ロック装置3がストライカ13と係合しなくなり、バックレスト7bを支持軸7c周りで前方に倒すことができる。
【0033】
車両用シートリクライニング装置1は、
図2及び
図3に示すように、レール9と、スライダ11と、ストライカ13と、ラッチ機構15と、8個の当接部材17とを有している。
【0034】
レール9は、鋼板がC字断面形状に折り曲げ加工されている。また、レール9は、中心軸線S1に沿って直線状に延びている。中心軸線S1の方向が延在方向である。このレール9は、平坦な基壁9bと、基壁9bの幅方向の上端が下方に折り返された第1折り返し壁9cと、基壁9bの幅方向の下端が上方に折り返された第2折り返し壁9dとからなる。基壁9bと第1折り返し壁9cとは、車体の前後方向で互いに平行に延びている。基壁9bと第2折り返し壁9dとも、車体の前後方向で互いに平行に延びている。基壁9bと第1折り返し壁9cとの間隔と、基壁9bと第2折り返し壁9dとの間隔とは、ともに等しくされており、
図7に示すように、これらの間隔がスライダ11を摺動させるための摺動空間9eとされている。基壁9bが第1の案内壁に相当し、第1折り返し壁9cが第2の案内壁に相当し、第2折り返し壁9dが第3の案内壁に相当する。
【0035】
図2及び
図3に示すように、レール9の前端側及び後端側には、それぞれ上下に位置する2個のピン穴8a、8bと、ぞれぞれ中央に位置する1個の挿通穴8c、8dとが形成されている。また、レール9の前端側及び後端側には、クランク形状に折り曲げられたストッパ10、12が設けられている。ストッパ10、12には、スライダ11と当接する規制面が形成されている。両ストッパ10、12にも、上下に位置する2個のピン穴10a、12aと、中央に位置する1個の挿通穴10b、12bとが形成されている。両ストッパ10、12は、ピン穴10a、8aと、ピン穴12a、8bとにそれぞれピン14aを設けることによりレール9に固定されている。車両用シートリクライニング装置1を車体5に固定する際には、両ストッパ10、12及びレール9の挿通穴10b、8cと、挿通穴12b、8dとにそれぞれボルト14bを挿通し、両ボルト14bを車体5に固定する。この際、
図1に示すように、レール9の中心軸線S1がロック装置3の軌跡C1に合うように位置決めされている。より詳細には、レール9の中心軸線S1は、軌跡C1の中央における接線になるように位置決めされている。ストッパ10、12は規制面がスライダ11と当接し、スライダ11の前端位置及び後端位置を規定する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、レール9の基壁9bには、中心軸線S1に沿って、5個のラッチ穴9aが等間隔を隔てて貫設されている。各ラッチ穴9aは、基壁9bの幅方向に長い略矩形状とされている。
【0037】
スライダ11は、ベース16と、第1、2外装部材18、19とからなる。ベース16は、金属製の板材からなり、中心軸線S1方向に長い矩形状とされている。第1、2外装部材18、19は、同一の形状に成形された樹脂成形品である。
【0038】
ベース16の前方には、ベース16から垂直に離れる方向に延びるストライカ13が固定されている。このストライカ13は、金属製の丸棒が折り曲げ加工されて略U字形状にされている。
【0039】
また、ベース16の後方には、ラッチ機構15が設けられている。ラッチ機構15は、レバー支持部材21と、レバー23と、揺動軸25と、伝達ケーブル27とを有している。レバー支持部材21は、スライダ11の後側の一部を覆う形状とされ、ベース16に固定されている。レバー支持部材21には、金属製のレバー23が揺動軸25周りで揺動可能に支持されている。揺動軸25は中心軸線S1と平行に設けられている。
【0040】
ベース16には各ラッチ穴9aと対面可能な図示しない1個のスライド穴が貫設されている。レバー23には、そのスライド穴を通り、各ラッチ穴9aのいずれかと係合する図示しないラッチ爪が形成されている。揺動軸25にはねじりコイルバネ26が設けられている。ねじりコイルバネ26は、レバー23のラッチ爪がスライド穴を通って各ラッチ穴9aのいずれかと係合するように、レバー23を付勢している。
【0041】
また、レバー23にはラッチ爪とは逆側に係止片23aが形成されている。この係止片23aには、レバー支持部材21側から延びる伝達ケーブル27の一端が連結されている。図示は省略するが、
図1に示す車両用シート7の近傍には、バックレスト7bの傾動姿勢を調整する調整レバーが設けられており、その調整レバーに伝達ケーブル27の他端が連結されている。
【0042】
搭乗者がその調整レバーを操作し、レバー23のラッチ爪がねじりコイルバネ26の付勢力によりスライダ11のスライド穴を通ってレール9のラッチ穴9aのいずれか1つと係合すれば、レール9に対するスライダ11の中心軸線C1に沿う摺動が規制される。一方、搭乗者がその調整レバーを操作し、伝達ケーブル27が引かれれば、レバー23がねじりコイルバネ26の付勢力に抗して揺動し、ラッチ爪が各ラッチ穴9aのいずれかから抜かれる。このため、ラッチ爪がスライド穴を通ってラッチ穴9aと係合しなくなり、レール9に対するスライダ11の中心軸線S1に沿う摺動が許容される。
【0043】
図3、
図4及び
図5に示すように、第1、2外装部材18、19は、平坦な第1外装壁22と、第2外装壁24と、第1外装壁22と第1外装壁24とを一端側で部分的に連結する第1〜4連結部26a〜26dとを有している。第1外装壁22と第2外装壁24とはほぼ互いに平行に延びている。
【0044】
第1外装壁22の前端側には第1前側軸孔22aが形成され、第1外装壁22の後端側には第1後側軸孔22bが形成されている。また、第2外装壁24の前端側には第2前側軸孔24aが形成され、第2外装壁24の後端側には第2後側軸孔24bが形成されている。第1前側軸孔22a及び第2
前側軸孔24
aは、
図6に示すように、円筒状に形成されている。第1後側軸孔22b及び第2
後側軸孔24
bも同様である。
【0045】
第1前側軸孔22a、第1後側軸孔22b、第2前側軸孔24a及び第2後側軸孔24bは、切欠き28によって第1〜4連結部26a〜26dとは逆側に開いている。切欠き28は開口側が広く形成されている。
【0046】
第1前側軸孔22aの周りには、表面30aから凹設された凹部30が形成されている。この凹部30は、載置面30bと、載置面30bから垂直に立ち上がる周面30cとからなる。第1後側軸孔22b、第2前側軸孔24a及び第2後側軸孔24bも同様である。各凹部30は、後述する当接部材17の凸部17bの潰れを許容する容積に設定されている。
【0047】
また、
図4に示すように、第1、2外装部材18、19は、第3連結部26cの先端に付勢部32を突出させている。付勢部32はスライダ11の幅方向に向かって斜めに伸びており、その先端は面取り32aが形成されている。このため、この付勢部32は、レール9の第1、2折り返し壁9c、9dの内側面から押圧されて中心軸線S1に近づくように変形可能であり、このように変形した場合には、復元力を発揮する。また、スライダ11が摺動空間9eを摺動する際、面取り32aが第1、2折り返し壁9c、9dの内側面を好適に摺動する。
【0048】
さらに、第3連結部26cと第4連結部26dとは、回動部34によって接続されている。回動部34は第3連結部26cと第4連結部26dとの間を山形状をなして接続している。回動部34と第1外装壁22との間と、回動部34と第2外装壁24との間とにはそれぞれスリット36が形成されている。第1、2外装部材18、19がベース16に装着されれば、第1、2外装部材18、19における回動部34の両頂点を結ぶ仮想線の中点がラッチ機構15のラッチ爪の中心に一致するようになっている。このため、スライダ11はレール9に対してラッチ爪の中心周りで回動することが可能になっている。また、回動部34に対し、レール9の第1、2折り返し壁9c、9dの内側面から過度の反力が作用すれば、回動部34がスリット36によって中心軸線S1に近づくように変形し、回動部34が破損することが防止される。そして、その過度の反力がなくなれば、復元力によって回動部34が復帰する。
【0049】
また、第1外装壁22と第2外装壁24とには、第2連結部26bと第3連結部26cとの間に位置する部分がなだらかな山形をなす稜部38が形成されている。また、第1外装壁22と第2外装壁24とには、第3連結部26cと第4連結部26dとの間に位置する部分もなだらかな山形をなす稜部40が形成されている。これら稜部38、40は、対面するレール9の第1、2折り返し壁9c、9dや基壁9bに対して小さい接触面積で接触し、スライダ11の摺動性を損なわない。また、稜部38、40に対して第1、2折り返し壁9c、9dや基壁9bから反力が作用すれば、稜部38、40が撓むように第1外装壁22及び第2外装壁24が変形し、稜部38、40が破損することが防止される。そして、その過度の反力がなくなれば、復元力によって稜部38、40が復帰する。
【0050】
第1連結部26aと第2連結部26bとの間は、第1、2外装部材18、19の先端に位置する挿入孔42が設けられている。
図3及び
図5に示すように、ベース16には、前方側の幅方向上端及び下端に前方に向かって突出する角部16aが設けられている。
【0051】
図3、
図6及び
図8に示すように、各当接部材17はゴム製である。各当接部材17は、円柱状の軸部17aと、この軸部17aの両端に形成された凸部17bとからなる。各凸部17bは、軸部17a側の底面が大面積であり、先端が小面積である円錐状をなしている。
【0052】
図6に示すように、第1、2外装部材18、19の第1前側軸孔22a、第1後側軸孔22b、第2前側軸孔24a及び第2後側軸孔24bに切欠き28を介してそれぞれ当接部材17の軸部17aを挿入する。この際、切欠き28は開口側が広く形成されているため、容易に当接部材17を第1前側軸孔22a等に装着することができる。また、各当接部材17には方向性及び上下がないため、この意味でも第1前側軸孔22a等に容易に当接部材17を装着することができる。こうして、第1前側軸孔22a等にそれぞれ当接部材17を装着した第1外装部材18と、第2前側軸孔24a等にそれぞれ当接部材17を装着した第2外装部材19とが得られる。
【0053】
そして、
図3に示すように、ストライカ13及びラッチ機構15を組み付けたベース16を用意し、このベース16の幅方向の上端に第1外装部材18を装着する。この際、
図5に示すように、ベース16の角部16aが第1外装部材18の挿入孔42に挿入される。また、このベース16の幅方向の下端に第2外装部材19を装着する。この際も、ベース16の角部16aが第2外装部材19の挿入孔42に挿入される。そして、第1、2外装部材18、19の第1外装壁22と第2外装壁24とがベース16を挟み込み、
第1、2外装部材
18、19がベース16に装着される。こうしてスライダ11が組み付けられる。
【0054】
この後、
図2に示すように、スライダ11をレール9に組み付ける。これにより、実施例の車両用シートリクライニング装置1が組み付けられる。この車両用シートリクライニング装置1では、
図7に示すように、レール9の基壁9bと第1折り返し壁9cとの間にスライダ11の上部が位置し、レール9の基壁9bと第2折り返し壁9dとの間にスライダ11の下部が位置している。
【0055】
ここで、スライダ11における第1外装部材18の第1外装壁22が第1折り返し壁9cと対面する被案内壁に相当し、スライダ11における第1外装部材18の第2外装壁24が基壁9bと対面する被案内壁に相当する。また、スライダ11における第2外装部材19の第
2外装壁
24が第2折り返し壁9dと対面する被案内壁に相当し、スライダ11における第2外装部材19の第
1外装壁
22が基壁9bと対面する被案内壁に相当する。
【0056】
そして、第1外装部材18の第2外装壁24がベース16と基壁9bとの間に位置する外装裏壁に相当し、第1外装部材18の第1外装壁22がベース16と第1折り返し壁9cとの間に位置する第1外装表壁に相当する。また、第2外装部材19の第1外装壁22がベース16と基壁9bとの間に位置する外装裏壁に相当し、第2外装部材19の第2外装壁24がベース16と第2折り返し壁9dとの間に位置する第2外装表壁に相当する。
【0057】
このため、
図8に示すように、第1外装部材18の第2外装壁24における第2前側軸孔24a及び第2後側軸孔24bに装着された当接部材17は、一方の凸部17bが基壁9bに当接し、他方の凸部17bがベース16に当接している。また、第1外装部材18の第1外装壁22における第1前側軸孔22a及び第1後側軸孔22bに装着された当接部材17は、一方の凸部17bがベース16に当接し、他方の凸部17bが第1折り返し壁9cに当接している。
【0058】
図示はしないが、同様に、第2外装部材19の第1外装壁22における第1前側軸孔22a及び第1後側軸孔22bに装着された当接部材17は、一方の凸部17bが基壁9bに当接し、他方の凸部17bがベース16に当接している。また、第2外装部材19の第2外装壁24における第2前側軸孔24a及び第2後側軸孔24bに装着された当接部材17は、一方の凸部17bがベース16に当接し、他方の凸部17bが第2折り返し壁9dに当接している。
【0059】
この車両用シートリクライニング装置1では、ストライカ13がバックレスト7bのロック装置3と係合し、ラッチ機構15がスライダ11のレール9に対する摺動を規制すれば、バックレスト7bの傾動姿勢を固定することができる。他方、ストライカ13がバックレスト7bのロック装置3と係合状態のまま、ラッチ機構15がスライダ11のレール9に対する摺動を許容すれば、バックレスト7bの傾動姿勢を変更することができる。こうして、この車両用シートリクライニング装置1は、バックレスト7bの傾動姿勢を段階的に固定できる。
【0060】
そして、この車両用シートリクライニング装置1では、レール9とスライダ11とに左右方向で当接する8個の当接部材17が設けられている。各当接部材17はスライダ11の摺動を許容しつつ中心軸線S1と直交する方向でレール9とスライダ11とに当接している。より詳細には、ベース16に第1、2外装部材18、19が装着され、第1、2外装部材18、19に各当接部材17が装着されている。各当接部材17は、車両の左右方向でレール9とスライダ11とに当接している。このため、車両が悪路を走行することにより、バックレスト7bがレール9の延在方向である前後方向、左右方向及び上下方向に振れる場合、ストライカ13を通じてスライダ11が左右方向に振れたとしても、スライダ11とレール9との間で打音が発生しない。
【0061】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、ゴム製の当接部材17を設けることにより、レール9とスライダ11との左右方向の隙間を管理する高精度の加工が不要又は簡易で足りる。
【0062】
したがって、この車両用シートリクライニング装置1によれば、優れた静粛性を発揮するとともに、製造コストの高騰化を生じない。
【0063】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、バックレスト7bが左右方向に振れても、
図9に示すように、各当接部材17の凸部17bが基壁9b、第1折り返し壁9c、第2折り返し壁9d又はベース16に押圧されて変形することによってその振れを吸収し、スライダ11とレール9との衝突を防ぐことが可能となる。
【0064】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、各当接部材17の凸部17bの寸法管理は、金型で行うことができ、容易である。
【0065】
さらに、この車両用シートリクライニング装置1では、
図10に示すように、ストライカ13に過大な力が作用し、各当接部材17の凸部17bが基壁9b、第1折り返し壁9c、第2折り返し壁9d又はベース16に押しつぶされても、第1、2外装部材18、19の第1、2外装壁22、24が基壁9b等と当接すれば、それ以上凸部17bが潰れない。つまり、各凸部17bは凹部30内でのみ潰れ、凹部30外にはみ出さない。このため、スライダ11の摺動時の抵抗力が増加することなく、スライダ11の摺動性が安定する。
【0066】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、各凸部17bがそれぞれ凹部30内で変形し、第1、2外装部材18、19の第1、2外装壁22、24が基壁9b、第1折り返し壁9c、第2折り返し壁9d又はベース16と当接すれば、第1、2外装壁22、24と基壁9b等とによってストライカ13に作用する力を好適に支持できる。また、各凸部17bが過剰に潰れることによる各当接部材17の破損が生じないため、ストライカ13に作用する力が解除されれば、各凸部17bが復帰し、繰り返しその機能を発揮することができる。このため、この車両用シートリクライニング装置1は高い耐久性を発揮することができる。
【0067】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、レール9への組付後、凹部30が当接部材17の凸部17bのストッパとなり、当接部材17の脱落の憂いもない。
【0068】
さらに、この車両用シートリクライニング装置1では、切欠き28に軸部17aを挿入し、第1、2外装壁22、24に各当接部材17を装着できるため、組み付けが容易である。また、穴に軸部17aを挿入するよりも、不十分挿入を生じ難い。
【0069】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、レール9が内部に摺動空間9eを形成するC字形状である。このため、スライダ11がレール9から抜け難い。また、摺動空間9eを摺動するスライダ11のベース16が金属からなり、そのベース16にストライカ13が固定されている。このため、ストライカ13に過大な力が作用しても、スライダ11が好適に摺動する。
【0070】
また、この車両用シートリクライニング装置1では、各当接部材17が対称形のため、向きを確かめる必要がなく組み立てが容易である。
【0071】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、実施例では直線状のレールを採用したが、バックレストの軌跡C1と整合する湾曲した延在方向に延びるレールを採用することもできる。