(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な音響付加装置に関しては、特に問題等が発生していない通常動作時の利便性や周囲環境への配慮といった観点で各種の技術が提案されているが、異常時における誘導動作といった観点における技術が導入されたり提案されたりすることがなかった。
【0005】
例えば、大規模災害時には、商用電源が消失し非常用電源(非常用バッテリや非常用発電装置)で交通信号機が動作することがあり、音響付加装置に関しても、そのような状況において視覚障害者等を含む避難者に対して適切な避難所への誘導が可能な技術が求められていた。避難者にとって、一旦迷ってしまうと適正な経路に復帰する手がかりが無くなる虞があって対策が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、交差点に設置され
歩行者用信号機の状態を、電気信号から音に変換する電気音響変換器から音響により歩行者へ通知する視覚障害者用音響付加装置であって、商用電力または非常用電源から電力を取得する電力部と、
通常時の歩行者用信号機に同期した音声案内を出力するための通常用音声パターンと、非常時に非常用の情報を出力するための非常用音声パターンの音声データとを記憶する記憶部と、前記商用電力を利用できない状態になって、前記非常用電源
からの電力を利用する状況になったときに、前記商用電力を利用できない状態用に設定されている所定の非常用案内音声出力を行う制御部と、
周囲の交差点に設置された別の視覚障害者用音響付加装置と通信する通信部と、を備え、前記制御部は、前記商用電力を利用できない状態が停電であるか否かを検知し、前記通信部が通信可能に設定されている前記別の視覚障害者用音響付加装置と通信した結果、全ての前記別の視覚障害者用音響付加装置において、商用電力の入力異常である場合又は通信できない場合、停電が発生していると判断して前記記憶部から前記非常用音声パターンの音声データを取得し、前記電気音響変換器へ前記非常用案内音声出力を行い、かつ前記通信部が通信した結果、一部の前記別の視覚障害者用音響付加装置において、前記商用電力からの電力取得がなされている場合には、停電が発生していないと判断して前記記憶部から前記通常用音声パターンの音声データを取得し、前記電気音響変換器へ通常時の誘導案内の音声出力を行い、前記非常用案内音声出力は、所定の避難所へ誘導する内容であって、前記記憶部は、前記所定の避難所までの複数の経路パターンの避難誘導経路データを記憶し、前記制御部は、前記記憶部の避難誘導経路データの複数の経路パターンから前記通信できない前記別の視覚障害者用音響付加装置を避けた経路で誘導するように経路パターンを選択し、前記記憶部から選択した経路パターンの前記非常用音声パターンの音声データを取得し、前記電気音響変換器へ前記非常用案内音声出力を行う。
また、前記制御部は、停電であると判断した場合、前記別の視覚障害者用音響付加装置のうち、通信できない前記別の視覚障害者用音響付加装置の方向へは誘導しないように、前記非常用案内音声出力を行ってもよい
。
また、前記非常用案内音声出力は、所定の避難所へ誘導する内容であってもよい
。
また、前記制御部は、併設される信号機の出力状態を取得し、前記通信部を介して、他の視覚障害者用音響付加装置へ送信するとともに、他の視覚障害者用音響付加装置から他の信号機の出力状態を取得し、前記他の信号機の出力状態が異常となっている信号機の方向へは誘導しないように、前記経路パターンを決定してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、商用電力の取得ができないときでも、適切に警報出力や避難誘導を行う技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
入力電力の監視として、非常用電源を搭載した音響付加装置間で通信を行い、入力異常(商用電源断の状態)がないか判定する。通信を行った音響付加装置が全て入力異常もしくは通信断(通信不能状態)である場合、停電を検知して避難誘導の誘導を行う。自身や一部の機器が入力異常である場合、音響付加装置として通常運用(通常動作シーケンス)を行う。
【0013】
出力電力の監視として、非常用電源を搭載した音響付加装置や誘導先の目印となる交差点の信号機は出力電力を検知し、自機内にデータを保持する。出力電力が一定以下に下回った場合、出力異常とし、非常用電源を搭載した音響付加装置間で通信を行う。
【0014】
避難誘導経路変更方法として、避難経路についてパターンを複数設定し、非常用電源を搭載した音響付加装置や誘導先の目印となる交差点の信号機との通信電文の内容(誘導先機器の出力異常)で適宜変更を行う。
【0015】
つぎに、
図1〜3を参照して、具体例を説明する。
【0016】
図1は避難場所への避難誘導経路を示した図であって、
図1(a)は所定のエリアにおいて全ての音響付加装置10が動作状態にあるときの避難誘導経路を示しており、
図1(b)は一部の音響付加装置10が非動作状態にあるときの避難誘導経路を示している。また、
図2は第1交差点C1における通常時の動作例を示している。また、
図3は、第1交差点C1における避難誘導出力時の動作例を示しており、
図1(a)の動作に対応する。なお、
図2及び
図3では、信号灯器の図示は省略している。
【0017】
図1に示すように、南北に交差する複数の道路の所定の交差点(第1〜第4交差点C1〜C4)には、信号機80が設置されており、同時に、音響付加装置(第1〜第4音響付加装置10a〜10d)が併設されている。なお、第1〜第4音響付加装置10a〜10dを区別しないときには、単に「音響付加装置10」と称する。なお、音響付加装置10及び信号機80の構成・動作については後述する。
【0018】
第1〜第4音響付加装置10a〜10dは、特に停電等が発生せず商用電力(又は商用電源)から電力を取得できる場合は、一般的な通常動作を行い、併設の信号機80に同期して音声案内を出力する。例えば、
図2に示すように、南北方向への進路が青信号(進行現示)の場合、スピーカ1(図中SP1)とスピーカ2(図中SP2)から「ピヨ」という音声パターンが繰り返し出力される。
【0019】
第1〜第4音響付加装置10a〜10dは、商用電力からの供給が停止した場合、電源を商用電力90から非常用電源20(後述の
図4参照)に切り換え、さらに、相互に通信を行い、停電が発生しているか否かを判断する。他の音響付加装置10において、商用電力の利用が継続している場合は、停電は発生していないと判断し、他の音響付加装置10の全てにおいて商用電力90から非常用電源20への切り替えがなされていれば、又は、通信ができなくなっていれば、周囲のエリアにおいて停電が発生していると判断する。
【0020】
そして、
図1(a)に示すように、停電が発生している場合には、音響付加装置10は、所定の避難場所EAへ誘導する避難誘導用の音声案内を出力する。ここでは、第1交差点C1から避難場所EAへの経路として、第1交差点C1から北方向に向かい、2つ先の第2交差点C2で東方向に向かう経路が、所定の避難誘導パターンとして設定されている。具体的には
図3に示すように、第1交差点C1の第1音響付加装置10aは、通常の「ピヨ」という音声パターンとともに、停電が発生している旨及び次の信号(第2交差点C2)まで進むことを案内している。
【0021】
図1(b)に示すように、いずれかの音響付加装置10または信号機80が通信不能となって動作停止状態であると想定されるような異常発生時には、その動作停止状態と想定される音響付加装置10等の方向には誘導しないような音声案内の出力がなされる。ここでは、第2交差点C2の第2音響付加装置10b(又はその信号機80)が異常状態となっている。このような状況で、第2交差点C2に誘導されると、避難者は進む方向を見失う虞がある。そこで、第1交差点C1の音響付加装置10aは、東方向の第3交差点C3(第3音響付加装置10c)の方向に誘導する音声案内を出力する。第3交差点C3では、第3音響付加装置10cが北方向に誘導する音声案内を出力する。
【0022】
例えば、
図1(b)に示すように、第2交差点の第2音響付加装置10b(又はその信号機80)が動作停止状態と想定される場合、
図3に示したような案内をすることは不適切である。そこで、第1交差点の第1音響付加装置10aは、例えば、南北方向への進路が青信号(進行現示)であれば、「先の交差点は停電により消えております。注意して下さい。」といった内容の警告や、第3交差点C3へ進む別ルートの内容の案内を出力する。
【0023】
以上の動作を実現する構成を
図4の音響付加装置10の機能ブロック図及び
図5の信号機80の機能ブロック図を参照して説明する。
【0024】
図4に示すように、音響付加装置10は、制御ユニット12と、電力部14と、通信部16と、電力測定部18と、非常用電源20と、スピーカ1〜スピーカ4(
図2、3中のSP1〜SP4に対応)を備える。
【0025】
スピーカ1〜スピーカ4は、
図2に示した第1交差点C1に設定された状態を想定した場合、スピーカ1とスピーカ2は南北方向が進行現示の場合に音声出力を行い、スピーカ3とスピーカ4は東西方向が進行現示の場合に音声出力を行う。
【0026】
制御ユニット12は、制御部31と記憶部32を備える。制御部31は、音響付加装置10の各構成要素を統括的に制御するとともに、スピーカ1〜スピーカ4への音声出力を行う。また、制御部31は、本実施形態において特徴的な処理として、停電発生時等の非常時用の音声案内の出力処理を行う。例えば、制御ユニット12は、その出力処理に関連して、通信部16を介して別の音響付加装置10から電源の動作状況(電力取得状況等)を取得したり、非常用電源20の残容量に応じて所定の処理を行う。記憶部32は、他の信号機の音響付加装置10と区別するための自身の信号機ID番号と、予め定められた他の信号機の音響付加装置10と通信を行うための複数の通信先の音響付加装置10の信号機ID番号と、通常時及び非常時用に情報を出力するための複数の音声パターンを有する音声データと、予め定められた複数の通信先の音響付加装置10の位置を信号機ID番号に対応させてマップ上に配置し、非常時に避難者を避難所まで誘導するための複数の避難経路パターンを有する避難誘導経路データを保持する。非常時の音声案内において、制御部31は、予め決められた他の信号機と通信を行い、避難経路の信号機の状態に応じて避難誘導経路データから適切な経路パターンを選択し、さらに、音声データから適切な音声パターンを選択して音声案内処理を行う。なお、非常時用の音声案内の出力処理については、後述の
図6〜
図8のフローチャートにおいて詳細を説明する。
【0027】
電力部14は、電源として通常時は商用電力90から電力を取得し、停電等によって商用電力90が消失した場合には非常用電源20から電力を取得する。また、電力部14は、制御部31に対し商用電力90又は非常用電源20のどちらの電源を使用しているかを制御ユニット12に通知する。
【0028】
通信部16は、信号機80の通信部56と通信するとともに、別の音響付加装置10の通信部16と通信する。
【0029】
電力測定部18は、非常用電源20の電力の使用状況を測定し、測定結果を制御ユニット12に通知する。
【0030】
非常用電源20は、内蔵又は外部バッテリや非常用発電装置で構成されている。なお、音響付加装置10の非常用電源20は、信号制御機50の非常用電源と共用されてもよい。
【0031】
図5に示すように、信号機80は、信号灯器70と信号制御機50とを備える。信号制御機50は、制御ユニット52と、電力部54と、通信部56と、電力測定部58と、灯色開閉部60とを備える。
【0032】
制御ユニット52は、各構成要素を統括的に制御する。電力部54は、商用電力90から電力を取得すると共に、停電時等には図示しない非常用バッテリから電力を取得する。通信部56は、音響付加装置10と通信を行ったり、また、交通管制システムと通信を行う。電力測定部58は、電力の使用状況(より具体的には、信号灯器70の点灯状態)を灯色開閉部60から取得し所定の記憶領域に保持するとともに、必要に応じて音響付加装置10に通知する。灯色開閉部60は、信号灯器70の動作を制御する。
【0033】
以上の構成による動作を
図6〜
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図6は電源投入時の動作を示すフローチャートである。電源が投入されると(S10)、制御ユニット12の制御部31は、記憶部32から避難誘導経路データを読み込む(S11)。このとき、複数ある経路パターンの中から初期値として設定されている経路パターンが読み込まれる。
【0035】
制御部31は、商用電源があるか否か、つまり商用電力90からの電力供給がなされているか否かを常時監視する(S12)。
【0036】
商用電源がある場合(S12のY)、制御部31は、通常動作シーケンスでスピーカ1〜4から音声案内出力を行う(S13)。
【0037】
商用電源が消失している場合(S12のN)、つまり、電源として非常用電源20に接続されている場合、制御部31は、制御状態を避難誘導出力シーケンスに移行する(S14)。
【0038】
図7は、通常動作シーケンスを示すフローチャートである。制御部31は、通常動作シーケンスを開始すると(S20)、信号制御機50と同期して信号灯器70の灯色状態に応じて所定の誘導音を出力する(S21)。
【0039】
さらに、制御部31は、予め決められた信号機ID番号を持った他の信号機の音響付加装置10から、使用電源の状況を求める信号を受信した場合は(S22のY)、電力部14から取得した使用している電源の状況すなわち商用電力90を使用していることを、自身の信号機ID番号とともに他の信号機の音響付加装置10に送信する(S23)。本処理が終了すると、
図6で示したS12の処理に戻る。
【0040】
図8は、避難誘導出力シーケンスを示すフローチャートである。避難誘導出力シーケンスが開始されると(S30)、制御部31は、電力測定部18を介して非常用電源20の電力を計測し(S31)、非常用電源20の電力の計測結果と、電力部14から取得した使用している電源の状況すなわち非常用電源20を使用していることと、自身の信号機ID番号とを、出力状態として他の信号機の音響付加装置10等に対して送信するとともに、他の信号機の音響付加装置10等からの出力状態を受信し、信号機ID番号に基づいて取得する(S32)。
【0041】
制御部31は、全通信先(他の音響付加装置10)が商用電源断又は通信断の状態にあるか否かを判断する(S33)。つまり、他の全ての音響付加装置10において、非常用電源20による動作状態にあるか又は動作状態を取得できない状況にある場合、制御部31は、停電等の非常状態であると判断する。
【0042】
全通信先(他の音響付加装置10)が商用電源断又は通信断の状態には無い場合(S33のN)、つまり、いずれかの音響付加装置10において商用電力90からの電力供給がなされている場合、制御部31は通常動作シーケンスによる音声案内出力を行い(S34)、
図6で示したS12の処理に戻る。
【0043】
全通信先(他の音響付加装置10)が商用電源断又は通信断の状態にある場合(S33のY)、制御部31は、他の音響付加装置10等に出力異常があるか否かを判断する(S35)。出力異常がある場合、避難誘導経路として案内する交差点として適切でないためである。
【0044】
出力異常がある場合(S35のY)、制御部31は避難経路変更処理を行う(S37)。つまり、制御部31は、必要に応じて記憶部32を参照して避難経路の経路パターンを変更する。
【0045】
避難経路変更処理を行った後(S37)、又は、S35の処理で出力異常が無い場合(S35のY)、制御部31は、スピーカ1〜スピーカ4を用いて設定されている経路パターンに基づいた避難誘導音声出力を開始する(S36)。本の処理が終了すると、
図6で示したS12の処理に戻る。
【0046】
以上、本実施形態によると、非常用電源20を搭載した音響付加装置10や誘導先の目印となる交差点の信号機80の商用電源(商用電力90)と出力電力を常に監視することで、停電時に信号機80の点灯と音声案内により、避難者を安全に避難経路へ誘導することができる。
【0047】
特に、従来の非常用電源を備える音響付加装置では商用電力90が「断」になった場合、単に入力異常と判定されていた。したがって、入力異常を停電の条件とすると、「音響付加装置単体がなんらかの原因で電源断になった」か「商用電源が供給できない状態(停電)になった」か、を適切に判別することができなかった。しかし、本実施形態によると、そのような判別を適切に行うことができ、避難誘導を行うエリア単位で停電検知を行うことができる。
【0048】
また、災害により停電になった場合、「避難経路」を避難誘導音として出力することで、避難者を適切な避難誘導ができる。また、夜間でも歩行者が安全に避難誘導できるように、避難経路は非常用バッテリ等と接続された信号機がある交差点を経由することが望ましい。従来では、信号機の倒壊や非常用電源のバッテリ切れによる信号機の滅灯により、避難誘導した交差点の信号機が正常運転していない虞があった。しかし、本実施形態では、誘導先の目印となる交差点の信号機の点灯状態が正常であるか通信を行い、内容によって避難誘導経路を変更するため、安全に避難誘導を行うことができる。
【0049】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、上述の実施形態では、非常時用の音声案内の出力処理を行う前提として、他の音響付加装置10における異常の有無を判断したが、これに限る趣旨ではない。例えば、音響付加装置10単体として判断し、非常時用の音声案内の出力処理を行ってもよい。例えば、非常用電源20に電源が切り替わって動作している場合には、音響付加装置10が設置されている交差点において何らかの異常が発生している可能性がある。したがって、音響付加装置10は、避難者に対して注意を促す警告案内等を出力してもよい。