(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180187
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B64G 1/40 20060101AFI20170807BHJP
G01F 23/288 20060101ALI20170807BHJP
G01F 22/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B64G1/40 A
G01F23/28 C
G01F22/00
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-108752(P2013-108752)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-244962(P2013-244962A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】10 2012 010 628.9
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500443888
【氏名又は名称】アストリウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ラーカース
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03717760(US,A)
【文献】
特開平09−080156(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0043466(US,A1)
【文献】
特開平06−059043(JP,A)
【文献】
米国特許第04471223(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
G01F 22/00
G01F 23/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相の燃料を収容するための燃料タンク、特に衛星用燃料タンクにおいて、
該燃料タンク(1)がシンチレーションガラスファイバー(2,12)で卷装され、該燃料タンク(1)の中央部にガンマ線放出器(3)が配置され、前記ガラスファイバー(2,12)に光センサ(8)が付設され、前記シンチレーションガラスファイバー(12)が複数の部分(5)にまとめられていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記ガンマ線放出器(3)がコバルト60源から成っていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記燃料タンク(1)が球状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記ファイバー(2,12)の巻回軸線がタンク排出部(6)を通っていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記燃料タンク(1)が軽金属から製造されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記燃料タンク(1)がアルミニウムから製造されていることを特徴とする、請求項5に記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記燃料タンク(1)がチタンから製造されていることを特徴とする、請求項5に記載の燃料タンク。
【請求項8】
前記光センサ(8)がアバランシェ型フォトダイオードから成っていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相の燃料を収容するための燃料タンク、特に衛星用燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星は、基本的には、予め設定されたその使用期間が終了するまで可能限り操縦機能が存続している必要がある。しかしながら、燃料を完全に使い果たしてしまえば、そうはいかない。それ故、燃料がまだ残っている間に、衛星を停止させるべくコントロールしなければならない。しかし衛星の場合、操作段階が遅れると、タンク内に燃料がどの程度まだあるかを正確に検知することができない。というのは、無重力状態では、重量測定のような標準的な方式は機能しないからである。加えて、液相の燃料の場合、ガス相の圧力を介して残量を測定することができない。というのは、ガス相の圧力は液相の体積または質量と関連していないからである。さらに、燃料の残量は、もともとの給油量と衛星の作動中に流出した燃料との差から流量計を介して常に検知できるわけではない。というのは、流量計は時間とともに不正確になるからである。それ故、衛星の使用期間は、安全性の理由から、実際にすべての燃料を使い果たす前にすでに終了する。
【0003】
放射性補助手段を用いて燃料タンク内の燃料の量を特定することは、すでに特許文献1および特許文献2から知られている。これ以外に特許文献3、特許文献4、特許文献5、さらに前記特許文献1から、タンク壁に沿って延在して充填レベルを測定するシンチレーションガラスファイバー束を備えた、冒頭で述べた種類の配置構成が知られるようになった。また特許文献6、前記特許文献3および前記特許文献4も、それぞれガンマ放射手段をタンク中央部に配置することを記載しており、特許文献7はこのようなタンクの中央部に検出器を配置する逆のケースを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3501632A号明細書
【特許文献2】米国特許第4755677A号明細書
【特許文献3】米国特許第4471223A号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102008011382A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第69907659T2号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/0020457A1号明細書
【特許文献7】米国特許第3531638A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の燃料タンクにおいて、タンク内に含まれている燃料の量をできるだけ簡単にいつでも正確に検知できるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、燃料タンクがシンチレーションガラスファイバーで卷装され、該燃料タンクの中央部にガンマ線放出器が配置され、前記ガラスファイバーに光センサが付設され、
前記シンチレーションガラスファイバーが複数の部分にまとめられているていることによって解決される。
【0007】
本発明によれば、1つ以上のファイバーを使用し、タンクを筒対称部分において卷装する。これにより、燃料がどこにあるかについての断層的情報を得ることができる。
【0008】
本発明の有利な実施態様では、シンチレーションガラスファイバーの巻回軸線はタンク排出部を通っている。これにより、この排出部の領域にまだ燃料があるかどうかを検知することができる。燃料の残量は、燃料排出部とは逆の方向において衛星に作用する推進パルスを介して排出部側へ付勢される。
【0009】
さらに、本発明の範囲内で、燃料タンクがアルミニウム、チタンのような軽金属から製造されていれば、特に有利である。というのは、タンク壁での吸収が少なく、よって動作設計(die Auslegung der Aktivitaet)を可能な限り簡潔にすることができるからである。
【0010】
しかしながら、本発明による燃料タンクの場合に設けられる放射線測定には、置換の際に利用に対し考慮すべきいくつかの欠点もある。
【0011】
・たとえば、衛星には放射線源も搭載しなければならない。しかしながら、技術的に且つ環境保護の理由からこれに問題はない。というのは、この目的のためには、1ミリグラム程度の少量の放射性材料を必要とするにすぎないからである。
【0012】
・ファイバーと、検出器と、電子評価装置とを備えた本発明による燃料タンクの構成は、ほぼ1キログラムの付加重量を必要とする。その結果衛星は、同じ重量であれば、対応的に量を減らした燃料を搭載すればよい。
【0013】
・放射性をベースにするには、「ブラインドテスト」が必要である。放射性は特定の軌道においてバンアレン帯のために著しく、太陽の活動に依存していることがある。放射線源の動作をこのような放射性に整合させねばならない。
【0014】
・衛星の電子装置の放射線量負荷は、放射線源が搭載されているためにわずかに高くになる。しかし著しいものではない。
【0015】
本発明の主要な利点は、燃料がより効果的に活用されるために、本発明による燃料タンクを備えた衛星の作動時間が著しく長くなることである。というのは、まだ残っている燃料残量についての正確な検知が常に行なわれ、これから燃料が効果的に活用され、使用期間が長くなり、よって著しいコスト節減が実現されるからである。
【0016】
シンチレーションガラスファイバーの技術自体はすでに以前から知られており、信頼性が高い。いわゆるアバランシェ型フォトダイオードも同様にすでに公知であり、大型の真空・光増倍管の用を成す機会が増えている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
次に、本発明を図面に図示した実施形態に関して詳細に説明する。
【
図1】シンチレーションガラスファイバーで卷装された衛星用球状燃料タンクの斜視図である。
【
図3】ファイバーをグループごとに配置した燃料タンクの第2実施形態の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の図示によれば、燃料タンク1はシンチレーションガラスファイバー2で卷装されている。ここで説明する実施形態のケースでは球状に形成されている燃料タンク1の中央部には、
図2の断面図から明らかなように、ガンマ線放出器3(本実施形態ではコバルト60源)が配置されている。シンチレーションガラスファイバー2は、ガンマ量子が当たったときに光パルスを発する。ガンマ量子は複数の光検出器(ここで説明する実施形態のケースではいわゆる「シリコンアバランシェ」タイプのもの)内でデカップリングされて、適当な前置増幅器電子系(図面には図示せず)内で電気パルスに置換される。これらのアバランシェ型光検出器8の1つは、
図1の配置構成では、燃料タンク1の排出部6の領域に配置されている。
【0019】
このような構成において、ガンマ線放出源3とファイバー2との間に燃料4がない場合のファイバーは強い光信号を放出し(図では濃くハッチングして示した)、他方燃料がガンマ線を吸収した場合のファイバーはより弱い信号を送出し、或いは、信号を全く放出しない(図では薄くハッチングして、或いは、ハッチングせずに示した)。
【0020】
電気パルスのタイムレートは、以下の測定量に依存している。
・ガンマ放出源3の動作と質量。ガンマ放出源の動作は時間とともに指数関数的に減少する。このことは、ガンマ放出源の半減期をミッション期間に整合させることを意味している。コバルト60源の場合、半減期は約5年である。
・周囲の背景放射。それ故、この背景放射を減ずるためにブランクテストを適用する。
・ガンマ放出源3とそれぞれの検出器2との間にある材料(本ケースでは燃料4)による吸収。従って、検出した計数率は、どの程度の量の燃料4がまだタンク1内にあるかに直接依存している。
【0021】
図3に断面で示した第2実施形態では、燃料タンク
1に1つ以上のファイバーが使用される。燃料タンク
1は、この図に図示した実施形態のケースでは、筒対称部分
5においてファイバー12で卷装されている。これによって、燃料タンク
1のどの領域に燃料4があるかについての断層的な情報を得ることができる。さらに、この図に図示した実施形態では、ファイバー12の巻回軸線はタンク排出部6を通っている。このようにして、燃料4がまだタンク排出部6にあるかどうかを検知することができ、残りの燃料4は、燃料排出方向とは逆の方向に延びている衛星の推進力(
図3では矢印7によって示唆した)によってこのタンク排出部6の方向に加速させることができる。グループIは燃料がタンク排出部6にあるかどうかを検出し、残りのグループIIないしVは燃料タンク
1内にある燃料残量を検出する。燃料残量の位置は、いわゆる燃料セットリング(Fuel Settling)パルス7の配分(Dosierung)に使用することができる。
【0022】
燃料タンク
1は、ここで説明した実施形態のケースでは軽金属、特にアルミニウムまたはチタンから製造されている。このような材料の場合、タンク壁での吸収が少なく、よって動作設計を可能な限り簡潔にすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 燃料タンク
2,12 シンチレーションガラスファイバー
3 ガンマ線放出器
5 シンチレーションガラスファイバーの部分
6 タンク排出部
8 光センサ