(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共通電極は、互いに左右に離間する、前記第1の分割電極に対向する領域と第2の分割電極に対向する領域とを備えていることを特徴とする請求項2記載の感知センサ。
【背景技術】
【0002】
試料流体中の感知対称物、例えば血液中あるいは血清中の微量なタンパク質を感知する方法として、例えば特許文献1に示すようなQCM(Quartz Crystal Microbalance)を利用した感知センサが示されている。QCMは励振電極の表面に感知対象物を抗原抗体反応により吸着する吸着膜が設けられた水晶振動子を用い、試料溶液中の感知対象物の吸着による質量負荷を、水晶振動子の周波数の変化として捉えて、感知対象物の定量を行うものである。この基本原理を利用し医療現場での診断や食品検査にも用いられている簡易計測への応用も可能である。
【0003】
近年では、低濃度のサンプル感度を高めるため、感知センサの小型化が求められている。感知センサでは、マイクロ流体チップを使用してごく狭い反応空間を形成し、その中で抗原抗体反応を行うが、感知センサを小型化することにより、反応空間の容量が小さくなるため、少量のサンプルにより電極表面を通過させることができるためである。
しかしながら感知センサを小型にして、反応空間を小さくした場合には、水晶振動子に形成される励振電極の面積も狭くする必要がある。励振電極の面積が狭くなると、水晶振動子のCI値が増加してしまい、発振周波数が安定しなくなる。そのため感知センサの測定精度の信頼性が落ちるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、試料液中の感知対象物の測定を行う感知センサにおいて、CI値を低減させて、信頼性の高い測定を行うことができる感知センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の感知センサは、水晶片の一面側に設けられ、発振時にアース電位とされる励振用の共通電極と、
前記水晶片の他面側に互いに離間しかつ各々が前記共通電極に対向するように設けられると共に、各々の外縁が前記共通電極の全周に亘って前記共通電極に対向する領域から外側にはみ出すように形成された第1の分割電極及び第2の分割電極と、
前記共通電極の表面であって、前記第1の分割電極及び第2の分割電極の一方に対向する領域に形成され、試料液中の感知対象物を吸着する吸着層と、
前記共通電極、第1の分割電極及び第2の分割電極の各々を発振回路に接続するための接続端子部を備え、第1の分割電極及び第2の分割電極に臨む領域に空間が形成されるように前記水晶片が固定された配線基板と、を備え、
前記共通電極は、流路形成部材により前記共通電極の上方に形成される試料液の供給流路となる空間内に収まり、前記第1の分割電極及び第2の分割電極の各々の外縁が前記
試料液の供給流路となる空間に対向する領域の外に位置していることを特徴とする。
【0007】
また本発明の感知センサは、前記共通電極の上方に試料液の供給流路をなす空間を形成するための流路形成部材を備え、
前記流路形成部材は、一端側及び他端側に夫々試料液の注入口及び試料液の排出口が形成され、
前記流路形成部材の一端側から他端側を見たときに、左側に位置する前記第1の分割電極の左縁側及び右側に位置する第2の分割電極の右縁側が前記空間に対向する領域からはみ出していることを特徴としてもよい。さらには、前記共通電極は、互いに左右に離間する、前記第1の分割電極に対向する領域と第2の分割電極に対向する領域とを備えていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
水晶振動子を用いた感知センサにおいては、供給流路の縁に励振電極を近づけすぎる設計をすると、組み立て時に流路形成部材が共通電極に接触する懸念が大きくなる。励振電極上に流路形成部材が接触すると発振が乱れたり、試料液中の感知対象物を吸着できる吸着層の面積が変わり対象物を吸着したことによる周波数の低下量が変わってしまうため、前記接触が起こってはならない。そこで本発明は、水晶片において試料液が流れる一面側共通電極を設けると共に他面側に第1の分割電極及び第2の分割電極を設け、分割電極を供給流路(空間)の投影領域の外側にはみ出すように構成している。このため水晶振動子の上から見ると、分割電極が共通電極の外縁からはみ出して供給流路の縁まで形成されているので、共通電極からわずかにはみ出た領域に分割電極が存在することになる。従ってこのわずかにはみ出た領域も振動領域となるため、試料液の流路が相当せまくなると、当該振動領域の面積を占める比率がおおきくなり、CI値の低減に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態に係る感知センサを用いた感知装置について説明する。この感知装置は、マイクロ流体チップを利用し、例えば人間の鼻腔の拭い液から得られた試料液中のウイルスなどの抗原の有無を検出し、人間のウイルスの感染の有無を判定することができるように構成されている。
図1の外観斜視図に示すように、感知装置は発振回路ユニット11と本体部12とを備えた測定器10と、測定器10の発振回路ユニット11に着脱自在に接続される感知センサ1と、を備えている。発振回路ユニット11は例えば同軸ケーブル13を介して本体部12に接続されている。本体部12の前面には、例えば液晶表示画面により構成される表示部81が設けられており、表示部81は例えば発振回路ユニット11の出力周波数あるいは、周波数の変化分等の測定結果もしくは、ウイルスの検出の有無等を表示する。
【0011】
次に感知センサ1の構成について説明する。
図2は、感知センサ1の斜視図を示し、
図3は感知センサ1の縦断側面図である。
図4、
図5は夫々感知センサ1の各部の上面側、下面側を示した分解斜視図である。これら
図2〜
図5を用いて説明する。感知センサ1は下方から配線基板2と、水晶振動子3と、流路形成部材4と、上蓋ケース5と、が積層されている。配線基板2は、例えば略矩形の基板であり、長さ方向を前後とすると、後方側が発振回路ユニット11に差し込まれる接続端子部21となっている。配線基板2の前方側には、例えば円形の貫通孔22が設けられている。配線基板2の上面には、配線基板2の長さ方向に伸びる配線25、26、27が設けられており、夫々の配線25、26、27は、接続端子部21から貫通孔22の外縁まで引き回され、貫通孔22の外縁に夫々電極パッド25a、26a、27aが形成され、接続端子部21に夫々端子部25b、26b、27bが形成されている。また電極パッド27aと貫通孔22を介して対向する位置には、導電体により、パッド28が形成されている。
【0012】
続いて水晶振動子3についてその上面、下面をそれぞれ示した
図6(a)、
図6(b)も参照しながら説明する。水晶振動子3は、例えばATカットで構成された直径数mmの円板状の水晶片30により構成される。水晶振動子3の一面側である表面側には、共通電極31が設けられ、各々励振電極である第1及び第2の電極部位32、33が設けられる。第1及び第2の電極部位32、33は、例えばCr及びAuの積層体により構成され、幅方向左右に並び前後方向に伸びるように配置される。水晶振動子3の他面側である裏面側には、励振電極である、第1及び第2の分割電極34、35が設けられる。第1及び第2の分割電極34、35は、各々の外縁が夫々第1及び第2の電極部位32、33の全周に亘って、第1及び第2の電極部位32、33と対向する領域からはみ出すように形成されている。第1及び第2の分割電極34、35は、互いに離間するように配置されている。この水晶振動子3の第1及び第2の電極部位32、33と、夫々第1及び第2の分割電極34、35とで挟まれた領域は、夫々第1及び第2の振動領域61、62となり、これらの第1及び第2の振動領域61、62は、互いに独立して振動する。
【0013】
第1及び第2の電極部位32、33はその長さ方向一端側で接続されて、共通電極31となっており、水晶片30の周縁方向に引き出し電極38が引き出されている。引き出し電極38は水晶片30の表面及び側面を介して水晶片30の裏面に引き回されており、水晶片30の裏面側周縁部にて端子部38aが形成されている。
【0014】
第1の分割電極34と第2の分割電極35とは、互いに対向する方向とは、反対の方向に夫々引き出し電極36、37が引き出されており、夫々の引き出し電極36、37は、水晶片30の裏面側周縁部にて、端子部36a、37aが形成されている。なお夫々の引き出し電極36、37、38は、十分に細く形成されているため振動領域から除いている。また引き出し電極36、37、38とは、第1及び第2の電極部位32、33、第1及び第2の分割電極34、35の一部から伸ばされる電極であり、配線を介して発振回路と接続するための電極のことを言う。
第1の電極部位32には、感知対象物である例えばウイルスなどの抗原と選択的に結合する抗体により構成された図示しない吸着膜が設けられている。一方第2の電極部位33の表面には、ウイルスと第2の電極部位33との結合を阻害する阻害膜が設けられている。
【0015】
水晶振動子3は、第1及び第2の分割電極34、35が配線基板2の貫通孔22に臨み、端子部36a、37a、38aが配線基板2上に設けられた夫々の対応する電極パッド25a、26a、27aに重なり、パッド28上に載置されるように配置される。端子部36a、37a、38aは、夫々電極パッド25a、26a、27aに導電性接着剤7により接着され、水晶振動子3は保持される。
図3では、水晶片30の周縁部が、配線基板2から浮いたように示されているが、実際には、水晶振動子3の第1及び第2の電極部位32、33、第1及び第2の分割電極34、35、配線基板2上の各配線25、26、27、電極パッド25a、26a、27a及びパッド28の厚さは、極めて小さく、導電性接着剤7もごく少量であるため、水晶振動子3は、配線基板2に略水平な状態で固定される。
【0016】
続いて流路形成部材4について説明する。流路形成部材4は例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)により矩形板状に形成される。流路形成部材4の下面側には、水晶振動子3及び配線25、26、27が収まるようにこれらの外形に沿って段差部46が形成されている。段差部46には、注入口42及び廃液口43となる、厚さ方向に貫通する貫通孔が前後に2ヶ所に並ぶように設けられている。また段差部46には、枠が注入口42及び廃液口43を囲むように配置され、枠部41となっている。枠部41は、六角形状に形成され、注入口42と廃液口43とが互いに対向する二角に配置されるように設けられている。
【0017】
流路形成部材4は、配線基板2の前方側に、水晶振動子3の上方から重ね合わされる。流路形成部材4が重ね合わせられると、枠部41が、水晶振動子3に当接することにより、水晶振動子3を底面とする供給流路40なる空間が形成される。その時
図7に示すように、第1及び第2の電極部位32、33が、枠部41の内側に収まり、枠部41から離れた位置に配置される。またその時水晶片の右側に配置される第1の分割電極34の右縁側と、第2の分割電極35の左縁側が供給流路40の対対向する領域の外に位置することになる。
【0018】
また供給流路40は、感知センサ1の前方から後方に向かって流れるように構成されているため、第1及び第2の振動領域61、62は、左右に並ぶように配置される。そのため参照液は夫々の第1及び第2の振動領域61、62に対して同時に且つ同様に流れ、夫々の振動領域61、62間で感知対象物の負荷以外の要素が極力等しくなるように構成されており、信頼度の高いレファレンスとして機能させることができる。
【0019】
続いて上蓋ケース5の説明をする。上蓋ケース5の上面側前方には、インジェクト口51となる凹部が設けられている。インジェクト口51には、傾斜が設けられており、インジェクト口51へと滴下された供給液が底部に集まるように構成されている。インジェクト口51の底部には、貫通する孔部52が設けられ、この孔部52は前記流路形成部材4の注入口42と対応する位置に設けられる。上蓋ケース5下面の後方側には、廃液だまり53となる凹部が設けられており、廃液だまり53の前方側が前記流路形成部材4の廃液口と重なる位置に設けられている。また廃液だまり53には、上蓋ケース5の上面側へ貫通する空気孔54が設けられている。廃液だまり53は、供給液を多く貯留することができるようにインジェクト口51より大きな容積を持つように構成されている。また廃液だまりは、インジェクト口51より低い位置に設けられている。また上蓋ケース5には、フック55が設けられる。
【0020】
上蓋ケース5は、配線基板2上に配置された流路形成部材4の上方に積層される。上蓋ケースは、フック55が配線基板2に係止されることにより、配線基板2上に水晶振動子3、流路形成部材4、上蓋ケース5の順に積層される。上蓋ケース5を流路形成部材4上に積層すると、孔部52が、流路形成部材4側の注入口42と接続される。また廃液だまり53の底面側が流路形成部材4の上面により閉じられて空間が形成されると共に、廃液だまり53と廃液口43とが接続される。これによりインジェクト口51→注入口42→供給流路40→廃液口43→廃液だまり53と続く一連の流路が形成される。
【0021】
注入口42及び廃液口43には毛細管部材となる円柱状のフィルタ44、45が着脱自在に設けられる。フィルタ44は水晶振動子3の表面から注入口42及び孔部52を通り、インジェクト口51の底部に突出するように設けられる。廃液口43に設けられるフィルタ45は、その下端が、供給流路40の天井高さになるように設けられ、先端が廃液だまり53に突出するように設けられる。
【0022】
上記の感知センサ1の接続端子部21が、発振回路ユニット11に差し込まれると、接続端子部21の端子25a、26a、27aが発振回路ユニット11において、これらの端子25a、26a、27aと対応するように形成された図示しない接続端子部に電気的に接続されて、感知装置を構成する。
図8に示すように発振回路ユニット11には、例えばコルピッツ回路で構成される第1の発振回路71及び第2の発振回路72が設けられており、第1の発振回路71は第1の振動領域61を、第2の発振回路72は第2の振動領域62を夫々発振させるように構成されている。また端子27aは発振時にアース電位となるように接続される。
【0023】
本体部12は、スイッチ部82と、データ処理部83とを備える。発振回路ユニット11内に設けられた第1及び第2の発振回路71、72の出力側は、同軸ケーブル13を介して、本体部12に接続され、本体部12内に設けられたスイッチ部82と接続される。スイッチ部82の後段に設けられたデータ処理部83は、入力信号である周波数信号のディジタル処理を行い、第1の発振回路71により出力される発振周波数「F1」の時系列データと、第2の発振回路72により出力される発振周波数「F2」の時系列データと、を取得する。本発明の感知装置では、スイッチ部82により、データ処理部83と第1の発振回路71と接続するチャンネル1と、データ処理部83と第2の発振回路72と接続するチャンネル2とを交互に切り替えた間欠発振を行うことにより、感知センサ1の2つの振動領域61、62間の干渉を避け、安定した周波数信号を取得できるようにしている。そしてこれらの周波数信号は、例えば時分割されて、データ処理部83に取り込まれる。データ処理部83では、周波数信号を例えばディジタル値として算出し、算出されたディジタル値の時分割データに基づいて、演算処理を行い、例えば、抗原の有無などの演算結果を表示部81に表示する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る感知センサ1の作用について説明する。なお以後の明細書中においては、感知対象物を含まずに水晶振動子3の周囲を液体雰囲気にするための供給液を参照液と記載し、感知対象物を含むか否かの判定の対象として、感知センサ1に供給する供給液を試料液と記載する。なおこの例では、参照液は生理食塩水を用いており、試料液は人間の鼻腔拭い液を生理食塩水により希釈したものを用いている。
【0025】
感知センサ1を発振回路ユニット11に差し込み、測定器10を起動すると水晶振動子3の各振動領域61、62が発振され、夫々の周波数信号に対応する周波数信号F1、F2が取り出される。
次いで、
図9(a)に示すようにユーザがスポイトにより、インジェクト口51に例えば参照液(生理食塩水)を滴下する。なお
図9、
図10中では、参照液をドットの密度を低く示しており、試料液をドットの密度を高くして示している。本発明の実施の形態に係る感知センサ1においては、インジェクト口51を廃液だまり53より高い位置に設置することに加えて、注入口42及び廃液口43を細く構成して、夫々の管内にはフィルタ44、45を挿入している。そのため注入口41及び廃液口42に設けたフィルタ44、45の毛細管現象及びインジェクト口51と廃液たまり53の高低差を利用したサイホン効果によって流通され、供給液の供給流路40への供給及び供給流路40からの排出が行われる。
【0026】
インジェクト口51に滴下された参照液は、
図9(b)に示すように注入口42に設けられたフィルタ44に吸収され、重力により、フィルタ44を下降し、
図9(c)に示すように供給流路40内へと供給される。この時供給液(参照液)70は供給流路40の形状に沿って、供給流路40の底面全体を扇状に広がるように流れていく。参照液が流れると供給流路40に設けられた水晶振動子3の第1及び第2の振動領域61、62の環境雰囲気が気相から液相に変わり、液体の粘性の増加により各チャンネルの出力周波数F1、F2が低下する。
【0027】
供給流路40に流れた参照液は、
図10(a)に示すように廃液口42に設けられたフィルタ44により吸収されて廃液口43を上昇し、廃液たまり53に貯留される(
図10(b))。続いて、試料液をインジェクト口51に滴下する。
図10(c)に示すように試料液は、参照液と同様に供給流路40へと流れる。それによって流路内に残留していた参照液が下流方向へと押し流されて、供給流路40内の液相は参照液から試料液に置換される。
【0028】
供給流路40内が試料液で満たされた場合に、試料液中に感知対象物となる抗原が含まれる場合には、当該抗原が吸着層に設けられている抗体に、抗原抗体反応により吸着される。吸着層は、第1の電極部位32に設けられており、当該領域の電極の質量に、吸着層に吸着された抗原の質量が負荷されることになる。
試料液に抗原が含まれる場合には、第1の振動領域61から取り出される周波数「F1」は、試料液の温度や粘性により周波数が変化することに加えて、当該抗原が抗原抗体反応により吸着膜に吸着され、質量負荷効果によりさらに低下した周波数となる。その一方で第2の振動領域62と接続されるチャンネル2からは、試料液の温度や粘性に応じて変化する周波数「F2」が取り出される。このような周波数変化の結果、周波数「F1−F2」が低下する。その後
図10(d)に示すように、試料液は、供給流路40から廃液口43へと流れて廃液だまり53に貯留される。廃液だまり53の液量が上昇し、水圧が高くなると、注入口42から試料液の移動が停止する。試料液に抗原が含まれていない場合には、試料液は抗原を含む場合と同様に流通するが、第1の振動領域では、上記の抗原抗体反応による質量の負荷が起こらない。チャンネル1及びチャンネル2からは、試料液の温度や粘性に応じて変化する周波数「F1」、「F2」が取り出されるので、周波数差はほとんど変化しないことになる。
【0029】
水晶振動子3の示すCI値は、水晶振動子3に設けられる励振電極を大きくすることにより抑制することができる。感知センサ1では、流路形成部材4を水晶振動子3と当接するように設け、供給流路41内に第1及び第2の電極部位32、33を並べて配置している。水晶振動子3の第1及び第2の電極部位32、33が供給流路40を形成する枠部41と接触するとCI値が上昇する虞がある。また供給液に接する面積が変わり、試料液の温度や粘度、あるいは抗原抗体反応による周波数の変化が乱れる。そのため第1及び第2の電極部位32、33は、供給流路40内の収まる大きさに制限される。一方で水晶振動子3の他面側は、流路形成部材4と接しないため、第1及び第2の分割電極34、35を大きく設けても流路形成部材4が接触することはない。上述の水晶振動子3では、供給流路40側と反対の第1及び第2の分割電極34、35を広く設けている。
【0030】
水晶片30の分割電極を共通電極より大きく設けた場合に、分割電極と共通電極とに挟まれた領域が大きく振動する。それと共に、共通電極の外の領域であって、分割電極の設けられている領域もわずかに振動をしており、分割電極と共通電極とに挟まれた領域と共に振動しようとする。そのため上述の実施の形態に係る水晶振動子3では、水晶振動子3の第1及び第2の分割電極34、35が形成されており、夫々第1及び第2の電極部位32、33の設けられていない領域が第1及び第2の振動領域61、62と一体的に振動をしようとすることになる。
【0031】
供給流路40より外側の領域は、枠部41との接触により振動エネルギーが漏出してしまうが、供給流路40の内側であり、わずかな振動を行う領域の分だけ振動が安定しやすくなる。そのため上述の水晶振動子3の示すCI値は、第1及び第2の電極部位32、33と同じ広さの第1及び第2の分割電極を設けた場合と比較して低い値となる。従って発振周波数が安定することになり、CI値の低減に寄与する。供給流路40の空間容積が小さくなった場合には、当該振動領域の面積を占める比率が大きくなるため、より効果は大きくなる。
【0032】
上述の実施の形態によれば感知センサ1に設けられる水晶片において、試料液が流れる一面側に共通電極31を設けると共に他面側に第1の分割電極及び第2の分割電極34、35を設け、第1の分割電極及び第2の分割電極34、35を供給流路40(空間)の投影領域の外側にはみ出すように構成している。このため水晶振動子3の上から見ると、第1及び第2の分割電極34、35が共通電極31の外縁からはみ出して供給流路40の縁まで形成されているので、共通電極40からわずかにはみ出た領域に第1及び第2の分割電極34、35が存在することになる。従ってこのわずかにはみ出た領域も振動領域となるため、試料液の流路が相当せまくなると、当該振動領域の面積を占める比率がおおきくなり、CI値の低減に寄与する。
【0033】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る感知センサとして、
図11に供給流路に設置した状態を示すように、水晶振動子39の一面側の励振電極を共通電極9として構成してもよい。共通電極9と第1の分割電極34との間の領域は、第1の振動領域61となり、共通電極9と、第2の分割電極35との間の領域は、第2の振動領域62となる。そして第1及び第2の振動領域61、62が夫々供給流路40内に収まるように設ける。また抗体により構成された図示しない吸着膜は、共通電極9表面の例えば第1の振動領域61に設け、一方第2の振動領域62の表面には、ウイルスと共通電極9との結合を阻害する阻害膜が設ける。この場合にも、水晶振動子39に設けられる励振電極が大きくなるため、CI値を抑制することができる。従って感知センサ1の精度は高まることになる。