(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180199
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】車両用ドラムブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/56 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
F16D65/56 N
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-130830(P2013-130830)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4415(P2015-4415A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 未幸
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−112134(JP,U)
【文献】
特開2002−147506(JP,A)
【文献】
特表平06−502235(JP,A)
【文献】
特開2010−133456(JP,A)
【文献】
特表2003−514205(JP,A)
【文献】
米国特許第04276966(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレートに対向配置した一対のブレーキシューと、該両ブレーキシューの一端側を当接させたアンカーと、前記両ブレーキシューの他端側を拡開させる拡開装置と、前記両ブレーキシューを縮径方向へ付勢するリターンスプリングと、前記両ブレーキシュー間に配置される制動間隙自動調整装置とを備え、
該制動間隙自動調整装置は、前記両ブレーキシューの拡開側に両端部をそれぞれ当接させたコネクティングロッドと、該コネクティングロッドのアジャストギアを回転させるアジャストレバーとを備え、前記コネクティングロッドを伸長させることにより、両ブレーキシューの復帰位置を、前記バックプレートの外周側に変更させて制動間隙を自動的に調整する車両用ドラムブレーキにおいて、
前記アジャストレバーは、前記ブレーキシューのウェブに支軸にて回動可能に取り付けられる取付部と、前記アジャストギアに噛合する送り爪を備えたアジャスト腕と、前記コネクティングロッドに弾接し、前記送り爪をアジャストギアの回動方向に付勢する弾性腕とが一体に形成され、
前記アジャスト腕は、前記取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介して、前記アジャストギア方向に延出し、前記弾性腕は、前記アジャスト腕の反拡開装置側の側面から延出する細長片を反コネクティングロッド側に延出させて前記コネクティングロッド側にS字状に湾曲して曲げ戻され、先端側の腕曲面を前記コネクティングロッドの外周面に弾接させ、前記支軸から離れた位置で前記コネクティングロッドを前記アジャストギアの回動方向に付勢している
ことを特徴とする車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
バックプレートに対向配置した一対のブレーキシューと、該両ブレーキシューの一端側を当接させたアンカーと、前記両ブレーキシューの他端側を拡開させる拡開装置と、前記両ブレーキシューを縮径方向へ付勢するリターンスプリングと、前記両ブレーキシュー間に配置される制動間隙自動調整装置とを備え、
該制動間隙自動調整装置は、前記両ブレーキシューの拡開側に両端部をそれぞれ当接させたコネクティングロッドと、該コネクティングロッドのアジャストギアを回転させるアジャストレバーとを備え、前記コネクティングロッドを伸長させることにより、両ブレーキシューの復帰位置を、前記バックプレートの外周側に変更させて制動間隙を自動的に調整する車両用ドラムブレーキにおいて、
前記アジャストレバーは、前記ブレーキシューのウェブに支軸にて回動可能に取り付けられる取付部と、前記アジャストギアに噛合する送り爪を備えたアジャスト腕と、前記コネクティングロッドに弾接し、前記送り爪をアジャストギアの回動方向に付勢する弾性腕とが一体に形成され、
前記アジャスト腕は、前記取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介して、前記アジャストギア方向に延出し、前記弾性腕は、前記立上り片から前記アジャストギア方向に突出する細長片を、コネクティングロッド側に円弧状に曲げ戻して形成した弾性ループ部と、該弾性ループ部の曲げ戻し端から前記コネクティングロッドに沿って反アジャストギア方向に延出し、先端側が前記コネクティングロッドに弾接する弾性片とを備え、
前記コネクティングロッドは、両端に、前記ブレーキシューに連結される割溝を備えると共に拡開装置側と反拡開装置側とを平面状に形成した連結部をそれぞれ設け、前記弾性片は、前記連結部の反拡開装置側の平面部に沿って延出すると共に、先端側に、前記反拡開装置側の平面部に当接する突部を備えている
ことを特徴とする車両用ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記支軸は、前記アジャストレバーの取付部の一部を円筒状にプレス加工することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドラムブレーキに係り、詳しくは、バックプレートに対向配置した一対のブレーキシューの間に、両ブレーキシューの復帰位置を外周側に変更させて、ブレーキシューの外周に取り付けられるライニングとブレーキドラムとの間に形成される制動間隙を自動的に調節する制動間隙自動調整装置を備えた車両用ドラムブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドラムブレーキの制動間隙自動調整装置は、コネクティングロッドとアジャストレバーとを備えており、コネクティングロッドは、一方のブレーキシューに接続される第1ストラット部材と、他方のブレーキシューに接続される第2ストラット部材とを、アジャストギアを有するアジャストボルトで連結して形成され、ブレーキシューに回動可能に軸支したアジャストレバーは、その送り爪が、アジャストギアをストラットの伸長方向へ回動するようにアジャストスプリングにより付勢されていた。アジャストスプリングは、コイルスプリングで形成され、一端をアジャストレバーに、他端をブレーキシューのアンカー側のウェブにそれぞれ係止させていた(例えば、特許文献1参照。)。また、アジャストレバーに一体に設けられた弾性腕の先端部をブレーキシューのリムの内周面に圧接させ、アジャストレバーの送り爪をアジャストギアの回動方向に付勢するものもあった(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−36959号公報
【特許文献2】特開2012−141012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、アジャストスプリングが他の部品と干渉することがあり、レイアウトの自由度が低下すると共に、アジャストスプリングが他の部品に引っかかりやすいことから、部品の組み付け性が低下する虞があった。
【0005】
また、特許文献2のものでは、アジャストスプリングを省略することができ、レイアウト性や組み付け性の向上が図れるものの、ブレーキシューの径が異なると、弾性腕の形状も異なってくることから、ブレーキシューの径に応じてアジャストバーを形成しなければならないことから、アジャストレバーの汎用性が低下していた。
【0006】
そこで本発明は、アジャストスプリングを省略し、部品点数の減少と組み付け性の向上を図ると共に、アジャストレバーの汎用性を向上させ、コストの削減化を図ることができる車両用ドラムブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ドラムブレーキは、バックプレートに対向配置した一対のブレーキシューと、該両ブレーキシューの一端側を当接させたアンカーと、前記両ブレーキシューの他端側を拡開させる拡開装置と、前記両ブレーキシューを縮径方向へ付勢するリターンスプリングと、前記両ブレーキシュー間に配置される制動間隙自動調整装置とを備え、該制動間隙自動調整装置は、前記両ブレーキシューの拡開側に両端部をそれぞれ当接させたコネクティングロッドと、該コネクティングロッドのアジャストギアを回転させるアジャストレバーとを備え、前記コネクティングロッドを伸長させることにより、両ブレーキシューの復帰位置を、前記バックプレートの外周側に変更させて制動間隙を自動的に調整する車両用ドラムブレーキにおいて、前記アジャストレバーは、前記ブレーキシューのウェブに支軸にて回動可能に取り付けられる取付部と、前記アジャストギアに噛合する送り爪を備えたアジャスト腕と、前記コネクティングロッドに弾接し、前記送り爪をアジャストギアの回動方向に付勢する弾性腕とが一体に形成されていることを特徴としている。
【0008】
そして、第1の発明は、前記アジャスト腕は、前記取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介して、前記アジャストギア方向に延出し、前記弾性腕は、前記アジャスト腕の反拡開装置側の側面から延出する細長片を反コネクティングロッド側に延出させ
て前記コネクティングロッド側に
S字状に湾曲して曲げ戻され、先端側の腕曲面を前記コネクティングロッドの外周面に弾接させ
、前記支軸から離れた位置で前記コネクティングロッドを前記アジャストギアの回動方向に付勢していることを特徴としている。
【0009】
さらに、
第2の発明は、前記アジャスト腕は、前記取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介して、前記アジャストギア方向に延出し、前記弾性腕は、前記立上り片から前記アジャストギア方向に突出する細長片を、コネクティングロッド側に円弧状に曲げ戻して形成した弾性ループ部と、該弾性ループ部の曲げ戻し端から前記コネクティングロッドに沿って反アジャストギア方向に延出し、先端側が前記コネクティングロッドに弾接する弾性片とを備
え、コネクティングロッドは両端に、前記ブレーキシューに連結される割溝を備えると共に拡開装置側と反拡開装置側とを平面状に形成した連結部をそれぞれ設け、前記弾性片は、前記連結部の反拡開装置側の平面部に沿って延出すると共に、先端側に、前記反拡開装置側の平面部に当接する突部を備えている
ことを特徴としている。
【0010】
さらに、前記支軸は、前記アジャストレバーの取付部の一部を円筒状にプレス加工することにより形成されると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用ドラムブレーキによれば、アジャストレバーは、ブレーキシューのウェブに支軸にて回動可能に取り付けられる取付部と、アジャストギアに噛合する送り爪を備えたアジャスト腕と、コネクティングロッドに弾接し、送り爪をアジャストギアの回動方向に付勢する弾性腕とを一体に備えていることから、従来用いていたアジャストスプリングを省略することができ、部品点数を減少させることができると共に、コストの低減化及びドラムブレーキの軽量化を図ることができる。さらに、ドラムブレーキの中央のスペースが広くなることから、他の部品のレイアウトの自由度が向上し、部品の組み付け性も向上する。また、弾性腕は、コネクティングロッドに当接して弾発力を発生させる構造であることから、ブレーキシューの径が異なる複数種類のドラムブレーキに適用することができ、汎用性の向上を図ることができ、コストの低減化を図ることができる。
【0012】
また、アジャスト腕は、取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介してアジャストギア方向に延出し、弾性腕は、アジャスト腕の反拡開装置側の側面から延出する細長片を反コネクティングロッド側に延出させた後、コネクティングロッド側に曲げ戻し、先端側をコネクティングロッドの外周面に弾接させることにより、アジャスト
レバーの支軸と離れた位置で、コネクティングロッドを回転方向に付勢することができ、小さな付勢力でもコネクティングロッドに高い回転力を発生させることができる。
【0013】
さらに、アジャスト腕は、取付部から反ウェブ側に立ち上がる立上り片を介してアジャストギア方向に延出し、弾性腕は、立上り片からアジャストギア方向に突出する細長片を円弧状にコネクティングロッド側に曲げ戻して形成した弾性ループ部と、弾性ループ部の曲げ戻し端からコネクティングロッドに沿って反アジャストギア方向に延出し、先端側がコネクティングロッドに弾接する弾性片とを備えていることにより、弾性腕は、弾性ループ部によって、コネクティングロッドの回転方向に対して高い付勢力を備えることができる。また、アジャストレバーは、ドラムブレーキの中央側に突出する部分が少ないことから、ドラムブレーキの中央に広いスペースを確保することができる。さらに、コネクティングロッドは両端に、ブレーキシューに連結される割溝を備えた連結部をそれぞれ備え、弾性片は、連結部の平面部に当接する突部を備えていることにより、弾性片を連結部の平面部に安定した状態で当接させることができ、より高い付勢力を得ることができる。さらに、支軸は、アジャストレバーの取付部の一部を円筒状にプレス加工することにより形成されることにより、支軸を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1形態例を示す車両用ドラムブレーキの要部正面図である。
【
図4】本発明の第1形態例を示す車両用ドラムブレーキの要部斜視図である。
【
図6】本発明の第1形態例を示す車両用ドラムブレーキの正面図である。
【
図7】本発明の第2形態例を示す車両用ドラムブレーキの要部正面図である。
【
図10】本発明の第2形態例を示す車両用ドラムブレーキの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図6は、本発明の車両用ドラムブレーキの第1形態例を示す図である。こ
のドラムブレーキ1は、車体に固設されるバックプレート2の内面に、弓型に形成された一対の第1ブレーキシュー3と第2ブレーキシュー4とを配置し、両ブレーキシュー3,4の一端をホイルシリンダ5(本発明の拡開装置)のピストンに、他端をアンカー6にそれぞれ当接させている。
【0016】
このドラムブレーキ1は、第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4をバックプレート2の半径方向外側へ拡開して、外周のライニング3a,4aをブレーキドラム(図示せず)に摺動させて制動作用を行うリーディング・トレーリングタイプで、第1ブレーキシュー3には、パーキングレバー7の一端が支軸にて枢支され、該パーキングレバー7の他端には、パーキングレバー7を牽引するためのブレーキケーブル8が連結されている。
【0017】
第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4は、それぞれバックプレート2と平行に配置されるウェブ3b,4bと、該ウェブ3b,4bに直交して固設されるリム3c,4cと、該リム3c,4cの外周面に貼着される前記ライニング3a,4aとから成っている。第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4は、ウェブ3b,4bの略中間部がシューホールドピン9とシューホールドスプリング10とによってバックプレート2にそれぞれ弾持されている。また、両ウェブ3b,4bの間には、ホイルシリンダ5の内側とアンカー6の外側とにシュー戻しばね11と連結ばね12とが張設されていて、双方のブレーキシュー3,4を常時縮径方向へ付勢しており、更に、ホイルシリンダ側のシュー戻しばね11のバックプレート中心側には、制動間隙自動調整装置13が配置されている。
【0018】
制動間隙自動調整装置13は、円筒状のコネクティングロッド14とアジャストレバー15とを備えており、コネクティングロッド14は、第1ブレーキシュー3に接続される第1ストラット部材14aと、第2ブレーキシュー4に接続される第2ストラット部材14bとを、アジャストギア16aを有するアジャストボルト16で連結して形成されている。第1ストラット部材14aと第2ストラット部材14bとは、外端側に、割溝14c,14dを備えた連結部14e,14fがそれぞれ設けられ、第1ストラット部材14aは、割溝14cが第1ブレーキシュー3のウェブ3bとパーキングレバー7とに当接し、第2ストラット部材14bは割溝14dが第2ブレーキシュー4のウェブ4bに当接して両ブレーキシュー3,4の縮径位置を規制している。また、第2ストラット部材14bの割溝14dの開口側には、回動規制片挿通溝14gが形成されると共に、該回動規制片挿通溝14gと割溝14dとの間に、アジャストレバー15の回動を規制する段部14hが形成される。また、連結部14e,14fは、ホイルシリンダ側と反ホイルシリンダ側とが平面状に形成されている。
【0019】
アジャストボルト16は、
図5に示されるように、アジャストギア16aの一側方から突出する長軸部外周に雄ねじ16bを形成し、該雄ねじ16bを第1ストラット部材14aの雌ねじ孔14iに螺合し、アジャストギア16aの他側側から突出する短軸部16cを第2ストラット部材14bに形成した嵌合孔14jに回転可能に嵌合させている。
【0020】
アジャストレバー15は、第2ブレーキシュー4のウェブ4bに取り付けられる取付部15aと、送り爪15bを備えたアジャスト腕15cと、第2ストラット部材14bに弾接する弾性腕15dとが一体に形成されている。取付部15aは、中央に円筒状にプレス加工された支軸15eが形成され、該支軸15eは、ウェブ4bに形成した取付孔4dに回動可能に挿入される。取付部15aのバックプレート中心側の端面には、反ウェブ側に立ち上がる第1立上り片15f(本発明の立上り片)を介して、前記アジャスト腕15cがアジャストギア16aに向けて延出し、該アジャスト腕15cの先端に、アジャストギア16aに噛合する前記送り爪15bが形成されている。また、取付部15aのホイルシリンダ側の端面には、ホイルシリンダ側に延出する回動規制片15gが設けられ、該回動規制片15gの先端には、反ウェブ側に立ち上がる第2立上り片15hが形成されている。
【0021】
弾性腕15dは、アジャスト腕15cの反ホイルシリンダ側の側面から延出する細長片を反ホイルシリンダ側に延出させた後、第2ストラット部材14b側にS字状に湾曲して曲げ戻されて形成され、先端側に、ホイルシリンダ側に凸状に湾曲したストラット当接部15iが形成されている。
【0022】
このように形成されたアジャストレバー15は、支軸15eを取付孔4dに挿入し、回動規制片挿通溝14gに回動規制片15gを挿通させ、送り爪15bをアジャストギア16aに噛合させると共に、弾性腕15dのストラット当接部15iを第2ストラット部材14bに当接させる。このとき、弾性腕15dの弾発力により、送り爪15bをアジャストギア16aの回転方向に付勢する回動力が発生するが、回動規制片15gと段部14hとの当接により、アジャストレバー15の回動が規制されている。
【0023】
上述の形態例では、制動操作によりホイルシリンダ5に液圧を供給すると、ホイルシリンダ5のピストンが押動され、第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4をアンカー6を中心に、シュー戻しばね11の弾発力に抗して拡開させ、ライニング3a,4aをブレーキドラムの内周面に摺接させて制動作用を行う。制動を解除すると、第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4はシュー戻しばね11の弾発力により初期の状態に復帰する。
【0024】
制動時に、第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4が拡開すると、コネクティングロッド14は、第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4と当接した状態から離れてフリーな状態となり、弾性腕15dの弾発力によって、アジャスト腕15cの先端の送り爪15bがアジャストギア16aを回動方向に回動させる。したがって、従来のように、アジャストスプリングを、アジャストレバーと、ブレーキシューのアンカー側のウェブとの間に架け渡さなくても、弾性腕15dを備えたアジャストレバー15のみで制動間隙を自動的に調整することとができる。これにより、部品点数を減少させることができると共に、コストの低減化及びドラムブレーキ1の軽量化を図ることができる。さらに、ドラムブレーキ1の中央のスペースが広くなることから、他の部品のレイアウトの自由度が向上し、部品の組み付け性も向上する。また、弾性腕15dは、第2ストラット部材14bに当接して弾発力を発生させる構造であることから、ブレーキシュー3,4の径が異なる複数種類のドラムブレーキに適用することでき、汎用性の向上を図ることができ、コストの低減化を図ることができる。さらに、アジャストレバー15は、筒状にプレス加工された支軸15eを、ウェブ4bの取付孔4dに挿通させ、回動規制片挿通溝14gに回動規制片15gを挿通させ、送り爪15bをアジャストギア16aに噛合させると共に、弾性腕15dのストラット当接部15iを第2ストラット部材14bに当接させることにより、簡単に組み付けることができる。
【0025】
図7乃至
図10は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0026】
本形態例のアジャストレバー17は、第1形態例のアジャストレバー15と弾性腕15dの形状が異なるもので、本形態例の弾性腕17aは、第1立上り片15fの第2ストラット部材14b側端部からアジャストギア16a方向に突出する細長片を、第2ストラット部材14b側に円弧状に曲げ戻して形成した弾性ループ部17bと、該弾性ループ部17bの曲げ戻し端から第2ストラット部材14bに沿って反アジャストギア方向に延出する弾性片17dとを備えている。該弾性片17dは、第2ストラット部材14bの連結部14eに形成された反ホイルシリンダ側の平面部14kに沿って、反アジャストギア方向に延出し、先端側に形成した突部17cを平面部14kに当接させている。
【0027】
本形態例は上述のように形成されることにより、弾性腕17aは、弾性ループ部17bによって、コネクティングロッド14の回転方向に対して高い付勢力を備えることができる。また、アジャストレバー17は、ドラムブレーキ1の中央側に突出する部分が少ないことから、ドラムブレーキ1の中央に広いスペースを確保することができる。また、弾性片17dは、突部17cを連結部14eの平面部14kに、安定した状態で当接させることができることから、より高い付勢力を得ることができる。
【0028】
尚、本発明は上述の形態例のように、アジャストレバーの支軸をプレス加工により形成するものに限らず、別体の支軸を用いてウェブに取り付けるものでもよい。さらに、コネクティングロッドは、送り爪に噛合するアジャストギアと、アジャストレバーの回動を規制する回動規制部とを備えたものであれば、どのようなタイプのものでも差し支えない。
【符号の説明】
【0029】
1…ドラムブレーキ、2…バックプレート、3…第1ブレーキシュー、3a…ライニング、3b…ウェブ、3c…リム、4…第2ブレーキシュー、4a…ライニング、4b…ウェブ、4c…リム、4d…取付孔、5…ホイルシリンダ、6…アンカー、7…パーキングレバー、8…ブレーキケーブル、9…シューホールドピン、10…シューホールドスプリング、11…シュー戻しばね、12…連結ばね、13…制動間隙自動調整装置、14…コネクティングロッド、14a…第1ストラット部材、14b…第2ストラット部材、14c,14d…割溝、14e,14f…連結部、14g…回動規制片挿通溝、14h…段部、14i…雌ねじ孔、14j…嵌合孔、14k…平面部、15…アジャストレバー、15a…取付部、15b…送り爪、15c…アジャスト腕、15d…弾性腕、15e…支軸、15f…第1立上り片、15g…回動規制片、15h…第2立上り片、15i…ストラット当接部、16…アジャストボルト、16a…アジャストギア、16b…雄ねじ、16c…短軸部、17…アジャストレバー、17a…弾性腕、17b…弾性ループ部、17c…突部、17d…弾性片